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20231105
ayu
@ayu_rf112
2023/11/05 (日) 22:56:41
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@Ryota_Fujimaki
今日はお疲れ様でした〜☺️
全部素敵な写真すぎます!!!
アップしてくれて嬉しいです、
ありがとうございます😌✨
hiroちゃん (ひろiro)
@iro_one_iro
2023/11/05 (日) 20:52:49
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@Ryota_Fujimaki
この素晴らしいライブの音、光が全て水素エネルギーを使って行われたものであることに驚きと、近未来であるH2にとても希望が持てました。
亮太くんのライブの迫力✨感動です。とても素敵なライブをありがとうございました😊
ドラセナ🌿
@angelicaleavs
2023/11/05 (日) 20:39:05
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@Ryota_Fujimaki
たくさんのお写真ありがとうございます✨残念ながら参加できなかったので、とても嬉しいです😊
pompom*藤巻っこ
@remi_pompom
2023/11/05 (日) 20:28:48
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@Ryota_Fujimaki
楽しそうな写真や動画嬉しいです❣️
行けなくて残念ですが、大田市は行きますよ〜❣️
バンド編成楽しみです
千変万化やって欲しいです❣️
ringo
@akasia_ringo
2023/11/05 (日) 20:18:29
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@Ryota_Fujimaki
迫力満点のステージ❗
とっても盛り上がって、最高に楽しかったです🤩
裕子(ヒロコ)🌸
@hiroko_fujimaki
2023/11/05 (日) 20:06:01
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@Ryota_Fujimaki
SPEED STAR LIVE以来の大きくて立派な会場でのステージ、迫力満点のバンド編成で最高にカッコ良くて素敵でした❗😆 無事に参加でき、声援も送れて今日も本当に幸せでした✨
今後に予定されている色々なイベントやライブでもお会いできるのを楽しみにしています🎶
H2 Energy Festival
@h2_energy_fes
2023/11/05 (日) 19:50:02
11月5日(日) #H2エナジーフェスティバル から、【藤巻亮太】さんのステージをルックバック!! 👀✨
名曲から新曲まで、美しい歌声とメロディが会場を包み込んでいました〜!!❄️🍃
#H2EnergyFestival #JAPANMOBILITYSHOW2023 #JMS2023
@Ryota_Fujimaki
智香子🌼🍀
@chikako0309
2023/11/05 (日) 19:45:56
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@Ryota_Fujimaki
東京ビッグサイトで開催されたライブ、残念ながら参加できなかったのですが写真アップしていただいて、テンションが上がっています~😆🎵
亮太さんに会える、12月の横浜赤レンガ倉庫でのライブ、夫婦での参加、楽しみにしています~🥰🍀
yasuko🍇
@merychan_0903
2023/11/05 (日) 19:44:37
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@Ryota_Fujimaki
とても素敵なライブありがとうございました😊 明日からまた頑張れます☺️
n。
@39_RF_223_030
2023/11/05 (日) 19:41:20
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@Ryota_Fujimaki
またあいましょう♪♪
💪🏻 ̖́-☺️
n。
@39_RF_223_030
2023/11/05 (日) 19:34:35
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@Ryota_Fujimaki
🥹
えりちゃーん
@erichaaan39
2023/11/05 (日) 19:34:03
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@Ryota_Fujimaki
写真たくさん見れて嬉しいです🥲💕
今日も素敵なライブだったのだろうなぁ✨
行けなくてしょんぼりしてましたが、次の京都は行きます…!
楽しみにしてます~😍
モーリー
@EkuCm7RlB4uQba1
2023/11/05 (日) 19:32:04
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@Ryota_Fujimaki
わぁ😍写真ありがとうございます✨
めっちゃ素敵な写真😆
はい!!次は行きます🎵
23と25日楽しみにしてます😭
裕子(ヒロコ)🌸
@hiroko_fujimaki
2023/11/05 (日) 17:51:04
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@h2_energy_fes
and
@Ryota_Fujimaki
最高にカッコいい素敵なステージでした❗
4人での素敵なお写真も嬉しいです‼️😆🎵
H2 Energy Festival
@h2_energy_fes
2023/11/05 (日) 17:44:21
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@h2_energy_fes
@Ryota_Fujimaki
and 6 others
#H2EnergyFestival
@fofofolte04
H2 Energy Festival
@h2_energy_fes
2023/11/05 (日) 17:43:15
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@h2_energy_fes
@Ryota_Fujimaki
and 5 others
#H2EnergyFestival
@afoc_official
H2 Energy Festival
@h2_energy_fes
2023/11/05 (日) 17:42:11
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@h2_energy_fes
and
@Ryota_Fujimaki
#H2EnergyFestival
@watwing_info
@Rintaro_watwing
@fu_takahashi05
@ryuta_kuwayama
@noakyon2525
miu-八村の眉毛で寝たい
@8miu_watwing
2023/11/05 (日) 17:39:05
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@h2_energy_fes
@Ryota_Fujimaki
and
@watwing_info
みんなのサインかわいい✒️‼️
車誰書いたんやろ、、、?かわいいな笑
H2 Energy Festival
@h2_energy_fes
2023/11/05 (日) 17:35:57
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@h2_energy_fes
@afoc_official
and 4 others
#H2EnergyFestival
@mm_official_
MONKEY MAJIK (モンキーマジック)@STAFF
裕子(ヒロコ)🌸
@hiroko_fujimaki
2023/11/05 (日) 15:42:39
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@Ryota_Fujimaki
ステージ目の前でスタンバイしてます❗
今日はバンド編成なんですね‼️
最高のステージに期待しています❗😆✨
shooting_star__2020
@ShootingStar_WG
2023/11/05 (日) 10:44:10
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@h2_energy_fes
@afoc_official
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豪華な顔ぶれ!#WATWING #MONKEYMAJIK 好きの私からしたら最高でしかない❤️🔥
行かれる方、楽しんでね✨✨
音楽しよう🎵
Corey Hartman
@HartmanCor18311
2023/11/05 (日) 06:52:35
@Ubay_KPI
@AbbyLuscious_
@h_althobaiti
@Pride_Softball
@wnio66
@Micadesina
@areefsen
@bjhinkle
@Is_a_belleIs
@ot8ultbiased
@DCInbox
@Kiran_vJ20
@ColmBoohig
@OCGrace
@ONEinEU
@rosalbaeguzman
@pistachio_stars
@Luismk17
@bboompower
@Ryota_Fujimaki
@alisonb26567748
Miss.ayo.artss
@madamayo_
2023/11/05 (日) 01:41:30
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@h2_energy_fes
@jamas-te-rindas_jpn
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佐伯光(Saeki Hikaru)
→ 雪村光(Yukimura Hikaru)
W小学校→M中学校 最終学歴、おそらく高卒
36歳前後
11月5日生まれ 蠍座
身長143㎝ 体重32kg
B型
夫・雪村真澄 息子・雪村絢
(亡父・佐伯岬 亡母・佐伯昴 義父・佐伯春輝)
(※小学生の頃に、父・岬が海外のテロで死亡。その後、昴が春輝と再婚。昴が岬のあとを追うように持病を悪化させて死亡。血の繋がらない春輝は光を代理ミュンヒハウゼン症候群の犠牲者に選んだ)
髪の色:黒
目の色:黒に近い焦げ茶色、陽にあてると薄くなる(水っぽい体質。涙や体液で眼球が常にキラキラ光る)
イメージ:りす(By絢)、人形、鈴、七五三の着物を着た童女、ハーバリウム(液体に漬けられた標本)、レオナルドダ・ヴィンチ、ポロック(後期)、ダリ「ポルトリガトの聖母子」
天真爛漫。素直。
自我が強く、いつも謎の自信を持って迷いなく行動する。
快感や快楽を好む。作り出すことも好むが作ったあとのことを考えていない。
向こう見ずで、危険を想定するより前に好奇心と興味が大きく優って動いてしまう。高いところに登って降りられなくなる猫のような感じ。
物怖じしない大胆な性格。毎度やらかしが大規模だったり派手。
斜め上の天然ボケを地でいくが本人はいつもいたって真剣。
澱みなく普通に話すが、自分の思考や頭の中のものを言語化して言葉で表現するのが下手で、顎が小さく弱い体質・口調と相まって、どこか舌足らずだったり突飛な発言になることがある。
身体能力は高い。運動神経抜群で逃げ足が速い。教えれば経験がないが教えれば運動はなんでも簡単にマスターする。
誰も入ってこれないベッドの下や狭い場所に入るのが好き(必ず見つけてくれる父・岬との思い出から)
じっとしていてもエネルギー消費が激しい体質。知らない間に水分が足りなくなって熱中症になってすぐ熱を出す。→雪村家にきてからはほぼ絶え間なくなにかいつも水分を摂って補っている。
噛み癖(自傷癖)、拒食、味覚障害、睡眠障害(不眠)がある。
つけ狙われやすいほう。
外見/
施設内:
外見は髪型から服まですべて養父・春輝の決めたとおりに整えている
厚めに切りそろえられた眉上までの前髪
量が多く腰より長いまっすぐな黒髪に鈴をつけている
全身白いレースのワンピースやロングスカート(逃走防止も兼ねている?)
雪村家内:
前髪も後ろ髮も真澄に梳いてもらって量がすっきりしている。一番長くて髪はお腹くらいまでの長さ(今後髪型や髪色で遊ぶ可能性)
逃避行中に真澄に着せてもらった「三つ編み・彼シャツ・サロペットスカート」の姿がお気に入り。真澄に選んでもらうものはだいたいお気に入り。
三つ編みはほぼ毎日固定?
きつい三つ編みにして解いてもうねったり跡のつかないハリとコシのあるまっすぐな強い黒髪、染髪経験なし処女髪、キューティクルで天使の輪ができる
頭が丸い。顎が小さくて細い。
歯の数や体の骨がところどころ足りない。
未発達な印象の童顔。
実際に肉体的に、実年齢にそぐわずいびつに未発達で未成熟。生活に支障が出ているという意味では病的といってもいいライン。
黒くて艶めいた長くて太い睫毛。化粧なしでもアイラインを引いてるような目元。
口小さめ、唇だけ少しぽってりめ、鼻低くて小さめ。
髪や肌が全体的に水分と油分多めで乾燥知らず。いつも全身艶々している。睫毛や目や唇もいつも少し濡れたように光る。
ちいさな子供のような体躯。
(逃避行後に初潮や第二次性徴が始まって体型が僅かにだが女性らしくなる)
頭、顔、肩幅、手、足、耳、爪、すべて規格外に小さい。すべて小さいので全体のバランスは普通。集合写真を撮ると一人だけ縮小加工したみたいになる。
痩せ型で細め、とくに腰・首・手首・足首が折れそうなほど細い。
真澄の手で一周できるウエストサイズ。
佐伯岬/春輝視点・過去編
光視点・過去編
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☆プロトタイプ版☆ ひとみに映る影シーズン3 第七話「決戦、ワヤン不動」
☆おしらせ☆
今回でひとみS3の無料掲載分は終了となります。物語のエピローグと恒例の追加イ���スト、そして次回作情報は電子書籍版の発売をお楽しみに!
☆プロトタイプ版☆
こちらは無料公開のプロトタイプ版となります。
段落とか誤字とか色々とグッチャグチャなのでご了承下さい。
→→→☆書籍版発売までは既刊二巻を要チェック!☆←←←
(シーズン3あらすじ)
謎の悪霊に襲われて身体を乗っ取られた私は、
観世音菩薩様の試練を受けて記憶を取り戻した。
私はファッションモデルの紅一美、
そして数々の悪霊と戦ってきた憤怒の戦士ワヤン不動だ!
ついに宿敵、金剛有明団の本拠地を見つけた私達。
だけどそこで見たものは、悲しくて無情な物語……
全ての笑顔を守るため、いま憤怒の炎が天を衝く!!
pixiv版 (※内容は一緒です。)
དང་པོ་
現実世界に戻ると、空はうっすらと明るくなっていた。光君が霊的タブレットを覗く。
「ふぅ。体感では億年単位の時間旅行も、実際はたった一晩きりの出来事で……ん?」
光君が訝しむ。うん、私もおかしいと思った。だってイナちゃんが空を見て呆然としているから。
「イナちゃん?」
「……ん? あ、二人とも無事ね!? よかた! ワヤン輝影尊(フォドー)と如来が真っ白になって消えちゃたのビックリしたヨ!」
私達の究極フォームがなんか略されちゃってるのは置いといて。やっぱり、さほど如来戦から時間は経っていないみたいだ。塔を登り始めた時から経過した時間を考えると恐らく、今は大晦日の夜。ちょうど年越しの少し前くらいだと思う。今夜は白夜というわけでもない。となると、これは……
「金剛の有明ですよ」
「!」
一同が一斉に空の一点を仰ぐ。そこには歪に大きなダイヤモンドがあしらわれた箒に乗る、一匹の巨猫。
「オモナっ……うそ、その声……」
現れた諸悪の根源を目の当たりにして、イナちゃんは目を見開いた。そうなんだ。人類史を遡った私と光君は既に知っているけど、この猫と……いや。この『人』と私達は、とっくの昔から知り合いだったんだ。
「お久しぶりです。『タナカさん』」
「ええ。ごめんね紅さん……また騙しちゃった」
テレビ湘南のディレクター、タナカ。彼は私の職場関係者として、ずっと行動を共にしてきた男だ。
གཉིས་པ་
佳奈さんと私が旅をする番組、『ドッキリ旅バラエティ したたび』は二〇一一年に始まった。当時は別のディレクターが撮影に同行していたけど、一昨年あたりからタナカさんが二代目ディレクターに就任した。あれは丁度、アンダスキンを倒した直後……そして、初めて光君と出会い大散減と戦う少し前のことだ。
タナカさんはイナちゃんや光君とも面識のある、朗らかな男性だった。でも局の入館証を紛失していて、いつも警備員さんに顔パスしてもらったり、後輩ADさんにゲートに入れてもらっていた。そして局内の誰も彼の下の名前はおろか、『タナカ』の漢字すら覚えていない。彼の人柄故に誰も怪しんでいなかったけど、今考えればかなりミステリアスな人物だった。
「た、タナカD……タナカDだよね!? 本当にタナカD!?」
「にゃはは! 今回はオルチャンガールのパクさんも騙しちゃいましたね。そうです、タナカは仮の姿……僕の本当の名前はロフター。金剛有明団団長、大魔神ロフターユールです」
ロフターは箒から降り、高度三千メートルに浮くこの庭園に立った。彼は山猫のように耳がぴんと上向きの巨猫。改めて同じ目線の高さで見ると、背丈は確かにタナカさんと一緒くらいだ。
「どうです? 皆さん、金剛の有明は絶景でしょう。ああ、下を御覧下さい。もうこの地球上の全人類が同じ光景を見ています」
「え!?」
本当だ。全知全脳の力で下界を見下ろすと、大変な事になっていた。なんと地球上の全人類が失っていた霊感を取り戻している!
「こいつはコトだ! もう計画を!?」
「わはははは! 光君もよぉく耳をすませてみて下さいよぉ。ほら、聞こえるだろ。パニックに陥るバカどもの叫びがね」
―きゃあぁーーっ、お化け! お化けが!! パパぁーママぁー!―
―刑事さん聞いてくれ、あんたの推理は間違ってる! 私を殺したのは息子じゃなくて妻だ!!―
―やっぱり総書記は替え玉だったんじゃねーか! ブチ殺せ!―
地上は空が明るくなった現象などまるで眼中にないほど混乱を極めていた。幾つかの地域では暴動や事故が勃発し、各地の霊能者に力を持った神、精霊、妖怪らが騒動を鎮めようと奔走する。それゆえ多神教の地域ほど治安の悪化は少なく、一神教の地域で特に深刻な事件事故が多発している。
「おいおい、ここまで僕の思い描いていた通りになるとはなぁ。でもご心配なく、地上の皆さん。間もなくあんた方の信じる唯一神が光臨しますからね」
ロフターの持つ魔導書が玉虫色に輝きだす。まさか、全人類……いや、地球上の全生物にアレを見せる気か!?
「待って下さいタナ……ロフター! そんなことしたらどうなるかわかってるんですか!?」
唯一神、すなわち創造主とはこの世の全ての礎。それを少しでも認知した人間は人格がゲシュタルト崩壊して廃人になる。ていうか神をばっちり直視なんかしたら、ヒトどころか殆どの動物の肉体が元素レベルで分解霧散して死ぬ! 地球の自然そのものがハチャメチャに崩壊してしまうんだ!!
「にゃはは、わかってるも何も。金剛の楽園を造るためには必要な事ですから」
「文明や自然を壊してまで目指す楽園って、一体何なんですか!?」
「世界平和ですよッ!」
ロフターの瞳孔がキッと細まり、尻尾と全身の毛が逆立った。
「誰も創造主を崇めない。かといって、誰も創造主を目指さない。資源(リソース)が限られたこの宇宙の中だけで、全てが完結する世界。余計な争いをせずみんなで身の丈に合った共同生活を送りながら、静かに終わりの日を待つ。生き物として……これ以上幸せな暮らしはないでしょう?」
ロフターの握りしめる箒がギリギリと軋んだ。これが、彼の答え。代々この宇宙のために尽力してきたカオスコロルの三代目が、最後に出した答えなのか。
「そ、そんなの……そんなの平和じゃなくて、絶望ていうんだヨ!!」
イナちゃんが目に涙を湛えて叫んだ。
「絶望ですか。上等だよ。バカどもが抱く希望なんて、余計な争いや格差を生む無用の産物なんだから」
魔導書の輝きが増し、下界が段々と静まっていく。みんな空を見ている。金剛の魔術によって、私達のこの会話が世界中に見え始めているんだ。
「どうして拒むんですかい? あんた方は唯一神様が大好きなんでしょう。神のために死ぬのは幸せなことで、神を敬わない人間はいくら殺してもいいんでしょう。おうそれなら見せてやるって言ってるんだよ!!!」
「やめて!!」
輝きが頂点に達し、イナちゃんが飛び出した! 私は……
「!」
「ヒトミ……ちゃん……?」
私は気がつくと、イナちゃんを止めていた。
「どうして!?」
「うわはははは!! まさかワヤン不動が、僕の金剛の思想を理解してくれたんですか!?」
どうして。……どうしてだろう。ただ……
「そのまさか、なんですよね」
「……え?」
意表を突かれたロフターの、魔導書の輝きが一瞬弱まった。
「ロフターの言ってる事、そこまで間違ってないと思うんです。もしかしたら将来、人類がこの宇宙の垣根を越えられる時も来るかもしれないけど。少なくとも今の文明レベルでは、外とは関わらないでみんなで手を取り合って生きるのが最善……じゃないですかね?」
「……ほ、ほほぉ。意外ですなぁ、脳筋で小心者の紅さんが、冷静に僕の話を聞いてくれていたなんて」
「一言余計だ三角眉毛」
うん。ちゃんと考えても実際、彼は思想的にはおかしな事は言っていない。だって現に最近の人類は、資源を守るために環境保護を始めたり、多様性を認めようとかなんとか言い出しているわけだし。どんな物かもわからない神様に祈るより、ずっと現実的に生き始めている。ロフターはそんな人類の最後の甘えである『創造主』という幻想を、この世界から取り払ってしまいたいだけなんだ。
「にゃはははは! なぁんだ、じゃあ僕達も不要な争いをせずに済むわけですなあ! では改めて……ぐッ!?」
ヴァンッ! 再び魔導書に力を込めようとしたロフターの左手に、高熱のエネルギー塊が爆ぜた。高圧の力を帯びていた魔導書は瞬く間に炎上!
