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#ママ振り専門店きものやまなか
4komasusume · 2 years
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『まんがライフ』休刊に寄せて
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『まんがライフ』よ、お前も逝ってしまうのか……。
 すいーとポテトです。竹書房の4コマ誌『まんがライフ』が次号で休刊するとの報を知り(コミナタ、まんたんウェブ)、久しぶりに買いました。購読はだいぶ前に止めてしまっていたのですが、振り返ってみれば懐かしい作品やハマった作品がいくつもある雑誌でした。
 この記事では『まんがライフ』の歴史を簡単に紹介しつつ、ポテト自身が思い入れのある連載作品を語ってみようと思います。
   ◇
 神保町の古本屋・くだん書房さんの記事によれば、竹書房は1981年にギャグマンガ専門誌『ギャグダ』を創刊。これが1984年に『まんがライフ』(以下、単に「ライフ」)に改題されたとのことです。改題から数えて38年間の歴史があるマンガ雑誌ということですね。実はポテトも1984年生まれなので奇妙な親近感があります。
 ライフは竹書房の4コマ誌のひとつであり、姉妹誌もいくつかありました。しかしそれらは次に挙げるとおり、この10年の間に少しずつ休刊していきました。今回のライフ休刊の後に残る竹書房の4コマ誌は、増刊号や実話系を除けば『まんがライフオリジナル』(以下「ライオリ」)のみになります。
2014年10月:『まんがくらぶオリジナル』が休刊(コミナタ)
2018年11月:『まんがライフMOMO』が休刊(コミナタ、ススメWeb)
2020年3月:『まんがくらぶ』が休刊(コミナタ、ススメWeb)
2022年7月:『まんがライフ』が休刊(コミナタ)←イマココ
 ライフ連載のビッグタイトルと言えば『ぼのぼの』(いがらしみきお)や『新フリテンくん』(植田まさし)が挙げられるでしょうか。今後の連載が気になるところですが、発売中のライフ8月号に掲載の次号予告によれば「移籍連載情報は最終号をご覧ください」とのことです。ただ、ライオリの公式ページの次号予告には既に『ぼのぼの』新連載の旨が書かれているので、これはライオリに移籍して続くようです。(そのライオリの方は次号で3作品が最終回とのこと。移籍を受け入れるための影響のようにも見えます。)
 過去のブログを振り返ったところ、ポテトがライフを購読し始めたのは2004年末。その頃以降の看板作品は『耕して♥フォーリンLOVE』(後藤羽矢子)と『ポヨポヨ観察日記』(樹るう)、そして2005年からの連載が今も続いている『動物のおしゃべり♥』(神仙寺瑛)だったように思います。
 ポテトが読んでいた連載作品はいくつもありますが、特に思い入れの深いものは次の5作品です。
裸眼でGO!(吉田美紀子・2003年~2015年連載)
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裸眼でGO! (1) (バンブーコミックス 4コマセレクション)
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吉田美紀子(著), 竹書房 (2007-05-07)
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 OL・みずきはビン底メガネのド近眼。恋のチャンスのために職場や外ではメガネなしで過ごしたい(しかも自覚はないが実際に美人だ)けど、ほとんど何も見えないがゆえに失敗ばかり。ケガやトラブルは日常茶飯事な日々と、メガネの有無による周囲の態度の露骨な変化を、ユーモアたっぷりに描いていて好きでした。連載は10年以上続いた作品でしたが、単行本は1巻のみというのが惜しまれます。
 この記事を書くために検索したらKindleで出ていたことを知り、あまりの懐かしさに速攻で買いましたよ。この作品を含め、この記事でピックアップした作品は全てKindleで出ています。過去作品を積極的に電子化しているところは竹書房ナイスと言うほかありません。
ウチへ行こうよ!(小笠原朋子・2007年~2008年連載)
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ウチヘ行こうよ! (バンブーコミックス 4コマセレクション)
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小笠原朋子(著), 竹書房 (2009-04-16)
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 可愛い彼女ができた明彦くん。彼女のお家にお呼ばれしたら、出迎えてくれたママは彼女よりも可愛くて!? ママに心奪われてることを彼女に隠しつつ、二人の間で優柔不断に揺れ動き、そしてちょくちょく登場する彼女パパに緊張する明彦くんが可笑しきラブコメでした。最後はハッピーエンドで本当によかった。2008年頃のポテトは、雑誌や著者は異なれど、この作品を含めて「若ママ三本柱」4コマ(もう二本は『はっぴぃママレード。』と『オレとメイドと時々オカン』)にハマっていたようです。
 小笠原朋子さん、今どこで何をされているんでしょう。2017年末の『4コマCOMICはぐ!』(ススメWebでの紹介記事)を最後に音沙汰がないようで寂しいです。
キャバはじめました(忍田鳩子・2010年~2020年連載)
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キャバはじめました (1) (バンブーコミックス 4コマセレクション)
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忍田鳩子(著), 竹書房 (2012-05-26)
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 失踪した兄が残した借金を返済するため、夜は新宿のキャバクラで働くことになったOL・ひとみ。設定はシビアながらも、昼のひとみの真面目な性格が夜の仕事にも生かされるお話立てや彼女の境遇に同情的な客や店員の存在が良心的・互助的な温かみを生み出しており、ファミリー4コマ誌に確かにマッチしていた作品でした。この作品も『裸眼でGO!』と境遇が似ており、連載は10年間続きましたが単行本は1巻のみ。単行本にならなかった回を雑誌からせっせとスクラップしたことを覚えています。
田中さんちの白米ちゃん(池尻エリクソン・2009年~2013年連載)
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田中さんちの白米ちゃん (1) (バンブーコミックス 4コマセレクション)
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池尻エリクソン(著), 竹書房 (2011-06-07)
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田中さんちの白米ちゃん (2) (バンブーコミックス 4コマセレクション)
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池尻エリクソン(著), 竹書房 (2012-09-27)
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 料理好きのサラリーマン・田中さんに買われたあきたこまちの「白米ちゃん」とその友だちの「みそ汁ちゃん」を中心とした食卓擬人化マンガ。2009年頃の竹書房はウェブコミックサイト「livedoor デイリー4コマ」と連携した新人企画「Y-1グランプリ」を行っており、この作品もそこからデビューした作品のひとつでした。単行本1巻の感想を読み返すと「元の食材が一目で分かるシンプルな外見で対象の食材を描き、その言動には食材の特性を見事に反映させている」「個々の食材の描写のみにとどまらず、その組み合わせによるコメディにまで及んでいる」点にグッと来たようです。
 この作品を含め、ポテトの青春は擬人化4コマにあったことを思い出して懐かしくなりました。連載誌や著者は異なりますが『ちょこっとヒメ』や『アンティック』も好きでしたよ。
ファーストクラスニートましろ(えきあ・2016年~2018年連載)
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ファーストクラスニートましろ(1) (バンブーコミックス 4コマセレクション)
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えきあ(著), 竹書房 (2018-05-26)
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ファーストクラスニートましろ(2) (バンブーコミックス 4コマセレクション)
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えきあ(著), 竹書房 (2019-01-26)
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大ゴマで見せるパワフルなギャグ4コマ――えきあ『ファーストクラスニートましろ』 | 4コママンガのススメWeb
 いつも布団に包まっているグータラお嬢様・ましろと、彼女の世話をするメイドさん&男子のドタバタ劇。ワイド4コマの新規作品が目立ちつつあった2016年以降のライフにおいて、��ゴマによる力強いギャグが印象的な作品でした。この作品も発想は擬人化的(ロールケーキ、フォーク、コーヒー)なんですよね。元々は同人誌の『ふわふわニートケーキ』として出会っていた作品が商業化されたという経緯もあいまって、思い入れは5作品の中で一番強い作品です。
 えきあさんは現在、双葉社『まんがタウン』にて「食欲しか勝たん!」を連載中。迷い道の先にあった今がどうか幸多からんことを。
   ◇
 竹書房4コマ誌が全5誌あった時代を知っている身としては、今回のライフ休刊によってついに残り1誌になってしまうことに寂しさを覚えます。芳文社、双葉社ともども、ファミリー4コマ誌にとっては辛い時代が続きます。
 それでも、雑誌が送り出してきた魅力的な作品の数々は読者の心に残ると思うのです。少なくとも、いま、ここに、いくつも。『まんがライフ』は確かな面白さを残した4コマ誌のひとつでした。休刊してもそのことは覚えておきたい、書き残しておきたい。そう思うのでありました。
(すいーとポテト)
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deisticpaper · 1 year
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蜃気楼の境界 編(五六七)
蜃気楼の境界 編(一二三四)から
「渦とチェリー新聞」寄稿小説
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蜃気楼の境界 編(五)
界縫
 正嘉元年紅葉舞い、青い炎地割れから立ち昇る。音大きく山崩れ水湧き出し、神社仏閣ことごとく倒壊す。鎌倉は中下馬橋の燃える家屋と黒い煙かき分けて家族の手を引きなんとか生き延びた六角義綱という男、後日殺生も構わぬ暮露と成り果て武士を襲えば刀を得、民を襲えば銭を得て、やがて辿り着いた河川で暮露同士語らうわけでもなく集まり暮らす。或る夜、幾度目のことか絶食にふらつき目を血走らせ六角義綱、血に汚れた刀片手に道行く一人の者を殺めようとするが、嗚咽を漏らし立ち竦みそのまま胸からあの日の紅葉のごとき血を流し膝から崩れ落ちる。道行くその者、男に扮した歩き巫女だが手には妖しげな小刀、その去る様を地べたから見届けんとした六角義綱のすぐ背後、甚目寺南大門に後ろを向けて立つ闇霙(あんえい)と名乗る男あり。みぞれ降りだして、人とも呼び難いなりの六角義綱を一瞥し、闇霙、口開かず問いかける、そなたの闇は斯様な俗識さえ飼えぬのか。六角義綱、正嘉地震から甚目寺までの道中で妻を殺され、涙つたい、儂には女は切れん、と息絶える。その一通りを見ていた青年、六角源内、父を殺した女を浅井千代能と突き止めて敵討ちを企てるが、知られていたか検非違使に捕らえられ夷島に流され、以後誰とも交流を持たずに僻地の小屋で巻物を記したという。それから七五九年の時が経ち、二〇一六年、仟燕色馨を内に潜める二重人格の高校生市川忍とその同級生渡邉咲が、慧探偵事務所を相手に朔密教門前また内部にて些細な一悶着あった、その同日晩、奇妙な殺人事件が起こる。場所は百人町四丁目の平素な住宅区域、被害者女性、五藤珊瑚(三〇)の遺言は、残酷な苦を前に千年二千年なんて。戸塚警察署に直ちに捜査本部が設置され、その捜査とは別に警部補の高橋定蔵、市川忍の前に立つ。何故おれなんかに事情徴収を、と忍。事件当日、校門の監視カメラに映っていたきみが何か普段と違うものを見てなかったかと思ってね、若き警部補が爽やかに答え、それで市川忍、脳裏の人格に声を送る、一顛末あった日だ厄介だね。対し仟燕色馨、おそらくこの警部補、謎多き朔密教を疑っている、ならばこの事件あの探偵にも捜査の手が伸びる、ところで気づいているか探偵事務所の探偵に見張られている。
 小料理屋点々とある裏通りの角に螺旋階段へ繋がるアーチ状の古い門を持つ築古スナックビルの入り口で刈り上げマッシュショートにゆるめパーマの少年のような青年がただ立っていると突然背後から強面の男がどこに突っ立っとんじゃと怒鳴ってきたので青年は冴え冴えとした眼差しで振り返り、幻を見てたんじゃないですか、俺はずっとこの位置でスマホを見てました、俺の輪郭と色、背後の風景と俺のいる光景をもっと目に焼きつけてください。男は動転し不愉快な目の前にいる青年を忘れないようじっと食い入って見る。だが、その光景はすでに幻で、スマホを見ていた青年はもういない。走り去っていたのだ。朝のホームルーム直前にその青年、六角凍夏(むすみとうか)が現れ席につく。振り返り、後ろの席の渡邉咲に聞く、きみ、部活入ってるの。隣席美術部員中河原津久見が聞き耳を立てている。渡邉咲は初めて話しかけてきた六角凍夏が先々で勧誘しているのを知っていて、文芸部でしょ、と冷えた目を送ると、文化琳三部だよ、と。咲が琳三って何という顔で惑うと、清山琳三ね、俺らの界隈で知らぬ者はいないよ、とくるが、咲はどこの界隈の話なのと内心いよいよ戸惑う。だが、聞き耳を立てていた中河原津久見はピクシブなどで目にする虚無僧キャラねと気づくが話に加わらない。きみ、机の上の本、和楽器好きでしょ、清山琳三は気鋭の尺八奏者。私、渡邉咲、と口にしながら、尺八ね。放課後、六角凍夏は一人、文芸部部室の小さな教室に入って電気をつけるとドアを閉め、密室と成る。中央辺りの机に、鞄から取り出した古びた筒を置く。目を閉じる。刹那、周囲にぼろぼろの布団が幾枚とどさっと落ちてき動きだす。それは天明四年鳥山石燕刊行妖怪画集「百器徒然袋」に見られる暮露暮露団(ぼろぼろとん)だが現実に現れたわけではなく、六角凍夏の想像力は小さな空間で全能となり百器徒然袋の界隈と接続し、今回ならばそこに記された妖怪があたかも姿を見せたかのような気分になったのだ。密室に、江戸の布団の香りが充満する。ときに、異界からの香りが漂ってくることもある。翌、静かな夜、百人町四丁目にて更なる殺人事件が起こる。被害者は志那成斗美(四〇)遺言は、潔く煮ろうか。魔の香りも、又、此処に。
蜃気楼の境界 編(六)
五鬼
 出入りする者らの残り香も錯綜の果てに幻影さえ浮かべる夜の街。串揚げ並ぶコの字カウンター中程で束感ショートの若い警部補が驚きのあと声を潜め通話を切ると手話で勘定を頼み、さっぱりとした面立ちの探偵仲本慧に目をやり、五鬼事件だがまだ続いていたと輝きの瞳隠せないながらも声を落とし去っていく。百人町四丁目連続殺人事件の犯人佐々木幻弐が第二被害者志那成斗美の最期の正当防衛で刺され意識不明のまま病院で死亡したという話、監視カメラから犯行も明確、第一被害者五藤珊瑚への犯行とも繋がり既に報道もされた直後の第三事件発覚。カウンターに残された探偵仲本慧、ビールを追加し面白い事件だが依頼がきてないから何もできないね、と奥に座る長髪黒はオールバックの男に突然話しかける。その男、串揚げを齧りながらチラと目線を合わせる。慧、ビールを飲み干し、隣に座っていいかなと距離を詰め、そっと名刺を置き、歓楽街案内人の市川敬済だね仕事柄我々は抜け目ない、聞き耳を立ててたね、という。黙す市川敬済に、優秀な探偵の知り合いは二人と必要ないかなと強い声で独り言のように笑みを送る。店内、音楽なく、静かに食す客、座敷からの賑わい。この辺りで、青島ビールが飲める良いバーを探してる客がいたなそういえば、と市川敬済、懐から名刺を取りだし横に並べる。直後、和柄のマフラーをしたギャル僡逢里が現れた為、仲本慧、名刺を拾い、勘定を済まし去っていく。お知り合いさんなの、と尋ねつつ座る僡逢里に、池袋の二青龍で今は探偵の男だ知ってるか、と尋ね返す。誰よ、テリトリー渋谷だったし、今日はいないの。暗に警部補のことを口にする。僡逢里の耳元で、まだ続いてるらしい千代女のママ心配だな。食事の注文をしながら僡逢里、出勤前に縛られたい、と呟く。夜十一時、一人になった市川敬済の前を男女が横切る。片方の男が枯淡の趣ある着物姿でありながら凍風をただ浴びるがごとく静かであったため変に気にかかるが、気にするのをやめて電話をかける。あら敬済さん、と通話先、青藍に杉の木が描かれた着物の女、さっきまで警部補さんがいらしてたのよ、お店は営業してません、今朝三人目の不幸がありまして五鬼も残すところ二人なの。語るは浅井千代女である。
 遥か彼方より朗々と木曽節が諏訪太鼓と絡まり聞��える、それは五年前の、冬の宵、一人の女、吉祥寺の麻雀ラウンジ千代女の開店準備中、六人の女達を前に、肩に雪積もり震えている。浅井千代女が側に近づき、貴女の血に刻まれし鬼の禍、憎しと思うなら、受け継がれし技術でお金に変えて楽園を造るのよ、弐宮苺(にきゅういちご)の源氏名を授けるわ、そちらの西クロシヤ(五〇)引退で貴女の席があるの。語りかけてきた浅井千代女を取り囲む五人の女達、五鬼を見る。はい、と涙流し、生まれて初めての愉しい月日流れ、今、浅井千代女の周りに残る五鬼はその弐宮苺(三〇)と柵虹那奈(さくにじなな、四〇)だけだ。今朝殺害された��矢弥衣潞(しややいろ、五〇)の遺言は、一路ゆくは三人迄。殺害現場で弐宮苺は両拳固く握りしめて言う。千代女さまを死なせはいたしません、次はこの私が千代女さまの匂いを身につけ犯人を誘いだし返り討ちにしてやります、これまで通り千代女さまは、五鬼にはできない私達鬼の禍の力を強める祈祷にどうか専念してください。浅井千代女の頬に涙が伝う。紫矢弥衣潞の形見の側に六歳の娘が一人。この災い突如訪れ、犯人の心当たりなく、志那成斗美が相打ちにし病院で死亡したという佐々木幻弐が何者なのかも分からない。不気味であったが浅井千代女は思う、そもそも私達がこの現世において得体知られて���ない存在なの、それに。相手は私達より強い、と震える。市川敬済に連絡を入れる。丑三つ時に市川敬済が女と帰宅、玄関騒がしく、津軽塗の黒地に白い桜が控えめに描かれた高さ一尺程のテーブルに女が横たわる音がする。自室でスマホを触っていた高校一年生の市川忍、悠里と帰ってきたのかあの女嫌いだな、と不機嫌になる。脳裏から仟燕色馨の声、きみの父だが今着信があり通話している。女といるのに別の女と喋ってるのそりゃあ母も出ていくよ。連続殺人の件だ探偵仲本慧の名前も出ている。いつも大人達は都合で何か企んでいて不快だよ。翌日、暑し。ホームルームの前に近寄ってきた同級生渡邉咲が、低血圧以外の何物でもないローテンションでいつもより元気な声で市川忍に話しかける。事件は解決してなかったのよ、貴方のお知り合いの探偵、仟燕色馨の出番じゃない?
