Tumgik
#掌で小鳥を育むように
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やっとDM送付完了。
開始ギリギリの到着となりますが、何卒よろしくお願いいたします。この子は母が貝の小鳥さんでお迎えしたアンティークドール。クリスマス🎄にいつも飾っています。
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I finally sent invitation letters of the group exhibition! So sorry for my delayed. Please drop by! This girl is an antique doll that my mother bought at @kainokotori. We always decorate it for Holidays🎄.
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kachoushi · 1 year
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各地句会報
花鳥誌 令和5年1月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和4年10月1日 零の会 坊城俊樹選 特選句
草花のひかりの中へ列車ゆく きみよ 玉電の秋日に錆びし蛙色 要 雁渡るご墓所の天の筒抜けて 順子 神在す胙として木の実独楽 三郎 大老の供華には黒き曼珠沙華 いづみ 木の��降る正室と側室の墓 同 おしろいや世田谷線の音に住む 千種 どんぐりに一打を食らふ力石 みち代 踏切を渡りカンナの遠くなる 順子 茎だけになりて寄り添ふ曼殊沙華 小鳥 直弼へ短きこゑの昼の虫 光子 金色の弥勒に薄き昼の虫 順子
岡田順子選 特選句
草花のひかりの中へ列車ゆく きみよ 黄のカンナ町会掲示板に訃報 光子 井伊の墓所秋の大黒蝶舞へり 慶月 大老の供華には黒き曼珠沙華 いづみ おしろいや世田谷線の音に住む 千種 十月の路面電車の小さき旅 美紀 秋の声世田谷線のちんちんと はるか 現し世のどんぐり星霜の墓碑へ 瑠璃 直弼の供華の白菊とて無言 俊樹 直弼へ短きこゑの昼の虫 光子 秋声や多情を匿すまねき猫 瑠璃 累々の江戸よりの墓所穴まどひ 眞理子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月1日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
点と点結ぶ旅して尉鶲 愛 振り向かぬままの別れや秋日傘 久美子 月光や洞の育む白茸 成子 木の実落つ長き抱擁解きをれば 美穂 折々に浮かぶ人あり虫の声 孝子 ひぐらしの果てたる幹へ掌 かおり 国境も先の異国も花野なる 睦子 虫の音が消え君の音靴の音 勝利 流れ星消えたるあたり曾良の墓 かおり
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月3日 花鳥さゞれ会 坊城俊樹選 特選句
天高き天守の磴や男坂 千加 秋高し景色静に広がりて 同 汽水湖に影を新たに小鳥来る 泰俊 朗々と舟歌流れ天高し 同 落城の業火の名残り曼珠沙華 雪 秋立つとほのかに見せて来し楓 かづお 天の川磯部の句碑になだれをり 匠 天高し白馬峰雲ありてなほ 希
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月6日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
夫のこし逝く女静か秋彼岸 由季子 赤い羽根遺品の襟にさびついて さとみ 学童の帽子が踊る刈田路 吉田都 雨音を独り静かに温め酒 同 紫に沈む山里秋の暮 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月7日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
蛇穴に若きは鋼の身を細め 鍜治屋都 芋の露朝日に散らし列車ゆく 美智子 神木の二本の銀杏落ちる朝 益恵 破蓮の静寂に焦れて亀の浮く 宇太郎 新種ぶだう女神のやうな名をもらひ 悦子 鱗雲成らねばただの雲一つ 佐代子 色褪せず残る菊とは夢幻能 悦子 ばつた跳ぶ天金の書を捲るごと 都
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月8日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
ますかたは吟行日和年尾の忌 百合子 奔放にコスモス咲かせ埋れ住む 同 椋鳥の藪騒続く夕間暮 美枝子 子等摑む新米の贅塩むすび ゆう子 名園を忘れ難くて鴨来る 幸子 ぱつくりと割れて無花果木に残り 和代 初鴨の水の飛沫の薄暮かな ゆう子 猪垣や鉄柵曲がり獣の香 三無
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月10日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
木の実落つ藩邸跡を結界に 時江 コスモスの花街道は過疎の村 久子 産声の高し満月耿耿と みす枝 ひとしきり子に諭されて敬老日 上嶋昭子 曼珠沙華供花としもゆる六地蔵 一枝 鰯雲その一匹のへしこ持て 時江 雨の日の菊人形の香りなし ただし あせりたる話の接穂ソーダ水 上嶋昭子 倒立の子に秋天の果てしなき 同 秋風にたちて句作に目をとぢて 久子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月10日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
川は日に芒は風に耀うて 三無 風向きに芒の穂波獣めく 怜 雨止みて爽やかに風流れ出し せつこ ゆつたりと多摩川眺め秋高し 同 秋雨の手鏡ほどの潦 三無 患ひて安寝焦がるる長夜かな エイ子 藩校あと今剣道場新松子 あき子 秋蝶や喜び交はす雨上り せつこ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月11日 萩花鳥会
大阿蘇の銀波見渡す花芒 祐子 観る客と朝まで風の秋祭り 健雄 秋祭り露店の饅頭蒸気船 恒雄 秋吉台芒波打ち野は光る 俊文 花芒古希の体は軋みおり ゆかり まず友へ文したゝめて秋投句 陽子 青き目に器映すや秋日和 吉之 夕日影黄金カルスト芒原 美惠子
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令和4年10月16日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
金継ぎの碗によそふや今年米 登美子 そぞろ行く袖に花触れ萩の寺 紀子 子の写真電車と橋と秋夕焼 裕子 秋の灯に深くうなづく真砂女の句 登美子 花野行く少女に戻りたい母と 同 被写体は白さ際立つ蕎麦の花 紀子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月16日 伊藤柏翠俳句記念館 坊城俊樹選 特選句
御神燈淋しく点り秋祭り 雪 天馬空駈けるが如き秋の雲 同 自ら猫じゃらしてふ名に揺るる 同 秋潮に柏翠偲ぶ日本海 かづを 真青なる海と対峙の鰯雲 同 鶏頭のいよいよ赤く親鸞忌 ただし 桃太郎香り豊に菊人形 同 鬼灯の中へ秘めごと仕舞ひたし 和子 雲の峰だんだん母に似てゐたり 富子 振り返へるたびに暮れゆく芒道 真喜栄 坊跡に皇女が詠みし烏瓜 やす香
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月16日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
おほかたは裏をさらして朴落葉 要 秋深し紙垂の失せたる縄一本 千種 合掌のかたちに稲を掛け連ね 久子 豊穣に早稲と晩稲の隣り合ふ 炳子 耕運機突っ込まれたる赤のまま 圭魚 鏤める谷戸の深山の烏瓜 亜栄子 稔り田を守るかに巖尖りけり 炳子 晩秋の黃蝶小さく濃く舞へり 慶月 雨しづくとどめ末枯はじまりぬ 千種 穭田に残され赤き耕運機 圭魚
栗林圭魚選 特選句
溝蕎麦や角のとれたる水の音 三無 ひと掴みづつ稲を刈る音乾き 秋尚 稲雀追うて男の猫車 炳子 叢雲や遠くの風に花芒 斉 泥のまま置かるる農具草の花 眞理子 稲刈や鎌先光り露飛ばす 三無 耕運機傾き錆びて赤のまま 要 けふあたり色づきさうなからすうり 千種 晩秋の黃蝶小さく濃く舞へり 慶月 雨しづくとどめ末枯はじまりぬ 千種 隠沼にぷくんと気泡秋深し 炳子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月19日 福井花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
渡り鳥日本海を北に置く 世詩明 コスモスや川辺はなべて清酒倉 同 朝倉の興亡跡や曼珠沙華 千代子 案山子見てゐるか案山子に見らるるか 雪 赤とんぼ空に合戦ある如し 同 ゆれ止まぬコスモスと人想ふ吾と 昭子 色鳥の水面をよぎる水煙 希子 点在の村をコスモス繋ぐ野辺 同 小次郎の里に群れ飛ぶ赤蜻蛉 笑子 鳥渡る列の歪みはそのままに 泰俊 鳥渡る夕日の中へ紛れつつ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月21日 鯖江花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
俳人の揃ふ本棚秋灯 一涓 大法螺を吹き松茸を山ほどと 同 那智黒をひととき握りゐて秋思 同 漂へる雲の厚さよ神の旅 たけし 稲孫田のところどころに出水跡 同 美術展出て鈴掛けの枯葉踏む 雪 院食の栗飯小さく刻みをり 中山昭子 秋晴や僧の買物竹箒 洋子 末枯れて野径の幅の広さかな みす枝 短日のレントゲン技師素つ気なし 上嶋昭子 栗拾ふ巫女の襟足見てしまふ 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月21日 さきたま花鳥句会 岡田順子選 特選句
竜神の抉りし谷を秋茜 裕章 コスモスの続く車窓を開きけり かおり 段々の刈田に迫る日の名残り 月惑 残菊の縋る墓石に日の欠片 同 草野ゆく飛蝗光と四方に跳ぶ 裕章 夕空を背負ひ稲刈る父母の見ゆ 良江 二つ三つむかご転がり米を研ぐ 紀花 黄葉散るギターケースに銀貨投ぐ とし江 秋びより鴟尾に流離の雲一つ 月惑 弾く手なき床の琴へも菊飾り 康子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月23日 月例会 坊城俊樹選 特選句
ケサランパサラン白い山茶花咲いたから 順子 草の実の数ほど武運祈られて いづみ 盛大に残りの菊を並べけり 佑天 誇らしげなる白の立つ菊花展 秋尚 白帝の置きし十字架翳りなく かおり 魂のせるほどの小さき秋の蝶 順子 晴着色の鯉の寄り来る七五三 慶月
岡田順子選 特選句
初鴨の静けさ恋ひて北の丸 圭魚 色鳥の色を禁裏の松越しに はるか 草の実の数ほど武運祈られて いづみ 菊月の母は女の匂ひかな 和子 白大輪赤子のごとく菊師撫で 慶月 ふるさとの名の献酒ある紅葉かな ゆう子 大鳥居秋の家族を切り取れる 要 菊花展菊の御門を踏み入れば 俊樹 亡き者のかえる処の水澄めり いづみ 秋興や一男二女の横座り 昌文
栗林圭魚選 特選句
菊花展菊の御門を踏み入れば 俊樹 鉢すゑる江戸の菊師の指遣ひ 順子 玉砂利を踏む行秋を惜しむ音 政江 秋の影深く宿して能舞台 て津子 神池の蓬莱めきし石の秋 炳子 破蓮の揺れ鬩ぎ合ふ濠深き 秋尚 能舞台いつしか生るる新松子 幸風
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
戻りくる波より低き鰯舟 喜和 人波によごれし踵カンナの緋 かおり 考へる葦に生れにし秋思かな 吉田睦子 北斎の波へ秋思のひとかけら 美穂 一燈に組みたる指の秋思かな 同 石蹴りの石の滑りて秋落暉 ひとみ 砂糖壺秋思の翳は映らずに かおり ゆふぐれの顔して鹿の近づきぬ 美穂 城垣の石のあはひにある秋思 成子 おむすびの丸に三角天高し 千代 梟に縄文の火と夜の密度 古賀睦子 黒電話秋思の声のきれぎれに 同 恋人よ首より老いて冬眠す 美穂 顔伏せてゆく秋思らの曲り角 かおり
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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jitterbugs-lxh · 2 years
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手紙
 手紙が届いた。差出人の名前はない。のみならずほとんどそれらしい内容もなければ文字と言える文字もない。つまるところ、これを手紙である、と判断したのは受け取り手であるこちらの善意と厚意によるものであって、たいていのひとがそれを受け取ったなら、子どもの落書きか、よいところで書き損じの反故か何かだとでも判断するのが関の山だろう。ともすれば嫌がらせか、悪戯か何かと考えて受け取ってもらえないやもしれない。せめて署名くらいあればよいものを、そもそもこの差出人は己の名ひとつ満足に書き記すこともできず、これまではそれで何の支障もなかった。いまもってなお支障があるわけではないだろう。ながく生きてきて、手すさびにさえ筆を執ることのなかった玄离を机に向かわせているのがいったい如何なる理由であるものか、考えても答えはない。明確に、だれかの、なんらかの、意思を込められた手紙である、と考えるのは、いっそ願望じみた感情を伴っているようにも思われた。そう、諦聴は手紙を受け取りたかったのだ。あまり堂々と口にしたくはないけれども、たしかに、あのひとからなんらかの意図をもった贈り物を受け取りたかった。まあ内容もなければ判読に難いのでもらったところで特にどうということもないのだが、幾度となくまみえるなかで垣間見たかれの快闊さは、こうして筆のはこび、墨のしたたりひとつとってみても明らかで、これはこれで趣のあったものだった。おまえは文字が読めるのか、驚きをもって見開かれた玄离の眸を思い起こすとなおのことゆかいで、かれのいうところの妹分である李清凝と、まったく同じとはゆくまいがどうやら並べられているらしいことに頬がゆるむのも致し方なしといったところだろう。訊ねられてまあ人並みには、とこたえたが実のところはそれほど得手というわけでもない。武芸ばかりの暗愚にはなるなとあるじがいうのでそれなりに取り組んでいるというだけのこと。それでも玄离よりは真っ当な自信があるが。
 手紙をもってきた使いのけものは、すがたこそはちいさく愛らしい小鳥のさまであったが、単純な野山のけものであるとは言い難かった。けものたちは森に由来し、妖精もまた森に端を発するものが多い。それでなくとも多くの生きものは、豊かにたくわえられた霊のたすけあってこそ、生まれ、育まれるものである。森にはおおくの場合において王がある。手紙をくわえてちいさく首をかしげてみせる小鳥のわずかにやどした霊のけはいは、諦聴のよく知る、この世とも思われぬうつくしい深山のものに違いなかった。その森の奥に人里離れて門がある。とある力ある妖精の門である。かたちこそ門を模してはいるが、実際のところ、門扉もなければ衛士もないそれは、打ち捨てられ、崩れ落ちるのを待つだけにもみえる旧いもので、あり、導きのなければ是非くぐろうとは思われないものである。しかし、その門は、いつだって、だれにだって、拓かれていたとは言い難い。まず門にたどり着くのが困難で、ある、森は大いにひとを惑わし、解き放たれたけだものたちは、招かれざる客のまえに獰猛の牙を剝く。それらけだものたちの王こそが、ほかならぬ玄离そのひとであって、きくところによればけだものたちは、明に暗に、玄离に酩酊し、ときにはかれにすら嚙みついて、乳飲み子のするように力を啜るという。野のけだものにまで霊を分けてやるなど常の妖精であればありうべからぬことだが、そこは玄离だ、あの食えない老君によって取り立てられただけのことはある。そうして森にはかれの眷属が満ちているのにちがいない。葉擦れに振りかえれば角ある羚羊の物憂げな眸がある。さっと過る影のあるなら枝を駆ける山猫が、でなければ空をすべる猛禽の翼であるだろう。おしなべて玄离のものだ。おそらくは未来永劫。
 あるじの望まぬものを拒み、あるじによって許されたものだけが通行をゆるされる門のなかにひろがるは藍渓鎮、あるじの名は老君。戦乱おさまらぬ世にあって、おびやかされる命に思い悩み心をいためる慈愛のひとである、とはかれを慕って頼るひとびとの言で、実際のところの老君がいったいなにを考えていたものかだれにも推察かなわない。妖精である以上に、世俗をはなれ、はるか神仙の域にあって、積極的にひとをたすけているかにみえて、さりとても戦の勝敗や、国の采配には不干渉、手の届くところ、目の届くところでおきるいくらかの災禍によっておびやかされる命に、その端正な美貌をしかめはするが、しかしそれきりだ。できうる限りの手を尽くしているとは言い難いし、かといって、及ばぬ力を嘆いているようすもない。いっそ義務とでもいうような風情でかれはひとを愛すが、施すのでなく、いっとき援けるだけ、と、冷徹にも思われる一線を引いていた。かれはしばしば微笑みをたたえ、水面の月のように物静かに佇みはしたが、どこか剣呑、切長の眸に、ひとのおもう情はないのかもしれなかった。
 老君はおおいにすがたの整った男である。妖精のおおくは、野のけものや、それでなくとも絵巻物に綴られるすがたと、ひとのすがたをもっている。もっともひとのすがたというのは変化の術の一部であって、おさない妖精たち、すこしでも力があり、言葉を解し、知性を以てはたらくだけの素質が認められたものが、修練によってはじめて得る術のひとつであるから、それと決めたならあらゆる妖精が見目麗しいすがたで顕現してもおかしくはないのだが、美醜の価値観はそれぞれに、例外なく慕われるもののないように、うつくしいばかりと限らない。老君の見目のよさは、ひとえにかれの洒落者らしいふるまいや、よい仕立て、よい織の衣、泰然としていながら一分の隙もないさまなどに裏打ちされたものだった。妖精にはおおくの術がある。たいていはみずからに目覚めるものだが、力の大きすぎるものは、本人にも持て余し、また詳らかでないものでもあるので、名をつけ、向きを定め、かたちを顕し、色をつけてやるのは先達たちの仕事だった。もっとも、弟子をもって教えることは、かならずしも義務ではないので、ひとのみならず妖精であってもつよく交流をのぞまない旧い妖精は、遠く棲み処に引きこもって出てくることを拒み、みずからのみを供として孤独に暮らすものも多かったのだけれども。
 その点でいうならば老君は十分に社交的な性格をもった妖精であったといえるが、かれが庇護し慈しむ、かれの領民ともいえるひとびとのことを、口さがなくいうものもある。外界からとざされ、平穏という枷でしばられ、囲われた人間たちにとって、ただしく領主たりえるひとであるのか、かれなりの流儀があるのには違いないが、表立っては政治らしい政治をしない老君である。信頼のおける部下に任せ、己のなくとも恙なく、数年、数十年を過ごせるよう整えられているといえば聞こえはいいが、見方によっては放任である、と苦虫をかみつぶした顔をしたのは明王だ。老君はかれらを飼い慣らしているのだ、ひとはそれと知らずして生き暮らして、おり、もっとも厄介なことに、老君自身でさえもそれに気づいていないようだ、と。
 明王は諦聴のあるじであり、教えを請うたおぼえはないが、師のような存在でもある。自らがまだ年若い妖精であることを忘れはしない諦聴は、かつてあるじの命あって、同じく老君をあるじとして(もっとも、かれらのあいだの紐帯にはいっそ不可思議なものがあって、単純に主従というにはかれらの距離は気の置けない健やかさであったし、友というには嗜好が離れすぎている、気があうのだと言われればすわ偽りを、と指さして糾弾したくもなるが、互いに頓着したようすがないのがまたおかしいのである)頂く玄离とまみえたことがある。かれはそれはそれは楽しそうに術をつかいこなす武勇のひとで、あって、けして短くはない手合わせのあいだ、打ち合わされる掌底の重さ、偶然にも同じ焔をやどす眸のつよさ、いっそ狂気にも思われる、戦いを心底に愉しむふうの心根のすなおさには感心する。まがりなりにも高貴なあるじを頂いておきながら、その戦いはあまりにも泥くさく、貴人にみせてその目をたのしませるような、うつくしい型と冴えの演武などでなく、しかし追い詰められた窮鼠が反撃に出るような、背水のなりふり構わなさがあるではない。武を競いあうといって型には嵌まらず、戦乱のさなかにあって相手のいのちを落とすまで続く剣戟でもない。
 鋭利のつるぎでないのだから、掌底がいのちを奪わないと考えるほど愚かでなかった。かれが本気で、また、老君が、かれを愉しませ、放っておけば日がな一日君閣へこもって書を繰るあるじに付き合って鬱憤をためているらしい玄离の気を抜かせる必要を感じていなかったのなら、しこたまに打たれたこの身は砕けていたかもわからない。玄离にもらった痛みは忽ちに癒され、苦くおもえども瑕疵ひとつこの身にない。治癒のまじないをこうまでも巧みに使いこなすさまは、ひとを、けものを、妖精を、癒やして救う以上に、拷問のおそろしさを孕んで、いた、目を焼かれ、手足を潰され、痛みにうめきながらもけして言葉を紡がぬ捕虜のあるだろう、傷はいつか膿み、身体は朽ちて、死者は口をきくことはない。しかしどうだろう? 老君のまえでは、苦痛に耐えて死に至るは許されない。これがどれほど恐ろしいことなのか、この男たちは知っているはずだ、けれどもあの娘は、知っているだろうか。
 気を蓄え、名を与えられ。時を経てすがたを成した己なれば、いっとき力を失い姿を砕かれたとても、ふたたびの顕現は不可能ではないが、みじかくはない修練の日々、あさくはない霊の気が、あるいは散じていたかと思うとぞっとする。おのれに執着するのは未熟のゆえか、諦聴、この名はなにも、器にのみ与えられたものではない。ぱちん、火花のはじけるように、お世辞にも文字とはいえない墨だまりがはじけて、込められた霊が、あやまたずもとの持ち主のすがたを成した。片手で掴め、握りつぶすことすらできるのではないかと思われる體に、不釣り合いに大きい頭、目にもあざやかな朱の組み紐やぞんざいに編まれた髪のおおまかなかたちはあるが、それほど詳細に造りこまれた見目ではない。もっともこの程度の霊でかたちをすべて成すことなど不可能であるし、そもそもかれにはそういった、繊細な術のくみたてなどできようはずもないのだ。やはり老君はかれのあるじであっても師ではない。ちいさな霊の人影はにぱ、白い歯をみせて破顔一笑、けはいはまちがいなく玄离のものだったが、墨はかれの匂いでないし、どこかちぐはぐの印象をあたえる。かれと己とはけして友ではありえぬし、ましてや好敵手として名を挙げてもらえるほど、自らの存在と力を過信してはいない。気まぐれにひとを拾って領主の真似事をしている老君にしてこの狗である。内容のない手紙だから特に何を語るでもなく、きゃらきゃらと笑っているばかりの玄离からの手紙の霊を憮然として見つめていると、どことなく腹が立ったから、脇腹をつついてやった。
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ari0921 · 3 years
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)9月4日(土曜日)
通巻第7038号 <前日発行> 
 管首相、突然の辞任は予想されていた
  横浜市長選敗北で孤立感、二階とともに政権を去るもよし
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 高市皇子は壬申の乱で天武天皇の勝利を導いた立役者である。
 大海人皇子(後の天武天皇)の長男で、大和国高市郡にて育った。日本史を揺るがせた壬申の乱が勃発したとき、高市皇子は近江大津京にいたが、すぐに行動を起こし、伊賀で父親の軍と合流した。
 天武天皇の陣には尾張氏ら有力な豪族が味方し不破関を占拠、各地に増員命令を出した。
 天武天皇は現在の四日市市郊外の高台に陣を敷いた。高市皇子は合流する豪族の軍隊を掌握し、大海に攻め込む手筈を整える。
 劣勢を知った大友皇子(弘文天皇)は自ら果てた。極めて短時日裡に壬申の乱は天武天皇の勝利となった。西国の豪族が近江に合流しなかったのは防人任務の疲れと財政逼迫と言われたが、隠れた要素は大友皇子の出自(采女と天智天皇の間に生まれた)と言われる。
 天武天皇薨去後、皇后の持統が称制を経て即位した。序列で高市皇子は草壁皇子、大津皇子に次ぐ皇位継承権第三位だった。だが、直後に大津皇子が誣いられ、続いて草壁皇太子が薨御、天武天皇皇后だった?野讚良皇女が政権を掌握した経過がある。
 高市皇子は太政大臣にとなる。文字通り、持統天皇を支え、高市皇子の長男が後に大和朝廷の実権を握る長屋王である。
 壬申の乱の前段は「乙巳の変」だった。蘇我入鹿暗殺は、大化の改新へ繋がる嚆矢となる。
 大化の改新は西暦645年(この年から元号を制定し、大化元年となる)だった。。
たしかに中大兄皇子(後の天智天皇)と中臣鎌足(後の藤原鎌足)による蘇我入鹿の暗殺というクーデターが切っ掛けである。蘇我稲目いらい、馬子があろう事か渡来人を唆して、安康天皇を暗殺し、入鹿は権勢を恣にしていた。父親の蘇我蝦夷も翌日、自殺に追い込まれた。
従って「乙巳の変」とは暗殺事件による蘇我氏滅亡を指す狭義である。広義には公地公民などの政治改革は継続され、大化の改新とは税制を改め、半世紀後の大宝律令へといたる天皇親政システムの確立にあり、難波への遷都も行われた。蘇我馬子は聖徳太子の保護者にして実力者だった。蘇我氏に正面から楯突く有力者は不在だったが、舒明天皇擁立をめぐって滅ぼされることとなる。
 革新的な思想の背景に、留学帰りのイデオローグが存在した。南淵請康は渡来系の学僧だが、飛鳥に住んだ。覚えが速く、学識豊かで、早くから外国語に通じていた。第一回遣隋使で留学僧に選ばれて隋へ渡った。シナは隋が滅び、唐王朝に交替していたが南淵は留学を続け、32年後に飛鳥へ戻った。彼の帰国は640年のこととされる。
 
そして飛鳥の知識人、政治家、有力者に歴史、孔孟、四書五経など学問を教えた。南淵塾には中大兄皇子と中臣鎌足が通っていた。鎌足は蹴鞠の場で中大兄皇子との接触に成功し昵懇となっていた。
 ふたりの密談の場所といわれる桜井の談山神社は、宏大な敷地を誇る。その境内の何処かに南淵塾があった。南淵請康の墓は蘇我馬子の墓と言われる石舞台をさらに南下した明日香村にあり、小さな鳥居、大きな石碑、中規模の墓は苔むしている。
 さて、なぜ高市皇子のことを書いたか、もうお分かりだろう?