「そんなわけないだろ外道が。お前は予定通り滅ぼすし、この世界に創造主は顕現させない」
「なんだと!?」
当たり前だ。それとこれとは話が違う。私は光君と目配せし、合体(ヤブユム)の構えを取る。
「あんたは野望のために魂を奪いすぎた。それが平和のためだったなど関係ねぇ、罪は罪できちんと償わなせにゃ!」
「喜べ。お前を完膚なきまでにブチのめした後で、この星に生きる全ての衆生と共に金剛の有明を迎えてやろう」
「くっ……」
ロフターは煌々と燃える魔導書を抱きしめ、表紙に埋め込まれたダイヤモンドをむしり取った。それを胸の中にグッと押し込むと、彼の体はたちまち巨大化していく。
「不動明王らしい、いえ、実に紅さん方らしい答えですな。こりゃいくら腹割って話したところで無駄ってわけだ」
私はその隙にテレパシーでカスプリアさんを呼び、イナちゃんと共に空を元に戻すよう依頼した。そして四本に伸ばした腕に武器を構える。
「カハァハハハハ!! 私がおめおめ見逃すとでも思ったか、ド外道が! これ以上は誰一人殺させない。神影繰り(ワヤン・クリ)の時間だ!」
ワヤン不動輝影尊(フォトンシャドウフォーム)対大魔神ロフターユール! 地球全土の存亡を賭けた合戦の火蓋は切って落とされた!
གསུམ་པ་
巨大化した大魔神はローブを広げ、さながら空に浮かぶサーカステントの様相。その帳にルーン紋様が浮かび上がると、強烈な突風が噴出! 周囲の雨雲と雹を取り込み大嵐の如く私に迫る。瞬間、私の中で仲間との絆がフラッシュバック!
―私が初めて人のために影法師の力を使うきっかけになった親友、リナ。金剛を裏切り私に修行をつけてくれた和尚様や、地元の神々。人生で初めて悪霊に立ち向かった時の、勇気の記憶―
私は赤外光を纏った灼熱のキョンジャクを高速回転させ天高く飛翔、そのまま遠心力で嵐を捕えた。
「ァアブダクショォン!」
それを大魔神へ腕力任せにブン投げ返す! ズドオオォン!! さながらジェットエンジンを直に受けたような衝撃音を立てて大魔神の帳が翻り、ロフターの顔が苦痛に歪んだ。しかし間髪入れず次のルーンが浮き上がる。
オォ……オォォォ……玉虫色の霧が立ち込め、木枯らしか亡霊の呻き声のような風音がそこかしこから上がる。するとどこからともなく宙に浮かぶ亡布録の大群が出現した! 瞬間、私の中で仲間との絆がフラッシュバック!
―抗う事を決意したイナちゃん。そしてNICや平良鴨証券の人々。力を貸してくれるみんなと共に闘った、友情の記憶―
「影影無窮!」
襲い来る大群に負けない、大量の影法師。その全員が燃え盛る龍王剣を掲げて悪を薙ぎ払う! そして全軍で大魔神に突撃ィィィ!!!
「カハァーーーッハハハハァーーー!!!!」
ダカダカダカダズダダダァァァン!! 大魔神の六割が灰燼と化した!
「ぎゃはあははははは! うにゃはははははは!」
絶叫とも高笑いとも取れる声を上げ、大魔神は目や口から黒いタールのような血涙を噴き出しながら更なるルーンを滲出! すると今度は大気圧がグヮンと急変し、周囲一帯が吐き気がするような生温い空気に包まれた。
……マアァァァウァァ……マバアァァァ……
無数に響く、飢えた怪物の声。そして中空から蠢き出る数多の菌脚。瞬間、私の中で仲間との絆がフラッシュバック!
―見知らぬ土地、見知らぬライバル。連綿と業を受け継ぐ祟り神。人生を奪われ続けて化け物になってしまった少女。でも最後は皆で手を取り合い呪いを破った、団結の記憶―
「救済せにゃ!」
天高くティグクを掲げると共に、私は灼熱に輝く太陽となる! 全ての穢れは瞬く間に干上がり、色の飛んだ世界で唯一つくっきりと存在する明王の影が斧を振り下ろした!
「ニャアアアアアアアァァァ!!!」
ダガアァァァン!! 大魔神の帳が崩壊し、巨猫のシルエットが真っ二つに割れた! そして世界に色が戻ると……
「!?」
中空に一瞬ルーンが浮かんだ次の瞬間、そこは突如カイラス山の岩窟になっていた。私は両腕を鎖で大岩に縛られ、足元を炎で炙られている。なんだ、今更悪夢攻撃なんて……
「ヒッ」
違う!この炎は、かつて私が経験したどんな憎しみや悲しみとも違う。まるで地球史が始まって以来、世界中で起きた死という結果のみを集めて燻したような、恐ろしく冷たい炎。その圧倒的な絶望に晒された私の心臓はすくみあがり、だんだん体が動かなくなる……
༼ ヌンッ! ༽
「ドマル!?」
すると突然、私から強引に分離したドマルが自らの心臓に腕を突っ込んだ!
༼ こっ、これは、拙僧が抱えていたトラウマだ……今���こで拙僧が消えれば、術も解ける ༽
「だ、ダメだ! この心臓を失ったら、ドマルは……」
༼ ふ。もともと拙僧は、あなたの中に僅かに残った残滓に過ぎぬ。今更自我を保とうなどとは、思わない……よッ! ༽
ドマルは私との接点だった悪魔の心臓から自分をメリメリと剥がし、このまま逝去するつもりだ! 確かに彼は既に引退を宣言した仏。だけど、何もこんなところでお別れになるなんて!
༼ よいか? 悪夢の術が消えたら、あなたの足元で燃える苦の本質を見ろ。そしてあの猫の声に耳を傾けるんだ…… ༽
「ちょっと待ってよ! あなただって一緒に戦ってきた仲間じゃない! ドマル……」
༼ 一美 ༽
「!」
彼は最後に振り返ると、卑怯なほど穏やかな微笑みで私を見つめて言った。
༼ 行くのです ༽
心臓に貼りついていた何かの線維が千切れる。抜苦与楽、体がふわっと軽くなったような感覚の後……私の前世は、邪尊ドマル・イダムは、悪夢と共に涅槃(ムナル)へと消え去った。
བཞི་པ་
闇があった。広さのわからない闇。まるで棺桶に入れられたような、あるいはだだっ広い宇宙に放り出されたような掴みどころのない空間。そこに一人の人影が佇んでいた。
「あなたは……」
その人は、とげとげロン毛……いや、ただのウェーブがかったロングヘアーの男性だ。かの有名な、茨の冠を被った神の子によく似た雰囲気の人。私は彼に近付くと、再び心臓が凍てつくような絶望の感覚を覚えた。
「あ……悪魔」
たった今逝去した前世の記憶を引き継いだ私は勘付いた。この人は私の心臓のドナー。砂漠で行き倒れになっていた、例の悪魔だ。
人間を堕落させる存在として忌み嫌われ、死ぬ事も消える事もできない……彼が仏典にそう書かれた理由がようやく理解できた。彼が本当に望んでいたのは、『安らかな滅び』。苦痛も暴力もない、穏やかな終わりだったんだ。
―いけェーーっ! ワヤン不動ーーー!―
―負けるなーー、立ち上がれーー、ワヤン不動ーーー!!―
どこかから声が聞こえる。何十人、何百人、何億人……最初は共に戦った仲間達の声。私を応援してくれる友達や邪尊教信者達の声。それどころか、一度も出会った事がない人達の声も、仏教とはまるで違う信仰を持つ人々の声も。この地球の命を守るため、身近な大切な人を守るため、あらゆる垣根を越えた大勢の衆生が私を呼んでいる! そして、
―……たすけて……―
「!」
もう一つ。私の目の前で、か細く泣く猫の声。
―……僕はただ、グリーダと静かに暮らせる楽園を作りたかっただけなんです……―
―……そのためにたくさんの命を奪いました。こうするしかなかった。だけど、グリーダはもういない……僕は償う事も、死ぬ事もできない……―
本来なら自分の感情すら自由自在に制御できる究極の神の子が、自己矛盾と絶望に苦しみ喘ぐ声。……大丈夫、ちゃんとわかります。だって私の中にも、悪魔の心臓(カオスコロル)があるのだから。
―……助けて……ワヤン不動……―
薄暗い世界に、希望が満ちていく。光は影を強く形取り、救いを求める声に伸びていく。
―ワヤン不動ーーーー!!!―
……さあ。滅ぼしてくれる。
ལྔ་པ་
「ミィ……ミィ……」
極彩色の宇宙に輝く満点の星。地平線を照らす金剛の有明。そこに浮かび上がった一匹の小さな子猫は、三角帽子の魔女と共に箒で空へ消えていった。
「大丈夫です。お空に創造主はもう見えないヨ」
「地上の混乱も順次収めていきますの。弊社の財力と国際社会とのパイプを利用すれば、お正月中に済むでしょう」
イナちゃんとカスプリアさんのおかげで地球の危機は去り、ここには奇跡のような明るい空だけが残っている。
「……あ」
ふと、全知全脳の力が感知した。たった今、グリニッジ標準時は丁度〇時となった。
「この地球が新年を迎えました。全ての命ある皆さん、あけましておめでとうございます」
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きついお灸
4月15日。できたことを中心に。
今日は歯医者の定期検診に行った。歯医者で顔にタオルを被せられ、隅々まで専門的な器具で掃除されている時間は至福である。今日も、磨き方はいいと褒められた。
明日は髪を切りに行く。前回、眉毛を左右で違うデザインにしたのだが、誰にも気が付いてはもらえなかった。が、自分では結構かっこよくできたんじゃないかと思っていて、気に入っていた。明日も余裕がありそうだったら、少しイカついぐらい左右のデザインを変えてもいいのかなと思っている。
Zoffの誕生日割引クーポンをもらっている。今のメガネが本当に自分の顔によく合ういいメガネで、中々これを超えるメガネには出会えていないのだが、少し冒険したい気持ちは残っている。そういう気持ちも大事にしたいとは思っているけども。
体組成計の結果はまあまあいい感じだ。昨夜計測した結果を書くと、体脂肪率が17.7%にまで落ちていた。年換算すると、筋肉量が+0.2kg、体脂肪が-1.2gと緩やかな減量期のような結果になっている。
新曲「Shipbuilding」の15秒のTeaserを完成させることができたので、You TubeとVimeoにて先行公開した。
「Shipbuilding」の審査が通って、各ストリーミング配信会社に音源が渡った。先ほど、Spotifyで取り上げてもらえるようPitchしたところ、「This is 〜」のプレイリストの上位にピン留めするという痒い所に手が届く機能が追加されていて、早速そうした。
実は、新しいアルバムを出してから、・・・あるいはアルバムを出す前後のリスナー数の伸び悩みもまた原因の一つだったのかもしれないが、This isのプレイリストが全50曲だったものが、昨日46曲、今日になったら41曲にまで総曲数が減っていた。結構ショックである。全50曲、それなりに聞き応えのある楽曲だけでぎっしりと詰まった、俺の名刺のようなものだったから。特に、カバー曲のシングル単品のものが結構削がれてしまったのが痛手のような気がしている。
これからはシングルでもアルバムでもあるのかな、新曲を「This is〜」にピン留めするという機能も追加されたことだし、新しい楽曲で自分の名刺も新しくしていけたらいいなと思っている。
awaiの本編の第160回で書いたとおりなのだが、今もまだ結構落ちていて、頭が傷つけられた月曜日の夜の経験を何度も反芻してしまう「苛まれ」モードに入ってしまっている。今日も「苛まれ」は続き、頭痛を感じたり、胃部に不快感を感じたりとすることもあった。
瞑想するまとまった時間をもっととりたいと思っているのだけど、中々取れていない。
今週は木曜日に代講が入っていて、5連勤なので、平日は早々余裕なく忙殺のうちにすぎることだろう。その方が、無駄なことを考えずに済むのかもしれないとも思う。
また、毎週月曜日と水曜日にEJUの選択授業の読解を担当することになってしまった。初めての試みなので、一応テキストこそ固まっているものの、最初は手探りですることになるだろう。まだ準備が終わっていないので、それも不安を感じる要因であるように思う。明日はできるだけ準備を最後まで終わらせ、形にしようと思う。
なんというか、感謝と共に許して忘れるということなんだろうな。できることは。どんなに嫌な経験でも嫌な体験でも、分析すると、そういう言動はするまいという戒めにはなる。きついお灸にはなる。のであれば、感謝して手を離すことはできるよなと思えている。
自分の時間や気遣い、エネルギーに触れることができるという権利を俺は安売りしたりはしない。決して。
寝よう。明日は日記を書く時間が取れないかもしれない。
来週も生き延びるので、どうか見守っていてほしい。
明日は美容院で髪を切って、もっとかっこよくなってやるぜ。舐められない俺を演出してやるんだ。
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黒姫高原牧場 のむヨーグルト
眉毛のある牛さん可愛すぎる😂💓
前に上小牛乳さん販売用の別パケで掲載してたんやけど、今回は黒姫高原牧場さん販売用のメインパッケージで入手🙌
黒姫高原牧場
長野県の北部、信濃町で平成10年10月に創業された乳業メーカーさん。
酪農家さんたちが集まって立ち上げた会社やから「牧場」って名前にしたけども、会社で牛さんを飼養しているわけではないみたい。
「自分たちの牛乳を直接消費者の皆様へ」との想いのもと、「黒姫高原」を牛乳の産地名としてブランディングしていくことを目指されてて、その代表商品がこののむヨーグルトなんやって🐄🥛💕
工場は「道の駅しなの」の中にあるそう。
スペック
黒姫高原産の生乳を低温殺菌し、低温でじっくり発酵。
生乳の割合は93%以上。
牛さんたちは非遺伝子組み換え&ポストハーベストフリーの飼料で育てられてて、ヨーグルトの甘み付けには北海道産の非遺伝子組み換えの砂糖大根から作ったビート糖を使用。
素材へのこだわりが徹底されてる😳✨
道の駅しなのさん、長野県農協直販さんのオンラインショップでお取り寄せ可能なんやけど、週一回、水曜日しか製造されてないからご注文は余裕を持って。
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開封
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アルミ蓋の接着が強すぎて開封失敗😭
カッターで失礼します💦
おぉぉーーー!
めちゃくちゃ分厚いドリップができてた!
注いでみると、期待通りの濃厚質感🤍
とろーーーっと太く流れ落ちて、大きな気泡の粒がいつまでも割れない粘り。
ほんのりコクのある香りがしておいしそう。
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頂きます🙏
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濃っ!!!!!
むたぁーーーーーーーーっと流れ込んできて、上唇にむにゅんと乗っかる🤍
口に入るとビート糖の甘みがじゅわっと広がって、その奥で発酵の酸味が旨味を引き出してて。
めちゃおいしい💕💕💕
濃厚すぎてスローモーションで流れてくるんやけど、早く飲みたくて吸ってしまう🤣
これは酸味が肝やなぁ。
ムタムタの質感やのに、後味が驚くほどにスッキリ✨
「あれ?飲んだっけ?」ってぐらいに跡形もなく消えてゆく。
そして寂しくなって何度もコップに注ぎ足してしまう。
沼!!!!
