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#振袖赤
locoluqua · 1 year
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#locoluqua#ロコルクア#赤穂市#相生市#たつの市#佐用町#宍粟市#成人式#美容室#美容院#おめでとう#振袖#着付け https://www.instagram.com/p/CnLGPrvyUJp/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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kohanakonohana · 4 months
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せっかく毎日縞を作っておりますし、織れる数にも限界がありますので、プリント布を作ってみることにしました。気持ちの明るくなれそうな赤の縞を選んで、風呂敷にしてみました。
I'm going to treat the printed furoshiki with my original design because I make a stripe design every day...
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myscrap · 1 year
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ゆきやさんはTwitterを使っています: 「明けましておめでとうございます! 今年は赤振袖の凛ちゃん! https://t.co/i79f8Blul2」 / Twitter
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asagaquru · 1 year
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「この人、前好きだった人なんだよ。俺にしときなよって言ったのに振られちゃったんだよねー」とわたしと馴染みの店員に言い残し、トイレに行かれる。酔っていたはずなのに突然のことで指先から酔いが引いていく。店員が「言いたいことだけ言って、ルンルンでトイレ行っちゃいましたね」と笑っている。
元バイト先の数人で会うけど来ないかと誘われて向かう。なんとなく4人の最後に着きたくて、家で時間を潰してから向かう。お疲れー、とみんながこっちを向く。彼の声を聞いた瞬間に、この声が一番好きだったと全部思い出した。なんとなく目を見れない。ふたつ下の後輩を最後に、仲間内は全員社会人になってしまった。「前会った日から1年半も経っていないんだよ」といわれ、少し驚く。もっともっと昔の話かと思っていた。こうみんなが離れてしまっては、同じ札幌市内にいても凄まじいスピードで過去にされてしまう。だからこそ、こんな再会の場に呼んでくれるのがとても嬉しい。離れても好きな人たちのことは大切に、近くに思っていようと心に小さく誓った。
彼が「男なんてほおっておいたらどこかに行くよ」と言った。前後の話は覚えていないのに、かつて「待っているから」と言った過去の彼を思い出してしまう。「✳︎✳︎✳︎は変わらないね」って、君が好きだったわたしから今もわたし自身は変わらないよという言葉をモスコミュールで飲み流す。2件目のバーでもヘラヘラと話し続ける。後の2人も変わらないし、なんだかんだ幸せそうだった。その2人は明日朝から仕事だからと22時には帰って行く。明日のために今日を早上がりするくらい大人になったなと思い、見送る。
わたしのことを好きでいてくれた彼とふたりきりになる。彼は、この1年半で結婚してしまった。1歳下だし、当時23歳とかだったし、まさかわたしより先に結婚するとは思わなかった。左手の薬指にはシルバーのリングがちらついていたけれど、あまり見ないようにする。「この人、前好きだった人なんだよ。俺にしときなよって言ったのに振られちゃったんだよねー」とここで言われ、トイレから戻ってきた彼になんとか言おうとする。「きみがさ、結婚しちゃうってことはわたしとの結婚を諦めたってことだよ」と言うと、はははと笑っていた。リングの下の手首には、ふたりで小樽に行った時に買ったブレスレットをしていた。何も言わなかった。あの時わたしはオパールの指輪を見てたのを久しぶりに思い出した。買っておけばよかったと、ただそれだけ後悔する。
0時をすぎたあたりで解散。タクシーに乗り込む彼を見送る時に「またね」と袖を掴まれるけれどそれ以上は何もない。お互いにこの形でいいとわかっているからだ。結婚後の彼に会うのは今夜が始めてだった。正直、少し怖かったしどこか嫌だった。別れた後に「忘れた」と思い、彼に電話をかける。「もしもし?あのね、結婚おめでとう。ちゃんと言わなかったなって思って。わたしさー、ちゃんと✳︎✳︎✳︎くんのこと好きだったんだと思うよ」 どうしてまた涙ぐんでしまうのだろう。何に対しての涙なのだろう。きっとばれている。電話口で彼は笑っている。やっぱりその声が好きだ。ラインに「俺も好きだったんだよ」と来ていて、既読だけつける。これでいい。わたしがわがままして良いのはここまで。すすきのからタクシーを捕まえる気にもなれず、30分歩いて帰る。途中、雪の下の氷に足元を取られ、滑って転んで仰向けになる。背中がいたい。指先から赤く血が滲む。酔っていて痛みは感じない。大きくひとりで笑ってしまった。そのまま空を仰ぐ。降る雪が街灯の光を乱反射させ、空をサーモンピンクと薄紫を混ぜた色にさせる。雪国特有の闇色でない夜空だ。そこには月は光らず、ただただ綿雪がわたしの上に降ってくる。
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solitude-klang · 3 months
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" 埼玉乱舞 -SAITAMADANCE- Vol.01 "@越谷EASY GOINGS
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開場から開演まで爆寸みたいな感じでV系mixが流れている
覚えてるのだけ書くと
入った時かかってたのは手の鳴る方へ/アルルカン
埋葬/RAZOR
神歌/Phantasmagoria
V.I.P/NOCTURNAL BLOODLAST
迷彩/Sadie
鯖に乗って(RADICAL HYSTERIA)/BORN
朔/DIR EN GREY
君の子宮を触る/DEZERT
0/キズ
ザアザア前のDJ枠は知らない曲1曲もなかったからここ20年くらいバンギャし続けてる人なら1人でも体が勝手に振りをしてしまうくらいテンション上がる開演待ち
ステージはスクリーンで覆うスタイル
ザアザア
ステージに誰もいないままキズの0から暗転 感電のベース音が流れ始めたので手拍子をするフロア なかなか満員のお客さんに混じって亞んちゃんの金髪が
メンバーフロアから入場
(一葵さんだけステージ袖から現れてたと思う)
マイクにあり着くや否や今日一番かっこいいバンドザアザアです
ぬるいぬるい言われながら上下前後走らされ
全員左に寄ってください
ぬるいことしてんじゃねぇよ
誰の声かと思うくらい攻撃的な声色に軽率にときめいたけど一葵さんだったのかな 左に寄らない他バンギャさんをw強引に寄せて蜘蛛の糸
手扇子しながらようやくステージを見たら 黒いスーツに黒シャツなんだけどネクタイの柄がアメリカドル$…?もしかして4人で
お揃いのお土産買ってきたの??????
朗読は 冷熱 ジャケットの袖を肘下で捲ってベースを低くして弾く零夜さん(ゴクリ…
夕焼けは春さんのギター前振りで入るバージョン(良かった)
ただいまー おかえりー!