蜃気楼の境界 編(七)
境迷
 昼か、はた、ゆめの夜半にか、北原白秋「邪宗門」の一節に紛れ込んでいた六角凍夏は国語教師茨城潔に当てられて、地獄変の屏風の由来を申し上げましたから、芥川龍之介「邪宗門」冒頭付近をちらと見、朗読し始めるが、正義なく勝つ者の、勝利を無意味にする方法は、いまはただ一つ、直ちに教師が、むすみその「邪宗門」は高橋和巳だ、遮ってクラス騒然となる。六角、先生、界をまたぐは文学の真髄ですと逸らす。教室の窓から体育館でのバスケの授業を眺めていた市川忍に、脳裏から仟燕色馨の声、百人町四丁目連続殺人事件、慧探偵事務所の手にかかれば一日で解決する探偵はあの少女が呟く数字で結論を読みとるからだ朔密教での一件はそういう話だっただろう。それじゃあカジョウシキカ勝ち目が。否あの少女がいかなる原理で数字を読むか今わかった。その時、教室の背後から長い竹がぐんと伸び先端に括られた裂け目が口のごとき大きな提灯、生徒らの頭上でゆらゆら揺れる。「百器徒然袋」にある不落不落(ぶらぶら)を空想した六角凍夏の机の中に古びた筒。不落不落を唯一感じとった仟燕色馨、市川忍の瞳を借り生徒らを見回す。何者だ。その脳裏の声へ、何故だろう急に寒気がする。界か少女は先の「邪宗門」のごとく数多の界から特定している市川忍クンきみはこの連続殺人事件どう思う。昨夜の父の通話を聞くに麻雀ラウンジ千代女のスタッフが四度狙われるから張り込めばだけど犯人佐々木幻弐死んでも事件は続いたし組織か警察もそう考えるだろうから現場に近づけるかどうか。吊り下がる口のごとく裂けた提灯に教師も生徒も誰も気づかず授業続く。休み時間スマホで調べた麻雀ラウンジに通話。まだ朝だ、出ないよ、休業中だった筈だし。仟燕色馨は通話先を黙し耳に入れ続ける。浅井千代女らは、魔かそれに接する例えば鬼か、ならば逞しき彼女らが手を焼く犯人も、人ではないと推理できよう恐らく一人の犯行による。驚き市川忍、犯人が死んだというのに犯行は一人だって。きみは我が師仟燕白霞のサロンで幼少時千代女と会っていたことを忘れたか父と古く親しい女性は皆その筋だろう。側に、一人の同級生が近づいていたことに突然気づき、晴れてゆく霞、市川忍は動揺する。渡邉咲が、不思議そうに見ている。
 柵虹那奈、と雀牌散らばりし休業続く麻雀ラウンジで浅井千代女が呼びかける。はい千代女さま。志那成斗美あの人の槍槓はいつだって可憐で美しかったわ、五藤珊瑚あの子の国士ができそうな配牌から清一色に染める気概にはいつも胸を打たれていたわ、紫矢弥衣潞あの方の徹底して振り込まない鬼の打ち筋には幾度も助けられたわ、三人とも亡くしてしまった、弐宮苺は私達を守ると意気込んでいるけどあの子を死なせたくないの。ラウンジを出て一人、浅井千代女は市川敬済から聞いた池袋北口の慧探偵事務所へ出向く。雑居ビル、銀行かと見紛うばかりの清潔な窓口が四つあり小柄の女性職員田中真凪にチェックシート渡され番号札を機械から取り座る。呼ばれると先の職員の姉、同じく小柄な三番窓口女性職員田中凪月が青森訛りで対応するがシート見てすぐ内線で通話し真凪を呼び千代女を奥へ案内させる。無人の応接間は中国人趣味濃厚で六堡茶を口にしながら十分程待つと仲本慧現れ、異様な話は耳にしている我が慧探偵事務所に未解決なしさ安心して、笑顔に厭らしさはない、依頼費は高くつくけどね。千代女は私達に似てるわと思う、職員は皆日本人名だが大陸の血を感じる、理由あってここに集い共同体と成っている、市川敬済とは昔SMサロン燕(えん)で業深き運営者は仟燕白霞に紹介された、世俗の裏側で通信し合うルートで辿り着いた此処は信用できる。受け応えを記録する仲本慧に着信が入り中国語で喋りだす。六堡茶を喉へ。探偵職員二名曰く、監視対象の市川忍が早退し校門前で謎の探偵仟燕色馨と通話していたという。仟燕色馨が仲本慧に仕掛けた誤情報だが、千代女を上海汽車メーカーの黒い車に乗せ吉祥寺の麻雀ラウンジへ。市川敬済はその謎の探偵にも件の連続殺人事件を探らせているのかなぜ子の市川忍が連絡を、空は雲一つない、SMサロン燕は五年前の二〇一一年に閉鎖し今は仟燕家のみその調査は容易ではないが必要かすぐ崔凪邸へ行くべきか。麻雀ラウンジのドア、鍵開き、僅かな灯火の雀卓で盲牌していた柵虹那奈、差し込む外光より、冷気識る。現れるは、病室で死に顔さえも確認した、佐々木幻弐である。上海汽車メーカーの黒い車は崔凪邸に着く。少女崔凪は、使用人二人と土笛づくりをして遊んでいる。
by _underline
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「渦とチェリー」チャンネル
【音版 渦とチェリー新聞】第27号 へ続く
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仟燕色馨シリーズ 全人物名リスト
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japanpromos · 1 year
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insyohair · 3 years
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nekosodate · 2 years
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本日もありがとうございました☺️ 明日も18時まで営業します。 昨日のインスタライブ、余裕がなく実施できず申し訳ありません🥲 振替の日程につきましてはまた改めてご案内します。 ★本日の #猫に優しいお客様 中にヒト入ってます?と聞きたくなるほど気遣い上手な猫様がたには、お知恵を拝借したいと思うこともしばしば。 クロ様の知性溢れる眼差しにノックアウトされちゃいます❤️ @value_of_life010217 様より 猫ヨガ繋がりで、古民家での美香先生 @ikesakomika のヨーガに来てくださった可愛いことらちゃんのママ @mery__63 さんから、西荻窪にあるネコソダテさんのカレンダーに載りました!とお聞きしていたのですが、昨日あてもなくふらふら歩いていて、お店を発見‼️ 以前猫ちゃんの番組でも拝見したことがありましたが、初めて入店させていただきました😊 なんという首輪の種類の多さ❗️ 普段首輪しないのですが、たまに着けます。 クロちゃんに、赤いコレをプレゼント🤣 「ヒトです。」 「ヒト」というより、たまに「ヒロシです。」的なアンニュイさを醸し出すクロちゃんです😅 全く嫌がらずに着けてくれました😆 首輪が苦手な猫ちゃんにも着けやすい、布の首輪や猫グッズがたくさんありました! サーモン味の歯磨きスナックも購入しました🐟 店内の写真撮影と掲載も許可いただいてまーす^_^ ご家族にジョークの一本、いかがでしょうか?😆 #ネコソダテ #猫の首輪 #ヒトです #ヒロシです #黒猫 #ネコソダテ着画 (ネコソダテ 日本で唯一のまじめな首輪専門店) https://www.instagram.com/p/CcsqbHEtSoz/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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eccjrtamuracho · 14 years
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福岡旅散文。
前回の記事でも書いたのですが、先日福岡を訪ねてきました。 ま、散々ツイッターでもつぶやいていたので、ご覧になって頂いた方もいらっしゃるかも。 ほんっとうに、良かっ��です、行って。 久々に学生時代に戻った気分になったり、あるいは複雑な思いになったり。 いや~、なんか、期待以上でした。 というわけで、今回はその話を少し書き連ねてみます。 ****************** 窓から下を覗くと、眼下に海の中道が見えた。 その瞬間、10年前の記憶の扉が開かれる。 扉の奥からあふれ出る光は、私を追憶の更に向こうに連れて行くことになる。 空港に降り立って感じた空気感、10年前もこうだったのかな。 そう思いながら空港の外に出ると、いかにも博多を思わせる看板が目に入る。 西鉄バスが何台も走る。そう、これこれ! 私はこみ上げる笑いをこらえる事ができなかった。 夜は学生時代の友人と会う約束があった。 昼過ぎに博多に到着した私は、それまでにホテルのチェックインを済ませ、かつての思い出の場所を訪ねてみることにした。 長い時間を過ごした大学構内にも、何食わぬ顔で入ってみる。 専門課程を学んだ校舎は何も変わっていなかった。 学生たちがたむろする食堂前や図書館前の風景も、あの頃と同じだ。 しかし、敷地から一歩外へ出れば、街は全く違う様相をしていた。 新たにできた道路が、人や車の動線をすっかり変えてしまったらしい。 それでもかつての細い道を通るバス路線が、かろうじて残っていた。 私はバスに乗って、教養課程を学んだ校舎へと向かう事にした。 その夜の約束は教養時代にお世話になった飲み屋さんで、だったからだ。 二本あったバス路線のうち、一本は途中からのルートが変わっていた。 残った方の路線バスに乗り込む。 当時、私がこのバスに乗る直前に急な雨に降られ、びしょぬれになってしまったとき、バスの運転手さんが、なんと持っていた傘をくれたことがある。 懐かしい思い出だ。 バスで走ると、街の表情が良く分かる。 10年の間に変わってしまったこと、変わっていないこと、そんな風景を楽しむ。 福岡は九州の基幹都市だ。 バスから人の往来を覗いていると、家路につく人、まだまだ働く人、遊びに向かう人、様々な顔を見る事ができた。 やがて、昔よく使っていたバス停を降りる。 教養時代を過ごした校舎は、門が閉じられ、ひっそりとたたずんでいた。 大学自体が移転を進めており、こちらは既に使われなくなってしまっているのだ。 日が落ち、ぼんやりと外灯に照らされた校舎は物悲しく、多くの人たちの記憶の中だけに残るものとなっていくのだろう。 学生時代によく行っていたもつ鍋の名店の一つも消えていた。 街から学生が消えると、そこに刻まれた歴史もまた消えていく。 約束の時間、約束の場所に向かうと、そこには見慣れた顔が並んでいた。 10年の月日は皆に様々な変化を与えている。 それでも、話をすればそこに時の流れは殆ど感じない。 あたかも、あの頃と全く同じかのように、楽しい時が流れていくのだ。 それは、とても不思議な感覚だった。 初めて親元を離れて暮らした場所、一緒に過ごした人たち。 社会人でもない、かといって子どもとも言えない、未熟だけれども柔軟で、激しく突っ走っていた頃に共に過ごした人たちは、ある種特別な仲間かもしれない。 しかし、10年という時間は各々の人生に全く別の経験を与え、人はそれを糧に成長する。 あの頃と変わらない自分が、変わらない仲間との時間を楽しんでいるのと同時に、そこから少し立ち位置の違う別の自分が別の眼鏡をかけて当時をしのんでいた。 学生時代、私は大きな人生の分岐点をいくつも通過していた。 当時はその事の重大さは分かっていなかったし、分岐点とすら気付かず意思の赴くままに進んだ道。 しかし、10年の経験を積んだ自分がそこを振り返ったとき、今更ながら、あの選択が違っていれば、ひょっとすると今は…と考えてしまうのだ。 それは、後悔に似た感情だが、少し違う。 あの後、私は多くの人と出会い、多くの事を学んだから。 そして今の自分のスタイルが嫌いではないし、仕事にもやりがいを感じているから。 でも、、、 10年経って振り返って初めて分かる、あの時、自分で手を離してしまったものの大きさ。 戻る事もできず、新たに掴みに行く事もできないものが確実にある。 全く違う方向に向いて歩いて行くしかない事を、頭では嫌と言うほど理解できるけれど、それでもなお、この傍観席から立ち上がる事が出来ずに涙する自分がいる。 …これは、やはり後悔なのかな。 だとしたら、私はこの後悔をいつか笑って「いい経験だった」と言えるように成長するしかないのだろうな。 少し、時間がかかりそうだ。 二日目の晩も、三日目の晩も、また別の懐かしい面々と会う事が出来た。 随分長い間音沙汰もなかったのに、こうしてまた再会出来るというのは、とても幸せな事だと思う。 忙しい中、わざわざ時間を取ってくれたり、遠方からも足を運んでくれた友人たち。 私にはこんなに素敵な仲間がいた事すら、扉の向こうの記憶にしてしまっていたかもしれない。 みんな、本当にありがとう。 殆ど思いつきというか、勢いのような感じで決まった今回の福岡訪問。 しかし、実はここ数カ月、当時の仲間からの連絡がちょくちょくあったのだ。 何か、あの場所に呼ばれているのかもしれないという予感があった。 そして今、学生時代を過ごした街は、私を常にTurning pointへ導く場所かもしれないと感じる。 本当に来て良かった。 必ずまた来る。 多分、必要な時にまた街が呼んでくれる気がする。 その時は、懲りずにまたみんなと馬鹿な話が出来ればいいな。 皆さま、今後ともよろしくお願いしまーす。 福岡で新たな思い出ができた。 左手に掴む傘は、古い思い出も新しい思い出もよみがえらせてくれるものとなった。 雨の日は、ますます楽しく、多少ほろ��い日になりそうだ。 ****************** いや~、書くという作業は良いです。 すごく考える。 ちょっと苦しいけど、思考や想いも整頓される。 まぁでも、整頓されたとはいえ、読み返せばぐちゃぐちゃですなー。 最後まで読んで頂いた方、ほんま、勝手に付き合わせた感じですみません。 ま、たまには、こう、いろんな事を書き散らしたかったりするんです。 さ、週末には一大イベントのハロウィンパーティーも控えてます。 へへへ、次の記事は間違いなくこれだな。 楽しいものにしますので、こうご期待。 …あー、自分でハードルあげてる!!
私は今の仕事を始めて13年目ですが、ついこの間まで揺れていました。 自分の居場所は、ホントにここでいいのか?違うところにあるのではないか? で、いろんなところにくびを突っ込みました(笑)。 で、その結果、やっぱり私にはこれしかない、と確信。この歳になってやっとここが自分の居場所なのだ、と落ち着いた感じです。 いいんです、じたばたしたって。 自分の思うがままに行けばいいんす♪ Posted by くもこ at 2010年10月28日 09:32
この地球上に、私という人間は一人しかいない。人の一生なんてアツというまに終わってしまいます。10年なんてほんとに短いですよ。また年を重ねるごとに、年月の早さを感じます。長いと思うのは、借金を返しているときぐらいですよね。特にこの日本では女性と男性はぜんぜん違う生き物ですから、自分と同じ息を吸って生きていける人なんて、なかなか・・・でも年とともに、人生は面白いと感じていますよ。後ろを振り返ると、やっぱり自分が選んだ最高の道なんだろうなあ~~と、反省したり、自分が自分を褒めてあげたり、発破をかけたり、今では生きているだけですごいと思っていますが・・・ Posted by kumiko at 2010年10月28日 16:00
先生のブログを読んで、私も北海道での学生時代を思い出しました。学生の頃はまさか自分が香川に住む事になるとはこれっぽっちも思っていなかったです。人生、何が起こるかわからないですね~。 ”ああ 負けないで 泣かないで 消えてしまいそうな時は 自分の声を信じ歩けばいいの いつの時代も悲しみを避けては通れないけれど 笑顔を見せて 今を生きていこう 今を生きていこう” ↑アンジェラアキの「手紙」です 先生応援してますよ!