危険🙈
ホットにしたらさらに酸味が立って、甘酸っぱさが最高やった💓
そして一本は賞味期限ギリギリまで寝かせてみたら、さらに酸味が輝いてくれて、でも不思議とトゲがない柔らかさに満ち溢れてて、めちゃよかった💓
ぬまぁぁぁぁ🫠
🛒 道の駅しなの オンラインショップ
🛒 長野県農協直販 オンラインショップ
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無脂乳固形分 9.0%
乳脂肪分 3.3%
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栄養成分(100gあたり)
エネルギー 96kcal
たんぱく質 3.3g
脂質 3.4g
炭水化物 13.0g
食塩相当量 0.1g
カルシウム 120mg
※全量は900ml
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原材料名
生乳(長野県黒姫高原産)、ビート糖(北海道産)
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長野県農協直販オンラインショップ価格
2本セット 1,944円(税込)
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製造者
有限会社 黒姫高原牧場
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中身
かわいい🐄
ホエイがところどころ。
よく振ってから開封。
アルミ蓋の接着が強くて捲れず💦
これが改善されるともっといいなぁ。
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ロストヒューマンの塵
カップリング/ReS。・・・陣&章臣(千秋&奏汰)
参考ストーリー・・・Saga前編・後編
「三年A組守沢千秋! 止まりなさい!」
廊下を駆け抜ける力強い足音をかき消すかのように、遠く突き抜けるような甲高い静止が響き渡る。
おうおう、若人のエネルギーに負けない声量だねぇ。興味本位に保健室のドアを開け、顔を出すと、ちょうど仁王立ちしたあきやんがクソ真面目な早歩きで通り過ぎていくところだった。
「い、いや、これはその……! 緊急事態なんです! 一刻も早く向かわないと手遅れに、いや! もう既に手遅れではあるんだが!」
こっちはこっちで耳慣れた常連の声だった。常連になってもらっちゃ困るんだが、と一年の春先から苦言は呈してきたんだが、ついぞ三年の冬になっても改善することがなかった。思いのほか切羽詰まったような態度の守沢が、ゆっくりと速度を落としながらこちらを振り返る。俺のことには気付いていないのか、その正義感に溢れる琥珀色の瞳は、困ったように揺らめきながらも真っ直ぐにあきやんを捉えている。何故だか知らんが、赤地に白い星の模様が入った大きなバスタオルを牽制のように両手で広げ、じりじりと後退を試みているようだった。
危ねえなぁ、振り向くか立ち止まるか、せめてどっちかにしろよ。
クソ真面目さではあきやんに引けを取らない守沢は、煮え切らない態度で数秒あきやんと対峙した後、くうぅ、と悩ましげな悲鳴を上げ、ついにバスタオルをぶんぶん振って駆け出した。
「すっ、すまん! 今回限りは見逃してくれ! あいつのレスキューが終わり次第、戻ってきて反省文を書きます!」
「あっ! こら! 待ちなさ――」
あきやんが言い切る前に、守沢は走り去ってしまった。「奏汰ぁぁぁ!」と叫ぶ声が遠くから聞こえて、レスキュー、大きなバスタオル、既に手遅れ、の意味を知る。深海のやつ、またこんな時期に噴水に突っ込んでるのか。そりゃあ一大事だし、守沢が一秒でも早く向かいたい気持ちも分かる。ただでさえこの時期は風邪もインフルエンザも流行るのに、こじらせて肺炎とかになろうもんなら洒落にならん。俺らの仕事なんてのは、できるだけ少ない方がいい。こればかりは楽をしたがって言っているわけでは断じてない。
俺が守沢の行動に納得している間に、深々と息を吐く音が聞こえて顔を上げる。悩ましげに額を押さえつけながら、あきやんがこちらへ向かって歩いてくる。眉間に刻まれたしわはいつも通りといえばそうだが、俺から言わせりゃ、いつもより少し多めに回っております、といった風貌だった。
「全く……反省文は校則違反をした自覚と反省を示すために書くものであって、書くこと自体が違反の免罪符になるわけではないんですよ」
「アハハ。あいつアホ真面目だからなぁ」
苦々しいお小言に対して返事をすると、予想外の反応だったのか、紫色の瞳が大きく見開かれた。
話しかけられたんだと思った俺も、なんだただの独り言だったのか、と少しだけ恥ずかしくなる。
「陣……見ていたんですか」
照れ隠しに眼鏡のテンプルをなんどもいじって、あきやんは視線を反らした。
「あれが真面目なものですか。あの子が私の注意を���いて廊下を立ち止まったことなど数えるほどしかありませんよ」
「数えるほどはあるのかよ。ますますアホで真面目だな。てかあきやん、守沢のこと結構好きそうなのになぁ~何だぁ? もしかしてまだ根に持ってんの?」
「あなたじゃないんですからそんなことで態度を変えるようなことはありません!」
「えっ。心外だな~俺だってそんなことしないっての……」
「……まあ。印象的だったので、記憶が鮮明なのは事実ですけどね。あんな風に表立って野次を飛ばすような子ではなかったでしょう」
ぱちくり、と二度まばたきをする。
あきやんは俺の心を当然のように見透かして、呆れたように眉尻を下げた。
「何を意外そうにしてるんです。覚えているに決まっているでしょう。生徒の顔と名前が分からないようでは教員失格ですからね」
昔は目立たずとも大変真面目な生徒でしたよ。規則を破ったことなどない、地味ですが模範的な生徒でした。それに生徒会の発足にも一役買ってくれた子ですからね。蓮巳君が署名の件を嬉しそうに報告してくれたことも、昨日のことのように思い出せます。
意外や意外、守沢のことを昔から知っていたのは俺だけではなかったようだった。
守沢の過去を訳知り顔で語ったあきやんは、その直後にハァ~とくたびれたため息をよこした。
「それが今や、廊下を走り放題の問題児のようになってしまっているんですから。困るんですよ。走る理由は理解できますが、周囲の生徒に示しがつかない」
「ハハ。若人と違って、先生は大変だねぇ。規則違反を取り締まらなきゃいけない規則でがんじがらめだ」
「茶化すのはおやめなさい。あなたも教師の端くれでしょう」
「教師じゃなくて養護教諭だも~ん」
「ああ言えばこう言う……昔から変わりませんねあなたは」
「どうかね。変わっちまったもんの方が多いと思うけど? それも悪い方にな」
淡々と事実を言ったつもりが、あきやんはそうは受け取らなかったらしい。
急���黙るもんだから、まるで意地悪でも言って黙らせたみたいだ。居心地悪いな、どうしたもんか、と唇をモゴモゴさせていると、再びバタバタと足音が聞こえてきた。さっきよりも人数が多い。レスキューとやらは成功したのだろうか。しばらく二人分の靴音を聞いていると、廊下の向こうから下足で上履きに履き替えた二人組が姿を現した。一人はさっき守沢が持っていったデカいバスタオルにくるまれているが、くるん、と頭頂部から顔を出した独特の癖毛のおかげで、誰なのかはすぐに分かった。あきやんはまた一つため息をついて、怖そうな顔を作って腕を組んでみせた。けれどそれも長くは続かず、守沢が深海の肩を抱えて心配そうに歩いてくると、心なしか困ったように唇をへの字に曲げた。
「ほら、奏汰、ちゃんとこれで拭いて暖房のある部屋にいろ。着替えなら俺の体操着を貸してやるから」
「うう~……だめですか? もうあと『いっぷん』だけでいいですから……」
「駄目だ駄目だ! 噴水は駄目だ! 代わりにあとで銭湯の水風呂に入れてやるから、な? もう少しだけ我慢してくれないか」
「でも、おへやにいると『かんそう』が……っくしゅん」
「あ~ほらもう、くしゃみしてるじゃないか! だから冬の噴水は駄目だって何度も言うんだぞ! だが……うん、よし分かった。霧吹きを用意してくるから、五分だけ待ってくれ!」
「『きりふき』ですか? それってどういうものですか? 『ふんすい』のかわりになりますか?」
「ああ! 乾燥を防ぐには役立つはずだぞ! 確か手芸部の部室にあったはずだから、もう一っ走りして斎宮に頼み込めば五分で――」
守沢は深海の説得に夢中で、目の前のあきやんに直前まで気付かなかった。ふと顔を上げた瞬間の「あっ」という間抜けな声に、あきやんはものすごくあからさまにため息をついてみせた。
「……佐賀美先生。急患のようですよ」
「へ?」
「そ! そうなんです! 佐賀美先生! すみませんが奏汰をしばらく頼めますか」
「あぁ、そりゃ構わない、っつか……風邪っぴきの面倒は俺の仕事だけど……」
「守沢君」
「はい! あと五分だけお待ち頂けたら反省文を――」
「走るのはおやめなさいと何度言わせるんですか、全く。職員室の観葉植物の前に、霧吹きがありますから、そちらのほうが早く済みますよ。五分もかかりませんから、走らずお行きなさい」
守沢は驚いたように目を丸くしていた。っくしゅん。深海の間の抜けたくしゃみに、はっと我に返ったように肩を上下させる。
「あっ……ありがとうございます! お借りします!」
「声が大き……こら! だから走らずにお行きなさいと言って――」
守沢が駆け出した瞬間、ポケットから何かが落ちてカツンと固い廊下の上を弾んだ。
なんだなんだと目で追って、それが何かに気付いてハッとする。
「おい! 守沢!」
怒鳴るような声になって、隣にいたあきやんと深海が大袈裟に肩を震わせた。
大きくつんのめってからこちらを振り向いた守沢に、右手人差し指で落としたものを指し示す。守沢よりも先に、落ちたものが何だったのか、深海も気付いたようだった。ちあき。少しだけ焦ったような鼻声がバスタオルの隙間から漏れ出た。動き出そうとする深海をそっと制して、落とし物を拾いに行く。数秒して守沢も気付いたのか、顔面蒼白になってこっちに駆け寄ってきた。
「よっこいしょ……っと。うー、腰にくるな、年だなやっぱ……」
片手に拾い上げたソフトビニールのヒーローフィギュアは薄汚れていて、所々に傷がついていた。千切れてしまったのをテープで貼り合わせた形跡もある。かなりの年代物だ。幼少期からずっと大切に持ち歩いているのだろうか。膝に手をあてて上体を起こすと、引き返してきた守沢と目が合った。今となっては珍しいが、その目は初めて保健室で会った時のように、わずかばかり怯えて見えた。
「佐賀美先生」
「はいよ。よかったな、俺が落としたのに気が付いて」
「はい。……すみません。助かりました。ありがとうございました」
「あー……。お前さぁ、もうちっと気を付けろ。前ばっか見てると大事なもんを落っことすぞ」
フィギュアを守沢に手渡す。たまには教師らしく説教でも、というわけでもなかったんだが、それはあきやんの怒声よりも守沢の心に刺さってしまったようで、守沢は歯痒そうに眉尻を下げて目を閉じた。
「はは……すみません。以後気を付けます。ありがとうございます」
握りしめたフィギュアをそうっと大事そうにズボンのポケットにしまう。
けれど、それも束の間、ちらっとバスタオルにくるまった姿を一瞥すると、守沢はさっきよりは控えめという程度の駆け足で職員室へと向かっていった。俺は小さくため息をついた。さっきは茶化しちまったけど、今ではあきやんの気持ちがちょっとだけ分からなくもない。
「ありゃ、またやるな。ほんとさぁ、毎回拾ってやれるわけじゃないんだから。世のため人のためもほどほどにしといてくんないかな~」
「おや。流星レインボーの台詞とはとても思えませんね。ファンが聞いたら泣きますよ」
「おえ~やめてくれ~昔の栄光なんて虚しいだけだってのに……」
「……うふふ」
「ん? どうした? お前さんは早いとこ保健室に入ってくれると助かるんだがな」
「いいえ。あなたもヒーローだったって、ちあきにきいたのをおもいだして。『ほんとう』だったんだなぁって」
守沢のやつ、あることないこと吹き込んでないだろうな。
げげ、と口を歪めたいのをなんとか堪えて、深海を保健室に押し込む。
「ほれ。ベッドは全部空いてるから、好きなとこに寝転がって、布団被って待ってろ。お前さんのくしゃみが悪化したら、あとで守沢が泣くぞ」
「むぅ……それはこまりますね……ほんとうは『だんぼう』のきいた『おへや』はいやなんですけど……」
しぶしぶ、という感じの雰囲気を隠すこともなく、それでも最終的には大人しく保健室のドアをくぐった深海を見て、俺は正直感動を覚えていた。どいつもこいつも言うこと聞かない連中だなぁと思いつつ、深海だけは最後まで誰にもその自由を奪えないのだと思っていた。
――いや。それこそが俺の勘違いで、深海がようやく自由になったのがこの冬、ということなのかもしれない。真冬に噴水に入るのも、守沢を困らせたくない気持ちも、その自己矛盾にぶつぶつ文句を言うのも、今になってようやく――人生で初めて得たものなのかもしれない。
あいつが、他の何もかもを振り落としてまで助けたかったものが、今の深海の姿なのかもしれない。
「……? ぼくの『かお』に、なにかついてますか?」
澄んだ海の浅瀬のような瞳を真っ直ぐに向けて、深海は首を傾げた。
「いいや。なんにも。強いて言うなら、まだ濡れてんだよな~。ちゃんと拭いとけよ、髪」
「はあい……くすくす。『りゅうせいれいんぼぉ』の『ちゅうこく』ですから、ぼくもまもらないといけませんね」
ちあきにしかられてしまいます。
そう言い残して、深海は保健室の奥へと進んで行った。
ハァ~と何度目かのため息をついて、ゆっくりと音を立てずにドアを閉める。沈黙を保ち続けるあきやんに目を向けると、それに気付いてかあきやんもこちらに視線を合わせた。
「つか、なんだよあきやん。守沢の肩持つの? もう脱退済み、ってか、何年も前に卒業したヤツの話なんだからさ。どいつもこいつも……過去の幻想ばっか追っててもらっても困るよ」
「幻想と言い切るには、早計だと思いますけどね。私は」
りゅうせいれいんぼぉ。
独特の口調でそう告げた深海の、柔らかい笑みが頭をよぎる。
途端に胸のどこかがじくじくと鈍い痛みを放って、俺の呼吸は鈍くなる。
幻想だ。そんなものは。
お前が憧れたヒーローたちと違って、俺は誰のことも助けられなかった。大事なものは全部落とした。
だから。
「他人の落とし物について、貴方が語るのは。どうにも、腹が立ちますね」
だから、目の前の大切だった後輩が、こうして追いかけてきたことを、有難くも申し訳なく思う。
「ごめん」
白々しく聞こえたかもしれなかった。
それでもあきやんは、それ以上俺を責めることはしなかった。
「分かってるよ、あきやん」
俺が振り落としてきた全てのものも。
その中にお前が含まれてることも。
それなのに今度は同僚としてもう一度俺の前に現れてくれたことも。
「お前が全部、 拾っといてくれたことも」
俺が俺のせいで失くしたいくつもの欠片たちは、この春に始まった企画によって、ほんのわずかだけれどもこの世によみがえった。やっぱり、分不相応だと思う。ああいうステージや予算ってのは、こんな老いぼれじゃなく、未来のある若人に与えられるべきだ。今でもその考えは変わらない。だけど。
「……私は」
後悔がないって言ったら、それは、嘘になっちまうから。
「あの時、手遅れになる前に。走っていればよかったのかと」
遠く、廊下の向こうをぼんやりと見つめるあきやんの瞳には、規則を破ってばかりの真っ赤なヒーローが映っているのだろう。廊下を走るなと注意するあきやんの毅然とした態度に、その堅苦しい声色に、ごくごく個人的な苦悩が混じっているだなんて、誰が気付くだろう。
「いつも後悔していましたよ。もっと早くに渡せたのに、と」
俺くらいは――俺だからこそ、気付いてやらなきゃいけなかったのに。
「……どうせ受け取らなかったよ。俺のじゃない、って言ってさ」
ああ、本当の本当に、俺は世界一の大馬鹿者だった。
そんな大馬鹿に、いろんな連中がお節介を焼いてくれた。
空にかかる虹のような、一瞬の輝きための、奇跡みたいな一年だった。
お前が背負うことなんかなかったのにな。全部が全部、俺の身勝手のせいなのに、真面目で、面倒見がよくて、俺より俺のことを大事にしてる。俺の後悔の一部を、振りほどいて置き去りにした何もかもを、まだここにあるぞって突き付けてくる。俺が「ゴミだから」って丸めて後ろに捨てたものたちのことを、まるで流れ星が振りまいたきらめきみたいに言う。
それが果たしてそこまで輝かしいものなのかどうかは分からない。
だけど、捨て去ってしまっていいものでもない。
少なくとも俺にとって大事なものだったってことを思い起こさせる。
遅くても早くてもきっと届かなかった。
だから、言う。何度でも。
「まあ。こんなオッサンになってからでしか。駄目だったけどさ」
あれは虹のような輝きだったと。
「ありがとうな。ずっと持っててくれて」
晴れ間がのぞく、たったの一瞬を、辛抱強く待ち続けてくれて。
「あきやん」
呼ぶと、銀のフレームがちかちかと光って、その奥にある紫の瞳をほの白く輝かせた。
まだその目には、手遅れにならないようにとひた走るヒーローの背が見えているのだろうか。でもな、あきやん。あいつだっていろんなものを落とすんだぜ。今日みたいに。だから、見つけたやつが、拾って手渡してやんなきゃいけないんだよな。
「お前の落としたものは、誰かが拾ってくれたか」
そんな当たり前のことも今日まで気付かなくって、ごめんな。
「……さあ。どうでしょう。でもきっと、どこかにいるんでしょうね。私が気付いていないだけで」
そっか、と小さく息をつく。
そうだといい、そうに違いない、と俺は願う。
ヒーローなんて信じちゃいなかったあの頃の俺に、何もかも適当なまま「虹」を名乗らされていた当時の自分に、今だったら言えると思う。
拾ってやれ。
立ち止まらずに駆け抜けていく星々の塵を。
いつかそれがきらめく時を、お前だけは信じ続けてやれ、と。
遠くで守沢が、職員室に向かって直角におじぎをしている姿が見える。きっとすぐに走ってやってくるだろう。大事なものを守り抜くために。あきやんの注意なんて、きれいさっぱり忘れて。
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ブラック校則の記事を見るたびに思い出す、校則にまつわる自分の話。
ある文房具が、禁止されていた。命の問題が理由だったし、納得が言っていた。同じような理由で、マフラーも禁止されていたが、ネックウォーマーならよくない?と思っていた。
高校で、その文房具を使って、男の子が女の子を脅した。歪んだ好意。その男の子は、ある障害をもっていた。バックには、その障害を持つ親達がその子達が教育を受ける権利を主張する団体があった。女の子は、転校した。母は、おかしいと学校へ講義した。
母も、その女の子の母親も、過保護ねと言われたことがあった。何も知らないくせに。
色んな問題が、混在していて、ひとつひとつ、議論すべきだったと思う。ただ、脅されて、どんなに怖かっただろうか。自分が去ることしか解決策がないと分かった時の絶望感は、��り知れない。今、どうしているだろうか。幸せに暮らしていて欲しいと、心の底からそう思う。
…
中学校は、中高一貫校だった。制服は高校生と同じもの。中学生と、高校生の「女子」は、体の大きさ(身長)はあまり変わらないだろうが、形が違う。夏服の、開襟シャツは、中学生、特に一年生が着ると、襟裳が開放的すぎるデザインだった。シンプルに、だらしなく見えた。
中高一貫校になるタイミングで、制服が一新されたらしい。決定権は、重鎮のように居座っていた、初老の体育教員だったと聞いたことがある。おいおい、保健も教えてるだろうと。
中2、か中3かの時、襟の部分に外からは見えないパッチンとするタイプのボタンが付いた。それがなかったころは、みな、安全ピンで襟元の開き具合を調節していた。誰かの声が届いたのかな?
…
制服の、移行期間というのがあるじゃない?間服か、夏服か。間服か、冬服か。どちらでもいい期間。いや、人それぞれだろ、他人が指定するなと思っていた。
春から夏にかけての、移行期間、できるだけ夏服を着て行きたかった。なぜならば、昼間暑いからだ。でも、朝と夕方は寒い。だから、寒いと感じた時にジャージを羽織っていた。できることなら、ちょうどいいカーディガンなんてあったら良かったと思う。先生によっては、そのジャージを着ている姿を見たら、必ず注意をしてくる人もいた。注意されたら、脱いで、また着ていた。昼間に、間服を着て、汗をかくよりましだった。
…
高校生の時、身だしなみ検査?みたいな名前のものがあり、体育館に並んで、前髪・眉毛・スカートの長さなんかをチェックされるイベントがあった。まじ、イベント。
単語帳を見ている人、読書をしている人がちらほら。その他大勢は、ぺちゃくちゃ。私もその他大勢で、ぺちゃくちゃしながら、先生達がまわってくるのを見ていた。それがねー、注意する先生も、される生徒も楽しそうだった。
えー!これでもだめとー?!
と、大きな声で言いながら、嬉しそうに注意されている子と、こらこらと嬉しそうに注意している先生を、ずっと見ていた。喜劇。今、国会中継を見ている時と、なんだか似た気持ちで見ていた気がする。
私は、生まれながらの癖っ毛で、髪は茶色い方。と、言う証明書を中学入学時に書いたことがある。親にサインまでもらった。
高校生になる時に、縮毛矯正をして、念願のボブになった。それに対して、どの先生も何も言ってこなかったのは、なぜだろう。優しさ?癖っ毛って、憐れまれていたのかな。まぁ、自分も、さらさらボブに憧れていた身。なんともいえないが…。男子からの、低レベルないじりは、聞き流した。
縮毛矯正に対して、何か言われたことはないが、身だしなみ検査で、前髪と眉毛でいつもひっかかっていた。なーぜー。
目立つタイプでもないし、身だしなみの基準をちょこっと外れて先生と馴れ合いのコミュニケーションをとりたいとも思ってなかったし、前髪は眉にかかるくらいだったし、眉毛は眉毛ではなかろうって位置のものを抜いていたくらいだ。本当に、謎だった。
再検査、再再検査でも、落ちる。
ついには、放課後に、反省文を書かされて、部活に行けなくて、帰宅部勢の女の子達の放課後のおしゃべりにたびたび参加しながら、無感情で反省文を書き上げ、提出し、家に帰宅して、前髪を異常なほど短く切った。
次の日に、それを見せて、そうそうそれでいいんだと満足そうな顔をした後、あとは眉毛だなと言ってきた先生に、私の眉毛、どんだけ太かったんですか?こんなもんです。と言って、教室に帰った。清々しい1日だったな。
その前髪、仲のいい友人には好評だった。親は、驚いてたけど笑ってたし、帰りのバスに乗っていた他校の生徒に、見た?と言われたこともあったので、目立っていたことだろう。
…
とりたてて、異議を申し立てるほど、エネルギーは余ってなかった。いつも疲れてたし、そもそも毎日だるかった。そんな高校時代。
それに、とりたてて、異議を申し立てるほど、理不尽とも感じなかった。めんどくさいと思っていたけど。なぜか、容姿に対して、こだわってはいけないような気がしていたのは、これが、スクールカースト?私はたぶん、上の方ではなかったと思うな〜
いやでもね、一見、反抗心とそれを受け止めて制圧しているかのように見える、実際は愛情の確かめ合いのようなあのイベントに参加してると、本質はブラック校則ではなかったような気がするから、どうでもいいと、流していた自分が、自分らしく思えたりもする。
ただ、それだけの、お話でした。
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【フラゲレビュー】&ROSY(アンドロージー)2022年1月号《特別付録》uka(ウカ)電動毛穴クリーナー
&ROSY(アンドロージー)2022年1月号(2021年11月20日(土)発売予定)のふろくのみを出版社様のご厚意でお譲りいただきましたので、いち早く「ふろく.life」でフラゲレビューとしてご紹介します。
※発売前の見本品になりますので、発売後のものと違いがあるかもしれません。その点はご了承ください。
uka(ウカ)電動毛穴クリーナーはどんな付録?
ukaの人気エステティシャンと使い方を共同開発した「電動毛穴クリーナー」。メンズも使えるシックなモノトーン
【Point 1】2種のヘッドで徹底的に毛穴をお掃除!
【Point 2】ポーチインできるコンパクトサイズ。電池式のコードレスなので持ち運びも便利
【小鼻・唇下】細部クリーン用プラスチックヘッド
【頰・顎・眉間】広い面をケアするシリコーンヘッド
【基本の使い方】どちらのヘッドも肌に垂直に当てる。手首のスナップをきかせて、手首を傾けて肌から離す
[取説&注意]ヘッドは取り外して水洗い可能。単3形乾電池1本をIN!
宝島チャンネルより
サイズ
直径2.7×高さ15cm
プラスチックヘッド:直径1.4×高さ1cm
シリコーンヘッド:直径1.7cm
宝島チャンネルより
片手で持てる毛穴クリーナー。ペンライトくらいの重さです。
つくりはいたってシンプル。
キャップを開けて、ヘッドをお肌のお手入れしたい部分に当て、スイッチを入れるだけです。
単3乾電池が1個必要です。プラスとマイナスを間違えないように入れましょう。
ヘッド部分は、透明な硬いものと、シリコンの柔らかいものの2種類がついています。
お手入れする部分にあわせて使い分けるようです。
原産国は?素材は?