僕達あの アメリカ帰りなんで
まだ時差ボケしてるんだけど
帰りに お土産屋さんでこれ(ネクタイ)買ってきました
か わ い い(ネクタイがというよりその柄とお揃いにしちゃうこととそれを衣装にするということがかわいい)かわいいじゃねぇよ
アメリカで一体何がと思うほど いつになく強気で攻撃的で全員が見るからに自信に満ちていた
推しが良すぎたから今日はもうこれで帰りたいまであった
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色々な十字架
転換中に下手ギターの人がエフェクターボード高く掲げて見せてくれた(笑)
メンバーのヴィジュアルは思っていたほどピンクハレルヤではなく 普通のV系に見えないこともない 笑
上手ギターの人は技術面含めて見せ方が熟れてたように思うけど前盤普通のV系じゃないのかな
上手側の後ろの方に 白い布でちゃんとV系ぽく装飾されたスクリーンが設置されそこに歌詞(MVある曲はMV)が流れる
最初の曲は「近所の犬に勝手に名前を付けて呼んでそれを浸透させた」とかいう歌詞だった
小学校5年生くらいの男の子が言う下ネタがふんだんに盛り込まれた歌詞を 90年代V系に多い独特の歌い癖に乗せてw 声量なくはないし結構な高音が地声で出てたので真面目に練習したら普通に上手くなりそう
NoGoDのアトリアをちょっと歌ってたけどそっちのが上手いw
ドラムのdagakiさんとボーカルのtinkさん 埼玉の人らしく 越谷ではなく松伏町?の出身だとか
ベースのmisujiさんはどこの人かわからんけどdagakiさんが埼玉でのバイト経歴を発表し続けているのに突っ込みを入れ2人が張り合う流れに(無理やりw)
リズム隊がバトミントンのラケットを持って前へ出てきて同期に乗って演奏される曲があったけどこれといって決着はついていない模様
tink:終わりですって言って曲が終わった(笑)
テニプリのやつでした
( 'ᵕ' )
どんどんどんどん 応募して
何を?誰に?
( ◜-◝ )
今日のためにいっぱい曲作ってきたから
前からある 前からある 前からある
前からある曲やりますこれはちょっと
何を言ってるのかわからない系ボーカルさんのMCを幾度となく拾ってきた 経験値がまったく活かせないレベルの圧倒的何を言ってるのかわからない系ボーカル(笑) MCというかスタジオセッションの雑談みたいなノリで喋るんだけど先輩や女の子に可愛がられそうなタイプです 上ギとベースいなかったらまとまらんw
弦楽器隊は思ったより全然ちゃんと演奏してて(失礼w)ステージ慣れしている様子なんだけど ボーカルさんだけステージに立たない仕事を生業にしてる感ありました(ベーシストさんらしい ?)
白ミサっていうくらいだしもっとなんか祈りとかさせられるのかと思っていたので想像より普通のV系に近いという第一印象
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NoGoD前の転換はZOMBIEとかギルガメとかlynch.とか流れてた
NoGoD
楽器隊板付き 袖から赤いスーツに身を包んだ赤髪団長(かっこいい♡)
とはいえ1~2曲目知らなかったw これだけ行ってなかったら知らない曲やらなかったら逆に心配なので良かった
さっき ザアザアが… 越谷そんなもんかって言ってたけど…
いつもこんなんじゃないよな?今日いつも以上だよな?(そっちw)ここは埼玉じゃない
タイトル思い出せないけど体が振りを覚えていていやー懐かしいーと思ったのは愚蓮だった 少し前にBLAZEで見た時にもやってたな
タイトル思い出せないけど体が振りを覚えていて(コピペ)これなんだっけなって思ったのは球根だった
ギターソロ見応えやばい 前任も涼し顔して難解な曲を弾く人だったけど今の上手ギターも笑顔でとんでもねぇことやってる凄腕
越谷 俺の地元です 正確にいうと隣町の岩槻市なんだけど 最寄り駅はせんげん台
地名は漢字だけど電車の駅は平仮名のあのせんげん台です!
いつも浦和あたりで地元です!って言うのちょっとなんか 申し訳ない気持ちがあったんだけど 今日はいいよな 自信持って 越谷 地元です!
こんなに地元アピっといて
でも…実を言うと…今の住所は 東京都ですって言ってブーイング浴びてたw
言いたいこと全部短い時間に収めるようになっただけで喋る量は変わってないからMC半分以上端折りますけど若い頃渋谷の居酒屋でバイトしててせんげん台までの終電がないから店の締め作業に参加したことが無いって話も面白かった(笑)
団長ダンスって言うから乱知気でもやるのかと思って焦った 大サァカス 体が覚えてた(笑)(笑)
神風もカクセイも通ってた頃に出た曲で団長大好きすぎた時代の自分に戻ってしまうw凄まじい演奏力だし良い曲だな かっこいい
確実に笑わせるMCを挟みながらも後半に向けて盛り上がっていくムードを創るの��どこよりもプロ
Never fade awayのコーラス (合唱になったのこれだっけ?)感動しちゃったよ
ザアザアは 勢いがあって なんか 凄かった…対バンするのは久しぶりなんだけど ああゆうのいいなって思いましたって言ってた
色々な十字架についてはアトリアの話してたかなぁ 忘れちゃった
NoGoDはアンコールがノーゴッド!なんだよね 懐かしい
さっき ザアザアが 前後左右にすごい動かしてて 俺達もああゆうのやりたいなぁ?って思っちゃったから
NoGoDにもそういう曲があります(^ω^)
両手をくるんてして折り返す時にハートにする振りがあるけど 桃源郷へようこそのその部分は♡を逆さにした桃なんだよねw
曲終わってから 4/20にもここで埼玉乱舞?あるらしくて団長がDJとMCで出るとかって言ってた
バンド演奏終わってすぐDJブースからROCKET DIVE流れて来たの熱かったな
4/20のイベントはザアザアもまた出るのかなと思うようなこと言ってたけど(?)その日チッタのバンギャルフェス行こうと思ってるんだけど?w
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flamingo-rex · 4 months
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2024.02.06
小さい頃から、赤い羽根募金やTV番組の募金に
少ない小遣いを貯めて持って行ったり
献血とか出来る事はやっとけ!みたいな
育ち方をしたので、少なからず影響してるんだろうけど
仲間や知り合いが亡くなったりすると
多少なりに考えさせられるし、
幸い頑丈な身体に産んで貰ったので
使えるモンは使って貰えれば良いし
役立つモンなら、協力は惜しまないつもり
ヘアドネーションも、震災、豪雨災害ボランティアも
臓器提供も、骨髄バンクも、献血も
とりあえず、ワイの身体は使えるモンは使用してくれと
リストアップ登録してある
ゴチャゴチャ言う奴が居るのも知ってるけど
ゴチャゴチャ言わず、黙して行動してる奴等に
助けられてる事も事実。
袖振り合うも多生の縁
多様性を持ってしても、人と人は変わらない
袖振り合うも、触れ合うも、同義となり
多生の縁も、多生の縁も、多少の縁も
同音異義となり、現代では解釈されてる
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myonbl · 5 months
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2023年12月14日(木)
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私の職場(私立女子大学)では、今日から後期授業が13週目に入る。メールボックスに<紀要>の校正刷りが入っていた。9/1(金)の締切に何とか提出したものだが、ギリギリのやっつけ仕事、不満な点は多々あるが仕方ない。本にするためのメモだから活字にしておくことに意味があるのだ。ササッと作業してすぐに提出、これで年内の課題は<シラバス>の作成だけとなった。頑張れ、自分!