Posted by あやママ at 2010年10月29日 21:26
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xx86 · 6 years
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ディオールと龍
人生で初めてイヤリングを買った。とりあえずコートの色と合わせれば間違いないだろうと、グレーのものを買った。あと使い勝手がよさそうな金色のものと。
母も妹も金属アレルギーなので、わたしもそうだと勝手に思ってずっとイヤリングは避けてきた。し、アクセサリーっていうやつは集め始めるとキリがないから、ずっと躊躇っていた。
けど、やっぱアクセサリーはいい。キラキラ光るものがすきだ、あと真鍮みたいなもの。
あんた化粧してるの、と問い詰められひどいなあと鏡をみたらすっぴんみたいな顔色の自分がうつっていた。これはだめだな、運をつかめる女の顔じゃない。明日から、もっとちゃんとメイクしようと決めた。
女くさい自分は好き。髪の毛をぐるんぐるんに巻いて、アイラインをきっちり引いて、真っ赤なリップを塗って、甘い香水を全身に振りかけて、黒のパンストを履いて、ヒールをカツカツいわせて。でも女くさい自分でいるのは疲れる。巻きが取れてないか、目の下にアイラインが落ちてないか、リップがハゲてないか確認しながら、ヒールでクタクタになった足を代わりばんこに休めなければいけない。労力がいる。
金沢から会いに来てくれたのは専門学校時代の友人で、相変わらず超色白のギャルだった。名簿番号順で、彼女はわたしの1つ後ろだった。
学生時代、わたしが説明会やら面接の前やらにリクルートスーツを着て授業を受けてると、髪の毛ボサボサすぎ!と彼女が自前のクシとケープを取り出して、後ろの席から綺麗にわたしの髪を結い直してくれていた。
その話を2人で同時に話しはじめて笑ってしまった。
彼女は占いが好きで、様々な占い師に占ってきてもらっている。わたしも学生時代彼女と一度占いに行った事がある。
今回わたし達が行ったのは、生年月日からオリジナルの天然石のブレスレットを作ってくれるお店だ。水色のクラック水晶やらローズクォーツやらでできてる、もろわたし好みの彼女のブレスレットとは違って、わたしのブレスレットは赤と紺と水晶で出来ており、おまけに龍の絵が描かれた石も入っていて、かなりいかつい。
あんたは恋愛運ないね、男運も最悪。外面ばっかで性格も悪い、人の言う事聞かないでしょう?今だって頷きながらそんなにひどくないのにって思ってるでしょ、とママに言い当てられ、笑ってしまった。
強欲強欲と何度も連呼されながら、当たり前じゃん。欲しいものはどうやったって欲しい女よ。と思っていた。買わなかった香水を、今猛烈に後悔している。
ディオールをプレゼントしてみたかったと、彼女から透明のグロスをもらった。唇はピリピリするけどびっくりするぐらいふわふわになる。ステキ。
あと2年後結婚できるけど全く上手くいかないよと言われ、じゃあ結婚しないですと言ったら、みんなここではそう言うの、そう言って結婚して離婚してここへ戻ってくるのよと肩をすくめられた。
でも分かんないよね、わたしだけ特別かもしれないもんね。多分こういうところがダメなんだろうな。
今更、酔っ払いながら彼に吐いた、もっと謙虚になった方がいいと言う言葉がわたしの胸をグッと刺してきた。
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creyon-mino · 4 years
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-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ 「企業情報とくしま」で紹介されました -+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ とくしま産業振興機構さんから毎月発行されている「企業情報とくしま」8月号でクレヨンが紹介されました。カフェ&カルチャーとしてスタートしたクレヨンでは、カフェだけでなく、小学生対象のこどもくらぶの開催や、カフェスペースをつかったイベント企画の実施など展開してきました。 コロナ禍のいまは、活動が縮小していますが、開店当初からこだわってきた栄養バランスや地域素材を意識したランチやデザートをそのままに「テイクアウト&デリバリー」でクレヨンの味をお届けしています。
クレヨンを立ち上げたきっかけ「にし阿波で子どもたちの未来を育てていける環境をつくりたい」というオーナーの思いもつづられています♪ぜひご覧ください✨ https://www.our-think.or.jp/member/?cat=5&y=2020 とくしま産業振興機構では、創業支援・産官学連携などを支援しています。専門家による起業・経営相談もありますよ♪ 
* … * … * … * …* … * … 予約制テイクアウト&デリバリー 前日までにご注文お願い致します。 * … * …* … * … * … * … 
クレヨンは引き続きテイクアウト&デリバリーでご利用いただけます イベント・会議のお弁当として、ママ会や特別な日のお持ち帰りスイーツとしてご活用ください。
https://www.instagram.com/p/CF_R9Fwhvc7/?igshid=99f8kv09eq51
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38nakao · 4 years
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目はふたつ、頭はひとつ、そんで窮屈。
2020.05.30(土)晴れ
 昨日の夜、突然キャッチボールに誘われた。雨女のわたしは行けたら行きますと答えるしかなかった。朝、眠りから覚めてうっすらしか目を開けてないのに、うつ伏せの姿勢でも、背中から感じる光の暖かさで空の青さを感じる。時刻は7時半。集合時間は9時。間に合うには正直ギリギリである。しかも財布にお金が入ってない。晴れたら晴れたで行きたくない。でも早起きは三文の徳だ。何とか起きて行動したが、今からどう頑張っても20分は遅刻する。行きの電車に乗ってから上司に「遅れます、すみません」と連絡した。この時点で8時44分。
「早っ」
 しばらくして来た返事がこれ。
「遅れてるのに早いとは」
「意思決定早すぎぃ」
「駅すぱあとは裏切らない…」
 原文ママだ。遅刻してるのにも関わらず寛大な対応なのは休日だからか、それとも��に誘った強引さからの憂いなのか。気にしてないなら良い、取り敢えず合流先を知りたい。
「公園のどのへんいます?」
「探して」
 あれ。どんどん違和感が深まる。 矢継ぎ早に「あとどこから来るかわからんので」と送られてきた。来るって何のことだろう。意味が分からない。地図を見る限り中々に広い公園だから探すの疲れそうだなあと思った。
「せめてどんな特徴があるか教えてください」
 分かる人には分かる匂わせボケを送る。分かる人には「オカンが言うには……」と返してくれるはずだ。
「どゆこと?」
 こういうこともある。世の中思惑通りにはいかないもんである(去年のM-1王者ミルクボーイの漫才のくだりを敬語調に直したものだ)。
「いや、何着てるかとか探すうえでの」
「てか、もしかしてなんだけど。11時集合だぞ」
 「もしかしてだけどー」「もしかしてだけどー」脳内BGMはどぶろっく。察しの良い方は「意思決定早すぎぃ」で分かったでしょう。そうとも、わたしは集合時間を2時間も間違えていたのである。片一方は集合時間を9時、もう片一方は11時だと分かった上でもう一度このやり取りを見ると面白いと思う。集合時間11時側は、集合時間の2時間前に遅刻を宣言され、何を着ているのか問いただされる。「何でコイツはこんなにおれが着てるものが気になるんだ?」となるのも無理ない(実際11時側の当事者がそう話してた)。匂わせミルクボーイをしていたら、まさかアンジャッシュのコントみたいな渦中にいたとは。
 わたしは1時間半も時間に余裕が出来たので、ふらふらと散歩することにした。レトロなコインラインドリーやおんぼろでもう誰も住んでいないであろうアパート、ビールケースひっくり返したのを椅子にして怪訝そうな顔で煙草を蒸すおっちゃんなどなど、中々エモいもんを発見できた。
 正直ほんとの集合時間になるまでにちょっと疲れていたので帰りたくなっていたが、腹をくくってパンをかじりつつ集合場所の駅に向かう。さっきの散歩で1周した公園へ移動。3人のおじさまと1人のクソガキ(28歳)の4人、知らない親子がゴムボールでまた足元の覚束ない子どもと遊んだりする長閑な青空の下で割と本気のキャッチボールが始まった。149cmのわたしが結構離れた距離からノーバウンドでグローブに届けるだけで褒めてもらえるので、終始良い気分で続投できた。みんなにずっと黙ってたけど、ハードコンタクトを片方ずっとなくしたままでいるので、左右の視力が0.8〜9は違う。ボールの遠近感が掴めないので、山なりのそこまで速くない球が捕りづらかった。速くてまっすぐな球は、落ちてくる場所と速さが相手の手元から離れたときとあまり変わらないので、グローブが構えやすいのだった。途中から上司の息子さんもやって来て、一緒にキャッチボールをした。来週月曜日からようやく中学入学式らしい。部活は野球部に入るそうだ。「坊主にしなきゃって言われても入る?」と意地悪な質問をしたら、それでも「うん」と頷いていた。あと半年もしないで身長抜かされるなあ。
 商店街のチェーンの中華屋でご飯とアルコールを少し入れて、下北沢のスポーツ用品店に向かった。野球専門のだけあって、部屋の縦横無尽にグローブが置かれている部屋もあった。棚の中や棚の上にも見渡す限りグローブ。「地震が起きたら大変そうだなあ」と思うくらい。
 グローブ、バット、キャップ、ひとしきりのものを堪能して解散。たぶん16時くらい。わたしは19時から用事があったが家に帰ってしまったら最後、すっぽかしそうな気がしたのでそのまま下北沢をぶらついた。古着屋でヤカラっぽいシャツがたくさん売ってたから思わず買っちゃいそうになった。今じゃない、今じゃない。
 しばらく歩くと芝生が見えた。座れそうなスペースがあったので、そのまま腰をかけて本を読んだ。ミシマ社の『計画と無計画のあいだ---「自由が丘のほがらかな出版社」の話」という本。面白い本なのに、全く文章に集中できない。周りで遊ぶ子どもの様子が気になって気になってしょうがないのだ。「わあー」とか「きぃやあー」とか「ひゃあー」とか、悲鳴みたいな鳴き声をあげながら芝生の上を駆け回る彼らは、はち切れそうにほっぺを吊り上げて全力で笑っている。たまたま目があった3歳くらいの男の子から、「んふふ!」と手を振ってもらった。どきゅーん。射抜かれた。芝生を転げながら叫びたいくらい可愛かった。
 子どもが可愛いという話をすると本当に長くなってしまいそうなので、後日に回す。ただ、「わあー」とか「きぃやあー」とか「ひゃあー」とかで、楽しいという感情にステータス全振りしても何だかまとまっているのはすごい。忘れてしまいがちだけど、シンプルで大事なこと。やろうと思っても出来んのよな、大人は。可愛いってこういうことよね。
 19時半に目的地へ。誘った側がぐだぐだな進行で結局集まったのは20時半くらいになったが、遊びはこれくらいルーズで良い。酒を飲みつつ、音楽や漫画の話をしたり、大人みたいな真面目なはなしをしたり、多少の気迷いごとなど、大学生にちょっと経験しときたかったことを今更やっている。割と好きな時間ではある。いつか楽しいと思えなくなるまで、たぶんしてしまうのだろう。
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honyade · 4 years
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「疲れないカラダの使い方図鑑」(池田書店)実践体験講座 講師:木野村朱美 司会:二村知子
【隆祥館書店】 「荷物運び、台所仕事、掃除&洗濯、立ち&座り仕事がラクになる!」今回は、そんな疲れないカラダの使い方を、誰にでもわかるようにイラストで説明した画期的な図鑑を書かれた木野村朱美さんにお越しいただき実践体験講座を開催します。
1万人のカラダを変えた専門家が、カラダの構造と、効率的な使い方をイラストでわかりやすく説明!肩こり、腰痛、頭痛、便秘、イライラ、不眠も改善します。 キーワードは、「カラダの“思い込み”をリセットする」こと! これだけでカラダは“ラク”になります。
たとえば…「背骨はカラダのどこにあると思いますか?」カラダの後ろ側?背中? いいえ、違います。背骨はカラダの真ん中にあります。背骨が背中にあると思い込むと、筋肉が緊張して、首や腰に力が入り、立っているだけで疲れてしまいます。 このように、カラダの構造は、なんとなく名称や位置を知っていても、正しく認識できていないものです。
誰でも「カラダのしくみ」を理解でき、誰もが疲れないカラダの使い方ができるように、46種の日常生活のつらい動きや悩みを紹介しながら教えて下さる実践体験講座です。この機会にぜひ!!
【プロフィール】 著者木野村朱美 (きのむら あけみ)  (株)AruQualityPro代表。 人間が持つ本来の能力が出せるカラダの使い方を伝える「アレクサンダー・テクニーク」の専門教師。 中学校の美術教員を経験後、日本初のアレクサンダー教師養成学校「KAPPA」の2期生となり、4年にわたるトレーニングを修了。 京都・大阪を拠点に、アレクサンダー教師として、美術、茶道、太極拳、弓道、その他のワークから得た理論を取り入れながら個人レッスン、グループレッスンを全国各地で展開する。 アレクサンダー教師となった約20年間で、1万人以上のカラダの悩みに触れ、「無意識下で起こる無駄な力み」をやめる方法を指導。 現在も精力的に活動している。
司会 二村知子 (ふたむら ともこ) 井村雅代コーチ(当時)に師事し、シンクロナイズドスイミングを始め、現役時代はチーム競技で2年連続日本1位、日本代表として出場したパンパシフィック大会では2年連続世界第3位に。 現役引退後、隆祥館書店に入社。 2011年から「作家と読者の集い」と称して作家と読者の思いを直接つなぐト-クイベントを開催、メディアでは、知らされていない真実を追求する場として注目されている。 2016年からは「ママと赤ちゃんのための集い場」を毎月開き、2019年4月からは、臨床心理士である宝上真弓先生と子育てに悩む親御さんのために絵本選書の無料サ-ビスを始め、温かい社会を目指している。
「疲れないカラダの使い方図鑑」池田書店発刊 実践体験講座 講師:木野村朱美
開催日: 2020年3月22日 日曜日 時間:14:30開場  15:00~17:00  会場:隆祥館書店多目的ホ-ル 参加費: 3.000円  実践体験 1680円:本代「疲れないカラダの使い方図鑑」1320円  実践体験のみ:2,000円   当日の場合:参加費500円アップになります。  (要予約・事前購入制とさせていただきます。申込み順)
*振込先 三井住友銀行上町支店   (普通) 1353923カ)リュウショウカンショテン ※ お振込みのお客様は、振込票をご持参ください。
申込み・お問合せ:隆祥館書店 TEL:06-6768-1023  住所:大阪市中央区安堂寺町1-3-4 谷町6丁目⑦番出口向かい *Eメ-ル[email protected] 主催: 隆祥館書店      後援:池田書店
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spiwish · 5 years
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足元のお洒落が好き。
1日Ivyな日!
今日は朝からIvyさんに来ています。
出来上がったコースターを渡したり、
次の企画案を提出したり。
色々楽しくやらせてもらっています。
今度作るのはまたピックやステッカー?です。
年末の8周年イベントで是非!僕と握手!!
お土産用意して待ってます!!
お昼は一度地元に戻り、
母とカルマさんへ行ってきました。
美味しかったですAランチ!
鶏肉大���物だー。
また��い戻ってIvy。
姫とも久し振りに遊べて、楽しかったです。
夜のライブまで参加させてもらって、有意義な時間を過ごせたなーと思いました。
全然ライブ参加しないんですけど、たまにはいいなと思う。
お客さんやアーティストさんにコースターが好評で、一人舞い上がっていました。
最後の記念撮影にまさかの私のiPhoneが役立って、あぁ居て良かったなと。
ライブ後はあまり残ってもママさん大変なので、早めに切り上げたつもりでしたが帰っていった人数から言うと下から数えた方が早いぐらいずっと滞在していました(笑)
迷惑や…。
結局ステッカーの制作は無しになり、
ピックに全力注ぐことになりました。
もう注文しているので、私やIvyさん一家は一足先に手に取ることになると思います。
楽しみ!