 高市早苗議員は奈良県畝傍高校出身、松下政経塾OB。むろん、高市皇子との血縁はない。  
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2ttf · 12 years
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manganjiiji · 2 years
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『祝福を切り分けながら』
赤森さんとの短歌合同誌のタイトルです。赤森さんの短歌から。フィガファウの短歌集としてこれ以上にないタイトルじゃないかと思います。お互いの掲載短歌を出し終わって、いよいよ私は中身の構成に、赤森さんは装丁ほかデザインに入ってくださっている。短歌を読み込んで並べ直す、というか、読む人の頭の中の情景をかたちづくることにもなる、歌の順序を決める作業は、かなり、えーっと、エキサイティング。というのも、赤森さんの短歌と、私の短歌を、まぜこぜにしているからである(どのようにまぜこぜにしているかは、お楽しみに)。二人の歌に登場するフィガファウの姿をひとつひとつ確認しながら、このフィガロに対してこのフィガロ、このファウストの次にはこのファウスト、ここはフィガロとファウストがこうでこうでああで、とやっているので、当然だが、頭の中がずっとフィガファウである。二人のフィガファウは恐らく全然違うのだが、近しいところもある。とくに私は赤森さんのフィガファウのファンなので、それを自分のフィガファウと隣に並べてもいい!という現象にかなり興奮した。フィガロというキャラクタの特性上、「一定程度の諦め」というのがある。そこに自嘲があったり、苦しみがあったり、懐古があったりする。私も赤森さんもおそらくフィガロの幸せを願っているのだが、赤森さんの方がややリアリスト、私の方がややロマンチストなフィガロになっているような気がしなくもない。言葉の使い方からも一目瞭然だとは思うが、キャラクター性からも、赤森さんとわたしの短歌は見分けがつきやすいと思う。短歌短歌と言ってしまっているが、素人が見よう見まねでやっていることなので、実際には短歌とは言えないだろう。けれど少なくとも私達は、そこを「目指してはいる」ということで、短歌といって差し支えないと(私は)考える。フィガロがファウストを思っている歌だったり、その逆だったり、二人のことをどちらかが客観視しているような歌だったり、手を替え品を替えおのおののフィガファウを、31音にのせて歌っている。かなりいい歌が幾つかあると思う。こうやって数を集めてみると、私はともかく、赤森さんの歌は、「これはみんなに人気だろうな」と思える「光る」歌がかなりはっきりと見えてくる。私もそのような歌を作れるように精進したい。
今日は9時半過ぎにカラオケまねきねこに到着し、30分10円の「朝うた」を利用し、500円以下で2時間半歌った。今の課題曲は松たか子の「ありのままで」なので、これは7回ほど練習し、最後にまた歌った。なぜか画面に採点用の譜面が出ており、気が散ったが、採点をしている訳でもないらしく、消し方がわからなかった。ただ歌っているうちに、音程がいかにずれているか、どこまでがビブラートとして機械に認識されるかなどがわかって、面白くなった。JOYSOUNDは全部あれ(譜面付き)になったのだろうか。それともたまたま私の入った部屋の設定がそうだったのだろうか。次回も楽しみである。歌う曲はもうほとんど変わらない。いつもの曲。もっと課題曲を増やしていかないとなあと思う。全然練習とは関係ないが「残酷な天使のテーゼ」を歌っている時、シン・エヴァンゲリオンや庵野秀明展、NHKのドキュメンタリーを思い出し、つい涙腺が緩んだ。庵野秀明という人の凄まじさと、はてしない、他者への祝福を思い知ると、エヴァに関する全てのことが重く新しい喜びを連れてきてくれる。喉は最初全然開かなかったが、後半はどうにか開いてきて、しかし筋肉の衰えがすごかった。もう少し頻繁に朝うたに行かないとだめだと思う。aikoを安定して歌えなくなっているのはよくない。いや、もう、aikoはめちゃくちゃに歌が上手くて、全曲で神業を披露しているが…真似しようと思ってできるものではないが…。
その後はスターバックスで3時間ほど原稿のための本の選定とプレイリストとの照らし合わせ、ネタの確認(シーン数の確認)をして、『象の消滅』『掌の小説』からそれぞれ読んだ。『掌の小説』にある川端康成の「歴史」が、一読して意味がわからないというか、たぶんこうだろうと思うけれどいまいちぱっとは掴めない、というところでGoogle検索し、最低限の読みを確かめた。どうしても、いまいち言い回しがぱっとわかる感じではなく、そのあたりが時代の雰囲気というもの、私が読んですぐわかるような「同時代人」ではないことに起因するのか、たんに読解力の無さによるのかは判然としない。春樹の「ねじまき鳥と火曜の午後の女たち」(だっけ?)は、夏の太陽にじりじりと焼かれる感じがすごくよかった。私は多分小説の中身よりも、光景とか匂いとか感触とか、そういう「どこか」へ行ったという記憶のほうが強く残ってしまうので、本当は春樹は言いたいことがあるんだろうけど、私にはまだまだそれを捉えることができない。自分の中に死角のような場所があり、自分はそこに気づけず、だんだん「ずれて」いってしまう、という話だった。それは大変だなあと思った(私にはそういうことはないので)。ただ、自分の中に死角があるかもしれない人にはとても寄り添った小説だと思った。私の中にも死角はあるだろうが、それによって「ずれる」ということはない。最初からやるべきことがはっきりと決まっている。これは過去の生育環境のおかげである。それにしても村上春樹の小説は面白いので、結構どんどん頁をめくることができた、私にしては。この調子でどんどん読んでいこうね。ほかに『パパララレレルル』『踊る自由』を何篇か読み書きし、寝る前には『停電の夜に』のふたつめの話を読んだ。小説がうま〜い、と思った。こういう小説が書けたら楽しいだろうな。ただ起こっていることをその通りに、善性をもったちいさきひとの目線で綴られる、世界の中に生きる自分の話。現代日本に生きていたら絶対に感覚できないこの緊張感。そのかわり現代日本でしか感覚できない緊張感もまたあるが。ようはそれを書けばいいのだと思う。みんなが素直にそれを書けば、ようは村上春樹も素直にそれを書いているんだと思う。川端康成も。きちんと自分が感じたことを、きちんと「有り得る」世界法則のうえで、キャラクタに感じさせたり、苦しめたり、許したりしている。いい作家というのはみんなそうかもしれない。
今日は採用に2件落ちた。まだ2件なのでドンマイである。3月中までに決まらなければ、というかそれでは遅いので、2月中に決まらなければ、田舎に引っ込まなければならなくなるので、まあそれでもいいのかもしれない(小説は書けるし)と思いつつ、やはり仕事をしたい気持ちが強い。田舎には働き口がなかなかないし、私は移動手段を持たないので。せっかく体がよくなってきたので、ここらで2年くらいフルタイムで働いて、大人の階段をもうワンステップ上りたい。
近くの安くないスーパーで牛乳、玉子、コーヒーを買い(気力がなくて遠い方のスーパーに行けなかった)、夜はキャベツ炒めと生卵、白飯、レトルトの味噌汁を食べた。さて寝よう。
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juneabeppo · 3 years
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禅 - ZEN 愛と力
一粒の砂に世界を見、
一輪の野の花に天を見る。
汝の掌に無限を捉え、
一時の中に永遠を見よ。
(ブレイク)
泉のささやきにより、
いと小さい枝の葉ずれの音により、
日の神が眠りにつく時
開いた葉を閉じる雛菊により、
蔭なす木により、灌木により、
彼女はわたしに伝えることができる。
自然の一切の美が、
誰かほかの、もっと賢い人に伝え得るよりもっと多くのことを。(ウィザー)
数多くのキリスト教会、仏教寺院、ユダヤ教会堂、回教寺院、それに実質的、精神的な教育機関にもかかわらず、われわれの多くは、無知で、愚かで、全く自我中心的にすぎるということである。これが、時に、悟れる者を失望落胆させる。あまたの仏像、聖像に、われわれはその跡を見出すことができる。
シンシナティの Van Meter Ames 博士は言う、
「まったくの貧困と絶望的事態においては、無感覚が一番よいのかもしれない。だが、それがおよそ人間の生活が到り得る最大のものだと思うのは、悲しい迷いである。」
 博士はまったく正しい。人間が人間であるかぎり、かれはその周囲に起きるさまざまな出来事に、無感覚でいることはできない。人口の密集した都会の真中で原子爆弾が炸裂したのちの、あらゆる人間の苦痛、苦悶、悲惨を目にする時、かれの神経は千々に引き裂かれる。
 そしてもっともいけないことは、人はこれらの苦の前にまったく無力だということである。人が持ち得る唯一の救いは、もしそれがかなうことならば、無感覚の福音であろう。何と非人間的なことではないか。われわれの団体活動はすべて、個人の考えや行為の集積であると自分は考えたいのだが、以上の事柄は、みな絶望的にわれわれ個人の制御を越えるものである。このことを思う時、自分は神に次のような独り言をいわせた聖書の著者に、深く共鳴せずにはいられない。
「エホバ、人の地に大なると、其心の思念の都て図維る所の恒に唯だ悪きのみなるを見たまへり。是に於て、エホバ、知の上に人を造りしことを悔いて、心に憂へたまり。エホバ言たまひけるは、我が創造りし人を我が地の面より拭去ん。人より獣、昆虫、天空の鳥にいたるまでほろぼさん。
其は我れ之を造りしことを悔ればなり。」(「創世記」第六章五-七節)
 神は今、地上から人を拭い去る大事業に専心従事しているのであろうか。まさにそのようである。それならば、人間は人間であるかぎり、この事態に対処する態度を持たねばならぬ。
『愛と力』
 いまだかつて、人類の歴史において、現代の世界におけるほど精神の指導者ならびに精神的価値の高揚が差し迫って必要だったことはない。前世紀から今世紀にかけて、われわれは人類の福祉の増進のために幾多の輝かしい成果をおさめてきた。しかし、おかしなことに、われわれは、人類の福祉が主として精神上の智恵と訓練によるものであることを忘れていたようである。今日、世界が憎しみと暴力、恐怖と不実の腐敗した空気に満たされているのは、ひとえに、われわれがこのことを充分に認識しなかったことによる。実際、われわれは、個人としてのみでなく、国際的にもまた民族的にも、おたがいの破滅のためにいよいよ力をつくそうとしているかのごとくである。
 今日、われわれの考え得る、そして、その実現をねがうさまざまの精神的価値のうち、何よりも切望せられるものは “愛” である。
生命を創造するのは愛である。愛なくしては、生命はおのれを保持することができない。今日の、憎悪と恐怖の、汚れた、息のつまるような雰囲気は、慈しみと四海同胞の精神の欠如によってもたらされたものと、自分は確信する。
この息苦しさは、人間社会というものが複雑遠大この上ない相互依存の網の目である、という事実の無自覚から起きていることは、言をまたない。
 個人主義の道徳の教えは、さまざまの意義ある成果を生んで、まことに結構である。しかし、個人は他の人々から孤立し、その属している集団──それは生物的な集団、政治的な集団、宇宙論的な集団など、さまざまあろうが──から切り離される時、もはや存在しないということを忘れてはならない。数学的にいうならば、一という数は、無限に存する他の数と関係しないかぎり、一ではない、それ自身ではあり得ない。一つの数それ自体の存在などということは考えられない。これを道徳的もしくは精神的にいえば、それぞれの個人の存在は、その事実を意識すると否とにかかわらず、無限にひろがり一切を包む愛の関係網に、何らかのおかげをこうむっているということである。そしてその愛の関係網は、われわれのみならず、存在するものすべてを漏らさず摂取する。実にこの世は一大家族にして、われわれひとりひとりがそのメンバーなのである。
 人間の思想の造型に、地理がどれほど関係あるものか、自分にはわからない。だが、事実、七世紀の頃、“華厳哲学” として知られる一つの思想体系が開花したのは、極東の地においてであった。華厳(けごん)は、たがいに融通し、たがいに滲透し、たがいに関連し、たがいにさまたぐることなしという考え方に基づく。
 この一切の相依相関を説く哲学が正しく理解される時に、“愛” が目覚める。なぜならば、愛とは他を認めることであり、生活のあらゆる面において他に思いを致すことだからである。「すべての人に為(せ)られんと思うことは、人にもまたそのごとくせよ。」これが愛の要旨であり、これは相依相関の認識からおのずと生まれてくることである。
 たがいに関係をもち、たがいに思いやるという考え方は、力の観念を排除する。力とは、内的関係の体制の中に外から持ち込まれるものだからである。力の行使はつねに、専断、独裁、疎外に向かう。
 近頃、われわれが憂慮するのはほかでもない、力の本性を見抜けないで、したがって、それを全体の利益のために用いることのできぬや̀か̀ら̀が、力の概念を不当に買いかぶって主張することである。
 愛とは、われわれに外から与えられる命令ではない。外からの命令には、力の意味がふくまれている。行きすぎた個人主義は、力の思いを育てはぐくむ温床である。なぜならば、それは自己中心的なものであって、ひとたび外にむかって動き出し、他人を支配しようとしはじめると、はなはだ尊大に、またしばしば、はげしい手段をもって自己を主張する。
 それに反して、愛は、相依相関の心から生まれ、自我中心、自己強調とはほど遠い。力が、表面は強く、抵抗しがたく見えながら、実はみずからを枯渇させるものであるのに反し、愛は自己否定を通して、つねに創造的である。愛は、外部の全能なるものを待たずして、みずから働く。愛は生命、生命は愛である。
 生命は、かぎりなく錯綜した相依相関の網であるから、愛の支えなくしては生命たり得ない。愛は、生命に形を与えようとして、さまざまのす̀が̀た̀に自己を実現する。形は必然的に個別的である。そして分別する知性は、とかく形を究極の実体とみなしがちである。力の概念はここから生まれる。知性が発達し、その独自の道を進んで、人間活動の実利的分野でおのれがおさめた成功に夢中になってくると、力が暴れ狂い、周囲を破壊しまわる。
 愛は肯定である。創造的肯定である。愛はけっして破壊と絶滅には赴かない。なぜならば、それは力とは異なって、一切を抱擁し、一切を許すからである。愛はその対象の中に入り、それと一つになる。しかるに、力は、その特質として二元的、差別的であるから、自己に相対するものをことごとく粉砕し、しからずんば、征服して奴隷的従属物と化さねばやまぬ。
 力は、科学ならびにそれに属するすべてのものを利用する。科学は、分析的であるにとどまり、無限に多様な差別相とその量的測定の学たることを越えないかぎり、とうてい創造的ではあり得ない。科学において創造的なものは、その探究の精神であるが、それは愛によって鼓舞されるものであって、力によってではない。力と科学の間に何らかの協力が行なわれる時には、その結果は、いつでも、さまざまの災害と破壊の手段を考え出すことになる。
 愛と創造力とは一つの実体の両面のすがたであるが、創造力はしばしば愛から切り離される。この不幸な分離が行なわれる時、創造力は力と結びつくことになる。力は実は、愛や創造力よりも下位のものである。力が創造力をわがものとする時、それはあらゆる禍いをひきおこす危険きわまりない要因となる。
 前述のように、力の観念は、実在の二元的解釈から必然的に生まれる。二元論が、その背後に統合する原理のあることを認めようとしない時、その生来の破壊的傾向は、奔放に、ほしいままに露呈される。
 この力の誇示のもっとも顕著な一例が、西欧の人々の自然に対する態度にみられる。かれらは自然を征̀服̀す̀る̀といって、けっして自然を友̀と̀す̀る̀とはいわない。かれらは高い山に登っては、山を征服したと公言する。天のかたに向かってある種の発射物を打ち上げることに成功すると、今度は空を征服したと主張する。なぜかれらは、いまやわれわれは自然とよりいっそう親しくなった、とは言わないのか。不幸なことに、敵対観念が世界のすみずみにまで滲透して、人々は「支配」、「征服」、「管制」等々を口にする。
 力の観念は、人格とか、相互依存とか、感謝とか、その他さまざまの相互関係の心を斥ける。われわれは、科学の進歩、たえず改善される技術、ならびに工業化一般によっていかなる恩恵を引き出そうとも、みながひとしくその恩恵にあずかることは許されない。なぜならば、力は、われわれ人類同胞の間にひとしく恩恵を分配しないで、それを独占しがちだからである。
 力はつねに尊大で、独断的で、排他的である。それに反して、愛はおのれを低うし、一切を包��する。力は破壊を意味し、自己破壊をさえあえてする。愛の創造性とはまったく反対である。愛は死に、そしてふたたび生きる。しかるに力は殺し、そして殺される。
 力とは人を物に変えるち̀か̀ら̀である、と定義したのは、シモーヌ・ウェイルだったと思う。自分は、愛とは物を人に変えるち̀か̀ら̀である、と定義したい。かくして、愛は力と根本的に対立するもののようにもみえる。愛と力はたがいに排除し合い、したがって、力のあるところには愛の影さえささず、また愛のあるところには力はまったく立ち入る余地もないと考えられる。
 これは、ある程度までは正しい。だが真実には、愛は力に対立するものではない。愛は力よりも高い世界に属し、愛に対立すると思い込んでいるのは、力の方だけである。まことに、愛は一切をつつみか、一切を許す。それは一切を和らげ、かぎりなく創造して尽きるところを知らぬ。力はつねに二元的である。したがって固定的で、自我を主張し、破壊におもむき、すべてを滅却する。そしてもはや征服すべきものがなくなると、おのれに鉾先を向け、おのれを滅ぼすに到る。力とはこのような性質上のものであるが、これは、今日われわれの目撃するところではないか。それは国際問題において殊に顕著である。
 愛は盲目というが、盲目なのは愛ではなくて、力である。けだし、力は、おのれの存在が何か他のものに依ることをまったく見落としている。それは、自己とはくらぶべくもない大いなる何ものかにおのれを結びつけることによって、はじめてそれ自身であり得ることを認めようとしない。この事実を知らぬままに、力は自滅の淵に一直線に飛び込んでゆく。力が悟りを体験するには、まず、その眼を覆うと̀ば̀り̀を取り除かなければならない。この体験なくしては、力の近視眼的ま̀な̀こ̀には、真のす̀が̀た̀は一切うつらない。
 ま̀な̀こ̀があ̀る̀が̀ま̀ま̀の実在、すなわち実相を見得ない時、恐怖と疑念の雲が、見るものすべてを覆う。実在の真相を見ることあたわずして、ま̀な̀こ̀はみずからをあざむく。相対するものをことごとく疑いはじめ、破壊しようとほっする。こうしてたがいに疑ってとどまるところを知らず、こうなっては、いかに説明しようとも、対立緊張を和らげることはできない。双方がありとあらゆる詭弁、奸策を弄する。これが国際政治では、外交という名の下に行なわれる。だが、相互の信頼と、愛と、和解の精神の存せぬかぎり、いかなる外交も、みずからのか̀ら̀く̀り̀によって創り出した緊張状態を緩和することはできないであろう。
 力に酔った人々は、力が人を盲目にし、しだいにせばまる視界に人を閉じ込めるものだということに気づかない。こうして力は知性と結びつき、あらゆる方法でそれを利用する。だが、愛は力を超越する。なぜならば、愛は実在の核心に滲透し、知性の有限性をはるかに越えて、無限そのものであるからである。愛なくしては、人は、無限にひろがる関係の網、すなわち実在を見ることはできない。あるいは、これを逆に言えば、実在の無限の網なくしては、真に愛を体験することはできない。
 愛は信頼する。つねに肯定し、一切を抱擁する。愛は生命である。ゆえに創造する。その触れるところ、ことごとく生命を与えられ、新たな成長へと向かう。あなたが動物を愛すれば、それはしだいに賢くなる。あなたが植物を愛すれば、あなたはその欲するところを見抜くことができる。愛はけっして盲目ではない。それは無限の光の泉である。