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5時起床。
日誌書く。
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朝食。
洗濯。
弁当*2。
プラゴミ、45L*1。
ツレアイの職場経由で出勤。
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順調に到着する。
換気してお茶を頂く。
木曜日1限は<共生社会と人権>、今日が13週目となる。直前に2名から体調不良で欠席とのメールが届く。今日のテーマは<雇用・職場での人権を考える>、ILO111号条約の解説、厚労省の資料を使って女性の働き方の変化、ハラスメントの実態調査などを紹介する。いささか準備不足で意を尽くせなかった、もう1週あるので来週は丁寧な振り返りをしなければ。
昨日の栄養学科の入力再試験を採点、結果を学生たちにメールで連絡する。再試験対象者15名のうち6名合格、9名(うち欠席4名)に再々試験を連絡する。
紀要の校正、不満を言えばきりが無いがそれも自業自得、さっさと済ませて提出する。
弁当を頂いてから退出する。
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順調に帰宅する。
『以文』66号(京大文学部同窓会誌)が届いていた、もちろん会費の請求である。執筆者を見てもすべて私より若い方ばかりだ(当たり前!)。それにしても、国立大学を巡る環境は悪化するばかり、せめて多少なりとも寄付したい気持ちはあるのだが、先立つものが・・・。
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ライフ西七条店へ買い物、目の前で<赤かれい>に30%引きの札が貼られたので思わず手に取ってしまった。
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息子たちの夕飯はさんだかんと奥川ファームのコラボ、何しろ明日は定期便が届くのでタマゴを消費しておかないと。
録画番組視聴。
サラメシ シーズン13 (26)福島・岳温泉を守る「湯守」▽工場全員で作るカレー
初回放送日: 2023年12月7日 安達太良山の麓にある名湯、岳(だけ)温泉。6人の「湯守」と呼ばれる人たちが温泉街から8キロほど離れた山奥の源泉へ通い、管の中に詰まった湯花を掃除するなど地道にメンテナンスを続けている▽広島の切削工具を製造する工場では、コミュニケーション向上をねらい社員全員でまかないカレーを作ることに。だが、その進め方には製造業ならではの“流儀”があった…▽写真家・田沼武能さんが愛した東京下町のチャーシュー麺。
「品格をまとう スーツ」
初回放送日: 2023年12月13日 スーツをこよなく愛するハリー杉山さん。ジャーナリストだった父のスーツに涙▽山でも海でもスーツ姿で撮影に臨む人気写真家・長山一樹さん。原点はあの芸術家たち▽英国スーツの真髄はシルエット!イングリッシュドレープの技とは?▽軽くやわらかなナポリのスーツ。いせ込みが生み出す「雨降り袖」▽女性テーラーによる女性スーツの仕立て術▽100年前のスーツが若者に人気!時空を超えたロマンとは?!<File593>
今夜も桂枝雀のDVDから、「茶漬け幽霊」「幽霊の辻」。
片付け、入浴のはずが、今夜もダウンしてしまった。
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あいたた、チェックしていなかったのでムーブが届かなかった。
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aronespace · 1 year
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私の話
 最初は5歳の秋か冬、長袖の季節だった。幼稚園生だった私はおたふく風邪だか水疱瘡だかに罹り、しばらく園を休んでいた。その時期園では、同じ組の子たち同士でなんとなくチームを組んで、ロボットやら指輪やらを工作してそれを下級生向けに販売しよう(もちろん紙でできたおもちゃのお金だ)という、ものづくりやチームメイトと協力する力を伸ばし、お金の使い方や年下の子への振る舞いを学ぼうといった趣旨のイベントがあった。準備期間もそれなりにある季節の一大イベントで、みんな楽しみにしていたように記憶している。そして私はチーム決め直前に園を休み、戻ってきたときには先生によってすでに振り分けられたチームで行動することになっていた。どんなチームに割り当てられているのだろうと不安な思いで登園すると、私は牛乳パックでロボットを作る、「男の子」しかいないチームにひとり放り込まれていた。どんな経緯でそうなったのかはわからないが、最初は憂鬱だったのをなんとなく覚えている。自分だけ違うところに混ぜられてしまったのだと感じた。  しかしそこにいるうちに、いつも一緒にいる「女の子」たちといるときとは違う感覚になった。彼女たちといるときとは違った居心地の良さ、安心感。ロボット作りには最後まで楽しさを見出せなかったけれど、その空間は身の置き所としてはこれまで感じたことのない高揚感としっくりくる感じを覚える楽しい場所だった。自分と違うと思っていた属性の中に放り込まれたはずなのに、「自分も『(女の子ではない存在としての)男の子』側なのだ」と感じた。自分に割り当てられている属性は自分のものではないのだと、こんなふうに明瞭に言語化はできなかったけれど、自分に割り当てられてきた属性とその扱われ方に対する違和感を、感覚として初めて理解した初めての経験だった。ひとまずそのときの私は、自分のことを「『女の子っぽい女の子』ではない」のだと理解した。特に仲のいい関係を築いてきたのは「女の子」との方が多かったけれど、チラシで剣を作ったり体育館の大きな積み木で遊んだりするときは「男の子たち」の中にいる方が安心した。人間関係と所属意識の違いが少し明らかになり始めた。その年の七五三、赤い着物を着て髪をセットされた(当時は髪が肩まであった)が、ものすごく居心地が悪くて嫌だったことを覚えているし、親によるとかなりごねて不機嫌だったらしい。
 次は10歳、小学4年生の秋。私の地域では毎年4年生が地域の学校で集まって合唱コンクールに出るという行事があった。最初は何とも思わなかったが、単純な子どもだったので練習するたびに課題曲も歌うことも好きになっていくし、本番が待ち遠しかった。  本番が目前に迫ってきたある日、合唱指導担当だった先生から当日の服装についての説明があった。男の子は白い上に黒のズボン、女の子は黒いスカート。それを聞き、どう表せばいいかわからない不快感が湧き上がってきた。スカートを履きたくない。どうして私はスカートを履く側なのか?どうしたら履かなくて済む?あれだけ楽しみにしていたのに、その日を境に本番が近づくのが嫌でたまらなくなった。親が買ってきたスカートを履いたときの違和感は強烈に残っている。しかし音楽会は例年より少し早めのインフルエンザ流行のため中止になった。その報に泣いている子もいたし、私も残念な気持ちはあったが、それ以上にスカートを履かなくて済んだことに安堵した。まさかそんな理由で中止が嬉しかったなんて言える空気ではなかったので、友達に合わせてがっかりした表情を浮かべていた。またこの頃から身の回りの物へのこだわりが出始めた。最初は親に言われるがままに着ていた「弟へのおさがりでも使えるような服」を自ら選んで着るようになり、「女の子」でひとりだけ青い習字セット、青い裁縫セットを使い、家庭科で作った巾着も白と黒のドラゴンモチーフの布を使っていた。常に短い髪、同年代の平均より常に高い身長、青やグレー、黒のパーカーやトレーナーにジーンズ、手提げ袋に至るまで「女の子」っぽさを排除した見た目の中で、ランドセルだけがずっと浮いていたように思う。入学前親に連れられてランドセルコーナーに行ったとき、漠然と赤は嫌だという思いがあったが、「女の子」用のものは赤やピンク、オレンジしかなく、色ではなく大人っぽい響きの名前が気に入ったという理由と、言葉にならないけれど確かにあった何かを諦めたという思いで、渋めのローズピンクのランドセルを背負っていた。年齢が上がっていくにつれ「女の子らしさ」がなくなっていく見た目の中、ずっとランドセルだけが私の「本当の」所属を周囲に示すもので、これを背負う限り私は何をしようとも「女の子」にカウントされるということを思い知り、「そうじゃないと思うんだけどな」のような微妙な気持ちでいた。どうして自分がそう思うのか、というところまでは考えられなかったけれど、「女の子っぽい」という記号を身に付けることへの拒否感は確固たるものになっていた。