そして、昨日更新し忘れまして、
今日になりました。
今日は通院日でした。
眠いけどバスに乗って隣駅へ。
この移動手段は正解だったことを私はまだ知りません。
実はほぼ同時刻に地元駅で人身事故があったらしく、
絶対に足止めを食らっていたので…よかったね。
輸入菓子屋さんでチョコレートを買ったり、
文房具専門店で文房具を買ったり。
絵が描きたくなって装備を揃えてみたけど、これは事前準備をしていたらいらなかった買い物なので無駄な出費として覚えておきます。
でも荷物をこれ以上増やしたくなかったのよね…。
最近移動時にメモがわりに持っている手帳のリフィルで、白紙(罫線なし)のものを今日買ったのですが、これだけは正解かも。
これからも出先で案が浮かんだり絵を描きたくなったらその白紙のページに描けばいいから。
(実は罫線有りでも絵を描ける体質なので本当は無駄なのかもしれない)(この他にシャープペンシル2本、替え芯2種買ってる無駄)
本当はこのお店に立ち寄ったのは手帳用のボールペンの替え芯を買いたかっただけだったんですけど、
とんだ出費を自ら生み出しました。
婦人科へ。
診察室に呼ばれたので入って先生の第一声が「痩せたねー」だったので嬉しかったです。
MAX幾つだった?って聞かたので素直に答えたらあともうちょっと頑張ろうねーと言われました。
うーん絶妙な飴と鞭…たまらん…(笑)
たった数kgなのに、気づけるのは流石婦人科医と言ったところでしょうか。
今日もありがたいお話を聞いてきました。
中でも驚いた?のは、とあるピルがジェネリック医薬品として出るらしく、
これからは女の子達も気軽に始められるねーなんて話。
私にもその薬にしたら、と提案したかったみたいでしたが、
諸事情で私は今の薬を継続することになりました。
飲み忘れだけ注意してね、と言われたので頑張ります。
いつもの薬局でお薬をいただきながら軽くお茶をして(麦茶とお菓子を出してくれる薬局さんなのです)、
さぁお昼だ!とお目当て���カフェに移動すると、なんと満席…oh…。
小さなお店で満席な以上仕方ないので今日は退きました。
お世話になっている靴屋さん、ベルソファさんへ行ってきました。
今日はブーツとパンプスをみてきましたよ。
両方気に入ってお買い上げしました。
足元装備色々固まってきたからそろそろいいかなぁ…って毎回言ってまた買ってる気がします。
体系が体系なので、小道具ぐらいしか遊べないんですよ…特に靴とかブーツとかを選ぶのが好きなんです。
それはただの言い訳でしかないけれどね。
パンプスは店頭在庫が無かったため取り寄せになりましたが先程発送連絡が届いたので明日には自宅に到着しそうです。
ブーツはその場でお持ち帰り。
今はこれしか写真が用意できなかったのですが、ブーツです。
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うん、可愛い!
何色なんだろう。キャメルにしては薄いけど黄色ではない。
ホックホクな気分でお昼ご飯を食べて、
時間が迫る中明日の朝食を探したり。
で、バスの時間になって移動。
今度はもう一軒の病院を目指します。
神経耳科の受診日でもありました。
聴力検査も診察も、いつもならしんどいぐらい時間かかるのに今日は早くてビックリ。
昨晩ライブ中に目眩が酷くなったり、今朝耳が詰まった感覚がしたのはやはり気圧だったらしく、先生もその兆候を感じていたと言うことでした。
一応聴力検査の結果も良く、眼振も無く良いだろうと言われました。
一応目眩時の頓服薬を処方してもらって、終わりです。
調剤薬局さんをちょっと急かしてしまいました。
というのも、バスを逃すと帰るに帰れない田舎の土地だったので、どうしてもこの時間のバスに乗りたいという思いがあったのです。
その旨伝えてみたら他の患者さんを差し置いて1番に呼ばれてしまい、大変申し訳なかったです…
そして肝心のバスは10分待ちました。
元々よく遅れてくるのは知っていたのですが、それでもどうしても乗り逃したく無かったので…ごめん!です。
帰宅して、早速ブーツを履いてちょっと近所を散歩しました。
職場に立ち寄ってシフトを確認したのですが、
人手不足な所もあり、来週も無理なシフトが来そうだなーなんて思いながら押し付けられないうちに帰りました。
来週も精神科があるので金曜日は確実に出られないんだけどできるなら出てあげたかっった…なんてね。
そんな私は明日から3連勤です。
うー…頑張りますよー。
形として自分から志願したことになっているので、やるしかない。
自分のためにもなるし、ね。たまにはヘトヘトになるぐらい働いたっていいでしょ。
3連勤したら4連休(の予定)だし。
頭がとても痛かったなぁ…今はとても眠いです。
今夜は早めに休んで、明日また頑張ります。
ではでは、失礼します。
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psalm80-lilies-iii · 5 years
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マリみてを知らない僕らだから
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自分の金で酒を飲み始めた頃、入りびたった店に、ママがカウンターだけのスナックをショットバーにしつらえて学生にバーテンダーをさせる、という趣向の店があった。ママは遅い時間にしか来ないので、早い時間はその学生たちとしゃべるだけである。そんな中に、学校は忘れたがトランペットを吹いている男の子がいた。専門は音楽だったのだが、マンガとかにも詳しい、まあいま言うところの「オタク」である。あるときぼくが「『ガンフロンティア』面白いですよね」と言うと、彼は「松本零士の原点ですよね。男は殺す、女は犯る。」と答えた。鮮やかな答だと思ったものである。ちなみに当時「オタク」というのはもっと特異な人たちを指す、明らかな蔑称だった。
あるとき彼が店に彼女を連れてきた。眼鏡で乱杭歯の、ふつうなら「彼女です」と言われたら「ええー?!」というタイプの女の子なのだが(失礼)、ぼくは最初から気に入った。話していて分かったのだが、彼女も「オタク」だったのだ。「啓発」ということばの語感がぼくはあまり好きではないのだが、クリエイティブでありたいと願って生活している若者には、お互い焚きつけあうパートナーが必要で、彼女は明らかにそれに足る女の子だった。
その彼女とマンガの話をしていて、江川達也の『BE FREE!』について、彼女がこんなことを言った。
「私は伊福部昭子というのはいいキャラだと思うんですよ。もっと活躍させるといいと思うのです。」
当時のぼくは驚いた、と言ったら、今なら逆に驚かれるのかもしれない。しかし「ある物語の登場人物に、その人物がその物語の中で現に担った以上の、あるいは以外の、役回りを期待する」というのは、少なくとも当時のぼくにとってはあり得ない話だった。いや、これはぼくにマンガ雑誌を読む習慣がなかったからなのかもしれない。毎週週刊誌を買っているマンガファンにとって、来週起こるであろう物語の展開を想像することはまったくふつうのことで、彼女もそういう中で伊福部昭子に期待していたのかもしれないが、たしかその話をした時点で、『BE FREE!』はすでに10巻ぐらいまで出ていたのだ。
この、なんでもない会話が、その後ぼくの中にずっと、「ひとは物語の登場人物にどの程度まで想像をたくましくするものなんだろう?そしてそれは、どこまで『まっとう』なことなのだろう?」という問題意識を植えつけた。そして、ぼくは今でも、オタクの人たちの間ではいたって普通に存在する「二次創作脳」とでもいうものを、オタクの人たちと全く同次元で理解することはできずにいるのだと思う(同じ意味で、女子アナがタレント化するというのも、ぼくには理解できない。テレビ視ないから関係ないけど)。ぼくは『赤の7号』の愛読者で、あのサイトには「『シスプリ』のファンの中にはエロ同人を作品に対する冒涜だと思って受けつけない人もいるんだけど、自分としては『妹たち』に対するこういう愛もあるんだと思っているのです」みたいなことがどこかに書かれていて(ほんと?)「なるほど」と思ったりするのだが、それを「なるほど」で済ませられるのはぼくが結局のところ『シスプリ』を知らないからだけなのかもしれないと思ったりもする。
*
"HK-DMZ PLUS.COM" の11月16日の項に「りぼんで百合 ブルーフレンド3巻 『これが新世代の百合マンガ!』」という「アキバBlog」の記事が引かれていた。ぼくは引越の荷づくりをしていたのだが、「へえ」と思って新逗子駅の「いけだ書店」に行き、第3巻から読んでも訳が分からないだろうと第1巻から第3巻まで買ってきて昼食後読んだ。
うーん。
第1巻・2巻と第3巻は全然別のお話なのだ、と知っていたら、第3巻だけ買って済ませたのかもしれない、と思った。性的虐待で傷ついた女の子を友人が慰める、というのは「百合」ではないだろう。ぼくは同性愛の出発点に性的虐待があるということは、話にしばしば聞くだけでなく、実例としても知っている。同性愛うんぬんという議論の中で最初にあった性的虐待がうやむやになってしまうことは正しくないことだろうと、ぼくはずっと思っている。そういう、むずかしい場所にきちっと降り立った作品に対し(いや、絶対に力作なのだ、『ブルーフレンド』の第1~2巻は、ふつうの少女マンガとして考えれば)、あえて「百合」と言ってしまうことに、ぼくは抵抗を感じた。何か、二重に無頓着ではないか。第3巻はもっとかわいいお話なのかもしれないが、ぼくは結局第3巻を読まなかった。
で、池袋で墨公委氏に会ったとき、手土産代わりに3巻とも渡したのである。すると後日、氏から感想のメールが来た。
……この『ブルーフレンド』の良さもまた、「恋愛ではない」人間関係について描いているところにあると思いますので、帯にあるような、そして世間ではどうもそう読まれているらしい、「百合作品として」云々という読み方は、作品から得られるものをわざわざ狭めているように思われ、遺憾です。
「普遍に通じる」可能性を、ありきたりで実態として空虚なレッテルを貼り付けて済ませるほどもったいないことはありません。……
こうして読み返すと、氏はこの物語の中できちんと成立する友情の美しさに心を打たれているのだなあと思って、それはぼくが抱いたような、性的虐待に対する憤りとは方向が違うのだけれど、ともあれ「遺憾です」という表現のストレートさに、ぼくはとても納得したものである。
*
性的虐待の問題を除いても、『ブルーフレンド』を「百合」と呼ぶことにはぼくは違和感があった(実は、読みながら思っていたのはむしろそっちの方だった)。「同性愛と云ふのは性愛あつてのことかと思ふので、乙女たちの友愛をさしてひとしなみに『百合、百合』と云ふのは違ふのではないかと私には思へてなりません」などと(なぜか旧かなで)思ったものである。
しかし、このブログでこれまで扱った作品でも、���とえば『ボイスフル』だって『百合姫』だし、『くろよめ』だって『つぼみ』である。「同性愛と云ふのは性愛あつてのことかと思ふ」というのは間違いではないと思うが、「百合」と云ふのも性愛あつてのことなのかと言われたら、ぼくは答に窮する。いったいオタクの人たちにとって「百合」って何なのだろう?女の子が仲良ければみんな「百合」なのだろうか?
そんな話を、墨公委氏と会ったときにひとことだけした。「『マリみて』って、読んだことがありますか?」「いえ。」
『マリみて』を知らない氏とぼくは、結局自分の「百合」観で「百合」作品を読むしかないのだ。
*
関西に戻って荷物を片づけながら、大朋めがねという人の『ひみつ。』というマンガを買って読んだ。
この作品に描かれているのは、「女の子を好きになる例のやつ」のおそらくとっても現実的な姿である。もなよさんは「男は嫌い。」なのだ。ぼくは女の子からホモだと思われて心を許され、ふつうの男だと知られて去られるという経験を一度ならずしている(これはぼくにとって二重にかなしい経験である)。だから、本当に男が嫌いな女の子がいるということをよく知っている。それで、思うのだが、このマンガって、セクシャリティに関して自分のことを男だとふつうに思っている男が読んで、面白いのだろうか?女性が女性を恋人に持つというドラマのとても現実的な姿を、この作品は独特の絵で美しく作品化することに成功しているのだろうとは思うのだけれど、この作品に登場する女の子たちとセクシャリティに関して同じような問題に直面したことのない男がこの作品を読んで一も二もなく面白いと言ったとしたら、それはどこか奇妙だと言わざるを得ない。いや、「ひとのセクシャリティというものに関心があるのです」と言われたら、まあそういうことはあるのだろう。ぼく自身がそうだったし、大朋めがねさんという方だって男性であるらしいとWebサイトにあるのだ。
*
「女の子どうしの友情をひとしなみに『百合』と呼ぶのは違うのではないか。」「乙女達の同性愛を『百合』と呼んだとして、それは男にとって愛でるべき対象であり得るのか。」いや、冷静に考えればそうかもしれないところを妄想まみれにするのがオタクなんじゃないかと言われたらそうなのかもしれない。いま「腐女子 カップリング」でグーグル検索して出てきた「2ちゃんねる」のまとめサイトを読み、「マウスポインタとEXEファイルのカップリングにランタイムを割り込ませる」とかいうのを読みながら「……ああ、分かるよ」と思うのだ。小学生の頃、複雑な分数計算の問題を解きながら(答がたしか1なのである)、「追っ手を振り切ってお姫様を助ける王子様のお話みたいですね」みたいなことを言って、分かってくれる人が回りにいなくて驚いたことがあったな……と思うのだ。セクシャルな要素があるかないかは大きな違いかもしれないが、ことの本質は同じであるような気がするのだ。
*
今にして思えば、『少女セクト』というのは別に同性愛というものを問題意識を持って描いた作品ではなかったわけである。『マリみて』のことを「浮き世離れした」と形容した文章を読んだことがあるような気がするが、『少女セクト』だって十二分に「浮き世離れした」作品だったろうと思う。
あの作品で友情とか愛情とかが性愛に転げ落ちてしまうのは、ほぼつねに一方が「思いつめる」からである。そして、「思いつめる」ということ自体は、セクシャリティの問題を超えて男の心にも生じる。あの作品が人気を博したのは、絵柄といいキャラといいそのセリフ・会話といい、あらゆるものが「あざやか」だったからだと思うのだが、読者をあの作品に収録されたさまざまなお話につなぎとめていたのは、登場人物たちの「思いつめる」心の普遍性だったんじゃないだろうか。
*
「何の話がしたいんだ?」と思われるだろうか。これは実は、『プライベートレッスン』のレビューの続きなのである。
*
…こんなこと 一生 人に言うつもりは なかったのに
そう言って、はね先輩は泣くのである。
とり姉はそれにどう応じるか。
うけとめているふりをし続けて 拒み続けてたんだ
「いやあ、そうだろうねえ」と思う。「そうだろうよ。」
でも、とり姉だって、乗り越えてきたんだよ。
拒み続けるものには、拒み続けるものなりの、乗り越えるべきものがあったんだよ。
*
『普遍に通じる』可能性を、ありきたりで実態として空虚なレッテルを貼り付けて済ませるほどもったいないことはありません。
「大事なことなので二度言いました」というのが、流行っているようである。ちなみに上の一文、ぼくはちゃんとQ要素でマークアップしている。ひとの発言だし、本来の文脈ではないからだ。
*
はね先輩が演奏会で弾いていたのは、本当に『最後から2番目の思想』だったような気がしてきた。
「ユーチューブ」で右側に出てくる、チコリーニという人の演奏がすごくいい。前の記事にリンクを設けたので一聴されたい。
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benediktine · 5 years
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【官僚女子もつらい!】 - NHKニュース : https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190530/k10011934731000.html : https://archive.is/uDxQ3 2019年5月30日 17時45分
 {{ 図版 1 }}
結婚したい、子どもも欲しい、仕事も続けたいー。漠然とつきまとう不安。働く女性たちが抱える悩み、官僚も例外でないようです。(「霞が関のリアル」取材班記者 荒川真帆)
■《女子の悩みは官僚も一緒》
「霞が関のリアル」取材班には、女性の現役官僚や元官僚からも多くの投稿が寄せられています。そんな皆さんが必ず口にすることがありました。
============ 「結婚して家庭を持てるか不安…」(20代女性) 「ママになると暇ポスト多い…」(30代女性) 「子育て支援制度はあるのに、使えない」(30代女性) ============
 {{ 図版 (省略) : 取材している私自身も30代です }}
つまり、女性官僚として働き続けることの難しさです。同じ女性として他人ごとには思えません…
でも一体、何が壁になっているのでしょうか。
■《制度あるのに、使えない!》
まず、最も多いのが子育てと仕事の両立です。
その1人、木下綾さん(仮名)(30代)。去年、悩んだ末にキャリア官僚を辞めました。理由を聞くと、少し悔しそうにこう言いました。
============≫  {{ 図版 (省略) }}
「子どもが1歳になり育休から復帰したのですが、1か月でもうダメだと思いました。子育ての支援制度はあるのに、実際にはとても使える状況ではなかったんです」 ≪============
これはどういうことでしょうか?