 ま̀な̀こ̀盲(めしい)、みずからを限定するがゆえに、力は実在をその真相において見ることができない。したがって、その見るところのものは虚妄である。力それ自体もまた虚妄である。そこで、これに触れるものも、またすべて虚妄性と化する。力は虚妄の世界にのみ栄え、かくて、偽善と虚偽の象徴となる。
 終りにあたり、くりかえして言う。実在するものすべての相依相関の真理に目覚め、たがいに協力する時、はじめてわれわれは栄えるのだという事実を、まず自覚しようではないか。そして、力と征服の考えに死して、一切を抱擁し、一切を許す愛の永遠の創造によみがえろうではないか。愛は、実在をあ̀る̀が̀ま̀ま̀に̀正しく見ることから流れ出る。そこで、われわれに次のことを教えてくれるのも、また愛である。すなわち、われわれ──個別的に言えばわれわれのひとりひとり、集合的に言えばわれわれのすべて──は、善にあれ悪にあれ、この人間社会に行なわれることの一切に責任がある。だから、われわれは、人類の福祉と智慧の全体的発展を妨げるような条件を、ことごとく改善もしくは除去するように努めなければならないのである。
『愛と力』鈴木大拙(1958年にブラッセル万国博覧会で読まれたメッセージ)邦訳 工藤澄子1965年2月25日(筑摩書房刊)『禅』(筑摩文庫1987年9月29日発行)より。
鈴木大拙(すずきだいせつ)
1870年(明治3年)、金沢市に生まれる。国際的に著名な仏教哲学者。本名は貞太郎。1891年(明治24年)、東京に遊学。東京大学選科に学びつつ、鎌倉円覚寺の今北洪川、釈宗演の下で参禅。1897年(明治30年)、一元論的実証主義者P.ケーラスをシカゴにたずね、11年間とどまる。1909年(明治42年)帰国、禅を広く海外に紹介し、大乗仏教の国際性を宣布した。1949年(昭和24年)、文化勲章受賞。1966年(昭和41年)死去。主著『楞伽経研究』『日本的霊性』『禅と日本文化』ほか。
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monqu1y · 3 years
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国を護るアイデア  戦の上策は損害を出さない、次策は敵を破る、下策は城攻め(コスパ最悪)。具体的なアイデアを使って国を護る
 市営住宅集会所へ講演会を聞きに行った。  演題は「 兵法書 ( へいほうしょ ) を読んで『生き方』を考える」。内容の要点は次の通りだった。   孫武 ( そんぶ ) は、今から2500年ほど前に、 楚 ( そ ) の王城を 陥落 ( かんらく ) させた 呉 ( ご ) の 軍師 ( ぐんし ) 。
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 呉の軍師として採用される就職面接でのエピソードが有名。  呉王:就職論文は読んだ。実戦の手腕を見せてもらいたい。宮中の婦人相手でも、軍の指揮を執ることはできるか?  孫武は、これを了承した。宮中の美女180人を集合させて二つの部隊とし、武器を持たせて整列させ、王の寵姫二人を各隊の隊長に任命した。  孫武:左右前後がわかるか?  美女軍団:わかります。  孫武:前といえば胸を、左と言えば左側、右と言えば右側、後ろと言えば背側を見よ。  美女軍団:わかりました。  孫武は、将軍の印の鉄斧を置き、太鼓を打って「右!」と号令した。  宮女たちはどっと笑った。  孫武:命令が不明確で徹底しないのは、将の罪だ。  孫武は、太鼓を打って「左!」と号令した。  宮女たちはどっと笑った。  孫武:命令が既に明確なのに実行されないのは、指揮官の罪だ。  孫武が隊長の二人を斬首しようとしたので、壇上で見ていた呉王は驚き「斬るのはやめろ!」と止めた。  孫武:一たび将軍として任命を受けた以上、陣中にあっては君命でも従いかねることがございます。  孫武は、呉王の寵姫を二人とも斬ってしまった。そして新たな隊長を選び号令を行うと、今度は女性部隊は命令どおり進退し、粛然として声を出すものは居なかった。  孫武:兵は既に整いました。降りてきて見ていただきたい。水火の中へもゆくでしょう。  呉王は、大いに不愉快な表情をしたが、孫武の軍事の才を認めて将軍に任じた。 以下は、就職論文の要旨。 第1.始計  〔戦の五条件〕   1_道:民が統治者と心を同じにし、死生をともにすることをためらわない   2_天:陰陽、寒暖などの自然現象   3_地:遠近、険易、広狭、死生などの地勢   4_将:智、信、仁、勇、厳などの将軍の能力   5_法:編制、服務規律、装備  〔優劣判断七要素〕   1_どちらの王様がよい政治をしているか?   2_どちらの将軍が有能か?   3_自然現象と地勢はどちらに有利か?   4_法令はどちらがよく行われているか?   5_軍はどちらが強いか?   6_士卒はどちらがよく訓練されているか?   7_賞罰はどちらが明確に行われているか?  〔敵をあざむく駆け引き〕   1_能力があるのに能力がないように   2_ある戦法を用いているのに用いていないように   3_近くにいるのに遠くにいるように   4_遠くにいるのに近くにいるように   5_利益を見せて敵を誘い出して混乱させ   6_戦力が充実していても慎重策を取り   7_強いのに敵の攻撃を避け   8_敵を脅してその勢いを���じき   9_下手に出て敵を驕らせ   10_楽をしている敵を疲弊させ   11_敵の同盟国と親しくして敵国との離間を謀り   12_敵の備えがない所を攻め敵の思いがけないことをする 第2.作戦    戦で、快速戦車千輌、輸送車千輌、武装兵十��を千里の遠くに遠征させ、これに糧秣を送れば、国の内外での軍費、外交費用、武具の膠や漆の購入費、武装兵や馬を養う費用などのために、一日に千金を必要とする。    長期戦になれば、国費は不足し、兵力を弱め士気を衰えさせる。    遠征して輸送距離が長くなれば、軍が買う品物の値段が上がり、戦費は嵩む。    城攻めは戦力を消耗させる。    戦が長引けば、勝っても損失は大きくなる。 第3.謀攻  〔戦の上策〕   1_国に損害を与えない   2_軍に損害を与えない   3_旅師団に損害を与えない   4_卒に損害を与えない   5_隊伍に損害を与えない  〔次策〕   1_敵国を破る   2_敵軍を破る   3_敵の旅師団を破る   4_敵の卒を破る   5_敵の隊伍を破る    最上の戦い方は、武力行使前に敵の謀略を見抜く    その次は、敵国を孤立させる    その次は、武力を使って攻める    下策は、城攻め(コスパ最悪)    自軍に損害受けることなく謀をもって敵を攻める戦法を考えなければならない。    戦力が敵の十倍あれば包囲戦、五倍あれば圧倒戦、二倍あれば分散戦、同等ならば兵法駆使、戦力不足ならば逃げ、かなわないと思ったら最初から戦わない。小兵力で大兵力の敵に戦いをしかければ捕虜になる。    軍政を知らない王様が、将軍の軍政に干渉すれば、将兵は迷う。    用兵を知らない王様が、将軍の用兵に干渉すれば、将兵は疑う。    全軍が迷い疑えば、諸侯はこの隙を見て反乱を起す。  〔戦を有利にする五条件〕   1_戦ってよいときと戦ってはいけないときを知る   2_彼我の戦力比に応じた戦法を使う   3_上下が利害を共有する   4_情報と作戦で相手を上回る   5_有能な将に遂行を任せて、王様が干渉しない  〔結論〕   1_敵を知り己を知っていれば、百戦しても危ういことはない。   2_己を知っていても敵を知らなければ、勝敗は半々。   3_敵を知らず己も知らなければ、必ず敗れる。 第4.軍形    敵が勝てないよう備えるのは、自分のやり方次第。    敵に隙ができるかどうかは、敵のやり方次第。    名将は、自分の努力で負けないようにすることはできるが、敵に隙を作らせることができるとは限らないと知っている。だから、不断に観察し続け、敵が見せた隙を見逃さない。    名将は、勝ちやすいようにしておいてから勝つので、名作戦という評判や手柄を立てることがない。    勝つ軍は、勝つ見通しをつけてから戦い、敗れる軍は、戦いを始めてから勝つ見通しをさがす。 第5.兵勢    少数の兵を統率するのと同じように多数の兵を統率できるのは、編成がよくできているから。    少数の兵を戦わすのと同じように多数の兵を戦わすことができるのは、命令系統がよくできているから。    軍が敵の攻撃を受けても絶対に敗れないようにするのは、奇と正の使い分け。    軍を敵に差し向けると、固い石を卵にぶつけるような威力を発揮させるのは、虚と実をよく見分けること。    戦いは正をもって敵にあたり、奇をもって勝ちを決すもの。    奇に熟達した者は、次々と妙手を出して、天地が万物を生み出すようであり、黄河や長江の水のように尽きることが無い。    終わったと思えばまた始まるのは月日のよう。    死滅してまた生起するのは春夏秋冬の変転のようであり、音は五音にすぎないが組み合わせによってできる曲は無限。    色も五つにすぎないが、組み合わせによってできる色は見極められない。    味も五つにすぎないが、調理によってできる味は無限。    戦の基本は奇正の二つにすぎないが、その組み合わせは無限。    奇正が生じ、その変転循環して終わるところが無く、    その終始は誰にもわからない。    激流が石を浮かし流すようなことができるのは勢い。    猛鳥が軟らかい羽で小鳥の骨や翼を砕くことができるのは、打撃の時機が適切であるから。    このように名将の攻撃は、勢いが激しく、瞬間的な威力を発揮する。    勢いは張っている弓矢のようであり、好機を狙ってその一瞬に発射するようなもの。    戦で自軍は非常に入り混じり混乱しているように見えるが、    その実は統制がとれているから、円を画いて陣を展開するから破られない。    乱と治、怯と勇、弱と強は元来同じもので、容易に変わりやすい。    治乱は編成の良否によって決まる。    勇怯は軍勢の有無によって決まる。    強弱は軍形の状態によって決まる。    敵を動かす名将は、敵をこちらの動きに応じて動かせ、こちらが利益を示せば敵は必ずこれを取ろうとする。    ゆえに利を見せて敵を誘い出し待ち構えた本陣がこれを討つ。    名将は勢いよって勝ちを得ようとし、将兵の努力ばかり依存しない。    すなわち個人をあてにしないで、集団としての勢いを重視する。    このような名将が軍を動かすと、木石を転がすように自然であり、軽快。    木石というのは、安定すれば静止するし、傾けば転がり、方刑にすれば静止し、円刑にすれば転がる。    名将が円石を高い山から転がすように軍を動かすのは、勢いの活用を知っているから。 第6.虚実    名将は、自分の思うように戦況を動かして敵に動かされない。    先んじて戦地に到着し敵を待ち受ければ、遅れて到着し戦力消耗した敵と戦うことができる。    自軍に有利なところでも敵が好んでやってくるのは、利益をかざして戦うから。    自軍に不利なところでも敵がやってこないのは、損害を与えるようにしむけるから。    敵を苦労させ、満腹でいる敵を飢餓に落としいれ、平静にしている敵を動揺させる。    敵の必ず行く所へは先手を取り、敵の予期しないところへ行って意表をつく。    敵の抵抗のない所を行けば、消耗は少ない。    敵が防御の備えをしていない所は攻撃し易い。    敵が攻撃できない所に居れば防御し易い。    撤退が迅速なら、敵は追撃できない。    城壁を高くし堀を深く掘った敵に、それを棄てて出撃させるためには、敵がどうしても救わなければならないところを攻めるべき。    敵の作戦を暴露させ、自軍の作戦を秘匿すれば、自軍は戦力を集中して分散した敵を攻めることができる。自軍がまとまって一となり、敵が分かれて十となれば、自軍の十をもって敵の一を攻めるようなもの。すなわち自軍は衆で、敵は寡となる。あらかじめ戦の地を知り、戦う日を決めて、主導権を握れば、敵を寡にして自軍を衆にすることができる。    軍の形を敵に分からなくさせれば、深く侵入する間者も情報を得ることができず、敵の知恵者も策の立てようがない。    水が地形によって流れを決めるように、軍は抵抗の多いところを避けて抵抗の弱いところを攻め、敵の変化に対応して軍を動かす。 第7.軍争    先んじて戦地に到着し敵を待ち受ければ、遅れて到着し戦力消耗した敵と戦うことができる。    しかし、全軍を挙げて前進すれば行動が遅くなり、先んじて戦地に到着することはできない。    軍を各部隊に分ければ、速度の遅い輸送部隊は置き去りにするしかないが、糧秣を集積した倉庫がなければ戦えないもの。    甲冑を捨てて昼夜かまわず走り続け、行程を倍にして強行軍をして百里も前進すれば、三軍の将は敵の捕虜となり、体力の弱い者は脱落し、十人に一人しか残らない。    五十里の行軍で先を急げば、前軍の将は戦死し、兵の半分は脱落する。    三十里の行軍で先を急げば、三分の一が戦場に到着できない。    諸侯の考えていることが分からなければ外交はうまくできない。    山林、険阻、河川湖沼などの地勢を知らない者は、軍をまとめることができない。    道案内を使用しない者は、地形を有利に活用することができない。    敵よりも回り道を進むときは、利益で釣って敵を遅らせたり、出発が敵より遅れても敵より早く到着するような策略を用いるべきである。    用兵の要点は自分の作戦を敵に察知されず、有利な状況を求めて動き、状況に応じて兵力の配分を行うこと。    軍の行動は、風の如く迅速に移動し、林の如く整然と静かに構え、火のように激しく攻撃し、山のように泰然として動かない。姿や計画を暗闇のように分からせず、雷鳴のように激しく行動する。    物資を調達するときには軍を分散し、土地を占領したときには各部隊に有利な地を守らせ、兵力を分散させない。    戦場では、指揮官の声は遠くまで届かないから、鐘や太鼓を信号とする。指揮官の位置、行動は遠くから見えないから、旗で合図をする。鐘や太鼓、旗は将兵の情報を斉一にし、意図統一をはかるもの。    将兵の心気を専一にすれば、勇者も一人で勝手に進まず、卑怯者も勝手に退くことをしない。これが多数の人間を指揮する方法。    戦いは敵の気と敵将の心を奪うことが肝心。    人の気力は、朝は新鋭で、昼は鈍り、夜は衰える。善く兵を用いる者は敵の気の新鋭なときを避け、衰えるときに撃つ。    夜の戦いには松明や焚火を多くし、昼の戦いには旗を多く用いるのは、敵の耳目を疑わせるため。    近くに布陣して遠くからの敵を待ち、安楽にして疲労した敵を待ち、給養をよくして悪い敵を待つ。    正正と進軍する敵を撃ってはならない、堂々と構えている敵陣を攻めてはならない。    高地に陣する敵を攻めてはならない。高地を背後にしている敵を攻めてはならない。    いつわり逃げる敵を不用意に襲ってはならない。餌兵につられてこれを攻めてはならない。    鋭気のある敵を攻めてはならない。整然と戦場を去ろうとする敵を攻めてはならない。    敵を包囲してもわずかに逃げ路を空けておかなければならない。死にもの狂いの敵に迫ってはならない。 第8.九変    戦では、作戦困難な地に宿営してはならない。    交通上の要地は外交によって支配下に入れる。交通連絡が不便な地に軍をとどめてはならない。    山川に囲まれた地に入ったら、脱出する工夫をせよ。    危ない地に入ったらただ戦え。    道があるからといって、進まねばならないというものではない。    敵を見たからといって、戦えばよいというものではない。    城があるからといって、攻めればいいというものではない。    戦略上の要地だからといって、取ってはならないものもある。    君命も状況によっては、従わないこともある。    地形をよく知っていても、その利用法を知らない将は、地形の利を知っているとはいえない。利用法をよく知っていても、実行する術をもたない将は、兵を率いて戦うことはできない。    智者は何事をするにも必ず利害を合わせて考える。不利なときでも、有利な点はあるから、これを伸ばし活用する。有利なときでも、不利な点はあるから、万全な対策をとる。    諸侯を思うようにするには、従わない者に害を与え、諸侯を働かせるには仕事を与え、諸侯を誘うには利をかざせばよい。    兵を用いるとき、楽観視は禁物。敵が攻めてこない理由はない。  〔弱将の性格とリスク〕   1_必死⇐戦死   2_生に執着⇐捕虜   3_激情⇐無分別   4_廉潔⇐侮辱で平静さを失う   5_厚情⇐民兵の労苦で戦意喪失 第9.行軍  〔地形〕   1_山地を通過するには、谷沿いに進め。   2_敵に近づいたら、高所を占領して有利な態勢を整える。高所の敵を登りながら攻めるようなことをしてはならない。   3_河を渡ったら河岸から離れ、河岸に直接布陣しない。敵が渡河してきたら、これを水上で攻めてはならない。半分渡らせてから攻撃する。   4_上流に向って進軍してはならない。   5_沼沢湿地帯は速やかに通り過ぎる。もしその中で戦うことになったら、水草のある所を選び、林を後にして布陣せよ。   6_平地では行動容易な所を選び、高地を右背にし、不利な地を前に置き、有利な地を後ろに置くように布陣せよ。   7_軍は高所を選んで低地を避け、陽のあたる南面を選んで北面を避け、給養をよくして気力体力を充実させておけば、病気や災害を防ぐことができる。丘陵や堤防のあるところでは必ず陽のあたる所に布陣し、高い所を右後に置け。   8_上流で降雨のため水流が増してきたら、渡ろうとせず、鎮まるのを待つべき。   9_両側が断崖である深い谷川、井戸のような低地の湿地帯、牢獄のように山に囲まれた狭い土地、草木が繁茂して動きが取れない土地、大地の割れ目のような谷地は、留まらず速やかに通り過ぎる。   10_このような地形は、自軍は遠ざかるが、敵軍を近づけるようにし、自軍はこれを前面にし、敵軍はこれを背後にさせるようにする。   11_付近に険阻の地、沼沢地、芦などの繁茂地、森林、草木の密生地があれば、敵の伏兵が隠れていることが多い。  〔敵陣〕   1_自軍が近づいても静かでいる敵軍は、布陣している地形に自信を持っている。   2_自軍が近づく前に挑戦してくる敵軍は、自���を誘い込もうとしている。   3_敵が進むのか退くのかはっきりしないのは、自軍を誘い込むつもり。   4_動く気配のない敵軍は、現在の地に何かよいことがある。   5_多くの樹木がざわざわ動くのは、敵が潜行している。   6_鳥が飛び立つのは、伏兵がいる。   7_獣が驚いて走り出るのは、敵部隊が隠れている。   8_草木によって視界をさえぎっているのは、自軍に疑念を抱かせようとしている。   9_戦車を先頭に出し、側に歩兵を配備するのは、戦うつもり。   10_敵が右往左往しているのは、何かをしようと決めている。   11_進めば有利なのに進まないのは、敵兵が疲労している。   12_夜、敵の人声が高いのは、将兵が不安にかられている。   13_敵の軍営が乱れて騒がしいのは、将の威令が行われていない。   14_旗がむやみに動くのは、敵軍の秩序が乱れている。   15_幹部が怒声をあげるのは、敵兵が戦意を失っている。   16_炊事具を使っておらず兵が宿舎に帰っていないのは、窮迫している。   17_敵兵が武器を杖にして立っているのは、食糧不足。   18_馬を殺してその肉を食べているのは、敵の食糧はつきている。   19_水を汲んですぐ飲むのは、敵の水が欠乏している。   20_幹部がねんごろに部下に話しかけているのは、信頼を失っている。   21_賞が多すぎるのは、軍の動きが取れなくなり、将が苦しんでいる。   22_罰が多すぎるのは、兵が疲労している。   23_将の言動が、最初は乱暴で後に部下を恐れるようになるのは、統率を知らない。   24_鳥が集まっているのは、すでに敵兵は去っている。   25_敵が決戦する勢いを見せながら、長い間動かないときには、必ず敵情判断をせよ。  〔砂塵〕   1_高く舞い上がって尖っているのは、戦車が来る   2_低く広がっているのは、歩兵が来る   3_散らばって細長いのは、敵の小部隊が炊事用の薪を集めている   4_少なく往復移動するのは、敵が野営準備をしている。  〔敵の軍使〕   1_敵の軍使の言葉はへりくだっているが、背後の軍が戦闘の準備をしているのは、攻撃するつもり。   2_条件もなしで講和を請うのは、敵が何かたくらんでいる。   