 次は中学生。当然制服のスカートが嫌だった。小学校の卒業式のときもスカートは確かに嫌だったけれど、上にはおるグレーのジャケットがかっこよくて気に入っていたため一日だけなら、となんとなく乗り越えたが、これからずっと着なければならない制服は本当に嫌だった。でも登校したらほとんど毎日午前中にジャージに着���えていたし(時間割の関係でそうだった)、運動系の部活をやっていたため下校は毎日ジャージだったので、憂鬱感は徐々にごまかせるようになっていった。  小学校からほとんど持ちあがりの、狭く密接で固定的な人間関係という土壌がある中でのクラスメイトからのまなざしは、嫌でも表面的なもの以外の情報も伝えてくるもので、この頃になってくると自分が周囲からどう見られているかを何となく察するようになっていった。周りは段々と女/男の境界がはっきりしたものになりそれぞれの文化が別のものになっていく中で、「女の子」への所属意識をどうしても持てず、「そうではない」存在に近づこうと「男の子」たちのコミュニケーションをロールモデルとして振舞い方を学習した結果、「女の子」たちからは自分たちのメインストリームからは外れていて色々と変だけれど、一応同じ場所にいる他者として、「男の子」たちからは他の「女の子」と比べると自分たちの文化にどこか(「理解している」ではなく)近いけれど、でも同じ存在ではない他者として、「女の子っぽくない・男の子っぽい女の子」のような、どちらからも微妙に浮いた存在として認識されていたように思う。加えて恋愛の話題に絡んでくる子/そうじゃない子の新たな境界も生まれるようになり、誰が付き合っている、デートに行った、夏休みどうするのように話題になる内容が具体的になり、その話題を中心に人間関係の構図が作られ、恋愛との距離感によってヒエラルキーが生まれるようになり、それに伴い会話のあらゆるところに理解できない目配せや気配り、謎のルールも絡まってくるようになると、恋愛ごとを面倒に感じ、それらの事象に巻き込まれるのが嫌な 「男の子」 たちは、 相変わらず髪が短くてクラスの中で3,4番目に背が高い、見た目が「女の子」的ではない、自分たちと近い「男の子」的なコミュニケーションをとって接してくる、一切恋愛の話をしない私を他の「女の子」ほどは警戒せず(「恋愛的な文脈での楽しさを見出せず・高揚せず」とも言い換えることができる)、「女の子」たちも、 恋愛の話題を振られても求められていたような回答をできなかったことでそのルールを理解していないことを見抜き、普段の様子から関心があるようにも見えなかったであろう私なら男の子のそばに置いていても面倒なことは起こらないだろう(ライバルになったり、噂話をして余計な広がり方をさせたりしないだろうのような)と、どちらにとっても曖昧で便利な側面を持っている存在だったと思う。それによって、「男女」間で起きるであろう揉め事を減らせると考えた(であろう)班を決める係のクラスメイトによって、校外学習や修学旅行といったイレギュラーでトラブルをなるべく起こしたくないイベントでの班編成では、いつも男子の中にひとり放り込まれる役だった(3年間「女子」が奇数のクラスだったため)。班を決めた子から「女子一人でごめんね」と謝られたが、なんて返せばいいかわからなかった。そう扱われることに慣れていたし、そう扱われることが嬉しかった。「女の子」の中に入れられる方が自分との差異やそこにいることの違和感を強く感じさせられるから、 「男の子」たちとともに「あっちが何考えてるかわからない」と振る舞うことで、自分の「女の子ではない」感覚を正当化できる環境の方がずっと楽だった。だからといって自分を「男の子」だとは思えず、「女の子ではない」存在として「男の子になりたい」と素朴に願っていた。
 「女の子ではない」という思いは自分の肉体にも向くようになっていった。胸が大きくなるにつれブラジャーをしないと揺れて邪魔だし痛いしで毎日つけていたが、ある日その工程がどうしても嫌になり、素肌にジャージの半袖を着て、その上からいつも通りの制服を着て登校した。いつものように1時間目の授業を終えジャージに着替えたときの、何とも言えない嬉しさと居心地の悪さが混ざった感覚。本来こうあるべきだったという感覚と、いつもより肌にまとわりつく気がするせいでより目立ってしまう気がする身体の丸み。念のため学校にブラを持っていこうなんて微塵も思わなかった(これは決意というよりそこまで考えが至らなかった、着替えの肯定をすっ飛ばした瞬間の満足ですっかり忘れていたという不注意によるものだった)ため、一日中居心地の悪さを引きずって猫背で過ごすことになり、それ以降ブラをつけることは諦めて受け入れた。「女の子じゃない」存在として扱われるためにできる方法を探し、少しでも「男の子」的になろうとそちら側に行動を寄せ、しかしどうしても「男の子」にはなれず、「男の子」のアイデンティティを自分の中に見つけることもできず、「女の子」の記号を与えられているのなら結局私は「女の子っぽくない女の子」なのかな、と思っていた。6年間制服のスカートを履いているなかで、自分のアイデンティティをいったんそうやって理解することにした。そうであるだけでも浮いていたけれど、恋愛の話題に関わらない限り目立つことはなかったので、基本的には地味な子どもとしてどうにかやり過ごすことができた。  私が高校まで暮らしていたところは東北の田舎で、そこは非常にシスヘテロ的でバイナリーで、女/男しか存在せず、恋愛、性愛をする人しか存在しないところだった。そんな中で私は「ボーイッシュな女の子」という言葉で済まそうとするにはあまりにも色々な要素が浮いていて、しかしそれはただ私が浮いているパーソナリティである以上の意味を持たなかった。(そして、そこでは障害や家庭環境、それらによっておこる不平等も単に個性でしかなかった。)どんな装いをしようと、どんな振る舞いをしようと、どんな思いで生活していようと、私は「女の子」としてカウントされ、「女の子」というアイデンティティを持ち、その規範に沿って生きていくべき存在でしかなかった。
 高校を卒業し地元に比べると圧倒的に都会だった地域で暮らし始め、新たな生活を過ごすなかでAロマンティック、Aセクシュアルと出会い、これまで感じてきたわけのわからなさにセクシュアリティという名前がつくことを初めて知ることができた。  大学生になり自分で服を買うようになると、スカートを選ぶことができるようになった。家ではジャージかジーンズしか履かなかった娘が、帰省してきたときにスカートを履いている姿を見た親がびっくりした表情を浮かべ、「似合うじゃん」と言われて微妙な気持ちになったのを覚えている。相変わらず髪は短かったし、身体への違和感が爆発し、思いつく解消案としていわゆるナベシャツを着るようになったのもこの時期だった。でも、あれだけ嫌だったスカートを履けるようになったことに自分自身も理解が追い付かず、だからと言って「完全に」女の子になることができたとは到底思えず、「女の子」の記号を自分から選ぶ自分自身に戸惑ったこと。重ね着をし身体のラインを見えにくくする装いをしたことで安心すること。電車に乗っていてふと「こいつは女か?男か?」という視線を感じ(中学生頃から「女ではない」と認識される経験を幾度となくしており、胸部を探る目が顔に移動する不躾な視線の動きがどういうものかを体感として知っている)、隣に座ってきたサラリーマンは今私を何者と判断したのだろうと不快感を覚えたこと。同時にその困惑を引き出せたかもしれないことにうっすら喜びを感じたこと。成人式で振袖を着るのがどうしても嫌で、別の予定を入れ地元に帰らなくて済むようにしたこと。この時期に#Metoo、フラワーデモに出会い、そしてフェミニズムに出会うことで、服装や身に付けるものも社会によってジェンダー化されていること、誰でもその規範から自由になれることを知った。セクシュアリティとフェミニズムは不可分であるし、本の中に書かれている社会構造の不平等や差別は私の身に降りかかるものとも似ている部分があったため、やっぱり私は「女」というジェンダーにカテゴライズされる人間なのかと思うようになった。