 {{ 図版 2 : 支援のMENU : 支援の制度はたくさん! }}
実は霞が関、育児や介護と仕事を両立するための支援制度はかなり充実しています。育休は3年まで取れるほか、男性の“産休”や、フレックスタイム制も何年も前から整備され、民間と比べても進んでいます。
木下さんが復帰したのは国会業務や制度改正も抱える部署。仕事の内容や帰宅時間などあらかじめ上司に相談したうえ、「育児時間」という制度を申請しました。
1日の正規の勤務時間(=7時間45分)のうち、2時間を上限に勤務を減らせる仕組みです。木下さんもこの制度を利用すれば、早めに仕事を切り上げ、午後6時には子どもを保育園に迎えに行くことができると考えていたそうです。しかし、実際はうまくいきませんでした。
============≫ 「とにかく帰れませんでした。自分の仕事を他の人に代わってもらえず、とても帰れる雰囲気ではなかった。夫も単身赴任なので、仕方なく離れて暮らす母に無理を言って代わりにお迎えにいってもらうことが頻繁にありました」 ≪============
 {{ 図版 (省略) }}
何とか迎えには行くことはできても、仕事はほぼ自宅に持ち帰��ていたという木下さん。子どもの食事、お風呂を済ませて寝かしつけたあと、再び職場に戻った夜もあったといいます。
子どもが熱を出した朝。休みにしようと連絡すると、応対した同僚から「課長も自分も○○の対応がある。木下さんがこなければ△△のレクは誰がやるんですか?」という返答が。やむなくまた母を頼って子どもを預け、仕事に出たといいます。
============≫ 「深夜2時に部下から問い合わせがくることもありました。体もきついし、精神的にも追われている感じがして。何より子どもに対してイライラが募ってしまっていると気付いた時、これは悪循環だと感じました。もうこの職場にはいられないなと思い、退職という選択をしました」 ≪============
聞いていて、やるせない思いが募りました。立派な制度だって、それが使えなければ意味がないじゃないかと。
そこで、人事院にこの「育児時間」を利用した女性職員の割合はどの程度なのか取材しましたが、「取得率までは調査していない」とのことでした。
また、自宅で仕事ができる「テレワーク」制度もありますが木下さんによると、申請をしても「前例がない」などと実際には認められなかった同僚もいたということです。
官僚を辞めた木下さん。働きながら子育てができる環境を求めて転職した先は、地方自治体の公務員でした。最後に、木下さんはこう訴えました。
============≫ 「霞が関では、深夜まで働くことができなければ戦力ではないと見なされ、小さな子どもを抱えていても出産前と遜色ない働き方をしなければいけないと当事者に思わせてしまう。今、女性職員の採用を増やしていますが、中身が変わらなければ何の意味もなさないと思います」 ≪============
■《『女性活躍』掲げるけれど…》
確かに木下さんがいうように国家公務員の女性採用は年々増加しています。女性の働き方をどう改善するかは民間でも大きな課題となっていますが、それは旗振り役であるはずの霞が関では、その問題がいっそう浮き彫りとなっています。
本省の課長・室長相当の管理職のうち、女性が占める割合は4.9%。これでも10年間で2倍以上に増えたそうですが、民間ではその割合は10.9%。倍近く、開きがあります。
 {{ 図版 3 : 「府省等別・女性の管理職登用状況」(本省課室長相当職) }}
各省別にみても、消費者庁は16.1%、文科省は11.7%などと民間を上回るところがある一方で国交省は1.5%、総務省は1.8%など低いままのところも。組織によってずいぶん事情が異なるようです。
■《専門家はどうみる》
 {{ 図版 (省略) }}
こうした現状をどう見るか。3年前、霞が関の働き方改革について提言を行った「ワーク・ライフバランス社」の社長・小室淑恵さんを訪ねました。
この時の担当大臣だった今の河野外相は、「霞が関の働き方が変わったぞ、と言われるように責任を持ってやっていきたい」とかなり前向きな発言をしたそうですが、その後、好転の兆しは見られますか?と尋ねました。
============≫  {{ 図版 (省略) : 小室淑恵さん }}
「管理職に部下の労働時間を管理する意識がうまれたり、若手から働き方改善に取り組む動きが出てきたりと、少しずつ変化は出てきています。でも、以前は『ものすごく異常』な働き方が『異常』になったくらいで、全くぬるい。まだまだです!」 ≪============
「なぜ霞が関は変わらないのか」と聞くと…
============≫ 「まず『永田町』との関係が大きな壁ですね」 「国会質問が23時過ぎに出てきたり、遅い時間に様々なレクが入ったりと、深夜の時間帯の国会対応がこなせる人材かどうかが女性にとって踏み絵になってしまっていますね。結婚して子どもができ��も、子どもを産む前と同じくらい働くことができなければ戦力外にみなされてしまう。暇なポスト、いわゆる『ママキャリア』の枠に入れられてしまいます。昇進できるのは結果的に国会・深夜業務ができる人に限られてくる。そうすると、『ロールモデル』とされる人も出づらくなっているのではないでしょうか」 ≪============
■《代行不能な『仕事の属人化』》
さらに、小室さんは別の「壁」の存在も指摘しました。
============≫ 「霞が関の官僚は仕事が『属人化』している場合が多いです。1人で情報や仕事を抱え込み、結果的にほかの人では代行がきかず仕事を手放せない。子どものお迎えなどで早く仕事を切り上げようとしても、じゃあそれ誰がやるの、あなたしかやれないよねということになってしまう。他にも、アナログ文化や非効率業務が多いなど様々な要因が絡み合っていますが、支援制度があっても使えないというのはそういうことではないでしょうか」 ≪============
確かに、先の木下さんのケースでも、仕事の属人化が仕事を減らせない一因となっていました。もちろんこれを専門性だと言う人もいるかもしれませんが。
では、どうしたらいいのでしょうか。小室さんはこう提言しました。
============≫ 「仕事の属人化を極力やめて、情報を見える化、共有化するなど、特定の人だけができる仕事にしないことが大事です。そうすればチームとして仕事が回せるようになり、短時間勤務の人もしっかり能力を発揮できます。そのためにクラウド化やITツールを入れるなどハード面の整備も重要だと思います」 ≪============
そして、最後に小室さんが指摘したこの言葉こそ問題の本質だと思いました。
============≫ 「ママ職員だけを早く帰れるようにしても必ず失敗します。その分、残業ができる人に仕事がどんどん回って負担の付け替えになるだけ。子どものいる女性だけでなく、男性も含めて組織全体を見渡し何が長時間労働の原因なのか、意識だけでない『構造』に本気で目を向ける必要があります」 ≪============
■《子どもはいないのですが… 言い出せない悩み》
もう1人、別の女性官僚を紹介します。文部科学省に勤務する40代の女性官僚。今は補佐級職員です。
 {{ 図版 4 : 「私の話が参考になれば…」と取材に応じてくれました }}
「子どもがいない女性こそ、なかなか言い出せないこともある」と話します。実は彼女、普段の取材から付き合いがある方でした。いつも朗らかな笑顔で、教育への思いも熱い素敵な女性です。
「今まで何に悩んできたか、聞かせてほしい」と頼み、喫茶店で待ち合わせると、これまでの「悩み」をメモにまとめてくれていました。それを見て、返す言葉を失ってしまいました。
============≫  {{ 図版 5 : 実際に用意してくれたメモ }}
「36歳。(地方)出向の打診。 結婚もしたかったが、大事な機会。行くしかない」 「39歳。(結婚)流産、ショック引きずる。 半年後に不妊治療を始める」 「40歳。不安なままずっと。 仕事にブレーキかけるが、やる気の欠けた人と思われる」 ≪============
そこには、普段の彼女からは想像できない思いが淡々とつづられてました。それについて思い切って聞いてみました。
============≫ 「30代前半はプライベートは何も考えられないくらいの忙しさでした。やりがいがあったし本当に面白いのですが、35歳の時、結婚の予定もないのに産婦人科で色んな検査を受けたら結果が悪くて。体に無理がかかっているんだと、仕事や自分自身を恨んだこともありました。仕事にかけたい気持ちもある一方で、どこまで自分を守ったらいいのか、とにかく葛藤してきました…」 ≪============
2年前に結婚したあと、「どうしても子どもがほしい」と思い、上司や周囲にも相談し、不妊治療に通いました。
 {{ 図版 6 : 念願かなってついに… }}
仕事の調整は難しいことも多々ありましたが、この春、妊娠がかないました。喜びの一方で、複雑な表情を浮かべた彼女は、こんな風にも話してくれました。
============≫ 「実は不妊治療を隠している女性も結構います。でも夜中の2時まで働いていたり、治療が叶わなかったりする人もいます。様々な理由で中絶した人もいます。『周りは頑張ってるのに自分のことで迷惑かけるのは申し訳ない』『なまけてると思われたくない』とか、罪悪感や後ろめたさを抱えている人が少なくないんです。霞が関の働き方は簡単には改善されないかもしれないけど、子どもがいなくても複雑な気持ちを抱えている女性がいることを少しでも理解してほしい。当事者の女性たちには、思い切って周囲に話してみてほしいです。意外と周りに協力してくれる人はいますから」 ≪============
取材中、女性官僚たちの発する言葉は、そのまま自分にも突き刺さるようで、何度も、メモする手が止まりました。
「バリキャリ」などという言葉もありますが、働く女性が結婚や出産などに悩みを抱えるのは、官僚の女性も全く同じだと感じます。
みなさんは霞が関の女性の働き方、どう思いますか。民間企業で働く方も歓迎いたします。あなたの経験やご意見をぜひお聞かせ下さい。 https://www3.nhk.or.jp/news/special/kasumigaseki/
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38mitsubachi · 5 years
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ご来店のお客さまの投稿シェア😊💕 ママのコメントが可愛い😍😍😍 以下 @subarukannaaina.mama 長男→8歳 4月22日(月)のpic📷 昴琉Day💗 授業参観の振休なので twinsお見送りした後は 昴琉とデート💗 #ポケモンセンター 行った後 ずーと行きたかった(私が😂) @38mitsubachi #38mitsubachi 苺のフォンダンショコラパンケーキ 🍓 🥞 仙台いちごのソフトクリームパフェ 🍓 🍦 を2人でシェア😊 そして、 #青いティー の#バタフライピー ☕ なんと☝️蜂蜜レモン入れると紫色に変わる紅茶なんです😊 全部、美味しかったよ~ 😋 今度は、twinsにも食べさせてあげたいな🎶 #パンケーキPancakes#ソフトクリーム#パフェ 次の昴琉Dayは、ラーメン屋🍜 私的には、まだまだ行きたいパンケーキ屋さんや、おしゃんカフェがあるんだけど、前々から、美味しいラーメン食べたいって言ってたので、次は昴琉希望のラーメンで🍜 そこで、仙台のおすすめラーメン屋さん教えて下さ~い😆 車がないので、街中か太白区(長町~富沢近辺) 地下鉄や電車で行ける所(泉や名取とかでもOK🙆 ) そして、子供が食べるので辛い系じゃない奴~ (私的には辛いの食べたいけど😁 ) 条件いっぱいだけど…😅 宜しくお願いしまーす😆 海外子供服SOAR KIDS @soarkids.bymisaking #8歳 #boy #kids #instakids #kidsinsta #instachild http://38mitsubachi38.com/ ------------ 気で明るいスタッフ募集中‼️ 一緒にお仕事しませんか? ★Workin🥞求人エントリーはこちらから↓💁‍♀️ https://workin.jp/miyagi/jobs/1002005716/1 ------------ ‪LINE@お友達登録募集中🥞‬ ‪(公式アカウント検索:38mitsubachi )‬ ‪​↓‬ ‪https://line.me/R/ti/p/%4038mitsubachi‬ ------------ @38mitsubachi では紹介する写真📸を募集中٩(๑❛ᴗ❛๑)۶ (@)タグ付けや(#)ハッシュタグを付けてくれた投稿からもピックアップした写真をリグラム(リポスト)してご紹介します。 #38mitsubachi 、 #38kitchen を付けるかこのアカウント38mitsubachi をタグ付けして投稿📸してね! ------------- ★ 通販サイトから🥞パンケーキミックス粉やシロップ、蜂蜜などのギフトの通販購入が出来ます。是非ご家庭でもミツバチのパンケーキ🥞をお楽しみ下さい! 【ご購入はこちらから↓】 https://mitsubachi38.official.ec/ ------------- ‪ #38mitsubachi #パンケーキ #仙台カフェ #仙台ランチ #38kitchen #pancake #仙台パンケーキ #ソフトクリーム #pancakes #パンケーキ専門店 #パフェ #苺パフェ # #仙台スイーツ #pancakesunday‬ ‪#仙台カフェ巡り ‬#カフェ活 #カフェが好き ‪#仙台旅行 #‬cafe #instapic #instapicture #instaphoto #instagood (仙台市青葉区二日町2-1 ミツバチ��ッチン) https://www.instagram.com/p/BxTnxADBw6P/?utm_source=ig_tumblr_share&igshid=145926qmc70j1
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fu-sen-kazu-ra-blog · 5 years
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裸逅愛無
ネちゃんワールド⸜( ⌓̈ )⸝
──────────────────
「裸逅愛無」
🖤
あたしが一万円にも満たない初任給で買ったのは、どんなに焦がれてもあたしのものになってくれないロールパンナちゃんの夜だった。
上京して1年が経ったばかりの春、下町の鳥貴族で酔ったあたしはロールパンナちゃんの腕のなかで泣きじゃくっていた。
「お金より価値のあるものをあげられなくてごめんなさい、」
ロールパンナちゃんは飄々と、お金もらってるからいいよなんて言ったくせに、イく前にセックスをやめた。金とるくせにプロ失格じゃん。
二人暮らししているラーメン屋の3階、何人の女と寝たのかわかんない狭いベッドの上でこうして抱きしめられたのは何回目だったかなぁ。
ルナルナにだけはぜんぶバレている。
ロールパンナちゃんと出会ったのはあたしが以前働いていたガールズバーだ。東京の下町、平日の深夜2時。12月の寒い日だった。
暇な店で、いつものようにキャッチに出されていたのだが、正直に言うとそのときあたしは散歩と言うにはハイテンションで激しい闊歩をしていた。
誰もいないシャッター街でキャッチなんて馬鹿らしい。
銀杏BOYZは爆音じゃなきゃ。
そうやってひとりでキマっていたら、店で接客をしている先輩の女の子から早く戻ってこいと電話がきてしまった。くそーーいい気分だったのに、ってダッシュで商店街を抜けて汚いビルの階段を4階ぶん駆け上がると、ロールパンナちゃんがいた。ロールパンナちゃんはジントニックを続けて3杯飲んだ。
🖤
死んだらそのときよねって高校を卒業してすぐに上京してきて、でもあたしはどうやらなんとか生きている。
それまでは札幌の、偏差値が71もある公立高校に通っていた。
そこだけ言うと勝ち組エリートのようだが、高校生活のうちの3~4割くらいは引きこもりをしていたから、なんとかお情けで卒業証書は貰ったもののベンキョーのほうの頭はすっからかんだ。先生には卒業するとき、お前すぐ野垂れ死ぬぞって言われた。でもまだ死んでないし死ななそうだから、先生は嘘つきだったみたい。
あたしが高校時代に頭に詰め込んだのは、受験英語や戦争の名前なんかじゃなく、キラキラの文化たちだった。ファッション、文学、音楽、そういう芸術をやる素敵なひとたち、ツイッターにいる全然有名じゃないけどめちゃくちゃおもしろいアカウント、好きなひと。漠然と、自分はぜったいすごいことができるって思い続けることがやめられなくて、そういう芸術たちに並びたくて上京したけど、ロールパンナちゃんに会うまでの1年であたしはただの女の子からなにも変わらなかったようにおもうし、実際なにも成し遂げられていない。
水商売をはじめた理由は単純にお金が欲しかったから。上京するときに借りた審査のゆるい「女性専用シェアハウス」は1年縛りで入居したものの色々あって3ヶ月で退居、それからは男友達の家に居候していた。シングルマザーの母は生活保護のキャバ嬢で連帯保証人になる能力がなく、その上貯金もない未成年のフリーターに安く家を貸してくれる業者などなかった。
でもそのときのあたしは家よりも、ただただモーレツに縷縷夢兎が欲しかったのだ。
体入ドットコムを見て歌舞伎町で面接したら、フェイクのキャバの箱で風俗に勧誘されて逃げてきた。意気地無し。その程度の覚悟のお前に縷縷夢兎を着る資格は無いよ。