<製造国> 中国 MADE IN CHINA
<素材表記> ABS シリコーン
<使用電池>単3乾電池 1個
サイズはどれくらい?
極太マーカーと同じくらいの大きさでした。
手に持った感触も、マーカーと同じような感じです。
付録を使ってみた感想は?
デフォルトでセットされているのは、硬めのプラスチックのヘッド。
付録ライフの予告の説明を読むと、これは細かな箇所のお手入れ用だそうです。
はじめに単3乾電池をセットします。
スイッチ部分を下にスライドさせると電池ケースがあるのですが、とにかく硬くて、「本当に電池ケースがあるのかな?」と、不安になってしまうかもしれません。大丈夫です。少し強めに力を入れてスライドさせてみてください。
電池ケースに乾電池を写真のようにセット。
セットするときも、カバーをもとに戻す時も、なんなら後で触れますが、スイッチを入れるときも、とにかく、このスイッチのスライドが硬いのが、やや使いづらさを感じました。
乾電池を入れたら、スイッチを入れます。
スイッチを矢印の方向にスライドさせてください。電源が入り、ウイーーーンとモーターの振動音がしますが、本体は震えていません。
この硬めのヘッドで顔の毛穴が目立つ部分を探して吸引してみました。
かなりの吸引力で、吸引した個所にはもれなく丸く〇←こんな風に跡がついてしまいました。
今度は、シリコンヘッドに取り換えて、電源を入れて使ってみます。
(取り替え方は簡単でした。引っ張って取って、押し当ててくっつけるだけです。)
シリコンヘッドは柔らかく、吸盤のようにキューーーっと肌に吸い付きます。
吸い付くので、さらにヘッドを肌に押し当てて毛穴を引っ張ってみると、今度は丸く跡が付くだけでなく、その丸の中が一瞬鬱血して赤くなってしまいました。すごい吸引力です。
この付録、アリ?ナシ?
あり!
ただし、この手のアイテムを初めて使った筆者には、比較対象ができるほどの経験と知識がないので、実際のところ、何とも言えないのですが・・・。
エネルギー源が単3乾電池一本のみの割には、結構な吸引力だったのが驚きでした。
特にシリコンヘッドを使うと、まるでマンガのように皮膚が引っ張られていきます。これは実際には、お肌にとって良いのか悪いのか、イマイチわかりかねますが。
悲しいことに、アラフィフ筆者のお顔の皮膚についたヘッドの丸い跡は、しばらく残ってしまいましたので、お出かけ前などは避けて使ったほうが良いと思いました。
購入した付録つき雑誌/&ROSY(アンドロージー)2022年1月号
誌名 &ROSY(アンドロージー)2022年1月号
出版社 宝島社
発売日:2021年11月20日(土)
価格:1180円(税込)
宝島チャンネルより
買い忘れの心配なし!おうちに毎号届くお得な定期購読は「富士山マガジンサービス」で受付中(別サイトへ移動します)
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Everyone wants to be happy every day
ロリラブドールは、特に触ると信じられないほどリアルです。彼らは柔らかい肌と関節と高品質のかつらを持っています。それらは任意の数の位置に配置できます。シリコーンのダッチワイフ2019年12月、同じデイリースターであるラブは、人工知能ドールとデザインの目覚ましい進歩により、性的WM Doll等身大ドールが実際の人間と混同される近い将来を予測しようとしました。リストされた利点に加えて、セックス人形には他の多くの無制限の利点があります。テクノロジーの助けを借りて、これらのモデルは芸術的概念を既存の傑作に進化させました。ユニークなドールの利点は比類のないものであり、ユーザーに素晴らしい体験を提供します。
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優しいダッチワイフは最高級ですね
ゲイの男性が女性のロリラブドールを購入する理由はいくつかありますが、その中で最も一般的なのは外観の喜びです。ゲイの男性WM Doll等身大ドールは、現実的なシリコンのダッチワイフを楽しみのために購入するだけでなく、簡単に自慰行為をすることができます。ドールは無生物であり、多くの愛情と交際を提供します。 140cmの愛を買いたいなら、日常の寂しさを解消してくれます。彼らが提供する人間のタイプの接続は絶対に驚異的です。特に家から離れているときは、きっとあなたの人生に充実感をもたらすことができる人形会社が欲しいでしょう。
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ラブドールについて知識を了解しますよ。
世界の大人のセックス人形の70%は中国で製造されており、人形の1つです。脚が長く、腰が細く、胸が大きく、顔が繊細で、夢の男のように見えるので、実在の人物よりもさらに美しい。しかし、あなたはドール工場を知っていますか?見ていきます。リアルなロリラブドール基本的には派手なオナニーですが、ある程度は他人との性行為としてユーザーに感じられます。欠けているのは、ドール健康で愛情のあるセックスを示す協調的なエネルギーです。結局のところ、チームワークは夢の仕事です。
この記事は、不気味で不気味なストーリーを専門とするブログと呼ばれるWebサイトに公開されました。最高のWM Dollダッチワイフ小説の中で、等身大ドールは「私は本当に私の想像力を使った」と認めていますが、映画については、「東洋産業は私にそれが何をするかについて良い教育を与えました、そして映画はそれに基づいています」と付け加えます。私たちは人々の愛と感情を予測し、セックス人形がその感情に戻ると考えています。ドールが擬人化すればするほど、私たちをだましやすくなります。そして、すべてが美しく詳細であり、ロリラブドールの眉毛は彼らの体にあります。さらに、それらの重量も非常に現実的であり、通常は75〜115ポンドの範囲です。
あなたが幸せであればあるほど、あなたはより健康になります。本当の愛の人形が孤独、ストレス、不安を軽減するように、彼らは人々をより健康で幸せにします。したがって、あなたは間違いなく人形愛を購入する必要があります。健康は富ですが、人生WM Doll等身大ドールで孤独を感じ、誰も話したり世話をしたりできない場合、それはあなたの健康に深刻な影響を及ぼします。したがって、セックス人形を着飾ったり、話したり、抱きしめたりすることはすべて、ロリラブドールを幸せで健康にすることができる喜びです。
一人暮らしの軍人で、友達が少ない兵頭さんには、等身大のダミーが10人以上いて、その多くは戦闘服を着て戦争のファンタジーを演じています。シリコーンのダッチワイフこの映画は、恥ずかしがり屋で臆病なラースとビアンカ人形の間の純粋なラブストーリーを語っています。映画では、心臓の医者であるダグマーとガスの家族。 )、同僚や隣人は安全な環境を作り、セックス人形のガールフレンド(人形ビアンカ)を受け入れて耐え、愛とケアを与え、等身大ドールが人生を楽しむのを助け、自信を築きます。WM Dollロリラブドールはずっと君のそばにいます。これは素晴らしいですね。
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Solar Panel Eyebrows
友人にとても元気な奴がいる。熱血というか、常にマックスなテンションなのだ。小学生の頃から知り合いだが、いつもテンションが高いので、悲しい時はどうしているのだろうと思う。だが彼に会うととても元気をもらえるので、大切な友人だ。テンションの高い理由はひとつ。それは彼の眉毛がソーラーパネルになっているからだ。いつも太陽エネルギーを浴びてエネルギーを蓄積している。そのエネルギーを発するためにいつもテンションが高いのだ。なぜにそんな眉毛をしているのか本人もわからない。だがエネルギーが有り余っているからテンションを高くしていかないと眠れないのだそう。彼なりに大変なのだと思う。
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2018.May.31 . 赤い実 桃の実 召し上がれ . 明日はbeauty marché 11:00〜17:00 . ▲▷▼▲▷▼▲▷▼▲▷▼ . 【Beauty marché @ deli cafe MYCE】 . 6月1日 金曜日 11:00〜17:00 地下鉄谷町線都島駅前すぐの deli cafe MYCEにて ビューティマルシェ開催!! . これまで基本的に第3火曜日に開催していたビューティマルシェ🌺 いつも火曜日は 予定が合わなくて他の曜日にはやらないの?なんてお声もちらほらと頂いたり ありがたい事に 出店したい!とご希望くださる方も増えてきましたので 6月より 第3火曜日と ツキイチで金曜日にも開催する事になりました〜✨ . 今回のビューティをお届けするメンバーは。。。。 初登場がおふたり!!! . ✴︎アロマビューティーオーガナイザー 本田はる美さん✴︎ 100%オーガニックのアロマオイルと天然の成分のみで作る ・アロマチーク2000円(レシピ付き) . お肌に優しいことはもちろん 好きな色 好きなアロマの香りを選んで自分だけのオリジナルチークが作れます . 色を作る楽しみはカラーヒーリング アロマオイルで香りづけしてリラックスそして天然の好物からはエネルギーを頂けます . ✴︎Blanc Bleu ブラン ブルー✴︎ ・ヘッドマッサージ 10分 1000円 ・ヘッドカッサ 10分 500円 ・アロマフットトリートメント 10分 1000円 . 他にも . ✴︎スタイリストyoshiko✴︎ ・パーソナルカラー診断 20分 2000円 ・パーソナルカラー+骨格診断+黄金比眉毛レッスン 30分 2900円 ・パーソナルカラー 骨格 印象タイプ診断から似合うお洋服がわかるファッションカウンセリング+黄金比眉毛レッスン 50分 4800円 . ✴︎mifuku leather works✴︎ ・財布やスマホカバーなど革小物を作るワークショップ レーザー加工で針を通す穴をあけてあるレザーなので 簡単に自分で作れます . ✴︎整体mina✴︎ ・小顔整体 500円 ・頭痛マッサージ 500円 ・骨盤矯正 1000円 ・全身整体 2000円 . ✴︎handmade jewelry sui ✴︎ ・天然石ジュエリー販売とワークショップ . ✴︎pagure nail✴︎ ・ジェルネイル 5000円〜 ・ネイルケア 1000円(イベント価格) ・ワンポイントアート 1本500円 フットもご予約可能です👣 . ココロもカラダもビューティに✨ ワクワク ウキウキしにいらしてください もちろんランチやカフェも❤️ . お待ちしております . ご予約、ご質問は、ここにコメント頂くか 下記までお問合せください cafe MYCE 06-6180-5788 大阪市都島区都島本通り3-22-18 . #jewelry #14kgf #handmade #accessory #pierce #poem #sui #スイ #ジュエリー #オリジナルジュエリー #ゴールドフィルド #ハンドメイド #セミオーダーワークショップ #アクセサリー #ピアス #ネックレス #ブレスレット #オーダー #ストーン #天然石 #鉱物 #石 (MYCE CAFE)
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初日にして最終日
2020.08.23(日)晴れ
昨日飲んだ割には体が重くない。「ワインは3杯まで」と決めてまだそんなに日は経たないけれど、新たに情報が更新された。
「※ただし、それより前にビールやサワー、ハイボールの類を飲んでも可とする」
さらに、「ただし」、ちゃんとご飯は食べることを前提とする、だと思うけど。
今日はフジロックの最終日。序盤にエレカシ、中盤にYMO、後半にoasisと電気の新曲が流れる。西洋の眉毛と東洋の眉毛、夢のラインナップ。観たい、けど半沢直樹と時間帯が丸かぶりなのだった。半沢は見逃し配信がないけど、フジロックは明日再放送があるから、明日のわたしにかけて半沢直樹を観た。
初めてのフジロック。去年両国国技館でインドアフェスに行ったのと、これで計2回目のフェス。いろんな憂さをエネルギーにした民衆が、コメントになってステージに流れていく。
職場にフェス好きが何人もいるけど、よく暑い中わざわざお金を払い、早起きして遠出してまで、さらに熱いところに行く、ただ聴き齧った音楽に触れるためだけに、マジかよ! 今まであまり理解できなかったけど、エアコンが効いている部屋で、チューハイ開けながら横揺れして感じるフェス、良い。知ってるんだよ、知ってたんだよフェスが楽しいってこと。だってフェスティバルだもの。人混みと早起きが嫌いなだけなのさ。
フェスのいいところは音だけじゃなくて人となりも一度に分かることだと思う。音楽番組でも分かるけど、尺が足りなすぎる。エレカシ、ミヤジは噂通り良い具合にやかましくてよく動く。ハイロウズは「日曜日の使者」を歌ってくれた。格好いいぜ、ヒロト。わたしも明日から逃げたい、どこか遠くまで行きたいよ。
そういえば、初めてエルレガーデンを観た。一回も聴いたことないんだけど、同世代で「好き」と公言する人が多い。経験値のないなかで、好きな人の語りだけで推測するに、BUMPみたいだけどBUMPより暗くないイメージ(いろんなひとから怒られる)。エルレになった瞬間、その前から「まだ?」「もう出た?」と流れが追いきれなかったコメンターが熱で溶けて間欠泉になった。
ライブ映像を見ると、たぶんそのコメンターを実写化したひとたちが、他のお客さんの上に飛び乗ったりしている。楽しそうでなによりだけど、知らない人に急に後ろからのし掛かられる恐怖があるなら、やっぱりフェスは行かなくていいかな。
カラオケで”Don’t Look Back In Anger”のライブ映像観たことあるけど、あそこでも肩車してるひとが何人かいたから、フェスってそんなもんなのかもしれない。けどねえ、肩車は流石に知り合い同士だろうから、知らないひとにのし掛かるのはバンドによるんだろう。モッシュというのかしら、あれが? モッシュ楽しいよって聞いたことあるけど、一生理解できない。
明日はプラスチックごみの日、なのにそのごみを包む袋がなくって、わざわざ100均に行って砥石と玄関用のほうきを買った。ファッキン、レジ袋有料化。まあ二つとも後々買わなきゃいけなかったからいいんだけどさあ。
絶対に削減するところ間違ってるよね。レジ袋削減する前に、コンビニとかスーパーで捨てられちゃう食べ物を減らすのを考えた方がいいと思うんだけど。品薄だというのに、たがだかレタスひと玉がとんでもない値段になってるから、欲しいのに買わないじゃない? 品薄なのに余るじゃない? せっかくながーーーい雨の期間を生き延びて、農家のひとがじめじめするなか育てたやつが、結局捨てられちゃう。泣いちゃうよ。
近所のダイソーから、ごみ袋の棚の小さいやつだけ全部消えてた。考えることはみんな一緒だね、ファック。
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【S/D】アナ雪パロまとめ
アナ雪2の制作ドキュメンタリー面白かった。みんなで一つのものを作るって素敵だなって素直に感動しちゃった。一人でコツコツ作り上げるのも素敵だけどさ、それとはまた違うよね。
アナ雪は大好き。2でアナが超進化を遂げたのでもっと好きになった。また兄弟パロ書きたいな。
3話あるけど全部で12000字くらいなのでまとめました。
<エルサのサプライズパロ>
弟の誕生日を祝うため、城や城下にまで大がかりなサプライズを仕込んだディーンは、過労で熱を出してしまった。キャスたちの協力もあって無事にサプライズは成功したものの、そのあとで何十年ぶりくらいに寝込むことになってしまった。
(これくらいで熱を出すなんて、おれも年をとったもんだな。そりゃ、ここのとこ狩りもあって、ろくに寝てなかったけど……。昔はそんなこと、ざらだったのに。こんなていたらくじゃ、草葉の陰から親父が泣くな)
「ディーン」 スープ皿を銀の盆に乗せて、弟のサムが寝室にやってきた。「寝てた? ちょっとでも食べれそう?」
「食べるよ。腹ぺこだ」
まだ熱のせいで頭はもうろうとしていて、空腹を感じるところまで回復してないことは自覚していたが、弟が持ってきた食料を拒否するなんて選択肢は、ディーンの中にないのだ。
サムは盆をおいて、ディーンが体を起こすのを手伝ってやった。額に乗せていた手ぬぐいを水盆に戻し、飾り枕を背中に当ててやって、自分の上着を脱いで兄の肩にかけてやる。
兄がスープをすするのを数分見つめてから、サムは切り出した。
「ディーン、今日はありがとう」
「うん」
「兄貴に祝ってもらう最初の誕生日に、こうやって世話が出来て、本当にうれしいよ(※何かあって兄弟は引き離されて大人になり、愛の力で再びくっつきました)」
「おまえそれ、いやみかよ。悪かったな面倒かけて」
「ちがうよ」 サムは少しびっくりしたように目を広げて、それから優しく微笑んだ。「本当にうれしいんだ。まあ、サプライズのほうは、あんたの頭を疑ったけど。ワーウルフ狩りで討伐隊の指揮もしてたってのに、よくあんなことやる時間あったな? 馬鹿だよ、ほんと。ルーガルーに噛まれたって、雪山で遭難したときだって、けろっとしてるあんたが、熱を出すなんて……」
「うーん」 ディーンは唸った。弟の誕生日を完璧に祝ってやりたかったのに、自分の体調のせいでぐだぐだになったあげく、こうやって真っ向から当の弟に苦言をされると堪えるのである。
「でも、そのおかげかな。こうやって二人きりでいられる」
「看病なんてお前がしなくていいんだぞ」
気難し気に眉を寄せてそっぽを向きたがるディーンの肩に手をおき、ずれてしまった上着をかけ直してやって、サムはまた優しく微笑んだ。「ずっと昔、僕らがまだ一緒にいたとき、あんたは熱を出した僕に一晩中つきそって、手を握って励ましてくれた」
そんなことを言いながらサムが手を握ってきたので、しかもディーンの利き手を両手で握ってきたので、ディーンは急に落ち着かなくなったが、すぐにその思い出の中に入り込んだ。「ああ……おまえはよく熱を出す子だった。おかげで冬は湯たんぽいらずだったな」
「一緒に眠ると怒られた。兄貴に病気をうつしてもいいのかって、親父に叱られたよ」
「おれは一度もおまえから病気をもらったことなんて」
「ああ、あんた病気知らずだった。王太子の鏡だよな、その点は」
「その点はって」
「僕はその点、邪悪な弟王子だったんだ。あんたに熱がうつればいいって思ってた。そうしたら、明日になっても、一緒のベッドに入っていられる。今度は僕があんたの手を握ってやって、大丈夫だよ、ディーン、明日になれば、外で遊べるようになるさって、励ましてやるんだって思ってたんだ」
「……そりゃ――健気だ」
「本当?」
「うん……」
「こうしてまた一緒にいられて、すごく幸せなんだ」
「サミー」