 私が参加したフラワーデモでは、何度かトランスジェンダーの方がマイクを取っていた。またそこで出会った人に紹介されたコミュニティにもトランスジェンダーの方が何人もいて、書籍の中だけでなくリアルな存在として、シスジェンダーではない人は決して遠い存在ではなかった。それだけでなく、当時セクシュアリティに関する情報のほとんどはオンラインで手に入れており(地元を出るまでLGBTという単語にすら触れたことのないような人間が、いきなりどの本を図書館で探せばいいのかわかるわけがなかったし、オフラインでAセクシュアリティに関する情報を探すのはさらに至難の業だった)、本で語られることを吸収することも大事だったけれど、YouTubeやツイッターを見れば本当に性的マイノリティの人間が生きていることを感じられることがあまりにも新鮮で、文字通り生きる希望になった。今はもう更新していないが、noteという媒体では今に続く私にとっても本当に大切な出会いをすることもできた。その人の文章を読むことで、Aセクシュアリティ、そして「男でも女でもない」と説明されることの多い、バイナリーな性別二元論では語ることができないアイデンティティの存在を知った。私が生きてきた、そして今も生きているこの社会がどれほど性別二元論に支配されており、それがどれだけの人を差別し、苦しめ、傷つける構造になっているのかを知り、彼らと連帯しなければならない、伴走者にならなければならないと強く思った。
 
 同時に、性別二元論への馴染めなさは、私自身の体内にもずっと昔から近からず遠からずの距離感で確かに存在していた。フェミニズムを学び、「『自分はフェミニストではないけれど』と言いながらフェミニズム的な発言をする人が多い」と、どちらかといえば批判的な文脈で語られているのを見かけ、確かにそうだよなと思う一方で、自分は完全に「女」を引き受けるのはしっくりこないな、という思いもずっとあって、「フェミニスト」と名乗るまでにかなり時間がかかった(し、正直今も名乗ることに抵抗感というか戸惑いがある。それは私のアイデンティティによるだけでなく、私があまりにもフェミニズムのことを知らなすぎることも大いに関係している)。フェミニズムが指摘する構造的な差別において、私は【「女」が受ける差別】を受ける立場にいたと思う。だけど、私がこれまで自分に感じてきた違和感は「女じゃない」という感覚によるもののはずだった。私なりにではあるがセクシュアリティやジェンダーなどに関することを学んできた中で、これを「女」の多様性の枠で語ることはできるのだろうかと改めて自分に対し疑問を持つようになった。でも、「女じゃない」なら何なのだとか、これまで「女」に馴染んで生活しているじゃないかとか、「女」の枠にいるからこその語られ方をしているじゃないかといった考えを拭えず、もやもやした思いは残るけれど、これまでのように、そういう違和感を一生抱えたうえで私は「女」をやっていくしかないのだと、諦めと不本意な受容が混ざった覚悟を決めた。
 その後、感染症流行による人との接触の減少、それに加えて鬱を発症したことで人と会わ(え)ない期間を長く経験して、就職活動が始まった(めちゃくちゃしんどかった)。何もわからなかったので学校のキャリアセンターに1から10まで頼りっぱなしだったのだが、そこで「スーツは黒で、スカートでもパンツでもいいけど今から買うならスカートが無難」というようなことを言われた。そのとき、久しぶりにスカートへの嫌悪感を強く感じた。私服でスカートを着るくらいになっていて嫌悪感はだいぶ薄くなっていたはずなのに。 フェミニズムを学んだことでシンプルに最悪なセクシズムが働いている発言だということを昔より高い解像度で理解し、そのことで怒りを覚えた感覚もあったけれど、 どうしてこんなに、あの頃と同じくらい嫌だと感じるているのか、自分に戸惑った。  スーツを売っている店の前を通ったり配られたチラシを読んだりしてみたけれど、無理だという思いがあまりにも強固で、どうにかしてスカートを履かないでやろうと決めた。就活のためにお金を使いたくなかった(鬱が治りきらないまま就活→実習→試験勉強というルートでバイトに避ける時間が減っていくのがわかっていた)し、なにより黒のスカートに脚を通すたびにおしまいの気持ちになりそうで、規範へのささやかな反骨心と心を守る方法として、 大学の入学式のときに親から譲り受けたグレーのパンツスーツで就活を乗り切った。
 現在フルタイムで働いている。いわゆるケアワークと呼ばれる業種だ。職場は「女性」しかおらず、ほとんどが既婚者で、世間話としてされる会話は異性愛規範に塗れていて、「私は異性愛者じゃない!」と心の中で唱えない日はないような環境にいる。そして、新しい利用者と会うたびに新しい関係を作っていく中で「女」として自己紹介したり、「女」と認識され、「女」だから任された仕事をすることが、徐々に違和感としんどさを生むようになった。職場での自分のありかたがわからなくなって、仕事で疲れて帰ってきても夜眠れない泥の中のような��々がまた戻ってくるようになった。眠れないままとにかく横になってスマホを眺めていたある日、ふと思い出した人のブログを読み返したとき、唐突にすとんとおさまる感覚があった。そうやって私は、女ではないというアイデンティティをようやく受け入れ、自分を表す言葉としてAジェンダーと出会った。
 本当に急に腑に落ちた。あまりにも呆気ないような、それでも20数年に及ぶ私のアイデンティティの居心地の悪さを理解するための、救いのような受容感だった。私が「男の子」にカウントされようと必死で、もしくは無意識的に渇望しやってきたことは、「女の子」と認識されることが苦痛でその記号を外すために、非常に強固な性別二元論が敷かれた、男と女しかいない社会の中で、「女の子ではない」をやろうとした結果「『そうではない』存在としての『男』」であろうとするしか抵抗の方法が、そして自分自身のアイデンティティとの向き合い方がわからなかったためだった。  このバイナリーな世界では性別欄は二択しか用意されておらず、「女」ではないなら「男」だし、「男」ではないなら「女」だ。必ずどちらかじゃないと存在を認識されず、そんな世界で生きてきたら「どちらでもないなら何なのだ」と、誰よりも私が私自身に問いかけ、二元論を押し付けてきた。そっち(女)じゃないというアイデンティファイしか方法を知らなかったけれど、そっちじゃないなら何なんだという問いかけにはバイナリーを前提とした答えを持たなくてはならず、その世界では私を語る言葉は存在しなかった。社会からやることを要請されてきたのは「女」で、これまで時になんとなく、時に必死に、時に絶望しながらそれをやってきたけれど、物心ついたときからずっとそこにあったここではないという感覚を、やっと信じることができるようになった。「女ではない」「どの『性別』にも当てはまらない」「女を引き受ける」。どうしてこれが同時に成り立つのか、今までこれらをセクシュアリティの問題ではなく個人の問題として引き受けてきた。共存するしかなかったうちに自分に馴染んできた部分も確かにある。シスジェンダーであることを求められ、受容する時間もあったけれど、それでもこれまでの人生すべてをシスジェンダーと理解することはできないし、そうしなくていい。そう思えることで、ずいぶん救われる思いでいる。