歌舞伎町で働けるほど可愛くないから東京の端っこの下町で、ドレスなんか着られないほどデブだからキャバクラじゃなくてガールズバーをやっていた。
夜は好きだ。
でも夜の仕事はあまり好きにはなれなかった。周りが馬鹿に見えて仕方なかった。キャストも客もみーんな。愛し愛されることの疑似体験、つまり嘘ばっかりだから。愛のことなんてちゃんと考えたこともないみたいなひとたちばかりだった。オマエガスキダーみたいな低俗なラップやアタマカラッポクラブミュージックをきかされて辟易とする日々だった。
そういう奴らを密かに威嚇するために、LINEのBGMは銀杏BOYZの円光とか、大森靖子ちゃんの裏とかにしていたし、アイコンの自撮りは顔の横で立てた中指をハートのスタンプで隠してきゅるきゅるしていた。
それに気づいたのはロールパンナちゃんがはじめてだった。だからこいつはセンスがある奴だと思った。
こちらが営業電話をしてやるつもりで快諾したモーニングコールを逆に利用して、ロールパンナちゃんはあたしを誘った。
お互いの定休日がたまたま月曜日で、予定の合う月曜日がたまたまクリスマスイブだったから、イブの夜、あたしはロールパンナちゃんの働くラーメン屋の3階でピザを食わされた。
ロールパンナちゃんはあたしの話をききたがった。後から考えてみると、奴の前職は派遣とはいえ営業マンだったし、あれは巧妙に計算された前戯だったのだと思う。
しかしあたしが話したのはあたしの人生のこと、いまのあたし自身のこと、野性爆弾のくっきーが大好きだってこと、縷縷夢兎が着たいけどとりあえずrurumu:を買ったこと、でもそれらを買い占めるほどのお金は稼げなかったこと、等、あまりにもセンスがありすぎた。
あたしがくっきーのインスタを遡りはじめたところで、ロールパンナちゃんにキスされた。
「くっきー見ながらチューされる気分はどう?」
「さいあく。」
ロールパンナちゃんは心底おかしそうに笑っていたが、挙げ句の果てにあたしがロールパンナちゃんの古いiMacで下妻物語を観はじめたので、しびれを切らして一緒に寝たがった。
「遊ばれたくないの?」
「うん」
「えらいねぇ、遊ばれたことあるの?」
「遊ばれたことしかないよ」
あたしには彼氏がいたことがないが、処女ではなかった。つまりそういうことだ。
処女は高校2年生のとき当時好きだったひとに捧げたが、それ以外はあまり真面目に自分を守れなかったせいでボロボロだ。
いいなと思ったひととすぐに寝てしまって結果遊ばれて終わるということもよくあったし、こころが大丈夫なときにはたまーに援交もしていた。
シングルマザーでバツ2で彼氏をとっかえひっかえしている母親の汚くて愛のないセックスの成れの果てが自分だと思っていたから、そんな汚いからだがそれ以上汚れることなんて構いやしなかったし、愛されることには憧れても本当に愛されることなどないと半ば諦めていた。いちばん愛されたかった幼い頃から、あたしはヒスを起こした母に叩かれたり怒鳴られたりゴミ捨て場に捨てられたりして育った。
月並みだが、あたしは愛情不足で育って自己肯定感が足りないこどもで、それに加え心の貧困、目先の甘味にすぐ屈してしまうから、痩せられないし遊ばれる。
それが悪いとか、言い訳だとか、甘えてるとか、可哀想とか、わかるとか、まもりたいとか、そういう感想には飽きたというか、それらの過去はただの事実でしかないからどうしようもない。あなたにどうこうしてほしいとかそういうのじゃなくて、ただの話。
ただその日、あたしはセックスを頑なに拒んで、ただ抱き締められて眠った。
🖤
ロールパンナちゃんとの日々はそれからはじまった。クリスマスの次に会ったのは大晦日だった。
それまで一緒に住んでいた男友達に愛想を尽かされホームレスのネカフェ難民だったあたしは年末のガキ使を見る術がなく、つまりダウンタウンも、くっきーも、脅かされる田中も、なんならそのあとのおもしろ荘も見られないと絶望していたのだが、ロールパンナちゃんはテレビを持っていた。利用させていただく以外の選択肢がねぇ。見た。ロールパンナちゃんはその日も夕方まで仕事だったので途中寝てしまったが、夜中になって起きてきたから少しだけ一緒にテレビを見て、こんどは一緒に寝た。それで昼くらいに起きて、元旦の浅草寺で「パンケーキ食べたい♪蒲田は地獄♪」って歌っていた。ロールパンナちゃんのおみくじは凶だった。
帰りの電車で、きのうからまる1日ありがとうございました、って言って先に降りようとしたら、今から8時間耐久ボンバーマン対決するつもりだったんだけど…って言われて結局またロールパンナちゃんの家に帰ってしまった。
そのままダラダラと、ロールパンナちゃんの正月休みはぜんぶあたしがもらった。
1月2日の朝にはじめてセックスをした。
セックスの途中で、ロールパンナちゃんが
「あ、ハンバーガー食べたい」
とか言いはじめた。肉欲がすごい。
だから事後は駅の近くのモスに行った。
レジ前で並んで、もう順番が来るというときになって、今度は
「そうだ、おいしいハンバーガー食べに行こう」
って言い出した。あたしはもうおっかしくてただ付いていった。行先は新宿だ。
結果を言うと、ハンバーガーにはありつけなかった。原因はグーグルマップの経路案内の、あのトンチンカンなところに連れていかれるアレ。
マップが示した到着地点は住宅街の中のファ���マだった。
「俺はここの肉まんが食べたかったんだ」
「あ、そうなんだ」
冗談ばかり言うひとだからとても楽しかった。
散々歩いた挙句に小田急の西新宿駅から新宿駅に戻って、さっき肉まん食べたばっかりなのにお好み焼きを食べた。そのお好み焼き屋にいた家族連れの席の女の子が、
「わたしとママの絆でUFOキャッチャーのぬいぐるみが取れたんだよね!!!」
って騒いでいたから、食べ終わったあとはゲーセンに入ってしょーもない当たらないコインゲームをして、歌舞伎町のTOHOシネマズで映画のラインナップを見て、ブルプルでタピオカを飲んだ。
ロールパンナちゃんの最終学歴は製菓の専門学校だ。だから派遣の営業マンの前はパン屋さんだった。駅やルミネや通りすがりにある店のポスターの『新発売!』やら『新食感!』の文字を見るたびに、ロールパンナちゃんは立ち止まって数秒眺めて、興味なんかないみたいに歩き去るのだった。
ブルプルに寄ったのは、ロールパンナちゃんがチーズドッグを食べたいと言ったからだ。あたしはウーロンミルクティーを飲んだ。
西野カナとか三代目とか、そういうのをクソ真面目に聴けちゃう層を小馬鹿にして生きるあたしたちの、それでも馬鹿にしきれない「普通」へのささやかな憧れが共鳴したような気がした。チーズドッグとウーロンミルクティー。歌舞伎町。セックスよりもグッときたんだけどな。
🖤
あたしのゆめは、世界平和。
表向きには、映画監督。
それなのに、あたしの仕事は、嘘っぱちの愛だった。
隙をふりまいて、春をころして、あなたに都合の良い憂いを演じて、お金をもらう仕事。
あたしがまつげを震わせて、ひとりひとりのあなたのことを大切にできないと思い悩んでいることなんて、だーれも知らないのでしょうね。
ほんとうは、世界平和にポップに貢献するキャッチーでキラキラで奥深い映画を撮りたいし、そもそも自分自身だって映画なんだからまず自分自身がキャッチーでキラキラで奥深いアイドルになりたい。
大好きなものにもっと近づきたいというより、どうしても負けたくない。受け取るだけじゃなくて、切磋琢磨したい、接触して、反応して、もっともっと光りだすように苛烈に生きていたい。
毎日毎日怠惰な生活をしてしまってはいるが、たまに映画を見たり新しいMVが公開されたりするとやはり、どうしようもなく負けていられない気持ちになる。
21世紀の女の子という映画が公開された。
2月20日、縷縷夢兎のエキシビションをじっくり味わったあとに、映画を観て、佳苗さんのトークショーを聴いて、花束を渡して、サインをもらって、お話をした。
随分と自虐的な話題だったと思う。
それでもあたしはもう、それはもう、キラキラで胸が満たされてしまって、ロールパンナちゃんのことなんて考えられないくらいだということを、ロールパンナちゃんに伝えたくて堪らなくなって仕事を休んで、ロールパンナちゃんの家に帰った。
映画を撮ること、あたし自身を煌めかせて売り出すことを本気でやろうと思って、デリへルをやろうと覚悟を決めた。アトリエが、機材が、つまり金が要る。時間も要る。
性消費されるブレない奴というのは、手っ取り早く目を惹くコンテンツだ。丁度よく狂っている。全てを武器にしてやろうと思った。
ロールパンナちゃんとは付き合っているわけでもないし。大好きだけど、すごく大好きだけど、きっとロールパンナちゃんは、ロールパンナちゃんのことを大好きすぎて人生を台無しにしちゃうあたしよりも、ロールパンナちゃんのことなんか見えなくなるくらい突っ走って人生台無しにしちゃうあたしのほうが好きだから。
ロールパンナちゃんと出会ってから2か月以上経っていた。
セックスをしてしまったのにこんなに長くそばに置いてもらえるとは思っていなかったし、こんなに長居するつもりもなかった。ロールパンナちゃんは強がりのあまのじゃくだからこんなことを言ったら怒るかもしれないけど、ロールパンナちゃんはあたしと似ていたし、あたしたちはお互いのそういうところを恐らく気に入っていた。好きだった。
変な人になりたいあたしたちはお互いの変なところに一目置きあっていたはずなのだ。
ロールパンナちゃんはあたしの夢や哲学をだれより正しく捉えて、肯定したり批判してくれる人だったから好きだった。あたしのせいで曲がってはくれない人だった。
だからあたしが夢のことを話したとき、健気でかわいいねとか、俺の家で借りた映画を観てもいいとか言ってくれた。
デリへルのことは、決めてすぐには話せなかった。
もう慣れっこになってしまった狭いベッドに寝そべってパンフレットを読み漁るあたしに、ロールパンナちゃんが縋るように抱きついてきたから。
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朝になるとロールパンナちゃんは仕事をはじめなければならない。だからあたしは眠い顔のままネカフェに帰っていく。
あたしも仕事をしなければならなかった。生きるためには、衣食住が必要だった。
キャリーケースに服を詰め込んで、コインランドリーとネカフェとガールズバーと松屋を行き来する生活だった。
しかしロールパンナちゃんと会うには、仕事を休まないといけない。
ロールパンナちゃんは週6日、ずーっとラーメンをつくっていたから、会えるのは夜だけだ。だから毎朝、しょーもないモーニングコールをしていた。なんならロールパンナちゃんの昼休憩のときにまで電話をすることもあった。あたしたちが日本語を楽しめる人間たちでほんとうによかった。
21世紀の女の子を観た2日後のモーニングコールで、あたしはロールパンナちゃんにデリへルの話をした。
「いいんじゃない、俺の女の子の友達もパン屋やりながら夜デリへルしてる子いるし、夢とか目的があってやるなら」
やっぱり普通に囚われないひとはいい、頭ごなしにやめろって言わない、そういうところが好きだよって思いながらあたしはその時ちょっとだけ悲しかった。
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ロールパンナちゃんの働くラーメン屋さんは店舗が2つあって、それぞれの往復に電車を乗り継いで4時間くらいかかる。
その日はロールパンナちゃんが自分の店舗に出勤する前に、もうひとつの店舗までおつかいをしにいく日だった。
そういう日、あたしはよく一緒に通勤ラッシュに揉まれた。ロールパンナちゃんは目的地の改札の内側で、愛おしそうにあたしの髪を指で梳くから。
デリへルの話をした後にロールパンナちゃんに会ったのはその日がはじめてで、ロールパンナちゃんは会った瞬間に「きょうもかわいいね」って言ってくれた。
楽しい話をたくさんして、いつもよりなんだかハイに笑って、あたしはいつの間にか挑戦的な態度を取っていた。
「あたしはお金を払えば好きなときに会える女の子だよ」
「そうなの?」
「そうだよ、これからもっとそうなるんだよ」
ロールパンナちゃんは黙ってしまった。通勤ラッシュで押しつぶされて、立ったまま、ロールパンナちゃんは目にいっぱい涙を溜めて口をつぐんでいた。
何度も好きにならないよって言われたし、だから付き合いもしないって言ったくせに、ロールパンナちゃんはあたしを想って泣いていた。
帰りの電車で、ラーメン屋で一緒に働かないかと誘われた。家も昼間の健全な仕事も、貯めるのにじゅうぶんなお金もあけるから、と。
愛とはつまりこういうものではないかと、あたしははじめて理解して、びっくりするほどすんなりと、頷いてしまった。
いい返事をきいて喜んだあいつは店に着いてから、あたしをママチャリの後ろに乗せて一駅先のスーパーに買いものに行った。奴は真昼間なのに、下手くそな歌を大声で歌いながら笑っていた。交番の前を通るのだってもう怖くなかった。このあたしが、好きなひとと一緒に明るい場所で生きられるということが、ほんとうにほんとうに嬉しかった。
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ロールパンナちゃんの住むラーメン屋の3階で、期限付きの二人暮らしをすることになった。
働いていたガールズバーはキッパリ辞めた。
ロールパンナちゃんはほんとうに文字通りあたしを振り回すし、あたしだって自分の意思でロールパンナちゃんに振り回されている。
ロールパンナちゃんは、所謂「社会の中の変な人」だ。しかも、自らそうなりたいと思って変な自分やそれが許される環境を作りあげているから、突拍子もないことをしてもなんだかんだ上手くやれている。
後々いまの会社の社長に聞いたことなのだが、ロールパンナちゃんはあたしの入社を掛け合う際に正直に、
「俺の部屋に通っている女の子が〜」
と話したらしいから驚きだ。
でもその話をしたときのあたしだって社長とサシでタピオカを飲んでいたし、高校時代の恋バナをしたし、そういう環境なのだ。
あたしの初任給が一万円にもならなかったのだって、ロールパンナちゃんが3月から勤務開始予定のあたしを半ば強制的に2月28日に出勤させたからだ。
末締めだもんね。そりゃそうよ。
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ロールパンナちゃんは意外にも、とても真面目に仕事をしていた。
「これからは上司だからプライベートでも敬語で話して」
幸せの甘いところだけを掴みきれない日々がはじまった。
あたしの負けず嫌いな性格やガールズバーで染みついたオンナの立ち振る舞いは、すぐにロールパンナちゃんをイラつかせた。
ラーメン屋になって。ラーメン屋になって。ラーメン屋になって。ラーメン屋になって。
映画やファッションとは違う土俵で、経験値やタッパの差もあり、あたしは完全に負けだった。
負けたくない、嫌われたくない、動けない、遅い、からい、暑い、痛い、
あたしから出たのは血や汗だった。
それから完璧なラーメン。
余裕が無い。ロールパンナちゃんの前で余裕が無い。
苦手な早起き、無駄な口ごたえ、コンプレックスの隠せない薄化粧、似合わないポニーテール、制服は膨張色の白、毎日同じ長ズボン、汚いタオル、可愛さとか自我が許されない機械的な接客。
あれれーって思っているうちに、同じ毎日の中で、あたしとロールパンナちゃんは冷えていって、遂に、
ロールパンナちゃんはキャバ嬢にハマった。
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こうしてそばに置いてもらい続けていること自体が幸せなのだと、わかってはいる。
ただ当たり前だが、甘くはなかった。
好きなだけでは生きていけない次元に飛び込んでしまった。その代わり、好きじゃなくても共存していられる権利を手に入れた。
歪んでいるね、あたしは自分のなかの歪みやクシャクシャな想いをまっすぐに伸ばして正しく読んでブレずにいられるように、毎日ラブレターを書くようになった。LINEのタイムラインに、ただただアップするだけのラブレター。
ロールパンナちゃんは頼んでもいないのに毎回律儀に読んでくれて、反応したりしなかったりした。
3人で回している店だから定休日の前日はいつも3人で飲みに行くのだが、たまたまひとり都合が合わない日があって、ロールパンナちゃんと2人で飲みに行った日が冒頭のあの日だ。
飲み比べは引き分けだったがどちらもお互いに負けないくらいフラフラだった。
帰って、酔った勢いで、お金を払ってセックス。
売春は、あたしとロールパンナちゃんにとっての興味深いテーマだった。
お金をもらってサービスを提供するということを、あたしはそれまで仕事にしていたから、それを金額に対するサービスだと割り切ることを知っているし、お金を払う側の感情の機微もいろんなものを見てきた。
あたしにとってあなたにはお金以上の価値があったから、ここまでついてきたよ。
あなたにとってあたしは、お金をもらわないと割に合わないほど、つまらないものだったのだろうか?
「お金より価値のあるものをあげられなくてごめんなさい、」
あたしは痛客だった。
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愛のことなんかちっともわからない。
俗に言う高まった恋愛感情のことだとは全く思わないし、どうせ別れる彼女に愛してるなんてほざいている同級生はバカにしか見えないが、じゃあなんなのってきかれたところであたしだってちっともわからない。
キャバ嬢にハマったロールパンナちゃんは、最後にあたしのことを「嫌いではないよ」と曖昧に慰めて、家を出ていった。
正しくは、兼ねてからあった新店舗を任される話がきちんと動き出し、喜ばしい仕事の成功としてあたしの元を予定どおりに去っていっただけだ。
間違いなく時間は経っている。
残り時間はあとどのくらい?