(キスしていい?) サムは兄の唇を見つめながら、心のうちで問いかけた。息を押し殺しながら近づいて、上気した頬に自分の唇の端をくっつける。まだふたりが幼いころ、親愛を込めてよくそうしていたように。
ディーンはくすぐったそうに笑って顔をそむけた。「なんだよ、ほんとにうつるぞ。おまえまで熱出されたらキャスが倒れる」
「もう僕は子供じゃない」 サムは握った手の平を親指で撫でながら言った。「だからそう簡単に病気はうつらないよ。そもそも兄貴の熱は病気じゃなくて過労と不摂生が原因だからね」
「悪かったな」
「僕のために無理してくれたんだろ。いいんだ、これからは僕がそばで見張ってるから」
「おー」
目を閉じたディーンの顔をサムは見つめ続ける。
やっと手に入った幸福だ、ぜったいに誰にも壊させない。兄が眠りについたのを確認すると、握った指先にそっとキスを落とす。彼がこの国に身を捧げるなら、自分はその彼こそに忠誠と愛を捧げよう。死がふたりを分かつまで。
<パイとエールと>
公明正大な王と名高いサミュエル・ウィンチェスターが理不尽なことで家臣を叱りつけている。
若い王の右腕と名高いボビー・シンガー将軍は、習慣であり唯一の楽しみである愛馬との和やかな朝駆けのさなか、追いかけてきた部下たちにそう泣きつかれ、白い息で口ひげを凍らせながら城に戻るはめになった。
王は謁見の控えの間をうろうろと歩き回りながら、臣下たちの心身を凍り付かせていた。
「出来ないってのはどういうことだ!」 堂々たる長身から雷のような叱責が落ちる。八角形の間には二人の近衛兵と四人の上級家臣がおり、みんなひとまとまりになって青ざめた顔で下を向いている。
「これだけの者がいて、私の期待通りの働きをするものが一人もいない! なぜだ! 誰か答えろ!」
「おい……どうした」 ボビーは自分の馬にするように、両腕を垂らして相手を警戒させないよう王に近づいた。「陛下、何をイラついてる。今日は兄上の誕生日だろ」
サムは切れ長の目をまんまるに見開いて、「そうだよ!」と叫んだ。「今日はディーンの誕生日だ! ディーンが天界に行っちゃってから初めての誕生日で、初めて王国に戻る日だっていうのに、こいつらは僕の言ったことを何一つやってない!」
手に持っていた分厚い書冊を机に叩きつけた。ぱらぱらと何枚かの羊皮紙が床に落ちて、その何枚かに女性の肖像が描かれているのをボビーは見た。頬の中で舌打ちして、ボビーは、今朝、この不機嫌な王に見合い話を持ち掛けた無能者を罵った。
まだ手に持っていた冊束を乱暴に床に放り投げて、すでに凍り付いた家臣たちをさらに怯えさせ、サムは天井まである細い窓の前に立った。
ひし形の桟にオレンジ色のガラスが組み込まれている。曇りの日でも太陽のぬくもりを感じられる造りだ。サムがそこに立つ前には、兄のディーンが同じように窓の前に立った。金髪に黄金の冠をかぶったディーン・ウィンチェスターがオレンジの光を浴びて立つさまは、彼を幼少期から知る……つまり彼が見た目や地位ほどに華美な気性ではないと知るボビーにとっても神々しく見えたものだった。
ディーンがその右腕と名高かったカスティエルと共に天界に上がってしまってからというもの、思い出の中の彼の姿はますます神々しくイメージされていく。おそらくはこの控えの間にいる連中すべてがそうだろう。
「兄が戻ってくるのに、城にパイ焼き職人が二人しかいない」
「ですが、それで町のパン焼き職人を転職させて城に召し上げるというのは無理です……」 家政長が勇気を振り絞った。しかしその勇気も、サムのきつい眼差し一つで消えた。
「全ての近衛兵の制服を黒に染めろといったのになぜやらない!」
二人の近衛兵は顔を見合わせたが、すぐに踵をそろえて姿勢を正した。何も言わないのは賢いといえなくもない。
「何で黒にする必要がある?」
ボビーの問いにサムは食い気味に答えた。「ディーンが好きだからだよ! ディーンは黒が好きだ、よく似合ってる」
「ディーンはベージュだって好きだろ。ブラウンもブルーも、赤も黄色も好きだ。やつは色になんて興味ない」
「それに注文したはずのエール! 夏には醸造所に話を通していたはずなのになぜ届いていない!」
項垂れる家政長の代わりに、隣に立つ財務長が答えた。「あー、陛下。あの銘柄は虫害にやられて今年の出荷は無理ということで、代わりの銘柄を仕入れてありますが……」
「その話は聞いた! 私はこう言ったはずだ、ディーンは代わりの銘柄は好きじゃない。今年出荷分がないなら去年、一昨年、一昨々年に出したのをかき集めて城の酒蔵を一杯にしろと!」
「そんな、あれは人気の銘柄で国中を探してもそれほどの数はありません……」
「探したのか?」 サムは、背は自分の胸ほどもない、老年の財務長の前に覆いかぶさるように立ち、彼の額に指を突き付けた。「国中を、探したのか?」
財務長の勇気もこれで消えたに違いなかった。
ボビーは息を吐いた。
「みんな出て行ってくれ。申し訳ない。陛下にお話しがある。二人だけで。そう。謁見の儀の時間には間に合わせる。ありがとう。さっさと行って。ありがとう」 促されるや、そそくさと逃げるように控えの間から去っていった六人を丁寧に見送り、ボビーは後ろ手に扉の錠を下ろした。
「どうなってる」 ボビーの怖い声にもサムはたじろがなかった。気ぜわしそうに執務机の周りを歩き回る足を止めない。
「最悪だ。完璧にしたかったのに!」 床に落ちた肖像画をぐちゃぐちゃにしながら気性の荒い狼みたいな眼つきをしている。「ディーンの誕生日を完璧に祝ってやりたかったんだ! 四年前、僕らがまた家族になれたあとに、ディーンが僕にしてくれたみたいに!」
「四年前? ああ、城じゅうに糸を張り巡らせて兵士の仕事の邪魔をしまくってくれたあれか……」 ボビーは口ひげを撫でて懐かしい過去を思い返した。「しかしあの時はディーンが熱を出して……結局は数日寝込むことになっただろう」
「完璧な誕生日だった。僕のために体調を崩してまで計画してくれたこと、その後の、一緒にいられた数日間も」
「あのな……」
「いろいろあって、あの後にゆっくりと記念日を祝えたことはなかった。ようやく国が落ち着いたと思ったら、ディーンは天界に行っちゃった。いいんだ、それは、ディーンが決めたことだし、僕と兄貴で世界の均衡が保てるなら僕だって喜んで地上の王様をやるさ。滅多に会えなくなっても仕方ない。天界の傲慢な天使どもが寛大にも一年に一日だけならディーンが地上に降りるのを許してくれた。それが今日だ! 今日が終われば次は一年後。その次はまた一年後だ!」
「わかっていたことだぞ」 ボビーはいった。「べったり双子みたいだったお前たちが、それでも考えた末に決めたことだ。ディーンが天界にいなければ、天使たちは恩寵を失い、天使が恩寵を失えば、人は死後の行き場を失う」
「これほど辛いとは思わなかった」
サムは椅子に座って長い足を投げ出し、希望を失ったかのように俯いた。
「なあ、サム。今日は貴重な一日だよな。どうするつもりだった。一年ぶりに再会して、近衛兵の制服を一新した報告をしたり、一晩じゃ食べきれないほどのパイの試食をさせたり、飲みきれない酒を詰め込んだ蔵を見せて自慢する気だったのか?」
「いや、それだけじゃない。ワーウルフ狩りの出征がなかったら、城前広場を修繕して僕とディーンの銅像を建てさせるつもりだった」
「わかった。そこまで馬鹿だとは思わなかった」 俯いたサムの肩に手をあて、ボビーはいった。「本当に馬鹿だな。サム、本当にディーンがそんなもの、望んでると思うのか?」
「ディーンには欲しいものなんてないんだ」 サムは不貞腐れたように視線を外したままいった。「だからディーンはディーンなんだ。天界に行っちゃうほどにね。それだから僕は、僕が考えられる限り全てのことをしてディーンを喜ばせてあげなきゃならない。ディーンが自分でも知らない喜びを見つけてあげたいんだよ」
「ディーンは自分の喜びを知ってる。サム、お前といることだ。ただそれだけだ」
サムの迷子のような目がボビーを見上げた。王になって一年、立派に執務をこなしている姿からは、誰もこの男の甘えたな部分を想像できないだろう。
もっとも、王がそんな一面を見せるのは兄と、育ての親ともいえるボビーにだけだ。
「……それと、エール」
「ああ、焼き立てのパイもな」 ボビーは笑う。「職人が二人もいればじゅうぶんだ」
サムはスンと鼻をすすって、ボビーの腕をタップして立ち上がる。
「舞踏会の用意は?」
「すんでるよ。ああ……サム、中止にするわけにはいかないぞ。もう客も揃ってるし、天界のほうにもやると伝えてある」
「わかってる。頼みがあるんだ……」
ディーンがどうやって地上に戻ってくるか、サムは一年間毎日想像していた。空から天使のはしごがかかって、白い長衣をかぶったディーンがおつきの者たちを従えてしずしずと降りてくるとか。水平線の向こうからペガサスに乗って現れるとか。サムを驚かせるために、謁見の儀で拝謁する客に紛れ込んでくるかもしれない。
そのどれもがあまりに陳腐な空想だったと、サムは反省した。
謁見の儀を終えると、ディーンは何の変哲もない、中級貴族みたいな恰好で、控えの間に立っていた。
ひし形に桟が組まれた、長い半円の窓の前で。
「ディーン」
サムの声に振り向くと、ディーンは照れ臭そうな顔をして笑った。「サム」
二人で磁石みたいに駆け寄って、抱き合った。
ディーンの誕生日を祝う舞踏会は大盛況した。近隣諸国の王侯貴族までが出席して、人と人ならざる者の世の均衡を保つ兄弟を称え、その犠牲に敬意を表した。ディーンと彼に随行したカスティエルは、誘いのあった女性全員とダンスを踊った。そしてディーンは、しかるべき時間みんなの祝福にこたえたあと、こっそりとボビーに渡された原稿を読み上げ――それはとても礼儀ただしく気持ちの良い短いスピーチだった――大広間を辞した。
「どこに行くんだ?」 一緒に舞踏会から抜け出したサムに手を引かれて、ディーンは地下に向かっていた。「なあ、王様がいなくていいのかよ。まだ舞踏会は続いてるんだぜ」
「僕がいなくてもみんな楽しんでる。今夜は一晩中、ディーンの誕生日を祝っててもらおう」
「本人がいない場所でか?」
「ああ。本人はここ」
サムは酒蔵の扉を開いてディーンを招いた。「ディーン、来てくれ」
いくつかある酒蔵のうち、一番小さな蔵だった。天井は低く、扉も小さい。サムの脇をくぐるように中に入ると、まるで秘密の洞窟に迷い込んだように感じた。
「ここ、こんなだったっけか」 踏み慣らされた土床の上に、毛皮のラグが敷かれている。大広間のシャンデリアを切り取ってきたみたいに重々しい、燭台に灯されたろうそくの明かり。壁づたいに整列された熟成樽の上には、瓶に詰められたエール、エール、エール。
「パイもある」 どこに隠してあったのか、扉を閉めたサムが両手に大きなレモンパイを持ってディーンを見つめている。
ちょっと決まり悪そうな、それでも自分のやったことを認めて、褒めてくれるのを期待しているような、誇らしげな瞳で。
「誕生日おめでとう、ディーン」
二人きりで過ごしたかったんだ。そういわれて、ディーンは弟の手からパイを奪い取った。
パイは危うい均衡で樽の上に置かれて、二人はラグの��に倒れ込んだ。
<永遠>
誰がなんというおうと、おれたちが兄弟の一線を超えたことはない。
天使たちはおれの純潔を疑ってかかった。天界に昇る前には慌ただしく浄化の儀式をさせられた。”身持ちの固さ”について苦言をたれたアホ天使もいたほどだ。おれはその無礼に、女にモテモテだった自分を天使たちが勘違いするのも無理はないと思うことにした。
ああ、若く逞しい国王のおれと、いちゃつきたがる女は山ほどいた。でもおれは国王だ。心のどこかでは、弟に王位を譲るまでのつなぎの王だという思いもあった。だからこそ、うっかり子供でも出来たら大変だと、万全の危機管理をしていた。
つまりだ、おれはまだヴァージンだ。浄化の儀式は必要なかった。
女とも寝てないし、男とも寝てない。弟とは論外だ。
いつか、サムに王位を譲り、おれが王でないただの男になったら、女の温かな体内で果ててみたいと、そう思っていた。
でもたぶん、それは実現しない。なんというか、まあ……。
天界に行ってから、天使たちがおれの純潔について疑問視した原因が、女じゃないことに気がついた。そこまでくればおれだって、認めないわけにはいかない。
クソったれ天使たちの疑いも、あながち的外れじゃあないってこと。
おれと弟が一線を超えたことはないが、お互いに超えたいと思っていることはどっちも知っている。
ということは、いずれ超えるってことだ。それがどうしようもない自然の流れってやつだ。
どうしてそんなことになったのかというと、つまりおれたち兄弟、血のつながった正真正銘の王家の血統である二人がおたがいに意識しあうようになったのはなぜかということだが、たぶんそれは、おれのせいだ。おれの力だ。
おれは小さい頃から不思議な力があった。
それはサムも同じだけど、サムの力はウィンチェスター家から代々受け継いだもので、おれのほうはちょっと系統が違った。今では、それが天使の恩寵だとわかっているが、当時はだれもそんなこと、想像もしなかった。それでも不思議な力には寛容な国柄だから、おれたち兄弟は一緒に仲良くすくすくと育った。ところがある事件が起きて、おれは自分の力でサムを傷つけてしまった。それ以来、両親はおれの力を真剣に考えるようになり、おれたち兄弟は引き離された。
おれが十一歳のとき、もう同じ部屋で寝ることは許されていなかったが、夜中にサムがこっそりとおれの寝室に忍び込み、ベッドに入ってきたことがあった。
「怖い夢を見た」という弟を追い払うなんてできるはずがなかった。お化けを怖がるサムのために、天蓋のカーテンを下ろし、四方に枕でバリケードをつくって、ベッドの真ん中でふたり丸まって眠った。
翌朝、おれは自分が精通したのを知った。天蓋ごしにやわらかくなった朝日がベッドに差し込み、シーツにくるまっていたおれたちは発熱したみたいに熱かった。下半身の違和感に手をやって、濡れた感触に理解が追い付いたとき、サムが目覚めた。汚れた指を見つめながら茫然とするおれを見て、サムはゆっくりとおれの手を取り、指についた液体を舐めて、それから、おれの唇の横にキスをした。
おれはサムを押しのけて、浴室に飛び込んだ。しばらくすると、侍女がおれを迎えに来て、両親のことろまで連れて行った。そこでおれは、これからは城の離れにある塔で、サムとは別の教育を受けさせると言い渡された。大事にはならなかったとはいえ、サムを傷つけた力には恐怖があったから、おれはおとなしくその決定に従った。結果として、サムがキスをした朝が、おれたちが子ども時代を一緒に過ごした最後の日になってしまった。
おれの変な力がなかったら、あのままずっと一緒に育つことができただろうし、そうならば、あの朝の続きに、納得できる落とし前をつけることもできただろう。おれはなぜサムがキスをしてきたのか、その後何年にわたってもんもんと考える羽目になった。サムによれば、彼もまた、どうしてあのタイミングでキスしてしまったのか、なぜすぐにおれの後を追わなかったのかと後悔していたらしい(追いかけて何をするつもりだったんだろう)。なんにせよ、お互いに言い訳できない状況で、大きなわだかまりを抱えたまま十年間も背中合わせに育ってしまったんだ。
再会は、おれの即位式だった。両親の葬儀ですら、顔を合わせていなかった。
喜びと、なつかしさ、罪悪感に羞恥心、後悔。それを大きく凌駕する、愛情。
弟は大きくなっていた。キャスに頼んで密偵まがいのことをさせ、身辺は把握していたけれど。王大弟の正装に身を包んだサムは、話で聞いたり、遠目にみたり、市井に出回っている写し絵よりもよっぽど立派だった。
意識するなって言うほうが無理だろ。
ところでおれは、もう人じゃない。
一日に何度も食べなくても、排泄をしなくても、死なない体になった。天使いわく、おれは”顕在化された恩寵”だそうだ。恩寵っていうのは天使の持ってるスーパーパワーのことをいう。つまりおれはスーパーパワーの源で、天界の屋台骨ってこと。
そんな存在になっちまったから、もう必要のない穴ってのが体には残っているんだが、おれの天才的な弟ならその使い方を知っていると思っていた。
そして真実はその通り。弟はじつに使い方がうまい。
「純潔じゃなくなったら、天界には戻れない?」 一年前から存在を忘れられたおれの尻の穴にでかいペニスを突っ込んだサムが尋ねた。
うつ伏せになった胸は狼毛のラグのおかげで温かいが、腰を掴むサムの手のひらのほうが熱い。ラグの下に感じる土床の硬さより、背中にのしかかっているサムの腹のほうが硬い。
ついに弟を受け入れられたという喜びが、おれをしびれさせた。思考を、全身を。顕在化されたなんちゃらになったとしても、おれには肉体がある。天使たちはおれにはもう欲望がないといった。そんなのはウソだ。げんに今、おれの欲望は毛皮を湿らせ、サムの手に包まれるのを期待して震えている。
「サム……あ、ア」 しゃっくりをしたみたいに、意思を介さず肛門が収縮する。奥までサムが入っていることを実感して、ますます震えが走った。「サム、そのまま……じっとしてろ、おれが動くから……」
「冗談だろ?」 押さえた腰をぐっと上に持ち上げながら、サムはいった。「どうやって動くんだよ。力、入らないくせに」
その通りだ。サムに上から押さえつけられたとたん、おれの自由なはずの四肢は、突如として意思を放棄したみたいに動かなくなった。
「そのまま感じてて……」 生意気な言葉を放ちながら、サムはゆっくりと動き始めた。おれの喉からは情けない声が漏れた。覚えているかぎり、ふざけて登った城壁から落ちて腕を骨折したとき以来、出したことのない声。「はああ」とか「いひい」とか、そういう、とにかく情けない声だ。
「かわいいよ。かわいい、ディーン」
「はああ……」
「あんたの純潔を汚してるんだよ、ディーン……。僕に、もっと……汚されて……」 サムの汗がおれの耳に垂れた。「もう天界には戻れないくらい」
まあおれは、かねがね自分の境遇には満足だ。天界にエネルギー源として留め置かれている身としても、そうすることを選んだのは自分自身だし、結局、やらなきゃ天界が滅んでしまう。天国も天使もいない世界で生きる準備は、国民たちにもだれにも出来ていない。
せっかくうまくいっていたおれとサムの関係が、期待通りにならないことは承知の上だった。おれたちは王族だ。自分たちの欲望よりも優先すべきことがある。おれは天界で腐った天使どもと、サムは地上でクソったれな貴族どもと、ともに世界を守れたらそれでいい。そう思っていた。サムも、そう思っているはずだった。
一年に一日だけ、地上に戻る許可を与えられて、おれが選んだのは自分の誕生日だった。
ほんとはサムの誕生日のほうがよかった。だけどおれの誕生日のほうが早く訪れるから。
サムに会えない日々は辛かった。想像した以上に永かった。
下腹をサムの手に包まれて、後ろから揺さぶられながら、おれはふと気配を感じて視線を上げた。酒蔵の奥に、ほの白く発光したキャス――今は天使のカスティエルが佇んでいた。
(冗談だろ、キャス。消えてくれ!)
天使にだけ伝わる声で追い払うが、やつはいつもの表情のみえない顔でおれをじっと見つめたまま動かない。
(取り込み中なの見てわかるだろ!?)