 書いてきたこれらのことは、他者に対する私の性別に関する証明のためのエピソードではなく、私がどう生きてきたかのごく個人的な話でしかない。このような道筋を辿るのが、Aジェンダーパーソンにとって典型的なのか、特異なのかすらわからない。ただ、性別二元論が私のことを語りづらくさせ、アイデンティティを受容するのを遅れさせ、受容しても尚戸惑わせ、未来の見えなさに仄暗い気持ちにさせ、傷つけてくることはどうしたって否定できない。それだけではなく、今もまだ「私はAジェンダーである」ということが、「私は自分自身の性別を意識したことがない」という、Aジェンダーへの差別的発言になるのではないだろうかと恐れる気持ちがある。アイデンティティを獲得しても、それをまっすぐ祝福できるようになるには正直まだ学び、話を聞き、自分を語るための時間が必要だと思っている。私自身の、私のための話なのに、それを語ろうとすることで差別構造に加担してしまうのではないだろうかと、そしてその言葉は私自身にも向いてしまうのだろうと、ためらいと恐怖を覚えてしまう。この社会に強固すぎる性別二元論が敷かれており、あらゆる社会規範や制度、社会保障にまでそれを前提として設計をされているがために。非シスジェンダーなど存在しないと乱暴な口を開く人々がいるために。
 これらは私の話だが、同時に私を取り巻く性別二元論の話でもある。非シスパーソンの尊厳を損ね、存在ごと居場所を奪い、攻撃の対象に仕立て上げ分断させ、そうすることによって大きな顔を保とうとしている、性別二元論の話だ。私にアイデンティティと出会うことを困難にさせ、規範から外れる存在として生きづらくさせ、やっと見つけたと思えても獲得するまでに本来必要だった以上に惑わせ、ようやく手にしてもそれを祝福することを難しくさせ、語ろうとする言葉を口篭らせる、性別二元論の話だ。シスジェンダーをやろうと頑張ってきた長い闘いが終わり、そして今度は非シスジェンダーの存在を許さない社会との闘いが始まる。それも今から始まっているのではなく、ずっとずっと前から傍にあった濁流の中に巻き込まれるような感覚だ。苦しいけれど、私はそこで私と出会った以上逃れることはできないし、したくない。私はこれまでもこれからも、こうのままで生きていく。私自身のことを言葉にするのがまだ難しくても、私が私のアイデンティティを信じられるようになっただけで、それはあの頃の5歳の私を救うことができるし、これからの私自身の希望になる。一度諦めたことがあったけれど、また出会うことができて本当によかった。
 私はAジェンダーだ。
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dojoe-tokyo · 1 year
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Levi’s “
size XL
*174㎝着用
肩幅 49.5cm
身幅 63.5cm
着丈 76cm
袖丈 69cm
¥8800 (tax in)
インディゴ染めが施された、
ヘリンボーン地・カバーオールJKT
フロントの首振りボタンと赤タブが良いアクセント
アタリがでたボディも良い雰囲気。
色も濃く残りこれからのエイジングも楽しみです。
XLのバサッと大きく羽織れるサイズ感。
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yachch · 1 year
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アフターヘブン 試読
「おかえりなさい、アンナ。――あなたが生まれ、育まれたグルダに」
 真珠を守る貝のように硬くこわばり、かすかに震えるフランギスの細い腕の中で、アンナはその声を聞いたのだった。  左足に重心をずらそうとして靴のかかとが霜を踏み砕き、その下に広がるぬかるみへと沈みこんでいく。夜の間に凍った地面は太陽のひかりにあてられ、生クリームのようにやわらかく溶けはじめていた。後退しようとすればするほど深みにはまっていく気がして、アンナは据わりの悪い椅子に座るようにその腕の中にとどまるしかない。 ――なにもしらないひとがこの場を目撃したなら、祖母と孫が別れを惜しんでいるようにみえるだろう、とアンナは思う。  ふたりの背後にそびえ立つのは寄宿舎学校の門で、アンナは真新しい制服を着ているのだから。そうした断片的な情報から、規律の厳しい学校生活に入る孫と、その孫を心配する心優しい祖母という構図をあてはめてみることはきっと難しくない。  でも、それは真実から遠くかけ離れた想像だ。  アンナが寄宿舎学校に入ることは事実でも、ふたりは血縁関係にはあたらない。おたがいを家族と認識しあう仲でもない。謙遜でも何でもなく、ただの他人だった。三十年とすこし前、この国で多くの批難を浴びながらも施行された法律によって、たまたま結びつけられただけの。 「ここに来るまでに、ずいぶん身体が冷えてしまいましたね」  抱擁を解くと、フランギスはアンナの冷えた首に自分のマフラーをそっと巻きつけた。  抱きしめられていたのはわずかな時間だったのに、ようやく解放された気がしたのはアンナがずっと緊張していたせいだろう。他人と触れ合うと頭が真っ白になって、全身から汗が噴き出して、そして逃げ出したくなる。フランギスが悪いわけではなく――ふたりは法律によって結ばれた関係だが、フランギスは一貫してアンナを尊重してくれている――誰に対してもそうなのだから、そういう性分と言うほかなかった。 「暦の上では春を迎えたけれど、この時期のグルダは寒いとあれほど言っておいたのに。お前でもうっかりすることがあるんですね、アンナ」  ええ、まあ、とアンナはあいまいに笑う。そんな彼女の首もとでしっかりマフラーの結び目をこしらえてから、「さあ、行って」とフランギスがささやいた。 「私はここであなたを見送ります。心配しないで、私はあなたの代理人ですから、またいつでも会えますよ。困ったことがあったら――」  ぬかるみを跳ね飛ばしながら走ってくる乗用車が目に入り、アンナはとっさにフランギスの腕を引く。しかし弾丸のように飛びかかってくる泥を避けるには、その行動はいささか遅すぎたようだ。 「アンナ、何がみえますか? 私に教えてください」  黒いガウンの裾が泥で汚れるのにも動じず、フランギスはじっと周囲の音に耳を澄ましていた。それでは埒があかないと思ったのか今度はアンナに説明を求める。  通り過ぎるかと思われた乗用車は門からすこし離れた場所で停まっていた。 「一台の車が……門の前に停まっています。窓が黒くて、スモークガラスって言うんでしょうか、乗ってるひとはみえないし、降りてくる気配もないし……誰かを待っているんでしょうか?」 「車体の色、タイヤの大きさ、あと、ナンバーは?」  いつになく焦った様子で、フランギスは次々と質問を重ねていく。  そのひとつひとつに丁寧に回答すると、フランギスは「そう」と小さな溜め息を漏らしたきり、今度は押し黙ってしまった。そのまま宙を仰いだ目線の先を追いかければ、木々の枝にわずかに残された枯れ葉が目に入る。 ――あの枯れ葉は、冬の間、風にも雪にも負けずあの場所にとどまり続けていたんだろうか。 「きっと、天国からお迎えが来たんでしょう」  葉が風にちぎりとられるのと、門の脇にある通用口からひとりの少女が飛び出してきたのはほぼ同時の出来事だった。寒空の下、コートもはおらずに出てきた制服姿の少女は、ふたりなど目に入らないとばかりに押しのけて例の車輌まで駆け寄る。 「あたしに時間をちょうだい! まだ帰りたくない!」  大きな声で叫んだ少女に呼応するように運転席の窓がわずかに開いた。そこで何を言われたのか、少女はずるずるとその場に座り込むと力なく握った拳で地面を叩いた。 「そんな……もうすこしで卒業できたのに……あたし……」  ぬかるみに膝まで浸かって、少女はすすり泣いた。がんぜない背中は悲しいくらい痩せて、ブラウス越しにでも浮き出た肋を両手でつかんでしまえそうだった。  呼吸すら忘れてその背をみつめるアンナの片袖を、後ろから誰かが引く。 「行きなさい、アンナ。ただでさえ到着が遅れてしまったんですから、先生がたもお待ちかねですよ」  爪弾かれたように振り返ったアンナをフランギスは穏やかに諭した。 「でも……、フランギス先生、」  アンナの口を冷たい手でそっとふさいで、フランギスは無言で首を振った。