あたしにも諦められない夢がある。いつかは、あたしのほうから去らなければいけない。
あたしがひとり残された店舗からロールパンナちゃんの新しい店舗まで、こちらも電車で片道2時間ほどかかるが、あたしは懲りずに通っている。自分でもびっくりするが、こんなに時間や体力に余裕がないのにも関わらず週に一度は必ず通っている。溜まった家事や仕事の関係の雑用のために。交通費だってバカにならない。
でもロールパンナちゃんもキツそうだった。
ロールパンナちゃんの赤いこころはいまあたしには見えない。余裕が無くなって青くならざるを得ないつらさが、あたしにはとても哀しく見えた。でも赤も青もどちらも、ロールパンナちゃんなのだ。あたしはその赤いところに惹かれて一緒にいることを選んで、青いところまでどうしようもなく愛おしく感じるようになってしまったよ。
これがただの執着だったらどうしよう。
ロールパンナちゃんの青につられてあたしまで青くなってしまうことがありませんように。あなたの青さを、燃えるような赤さで見守って、あなたが赤に還ってこられた日には、一緒にいっとうの真っ赤をさらけだして、青さまで全て赤にしてしまいたいね。あなただけでなく、世界のすべてをいろんな赤にしたいんだ、あたしのゆめはそういうことだよ。ずっと赤でいるから、あなたも赤に戻ってきてね。
いつかは。
♥️
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mashiroyami · 6 years
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Page 30 : 賭博
 陽は完全に山の向こうへと落ちて、辺りは暗闇に包まれている。市街地はまだ賑わっているだろうが、店じまいをしたオーバン家の前は夜の沈黙を保っていた。  オーバン家の二階の端に明かりが点いている。アランの自室でありクロが寝泊まりしている部屋だ。先日電気が点かなくなっていた点をエリアに指摘され、換えたばかりのところであった。  ラーナーとアランが帰ってきてから数時間後、夕暮れ時にクロは帰ってきた。それからまた時間は経ち、部屋にはクロとアランの姿がある。 「本当に身体は大丈夫なのかよ」  床に乱雑に置いてあった本を手に取っては本棚に戻しつつアランはクロに声をかける。  ああ、とクロは頷く。そしてこれ見よがしに十冊以上の分厚い本を一気に持ち上げてみせ、アランの元へと持っていく。それを見たアランは複雑に顔をしかめ、溜息をついてからその本を棚に戻していく。  足の踏み場も無かったこの部屋も漸く本来の姿が見え始めているが、部屋全体に埃が撒き上がっていた。窓を開けているものの空気の循環は悪く、部屋にいるだけで鼻がむず痒くなりそうなものであった。  クロは圧迫した本棚の全貌を見やる。高さは揃っておらず、どれもこれも分厚く背表紙を見るだけで難解だと解り、クロには手に取る気も浮かばない。内容は様々だが根本は大して変わらない。  アランはガストンを師匠と呼び、彼の元で薬学を学んでいる。  将来はその道に進みたいと語る。  一見すれば家族のように親しんでいるオーバン夫婦とアランだが、実際のところ彼等に血の繋がりは殆ど無い。遠い親戚同士の関係である。それをクロは知った時ひどく驚いたものだった。言われてみれば確かに顔に似通ったものはないが、纏う雰囲気が家族といえるそれだったのだ。  本来医療系の技術を学ぼうと思うなら大きな学校に通うものだがアランには金が無く、今だってアルバイトをしてぎりぎり繋いでいるようなものだ。アルバイトの金は殆ど本などの勉強のために回し、一部はオーバン家に納めている。朝は早く昼間はこの薬屋で働き夜はバイト。間の時間を使って勉強。身体は大丈夫かと尋ねるともう慣れたといつも笑ってみせる。それがアランだった。  クロは身体をぐっと伸ばすと口を開いた。 「これだけ手伝えば充分だろ。俺はそろそろ行く」  本棚に入りきらない専門書を床に重ねながら、アランは顔を顰めた。 「本気かよやめとけ。俺は別にどうでもいいけどな途中でガタがきてその隙にボッコボコに殴られたらラナちゃんは泣くぞ。別に今日じゃなくたっていいだろ。俺は別にお前がどうなろうと自業自得だから知ったことじゃねえけどまだ完全に身体が回復したわけじゃねえのにハードなことする必要はねえっていうかハードなことすんじゃねえ馬鹿野郎」 「もうこれ以上ここに長居するわけにはいかない。さっさと出ていく」 「お前なあ」  呆れた声をあげたアランは持っていた本を机の上に置き、机上に置いたままになっているノートを開き、挟んでいた一枚のメモ用紙を取り出す。それを渋々といったように差し出し、訝しげにクロは受け取る。 「前に行ってた所とは別の場所だ。聞けばあそこは潰れたらしい。適当に詮索してみたらその手に詳しいお客さんが居てな。あっさり教えてくれたよ」 「いつも思うけど」クロは呆れ混じりの息をつく。「上手いよな、そういうの。ただのコーヒーハウスだろ」 「まっ神様が俺に授けてくれた唯一の才能ってやつかねえ。別にそんなん必要ねえんだけど」 「自分で言うな」  メモ用紙を乱暴にズボンのポケットにしまうと、部屋の角に置いてあるクローゼットを開き中にかけてある黒いニット帽を取り出しそれを被る。  アランは引き出しを開き小さな箱を取り出すとクロに差し出した。途端クロは露骨に嫌悪感を表情に出す。 「これは嫌いだ」  ぽつりと呟いて乱暴に取る。渋々机の上に置いてあった伏せてある鏡を立てると、箱を開けると、小さな丸いパックがいくつか入っていて、そのうちの一つを開けるとコンタクトレンズが入っていた。 「さっさとやれ」  暫し渋っていたところを横からからかい気味に指摘され、意を決したように指で左目を大きく見開き、そこにそっとレンズを乗せるように装着し、目を細めた。鏡に映る瞳は深緑から黒色へと変貌していた。同じ要領で右目にも付けて、鏡を再び伏せるとアランの方を見る。アランは椅子に座りにやけながら見物していた。 「いつ見てもおもしれえなカラコン」 「俺は嫌いだ。邪魔でしかない」 「緑の髪に緑の目なんて珍しすぎて目立つんだから一晩ぐらい我慢しろ」 「分かってる」  クロが向かおうとしている先は表立って口に出来ない場所だった。加えて、敵を作りやすいクロに嘗て変装を提案したのはアランだった。安直だがそれなりに効果はあるようだった。  クロは足元に置いていた自分の鞄を背負う。その後先程アランから受け取ったメモを取り出し目的地を再確認する。ここからさほど遠い場所ではない、市街地の端の方にある。少し人通りがありそうだが中心街に比べればなんてこともないだろう。それをまたしまい、今度はベルトに着けているポーチと、二つのモンスターボールを確認する。 「アメモースはちゃんと回収したか」 「ああ。こいつまたコイビトの所へ行ってた。探すのに苦労させられる」 「ポニータも今はボールに入れてるんだろ」 「ああ」  クロは話しながら二つのボールを手元で遊ぶように投げる。数秒後には飽きたように元の場所に戻した。 「おいクロ」  半ば怒っているような、或いは気だるそうな声でクロを呼ぶ。  振り向いたクロの表情は迷惑そうに歪んでいた。 「ラナちゃんにここに残れって言ったんだって? お前馬鹿だな」  思ってもいなかった話題が飛び出してきてクロは身体を固めた。  普段は口早に喋るアランだが、溜息を吐くようにゆっくりと話し始める。 「仮に、もし、万が一ラナちゃんがここに残ることがあった時、ヤバい奴が来たら誰がラナちゃんを守れるんだよ。誰も守れねえ。この家にポケモンはいねえしお前みたいに変な力があるわけじゃねえし、ごく普通の一般家庭なんだよ」  諭すような言い方でアランは話しながら、椅子を立ち上がる。殆ど同じ高さの目線がぶつかった。強く鋭い視線に思わずクロはたじろぐ。  クロは過去の話を掘り起こされるのは苦手だった。特にこの手の話題は、罪悪感に苛まれ言葉が出なくなる。  弱みを握るようだがチャンスだとアランは確信した。 「詳しくは話を聞いていないけれどあの子も何か事情があるんだろ」  黒い視線が上がる。 「先に言っておくがお前と違って厄介者払いをしたいつもりは少しもねえよ。まあお前も本心ではどう思っているか知らねえけど」  一呼吸を置いて��腰に手を置いた。 「仲直りしてくれ」 「……」 「頼むから、仲直りしてくれ」  クロを抑え込もうとしているように強く圧力をかける。対してクロは下を虚ろに見つめる。冷たい沈黙が流れ、アランは返事を待つ。しかし一向に重い口が開きそうな気配は現れず、時を刻む時計の音が部屋に異様なまでに鳴り響く。  どれだけ時間が経っても均衡を保ったままなので、待ちきれなくなったアランは机を拳で叩いて沈黙を突き破った。クロは驚きに肩を震わせた。 「明日の朝、近くで休日にやる市場がある」  唐突なことにクロは顔を顰めるが、すぐに何を示しているのか理解した。以前自ら赴いたこともある。朝にも関わらず多くの人で賑わい、人混みが苦手なクロは例によらず嫌いな催しだった。 「そこで一度話せ。ラナちゃんにももう話はつけてある。ちゃんと向き合って、今後どうするかは二人で決めろ。勝手にお前が決めていいことじゃない。そんなの当たり前のことだろうが」  気持ちの高潮を無理矢理押さえつけて静かに怒りを込めているアランをクロはようやく再び見た。  すぐに返事をすることはまたもできず、暫し熟考する。いや、クロの頭の中は浮遊しているような状態で深く考えてはいなかった。早くこの部屋を飛び出してしまいたかった。  クロはアランに背を向けた。 「考えとく」  後ろめたさを含んだ呟きを残して、クロは窓枠に手をかけたかと思うと開かれた窓から外へと飛び出した。 「おいっ」  アランは血相を変え窓に駆け寄る。  下を覗き込むと何事もなかったようにクロは着地し、軽く服をはた��ている始末だった。アランは胸を撫でおろすが、苦々しげにクロを睨む。クロは一瞬二階を見上げたが、すぐに翻し歩き始めた。  アランはその場に弱々しくしゃがみ込み窓から夜空を眺める。  よく目を凝らした時、ふと星が綺麗な夜だと気が付いた。濃厚な暗闇は瞬く光の存在を際立たせる。夜風も穏やかで過ごしやすい気温には、夏が過ぎつつあるどこか侘びしい気配を感じさせた。  時間は確実に進み、季節は巡っている。当たり前のことだ。  本当に、当たり前の事だ。
 *
 トレアス市街地までくだり、坂の下の郊外へと抜ける。涼しい風から逃げるように黒い上着のポケットに手を入れて、クロは目的地を見渡す。  耳に入ってくるのは籠った打撃音。荒々しさの中に混じる歓喜と怒号の叫び。熱狂的な空気がじんじんと伝わってくるようだ。尤も、敏感なクロの耳だから聞こえてくる音なのだけれど。  少し広めの道に所狭しと並ぶ廃墟のような建物。実際殆ど廃墟だが、その中で声が聞こえてくるのは只一つ、クロは迷わずそこへ歩いていく。目的の建物は見上げれば三階建て程度のものだ。一階の鉄の扉の傍には金髪の柄の悪い男の若者が立っている。近くに寄るほど感じる、鼻につく煙草の匂いが男から発せられており、鋭い目つきでクロを睨みつける。 「おい」  無視をして平然と横をすり抜けようとしたところ、声をかけられクロは仕方がなく男に目を向ける。クロよりも身長は二十センチ程高いか、傍から見れば大人と子供で、少々滑稽なものだった。 「ここはガキが来るとこじゃねえ」  典型的な脅し文句とは裏腹にその声に気迫は無く、むしろ気怠そうな雰囲気すら漂わせていた。 「知ってる。だから来た。ちょっと荒稼ぎに」  動じず、むしろ不敵な笑みを口元に浮かべたクロの顔を男性はじっと見つめると、その後喉の奥で押し殺すように笑い始めた。そして無造作にポケットから煙草を出した。 「お前みたいなのは相手になんねえ。いや、相手にすらしてもらえねえぞ」 「ポケモンさえ持っていれば問題無いはずだ」 「ただのカモだな」 「それはどうかな」  男は煙草にライターで火をつけて口に啣え、クロに向けて吐き出した。匂いには慣れているが好ましいものではなく、クロは顔を顰めたくなったがそこはぐっと我慢し表情を保つ。  クロは扉に手をかける。一度引いてみるがどうも逆だったようで、すぐに押す。重たい扉は石の塊のようだ。体重を前にかけると隙間ができ、先程から鼓膜を僅かに掻く歓声が大きくなった。 「さっさと入れガキ」  言われなくとも。  男の言葉を流し、室内へと足を踏み入れた。  扉の向こうは狭く、そして古い。埃が宙を舞っているのか鼻が少しだけ騒ぐのをクロは感じた。  後ろ手に扉を閉め、声の在りかを探すようにクロは辺りを見回した。ほぼ真っ暗に等しいが窓の外から差し込む月光で辛うじて障害物の所在は感知できる。と、クロは正面二メートルほどの部屋の右端に地下へと続く階段を発見した。  まっすぐにそこへ向かい階段下を見下ろす。暗くてよく見えない。何段あるかすらも判別できず、自然と息を止めながら探る様に一段一段慎重に降りていく。それは思っていた以上に長い長い階段だった。が、そのうちに漸く地下の間へと辿りつく。階段を降り切った所には扉があり、僅かな隙間から細い光が零れている。そして耳に障る歓声が、目的地であると物語った。  クロはドアノブをそっと捻る。隙間が大きくなった瞬間防音性の高い扉に守られてた声が増し空気がびりびりと伝わって、酔ったように頭が揺れた。  そこはこれまでの鬱蒼とした道のりからは想像できないほどの広いフィールドが広がっていた。  天井の高さは今まで降りてきた階段の段数の多さを納得させる。面積もそこそこな広さで、そこに人がざっと数えて三十人ほど。そしてやはり目についたのは、その部屋の大部分を占める、ポケモンバトルフィールドーーポケモン同士の戦闘だ。今戦っているのは炎を体現したようなブーバーンと全身が眩しい黄色の刺で覆われているサンダース。が、優勢なのはブーバーンで、サンダースは必死に立っているがその足は震えていた。痛みが酷いのだろう、前足からは血が流れている。 「とどめだ、火炎放射!」  嬉々とした野太い声が響き、その瞬間バトルフィールドにいるブーバーンの口が大きく開くと、次瞬、炎の柱が噴出、轟音を立ててサンダースに突き刺さる。  クロはその戦いぶりを傍観する。  サンダースは悲鳴を上げて力強い炎に押されるがままに吹っ飛び、壁に叩きつけられた。サンダースのトレーナーが唖然とする。全身が焼けたサンダースは力無く床に崩れ落ち、そのまま起きあがれなくなった。 「これで九連勝だ!」 「くそっ」  くっきりと分かれた両者の顔色。  場に出ていたポケモンがそれぞれボールに戻されると、フィールドの傍に立っている、周りとは一目置いたような小奇麗なスーツに身を包んだ男性が動く。彼の周りにある机の上には金の札が積まれていた。二つに分けていたそれらを一つにまとめる。  ここは賭博場。ポケモンバトルの違法闘技場だ。  この国アーレイスを含む世界でポケモンバトルは基本的にスポーツとして扱われている。そして、金銭が関わることは基本的に禁止されている。勿論プロトレーナーが参加する公式大会になれば上位選手に賞金が贈られるが、賭博などもっての外である。今まで同じようなことで検挙され潰れたスタジアムの例は後を絶たないが、無くならないのが実情であり、実際こうして目の前で行われている。  けれどクロにとってもこれは大切な収入源だった。旅をするのに当然金はかかる。違法の賭博行為はうまくいけば大きな収入を得られる。いちゃもんを付けられることはあれど、実力が物言う世界だというところも分かり易くて良い。クロの目には魅力に映り、ずっとそうして稼ぎながら旅を続けてきた。今更禁止行為に参加するのに後ろめたさなど感じていない。  ブーバーンの使い手がスーツの男性の元に寄り自分の手に入れた金を目で数え笑っている。その間にクロはちらりと右に視線を流して一番近くにいた小太りの若い男の元に寄る。  足音に気付いた彼はクロを見た瞬間まずぎょっと目を見開く。 「ここルールとかあるの?」  構うこと無くクロはさらりと話しかける。 「は?」 「だからここルールはあるの。何匹使うのか、シングルなのかダブルなのか」  呆気にとられたように男はクロをじっと見つめる。  クロの苛立ちがつのる。どこに行っても大抵最初はこの反応だ。大人達に混じって臨む小さく細い姿は滑稽で、まず驚かれ馬鹿にされる。その後実力で黙らせる他ないのだけれど、こういう状況になる度に気分は淀む。 「別に無い。バトルする度にその場で決める……お前戦うつもりか?」 「そうじゃなかったらここに来るわけないだろ」 「まじかよ。ははは! おい、ガキが参戦しに来たぜえ!」  小太りの男は腹から叫んだ。