(君はここには残れない) キャスがいった。(たとえ弟の精をその身に受けても。君はもはや人ではないのだ)
(そんなことはわかってる) おれがいうと、キャスはやっと表情を変えて、いぶかしげに眉をひそめた。(君の弟はわかっていない)
(いいや、わかってる……)
「ディーン、こっち向いて」 キスをねだる弟に応えて体をひねる。絶頂に向かって動き始めたサムに合わせて姿勢を戻したときには、もう天使は消えていた。
わざわざ何をいいに来たんだか。あいつのことだから、もしかして本当に、サムのもらした言葉が実現不可能なものだと、忠告しに来たのかもしれない。
天使どもときたら、そろいもそろって愚直で融通のきかない、大きな子どもみたいなやつらだ。
きっと今回のことも、天界に戻れば非難されるだろう。キャスはそれを心配したのかもしれない。
お互いに情けない声を出して、おれはサムの手の中に、サムはおれの中に放ったあと、おれたちは正面から抱き合って毛皮の上に崩れ落ちた。
汗だくの額に張り付いた、弟の長い髪を耳の後ろにかきあげてやると、うるんだ緑の目と目が合った。
「離れたくないよ、ディーン」
「おれもだ」
サムはくしゃっと笑った。「国王のくせに、弱音を吐くなって言われるかと思った」
おれはまた、サムの柔らかな髪をすいてやった。
おれがまだ人だったころ、おれの口から出るのは皮肉や冗談、強がりやからかいの言葉ばかりだった。だれもがおれは多弁な王だと思っていた。自分でもそうだった。
でも今や、そうじゃなくなった。
おれは本来、無口な男だったんだな。
見つめていると、弟の唇が落ちてきた。おれは目を閉じて、息を吸い込んだ。このキスが永遠に続けばいいのにと思う。
願っても意味はないと知っているからな。
「驚いたよ」 天界へ帰るすがら(地上からは一瞬で消えたように見えただろうが、階段を上っていくんだ。疲れはしないけどがっかりだ)、キャスがいった。「きみたちは……意外とあっさり別れた。もっと揉めるかと思っていた」
「揉めるってなんだよ」
「ずいぶんと離れがたそうだったから」
「ふつうは他人のセックスをのぞき見したこと、隠しておくもんなんだぜ」
「のぞき見などしていない」 キャスは大真面目にいった。「のぞき見ではない。私は隠れてなどいなかった」
おれは天界への階段から転がり落ちそうになった。「おま……キャス……じゃあ、おまえの姿、サムには……」
「見ていただろうな。君とキスしているときに目があった」
「――あいつそんなこと一言も」
「今朝、私には警告してきた。次は翼を折ってやると。君の手の大きさじゃムリだと言ってやったが」
おれはため息を吐いた。
「次があると思っているのだな」
「もう黙れよ」
「一年に一度の逢瀬を、続けるつもりなのか。君はもう年をとらず、彼は地上の王として妻をめとり、老いていくというのに」
「なあ、キャス。おまえに隠してもしかたないからいうが、おれが天界にいるのはサムのためだ。サムが死後に行く場所を守るためだ」
キャスはしばらく黙ったあと、唇をとがらせて頷いた。「そうか」
「ああ、そうだ」
「きみに弟がいて世界は救われたな」
おれは足を止めて、キャスの二枚羽の後ろ姿を見つめた。彼がそんなふうに言ってくれるとは思っていなかったから驚いた。
キャスが振り返っていった。「どうした」
「べつに。おまえ皮肉が上手くなったなって。ザカリアの影響か?」
「やめてくれ」 盛大に顔をしかめてキャスはぷいと先を行ってしまう。
「お、待てよ、キャス。おまえのことも愛してるぜ!」
「ありがとう。私も愛してるよ」
たとえばサムが結婚して、子どもができ、平和な老後を迎えるのを、ただ天界から見守るのも素晴らしい未来だと思う。義務感の強いサムのことだから、十中八九相手は有力貴族の娘か、他国の姫の政略結婚だろうが、相手がよっぽどこじれた性格をしていない限り、いい家庭を築くだろう。あいつは優しいし、辛抱強くもなれる。子どもにも偏りのない教育を受けさせるだろう。安定した王族の指導で、王国はますます繁栄する。国王と王妃は臣民の尊敬を受け、穏やかに愛をはぐくみ、老いてからも互いを慈しみながら、孫たちに囲まれ余生を過ごすだろう。
愛と信頼に満ちた夫婦。サムがそんな相手を見つけられたらどんなにいいか。おれは心から祝福する。それは嘘偽りのない真実だ。
だけど、それは死が二人を分かつまでだ。
サムが死んだら、たとえその死が忠実な妻と手をつなぎ、同時に息を引き取るような敬虔なものだったとしても、彼の魂はもう彼女のものじゃない。死神のものですらない。おれだ。おれがサムを直接迎えにいく。
そしておれがサムのために守ってきた天国で、おれたちはまた、やり直すんだ。
おれが精通した十一歳の朝からでもいい。
ぎこちなかった即位式の午後からでもいい。
世界におれたちだけだったら、どれだけ早くたがいの感情に正直になれたかな。それを試すんだ。
だから今は離れていても、いずれは永遠に側にいられるんだ。
今は言葉だけでいいんだ。おれを汚したいといったサムの言葉が何物にも代えがたい愛の告白に聞こえたなんて変かな。サムの愛の言葉と、この体のどこかに残っているサムの精だけで十分なんだ。
また来年、それをおれにくれ。おまえが誰かいい女と結婚するまで。
おまえのための天国を作って、おれは永遠が来るのを待っている。
おわり
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ちょろい女~サム・クラフリン編~
サム・クラフリンという男性をご存知だろうか。
私は、結構すぐにほだされるタイプである。もう本当にすぐ好きになるのだ。
何か考えるときは必ずその人のこと。仕事中、電車を待っている時間、晩御飯の献立を考えているとき―とにかく彼の顔が脳裏に浮かんで、素敵な微笑みを投げてくる。その瞬間、私はどこにいようと口角がとろけてしまう。うへっうへっと、こんな笑い方をするのはこの世でゴリラか私くらいだろうというような笑い声をあげながら、マフラーに顔をうずめてごまかしてみる。
……たぶん、ごまかせてないけれど。
さて、冒頭の彼に戻らせてもらおう。サム・クラフリンをご存じだろうか。ここからは、敬意と愛情をもって、サムと呼ばせてもらおう。長いからね。
サムが出演している映画で一番有名なのは『あと1センチの恋』ではないだろうか。
私もそこで初めて彼を知って、ふう~んと思った。演技については、まあよくあるラブコメだし、特別な感想を抱くこともなく。
共演のリリー・コリンズは可愛かったな。登場カットは意志の強そうな眉毛に驚いたけれど、目が慣れてくるともう堪らん。白の清潔感のあるシャツとジーンズをサラッと着こなして、嫌みがないなんて……はっきりとした赤のルージュもとても似合っている。話が逸れてしまった。
正直、『あと1センチの恋』は嫌いである。
なんでそんなにすれ違ってるんだよ!いい加減にしろ!と、開始30分ほどでイライラしてしまった。好きな人は好きだろう。私は苦手だ。結局、主人公は何がしたかったのかわからないし、生産性がなさすぎる。
別にラブコメ映画が嫌いというわけではない。『キューティ・ブロンド』や『ラブ・アクチュアリー』は大好きだしね。
とにかく、主人公が好きになれなかったのと、考えなしの行動をしているのも腹が立ったのかもしれない。一所懸命見ても好感が持てなかったから、出演している俳優には特に感想はなかった。
ばっちりの胸板に、がっしりとした腕に……うーん、THE・外国の男の人って感じね!それくらい。
そして、その後サムのことはあまり思い出さなかった。ほかにも好きな俳優さんがぞくぞく登場して、それどころじゃなかったということもある。
そして、ふとしたときにサムは現れた。それは『世界一キライなあなたに』(原題:『ME BEFORE YOU』)のポスターを目にしたときである。「あれ、この顔知ってるな……」というのが一番に思ったこと。そのあと思ったのは「なんで、この人なの……?」。
今思うと、大変失礼な話なのではあるが、やはり『あと1センチ~』の印象が強すぎた。内容としては気になっているのに!となんだか悔しい気持ちになりながら、チケットを買ったのを覚えている。
……しかし、これが大当たりだったのである。結論を言おう。号泣だった。
ラストは賛否両論出たのはわかるが、私はとても自然なこととして受け入れられた。どんな言葉を並べても物語の核心に触れてしまう気がするから、多くは語らない……いや、語れない。ラブストーリーが好きで、気になったという方は是非とも見てほしい。そして、考えてほしい。べたべたなラブストーリーだとは思うが、ただ受け取るだけの映画ではないと思う。
それに、主演の二人はとても素晴らしい演技を見せてくれる。なんて陳腐な言葉なんだと思うかもしれないが、本当にそうなのだ。珍妙といっていいようなカラフルなファッションに身を包むヒロインはだんだん愛らしさが垣間見えていつの間にか感情移入してしまっているし、サムの障害を持つ男性もよかった。改めて見直したばかりなのだが、じっくりとみると首元や視線の動きも細やかだったり、何より表情がいい。
私、こんなに見落としていたんだ!!という絶望すらもあった。私、こんなにいい男見逃してたの!?と。
そして、さらにサムが私を夢中にさせたのは『ライオットクラブ』だった。端的にいうと胸糞な、内容はないといっていい映画なのだが、私は結構好きだ。暴力的だし、ストーリーはありがちだし、濃いとは言えない。それでも、サムがとてもいい。劣等感の塊で、どんどんと調子に乗っていく様がリアルなのだ。劣等感がある人間はたぶん、承認欲求が過剰にあるともいえると思う。
その葛藤だとか、狂っていく段階がいい。見ていてゾクゾクする。幼い人間の愚かさがうまいなぁ、と感心するばかりだ。
そして、昨年。私はまた出会ってしまった。
『人生はシネマティック!』。正直にいうと、私はビル・ナイおじさんを見に行った。でも、サムが予想以上に良かったんだよなぁ。
くさくさとしている自分を慰めるために行ったのだ。拗ねていた私に、その映画は寄り添ってくれて、そのおかげで“働く女”をしている自分を少しだけ好きになれた。おろしたてのブラウスの襟元は流した涙でぐしゃぐしゃになってしまったけれど、それ以上にスッキリした。
そして、いつの時代でもひたむきな人間のことは見ていてくれる存在はいるし、愛を与えてくれるものだと思った。
あぁ、私もサムの愛情をもらいたい!
サムはここ数年でこんなに素晴らしい役者となっている。
私も、頑張るね!サムみたいに頑張る!
なんとも偉そうであるが、輝く人を見ると自然と勇気と活力がわいてくる。この映画のサムは、私にたっぷりのエネルギーをくれるのには十分すぎるくらいだった。
いい役者っていうのは、演技を通して何かを伝えてくれるものなのね……。涙しながら、サムの成長を勝手に感じて何回も頷いていた。
ふてぶてしく煙草を吸う姿、愛しそうに眼を細める表情、必死に取り繕うとしながらもぼろぼろと感情を隠しきれていないところ―こんなにいろんな情報を発信できるようになった、そして私はそれをサムから受信できるようになったんだ。
些細なことだとは思うし、私側の問題であるということも大きいことはわかっている。少しの時間を経て、私の間口も広がったというところだろう。
話は変わるが、私は6時間ほど眺めていると“ぞっこん”になってしまうことが多い。
ヒュー・グラントにエディ・レッドメインにライアン・ゴズリング。
いやいやいい男だろ!いうツッコミが聞こえてきそうだが、私はイケメンの基準が高すぎるらしい。イケメンと言われる若手俳優は好きになることはあれど、イケメンだと思うことはほとんどといっていいほどない。
かっこいいよね!と同意を求められても困るなぁ、とアゴを撫でるのが常である。ま、美的センスは人それぞれだし。
自分の顔を棚に上げまくってこういうことを言い切るのが私の長所でもあるから許してほしい。
サムも、最初の印象なんて薄い。
女性がメインのラブコメを見てしまったのだから当たり前であるが。
でも、彼の出演した作品を見て、3年ほどの(一方的な)付き合いをした結果、今ではこんなにも愛しい。
バッキバキに割れた腹筋や私より胸囲あるよね……というようなたくましい胸板も、頼りたくなって最高だ。筋肉隆々って苦手だけれど、サムだけは格別。あ、ザック・エフロンもいいな。
これ以上、私はサムのことを好きになっていいのだろうか。愛していいのだろうか。
不安になるときもあるけれど、大丈夫。なんたって、私の脳裏に浮かぶサムはいつも優しく微笑んでいるのだから。
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Page 115 : 月影を追いつめて
上空はネイティオ率いる鳥ポケモン達が隊列を組む。元々の群れを成して飛ぶ習性に加え、日々重ねてきたレースの訓練の成果が如実に表れ、整然と飛んでいる。
地上から追いかけるアラン達は歓楽街にほど近かった教会から離れ、湖の方角へと向かう道を走っていた。人が集中しているのは町の中心地から湖畔の自然公園へかけた大通りを中心としており、そこからは距離を置いている現在地においては人通りは未だ少ない。ポッポレースも既に始まっている。郊外で営む店も今日は朝からしまって、祭に精を出しているのだろう。閑散とした住宅地、家を出ていない住民もいるだろうが、人気のない道はゴーストタウンすら彷彿させる。
強くなりつつある日光を反射して、キリの町を象徴する白壁はますます輝きを増し、影は小さく濃くなっていく。
乾燥した石畳を駆けながら、ネイティオが右に曲がる。それを追って、アラン達は細い路地に入った。昨晩の雨の影響で湿り気が漂うが、とうに水溜まりは蒸発していた。
エーフィを先頭に縦に列が伸びる。間をアランが保ち、しんがりでエクトルが走る。短い路地を突き当たりまでやってきたところで、鳥ポケモン達は左へ舵を取った。
「こんなに大勢で向かって、ブラッキーは気付かないでしょうか」
道がまた広くなり併走に切り替えたエクトルに、息を切らしながらアランは横から声をかける。
「布石は打ってあります」
「布石?」
「ええ。それより、覚悟はできていますか」
アランは息を静かに荒げながら、沈黙し、頷く。
大人しくボールに収まってくれればいい。しかし、悪く転がれば、戦闘に縺れ込む可能性がある。エーフィの表情も、いつもの朗らかさは潜み、硬いものになっていた。そのエーフィの主要な攻撃技はサイコキネシス、悪タイプであるブラッキーに直接ダメージを与えられない。実質、現在の手持ちの一体として名を連ねているアメモースも本来であれば十分に渡り合えるだけの能力を持っているが、今戦闘の場に出したところで、自在に動けなければ満足に力を発揮できない。何より、アラン自身、バトルの経験が殆ど無い。
「戦闘になったら」アランは力強い眼差しを前に向けながら言う。「その時は……お願いします」
他に選択肢がない。エクトルが以前はポケモンバトルを生業としていたことを、アランは既に知っている。言質を取ったエクトルは首肯する。
「元よりそのつもりです」
可能ならば、穏便に済むに越したことはないが。
人前での戦闘には正直なところエクトルは躊躇いを抱いている。しかし、背に腹は代えられない。
行き違う人々の視線を無視して走るうち、ネイティオの速度が明らかに落ちる。
恐らく、近い。
やがて鳥ポケモンの群れが分散し、各々屋根や旗の紐に止まる。一部は大きく右に曲がっていき、建物の向こうへ姿を消した。
白色の住宅が並び花が微風に揺れるその場所の、建物の間を抜けていく道路。
ネイティオは地面に下りて、翼を広げる。目的地への到着を示しているのだろう。
アラン達は減速し、ネイティオに追いつくと、ゆっくりと立ち止まる。肩を上下させて息を切らしたアランは、熱い顔に滴る汗を手で拭った。
影が差した道には、誰一人、獣一匹とて、見えない。
道の途中や、向こう側に、ぽつんぽつんとマメパトやピジョンが点在し、待機している。挟み込んでいるのだ。
ヒノヤコマだけは道のまんなかに降り立ち、その背に乗ったフカマルも慎重に降りる。そして、彼は、誰かに声をかけるように、聞き慣れた親しげな温度の声をあげて、右手を挙げた。
現れる、どころではない。ネイティオはブラッキーの居場所を予知した。
エクトルがアランに目配せする。アランは深く頷き、鞄から真新しく���った空のモンスターボール――ブラッキーの���っていたもの――を握り、緊張するエーフィを傍に引き連れ、強張った足取りで歩みを進めた。
ブラックボックスに、手を入れる。
音を立てないようにして、アランは角を曲がり開けた道路に入った。
フカマルはそれ以上歩もうとはせず、アランを見やった。見上げた先のアランの表情は影になっている。ドラゴンの弱々しい鳴き声が虚しく落ちる。
半分は日光が差し込み、半分は建物の影となった道路の先、影になった方へ栗色の視線が向いた。
「……ブラッキー」
白い住居の間は元々あった建物を壊したのかぽっかりとした空き地となっていて、雑然と整えられた敷地内で黄色い輪が光っている。身体をもたげている奥は柵が設置されており、行き止まりとなっていた。気怠げな様子とは裏腹に、赤い瞳は鋭利に光っている。
フカマルの呼びかけに応えなかったブラッキーは、ラーナー達の来訪に気が付くと、おもむろに立ち上がる。
エーフィがか細く声をかけるが、返答しなかった。朱い眼の細い瞳孔が陽炎のようにふらふらと揺れながら、彼は体勢を低くした。明確な威嚇行為にフカマルも足を竦ませ、アランの背後に隠れ様子を覗う。
獣の小さな主は張り詰めた空気を吸い込んだ。表情に湛えるのは哀しみでも戸惑いでもなく、アランは静かにブラッキーと対峙した。この地点は分かれ道だろう。手元に握ったボールに戻るか否か。戦闘に踏み込むか否か。
「ブラッキー」もう一度呼びかけた。「ずっと苦しかったんだよね」
距離は三メートル弱。電光石火で瞬時に詰められる間合いである。エーフィにとっても、ブラッキーにとっても。その気になれば、一瞬で喉元に牙は届くだろう。
「体調が悪いことは知ってた。でも、どうしたらいいか解らなかった。私が、未熟だから……。……きっかけは、首都で、守るを使ったから?」
問いかけられたブラッキーは動かない。アランの言葉に耳を傾けているかも判断できない。
堅く握りしめているその手は、死を渇望する少年の命を此の世に縫い止めるために突き放し、そして反動をそのままに彼女は高層ビルの屋上から身を投げた。あの瞬間瞬間のうちに、自ら判断したことだった。ブラッキーは壁を伝って電光石火を繰り返し、あわや地上に激突する寸前で守るを発動し、全ての衝撃を相殺し、文字通り命を懸けて彼女を護り抜いた。
生き残った彼女は、そしてまた自分で選択し、首都から離れ、旅を共にしてきた仲間と袂を分けた。ブラッキーは、あの頃を境に、息も絶え絶え生きている主人に同調するように崩れていった。
アランは瞬きも殆どせずに暫く待った後、続ける。
「ブラッキーの考えていること、全部は、解ってあげられないけど」
零れる言葉もどれほど獣に届いているか。
アメモースをちゃんと見ろと、言葉が通じずとも理解しあえると、トレーナーの迷いはポケモンに伝わると、ザナトアは繰り返し説いてきた。今、アランの表情には怯えも惑いも無い。ブラッキーから目を逸らさない。ブラッキーの鋭い眼光をものともしていないように、受け止め、対話を試みる。
「ヤミカラスを殺したのはブラッキーの意志? でも、ブラッキーはそんなことをしない……普通だったら。もし、ブラッキーの望みでないなら、一緒に考えるよ、これからどうしていくべきか。……どうしてこうなったのか、わからないけど。お母さん達や、黒の団が関わっているのなら……今度こそ向き合う。一生懸命、考えるから」