3_敵の軍吏が低姿勢で接してくるのは、敵軍が休息を欲している。   4_敵の軍使の言葉が強硬で、背後の軍が進撃の気勢をしているのは、退却するつもり。  〔自軍〕   1_軍は、兵力が多いのを貴ぶのではない。多数を頼んでの暴進ではなく、よく統率し、戦力を統合発揮するとともに、敵情を判断して勝つことに努めなければならない。配慮が無く無謀な戦いをすれば、将自ら捕虜とされるだろう。   2_兵が将に親しんでいないのにこれを統率しても、兵は服従しない。服従しなければ、これを用いることはできない。   3_兵が将に親しんでいるが、将がこれを統率しなければ、使いものにならない。   4_まず法令をよく教えてから、威力をもってこれを守らせれば、民は服従する。   5_平素から法令が行われていなければ、民を教育しても服従しない。 第10.地形 〖類型〗  〔通〕   1_彼我両軍とも戦闘行動が自由な地を通という。   2_通形においては、よく見えて南面した高地に陣し、補給路を確保して戦えば、勝機がある。  〔挂〕   1_彼我両軍の間に密林などの障害があり、前進はよいが退却が難しい地を挂という。   2_挂形において、敵が戦備を整えていなければ、攻めれば勝てる。   3_挂形において、敵が整備を整えていれば、せめても勝てないし、退却が困難となる。  〔支〕   1_彼我両軍の間に河川沼沢などがあり、両軍とも前進が難しい地を支という。   2_支形において、敵の誘いに乗って、先に攻撃に出てはならない。   3_戦場を去り、敵がつられて出てきて兵力が分散されたところを撃てば有利。  〔隘〕   1_隘形において、自軍が先に到着したら、必ず十分な兵力を配置して、敵を待ち受けるのがよい。   2_敵が先に占領している場合は、戦わないほうがよい。   3_しかし敵が十分に兵力を配備していなければ、戦え。  〔険〕   1_険形において、自軍に先に進出できたら、南面の高い地を占領して、敵の出てくるのを待つ。   2_敵が先に進出していたら、戦場を去って、敵の徴発にのってはならない。  〔遠〕   1_遠形において、戦力が同等であれば、戦いを挑むことは不利。 第11.九地 〖戦場分類〗  〔散地〕自国領内で戦う場合の戦場   自国領内への敵軍の侵攻を防げず、散地で戦うこととなったときは、将兵の心を戦うことに専念させる。  〔軽地〕敵国領内であり、国境に近い戦場   軽地では陣頭に立って部下の掌握を確実にし、敵国領内の奥深くに進軍するよう努力する。  〔争地〕彼我ともに占領すれば有利であり、争奪戦が起きやすい要地   争地では陣後に立って軍を後方から追いたて、敵より先に占領するよう努力する。  〔交地〕彼我ともに進撃しやすい戦場   交地では守りを厳重にし、補給路を絶たれないようにしなければならない。  〔衢地〕諸侯と国境を接しており、先立って占領すれば諸侯を制することができる地   諸侯国の国家戦略を知った上で、親交工作で味方に付けるよう努力する。  〔重地〕敵国領内に深く侵入し、後方に城邑が多くある地   1_敵国に侵攻すれば、自軍は戦いに専念できるが、敵は帰郷の心が強くなるため勝ちにくくなる。   2_侵攻軍は豊穣な土地を占領し、将兵の給養を十分にしなければならない。   3_戦力を貯えて持久を図り、攻勢に出られる力を保持する。   4_作戦を練り、敵が対応できないような戦法をとる。   5_将軍の態度は、冷静で奥深く、厳正で適切でなければならない。   6_兵士の耳目を利かせないようにし、意図を悟られないようし、作戦内容や変更を知らせないようし、駐屯場所や進路などを知らせないようにする。   7_戦いに臨んでは、乗ってきた舟を焼き、釜を壊し、背水の心境にして死地の覚悟を決めさせる。   8_羊の群のように飼い主の意のままに駆り立てられ、自らはどこへ行くのか知ろうともしないようにして全軍をまとめ、行き所ないところに投ずる。  〔ひ地〕山林、湿地、湖沼など行動困難で、軍を消耗させる地   ひ地は早く通り過ぎるに越したことはないが、山林・険阻・沮沢の地を知らなければ、軍を進めることはできない。  〔囲地〕入る道は狭く、出る道は遠回りで、少数の敵に苦しめられるような地   囲地ではあえて逃げ道をふさいで将兵を必死にさせることができるが、地元民の知識を借りなければ、地形を利用することはできない。  〔死地〕すぐ戦えば活路を見出すことができ、戦わなければ全滅する地   兵士は窮地に陥るとかえって恐れなくなり、脱出するところがなければかえって固く守り、敵国に深く侵入すれば団結し、他に方法が無ければ必死に戦う。占いや迷信は、決心を削ぐので、厳しく取り締まる。 問:敵の大部隊が整然と進軍してきたら、どうする? 答:敵がすてておけない急所をつく。 第12.火攻 〖攻撃対象〗   1_住民地や兵   2_集積した軍需品   3_輸送部隊の軍需品   4_倉庫内の軍需品   5_軍隊    火攻めは、空気の乾燥したときに行う。    火攻めは、月が箕・壁・翼・軫の星座の方向にあって、風が起こる日に行う。    昼に吹き続けた風は、夜になると止む。    火攻めとともに、適切に兵を用いる。   1_敵陣内で火が出たら、速やかに外からも敵を攻める。   2_敵陣内で火が出ても、敵兵が騒がないときは、しばらく攻撃を待ち、   3_火の効果をよく確かめ、敵に隙ができたと判断したら攻撃し、敵に動揺がなければ攻撃を止める。   4_敵陣外に火を放つ場合は、敵陣内のことを考慮することなく、ただよい時を選んで行う。   5_風上で火が出た時は、風下から攻撃してはいけない。   6_「火は両刃の剣」であることを知る。 第13.水攻    水攻めは即効性は無いが強力で持続性がある。    水は交通を遮断するものであるが、敵そのものを破壊することはない。    戦に勝って土地を取っても、土地を疲弊させたら、国費の無駄使いとなる。    勝機あれば動き、勝機無ければ戦をやめる。    滅亡した国をまた興すことはできず、死者を生き返らせることもできない。 第14.用間    十万の大軍を動員し、国を出て進攻すること千里になれば、国民の費用、国家の出費は一日千金にのぼる。そのため家の内外は大騒ぎとなり、輸送に使役されて道路で動けなくなったり、本業に携ることができない家は七十万にも達する。戦の日々は少ないほど良い。    まず敵情を知ることが重要だが、敵情は、祖先の霊に祈っても、占いでも、日月の位置によって判断しても、得られない。必ず人間を使って敵情を確かめなければならない。 〖間者の種類〗   1_郷間〔その地の住民〕   2_内間〔敵国の官吏〕   3_反間〔敵の間者を逆用〕   4_死間〔偽情報を敵に与える者〕   5_生間〔得た情報を持ち帰って報告する者〕    間者ほど、連絡を密接にする者無く、重い賞を受ける者無く、仕事を秘密にしなければならない者は無い。    優れた智恵と洞察力をもっていなければ間者を用いることはできず、愛情と判断力に優れていなければ間者を使うことはできず、人心の機微を知らなければ間者の利益を得ることはできない。    間者を発する前に、そのことが人の噂になるようであれば、間者とその噂をしている者を皆殺さなければならない。    自軍が攻撃しようとするとき、城を攻めようとするとき、要人を殺そうとするときは、まずその主将、側近、取次役、守衛、雑用者などの姓名を知らなければならない。間者による諜報が必須である理由がここにある。    敵間者の潜入を察知し、利益を約束して優遇し、反間として用いることも重要。郷間や内間として使える人物の敵情を得る。反間の協力を得て、死間は偽りの情報を敵に伝えることができ、生間は予定の時期に帰ることができる。他の四間は、反間の協力を得なければ活用できない。    間者は軍の要であり、軍の行動はこれに依存するところが大きい。
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jackgreen7777 · 4 years
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2020年9月 健身教練的初衷
求學時期是跆拳道選手、百米田徑校隊,成年後嚮導登山並自主健身兩年,到今年七月入職World Gym健身俱樂部受訓,九月份草屯店開幕後,開始分享給學生我歷年的健身知識及運動經驗。
時期不長,但畢竟工時不短,也與同儕經歷不少,更與幾位發展出革命情懷,卻因意外的家庭因素而倉促的選擇提早分道揚鑣,更驗證人算不如天算或計畫趕不上變化,畢竟意外乃意料之外,無法預測。
即便風流雲散一曲陽關但請容許我趑趄卻顧的嘮叨幾句。
首先感謝我的學生們:
陳O情 林O興 簡O亦 石O艷 李O超 林O儀 賴O如 楊O婷 李O勃 洪O珍
簡O君 張O祥 江O珮 張O馨 黃O珠 洪O卿 巫O毛 李O榮 李O喆 李O美 洪O升 郭O 許O萍 楊O凱 陳O妤 徐O拎 林O奇 楊O禾 楊O翔 江O岳 張O翊 簡O健 簡O任 張O者 陳O 李O勝 李O玲 黃O銘 洪O倫 陳O量 曹O昌 廖O君
以及接受我電話感召而來體驗的會員們,先至上最深的歉意,請原諒我的不辭而別,我一開始只是覺得反正能替代的教練多的是,就沒一一餞別了。
但許多事後學生還私訊我很多問題,不捨之意言表於辭,謝謝你們啦!我是家裡有事情不得不離開啦!也謝謝你/妳們給我服務的機會,希望你妳們可以越來越好、越來越健康。謝謝Cảm ơn bạn Salamat。
離別前,我在同事們的桌上偷塞了些小紙條,以示餞別之意,以表蒙顧之心。小小的分享部分內容。
Rock:發揚蹈厲
My distinguished supervisor Rock:
It's a great honor to work and study under your leadership in the past three months. Based on the new starting point, you will take a new journey and create brilliant new achievements.
You are a very smart and powerful supervisor. I have learned a lot from you, but it is a pity that I am leaving because of family factors, so I can't learn more from you.Thank you for your care and teaching during this time.
Wish you good health and success in the In the days to come. Happy Mid-Autumn Festival
Alex:同必戳力
中天皓月明世界,遍地笙歌樂團圓。
祝您的事業更加成功,月圓之後,好事不斷!
進入世界的時間不長,卻有最輝煌得業績。
你的故事總是不段的激勵著我們,
往心中的夢想前進。
這段時間不長,卻學了很多,感謝你孜孜不倦的教導,衷心致謝。
Guess:淬厲自強
玉兔,嫦娥,桂樹;
美白,漂亮,芳馥。
明月,清風,十五;
相思,團圓,遙祝。
公正,慈愛,憐憫,
關懷,包容,激勵。
耐心,付出,教導,
草屯,最強,副理。
Jeff:強國強種 健體興邦
Amanda:
月到雙節分外明,節日喜氣伴你行。
人逢喜事精神爽,人團家圓事業成。
節日愉快身體硬,心想事成您准贏。
祝福中秋快樂。
Hayley:小星有曜
悠悠的雲裡有淡淡的詩,淡淡的詩裡有綿綿的月,綿綿的月裡有鹹鹹餡還有我輕輕的問候,祝福中秋快樂!感謝這段時間的照顧,相處不長但很溫暖,祝福輕輕鬆鬆,業績充充!
Jason:蔦附于蘿
月明風清,秋意撩人;
對酒當歌,倚花堪折。
郎情妾意,敢為卿狂;
花好月圓,共度良宵。
中秋快樂!
Shark:處處有商機,時時達業績。實力超群。
提摩太前書4:12不可叫人小看你年輕,總要在言語、行為、愛心、信心、清潔上,都做他人榜樣。你要以宣讀、勸勉、教導為念,孕育子民,用你的專業、知識及能力祝福他人,
在中秋佳節時刻,願你平安喜樂得著更多福份。
Halk:傑出的一手!勤奮楷模,厚積薄發。
心態決定看世界的眼光,行動決定生存的狀態。要想活出尊嚴,展現不凡,只有改變觀念,敢於與命運對抗!
你讓我們看到努力和拼勁的眼神有多麼的燦爛,感謝你做我們的楷模,可惜我無緣見證你未來的輝煌,一定非常耀眼。
謹此中秋佳節之際,衷心祝願您和家人團圓美滿,幸福安康。
A-Lin:
夕七彩人間長共中秋八月,杯低吟酒伴同歌盛世高風。從拾起電話筒的那一刻,我們一同礪歷甘苦與共,幸有大盛的喘息時刻,堅守到最後一通電話掛上的笑容展現,別離後,還可以相約夜宵品茗,但新名單就靠妳創意發揮了,也願豐盛的果子會在妳汗水揮灑後出現。
Eddie:
親愛なる黒い猫。
ハッピームーンデー。
私はあなたと同じアパートに住んでとても幸せです。
あなたは私にたくさん教えてくれました。
ありがとうございました。
バーベキューもありがとうございました。
強くなりますように。 頑張ってね。
Logan:
海上升明月,天涯共此時!
唯不會忘了我們B組之王,一起死撐那艱辛熬苦的日子。但轉念一想,最阿雜的日子已經過去了,給時間一點時間吧!即便現在沒人注意你的璀璨,夜深之後,你會散發奪目光輝,在不遙遠的將來。現在折翼,有點可惜,對你以及學員都是。
感謝從不吝惜指教的勝凱,讓惱人的小兔崽子也拿到了一把唬人的小刷子,衷心致謝,中秋快樂。
Joker:我武維揚
中秋到,月圓了,一群小猴兒撈月去。一會兒從下往上撈,一會兒從上往下跳。一隻小猴在偷懶,拿著手機下著棋。
風雨過後,就會天晴。
豬二哥的木搭屋還是抵擋不了大野狼的撞擊,但豬老三的磚造屋肯定可以。
爾後,你用身體八站式,我用手指八戰士,相約打排。
Tyson:
長途漫漫,小時了了,切勿意滿自負;
風雨飄飄,少雞得志,必要持續精進。
僅以此簿贈別。
Leo:
將來,如果我要買課,
唯一指名一中的Logan、草屯的Leo,你是最棒的。
願你與女友螽斯衍慶、鴻案相莊。
Michael:
The gentle wind brings my blessings,
and the moonlight brings my greetings.
I would like to present you a trace
of wind and a ray of moonlight.
Farewell is not parting.
happy mid-Autumn Festival.
Grazie per il vostro interesse
Alan:friend
A bright moon and stars twinkle and shine.
Wishing you a merry Mid-Autumn Festival, bliss, and happiness.
Shawn:鳳振高岡
月圓家圓人圓事圓團團圓圓,
國和家和人和事和平平和和。
中秋愉悅,閤家歡樂!
CK:啟迪文化
明月,一閃一閃,掛天邊;
思念,一絲一絲,連成線;
回憶,一幕一幕,在眼前,
倉鼠,一步一步,終將團圓。
Dennis:同屐康莊
積載的知識,需要時間消化,
累積的烤肉,需要運動減除,
願以後還有機會領受
源式塔巴嗒特訓,中秋節快樂
Wilson:藍田種玉
割捨一生的真愛苦守一世的無愛。
這樣的悲劇已經發生得太多了。
中秋月夜,孤柴烈火,守候已久
是時候超展開第一次了。
至於我們,別離後,還可以相約宵食,
然而女友,一輩子只有一次第一次。
Kyle:
自古中秋月最明,涼風屆候夜彌清。
願你思慮周全清晰、行動果斷有勁。
沒有最好只有最適合,
魚與熊掌未必不可兼得。
Weber:積健為雄
皓魄當空寶鏡 升雲升仙籟寂無
聲平分秋色一 輪滿長伴雲衢千
里明狡兔空徙 弦外落妖蟆休向
眼前生靈槎凝 約同攜手語陀摩。
Jim:
中秋月夜,你送我烤肉十串,
我贈你月餅千層。第一層體貼!
第二層關懷!第三層執著!
中間夾層你剛正不阿的敬業精神!
中秋愉快,感謝有你!
Isaac:
秋江潮水连海平,海上明月共潮生,
花好月圆人团聚,祝福声声伴你行。
祝你中秋愉快,帅气一身!
Amber:
秋江潮水連海平,海上明月共潮生,
花好月圓人團聚,祝福聲聲伴你行。
祝你中秋愉快,靚麗一生!
Carol:
共賞圓月一輪,喜迎中秋良宵,
同食烤肉十串,樂邀肥油共舞。
Kayla:
月上西樓,寂寞鎖請秋。
剪不斷理還亂,是離愁!
別有一番滋味在心頭!
中秋祝賀
Zona:
秋意撩人��願在初秋的夜晚你我享,
皓月當空,思意正濃!
Jacky:緣鳳新雛
月到雙節分外明,節日喜氣伴你行。
人逢喜事精神爽,人團家圓事業成。
節日愉快身體硬,心想事成您准贏。
R8:
天上月圓圓,世間人圓圓,
你的臉圓圓,心中事圓圓。
Roger:
月圓家圓人圓事圓團團圓圓,
國和家和人和事和平平和和。
普天同慶中秋快樂!
Frank:
無論天南與海北,不論相聚與離別,
在中秋佳節,來!
把酒話佳節!舉杯邀明月!!
Vicky:
一個蘿蔔兩片藕,幸福與你手牽手;
三塊豆腐四片姜,桃花就在你身旁;
五個月餅六塊糖,全部被妳肚裡放。
中秋團圓臉也圓,還不運動把脂降。
Ricky:
明月幾時有,把餅問青天,不知餅中何餡,今日是蓮蓉,我欲乘舟觀月,又恐飛船太慢,遠處不勝寒,一個中秋問候。頑張ってね。
UJ:
多年後回首,記得每日前往超級大盛的那段日子,有你我佇足的印記,不論到時是否懊悔,都曾有那麼一段甘之如飴的點滴時光。
Rick:
If I am not deceived by your tricks. I will not fall into this pond and muddy my whole body. A body wearing a mud armor with fitness logo.
Let us think about working holiday in Canada. Sprint for the next wave of lies. Even so embarrassed, I still like this fictional story. Let this experience add excitement and interest to our lives. We can turn around and leave World Gym. Of course we can also turn around and travel our island. You say that your dream is globetrotting, and make friends who are willing to travel with you for a lifetime. I say that my life has been sacrificed and dedicated to travel.
May God bless each other
Nike:
あなたがいなければ、私たちは過去3か月で餓死するでしょう。 あなたがいなければ、ナイキがこんなに上品に着られるかどうかはわかりません。 あなたがいなければ、こんなに快適なマッサージテクニックがあるとは思いません。 あなたがいなければ、私はお互いを団結させる方法がわかりません。 あなたがいなければ、私はそんなに多くのものを動かす方法を知りません。 あなたがいなければ、次のステップに進む方法がわかりません。
James:Valar Morghulis
我們知道在風險管理的初期,要先有健康告知 ,並執行增值條款來推定全損,才會有代位求償權。當然除外責任是需要等待期的。在勞工保險和雇主責任保險也包含了可轉換權益。謝謝思慮清晰的你給我們上了一堂精彩的人身保險課。Valar Dohaeris
Bill:奎星高照
漂鳥青年旅館的留言板上還留著我們當初考骨骼肌肉的填充題。那工整清爽是你的字跡,鬼畫符是我提筆的。
很多事情都被年紀最小、勇氣最大有強迫症的你看在眼裡,最有趣的莫過於都過了一個月後,天蠍座的你仍清楚的記得,哪幾天你幫哪幾位學長姐跑腿,他們還有多少還沒給你。然後你還默默的等待哪天他們會突然想起並還你?我笑了。正因為你還一本正經的跟我說這些沒人在乎的瑣事。祝你考上理想的大學。早日擺脫挨打的日子。
Sandy:琵琶別抱
前月浮梁買茶去,去來江口守空船,繞船月明江水寒。夜深忽夢少年事,夢啼��淚紅闌干。我聞琵琶已嘆息,又聞此語重唧唧。同是天涯淪落人,相逢何必曾相識?珍重再見。
Jane:巾幗英雄
有理性的衝動是本領,無理性的衝動是本事。小弟我是甘拜下風、無體投地。容我三杯黃酒至上最高敬意。黃皮塔住的還習慣嗎?
