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yonoha-bykanno · 4 years
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No.1 / イヤリング
 青い鳥はね、本当にいるのよ。、だってほら!みて、羽を拾ったの。綺麗でしょう、綺麗な、青い、羽。
 彼女はそう言って、羽を恭しくポケットから取り出しました。綺麗な、青い、羽。まるで作り物のように。こんなに美しい羽を無くしたら、鳥は飛べないのではないだろうかと思えるくらい、綺麗な、青い、羽。
 これで耳飾りを作ってくださらない? そうしたら、私なんだか飛べる気がするのよ。そうして、“しやわせ”をね、探しに行ける気がするの。
 彼女はそう言って、小銭を恭しくポケットから取り出しました。その後、彼女がこの店に来ることはありませんでした。きっと彼女なりの幸せ……“しやわせ”を見つけたのだと思います。
 その時の耳飾りはまだ窓際のショーウィンドウに飾ってありますが、彼女の拾ったのによく似た「作り物の」綺麗な、青い、羽を仕入れたので、イヤリングを仕立てました。彼女がこれを見て、自分の拾った“しやわせ”を思い出せるように。
アクセサリーと物語 / yonoha
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yonoha-bykanno · 4 years
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オリジナルブランドのアクセサリーをつくれるアプリ #monomy #モノミー
こちらでyonohaというアクセサリーブランドを立ち上げました。
世界の端っこを切り売りしながら、夜はいっそう更けていく。
アクセサリーと物語のセット販売をコンセプトにゆるゆる作品を構想します。
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yonoha-bykanno · 4 years
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 日常の染みついた直方体に鍵をかけ、チカチカと蛾と踊る安い蛍光灯から逃げるようにアパートの階段を降りた。よく冷やされた空気を時折車が乱暴にかき混ぜていく。何層にも折り重なった薄い夜の帳がゆっくりと肺を満たす。耳元でアクセサリーがカラリと揺れた。最初はほんの少し耳障りだと感じたその音が、自分はここに居るのだと教えてくれた気がした。
 世界の端を大事に抱えて、それを自分のものだと主張して、私は息をしていた。していなければならなかった。
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