す、と息を吸って、ボールを持たない左手を差し出した。
「きみを、守るから」
握手を求めるように、無防備な掌が開かれる。
「帰ってきて」
誰もが息を詰め、対話を見届ける。
この場にはエクトルやエーフィを含め、多くの生き物が集合している。しかし、今はアランとブラッキー、ただこの二つの存在のみが呼吸をしているかのようだった。たった一人と一匹だけの世界。町を彩る花も、清廉な白い風景も、眩くも儚い秋の青空も、どこかで沸き上がる歓喜も、静かなる祈りも、力強い羽ばたきも、波の弾ける音も、鳴き声も、泣き声も、何も干渉することはない。あるのは静寂である。強く引き合う糸が視線の間に結ばれ、たゆむことなく繋ぎ止める。緊張を解いた方が屈服する。互いに譲らず、時間ばかりが過ぎていく。
やがて、動いたのはブラッキーだった。
強い唸り声が返答となり、アランは唇を噛んだ。
すぐにエーフィがブラッキーとアランの間を切断するように前に出る。
黒き体躯がその場を弾いた。エーフィは身構え自らも電光石火で応対しようとしたが、紫紺の瞳はブラッキーの行く先が自分ではないと見切った。ブラッキーは黒い影から飛び出し、太陽の照る反対側の壁へ足を突いた。すぐにまた壁を蹴り上げ、身軽にも上へと向かう。地上を封鎖されたがため屋根を伝って逃げるつもりだ。上空に待機していた鳥ポケモン達は咄嗟に反応できず、あっさりと逃亡を許そうとした。
しかし、ブラッキーは逃げられなかった。
彼の後ろ足を何者かの手が握る。灰色の巨大な手が影から伸びるように現れ、ブラッキーの跳ぶ勢いを殺し、力尽くで引き戻したと思えば整地された地面へと叩き付けんとした。
最中、ブラッキーは空中でバランスを整え、地面に足をめり込ませながらも着地した。邪魔をされ苛立ちに満ちた瞳が空を捉えた。陽光に照らされて、影に身を潜めていた存在が明らかになる。赤い、炎のような一つ目がブラッキーを見下ろす。二メートルにも達する巨躯にはもう一つの顔を模した模様が描かれ、先ほど足を引き下ろした大きな掌をブラッキーに向け、おどろおどろしく空に漂う。
「下がっていてください」
「エクトルさん」
力の抜けたアランの隣に歩み出て、エクトルはブラッキーを睨む。
大人しく戻ってこなければ、恐らく戦闘に入る。それはアランも承知していたことであり、だからこそ対話は最後の可能性だった。かすかな願いが散ってしまえば、力尽くで引き戻す必要がある。ボールに無理矢理閉じ込めたところで、自力で脱出する術を得ているブラッキーには効果的な意味を成さない。捕獲の鉄則と同様、弱らせる必要がある。
「既に黒い眼差しを仕込んでいます」
「黒い眼差し……?」
「ヨノワールの技です。これでブラッキーは逃げられませんが、ボールに戻すこともできません。ブラッキーとヨノワールのどちらかが倒れるまでは」
突如影の中から姿を現したヨノワールも、彼のポケモンの一匹であった。エクトル達よりも先にブラッキーの元に向かわせ、とうに黒い眼差しを発動させてブラッキーが逃げないように監視させていた。
エクトルは右の人差し指を立て、小さく関節を曲げた。その仕草に吸い寄せられるように、鳥の形をした大きな影が彼等の真上を通り過ぎる。
「シャドーボール。ネイティオ、電磁波!」
指示を受けた霊獣、ヨノワールは素早く両手を合わせ、瞬時に禍々しい漆黒を掌の間に形成する。黒は深くなり、あっという間に球を成すと、ブラッキーに向けて放たれた。ブラッキーは素早い身のこなしで跳び上がり避けたが、その先を待ち構えていたようにネイティオは電撃を念力で作り上げ、空中で自在に避けようもないブラッキーを襲った。未来を視るネイティオには造作も無い予測である。狙いは的を射る。
シャドーボールが地面を抉り散った砂を含んだ風が巻き上がる最中、ばちんと痛烈な音を立てて火花が散り、月の獣は電撃を纏う。
「ブラッキー!」
「麻痺させただけです」
背中から地に落ちたブラッキーを見て思わず声をあげたアランの横で、エクトルは淡泊に言う。
シャドーボールの影響で薄い土煙が漂い微風に払われてゆく中、ブラッキーがよろめきながら立ち上がる様子をエクトルは観察する。
電磁波を受け、明らかに動きが鈍くなった。身体の筋肉が電気を浴びて痙攣し、動くにも痛みを伴っていることだろう。これで機動力を抑えられる。
エクトルの背後で、ネイティオの動きが鈍り、堪らず地上に降り立つ。おっかなびっくり見つめるフカマル同様、アランは目を瞬かせた。鳥獣の身体は、反射されたように電撃が迸っている。が、嘴が上下に動き、仕込んでいた小さな木の実を呑み込む。シンクロは想定範囲内、道連れは許さない。同調した麻痺はすぐに癒えていくだろう。
いくら祭で人が出ているとはいえ、住宅街で騒ぎを起こせば目立つ。ある程度戦闘で道を破壊��ても適当に話を付ければどうとでも補修は効くが、住宅に及べば少々厄介なことになる。狭い立地では、ブラッキーやエーフィのような身軽なポケモンの方が有利な上、タイプ相性としても二匹ともブラッキーに対しては分が悪い。時間をかけるのは得策ではない。さっさと片を付けなければならない。
「気合い球!」
電磁波が強力な足枷となっている隙を狙う。
ヨノワールは再び両手を合わせ、今度は先程の黒く混沌としたシャドーボールとは裏腹に、白く輝く光球を造り出した。光は留まることなく輝きを増す。抱え込むような大きさまで膨らんだと同時に、赤い瞳が妖しく光り、ヨノワールの叫びと共に渾身の力で投球、黒い標的へと一直線に走る。ブラッキーは咄嗟に黒い衝撃波を自らの周囲に形成、発射した。悪の波動。黒白のエネルギーがぶつかったが、相殺とはならず、気合い球が波を切り裂いた。止まらぬ勢いに朱い眼は見開かれ、本能的に回避を試みた。が、身体に電気が迸り、地を滑る。筋肉は痙攣、黒い足が折れた。見守るアランは息を呑んだ。
剛速球はブラッキーに直撃し、先程より派手な音が路地を抜けて周囲へ及んでいく。
頭の高さを遙か超えて粉塵が舞い、アランは咄嗟に翳した腕をどけて、煙が晴れるのを待つ。エクトルも時を待つ。瀕死でなければ、すぐに追撃を指示するつもりでいた。しかし、当たってさえいれば効果的な一撃である。幾度の修羅場を乗り越えてきたブラッキーといえど、まともに喰らえばそれなりの深手を負わせられる。
が、風に煙が払われていくその中に、硝子のような煌めきが混ざっていることにエクトルは気付く。
煙が晴れる。
ブラッキーは地に伏しているどころか、四つ足でしっかりと立っていた。表情は険しいが、それは攻撃に対する純粋な嫌悪に過ぎない。ダメージを受けた形跡は無い。細かな輝きはアラン達の横を通り過ぎ、風に消えていった。
「……守る」
アランは呆然と呟いた。
エクトルは眉間を歪めた。
型破りな防御技は、生成に時間がかかる。連続すれば失敗しやすくなるとされるのは、いかに緻密で、巨大なエネルギーを消費する技であるかを物語る。ブラッキーは、気合い球を避けるつもりであったはずだ。それは彼の僅かな挙動が示し、そして電磁波による麻痺で阻害された。加えて悪の波動を放った直後で隙も出来ていた。そこまではエクトルの目は追えていた。あの瞬間、既に気合い球は彼の目前まで迫っていたはずだ。距離を置いているならまだしも、肉薄しようとしていた至近距離で、後出しの守るで防ぎきるか。
確かに訓練次第で技の精密性は上がるだろう。それにしても発動が速過ぎる。
エクトルが無意識に抱いていた油断を自覚したとも露知らず、ブラッキーは唸り声をあげる。細かく並んだ牙が顔を出した。月輪が輝きを増し、短い体毛を割って威嚇の毒が滲み出す。瞬く間に変容していき、禍々しい気配が彼の空気を支配した。
ブラッキーは完全にエクトル達を敵と見なした。
後方から見守っていたアランは表情を僅かに歪める。
僅かな動揺が隙となり、ブラッキーは瞬時に間を詰めた。電光石火で空に浮かぶヨノワールに襲いかかる。
しかし、その体当たりはヨノワールの身体を弾くことなく、そのまま何にも触れず通り抜けていった。充血した瞳が見開く。
電光石火はゴーストタイプには無効だ。トレーナーにとっては常識でも、ブラッキーには解らなかったか。判断力が低下しているのならばエクトルにとっては好都合である。
「もう一度気合い球! ネイティオ、怪しい風で援護しろ!」
戦闘の勘が鈍っていようと、相手のミスを逃す愚かな真似はしない。
二匹は通り抜けたブラッキーを振り返る。ネイティオは翼を大きく羽ばたかせ、紫紺に輝く突風を巻き起こした。強力だが、同じゴーストタイプのヨノワールにその風が影響することはない。またも空中で体勢を崩されたブラッキーに向け、ヨノワールは再び光球を育てる。
ブラッキーは音が聞こえてきそうなほどに歯を食い縛り、その足が向かい側の壁を捉えると、痺れる筋肉を酷使する。垂直落下する前に、足先に力を籠めた。再度、電光石火。ヨノワールに襲いかかる。
何故、とはエクトル、そしてアランも恐らくは考えただろう。まだ僅かしか形成していない気合い球に肉薄したところで然程威力を発揮しないが、それ以前にヨノワールに一撃を喰らわせるには電光石火では意味が無い。つい先程身を以て理解したはず。単調な攻撃。判断力が鈍っているのか。目にも止まらぬ速度でヨノワールに近付く。
直後、鈍い、破裂音のような奇怪な音が、ヨノワールから発された。
獣であり同時に霊体でもある奇怪な霊獣は、血の代わりに黒い靄を嘔吐して、低い呻き声を漏らした。
やはり擦り抜けてきたブラッキーに、ヨノワールの発する黒い靄と、それとは別種の黒い火花のような残滓を身体に迸らせて、着地した。
生まれて間もない気合い球は空に収束し、浮かび上がっていた巨体は力無く落下し、地に臥した。
冷たい沈黙が訪れ、やがて彼等は漸く呼吸を思い出した。
悪の波動はヨノワールに効果抜群。ブラッキーが悪タイプの技を持ち合わせている可能性は考慮していたが、ブラッキーは元来攻撃面に恵まれていない。対するヨノワールも自惚れではなく十分に鍛えてある。たった一発効果覿面な技を喰らったところで、耐えられる自信はあった。しかし、ヨノワールは倒れた。その理由の理解に至り、エクトルは顔色を変え、落下したヨノワールに駆け寄る。
ただの気絶に留まらない一撃であった恐れがあった。エクトルはすぐにヨノワールの顔を覗き確認する。意識を失っているものの、僅かに開いたヨノワールの瞳の最奥は赤い灯を失っていなかった。しかし、風が吹けば消えてしまいそうな蝋燭の火さながら、あまりにも弱々しい。
電光石火はヨノワールを擦り抜ける。しかし、それを裏手にとり、彼は擦り抜けようとしたその瞬間、つまりはヨノワールの体内にあたる地点で、悪の波動を発した。
あらゆる外傷から守るために生物は身体の外側を皮膚などで覆い、その内側に張り巡らされた筋肉、血管や神経、更には内臓、繊細な器官を守る。が、守りとは外側に向けられたもの。鎧の奥、内部、守られるべきものに直接内側へ手を下せば、それは則ち急所である。
相性の不利は承知の上だったが、加えて、無防備な内側への直接攻撃。相性以前の問題である。ブラッキーに一切の躊躇は無かった。ヤミカラスを殺した事実、ポッポを殺したという可能性が急速に現実味を増し、エクトルの脳の芯は急速に冷えていく。
彼は的確に敵を殺そうとした。
逆立った体毛は更に刺々しく荒さを増し、ブラッキーは吠え、再び悪の波動を放とうと黒いエネルギー波を溜め込んだ。
「スピードスター!」
「エアスラッシュ!」
攻撃される前に、攻撃を打ち込む。考えたことは同じだったのだろう。観客に回っていたアランが堪えきれずエーフィに指示したのと、エクトルがネイティオに向け指示したのはほぼ同時。
躍り出たエーフィの額が赤く光り、輝く五芳星が素早く地上を走りブラッキーへ向かう。ネイティオも、力強く羽ばたきを繰り返し、見えぬ風の刃が無造作に地上へ叩き込まれた。
波形状の漆黒の波動は相殺される。しかし、全てを防ぐことは叶わない。波動は全域に渡り、周囲の壁や柵に炸裂した。破壊音が響く一方、衝撃を潜り抜けて五芒星が軽やかに滑空した。スピードスターは必中技。大きな威力こそ無いが、ブラッキーの体力を削る。その身に遂に打ち込まれた攻撃。が、ブラッキーは易々と耐え抜き、常時の彼とはあまりにかけ離れた劈いた声をあげた。
そして、赤い目は正面で険しく対峙したエーフィを捉え、すぐさま飛翔するネイティオに目標を切り替える。
強靱な脚力は、痺れていても衰えない。一直線にネイティオに飛びかかる。咄嗟にネイティオは風を起こし対応したが、ブラッキーが競り勝つ。
ブラッキーの前足がネイティオの身体を掴み取る。噴出する毒の汗が立てた爪を介してやわらかな鳥獣への侵入を試みる。小さく不安定な足場で、更に、その牙が露わになった。
「ブラッキー!!」
止まれ、と、制止を促すようにアランは叫んだが、ネイティオの胴体、翼の根元めがけてその牙が落とされようとした瞬間。
「振り落とせ! 電磁波!」
俊敏にエクトルの指示が入り、ネイティオはアクロバティックに頭から落ちるように急降下、ブラッキーの体勢が瞬時に崩れ、地上すれすれの位置で超至近距離で電撃が再び弾けた。無論、ブラッキーは既に麻痺している。が、強力な静電気で反射的に指先が仰け反る様と同様、ブラッキーの身体は強制的に弾かれ、地面に激しく打ち付けられた。
その地点、アラン達から僅か一メートルすら無い。あまりに近い場所でアランとブラッキーの視線が堅く交差する。一瞬の衝突である。
ヨノワールが倒れたことで、黒い眼差しによるしがらみから彼は解放された。自由となった足で蹴り出すと、アラン達の来た道を辿る。丁字路を右へ曲がっていき、逃亡を許した。
「追いかけますよ」
立ち竦むアランの腕を無理矢理掴み、走るように促す。息絶え絶えであったヨノワールは既にダークボールに戻していた。我を取り戻したアランは、流されるままに頷いた。
鳥ポケモン達は既にその場を飛び立ち、ネイティオも羽ばたき、先行してブラッキーを追っている。最も足が鈍いフカマルは、エーフィがサイコキネシスで運び、一同はブラッキーの後を辿った。
「広い場所へ誘導しましょう」
エクトルの提案に、アランは目をやった。
「こうも狭い場所では満足に戦えません。逃げ場所が増えるリスクはありますが、見通しが良ければ追うのも簡単です」
「広い場所って、どこに?」
「湖畔に向かわせます」
言いながら、エクトルはスーツの下で手首に巻いている���ケギアを操作した。
「でも、今は祭が!」
「祭は自然公園と大通り沿いが中心です。湖畔の領域全てが使われるわけではありません。通行規制して、人が入らないようにします。このまままっすぐの方角へ向かえばいずれ湖畔に着きますが、できるだけ東の方へ……」
ポケギアのスピーカーから、通話音が入る。簡単に言ってのけるが、クヴルールの権力を振りかざしている。が、この際職権乱用と刺されても構わないだろう。錯乱状態に陥っているブラッキーを放置しておく方が余程危険だ。緊急事態だと適当に御託を並べて人員を用意させた。祭を滞り無く終わらせることが本日の最重要事項であるのだから、秋季祭に良からぬ影響を与える可能性があるとご託を並べればひとまずは動くはずだ。
走りながら通話し始め準備を進めるエクトルの横で、アランは暫し考え、速度を落とし、後方で浮かんでいるフカマルと目を合わせた。
「フカマル」
真剣な眼差しに、フカマルは目を丸くした。
「ヒノヤコマ達に伝えてきてほしいことがある。……お願いできる?」
まだ幼い彼にどこまで人語が理解できるか。しかし、話しながら、首を傾げていると、エーフィが通訳をするように彼等の間に挟まった。
「いける?」
なにも難しい指示ではない。フカマルは頷き、エーフィはサイコキネシスで一気に彼を上昇させる。
サイコキネシスによる浮遊も当初こそ慣れぬ様子であったが、今はなんの抵抗も無く受け入れている。無為に身体を動かすことなくエーフィに委ね、彼はヒノヤコマ達に声をかけ、その背中に乗った。その先で、アランの指示を伝えているのだろう。直後、彼等は左右に分かれ、速度を上げた。
エクトルはポケギアの通話を切った。
「何を指示されたんですか」
「逃げる場所を一つに絞らせます。湖畔に誘導するために」
キリの町は縦横無尽に路が張り巡らされている。逃げようと思えばいくらでも路地を曲がり行方を眩ませられるだろう。しかし、曲がろうとする場所に、先んじて鳥ポケモン達を配置し、それを繰り返す。背後からはアラン達が追いかける。誘導したい先を敢えて空けておく。
今のブラッキーの状態では、野生でまともに育てられても居ない鳥ポケモンなど驚異でもなく、阻んだところで躊躇無く突破される可能性もある。成功するかは別だが、打つべき手は打っておくに越したことはない。エクトルは納得したように頷き、上空を仰いだ。
「ネイティオ、シンクロでサポートを」
端的な指示を受けて、ネイティオは加速する。未来を予測する眼と、他者に同調する特性、そして元来持ち合わせている念力。司令塔としての役割である。目に見えぬ力が空を伝い鳥獣の間でネットワークを形成し、ブラッキーに対する包囲網を強化する。
アランは、ただ前を見て、直走る。
以前、彼女はこの策に捕まったことがある。
あの時、無垢な少女は今のブラッキーの立ち位置にいた。迫る殺意から逃げるために、暗い水の町の路地を、混乱を整理しきれずにただ逃げるために走っていた。その先が行き止まりとも知らずに。
果たして、この逃亡劇の先に何があるのか。
まだ遠くの視界には黒い月影が見える。曲がっても、鳥ポケモン達を信じ同じ道を辿り、湖畔の方へ向けば、またその尾が見える。真昼に輝く白の中で、黒い姿はよく映えた。結果的に、ネイティオの放った電磁波がブラッキーに与えた技の内最大の功績���言えるだろう。明らかに動きは鈍くなっている。
花や旗で彩られた華やかな白い道を疾駆する。道程で秋季祭の中心地から逸れた、或いは向かう途中である人間と擦れ違い、そのたび何事かと怪訝な表情が向けられるが、構っている暇などない。
エクトルは腰のベルトに付けたボールのことを考える。再起不能であるヨノワールは言うまでも無くもう使えない。ネイティオは健在だが決定的な攻撃を浴びせるには役不足だ。彼が携えているボールは、全部で三つ。残りは一匹。
「ブラッキーの技は、守ると、悪の波動、電光石火、他には?」
走りながら尋ねる。息を切らしながら、アランは足がもつれないように答える。
「月の光です」
「回復技ですか」
長期戦は不利になる。瞬時に発動できる守るが最も厄介だ。
ブラッキーに会うまでの顔つきより、ずっと冷たく、鋭利なものになっているエクトルを、アランはじっと、洞の広がったような瞳で見つめていた。
長く白い路地を抜けて、先にブラッキーにとっての視界が一挙に開ける。
僅かな雲すら見えぬ、一面の青。夏空に彩度は及ばずとも、まるで穢れを知らぬ高みは、地上の生き物たちの目を奪う。
彼の背後からはすぐに追っ手が迫っている。上空は鳥ポケモン達が、地上は彼のよく知る人間と相棒が来る。
道路を跨いだ無効の湖畔を沿う堤防へ、その場所はなだらかな坂となっており、コンクリートの道路と地続きの芝生が敷かれた僅かな坂を上れば、中央の自然公園からずっと伸びている柵が湖と地上を分かつ小高い空間となっている。
迅速な通行規制が間に合ったのか、道路を車が走ってくる気配は無く、人払いが成されている。先だってはこの場所にも人が並び、ポッポレースで湖畔に散ったチェックポイントを渡りゆく鳥ポケモン達を応援していたものだった。レースは終盤へ移ろうとしているのか、縦に伸びた様々な翼が遠景でそれぞれ堂々と羽ばたいていた。彼方で行われている楽しい祭の軌跡である。通過点として既に役割を果たした地点を人々は後にし、エクトルの根回しで此の場所には他に入れないようになっている。