Joe:
歡迎加入電話組,托您的福,妳打過的電話都很好約。還有,不要被情緒綁架喔。這種烏龍就照流程正常走就好了,不要讓太多情緒和精力爲這種鳥事分神,妳再不爽再憤怒其他人也不痛不癢
,平常心據理力爭訴諸應有的管道就好,勿賠了自己的尊嚴,這麼生氣小心得內傷喔!(雖然我不知道有什麼好氣的)保重身體啊。
DK:
記得當年囝囡姑姐,最愛勁歌金曲,入邊嘅人講嘅語言聽講就叫做廣東,錄影帶又倒帶咗再睇過,從唔識聽唔識講,不知不覺咀巴就跟住蠢蠢欲動。
猶記得一開始係你教我點樣健身並矯正我嘅動作姿勢,多謝曬你嘅幫助噃。很遺憾後尾冇幾耐冇一起打拼,但我仍記得你嘅熱情,第日見。
Jerry :
我只是想提醒你我們計程車的收據還在你那。節哀順變。
Xin:
感謝受訓期間無微不至的照顧,以及詳細精闢的知識講解,妳的露骨圖片,我們沒齒難忘。
本文完。
補充一段法律常識,主要是呼籲提醒剛入坑的新手教練、菜鳥員工們了解一點法律常識,學會如何保護自己的權益。
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skf14 · 4 years
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10130000
こうして世界は緩やかに、壊れていった。
それは、僅か7日間でお粗末な世界を作ってしまった神の、贖罪によるものだったのかもしれない。最後に哀れな人間共へ与えた、慈悲だったのかもしれない。意味など計り知れないが俺は漠然と、生き物が死んでゆくように、この星も、死んでゆくのだと、どこか清々しい心境で慣れ親しんだ街を眺めていた。
進み過ぎた文明は、人が衰退し星が寿命を迎えることすら先読みしていたらしい。人の繁栄を拒むかのように予測した未来に目を伏せたまま、延々と変わらないコードを実行し、人がいなくなっても滅びないよう、世界を緩やかに回し続けた。
抗う愚かな人間達は様々な策を講じ、そして諦め、権力が、国境が、戦争が消え、宗教が世界の覇権を握った。今更、金儲けなんて考える奴はいなくなった。人は争いで消えていくんじゃなく、最後はきっと、自然に無くなっていくんだろうと、まるで世界の真理でも見たような気分になった。
この一帯にも、もう生きた人間の姿は見えなくなった。と、言いながら、俺が今踏んでいるこの地面の砂も、もしかしたら、人だったのかもしれない。ただ、俺にも、誰にも、神にも、それを知る術はない。ざり、と靴底に食い込む砂の音が、赤子の産声に聞こえた気がした俺は頭を振って、思考し続ける脳を揺らしその動きを一時停止させた。
「不毛だ、やめよう。どうせ人類は、いずれ皆消える。」
その人類、の中に、俺も、君も、含まれている。ざりざり、力強く一歩進み踏み締めた砂が足裏で音を立てるが、もう気にはならなかった。街中に寂しく突っ立っているスピーカーからは、延々と穏やかなオルゴール音が流れている。まるで壊れているのは人類の方だ、と言いたげな様子で垂れ流されるメロディが煩わしく、掻き消そうと無意識に口ずさんだ音楽は、君がよく聴いていた洋楽だった。
「ただいま。」
返事がないことを理解していても、習慣というのは恐ろしい。心の中で、いつかの"おかえり"を反芻している自分がいる。君の声帯は数ヶ月前、とうにガラス化して震えることがなくなったのに。
外で確保してきた食料と水を納めながら、目の端に、窓際で椅子に腰掛ける君の姿を捉えていた。太陽の光を浴びる君の爪先と、指先は、光を通してキラキラと光っていて、眩しい。もうあの手で俺の頬に触れることも、あの足で俺を軽く突くこともない。分かっている。足掻くほど俺は子供じゃない。分かってる。分かってる。
「ただいま。」
まだ温もりの残る肩に触れると、君がびくりと身体を揺らして、そして、君は俺が触ることを待っている。手も足も動かせず、耳も目も機能せず、声も出せない君は、俺が、帰宅して、君の頬を撫で、目蓋にキスをして、肩を抱くその感触を持って、俺を俺だと認識するしか術がない。
眼窩の、まだ赤々しい血管の通る組織が見えるガラス玉を、君はきゅっと目蓋で覆う。何も見えないのに、人のように目を開けて窓の方に顔を向けている行為が、今更酷く惨めに思えてしまって、盲の食事風景が哀れに見える、なんて記した文豪の言葉に今なら納得出来る、と心の中で自嘲する。
俺はルーティンで存在を確かめさせながら、目蓋へのキスの後に開いた、君の眼だった透明なガラスの球体について考えていた。外では、まだ穏やかなオルゴールが流れていて、開いた窓から小さく部屋の中へ流れ込んで来る。君が歌う鼻歌はいつの日か、そのオルゴールのメロディーに支配されていた。
眼を取り出せないものか、と思ったことはある。俺と君が、いや、世界がまだ正常だった頃、俺は、君とよく、世界の終わりについて話していた。世界がどのように作られ、始まり、続いて、終わるのか。君が夢想する世界の終わりはいつも、二人きりになって終わっていた。どちらかが宝石になったり、砂になったり、人魚になったり、時間に閉じ込められてしまったり。それが俺と君の願望だと、互いに薄々気付きながら、君も、俺も、世界の一員として、大多数の中で何事もなく生きていた。
いつか、君が宝石になってしまう話について構想を練っていた時、君がふといたずらっ子のような顔をして、俺の目を覗き込んで言った。つん、と尖った桜桃色の唇がふるり、と震えて動く。
「おまえ、気に入った所加工して、持ち歩きそう。」
「サイコパス扱いはもう慣れてるけど、さすがに好きな奴の身体削ってどうこうしねぇから。」
「説得力なさ過ぎてウケる。」
「そりゃ、考えたことはあるよ。でも、実際俺がお前に、ノミなりナイフなりを向けられるかって言われたら、多分無理だ。」
「でもほら、眼とか。好きじゃん。ポロって取れるかも。」
「うわぁ辞めてくれ、鳥肌立った。」
「俺、遺跡みたいに残されたり、彫刻みたいに飾られたりするの、嫌だよ。消えてなくなるか、小さくなっておまえの一部になりたい。」
「熱烈な告白ありがとう。ゴムあったっけ。」
「すーぐ下半身で物考えるのやめろ?」
ふふ、と思わず漏れた思い出し笑いは君には伝わらない。その時はまさか本当に、世界で同じようなことが起こるなんて、思ってもいなかった。ただの、臆病者二人の愛情の探り合い、でしかなかった戯言を、神が間に受けて実行してしまったんだろうか。
「今日は、お前の好きなコーヒーゼリーが配給されてたんだ。」
人間の声が聞こえない環境は、思った以上に人を追い詰めるらしいと知ったのは、自分から漏れ出る独り言が異常に増えたと気付いた時だった。何か、声を発していないと、それがたとえ意味のないことだとしても、頭の中に渦巻くアレコレに脳が潰されそうになる。人は生きている限り、思考を止めることは出来ない。考えないでいよう、と考える阿呆な生き物だ。それは目の前で無機物と化していく君も、同じなのだろうか。
銀のスプーンに乗った黒い半固体の美味しさが分からずに、君に小馬鹿にされたことがある。お子ちゃまだ、と笑って、君は俺の食べていたプリンを一口すくって食べて、「甘いのばっか食べるから、俺に甘くなるんだよ。」と笑っていた。
ガラスの器に飾って、庭に生えてたミントをちょこんと乗せた。見た目にも拘る君のためだ。掬ったそれを君のまだ暖かく動く唇へと運び、スプーンの先端を触れさせた。介助、なんて嫌な言葉が脳裏にふわり浮かび上がって、自分を殴りたくなる。君は反射的にそっと唇を開き、スプーンを咥え、暫くして口を開いた。スプーンの上にはまだ、コーヒーゼリーが残っていた。そうか、俺は、一体何をしていたんだろう。もう君はとっくに、好きだったコーヒーゼリーを嚥下することも、出来なくなっていたのに。
「俺、苦手なんだよ。コレ。」
まだ君が君だった頃、俺は、世界中の全てが敵になろうとも、最後まで君を守り抜こうと思っていた。その決意は今でも変わらないし、もし全てガラスになってしまった君の美しさに目が眩んだ人間が君を奪いに来れば、どんな手を使ってでも君を守る。
人間の想像力なんてたかが知れている、自分のキャパシティーを超える想像など出来ないと、俺は自分が凡人で、何のことはないただの人間だったことを今更思い知る。
君と二人きりの世界が、これほどまでに不毛だったことを、あの頃の俺が知ったらどうしただろうか。目の前で微動だにしない君はもはやなんの意味も為さない目蓋を閉じ、無限とも思える時間をただただ何もない暗闇の中で享受している。
ある日目覚めた君は、視界が暗い、と眼を押さえて泣いていた。その声に起きて背中を摩る俺を見上げガラス玉をむけて、見えない、と子供のような弱々しい声で言った君に、俺は何と声を掛けただろう。もう、思い出せない。ただ、そばにいる、と、そんなニュアンスのことだけを答えたような気がする。太陽の光をいっぱい蓄えたそのアルパインブルーのガラス玉が濡れて、くるり、と回る。こんなに綺麗じゃ、取り出せるわけがない。他が終わっても終わらない、と思っていた俺と君の世界に、エンドロールが手を伸ばし���瞬間だった。
恐らく病状は、内臓から、五感から奪っていくのだろう、と推測している。視界が奪われた数日後には関節が動かしにくくなり、指先の感覚が鈍くなった。
「ねぇ、おまえさ、何してる時の俺が好き?」
「ベッドで鳴いてる時。」
「へぇ。M字開脚のまま固まれって?」
「ごめんって。そうだな...」
俺の隣で本読んでる時。と答えたけど、本当は、本を読む君の横顔がたまらなく好きだった。君は太陽で、俺は月だった。君のために生まれた太陽から光を貰って透き通る瞳には、小ぶりな向日葵が咲いていたことを君は知っていただろうか。ページをめくるたび、君の睫毛がふわっと揺れて震えることを、馴染みのいいフレーズを見つけて、無意識にそれを口の中で転がす時の君の嬉しそうな唇を、知っていただろうか。
君はただ、「座ってるとこね。」と言って、眠る時も食事の時も、窓際のロッキングチェアへ座り続けた。
君は、優しい。右利きなのに、右手には何も持たず、必ずチェアの肘掛けに掌を、少し指の隙間を空けて天井へ向けて置いていた。それは、俺が手を握れるようにという配慮だった。指の関節が、そして手首が、肘が動かせなくなってもなお、君は俺が手を握るたび、俺のいる方向へ首を向けて、唇を弧にして微笑んだ。その優しさが、時折釣り針の返しみたいに刺さって、酷く傷むことを、君は知っていただろうか。俺は傷む胸を痛覚ごと殺して、まだ聞こえていた耳へ、「愛してる、」と、それだけを伝えるのが、精一杯、君に出来ることだった。
程なくして、君から聴覚が消えた。おはよう、と声を掛けた時の絶望感と、自分を守る為だけに生み出した諦観が、鳩尾あたりに刺さって、足が、底のない沼に引き摺り込まれていくような、救いのない感覚。でもきっと、何倍も、君は怖かっただろう。俺はひたすら君のまだ感覚が残っているであろう顔へ触れ、聞こえるはずもないのに、日頃飽きるほど言っていたはずなのに溢れ出る好きを、ただ冷たくなってしまった耳へ注いでは、零れるそれをすくうことも出来ずにただ、縋り付いていた。
神の存在を、信じたことはない。でも、神は、人の一番大事なものを簡単に奪っていくことは知っていた。君が大切にしていたお母さんは氷になって溶けていった。俺を男手一つで育ててくれた父は、砂になって崩れて、故郷の山に撒かれた。俺の世界が君でいっぱいになった瞬間に、神は、君を、一番残酷な方法で奪っていく。
口数の多い君、美味しいものが大好きで、綺麗にデコレートされたチョコレートに目がなかった君、うろ覚えの洋楽を適当に口ずさんでは、自分で笑ってしまう君。思い出されるのはいつだってガラスと化す前の、君だけだった。俺を薄情だと、嘲笑うだろうか。
この現状を、気でも狂ってしまえば、受け入れられるのかも知れない。いや、受け入れなければいけないのは、分かっている。盲目に愛していたつもりだった。君がどうなろうと、変わらず愛していける、そう過信していた。いや、今も変わらず、愛している。はずだ。これが、自分に言い聞かせているのか、本心なのか、自分でもよく分からない。
冷たい君の指に指を絡めるたび、脳裏に過るのは、夜に突然アイスが食べたいと言う俺に、眉を下げて買い物に付き合ってくれた、君の温かい手だった。目蓋が開いてガラス玉が現れる度、俺は、君の変わってしまった眼の中に、俺に向いたまんまるで潤んだ色素の薄い茶色の瞳と、小ぶりな向日葵を探してしまう。ごめん。俺は、君を愛していたはずなのに、変わりゆく君と世界に順応出来ないまま、過去を通してしか、君を愛せない。
初めて、夜中に目が覚めた。ベッド脇のデジタル時計は、午前3:26を示していた。誘われるように寝室を出て、月明かりを浴びているであろう君の元へとふらり、近寄って、そして、気付いてしまった。
君の目蓋も、頬も、髪も、全て、ガラスになってしまったことを。
君の指先が月明かりを吸い込んで、キラ、キラと呼応していた。今日の月は、ちょうど、満月で、青白く力強いその光が、君を、勿忘草色に染めて、まるで西洋の絵画のようにも、思えた。
「もう、俺の声は、何も、」
何を今更、と心の中で俺が笑う。ずっと前から、届いてなかったじゃないか。こんな世界で、どうしようもなく、それでも当たり前を手放せない俺が、君がいることで自分を保っているだけの、そんな世界だったじゃないか。
「どうして、こんな、君が一体何を、したと、」
眠る前、キスをした唇はもうつるりと凹凸の一切ない、曲線になっていた。目蓋はふわりと開いたまま、まつ毛の一本一本まで細くしなやかにガラスに変わっている。頬も、全て、愛していた全て、全てが、この刹那で、
「返してくれ、俺の、最後の、宝物を、」
君の着ていた肌触りの良いシャツに縋り付いた。白い生地が、水玉に染められていく。抱き締めても硬い身体はびくともせず、ただ、窓の外へ顔を向け、幸せそうに笑っていた。その表情は、俺が眠る前、「また明日ね。」と、聞こえもしないのにいった時に見せた、柔らかく、ただ愛を表しただけの表情だった。
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貝の小鳥企画展
「掌で小鳥を育むように」
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寒いなかお越しくださった方々、SNS投稿で見てくださった皆さま、どうもありがとうございました🙇‍♀️
貝の小鳥さん、素晴らしい企画にお誘いくださりどうもありがとうございました🙏✨✨
好評だった手作りオーナメント霜の妖精ジャック・フロスト小さいさん達🧚❄️ときのこ🍄は、貝の小鳥さんで引き続きお求めになれます。
ジャックお宅拝見👀も続けられたらいいなと思います。
どうぞよろしくお願いいたします🙇‍♀️
絵本の古本と木のおもちゃ
🕊️貝の小鳥🐚
@kainokotori
12時〜18時 火曜定休(最終日17時まで)
〒161-0033 東京都新宿区下落合3-18-10
Tel: 03-5996-1193
Instagram, X: @kainokotori
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kachoushi · 1 year
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各地句会報
花鳥誌 令和4年12月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和4年9月1日 うづら三日の月句会 坊城俊樹選 特選句
散歩する頭上に置きし蟬時雨 喜代子 初老なる夫婦八人墓参り 同 名月やうるはしき夜はゆつたりと さとみ 新涼やメダルの如き耳飾り 都 月白し八十路女の薄化粧 同 漁火や月より遠き船の道 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年9月5日 花鳥さゞれ会 坊城俊樹選 特選句
蝸牛進退ここに尽きたるか 雪 静もれる故山はみだす虫の声 かづを 鬼ヤンマ唯我独尊そのままに 数幸 虫の音や今日の命のつきるまで 雪子 彼岸花蕊の情念撓めけり 笑 秋の蝶縺れて解けてまた縺れ 希 倶利伽羅の谷底埋めし曼珠沙華 千代子 山門の落慶法要赤のまま 天空 山門の檜の香り曼珠沙華 々
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年9月7日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
縁台が身の置き所盆の月 宇太郎 去ぬ燕神の杜へと集まり来 和子 秋時雨幽かに日射す山の裾 益恵 雨上がるぽつてり重き鶏頭花 都 つみれ汁どんな魚かと盆の客 すみ子 蹌踉けくる秋の蚊を打つ掌 悦子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年9月7日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
九頭竜に手波で送る万灯会 世詩明 大根を種蒔くごとく踊りの輪 同 近松の碑黒き露葎 ただし 花鳥誌を拾ひ読みする柏翠忌 同 胸を開け峠を行くや青葉風 輝一 秋深し山粧ふや手をかざす 同 針山に待ち針錆びてゐる残暑 清女 今朝の秋きりりと髪を結ひ上げて 同 抱かれし赤子も一人墓参り 蓑輪洋子 空蟬の銅色をいとほしむ 同 ふるさとの火祭を恋ふ孟蘭盆会 同 犬引いて犬に引かれる青田道 秋子 陶の里古き甕墓秋陽濃し やす香 秋草に隠る甕二つ三つ 同 通り過ぐ風のささやき大花野 誠 団栗の十津川淵へ落つる音 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年9月10日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
多摩川の風の広さやねこじやらし 美枝子 待宵の月にかかりし雲動く 和代 太刀魚の尾まで隈なく光伸び 秋尚 香を辿り見上げる空に葛の花 教子 一叢の露草の青向き向きに 多美女 一山を覆ひ尽して葛咲けり 三無 手際よく太刀魚捌く島の嫁 多美女 露草の儚く萎える句碑の午後 三無
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年9月12日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
暫晴間急ぎ稲刈り火蓋切る さよ子 陽が沈み無人駅舎に秋津飛ぶ 世詩明 お十夜の庭石ことに湿りをり さよ子 芋虫も愁ひの時のあるらしき 上嶋昭子 黒数珠や梅の家紋の墓参り ただし 一人暮しと見られたくなし秋すだれ ミチ子 人住まぬ屋根にも月は影落とし 英美子 銀河濃し鬼籍の人を懐かしむ みす枝 虫を聞く闇に心を近づけて 信子 細くなる髪を眺めてゐる秋思 中山昭子 洗ひ髪口に咥へて甘えけり 世詩明 朝霧の緞帳音なく上りゆく 時江 父は父私は私鳳仙花 三四郎
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年9月12日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
名月や巻雲淡く細くあり 和魚 一晩の伽となりゆくちちろかな 聰 木道の空何処までも秋の雲 秋尚 こほろぎの屋敷稲荷に住みついて 怜 草むらを抜け露草の楚楚として 秋尚 湯煙もやがて紛れて秋の雲 怜 さつきまで庫裏に人居りちちろ虫 あき子 つゆ草を残し置くなり墓掃除 エイ子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年9月13日 さくら花鳥句会 岡田順子選 特選句
かなかなや夢二の絵にも黒い猫 令子 植物園はるかな道に桔􄼷咲く 裕子 蜩や一里を登る尼の寺 登美子 柏翠忌師の口癖よ「しようがないや」 令子 学校のこと話す道鰯雲 裕子 師弟なる五灰子生きろ柏翠忌 令子 青い目のバックパッカー秋澄めり 登美子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年9月13日 萩花鳥会
大相撲元気を貰ふ秋場所に 祐子 たつぷりと生かされ米寿の彼岸花 健雄 宝石か朝露庭の曼殊沙華 恒雄 爽やかさ簞笥から出たシャツズボン 俊文 秋の灯や沁沁友と語り合ひ ゆかり 文書けば秋蝶ゆるやか折りかへし 陽子 爽やかや一分音読はじめたり 美恵子
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令和4年9月16日 伊藤柏翠忌俳句記念館 坊城俊樹選 特選句
飛べば憂し飛ばねば淋し火取虫 雪 地に落ちし火蛾の七転八倒す 同 裸火搦め取られし火取虫 同 炎帝に万物黙す他は無し 同 忘れずに約束のごと曼珠沙華 みす枝 兜虫見つけ揚揚子の戻る 同 紺碧の空に小さく燕去る 同 剝落の蔵を背にさるすべり 上嶋昭子 砂時計くびれ見てゐる庭の秋 同 甕墓に離れ離れに彼岸婆 ただし 曼珠沙華淋しき風の甕の墓 同 甕墓の底の暗さや盆の月 同 浅間山焼りは雪の峰となる 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年9月16日 さきたま花鳥句会
人待ちの���半酒や秋しぐれ 月惑 銀漢をよぎる宇宙観測船 一馬 新都心ビルの凹みに秋入日 八草 秋暁や路地に酵母の甘き湯気 裕章 四方に散り芒に沈むかくれんぼ とし江 歳時記の手摺れのあとや秋灯火 ふじ穂 綾なして咲き継ぐ窓や牽牛花 ふゆ子 朝顔をからませ町家昼灯す 康子 草むらの道なき土手にカンナ燃ゆ 恵美子 白粉花咲きて従妹の嫁入日 静子 居酒屋に恩師と出会ふ良夜かな 良江 鶏頭の赤さを増して咲き揃ふ 彩香
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令和4年9月18日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