背後にいる少女の存在に触れることは禁忌だとでも言うように。  通用口をふさぐ赤錆びた扉が、勢いを増した風に揺れてぎいぎいと軋む。その音に混ざって、かすかに嗚咽の声が聞こえてくる。  アンナは自分の胸の中で熱いものと冷たいものがせめぎ合うのを感じた。  「――アンナ」  結局、フランギスの呼びかけを無視してでもアンナはその子に声をかけることにした。ハンカチを差し出すと、その子ははしばみ色の目でじっとアンナをにらみつけた。  宙を舞ったナナカマドの枯れ葉がひらりと泥海に落ちる。油をかぶったように黒く濡れた両手を握り込みながら、少女はきつく下唇を噛みしめた。 「……あんたは何回目なの?」  続けざまに少女が「あたしはもう十回よ、十回もくり返した!」と叫ぶと、ぎゅっと力の入った目尻から涙がぽろりと一粒こぼれ落ちた。 「だから、これで完全におしまい。――あんたは、うまくやれるといいね。あたし��帰るところが天国なら、ここは……、」  少女が後部座席のドアを開くと、車内に焚きしめられた奇妙な香りが周囲に拡散した。その香りを香りと認識する間もなく、アンナの意識は急にぼんやりする。  意識がもうろうとしたのはほんの数秒だったが、気が付けば車は跡形もなくなっていた。  道のむこうをみればすでに車影は遠く、ベールがかかったように垂れこめる深い霧の中に入りこもうとしている。白い霧に吸い込まれると、車は完全にみえなくなった。  『ここは』――続くことばが何だったのか、アンナはしばらく思い出そうとこころみたが、しびれを切らしたフランギスに呼びかけられて考えるのをやめてしまう。ガムのようにへばりついてくる泥を靴の先でかきわけながら元いた場所に戻る。  フランギスはアンナを叱らなかった。  彼女に見送られて、アンナは先ほど少女が飛び出してきた通用口から学校の敷地に足を踏み入れた。どこからともなく現れた守衛が即座に扉に鍵をかける。錆びた格子越しにフランギスと向き合うと、実は自分は投獄されたんじゃないかという突拍子のない妄想にアンナにとり憑かれた。 「ああよかった」  扉の格子に力なく指をからませて、フランギスがふと溜め息を漏らした。 「ここまでお前を送り出せて。最後の力をふりしぼって、私の善性がそのほかのすべてに勝ったように思います」  そう不可解な発言をするとともに、フランギスは目を細めた。眼球という感覚器官を失った暗い視界の中、何とか一条の光をさぐり当てようとするように虚空を凝視する。  ここに来てから、フランギスはふだんよりもすこしだけ感情的になっているようだ。長い冬を耐え忍んだ病人が春のきざしにふと心身の緊張をゆるめて死に至る、そんなあやうさを秘めているようにもアンナには感じられた。 「行ってきます、先生。またお会いできる日を楽しみにしています」  もしかして、これが今生の別れになるんじゃないか―そんな不安に駆られつつも、アンナはあたりさわりのない挨拶を口にすることしかできない。 「いってらっしゃい、アンナ」  フランギスの声を背に、アンナは自分を待ち構える森をみあげた。
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kennak · 1 year
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東証スタンダード上場で着物販売の「YU-WA Creation Holdings」(旧商号:京都きもの友禅)は、2023年3月期通期連結業績予想を下方修正し、当期純損益が3億7000万円の赤字に陥る見通しを明らかにしました。 2023年3月期通期連結業績予想:YU-WA Creation Holdings 売上高営業損益純損益 前回予想 97億2300万円 1億5600万円 1億200万円 今回予想 83億5000万円 △2億2000万円 △3億7000万円 前期実績 84億8400万円 400万円 △1億8500万円 一般呉服や宝飾品の販売が好調だったものの、振袖の販売・レンタルにおける客数減や単価下落に加え、写真スタジオなどその他の事業も計画を下回りました。また、人件費・催事関連費用の増加や、店舗などの減損損失として1億5000万円の特別損失を計上することから、営業損益・純損益ともに従来の黒字予想を一転し赤字見通しとなりました。 業績予想の修正に関するお知らせ:YU-WA Creation Holdings
京都きもの友禅の23年3月期は3億円の赤字へ、振袖不振で 赤字決算 - 不景気.com
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llyl · 1 year
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2023.01.13
久しぶりにTumblrを覗いたらそこそこ投稿があって嬉しかった。学生の頃は日々の暮らしに変化がそれなりにあった(授業、試験、バイト、遊び……)ので日記の書きようがあったけど今ってほとんど変わらない日々なんだなと愕然とした。それでもなんとか変化を拾って日記を書く。
まず、仕事がすごく暇。今だけかもだけど……。日中それなりにぼーっとしてる。やろうと思えばやることはある(勉強とか)。だけどやる気がなくてぼーっとしてて、ぼーっとしてると罪悪感が湧いてきて嫌な感じになる。来週こそはがんばろ(毎度言ってる)。
業後はわりと忙しい。おとといは友人の結婚に向けて帯結びの練習をした。本当は今日もしたかったけどサボっちゃった。振袖用の帯が硬くて結びづらくて大変。あらゆる練習が嫌いだけど着物の練習は好きだから向いてるかも。仕事が全部ダメになったら着付け師になるのはわりとありかもって思ってる。あとギターも久しぶりに弾いた。ミーハーなのでぼっち・ざ・ろっく!に影響されてる。なんか華麗にソロとか弾きたい。ベースも久しぶりに出そうかな。クローゼットの奥にあるから出しづらい。スタンドが欲しい。
最近漫画をたくさん読んだ。コミックスで『ワンダンス』、それからもう少しジャンプラを楽しもうと思って『幼稚園WARS』と『正反対な君と僕』。ワンダンスは恋人のおすすめだったけど大当たり。ダンスしてみたいけどダンスしてるところ揶揄われたことあるから無理ってのわかる。正反対な〜は思ったより内容がしっかりしててびっくりした(もっと雑に進む感じかと思っていたので)。ラブ・コメディのこと好きかもしれん。僕ヤバも好きだけど、正反対な君と僕のほうが性欲が薄い感じがするのウケる。もちろん掲載媒体の違いはあるけど、僕ヤバ中学生やぞ。どないなっとんねん。
年末から小説もたくさん読んだ。桜庭一樹はやっぱり好き。ラノベっぽいのも良いけどもう少ししっかりめの作品の方が実は持ち味が生きてる気がするんだけど。好みの問題かな?でも綿矢りさとかは軽い方が向いてるな〜って思うしな。あとは短編集をたくさん読んだ。短編集、細切れに読みやすいので楽しいけど、どうしても作品ごとの優劣を読後に比べてしまうのって悲しいかも。
ここ数日、インターネットで悲しい話をたくさん見たのでちょっと弱っており、ついでにオモコロで読んだJUNERAYさんのお酒記事が面白かったので(こっちがメインかも)、ご飯食べた後にコンビニに向かってレモンビールとカマンベールチーズ、ガトーショコラを買った。レモンビールおいしい!アルコール4%だからまあ時間かけたら飲み切れた。カマンベールは相性良かったけどガトーショコラは微妙だった。お酒をほとんど飲まないので食べ合わせの良さとか知らないんだよな。お酒の種類に詳しくないのもコンプレックス。いつまでも大人になれない気がする。なんだかなあ。飲まなくても学習はできるんだろうけど、どうせなら実感を伴う学習が良い。まあ久しぶりに飲んだらしっかり首まで赤くなってウケた。身体がゆっくりしんどくなって、酔ってるという意識と読んでいる本以外のことを考えなくなったのは良かった。お酒を飲んでも基本的に思考は明瞭なのでぼんやりできないが、ゆる不調により考えられる幅は狭まるのかも。良いことだね。たまにやろう。しかし割とすぐに酔いが覚めてゆる頭痛だけが残ってなんだかなぁという感じ。いつか気持ちよく酔えるんですか?!