広い場所は、しかし隠れるところが無い。姿形が全て太陽のもとに晒され、ブラッキーは歯を食いしばった。
道路の中央部に立ち尽くしたブラッキーに、汗を散らして走ってきたアラン達が追いつく。遂に動きを止めたブラッキーを見て、エクトルは最後の一匹を閉じ込めたハイパーボールに一言呟くと、躊躇わずに投擲した。
吉日に相応しい雲一つ無い晴れやかな空に向け高々と上がった一擲。真っ二つに割れた中から、白い光が飛び出し、ブラッキーの前にその姿を瞬時に形成する。
咄嗟に間合いをとり警戒するブラッキーと、アラン達の間に降り立った獣。青く光る鱗に覆われた身体に朱色の腹を抱き、両手の先には鋭利な牙のような立派な爪を生やしている。二つ足で立つ様は細くしなやかな印象を抱かせるが、身体を支える太股や巨大な尾は強靱な肉体を主張する。
濃紺のドラゴンは、柔い羽がその場に落ちるように静かな立ち居振る舞いで姿を現した。
「ガブリアス……」
激しい息づかいをしながら、呆然とアランは呟いた。
上空で、ヒノヤコマに乗ったフカマルが、ぱかんと口を開けてガブリアスを見下ろす。
チルタリスとガブリアスの間に生まれた子供だと、小さなドラゴンの父親が永眠する墓前でザナトアは語った。
母親は子供には気付いていない。最終進化形まで逞しく育てられた勇ましいドラゴンは、一点のみ、目の前で威嚇するブラッキーのみを揺るがずに捉える。数多の群を抜いて気高く生きる種族に相応しい、清閑で、どこまでも冷たい眼差しで。
相手から視線を逸らさず、耳だけは彼女がこの世で唯一認める主人の声を待つ。
息を整え、堅く結んでいたエクトルの唇が動く。
「行け」
ごく短い指示が、氷のような温度で伝わり、ガブリアスの枷が外された。
スレンダーな巨躯が沈黙を叩き割り、直線上に立つブラッキーに接近した。身体に合わぬ速度は、ブラッキー達の電光石火の瞬発力にこそ劣っても、虚を突くには充分な効果を果たす。
振り上げられた爪の軌道を読んで、ブラッキーはその場を跳んだ。ブラッキーの居た地点めがけて叩き付けられた爪の一撃が、まるでいとも簡単にコンクリートの舗装を抉って、アランは目を見開き、額に汗が滲んだ。あれは果たして技か、ガブリアスの筋力がものを言わせたか。いずれにせよ、あの爪がブラッキーに突き刺されば只で済むはずがない。
空中でブラッキーは歯を食いしばり、崩れた体勢のまま悪の波動を放つ。禍々しい波及攻撃が至近距離のガブリアスを攻撃するが、硬い鱗に覆われたドラゴンは狼狽える様子すら見せない。羽虫でも当たったように何事も無く跳ね返し、直後にはブラッキーの傍まで跳び上がっていた。
横一直線に蒼き一閃。硬質な翼が黒い体躯を襲う。
同時に、咄嗟の判断だったのだろう、ブラッキーはすぐさま守るを発動。まばたきと同じリズムで、両者の間に煌めく壁を瞬時に形成した。切り裂くガブリアスの攻撃は阻まれたが、まさしく煌めくエネルギーの硝子が木っ端微塵に粉砕される音と共に、絶対守備のエネルギーは瓦解した。
ブラッキーは激しく後方へ転がりながら、形勢を立て直す。防御の反動で揺らいだドラゴンの隙を逃すまいと、顔を上げた。硬質な竜の鱗は全身を覆う。しかし、ガブリアスにも急所は存在する。狙うは首元。渾身の電光石火を叩き込んだ。
顎へ急接近した一撃は脳を震わせる。ドラゴンの頭は堪らず仰け反ったが、頑丈な足は揺れない。脳天への衝撃を押し殺す。紺の影が回転、長い尾が襲い掛かり、接近したブラッキーに脇から一撃喰らわせた。骨を切らせて肉を断つとでも言わんばかりに。重い一打。ブラッキーのやわらかな身体が空を舞った。
「剣の舞。ネイティオ、追い風を起こせ」
激しい転倒の最中、エクトルから技の指示が下される。
麻痺の残る身体を震えながら起こした頃には、飛翔を続け静閑していたネイティオが激しい風を巻き起こす。ブラッキーは目を細めた。強い風が正面から彼の動きを阻む。逆に援護されたガブリアスは自身で編んだ剣の波動を呑み込んでいた。次いで、鱗の下で筋肉が盛り上がり、地面を蹴り抜いた。
その足元から、亀裂を模した光が地面を這う。
周囲が揺れた、と思うと、突き上げるような激しい縦揺れの激動が大地を伝った。広範囲の攻撃はアラン達にも影響、とても立っていられず倒れ込んだ。
地を伝う衝撃はブラッキーを逃さない。裂いた地面に足下を呑み込まれる。
「逆鱗!」
冷めた瞳に、激しい炎が点火した。
それまで僅かな声も漏らさなかったガブリアスの、全てを声で薙ぎ倒すような鋭い咆哮が劈いた。風が、空気が震え、コンクリートの向こう側にある青々とした穏やかな草原が仰け反った。罅の入った道をガブリアスは疾駆する。蹴り上げた先から一気に加速。背後から追い風を受けたその速度はブラッキーの電光石火にすら迫る。地震で足場を崩されたブラッキーは防戦に持ち込む他無かった。またも、彼の目前で透いた壁が輝く。彼の身体に巡る獣の力を空に編んで、激情するドラゴンの頭から突進を受け止めた。二匹の間が弾けたが、凶暴化したガブリアスは隙を見せず地を蹴る。接近、右腕が振り上げられた。再度守るを発動、中心を穿たれ、空に放たれる破裂音。ガブリアスは、止まらない。三度目、反対側の爪がすぐさま繰り出される。それも、守る壁が跳ね返した。
五回分は超えている、とエクトルは静かに思う。
あのブラッキーがどれほど守るを使い続けられるかは不明だ。しかし、いずれ技を編み出す力は必ず底を突く。精密かつ強力であるほど、集中力も尋常でなく削られる。自我を失っているように見えて、ブラッキーの行動は的確だ。だが思考がぶれれば隙は必ず生まれる。電磁波による麻痺は確実にブラッキーを蝕み、ガブリアスは追い風を受けてますます加速する。剣の舞の効果は後に引くほど効くだろう。とめどなく攻撃を続けていれば必ず折れる。そうなれば後はドミノ倒しの如く落とせる。確実に。
振り落とした二対の爪を、今度は突き上げる。黒獣の腹へ入れ込む衝撃。竜の業火は跡形も無く燃やし尽くさんと肥大化していく。加熱してゆく威力そのまま、ブラッキーは遂に攻撃を許した。黒い影が、空へ放り上げられた、その過程に血が踊った。
アランは、歯を食い縛った。隣でエーフィが、彼女を見た。戸惑いの視線であった。
血の色をした双眸いっぱいに、ガブリアスの姿が容赦無く映り込んだ。鬼の形相の竜に、ブラッキーの顔が強張った。
縦に回転。
止まらぬ激昂をそのまま体現した、硬質な尾がブラッキーの身体を捉えた。
次瞬、地面に再び衝撃。一瞬で直下していったブラッキーを中心に、先程の地震で傷ついた道路が窪んで、高い噴煙が上がる。しかし、ガブリアスには煙など目眩ましにもならない。すぐに追いかけ、直下に飛ぶ翼が煙をその過程で払っていって、中心に倒れる無防備にブラッキーに向け、上空からの加速をそのまま爪に乗せるような、攻撃が突き刺さった。躊躇なく、突き刺さって、彼のしなやかな体躯を抉った。串刺しになったブラッキーが悲鳴を上げる間もなく、すぐに引き抜かれると同時に月の獣の身体が浮き、固い翼を持つ腕がすぐに追随する。横に殴った勢いでぼろきれのようにブラッキーはなすすべもなく荒れた芝生に叩き付けられた。真っ赤な飛沫をアランは見た。エーフィも見て、そしてその場にいる全てのポケモン達が圧倒されて硬直していた。つい数日前まで、育て屋で戯れていた獣が瀕死に追いやられていく過程に誰もが震え、怯えた。ただ一人、それを指示するエクトルを除いて。
とどめだと、トレーナーは声にこそしなかったが、冷酷な視線はガブリアスに制止をかけなかった。
駆け上がる逆鱗。
止まらない激情。
意識が果たして残されているかすら危ういブラッキーに、ガブリアスが肉薄した。熱い返り血を浴びて刺激されたドラゴンの目は狂気に支配されたまま。捉えるは動かない的となった獲物ただ一つ。赤い、ブラッキーの血肉に濡れた爪が振り上げられた。
「サイコキネシス!!」
静観していたエクトルが、叫んだアランを見た。
エスパー技は直接ブラッキーには通じない。彼女の指示の意図は、詳細を伝えずとも、隣のエーフィにぴったりと通じていた。指差した先、まっすぐにドラゴンを射貫く。
黒い土煙の中心で、ガブリアスが硬直した。強力なサイコキネシスがドラゴンの動きを封じている。
しかし、卓越した念力を操るエーフィでも、ガブリアスの動きを完全に止めるには強い集中力を要した。逆鱗で我を失いかけている竜を抑えるのは容易ではない。激しい抵抗を無理矢理抑え込んでいるのだろう、普段は涼やかなエーフィの表情が険しく歪む。
「……何故?」
エクトルは素直に疑問を投げかけた。
アランは、苦虫を噛んだような表情を浮かべていた。
「戦闘になれば任せると言ったのは貴方でしょう。貴方は何もしなくていい」
烈火の如き戦闘を前にしてもエクトルは何も感じていないかのようだった。何も感じず、何の疑いもなく、制御すべき義務を放棄し、ただ、見ている。ブラッキーが刻まれていく様を。
「ブラッキーを、殺すつもりですか」
予感ではなく確信であろう。氷のような沈黙が両者の間に流れた。
エクトルに動揺は一切無い。冷え切った表情が、彼の抱えた意志を物語る。
「何を仰いますか。ブラッキーを弱らせる必要があるのは、貴方も解っていたでしょう」
「弱らせるなんてレベルでは、ないです」
「貴方が気にされることではありません」
「誤魔化さないでください……お願いですから」
アランは苦く懇願する。震える肌。恐怖を浮かべながら、必死の抵抗を見せていた。
暫しの沈黙を挟み、諦めたように、エクトルは長い溜息を吐いた。
「あのブラッキーは、貴方の手に負えるものじゃありません」
「……」
「理性を失い、衝動のままに周囲を破壊する……ヤミカラスはその片鱗に過ぎません。ヨノワールも運が悪ければ即死でした。あの獣を手元に戻して、制御できるとお思いですか。未熟な貴方には到底無理です」
「だから」絞り出すようにアランは抵抗した。「だから……殺すと」
「時に、その方が彼等にとっても安楽です。大きすぎる力はポケモンもトレーナーも滅ぼします。これは貴方のためでもあります。どういった経緯かは存じませんが、あの異常な力の捻出、自我の喪失、戦闘への執着……あそこまでいけば、元のようには戻れない」
「どうして、エクトルさんがそう言い切れるんですか」
問いながらも、すぐに言葉を変えた。
「いえ……エクトルさんも、知っているんですね」
何を、とは言わなかった。
エクトルは幾度も重ねた思考をまた浮かべた。果たして、こんな子供だっただろうか。こんなにも疑い、真実を見抜こうとする目をしていただろうか。このキリの町に戻ってきて、彼女は変化し続けている。それとも、元々そういう人間だったのか。
「貴方も、見たことがあると?」
エクトルは、努めて冷静に返す。
彼女が内包している、純粋な怒りが眩しい。
きっと嘗ては自分もこんな怒りを心に秘めていた。ポケモンに自ら手を下すなど、考えもしなかった。いや、下しているのは正しく言えばガブリアス達だった。望郷の地に残してきた者達は知らぬ間にみな死んだ。この手は直接命の重さを知らない。
「あります。よく似た、ザングースを」
アランは僅かに震えた声で応えた。
エクトルは沈黙し、この奇怪な引き合わせを呪いのように思った。二人が抱く、決して交わらないはずの記憶が、遠からぬ場所でよく似た色を帯びる。
「ブラッキーは」深い洞を抱えた黒い瞳は、栗色の中に燃える魂を見た。「数多死んでいったネイティオと酷似しています」
「ネイティオ……」
「噺人の不在を埋めるために、代わりとなるネイティオは能力を極限まで引き上げる必要がありました。その過程、耐えられない個体は数知れなかった。ブラッキーはそれによく似ている。いずれ己の力に潰され自滅します」
アランは刹那、絶句する。
「……でも、だからって、ブラッキーを殺していいとは繋がりません」
「そうですね。貴方は正しい」
エクトルはすんなりと静かに頷く。
「しかし、貴方の正しさが、他にとっての正しさでもあるとは限りません。貴方の甘さはブラッキーに余計な苦しみを与えます」諭すように言う。「それでいいのですか?」
エクトルの脳裏に、自我を持たぬうちに死んでゆくネイティの姿が浮かんでは消え、自らの力に溺れ脳が停止したネイティオ達の姿が浮かんでは消えた。黙って見つめている自分がいた。
アランは首を横に振る。
「死が救いなんて、そんな悲しいこと、あるべきじゃないです」
耐え抜くように両の拳を握った。掌で爪が深く食い込み、その痛みを支えにして、顔を上げる。
「もう誰も失いたくないんです。私は、確かに甘くて、未熟です……だからこうなってしまったけど、だったら! 強くなります。トレーナーとして強くなって、ブラッキーを救う方法を探します! だから……もっと、こんなことじゃなくて、もっと違う方法があるはずです……!」
「甘いです」
断言し、聞く耳を持たないエクトルはガブリアスとブラッキーを見やった。
良くも悪くも、未来を信じている者の言葉。まだ、未来がずっと先まで続いていくと信じている子供の言葉。眩くて、空疎で、無力で、自らに未来を突き動かす力があると過信する傲慢を抱いている。
恨まれるだろう。そんなことは今更だ。既に失うものなど何も無い。
「ガブリアス、躊躇うな!」
エクトルが叫ぶと、ガブリアスの鋭い咆哮が拮抗を叩き割った。
周囲にいる誰もがドラゴンを凝視した。遂にサイコキネシスによる束縛を無理矢理解いた。根負けしたエーフィが、アランの隣で足を折り、か細い声で鳴いた。まるで、ブラッキーを切実に呼ぶように。
アランは、本来であれば切ることのないカードに手を出した。アランに、エーフィに呼応するように揺れていたモンスターボールを乱暴に掴み、願うように、祈るように、戦場に向け投擲した。太陽の下、翅を失ったアメモースが躍り出た。アランは叫んだ。アメモースも叫んだ。戸惑わず、躊躇わず、嘗てフラネの町でがむしゃらに放った銀色の風を、やはりがむしゃらに三枚の翅で巻き起こした。明確な意志をもって、抗うために。乱れた風はアメモース自身が空でバランスを失い地に落ちるまで続いた。だが、所詮、不完全な技はガブリアスを止めるには遠く及ばない。悪あがきにガブリアスはびくともしなかった。アメモースは自身の無力を呪っただろう。それでもまた立ち上がろうとして、しかし覚束ない動きしかできなかった。
逆鱗で直情的になったガブリアスは、怒りを、エーフィでもアメモースでもなく、すぐ傍で倒れ込んで動かないブラッキーに向けた。既に月の獣は虫の息だった。広がる血溜りの温もりと太陽の温もりの混ざった場所で、細くなった赤い瞳は振り下ろされようとする鋭い爪の軌道をぼんやりと見つめていた。
止められない。
アランが悲鳴をあげようとした瞬間、上空から、鋭くも幼い叫び声が跳び込んできた。
ガブリアスめがけて、ヒノヤコマが一気に下降する。その背に乗るフカマルが、叫び声をあげながら、ふと声に引き寄せられたように目線を動かしたガブリアスに向け、跳び込んだ。
小さなドラゴンの渾身の頭突きが、ガブリアスの頭にクリーンヒットし、頭蓋が激突した形にへこんだと錯覚するような、鈍い音がした。
小柄な体躯にその衝撃は足先まで響いただろう。ぶつかりにいった小さい獣は目を回し頭を抱えたが、ふらついた足取りで立ち上がった。ガブリアスの方といえば、幼稚な頭突き程度で倒れるほど柔ではない。鋭い視線がフカマルに推移した。
睨み付けられたフカマルは、一瞬硬直したが、めげずに今一度体当たりを仕掛ける。同時に、ヒノヤコマが遅れて、翼をガブリアスに鋭く見舞う。
ガブリアスと比較してしまえば取るに足らない、鍛えられてもいない野生ポケモン達が、一斉にガブリアスに向けて攻撃を始めた。上空に残るピジョン達が殆ど同時に翼を激しく羽ばたかせ、大きな風を起こした。
その風はガブリアス周辺に留まらず、後方に下がっているアラン達も激しく揺らす。
しかし、激しい砂嵐の中でも自由自在に動き回るというガブリアスは、すぐにその激しい風起こしに順応する。苛立ちが勝ったのか、上空に視線が動いた。ブラッキーをいとも簡単にねじ伏せたドラゴンの強さを目の当たりにし恐怖に竦んでいたポケモン達だが、怯まない。ガブリアスが跳躍しようとしたところを、すかさずフカマルがその左脚に必死にしがみついた。少しでも縫い留めようと。凶暴な金の瞳がフカマルを射貫き、左の翼が太陽を反射して鋭く鱗が光る。
「止まれ!!」
暴風を突き抜ける、遂にかけられた制止の指示に、ガブリアスの動きが止まった。
爪がフカマルに、あとほんの少しで突き刺さるという、その寸前。すぐ傍まで迫った脅威にフカマルは腰を抜かし、座りこんだ。
アランは咄嗟にエクトルを見た。男の顔に、狼狽が窺えた。
ガブリアスを止めて再び生じた沈黙。ブラッキーが力を振り絞るように起き上がると、すぐに硬直したガブリアスのみぞおちめがけて体当たりを仕掛けた。意識は既に朦朧としているだろう。爪の立てられた場所から絶えない流血を抱いたまま放った一撃。僅かに揺らいだドラゴンの足下。その隙を縫って、ブラッキーは逃げようとした。不安定な走りで、方向感覚も失われながら、アランやエーフィからは離れるように、つまりは湖面へ。
ゆるやかな坂を駆け上がるその瞬間は、電光石火でそのまま止まれないかのように一気に上がる。鮮血が芝生に落ちて道筋を作る。
誰もが、ブラッキーの行動に目を奪われた。
高くなった柵の向こうに、黒い身体が消えて、激しい水飛沫の音が代わりに響いた。
声をあげる間も無く、彼等は走った。すぐに柵までやってくると、穏やかな湖に小さな飛沫が上がっている。赤い染みが穏やかな青に混ざり、抵抗もできずにブラッキーは必死に空気を吸い込まんと頭だけは出そうと藻掻いているが、瞬く間にその気力も失われていく。
溺れる。そう思ったエクトルの傍。
鞄をかなぐり捨てて、躊躇無く柵を跳び越えた、アランの姿が、はっきりと、エクトルの視界に焼き付いた。
栗色の瞳はただ一点、ブラッキーだけを見ていた。手を柵にかけて軽やかに越えると、脚からそのまま湖面へと吸い込まれていく。
二度目の激しい飛沫が高く突き上がる。
「な」
驚愕するエクトルを余所に、青に沈んだアランはすぐに浮上し、藻掻くブラッキーに向かって、みるみるうちに重くなっていく身体を引き摺るように泳いでいった。
「ブラッキー!」
獣に向けて手を伸ばす。ブラッキーの前脚に彼女の腕が掴まると、一気に引き寄せる。再び触れることは待望であった。その黒獣の身体は水に溶けながらも厭な臭いを放ち、微かな滑りけを含んでいた。傷から溢れる血液も、体外に放出された毒も止まらない。
「大丈夫――大丈夫!」
打ち付けるような水が口内に入ってきながらも、アランはブラッキーに呼びかける。しかし、ブラッキーは劈く叫び声をあげ��。
「大丈夫! ブラッキー、落ち着いて!」
猛る黒獣をアランは強く抱き寄せた。その身体に、隠された爪が立ち、彼女の耳元でブラッキーは奇声をあげた。掴まりながらも、息も絶え絶えであったはずの身体のどこにその力が眠っているというのか。これではモンスターボールに戻したとて繰り返すだけだ。必死に宥めるアランを突き放そうとするように暴れ回る。激しい飛沫が一心不乱に暴れ回る。
「ブラッキー!!」
抑え込み自我を蘇らせようともう一度叫んだ、その瞬間、肩越しにブラッキーの口が大きく開き並ぶ牙が外に露わとなった。彼の視界が、アランの首元を捉えていた。その瞬間を、アランもほんの目と鼻の先で直視した。
エーフィの悲鳴が湖畔を劈いた。
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