地虫鳴く甲深き靴はく朝 久子 白樫の森黒々と台風来 眞理子 雨粒を玉と飾れば花野かな 眞理子 昼の虫静かに聴きぬ濡れ鴉 久子 一面に火群立ちたる曼珠沙華 幸風
栗林圭魚選 特選句
白樫の森黒々と台風来 眞理子 かまつかや燃えあがらんと翳深く 千種 四阿に鴉と宿る秋の雨 斉 登高をためらふ今日の風雨かな 真理子 団栗の袴はづれて光りけり 久子 開門の前のしづけさ萩しだる 千種 秋出水さわは飛石を隠すまで 眞理子 群れも良し一茎もまた曼珠沙華 三無
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年9月21日 福井花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
江戸生れ浅草育ち柏翠忌 世詩明 柏翠忌三国に残る墓一つ 同 柏翠師みなし児にして月仰ぐ 同 虫時雨して父恋し母恋し 同 ちらり見ゆ女の素顔柏翠忌 令子 河口から虹屋へつづく月の道 笑子 柏翠忌城下にのこる里神楽 同 月窓寺ふたつの墓碑に星月夜 同 草相撲では一寸鳴らしたる漢 雪
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年9月21日 鯖江花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
水鶏笛一人夜更に吹く女 雪 男有り愛子の墓の草を引く 同 虫すだく九頭竜に闇引寄せて かづを 大花火人なき家を照らしけり たけし 弔句書く筆の悲しさ蚯蚓鳴く みす枝 夕月を崩してをりぬ池の鯉 同 過疎の村今は花野の風の中 英美子 日焼して盗人冠りの農婦かな 千代子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年9月25日 月例会 坊城俊樹選 特選句
どの窓も歪むことなき秋の空 和子 銀杏の匂ひ拭へと下乗札 順子 なめらかに吹かれ秋蝶それつきり 和子 風うねる度敗荷になりかけて 小鳥 手庇の薄きに秋の蝶が消え 和子 碑のうしろ一切曼珠沙華 同 昼はまだ黄泉へ遠しと法師蟬 順子 人々は秋日に溶けて印象派 小鳥 竜淵に潜み国葬待てる森 はるか
岡田順子選 特選句
冷やかや手渡されたる阿弥陀籤 ゆう子 石橋を掃く庭番や柳散る 眞理子 落葉のみ掻き寄する音陰陰と 要 秋蟬の大音声の骸なり 俊樹 落蟬の眼とはなほ瑠璃なりし 同 香具師の声ありし境内昼の虫 要 地に転ぶまま靖国の銀杏の実 昌文 眼裏に黒き温みや秋日濃し 小鳥 金風を乗せ大仏を真似たる手 光子 秋天へ金の擬宝珠の衒ひなく 要
栗林圭魚選 特選句
石橋を渡る人影水澄めり て津子 銀杏の匂ひ拭へと下乗札 順子 お守りの小さき鈴の音野分晴 美奈子 桜紅葉いよいよ昏き能舞台 佑天 碑のうしろ一切曼珠沙華 和子 雅楽部の復習ひ音零す宮の秋 順子 敗れ蓮と成り切るまでを濠の風 はるか
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年9月 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
天高しバベルの塔は小指ほど 古賀睦子 うす衣の雲の行方よ女郎花 由紀子 夕映えて剥落のなき鱗雲 美穂 露の身を映す鏡架のくもりぐせ かおり 蚯蚓鳴く誰もゐぬ時計屋の時計 ひとみ 大漁旗鰯の山のてつぺんに 喜和 揚花火空に遊びて降りて来ず 朝子 眠られぬままに秋思のままにをり 光子 夏彦の怪談と行く秋の夜 桂 城門の乳鋲は無言盆の月 朝子 あの夏の天地の焔壕暗く 朝子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月11日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
したたかに顔を打つなり化粧水 世詩明 天平の庭白牡丹眩しけり 同 み仏のなんじやもんじや風光る ただし 羅や大方に父似一寸母似 清女 桜満開の軍旗祭りや七十五年 輝一 聞き役も時にははづしつつじ見る 蓑輪洋子 丈六の金の観音寺の春 やす香 海原に風の道あり波の綺羅 同 馬酔木咲く近くて遠き明治の世 誠
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
立待花鳥俳句会 令和4年6月1日 坊城俊樹選 特選句
鯉幟風の階段ありにけり 世詩明 老夫婦夏痩せの身の重かりし 同 美しき日傘の人の振り向かず 同 相寄りて源氏蛍の河和田川 ただし 葉桜や茶筅に残る薄みどり 同 老いの肘掬ふや��髙五匹まで 輝一 鮎置いて門を去り行く釣り師かな 誠 村の子の手足を洗ふ清水かな 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
立待花鳥俳句会 令和4年7月6日 坊城俊樹選 特選句
手花火や素足に女下駄を履く 世詩明 一筋の水を落して滝白し 同 釈迦仏渡と共に祭らる六地蔵 ただし この奥に東光寺あり地蔵盆 同 軋みかと思へば虫や秋の風 輝一 何となく筆持ちたき夜天の川 清女 明易やドラマの様な夢を見て 同 眉と目に力あふるる大日焼 蓑輪洋子 勤行の夫の後行く夕立風 同 落雷に神木青く光りけり 誠 図書館の茂りの中の大欅 同 猿田彦夏越し祓ひ輪をくぐる 信義
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
立待花鳥俳句会 令和4年8月3日 坊城俊樹選 特選句
枯れた字を書くと言はれし生身魂 世詩明 三國山車祭に見合ふ辻屋台 同 飛ばされてゆく星もある天の川 同 古里へ立つ汽車減りし盆の月 ただし 子供達木魚を打てり地蔵盆 同 山寺や老鶯の声心洗はる 輝一 川泳ぐ蛇とかけつこ下校の子 同 兵一人炎天の中帰り来ぬ 誠 家々の火影の中を花火船 同 ぺちやんこの胸の谷間を流る汗 清女 太公望さつぱりですと日焼顔 同 蓮池に生まれて蓮葉に寝る蛙 やす香
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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yoml · 6 years
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1612-1911 断片、その先(全章)
1-1612 三年前 
「俺が勇利のコーチじゃなきゃいいのに」 
 ヴィクトルがコーチになったその年のグランプリファイナル。試合後のバンケットも終わり、それぞれの部屋に戻る途中のことだった。何の文脈もなく発せられたその台詞に続く言葉が予想できなくて、勇利は少し身構えた。エレベーターのボタンを押して、ヴィクトルは続ける。 「ときどき思うんだ。例えば勇利が絶不調のときね。心がもたないよ。ただのライバルなら、今回は競争相手が一人減ったなって喜ぶだけで済むだろうに」  なんだ、とありがちな話に勇利は少し安心して、「ヴィクトルでもライバルが減るとうれしいと思うんだ」と笑って返した。 「思うさ。俺は勝利に貪欲だからね」 エレベーターの扉が開く。乗客は誰もいない。 「僕はヴィクトルがコーチじゃなきゃよかったなんて、思ったこと一度もない」  ヴィクトルが少し間を置いた。「うれしいことを言ってくれるね」と微かに笑う。 「だけどやっぱり俺は思うよ。コーチじゃなきゃよかったって。特にこういうときなんかは」 「銀メダルでごめんなさい……」 「うん、いや、そうじゃなくて」  ヴィクトルが勇利の目をまっすぐ捕らえた。青い目に違和感があった。 「勇利が欲しくてたまらないとき」  言われた言葉の意味がわからなくて、勇利は文字通りきょとん、とした。エレベーターの扉が開く。ヴィクトルが先に降りて、勇利は慌ててあとに続きながら軽く混乱する。今、この人なんて言った? 返事ができないまま歩いていると急にヴィクトルが振り返った。 「勇利の部屋はあっち」  ハッと気付く。 「おやすみ勇利。今回の滑りは最高だったよ」  コーチの部屋の扉が閉まり、オートロックの鍵が閉まる小さな機械音が廊下に響いた。  三年前のことだった。 
2-1710 新宿の夜 
 これはたぶん何かを超えてしまった。  そう勇利が悟ったのは、ロシアに拠点を移してから半年、スポンサーとの仕事で日本に一時帰国したときだった。一年間のコーチ生活ですっかり日本が気に入ってしまったヴィクトルは、ここぞとばかりに勇利に同行した。が、この時の彼はもう勇利のコーチではなかった。グランプリファイナルでライバルたちの勇姿を見た彼が浮かれた頭で思い描いたコーチ兼ライバルという関係は、とはいえ到底現実的なものではなかったのだ。それでも勇利がロシアに渡ったのはただ日本にふさわしいコーチがいなかったからで、その頃の勇利には、ヴィクトルのコーチであるヤコフ・フェルツマンの紹介で新たな(そして有能な)ロシア人コーチがついていた。  仕事の前に無理やり長谷津に立ち寄って、実家に一泊だけしてから東京へ移動しいくつかの撮影やインタビューを済ませると、たった四泊の慌ただしい日本滞在はあっという間に終わってしまった。日本にいる間は不思議な感覚だった。二人の関係は常に変わっていく。憧れ続けたスター選手とどこにでもいるスケーター。突然現れたコーチと再起をかけた瀕死のスケーター。そして、最高のライバルを得た世界トップクラスのスケーター同士。自分の立場の変化に、ときどき勇利の心は追いつかない。こんなに遠くまで本当に自分の足でたどり着いたのか��いまだに半信半疑でいた。「もしこの人を追いかけていなかったら」。ヴィクトルのいない人生を思うと、勇利はいつも自分の存在自体を疑いたくなるのだった。  日本滞在最後の夜、新宿のホテルの近くにある焼き鳥屋で、二人はだらだらとビールを飲んだ。小さな飲み屋が連なるそのエリアは外国人観光客で溢れていて、煙だらけの狭い店内に不思議と馴染んだヴィクトルは普段よりも一段と楽しそうに笑っていた。めったに味わうことのない観光気分が、彼の抱えるプレッシャーを和らげていたのかもしれない。「博多の夜を思い出すよ」なんて言いながら、コーチ時代の思い出を語り始める。妙に懐かしかった。あれから大して時間も経っていないのに、二人にはそれがはるか昔のことのように思えたのだ。 「ずっと聞きたかったんだけど」  店内の騒々しさを良いことに、勇利はこれまでずっと不安に思い続けてきたことを聞いてみた。 「コーチをしていた一年を、ヴィクトルは後悔していないの」  ヴィクトルはそれまで上機嫌に細めていた目を大きく見開くと、何を言ってる? と言わんばかりの顔で勇利を見返した。そしてすぐに、ふっと笑った。 「勇利はびっくりした?」 「した。今でもあの頃が信じられないし、ロシアに拠点を移した今の状況もまだ信じられないよ」 「俺もね、びっくりしたんだ」 「自分の行動に?」 「全部だよ」 「全部」 「そう、全部。勇利のコーチになれたことは大きな意味があったんだ」 「コーチになって良かった?」
「俺が勇利のコーチじゃなきゃいいのに」
 突然、頭の片隅で声がした。バルセロナで聞いたあの台詞。目の前のヴィクトルは何も答えず笑っているだけで、あの時のことを覚えていたかはわからない。だけどなぜかそれ以上聞いてはいけない気がして、勇利は飲みかけのビールを手に取った。
 その後もだらだらと話を続けた二人は、ホテルへの帰り道、どういうわけか、本当にどういうわけか、気付くとキスを交わしていた。何がそうさせたのか、勇利は今でもわからない。まっすぐ帰ればいいところを、なぜかわざわざ回り道をして、ときどき肩をぶつけては、時間を惜しむようにゆっくりと二人は歩いていた。ちょっとした流れのようなものだった。右足が出たら次に左足が出るように、それくらい自然に、歩く二人の距離が近づいた。それで唇が触れ合ったその瞬間、喧騒が消え、街灯が消え、視界は閉ざされ、過去から繋がってきた一つの線がそこで急にプツリと途絶えた。このあと一体どうすればいいのかわからない二人は、そのまましばらく唇の熱を分け合いながら、たぶんもう戻れない。そう思った。 
   ホテルの部屋は別々にとっていた。足早にエレベーターに乗り込むと、勇利はヴィクトルのフロアのボタンだけを押した。乗客は二人だけ。行き先は一つだけ。決定打を押したのも勇利だった。銀髪に触れるほどの距離で、彼は小さく囁いた。 「ヴィクトルはもうコーチじゃないよ」
 その夜、勇利は初めて男に触れられる感覚を知った。
3-1904 春を走る
 東京では浜辺を走れない。ランニングの途中で砂浜に降りて、ウミネコを眺めながらぼんやりする、そうした時間はここにはない。代わりに勇利は公園を走る。少年野球のチームや、体育大学の学生や、小洒落たウェアに身を包んだ若者や、犬の散歩をする老人に混ざって、長谷津よりもひんやりとした東京の春を彼は走る。トレーニングではない、ただの日課。帰り道、公園脇のカフェでショートサイズのコーヒーを買う。カップを持つ彼の右手に、かつてはめられていた指輪はない。マンションに着くと、シャワーを浴びて仕事のメールを確認する。マネージメントを任せているエージェンシーから、新しいアイスショーの話が来ていた。断る理由もないので、淡々と勇利は返信を打つ。
 新しい日々が始まっていた。一人のプロスケーターとして、日本のスケート史上に名を残したメダリストとして、人生の次のキャリアを進み始めた26歳の青年として、東京の勇利は忙しかった。
4-1908 ときどき思い出す
 スケートに関わっている限り、勇利がヴィクトルのことを避けて生きてくことはできない。お互いすでに引退した選手だとはいえ、レジェンドの称号を得た男がスケート界の過去になるには、まだまだ時間が足りなかった。    引退後のヴィクトルの活動は、悪い言い方をすれば多くの人の期待を裏切るかのように地味なものだった。セレブタレントの座に落ち着くことはなく、無駄に広告やメディアに露出することもなく、フィギュアスケート連盟の一員として選手強化と環境改善に従事した。もちろん天性のカリスマ性とスター性は裏方になってもなお人々の目を引き、解説者やコメンテーターとしてテレビに出れば視聴者は彼の一言一句に注目したが、いずれにせよ今のヴィクトルの活動は今後の主軸を定めるための調整期間のように見えていた。どこかふわふわしていたのだ。  コーチ業に転身しなかったことを不思議がる人もいなくはなかったが、多くのファンや関係者にとってヴィクトルが勇利のコーチをしていた一年間はラッキーな気まぐれのようなものとして記憶されていたし、あのシーズンの勇利が劇的な活躍を見せたのも、ヴィクトルのコーチ手腕というよりはライバル同士の妙なケミストリーの結果だと認識されていた。「コーチごっこ」とは当時の辛辣なメディアが何度も書き連ねた言葉だが、誰もが心のどこかでそう思っていたのだ。誰もヴィクトルにコーチになって欲しくなかった。まだ十分に戦える絶対王者として、華やかなその演技で自分たちの目を楽しませて欲しかった――ただ一人を除いて。勝生勇利、彼の教え子になり得たたった一人の男、彼の独りよがりな望みだけが、世界中の期待を跳ね除けたのだ。だけどそれも今となっては、たくさんの過去のひと幕に過ぎない。  今でも勇利が取材を受けるときは、決まってヴィクトルのことを聞かれる。ロシアで切磋琢磨した二年間(とはいえ勇利が渡露した一年後にヴィクトルはあっさり引退したわけだが)、帰国後の一年間、かつてのコーチでありライバルでもあった彼とはどんな関係を築いていたのか。それで今、二人はどんな関係にあるのか。そう言われても、と勇利は思う。  連絡は取っていなかった。取るわけがなかった。理由がないのだ。ロシアのスケート連盟と日本のプロスケーターが個人的に連絡をする必要はないし、人は二人を「元ライバル」なんて呼ぶけれど、正しく言うならばその関係は「元恋人」と言うべきもので、そんな二人が連絡を取らないことに説明は要らない。    勇利は昔から熱心にヴィクトルを追いかけてきたけれど、何かにつけて、彼を遮断するときがあった。自分のスケートに集中しきっているとき、成績が振るわずヴィクトルの栄冠を見るのがつらいとき、絶望しているとき、他に心奪われるものができたとき。今はそのどれでもないけれど、だから勇利はヴィクトルの遮断にわりと慣れていて、今もその最中だった。ヴィクトルのことはわからないし興味もないです、なんてことが言えるわけもなく、勇利は当り障りのない言葉でインタビュアーをごまかすのだった。  メディアで彼を見かけることもあった。勇利は別にそうしたものを一切視界に入れないようシャットアウトしているわけではない。見ても何も思わないよう、自分の心に遮断機を下ろすのだ。ヴィクトルは相変わらず美しく、今でも目を奪うには十分すぎる魅力がある。それでときどき、本当にときどきだけど、その細く乾いた銀髪を見ながら勇利はこう思う。 「僕はこの人のセックスを知っている」  だけどそれがどんなものだったか、あの途方もない感覚を勇利はうまく思い出せない。
5-1710 変化の朝
 初めて体の関係を持った新宿の夜、勇利はそれをセックスと呼んでいいのかすらわからなかった。ホテルの部屋のドアを開けるなり、二人は貪るかのようにキスをして、無抵抗の勇利はヴィクトルの手になぞられるままにその肌を露わにした。首筋から肩に流れるラインにヴィクトルの唇がひときわ���く吸い付くと、勇利はだけど耐え切れない恥ずかしさと緊張で相手の両肩をぐっと押した。「汗、かいてるし、においも、さっきの」。うまく繋がらない一言一言を、ヴィクトルはうん、うん、と逐一頷きながら拾って、どうしてもそれてしまう勇利の目をまっすぐ追いかけた。「じゃあシャワー行こう」と言って腕を引くと、バスルームの引き戸を開けてシャワーをひねり、自分はあっさりと服を脱ぎ捨てた。熱湯で一気に眼鏡が曇る。まだかけてたんだ、とヴィクトルは笑って、勇利からそっと眼鏡を外すと彼をシャワールームに引き連れた。肌を流れる水が、たくさんのものを洗い流していく。汗と、恥じらいと、ためらいと、キスと、手の感触。ぴったりと密着した下半身でどちらともなく硬くなったそこを感じると、勇利は思わず声を漏らした。ヴィクトルの大きな掌が二人のそれを握りしめる。流れ続けるシャワーの音が二人を世界から隔離したように思えて、勇利はただ耳だけを澄ませながら、見えない感覚に身を委ねた。腰が砕けたのはそのすぐあとだ。ヴィクトルの体にしがみつくと、水がベールのように二人の体を包み込み、発散しきれない熱にともすれば意識を失いかねない。立ち上る水蒸気に混じって、知らない精液のにおいがした。
 早朝に目を覚ました勇利は、しばらくベッドの中でぼんやりしていた。鼻の先にあるヴィクトルの肩は、まだ静かな眠りの呼吸に揺れている。頭が現実を取り戻してくると、突然今日のフライトを思い出した。慌ててベッドから起き上がり、銀髪の人を軽く揺らして声を掛ける。 「ねぇ、荷物まとめないと。僕、一度部屋に戻るよ」  ヴィクトルは目を開けなかったけれど、ん、と声を漏らしながら腕を伸ばすと、手探りで勇利の頬に触れた。 「キスをして」
 脱ぎ散らかした服を手早く身に付けると、勇利はヴィクトルの部屋を出た。誰もいないホテルの廊下を歩きながら、ああ、僕はゲイだったんだ、と思った。昨晩の衝撃と、今朝の納得と、変わりすぎた二人の関係に、勇利はどこかまだぼんやりしていた。ぼんやりしながら、踊り出したいくらいにうれしかった。
6-1909 走れない日
走りに行けない朝がある。 カーテンの端を見つめたまま、勇利の体はどうにも動かない。 一人分の体温と一人分の空白を抱えながら、ベッドの中で涙が乾くのをじっと待っている。
7-1812 男たちの別れ
 ヴィクトルが引退した翌年、勇利のロシア二年目のシーズン、勇利には今が自分のラストシーズンになる確信があった。それは別にネガティブなものではなく、肉体的なピークと精神的な充足感が奇跡的なリンクを成し、ごく自然なかたちで、彼は自分自身に引退の道を許したのだった。スケーターとしての勇利にとっては何の問題もない選択だったけれど、一方で一人の男にとって、ある種の偉業をなし得たとはいえまだまだ二十代も半ばを過ぎたばかりの未熟な男にとっては、巨大な不安がはっきりと顔をもたげ始めた瞬間だった。この先自分は何者として、どこで、誰と、どう生きていけばいいのだろう。
 その不安はヴィクトルとの関係において顕著だった。具体的に言えばその頃から、勇利はヴィクトルとのセックスを拒否するようになっていた。勇利の人生にとってスケートとヴィクトルは常にセットで、スケートを介さなければ決して出会うことがなかったように、スケートなしでは二人が恋人の(ような)関係になることはあり得なかった。だからこそ勇利はこわかったのだ。自分からスケート選手という肩書きがなくなったとき、すでに現役選手としての肩書きを捨てているヴィクトルと、果たして純粋に今の関係を続けられるのかが。  勇利が初めてヴィクトルと関係を持ってからの一年間、二人のセックスは、よく言えば情熱的な、悪く言えば無茶苦茶なものだった。スケートと同じくらいの情熱を持って何かを愛するという経験を持たなかった二人は、それまで溜め込んできた「愛する」という欲望のすべてを互いにぶつけ合った。セックス自体の経験値こそまるで違えど、ぶつかる熱の高さは競いようもなく、貪欲な絶頂に幾度となく体を震わせた。競技者という者たちが決定的に抱える孤独が、その時だけは確かに溶けていくと実感できた。その意味において、勇利にとってヴィクトルとのセックスは、特別な意味を持ち過ぎていたのだ。ヴィクトルなしでは成立し得ない彼の人生は、それまではスケートという枠組みの中だけに言えることだった。だけど今は、全部なのだ。全部。