その声は室内に響き渡り、部屋にいる人間の耳に跳び込む。皆クロを見た途端にどよめき、そして笑いが誰かから起こると連鎖するように部屋中に嘲笑の声が満ちた。  流石にクロは眉をひそめる。 「ガキのくせにポケモン持ってるとは生意気だな。それにここで賭けれるだけ金があるのか? ママはどうした?」  わざとらしく顔を覗き込んで小馬鹿にする男をクロは不快気に睨み付け、頭痛でも起きそうな居心地の悪い声の中で一つボールを出した。誰かが甲高い口笛を吹いてみせる。歓迎ではないのは承知の上だ。  クロはフィールドの側に座っているスーツの男の元に向かう。主催であろうスーツの男はクロを不審そうな視線でとらえ、右手をクロに差し出す。何を要求しているかは容易に想像がつく。  黒い上着のポケットに手を入れて、適当に探り当てた枚数の金をクロは机に叩きつけた。その瞬間スーツの男と、傍にいた先程戦闘を終えたブーバーンのトレーナーは目を疑った。飛び出してきた金額をスーツの男は慌てるように数え、確認した後にクロを見やる。クロの表情は至って平常である。 「オイオイ、無駄に持ってやがんなあ」  ブーバーンのトレーナーは顔を引き攣らせていた。 「相手しろよ。一対一?」  クロは口元で笑いながら尋ねる。場の人間がまず耳を疑ったように空気が冷えた直後、野太い歓声に沸いた。  突然跳びこんできた挑戦者はまだ随分若い少年、迎え撃つは現在九連勝中の男。赤子を捻り潰すようなショーが始まると、誰もがにやにやと身を乗り出した。 「いいや二匹だ。お前が一匹しか持ってないなら話は別だがな」 「問題無い。じゃあ二対二で」  さらりと流したクロは勝手に自分の立ち位置へと向かう。  トレーナーの立つ場所にクロはやってきて、深呼吸をした。傍観するようにフィールドを広い視野で捉える。目の前の線で区切られた空間は神聖な場所であるかのように誰もいない。もう間もなく戦闘が始まる。余計なことはもう考えない。心に沸き立ってくるのは興奮、衝動。彼を掻き立てる。  相手も位置につくと、にやりと笑いボールを投げた。クロはその途端眉間に皺を寄せる。  ボールから飛び出してきたのはブーバーンではない。白くふさふさとした大量の毛が顔を包み、手は大きな葉の団扇であるダーテングだ。大きな口から威勢のよい叫びを上げ、その瞬間一気に会場のボルテージは上がる。 「ハンデだガキ、先に出してやるよ!」  ハンデという部分を異様に強調させ、歓声の中でもクロに届くように叫ぶ。  先程までのクロの興奮はどこかへ消え失せ、代わりに苛立ちが募る。力強く構えるダーテングも見るからによく鍛えられているが、一番の主力はブーバーンだろう。そのうえハンデとまで言われれば、挑発と解っていても腹立たしい。  クロは先に出していたボールをしまい、別のものを取り出し、上へ放り投げた。中から光が飛び出し出てきたのはアメモースだ。  アメモースが出現した瞬間、目玉のような触覚に気圧されたのかダーテングは怯む。  が、当のアメモースは威嚇などするつもりはなく、威嚇どころか戦闘に興味がなさそうに項垂れている。 「アメモース、面倒臭がるな! 今日が終われば暫く戦闘には出さないから」  恨むような目つきで振り返ってきたアメモースにクロは声をかけた。  クロのアメモースは戦闘をあまり好まない。好戦的だった時期もあったが今はまるで違う。原因はクロのアメモースの恋人ならぬ恋ポケモンである、トレアスに住む野生のアメモースだ。最初に出会った時に何故か喧嘩になり戦闘になったが意外な強さに負けてしまい、それ以来自信を失ったのか彼女にある種毒されたのか、戦闘を面倒臭がるように避けるようになった。酷い時には戦闘を放棄してどこかへ飛んで行ってしまうこともある。  アメモースは溜め息をついた。やる気がまるで感じられない。きっと戦闘本番になれば気合も入るだろうという期待を持ちながらもクロは肩を落とす。  タイプだけを見ればアメモースが優勢だ。しかし、ギャラリーからは虫タイプを持つアメモースには見下したような台詞が飛び出す。もしもこの場に虫ポケモンを好む子供でもいれば、虫を馬鹿にするな! と怒りを叫ぶだろう。  視線を外に向ければ場外でも賭けが行われているようだ。レートなど見ずとも想像がつく。外野など知ったことではない。クロは目の前の戦闘に集中する。  審判も兼ねているのだろう、スーツの男性が右手を挙げた。 「ダーテング、猫騙し!」  相手がそう叫んだのとほぼ同時にダーテングは強く地を蹴るとあっという間にアメモースの元に跳びかかり、二つの葉の団扇を思いっきり叩き合わせた。その瞬間何かが張り裂けるような凄まじい音が弾け、大きな風が起こった。アメモースは咄嗟に対応できず、風圧に耐えかね上空へ吹き飛ばされる。 「触覚を広げろアメモース!」  クロの命令に、アメモースは目を見開いた。目玉模様の触覚を広げ、空中でバランスをとる。風も和らぎ壁にぶつかるという事態は回避する。  アメモースは四つの翅を忙しなく羽ばたかせ上空へと舞い上がった。その瞳に強い光が宿る。猫騙しで目が覚め、眠っていた戦闘本能が刺激されたようだ。したり顔でクロは高々と指示を続ける。 「蝶の舞!」  クロの宣言と共にアメモースは空中で回転する。羽と触覚が風に流れるように揺れ、さながらゆったりと踊っているようだ。そしてその舞は少しずつ速くなっていきながらアメモースは地上へ飛来する。 「騙まし討ち!」  ダーテングは一度手の団扇で大きな風を起こしアメモースの飛翔のバランスを崩す。そして向かってくるアメモースと対峙するように跳び上がった。アメモースの軌道とはずれ、体を捻る。右手を使った裏拳を狙う。 「回転してエアスラッシュ!」  扇子の風で傾いた体を無理矢理捻り、触覚と翅が大きく羽ばたいた。飛び出すはダーテングの作り出す、広範囲に放射する風とは異なり、細かく鋭い風の刃。それが四方八方に走った。当然ダーテングは避けられずそれを食らう。が、もう既にアメモースに接近していたため、風の刃を振り切るようにアメモースの小さな体を右手の裏で殴った。体重の軽いアメモースは横方向へ真っ直ぐ飛ばされ、壁に激突した。一方のダーテングも地にうまく着地できず転��り落ちる。  エアスラッシュによって体に切り傷ができたダーテングはよろけながら立ち上がる。ダーテングのトレーナーは眉を顰める。彼の想像よりダメージは大きい。  アメモースは壁を踏み台に再び飛翔する。まだ充分戦えると見極めた主は、次の指示を繰り出す。 「もう一度蝶の舞だ!」  空中を乱舞するように飛ぶ。くるくると廻ったり触覚を大きく広げたりしながら、また加速していく。目の錯覚か、アメモースの周りを小さな光の粉が舞っているかのようだ。洗練された美は柄の悪い歓声の中では不釣り合いだが、確実にアメモースの能力は増している。 「痺れ粉!」  クロは叫んだ。途端アメモースは舞を止め、素早く触覚を一度畳んだ後に花開くように広げた。金色に煌く粉が精製され、空中を飛び回りそれが地上へと粉吹雪のように降り注ぐ。 「返してやれ! 風を起こせ!」 「こっちもだ、銀色の風!」  トレーナーの指示通り、ダーテングは腕を大きく広げたが直後、渾身の力で扇子を叩く。瞬間、轟音と共に凄まじい風が爆発した。  負けじとアメモースも痺れ粉を降らせる体勢から一転、触覚と翅を羽ばたかせれば、銀色の輝きを携えた風が巻き起こる。  両者の作り出した風が激突し、部屋中を巻き込む大きな風がまるで荒れ狂う嵐のように暴れ回った。辺りから悲鳴が飛ぶ。クロは帽子を押さえこみながら、風の撃ち合いに目を凝らす。  痺れ粉による金色と風の銀色とが交じり合い、それが乱舞する。が、ダーテングの風よりもアメモースによる銀色の風の方が強い。銀の光がそれを物語るように部屋を掻き毟る。  少し風も落ち着き始めた頃、クロは上空を見上げた。アメモースは大きな風のエネルギーに激しく煽られていたが体勢を保っている。耐久力もあげる蝶の舞の効果が表れていた。  対するダーテングは風に押され、手を地に付け堪えている。痺れ粉は猛烈な風の合戦に煽られ効果が殆ど薄れてしまったが、銀色の風は効果的に刺さったようだ。 「電光石火!」  クロが叫んだ瞬間アメモースはまだ暴れている風の中をまっすぐ突き進んだ。そのスピードは目にも留まらない。距離があったにもかかわらず一気に間合いを詰め、ダーテングに激突した。出発点が高い位置であることにスピードが上乗せされ、ダーテングに重く鋭い攻撃が圧し掛かる。その大きな身体がふらりと揺れた。  音がやんだ。  あれだけ鳴り響いていた歓声も無い。  誰も息を呑んで声を発せずにいた。  アメモースが軽く羽ばたいてダーテングを見下ろす。土煙が漂っている中で、ダーテングは何とか立ちあがろうと震えるが、もう限界であることは誰の目にも明白である。  そして沈黙の中で、重い石が地上に落とされたような太い音が響いた。  ダーテングは立つ力すらも失い、その場に伏した。  予想もしていなかった事態に、周囲は少しずつざわつき始めた。ダーテングのトレーナーは自分の目を疑いしばらく立ち尽くしていた。  初め嘗めてかかられるのは、ある種、自分が幼いが故のアドバンテージだろう。実力で押し黙らせた、この瞬間はいつ経験しても気分が良くなる。 「早く戻しなよ。使用ポケモンは二匹だろう」  クロは小さな笑窪を作って言い放った。その言葉で夢から帰ってきたように相手ははっとすると、赤く顔を歪ませてダーテングをボールに戻す。 「調子に乗るな! いけ、ブーバーンッ」  投げられたボールから再び姿を現したブーバーン。腕の先から炎が飛びだし、その口から吐く息すら燃えている。先程サンダースを落とした破壊力は言うまでも無い。さすがにクロは身を固くする。  アメモースはブーバーンの全身から発する熱を嫌がるように地上を離れた。  先程とは一転、不利なのはアメモース。タイプの相性は勿論、アメモースはダーテングとの戦闘で体力を削られている。 「煙幕」  指を突き出した。ブーバーンは体勢を低くして腕を前に突き出した。砲台のような腕の先からは炎の代わりに黒い煙が噴出した。一瞬でブーバーンは姿を眩まし、数秒後には視界が完全に黒に遮られる。 「アメモース、煙幕を吹き飛ばせ!」  アメモースの姿すらクロからは全く見えないが、アメモースの耳にはクロの命令が届いた。羽根を素早く羽ばたかせ一気に煙幕を一掃する。  が、煙幕を払った途端にブーバーンがその中から跳び出してきた。アメモースの起こす風など物ともせず、巨体からは想像できない脅威的なジャンプ力でアメモースまで肉薄した。  大きなその腕をブーバーンは振りあげた。アメモースは羽ばたきを止め、咄嗟に避けようとし、しかし逃さずその重い腕が振り下ろされる。次の瞬間、僅かに急所はかわしたアメモースだったが大きな触覚は捉えられ、地上へと一気に叩きつけられた。クロは素早く腰に手を回し二つ目のボールを取りだした。 「決めろ大文字!」 「バトンタッチ!」  二人の声が重なる。アメモースは目を見開くと痺れ、痛む身体を無理矢理動かし飛んだ。クロは開閉スイッチを押した二つのボールを突き出す。片方からは白い光が、もう片方からは赤い光が飛び出した。アメモースは真っ直ぐに赤い光へ飛び込み包まれると、そのスピードのまま白い光に一瞬絡みついた。混じり合った二つの光は再び分かれ、アメモースはボールの中へ。代わりにフィールドに姿を現したのはポニータだ。  地上に着地したブーバーンは充填を完了させ、片腕から炎が猛烈な勢いで放射された。炎は途中で五つの方向へ分かれ、それは正に大の文字を模した炎。  ポニータは足に力を入れた。瞬間、身体が震える地響きを伴った大文字がポニータに直撃した。ポニータは炎に包まれ、姿が見えなくなる。しかしクロは慌てる様子も無く冷静に行方を見つめた。  数秒後、炎が吸い込まれるように急速に消えていく。相手は息を呑んだ。ポニータは攻撃のダメージを全く受けていないのかぴんとしていて、それどころか背中に燃え盛る炎は一層大きくなり輝いているように見える。 「特性貰い火だ」ぼそりと呟いた後、声を張り上げた。「煉獄!」  ポニータは走り出した、かと思えば一瞬でブーバーンの元に辿りついていた。元々速いが、バトンタッチによってアメモースの蝶の舞の効果が継承され、スピードが上乗せされている。  反応しきれないブーバーン。ポニータからすればブーバーンの動きは手を取る様に分かった。  ポニータの背の炎が暴れ、口の中からオレンジ色の炎が飛びだした。それはブーバーンを囲うようにカーブがかかる。炎が一気にブーバーンに跳びかかった。それを払うようにブーバーンは腕を振った。 「そんなものがなんだ! ブーバーン、雷パンチ!」  ブーバーンの右腕に電気が走った。直後一気に増幅された電気エネルギーを腕に纏い、接近しているポニータに殴りかかった。咄嗟にポニータは顔を横に振り避けた。拳は止まらず地面へと激突しひびが入った。  クロは表情を僅かに歪ませる。  電気を装填しているのは右腕だけでは無かった。攻撃の最中に左腕も電気を纏い始め、今、充電が完了する。素早くポニータに振り下ろした。ポニータは今度は落ち着いて後ろに軽く跳んで避ける。しかしブーバーンの攻撃は止まらず、ひたすらポニータは避け、後方へと下がっていく。  クロは目を凝らし、ブーバーンの様子を見守る。その時、ブーバーンの尾が不自然に鈍く光るのが目に入った。 「アイアンテール!」  相手の声が響いた。その指示を予期していたようにブーバーンは左のパンチを打った直後流れるように右に身体を捻り、硬化した尻尾を大きく振りかぶる。 「高速移動、左!」  クロの指示は俊敏だった。そしてそれに応えるポニータは更に素早い。  尻尾が振られなかった方へポニータは一瞬で駆けるとすぐに静止。丁度ブーバーンも振り返ったその瞬間、ポニータは後ろの足を高く蹴りあげた。鍛えられた力強い後ろ足が捉えたのはブーバーンの顔面。足が減り込み、直後まるで豆が弾かれたかのように巨体が転がっていった。ぎりぎりフィールドの枠で止まるが、その顔は歪んでいる。鼻血が止まらない上目も開けられてはいない。丈夫な足腰に加え、ポニータの蹄はダイヤモンド以上の硬さと言われている、その一撃は想像を絶するものがあるだろう。 「跳び跳ねる!」  ポニータは前足に力を入れた、かと思えば一気に跳び上がる。天井に迫り、黒く大きな瞳は遙か下の獲物を捉える。 「煙幕!」  咄嗟の指示にブーバーンは大きく息を吸い込むと、電気エネルギーを引っ込めた腕を伸ばし先から煙幕を噴き出した。あっという間にブーバーンの周りが目眩ましの黒煙で覆われる。  頂点に達したポニータは十数メートルの高度から煙幕の中へと急降下する。空気を切り裂いていくその速さは瞬く間に地上へと向かう。が、やはり煙幕に跳び込むのは不安か、軌道に僅かにブレがある。 「ブーバーンはまだ動いていない、そのまま行け!」  クロは助言するように叫ぶと、ポニータは迷いを振り切り底の見えない闇のような煙幕に突っ込む。刹���、強烈な鈍い音が炸裂した。  煙幕がポニータの軌道に沿って広がるように晴れると同時にポニータはブーバーンから間合いを取る。ブーバーンは相変わらず目を閉じたままその場に膝を付いていた。相手トレーナーは唖然とする。それは周囲の空気も同じであった。  痛烈な後ろ蹴りや飛び跳ねるの一撃に限らない、煉獄による、地味ではあるが塵の積もるようなダメージの蓄積がボディブローのように効いていた。  ブーバーンがまだ動こうと震えながら立ち上がる様子を見ると、右手を上げた。 「とどめだ」 「雷パンチで応戦だ!」 「遅い!」  火馬は高速移動と体当たりを掛け合わせ神速の如き目にも留まらぬ速さで間合いを詰め、ブーバーンが攻撃の準備を始める暇も与えず、激突した。ブーバーンは壁に吹っ飛ばされ、激しい打撃音が部屋中に地均しのように響いた。  誰もが目を見張る中、そのまま力無く頭をうなだれる。  気絶した様子をじっくりと見極めたスーツの男性は、腕を上げクロの勝利を宣告した。  室内に重い沈黙が流れる。  緊張が解け、ポニータはクロの元に駆け寄った。クロは優しく微笑んで受け入れると、その白い身体をそっと撫でる。そしてその場を離れ、スーツの男性がいる所へと向かう。相手は金をまとめるとクロに差し出した。が、クロはそれを手を振って拒む。 「それ全部もう一回出す」  途端、周囲がざわつきを取り戻す。明らかに動揺した様子で、それぞれ顔を見合わせている。 「次来いよ。俺に勝てば、この金全部手に入る」  騒いでいる室内によく通る大きな声でクロは言い放つ。その口元には不敵な笑みが含まれていた。 < index >
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