「セックスがつらいから別れるの?」 「そうじゃない」 「わからない、じゃあなんで」 「ヴィクトルはそれでもいいの」 「セックスのために一緒にいるわけじゃない」   「違うよ、違う、だけどつらくて仕方がないんだ���」 「自分だけがつらいふりをして!」
 ヴィクトルにはわからなかった。勇利に惹かれ、勇利を求め、勇利といたい、それ以外の想いなんて彼にはなかった。肌を重ねるたび、互いの中に入るたび、全身でその気持ちを伝えてきたつもりだった。最初のためらいを超えて勇利がヴィクトルを受け入れるようになってからはなおさら、彼はどんどん自由になっているようにすら見えた。全身で愛されることの喜び、誰かを抱くことの自信、解放された感情、そうしたものは勇利という人間のあり方を確かにある面で変えていたし、スケーティングにおいてもそれは顕著だった。二人の関係を周囲が騒ぎ立てることもあったけれど、そんなノイズの一つや二つ、二人が気にするまでのものではなかったし、くだらないメディアに対して沈黙を貫く二人の姿勢は、彼らが作り出す領域の不可侵性を高める一方だった。なのに、なぜ。失おうとしているものの大きさに、ヴィクトルはただただ腹を立てていた。怒りに震えたその指では、掛け違えたボタンを直すことなんてできなかった。
 誰を責めるのも正しくはなかった。一度崩れたバランスが崩壊するのは不可抗力としか言いようがない。涙をためていたのはお互いだったけれど、それが嗚咽に変わることはないまま凍ってしまった。呆れるほどに強くなりすぎたのだ。外の世界と、あるいは互いの世界と、戦い続けている間に。
 ちょうどその頃、勇利は引退を発表した。そういうことか、とヴィクトルは思った。コーチでもない、恋人でもない、今となっては勇利の何でもないヴィクトルには、その勝手な引退の決意を咎める権利なんてなかった。コミットする権利を奪われたのだ。最愛の人に。ヴィクトルは何も言わず、勇利の帰国を見送った。本当はできることならもう一度、その黒髪に指を通し、こめかみに幾度となくキスを落としたかった。どれだけ腹を立てていようと、どれだけその後がつらくなろうと、もしかしたら何かが変わるかもしれない。そんな望みを、あるいは抱いていたのかもしれない。
 勇利の送別会が終わった翌日、ヴィクトルはベッドのシーツを剥ぎ取ると、壁に飾っていた一枚の写真を外した。どこまでも青く広がった、遠い異国の、風に揺れる、穏やかな海の景色だった。 
8-1807 ネヴァ川を見る
 サンクトペテルブルクに、海の記憶はあまりない。代わりに勇利は川を思い出す。いくつもの運河が入り混じる水の街の主流を成すネヴァ川。その川沿いに建ち並ぶ巨大で仰々しい建物の名前を、だけど勇利はなかなか覚えなかった。それが美術館だろうと大学だろうと聖堂だろうと、勇利にはわりとどうでもよかったのだ。ただこの景色がヴィクトルの日常であり、自分が今その日常の中でスケーティングを続けている、その事実だけが重要だった。  それでもいつだったか、早朝に川岸を走っていたときふと目をやったペテルブルクの風景は、日本からやって来た若い青年の胸を打つには十分な異国情緒があった。スマートフォンを取り出すと、普段めったに使わないカメラを立ち上げて、勇利は下手くそな写真を撮った。オレンジともピンクとも紫とも言えない朝日が、ついさっき暗くなったばかりのネイビーの空を、圧倒的な存在感で染め上げていく。混じり合う色と色のグラデーションが急速に消えていくのがなんだか妙に惜しくて、勇利はこのまま空を見続けていたいと思った。写真は全然素敵なものではなかったけれど、勇利は何年振りかに、それをスマートフォンの背景画像に変更した。  その日の夜、そういえば、と勇利はベッドサイドテーブルの上で充電ケーブルに繋がれていたスマートフォンを手に取って、ヴィクトルにネヴァ川の写真を見せた。 「これ、今朝の。きれいだった」  ヴィクトルは勇利が自分で撮った写真を見せてくれる、ということにまずおどろきながら、写真を覗き込む。 「勇利、写真にはもっと構図ってものが……」とヴィクトルがからかうので、勇利は彼の顔を枕でぎゅっと押しつぶす。 「うそうそ、ごめん、きれいだよ、本当に」 「あれみたいに飾れるレベルだといいんだけど」  ヴィクトルの寝室には一枚の海の写真が飾られている。コーチとして長谷津にいた頃、ロシアから雑誌の取材が来たことがあった。スチール撮影は海を背景に行われ、その時カメラマンが押さえた風景カットがとてもきれいで、ヴィクトルはスタッフに頼んでそのデータをもらったのだ。ベッドに寝そべるとちょうど目に入るくらいの位置に、大きく引き伸ばされたその海は飾られている。 「わかるよ、俺もそういう空が好き」  さっき枕を押し付けられたせいで、ヴィクトルの前髪は不恰好に癖がついている。それを気に留める様子もなく、彼は写真をじっと見つめる。 「あの時の衣装みたいだ」
9-1911 冬が来る
  玄関のドアを開けた瞬間、季節が変わった、と勇利は思った。寒さを感じるにはまだ少し遠い、それでも確かにひんやりと冷えた朝の空気。いつもと違うにおいをゆっくり吸い込むと、鼻の奥がつんとした。冬がやってくる。     四階の部屋から、エレベーターは使わず外階段をたんたんと駆け下りる。エントランスを抜けて通りに出ると、いつものランニングコースへ足を向ける。最初は少し歩く。駅へと向かう近所のサラリーマンたちとすれ違う。ぐいっと腕を上げて肩を回すと、おもむろに勇利は走り始める。もう一度風のにおいを嗅ぐ。十分ほど走って公園につくと、ドッグランを横目にそのままランニングレーンに入る。  一周二キロのコースの二週目に入ったあたりで、この日の勇利はなんだか急に面倒になって走るのをやめた。虚しくなった、というほうが正しかったかもしれない。普段あまり意識しない感情の重さに、勇利は少しだけうんざりした。それとほぼ同時に、ウェアのポケットに入れていたスマートフォンが鳴る。こんな朝から、と歩きながらスマートフォンを取り出した勇利の足が、突然ぴたりと止まる。手の中でバイブを続けるスマートフォン。動かない勇利の指。画面につと現れたあの名前。 「“Victor Nikiforov”」
10-1911 コーチの助言
「人というのは、自分が守られているとわかっているときにこそ心置きなく冒険できるものなんだ、ヴィーチャ」 ヴィクトルは時折この話を思い出す。大昔のことだ。 「お前の安心はなんだ? メダル? 名声? それとも尊敬?」  ヴィクトルは考えた。そのどれもが、彼にとっては確かに重要なものだった。 「もしお前の足が止まるようなことがあれば、そうしたものを一度見直してみるといい」  そう言われると、ヴィクトルは少し腹が立った。自分が心血を注いで獲得してきたものを、真っ向から否定されている気がしたのだ。 「自分を守ると思っていたものが突然自らの足枷になって、お前を縛り付けるかもしれないからな」
 目的地までの残り時間を告げる機長のアナウンスで、ヴィクトルは目を覚ました。モニターをタッチしてフライトマップを映し出す。飛行機はいよいよユーラシア大陸を超え、Naritaの文字まであと少し。あれからもう何年も経つというのに、いまだにコーチの助言は有効力を失ってはいなかった。まだ少し焦点が合わない目で明け方の空を眺めながら、ヴィクトルはその言葉を声に出してみる。
「安全基地を見失うな」
11-1911 ジンクスと可能性
 バゲージクレームのベルトコンベヤーの前で、ヴィクトルは荷物が出てくるのをじっと待っていた。レーンの先を真剣に見つめているのは、なにも焦っているからでも大切なものを預けているからでもない。ジンクスがあるのだ。ベルトコンベヤーに乗せられた自分のスーツケースが、表を向いていればその滞在はうまくいく。裏を向いていれば用心が必要。ベルトコンベヤーが動き出す。プライオリティタグの付いた彼の荷物が出てくるまで、時間はそんなにかからない。見慣れたシルバーのスーツケースが視界に入ると、ヴィクトルは思わず苦笑した。流れてきたスーツケースは、サイドの持ち手に手が届きやすいよう、行儀良く横置きされていた。  荷物を受け取ってロビーに出ると、時刻は朝の八時を少し回ったところだった。スマートフォンを取り出すと、ヴィクトルは自分でも少し驚くくらいためらいなく、勇利への発信ボタンをタップした。朝のランニングを日課にしている彼のことだから、今頃はそれを終えて朝食でもとっているか、その日の仕事に出かけるところだろう。だけど予想通り、その着信に答える声はなかった。スマートフォンをポケットにしまうと、ヴィクトルは軽いため息をついて成田エクスプレスの乗り場へ。「事前予告なんて俺らしくない」と思ってはみたものの、だけどヴィクトルには向かうべき先がわからなかった。東京に拠点を移したということ以外、勇利の居場所についてはなに一つ知らなかったのだ。唯一向かう先として確定している新宿へのルートを確認しながら、やっぱり羽田着にすれば良かったと思った。彼はいい加減に疲れていた。サンクトペテルブルクからモスクワ、モスクワから成田、成田から新宿。スムーズなルートではあるものの、これ以上時間をかけるのが煩わしい。その気持ちもあってかどうか、新宿に到着するのとほぼ同時に、ヴィクトルは勇利にメッセージを送った。 「しばらく東京にいる。可能性は?」
“可能性”?
 勇利がメッセージに気づいたのはその日の正午ごろだった。ヴィクトルの着信を無視して家に戻ってから、打ち合わせのためにマネージメント会社の事務所に向かった。スケジュール諸々の確認を済ませ、いくつかの事務的な話を終えて事務所を出ると、いつも無視するだけのSNS通知に混じってそのメッセージは届いていた。  精神的ヴィクトル遮断期の成果か、勇利は着信を見た時もメッセージに気づいた時も、思っていたほどのダメージを受けなかった。その代わり、「可能性」の文字が勇利の前に立ちはだかる。それはこの一年間、勇利がもっとも望み、同時にかき消そうと努めてきたものだった。メトロの入り口までの道を歩く間、勇利は逡巡した。が、地下に入って改札機にICカードをタッチすると、その瞬間に案外あっさり答えが決まった。募らせてきた孤独と愛おしさを開放するには、改札が開く小さなその電子音だけで十分だったのだ。 「どのホテル?」  メトロに乗り込む。5分ほどでヴィクトルからの返信。ホテルの名前を見た瞬間、勇利は一気に胸を掴まれた。スマートフォンをポケットではなく鞄に入れると、両手で思わず顔を覆ってひときわ大きなため息をついた。遮断機は壊れてしまった。抑揚のあるあの声を、肌に触れる乾いたあの髪の感触を、抱きしめたときの体の厚みを、汗と香水のにおいを、熱を、息を、そして氷上をしなやかに滑るあの姿を、勇利の体は鮮明に思い出した。メトロの中で、勇利はほとんど泣いていた。
12-1911/1812 言えなかった
 目が覚めると午後五時を回っていた。約束の時間まであと一時間。フライトの疲れはたぶん取れている。ヴィクトルはシャワーを浴びると、小ざっぱりとした自分自身を鏡越しに見つめた。現役時代と比べれば筋肉量は若干落ちたものの、傍目には変わらない体型を維持している。銀髪に混じる白髪は前からのことで、目の下のシワも見慣れている。だけどやはり変わったなと思うのは、その目元だった。ひとしきりの怒りとさみしさを通過したヴィクトルの目は、少し力なく、だけどそれ以上に、優しくなっていた。  話す言葉は何一つ用意していない。これからどうしたいかも決めていない。とにかく会えば、会えさえすれば、なんて甘えたことも思っていない。だけどヴィクトルは日本にやって来たし、勇利はそれをはねのけなかった。思えばあの時もそうだったのだ。自分が勇利のコーチになる可能性なんて本当はどこにもなかった。無茶苦茶なことをしている自覚もあった。持ち前の奔放さで周囲を驚かせてきた彼だったが、本当はいつだって、自分が一番驚いていたのだ。未知へと足を踏み入れたことに。不安を乗り越えられたことに。新しい安全基地を、確かに手に入れられたことに。ヴィクトルの冒険と不安を受け入れたのは勇利以外の何でもなかった。一緒に居れば何者にだってなれる。ただそれを、あの人に伝えたかった。 「ねぇ勇利」  鏡越しに独り言を呟く。
「今日から俺は勇利の何になる?」
 同じ台詞を、二人は別れる直前にも聞いていた。元師弟とも元ライバルとも恋人とも言える二人の関係を終わらせようとしている勇利の心を、ヴィクトルはどうしても知りたかった。いや、変えたかった。 「何だっていい。ヴィクトルはヴィクトルでいてくれたらいい」 「勇利は俺の何になる?」 「何だっていいよ」 「それがこわいのに?」  勇利は答えなかった。その通りだった。ヴィクトルがヴィクトルであること、勇利が勇利であること。口で言うには響きの良い台詞だけれど、その意味を、その事実���受け入れることは、思っていたよりたやすくなかったのだ。 「いつかこわくなくなると思う」 勇利は最後の最後になって、すがるようにヴィクトルの首元に腕を回し、鎖骨のあたりに顔を埋めた。自分勝手さなんて痛いほどわかっていた。ヴィクトルの手が軽く背中に触れたけれど、それはただ、触れただけだった。
「だからそれまで待っていて」とは、勇利はとても言えなかった。
13-1711 ゆだねる
「やっぱりこわい。ていうか……抵抗感がある」 「うん、無理にとは言わない」 「……ヴィクトルはどっちなの」 「どちらでも。勇利とならどっちでもいい」 「そういうもの?」 「俺はね。相手と一番気持ちいい関係でいたいから」 「どんな関係が一番かなんてわかんないよ」 「だから試さないと。そうだね、わがままを言うなら、俺は勇利に“受け入れる心地よさ”を経験してみてほしいかな」 「痛そうじゃん……」 「最初はね。でも相手にゆだねてしまえば、きっと良くなる。絶対に無理強いはしない」
 そう言いながら、これがハードルなんだろうな、とヴィクトルは思った。勇利は簡単に誰かに身をゆだねられるタイプの人間ではなかった。自信のなさはかつての彼の最大の欠点とも言えたが、言い換えればそれは一重にプライドの高さと自分への責任感であり、自分を支える存在を求めながらもその対象に依存するようなことは考えられないだろう。たとえそれが、氷上だろうとベッドであろうと。アスリートとして身につけてきた彼のストイックさを、怖れを超えたその先で解放される表現者としての素質を、だけどヴィクトルは何よりも愛していた。
「勇利の準備ができるまで、いつだって待つよ」
14-1910 空になったグラス
「どうせ誰かの専属コーチになることはないんだろ」  久しぶりに会った友人は、テーブルの企画書を片付けるとグラスに残っていたワインをゆっくりと飲み干した。 「おもしろいプロジェクトだと思う、君らしい。感情にさえ流されなければうまく行くんじゃない? まあそこが君の魅力だけど」 「余計な心配だ」  ヴィクトルの冗談を端的にかわすと、ポポーヴィッチは少し思案した後じっとヴィクトルを見つめた。 「真剣に聞いているんだ。このまま君が連盟の一員になっていくなんてとても思えない。コーチはしないまでも、その才能を裏方に回すなんて誰が望む? 凡庸なスケートショーに誘っているわけじゃない。一種のアートの試みだよ」  二年前、ポポーヴィッチはヴィクトルと同時期に引退し振付師へと転身した。もともと芸術家肌だった彼の野心は振り付けだけにとどまらず、最近ではショー全体のプロデュースに取り組みはじめ、スケート界の新しい動きとして一部から期待と注目を集めていた。 「とはいえ俺はアスリート気質だからねぇ。エンターテイナーでいることは苦手なんだよ、わかるだろ」 「エンターテイナーになれなんて言っていない。ヴィクトルという一人の人間として滑ってほしいんだ」 「ヴィクトルという人間、ねぇ……」  すでに空になっている自分のグラスを見つめながらそう呟くと、ヴィクトルはなぜか笑いたい気持ちになった。 「“お前は何者なんだ、ヴィクトル!”」  突然古風な芝居じみた口調で笑いだす友人に、ポポーヴィッチは呆れてため息をつく。 「本当に、ヴィクトル、これからどうするのかヤコフも心配している。最近じゃあのユーリですら……」  愛すべき友人の言葉を最後まで聞かずに、ヴィクトルはさっと立ち上がった。 「そろそろ決めてもらわないとね、俺が何者か」 「?」 「プロジェクトのことは考えておくよ、スパシーバ」  訝しげに見つめる友人の肩をぽんと叩いて、ヴィクトルは一人店を出る。帰りのタクシーの中でスマートフォンを取り出すと、ためらいなく成田行きのフライトを予約した。不思議なほどに、意気揚々と。
15-1911 それでも、なお
 ホテルのロビーで一人掛けのソファに腰を下ろした勇利は今、行き交う宿泊客をながめている。どうしていつも急に来るのだろうと、初めて彼が長谷津に現れたときのことを思い出す。頭の中で月日を数えて、勇利は思う。まだ4年も経っていないのか、と。どうしてヴィクトルが東京にいるのか、どうして勇利と会おうとしたのか、勇利には見当がつかない。これから会ってどんな話をするのか、勇利の方にだって何の準備もない。自分から離れた相手なのだ。どんな態度でどんな話をされたとしても、勇利はそれを受け入れるしかないとわかっている。それでもなお、勇利は思う。そこに可能性があるのなら。自分を失うこわさと引き換えに、別の何かを見つけ出す可能性があるのなら。自分を定義づけてくれる存在を、もう手放すようなことをしてはいけない。
 新宿に来る前、勇利は一度マンションに戻っていた。まっすぐ寝室に向かうと、クローゼットの奥から彼の持ち物の中では異質な黒い小箱を取り出した。最後にそれを見てから、もう一年近くが経とうとしている。「この歳になってもまだおまじないか」と苦笑いを混ぜて呟くと、それでも最大限の愛おしさを込めて、乾いた右手の薬指に小さな金の環を通した。それから右手を唇にぐっと押し当てるようにキスする癖は、一年経っても忘れてはいなかった。
 賭けをしよう。あの人の指にも同じものがあるだろうか。あるいは祈りを、あるいは冒険、あるいは。
 エレベーターがロビーフロアに到着する。数人の宿泊客とともに銀髪の彼が現れる。青い視線が黒髪を見つける。聞きなれたあの声が、勇利の名前をまっすぐ呼ぶ。
fin
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ari0921 · 6 years
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〝赤い選挙戦〟と市行政を動かしてきた華人女性  米サンフランシスコ市議会は、9月22日を「慰安婦の日」と定め、世界抗日戦争史実維護連合会らが現地に建てた慰安婦像の寄贈と維持費を受け入れる決議案を10月14日、全会一致で可決させた。そして華人系2世のエドウィン・リー(李孟賢)市長は、その決議案に署名をした。これにより、「性奴隷にされた何十万人の女性」「大多数は囚われの身のまま命を落とした」などと碑文に〝フェイク〟が刻み込まれた慰安婦像が市の所有となった。  リー市長宛てに寄贈の受け入れの反対を明記した公開書簡を送付(平成29年2月1日付)していた姉妹都市、大阪市の吉村洋文市長はこの決定を受け、11月23日に、「リー市長の行動により姉妹都市の信頼関係は消滅した。姉妹都市解消に向けた内部手続きを行い、12月中には手続きを完了させたい」とのコメントを出した。さらに12月11日、市長は「姉妹都市解消後も抗議の書簡を送る」との考えを明らかにした。  ところが、その翌日、驚きの一報が入った。リー市長が突然死したのだ。享年65歳だった。  そもそも、サンフランシスコ市はとっくの昔から中国の〝飛び地〟と化している。古くは戦前から。そして、米中が国交を樹立(1979年1月1日)し、同年に上海との姉妹都市関係を締結するが、江沢民が上海市長に就いた1985年以降、ほぼ彼の支配下に入っていったのだ。  「カリフォルニア州初の上院議員」「初の下院議員」「初の女性市長」「初の市議会議員」など、2010年前後から、在米の華人メディアがしきりと「初」を連呼し、華人系米国人の政界進出ラッシュを盛り上げていた。 そのような折、2011年1月、サンフランシスコ史上初の華人系代理市長(第43代)が選出され、現地の華人社会が沸いた。カリフォルニア州知事だったアーノルド・シュワルツネッガーが辞任を表明し、ジェリー・ブラウンが新知事に就任するのに伴い、サンフランシスコ市長が副知事に転進した。  そして副市長だったエドウィン・リーが満場一致で残りの任期である2012年1月まで市長職を引き継ぐことになったのだ。シアトル生まれのリー代理市長は、1930年代に広東省から移民してきた両親を持つ。 そして、「我々が市を創っていく、その大きなステップとなった」と、彼の就任式の場でこう高らかに述べたのは、やはり華人系のエリック・マー(馬兆光)市議だった。彼は後に慰安婦像関連のまとめ役となり、決議案を提出した男である。  しかも、リー代理市長は2011年11月に実施される次期市長選に立候補しないことを表明していたが何故か翻意した。市長予備選、つまり共和党と民主党の代表候補者を決める段階の候補20数名には、華人系4名の有力候補が名を連ねた。結果、「弁護士」という経験と、過去、4人ほどの市長に仕えてきた経験はあるが、取り立てて目立つ存在ではなかった」リーが代表候補となり、リベラルな牙城の同地において共和党候補にも勝利し、「代理ではない」市長への就任が決まった。2015年には、さしたる対抗馬も出ない中、現役市長として再選が決まった。  これらの政治工作を長年、仕掛けてきたのがサンフランシスコ中華總商會の顧問を務めるローズ・パク(白蘭)女史だった。〝赤い選挙戦〟を物語る『ニューヨーク・タイムズ』の記事、「背後の権力政治。作られた市長」には、パク女史とウィリー・ブラウン元市長(サンフランシスコ市長として唯一の黒人)の存在があると報じられた。そして『大紀元時報』には、リー新市長が就任演説でパクに謝意を表明したこと、「米国の重要な都市、サンフランシスコでついに華人市長を作る時が来た。この機会は逃せない」とパクが高らかに述べ、「政治ゲームを楽しむ理由が分かったでしょう」と記者に語ったことも報じられた。  湖南省出身のパク女史は、文化大革命期の1967年に脱出し、米国へ不法移民し、70年代は新聞記者の肩書を持っていたらしい。中国国民党系の中華總商會の親玉ステファン・ファン(方国源)との同棲を機に、中華總商會は中国共産党とも関係を持つようになったとされる。  80年代半ばから、サンフランシスコ市の華人と政界は、江沢民ら(上海閥)とズブズブの関係になっていく。90年代にブラウン市長やアート・アグノス市長へ選挙の資金援助(推測する範囲でも中国マネー)をしていたとされるパク女史は、不法移民という前科がありながら大出世する。サンフランシスコ市政府の顧問となり、市長らの訪中を手配するなど、地元行政に多大な影響力を持つようになったのだ。リー市長もそうだが、華人系と韓国系を含む現市議11人の中の6人が、パク女史に選挙で世話になったと報じられている。 国民党を食い、共産党も食う  そしてもう1人の華人女性が、2015年8月15日、中国国外で初となる抗日戦争記念館��開館させた現在82歳の方李邦琴(フローレンス・ファン)である。肩書は在米女性実業家で社会活動家、そして財団創設者として同館の名誉館長に就いた。世界抗日戦争史実維護連合会の支部が置かれるチャイナタウン内の建物を抗日戦争記念館としてリニューアルしており、建物の所有者はファン女史だ。  中国語と英語で併記されたA4のパンフレットの挨拶文には、「第二次世界大戦の間、ナチス・ドイツに約600万人のユダヤ人が虐殺され、全世界に167カ所のユダヤ記念館や記念碑がある。一方、日本軍国主義により3500万人以上の中国人が抹殺されたが、海外に記念館は一つもない。それではこの悲惨な歴史を世界が理解することができない」などと記されている。  70年を節目に、中国・華人社会は新たな歴史戦への宣戦布告をしたと私は受け取った。日本軍の侵略、南京30万人、数十万人の慰安婦を強制連行……。性奴隷はユダヤのホロコーストに匹敵する戦争犯罪だと印象づけるための動きである。 ファン女史は1935年に中国河南省鄭州で生まれ、その後、台湾へ渡り、国立政治大学を卒業後に米国へ移住し、上海出身で台湾育ちの夫と共に印刷業を始め、中華料理屋経営などを経て出版業に本格的に乗り出したとされる。《少年中国晨報》社は中国国民党系の雑誌出版社で、1979年に米国初の英文雑誌『アジアン・ウィーク』(Asian Week)を創刊した。  ファン家の転機は、彼女の夫が1992年死去した後の1995年に遡る。当時、上海市長を務めていた江沢民派の黄菊の娘(米国留学中)と、ファン夫妻の長男で2代目社長の方以偉(James Fang)が結婚したのだ。この婚姻を画策したのは、母親であるファン女史だったとされる。前年、黄菊は党中央政治局委員に選出され、上海市党委書記に就任していた。 共産党幹部の娘と国民党のいわば工作員夫婦の息子との婚姻について、現地中国語メディアは「国共聨姻」と記し、「方家は国民党を食い、共産党も食う」などと報じた。  その〝予言〟通り、『アジアン・ウィーク』社は飛ぶ鳥を落とす勢いとなる。地元の英字系メディア7社を買収し、同市の『インディペンデント』紙と合併するなどメディアを次々と掌握、大躍進していく。2000年3月には、135年の歴史を有する地元紙『エグザミナー』を買収。在米の英字主流メディアをモノにした初めての華人として、ファン女史の名前は広く知られるようになった。黄菊も胡錦涛政権下で副首相に昇格する。  野望に膨らむ世界の華僑華人は、主義主張というより権力者、すなわち利権(マネー)と結託し、そのネットワークを基軸に昇進を目指す。1990年と2003年に、「カリフォルニア・ウーマン・オブ・ザ・イヤー」に選出された彼女は、「中小企業の支援制度を通じて知り合った」とされるパパ・ブッシュ夫妻との3ショット写真、クリントン大統領と談笑する写真、近年ではオバマ大統領との共演などが、CCTV(中国中央テレビ)で報じられている。  この10年余りは、教育関連などに多額の寄付をするなどマネー外交で米中においての存在感を最高峰にまで高め、北京大学の名誉校董他、米中で数々の「名誉」の肩書を持ち、とうとう「江沢民派の敵」習近平一派へのすり寄りにも成功した。 習近平国家主席が2015年9月に訪米した際の宴席で、ファン女史は一卓で、両脇には第2次習政権(2017年10月~)で序列3位となった栗戦書と序列5位の王滬寧が座っていた。在米華僑華人の中で、ファン女史がどれほどの地位にいるかはこれで分かるはずだ。 赤化と並行して「日本を蹴落とす工作」  フローレンス・ファンとローズ・パク。この2人の華人女性の共通項は、中国生まれの移民1世で、江沢民派(上海閥)との関係が深まり浮上したこと、チャイナタウンを本拠地としていること、である。台湾の名門大学卒の才媛と、不法移民の過去がありながら出世した女、という極端な違いはある。いずれにしても、双方は長らくライバルというより「敵」の関係にあったようだ。  中国・華人社会において、政治と黒社会(秘密結社)はワンセットといえる。さらに中国共産党内、中国国民党内の死闘、離合集散などとも連動して、世界の華人系有力者の闘争が繰り広げられ、暗殺事件や変死にもつながっている。 抗日連合会の会員で『ザ・レイプ・オブ・南京』を1997年に上梓した華人系作家、アイリス・チャンにしても自殺かどうか疑わしい。2006年には、同市チャイナタウンの有名顔役で洪門会(秘密結社の1つ)の五州總会長・梁毅(Allen Leung)が何者かに銃殺される事件も起きた。  そして2016年9月、近年まで駐サンフランシスコ中国領事館が開催するパーティなどでも存在感を示していたパク女史が、68歳で他界した。さらに1年後、リー市長が追いかけるように死去。死因は心臓発作。ショッピングモールで倒れて数時間後、そのまま帰らぬ人に……。  このサンフランシスコ市の例が象徴的だが、中国政府は長年、有能な(女)工作員を海外で選び、組織化し、マネーを投下し、メディアや教育現場、行政などを掌握。赤化を進め、並行して「日本を蹴落とす工作」に心血を注いできた。このような動きは、日本では勿論、米国の他の都市、カナダ、オーストラリア、東南アジア、欧州にまで広がっている。 国会議員の靖國神社参拝も重要だが、日本政府そして外務省はもういい加減、この非常事態に対抗しうる手段を、しかるべき予算と要員をつけて具体的に講じるべきではないか。
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majipoka-blog · 6 years
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月の友人たちへ。地球の重力を感じながら。
 なだらかな丘陵地帯が延々と続いていた。  南北へと伸びる道がただただ続いており、少年はそこを歩いていた。  舗装されていない道を重々しい足取りで一歩、また一歩と進んでいる。  真夏の太陽が容赦なく彼に照りつけている。  夏の暑さを体感するのは少年にとっては初めての体験だった。  そして、地球の重力下で歩くことも。 「はぁ……地球って、こんなに重力があるんだ……」  額の汗を腕でぬぐい、息を吐く。  体力に自信はあった。  その気になれば、数時間歩き続けるくらいの体力はあった。  ただ、それは月の重力、月面基地の気候であればの話だ。  少年は月で産まれ、月で育った。  そして地球に潜入する役目を与えられ、地球へと降下したのだった。  地球人に秘密裏に潜入するため、人里離れた場所に着陸したのだが。 (それにしても、ちょっと遠すぎたかな……)  そんなことを考えていた、その時だった。 「ん? 何の音だろう?」  遠くの方から、音が聞こえる。動物の鳴き声でも、風の音でもない。  少年は音のする方へと歩みを進め、そしてそれを見た。 「川だ……」  木々の向こうに、川が流れている。  月面基地にも川はあったが、人工の川であるため、ここほど流れは速くない。  まるで天の恵みとばかりに、少年が川の方へ向かっていく。  木の根元に荷物を置き、服を脱いで木の枝にかける。 「うわぁ、気持ちいいや」  水に足を踏み入れ、手ですくって顔を洗う。  夏の日差しの中でする水浴びは、新鮮で、とても気持ちいい。 (そうだ、水筒にも水を入れておこう)  荷物から皮袋を取りだし、再び川に入る。  と、そこで手が滑り、皮袋を落としてしまった。 「あっ、待って!」  下流へと流れていく皮袋を追い、泳ごうとしたその時。 「わっ」  両足を地面から話した途端、川の流れに負け、彼自身も流されていく。 (思うように、動けない……!)  地球の重力下での水泳など、彼にとっては初めてのことだ。  それも、今までに経験したことの無い流れの速さでのこと。 (やっぱり、地球の重力は月の民のことが嫌いなのかな……)  あっという間に流れに呑まれ、流されていった。
「う……ん……」  体が重い。  故郷に居た頃とはちがう、全身のだるさのある目覚め。  ここは天国だろうか。  そんなことを思いながら、ゆっくりと目を開いていく。 「あ、目が覚めたのね」  ゆっくりと覚醒していく中で、女の人の声が耳に聞こえた。  視界に映るのは、ひとりのシロクマ獣人。  肩まである髪は白く、毛皮の色も白く鼻先だけが黒い。  円らな瞳は先ほどまで心配の色を浮かび上がらせていたが、少年の目ざめに明るくなっていく。  シロクマ獣人らしく、ふくよかな印象のある頬も、その表情も相まって可愛らしい印象を与えこそすれ、彼女の美しさを損なってはいない。  一方で体の方は豊満そのものだ。  大きな乳房に、大きなお腹に、大きなお尻。  服の上からでも分かるその豊満な肉体はしかし、見る人に母性を感じさせつつ、思わず感触を確かめたくなる魅力がある。 「女神様みたいだ……」  そんな彼女の姿に、少年は月に伝わるおとぎ話に出てくる、豊穣の女神を連想した。 「あら、まあ」  女神と言われた彼女は少し嬉しそうに笑う。  そこでようやく少年が、今自分がどこに居るのかを理解した。  広い部屋の中にある、大きなベッド。  溺れてしまった自分を、彼女が助けてくれたのだ。 「やあ、目を覚ましたみたいだね」  と、そこで部屋に入ってきたのは、白衣を着た鳥獣人の男性だ。 「ええ、思ったより、元気そうよ」 「君は心配性だからね」  ベッドの方に歩み寄り、眼鏡越しに少年の顔色を伺ってくる。 「うん、大丈夫そうだね。起きれるかい?」  鳥獣人に促されるように、少年が体を起こす。 「さて。君はどこから来たんだい?」 「えっと……」  咄嗟のことで用意していた答えが出ず、返答に詰まってしまう。  それを別の理由だと考えたのか、鳥獣人が目を細めた。 「もしかしたら、孤児なのかな」 「まあ」  シロクマ獣人の女性が、心配そうに見つめてくる。 「今じゃどこの孤児院も戦災孤児で溢れているからね。孤児院だからといって、食糧事情は決して良くない」 「実は、そうなんです」  ここは話を合わせておこう、と少年が肯定を示す。 「そうだったの……」  心配してくれる彼女には悪いが、もとより身分は隠すつもりだった。 「そうだ」  と、そこで彼女が両手を合わせた。 「じゃあ、うちで使用人として働かない?」  彼女の言葉に「ふむ」と鳥獣人が沈思する。 「それはいい。彼女はこう見えて、やり手の実業家だからね、生活に困ることはないだろう」 「あら、お医者さんほどではないわ」  そんなやりとりを聞きながら、少年は考える。  最初の目標は住む家と、仕事を見つけることだった。  まさに渡りに船とはこのことだ。 「よろしくお願いします」  そんな少年の返答にシロクマ獣人の彼女も嬉しそうに笑ったのだった。
 その日はあっという間に過ぎていった。  新しい服に腕を通し、屋敷の中を案内してもらい、仕事を教えてもらい、この近辺のことを教えてもらい。  気付いたら夜になっていた。  今はまた目覚めた時と同じベッドに座り、外を眺めている。  熱帯夜の暑さも、外から聞こえる虫の音も、全てが新鮮だ。 (今頃みんな、どうしているかな)  窓の外の月を見ながら、そんなことを考えていた、その時。  不意に人の気配がして、振り返った少年は。 「……なっ」  思わず声を出してしまっていた。  黒いネグリジェをつけたシロクマ獣人の彼女が、そこに立っていたのだ。  スケスケのその姿は、彼女の白い毛皮が良く見え、黒い生地とのコントラストが妙にエロティックに見える。  服の上からでも分かったそのふくよかな体もそのボディラインがはっきりと分かる。  少年が思わず女神を想起させたその豊穣の証のようなバストも、今ははっきりと見え。  少年はそこに視線が釘付けになるのを慌てて窓の外へと向け、彼女に背を向けた。 「ど、どうして……」  つい少年の口から漏れたのはそんな言葉。  そんな少年に彼女は何も言わず、後ろから抱き着いた。  柔らかな二つの膨らみが少年の後頭部に押し当てられ、少年はますますドキドキしてしまう。  そのまま少年を横に寝かせ、彼女も隣に寝そべる。  肉付きの良い両腕で彼を抱きしめると、少年の頭に彼女が顎をくっつけた。 「少しだけ、このままで居させて」  両の頬に感じる、柔らかい感触。  背中に感じる彼女のお腹の感触。  汗をかいているのか、じっとりと湿った感触。  抱きしめられて感じる、彼女の体温。  そして、彼女の匂い。  そのどれもが少年の鼓動を速くし、思考を鈍らせる。 「ずっと……さみしかったの」  その言葉に少年がはっとなった。  昼間、鳥獣人の医師が居た時に、夫は戦争で亡くなったと言っていた。  何でもない風に言っていたけれど、それはただ、そう見せていただけだったのだ。  それはきっと、耐えがたいくらいの孤独。  それを想い、少年はいつしか彼女の手に自身の手を重ねていた。  どれくらい時間が経ったのか。  不意に彼女の腕が緩むと、少年が寝そべったまま振り向く。  彼女は目に涙を浮かべつつも、その表情は笑顔に戻っていた。  そんな、健気な彼女に、少年が思わず口を開いていた。 「ボクで良ければ力になります、ボクに出来ることなら何でもしますから」  その言葉に感極まったのか、彼女がまた少年に抱き着く。  けれども、ぎゅっと抱き着いた瞬間、彼女の体がぴくりと震え、少しだけ離れる。  少年の手に乗せられた手が、おずおずと、少年のそこを触った。 「……あ、ご、ごめんなさい……」  彼女が触れたそこ――少年のおちんちんは固く主張してしまっていた。 「ふふ、見た目は可愛らしくっても、ここはちゃんと男の子なのね」  彼女が嬉しそうに笑うせいで、かえって気恥ずかしい。  たまらず身を起こしてベッドに座ると、彼女も起き上がり、そして少年の肩に手を乗せた。 「ねえ」  少年が思わず視線をあげる。彼女の声は、どこか熱っぽく、そして少年の心に絡み付くような感じがした。 「さっそく、力になってもらっても、いいかな?」  熱のこもっている、それでいて、とっても恥ずかしそうな、そんな声。  そんな声を、どこか不安げな目で見つめながら、言ってくるのだ。 「それとも、こんなおばさんとじゃ、イヤ?」  少年は即答で、首を横に振った。 「イヤじゃない、です。お……おねえさん、とってもキレイだし、女神様みたいだし、それに……」  と、そこで言葉を区切り、少年が恥ずかしそうに言う。 「おっぱいも、とっても……素敵だから……」  言ってしまってから、とても恥ずかしくなった少年とは対照的に、彼女は嬉しそうに微笑んだ。 「ふふ、ありがと」  そう言って少年の額に軽くキスをする。 「でも、初めてだから……」  少年の消え入りそうな声に、彼女がまた少年を抱きしめる。 「じゃあ、おねえさんがたっぷり教えてあげるね」  そう言って顔を下げ、少年の唇に自身の唇を重ねた。 「ん……んん、ん……」  彼女の唇の柔らかい感触。  彼女の舌が入ってくる、不思議な感触。初めての体験に、形容が難しい。  けれど舌と舌が絡んでいると、体がだんだん熱くなってくるようだ。  それは彼女も同じらしく、呼吸が徐々に速くなっていく。  唇と唇が離れ、少年が目を開けると、情熱的になった彼女と目が合った。  ネグリジェを脱ぐと、真っ白な彼女の毛皮が露わになり、月の灯りにそれはとても美しく見えた。  服を脱いで横になるよう言われ、少年がそれに従う。 「あ……っ」  彼女が少年の両脚の間に屈み込み、少年のおちんちんを口に含む。 「ちゅ……れろ、ちゅ、ちゅぱ……」  唾液を塗りつけるように舌を這わせ、先端から裏筋、竿へと舌を動かしていく。  そこの匂いが好きなのか、舐めつつ、鼻を擦り付けていて少しだけくすぐったい。  少年が鈴口のあたりが気持ちいいと分かると、そこを何度も舐め、刺激する。  柔らかな双丘で竿を挟み込み、先っちょを舐められると少年が思わず腰を動かしてしまった。 「まだ出しちゃだめよ?」  彼女が顔を上げると、今度は少年にまたがるように膝立ちになる。 「ねえ、ここ、触ってみて」  少年のお腹の上で膝立ちになると、彼の手を握り、彼女のそこ――女性の部分へと導く。 「わぁ……」  そこは熱く、そして柔らかい。  中に指を入れると、そこはぐっしょりと濡れていて、きゅうきゅうと締め付けてくる。  彼女に導かれるように指を動かすと、そこは収縮を繰り返し、とてもエッチだ。 「じゃあ、入れるね」  そう言って下半身の方へと移動し、片手をおちんちんに添える。  少年が小さく頷くと、彼女が腰を沈めた。 「んん……!」  少年のおちんちんが膣穴に入ると、思わず彼女が声を漏らした。  けれど少年は下半身の感覚に、夢中になっていた。  さっき指に感じた、圧迫感が、今度はおちんちんを襲っている。  彼女が腰を動かしはじめると、それはさらに強くなった。 「んっ、んっ、んんっ、んん……っ!」  ぬるぬるとした感触が、少年のおちんちんを擦りあげていく。  熱くて溶けてしまいそうなそこが、きゅうきゅうと締め付けてくる。  その気持ちよさを感じながら目を開けると、彼女も夢中になっていた。 「ああ……とっても、深くて……気持ち、いい……」  目をとろんとさせ、切なそうな表情で必死に腰を動かしている。 「おく……奥に、当たって……とっても、いいのぉ……」  深く腰が沈み込む度に、彼女が小さく震え、締め付けも強くなっていく。  激しく全身を上下させる彼女の、豊満な乳房が上下に跳ねる。  柔らかく、弾力のあるそれが激しく動く姿に、少年は思わず手を伸ばしていた。 「ああぁ……んんん……いい、いいのぉ……」  両手に感じる確かな重み。  手に力を込めた時の、指が沈み込むその柔らかさ。  そして掌に感じる、一部だけ硬いその感触。  少年は夢中になって、彼女の乳房を揉んでいた。 「はぁぁん、そう、もっと、もっとよぉ……」  気持ちよさに口をだらしなく開き、よだれも垂れそうなくらい、蕩けたその表情。 「おっぱいと、奥、きもちいいのぉ……」  きゅんきゅんと締め付ける肉の感触に、少年が腰を動かし彼女を突き上げていた。  やがて限界に近付いた少年が彼女の腰をぎゅっと掴む。 「はぁぁぁぁぁぁ……ッ!」  奥へ突きこむような体勢で、びゅるびゅると白濁液を放出させる。  子宮に流れ込むその熱い激流に、彼女が思わず放心してしまっていた。
 チュンチュンと、小鳥のさえずりが聞こえる。  体が重い。  徐々に覚醒していく意識の中、少年はそれを感じた。  寝返りを打った彼女の柔かな二つの膨らみ。  それらが少年の顔を押し潰していた。  すっかり抱き枕にされていた少年は、彼女の好きにされるに任せていた。  ここにはいない友人たちを想いながら、心の中で語りかける。  地球の重力も、悪くないよ。  地球での暮らしは、いいものになりそうだ。
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lusniquie · 4 years
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とある創生神話
昔々、雪鳥大陸を含む世界はひとつながりの巨大な大陸だったと説く《統一大陸伝記(テラ・インコグニタ)》。
それの第一章にはこう記されている。
はるか昔、この世界には球体の形をした『意志』が一つだけ存在した。 幾星霜という年月を経てその中に二つの意志がゆっくりと形成され始め、やがて力を合わせて球体の外へ飛び出すと、女性の姿形をした意志は《明けの母(アリギエナ)》と名乗り、男性の姿形をした意志は《暮れの父(アラステア)》と名乗った。
二柱が飛び出した反動で飛び散った破片を、《明けの母》がその掌(たなごころ)で払うとそれらは空となり、《暮れの父》がその掌で散りばめるとそれらは大地となった。 そして二柱が飛び出した穴からは意志の欠片が吹き出し、それらは多種多様な動植物となって神々が生み出した天地に根付いた。
しばらくは平和な時代が続いたが、やがて二柱の神々は世界の運営方針を巡って争うようになっていった。 そして自分たちとそっくりの姿形をした『器』に、『燃え盛る火のように熱い意志』、『流れる水のように清らかな意志』、『大地に息づく土のように頑なな意志』、『吹き渡る風のように奔放な意志』を吹き込み、代理闘士として争わせた。 彼らはやがて『人間』と呼ばれるようになっていった。
人間は最初の頃こそ二柱の命じるまま争い合っていたものの、それはいつまで経っても決着せず、やがて戦いの中で愛を育み、子を成し、繁栄していった。 その様子を見た神々は「もはや世界は自分たちのものではない」と悟り、世界を人間の手にゆだねることを決め、自分たちは二つの小さな星に姿を変えてこの星を見守ることにしたという。
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