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mitsu-maru · 1 year
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Bleu
 記憶というのはポインタとデータで出来ている。いつからか、そのように僕は信じている。忘却とはデータの在り処を指し示すポインタを失った状態であり、データそのものは確かに残っているのだと。何らかの切っ掛けでポインタが復元された時、記憶は鮮やかに蘇る。たった今まで自分が忘れていたことにすら驚くほどに。紅茶に浸したマドレーヌは暮らしに満ちている。長く生きれば生きるほど、過去が未来よりも重くなるから。
 記憶のポインタは厳密な一対一対応ではなく、大なり小なり誤差が生じる。本来想起されるべき思い出の一部が欠落したり、少しずれた思い出が蘇ったりする。あるいは、なかった記憶が新たに生成されたりもする。これは僕が2022年11月20日の午後、「Solarfault, 空は晴れて」という本を読んだ時に生じた反応を元に生まれたテキストである。記憶というのは揮発性であるだけでなく発泡性でもあるから、1週間という時間は記憶を発酵させるに十分な時間だ。読んだ小説の感想文が新たな小説であっていけない理由はない。
 青い、作用の定かでない、おそらくはあまりよろしくない液体。小瓶。『ロスマリン』だと思った。図書館で借りたハードカバーの本だった。少年たちが夏休みに高層ビルディングを抜け出して旅立つ先は暖かい海だった。映像の中で少年と犬が白い浜辺を走っていた。オゾンホールが話題になっていた世紀末。姉はフロンが使われているという理由で旧型のエアブラシをゴミの日に捨てた。その頃、一度塗った色をCtrl+Zすることはできなかった。読み終えた本の感想をTwitterで検索することはできなかった。Amazonは夜中に切らしたPPC用紙を翌日の夕方に届けてはくれなかった。
 大学進学を機に上京し、僕は私鉄の駅から坂道を登って、サンドイッチ屋のT字路を左に曲がってどこかの企業の借り上げ社宅の側を抜けた先にある青いアパートで暮らした。とても青い家だった。九州から上京した人間には東京の日暮れは地球が丸いことを実感させるほどに早く、うどん屋のつゆはありえないほど黒かった。レンタカーで意味もなく夜の新宿を走り回って、ラーメンを食べた。殺人事件が起きそうな間取りの海辺の一軒家でペペロンチーノを作った。サークルに入って本を書いた。酔い潰れた関西人の介抱をしながら、寝言も関西弁なんだと妙に納得した。
 敷地の外れの外れに、今はないその建物はあった。自治の名の下にビラがばら撒かれ、インクの匂いが漂い、アニメソングが館内放送で流れるような建物だ。そういえばビラを配っていたあの団体も青という字を冠していた。季節を問わず週に一度僕たちは集まって、ただひたすらに話をした。それが僕たちの活動だった。生協の缶ジュースは少しだけ安かった。年齢も専門もバラバラな学生たちが、教養を無駄遣いしていた。時々真面目に小説を書いて本を作り、批評会で真剣に意見を交わしたりした。僕たちの掟はただ一つ、描き始めた物語を必ず完結させること。開いた物語は閉ざされなければならない。それさえ守れば何をやろうと自由だった。その頃茨城県でバケツで流し込まれた液体が青い光を放った。
 学園祭で小遣い稼ぎをするために部員総出で占い師の真似事をした。タロットカードから客が望む物語を紡ぎ出すのは即興小説の訓練だ、というのが建前だった。原価がただ同然の占い屋はなぜだかいつも大繁盛で、僕たちのサークルは本の印刷代には困ることがなかった。
「久しぶり」
 堤が話しかけてきたのは、夫の不倫を見て見ぬふりをしつつ、別れる決心ができないと悩んでいる女性の背中を押してしまった直後だった。
「俺のことも占ってよ」
「顔見知りのことは占わないようにしてるんだ」
 本当に占いがお望みなら、と後輩のテーブルを指差す。堤は肩を竦めて、三百円を支払った。後片付けを終えた後、二人でステーキを食べに行った。安くて硬い牛肉にニンニクと醤油でえげつなく味をつけた代物だが、その頃の僕らにはそれでよかった。紙エプロンに跳ねたステーキソースが抽象画のようだった。
「なんだ、その。元気そうだな」
「どういう意味だよ」
「別に」
「ああ、聞いたのか」
「聞いたとも。なんで教えてくれなかった」
「教えたからといって、何が変わるわけでもないだろう」
「そりゃあ、そうだけどよ」
「じゃあ、いいだろ」
 堤は煙草をくるくると回して言葉を探した。最後まで、出てこなかった。
 小さなゲーム会社でアルバイトをした。携帯電話で話をしながら深夜の住宅街を歩いた。千駄ヶ谷のモスバーガーが秘密基地だった。自分たちが作っていたゲームのことは欠片も好きになれなかったけれども、スタッフ同士で話しているのが好きだった。六本木のライブハウスには月一で通っていた。お目当てのバンドの対バン相手のファンが自分の周りで激しく踊り出して、つられて踊っていた。強い人が集まる、という噂のファミリーレストランに自転車で乗り込んでカードゲームの対戦を挑んだりした。初めて中央特快に乗って八王子まで行った。
「で、いつ?」
 帰りの電車は適度に混んでいた。冷蔵庫にマグネットで貼り付けたメモのことを思い出した。換気扇の調子が悪いから業者に連絡すること。そうメモしてから何ヶ月が経っただろう。その頃僕はもう自炊することを止めていて、冷蔵庫には赤ワインとチーズしかなかった。黒い服ばかり選んで着るようになっていた。たまたま見つけた美容院の美容師と気があって、好きなように自分の頭を作品にしてもらうことしていた。この時は確か、虎をイメージした金のメッシュの入った黒髪だったと思う。ギターなんて一度も弾いたことがないのに、スタジオを借りてエアバンドのアー写を撮った。悪ノリしてロゴも作った。
「まだ決まってない。決まっていたとしても、お前には教えない」
「そう」
 エアバンドのベースは、本当のベーシストだった。本当はギターが弾きたかったらしいが、手が小さくてコードがうまく押さえられなかったんだと笑っていた。雷と餃子で有名な街から、時々都内に遊びに来ていた。常軌を逸した方向音痴の彼にとって、乗り換えはいつだって至難の技だった。コンピュータグラフィックスを専攻していた彼を、八王子の某大学の教授のところまで無事に送り届けるのが今日の僕のアルバイトだった。この頃のインターネット回線はZoomで面談するほど力強くもなく、クラウド環境はGitHubで自分のポートフォリオを公開できるほどではなかったから、修士論文の指導をしてもらうために直接会いに行く必要があったのだ。
「お前がいなくなるのは嫌だなあ」
 そんなことを面と向かって言われたのは当たり前だが初めてだった。正直少しだけ心が揺らいだ。努めて僕は平静を装い、東へとひた走る列車の窓から外へと視線を移した。刻一刻と時は迫っていた。冬が始まっていた。セーターの袖を鼻に押し当てた。
「バンドはエアなんだ。ギタリストがいなくたって、やっていけるさ」
「エアじゃなかったら、よかったのにな」
「そうしたら、ツアーには必ず宇都宮を入れてやるよ」
「絶対MCでいじられるやつじゃないか」
 東武線の駅の側、一階が物販になっているライブハウスを幻視する。もちろんバンドはエアなので、歌詞も曲もない。それでもステージの上で僕たちは青いライトに照らされていた。ライブの後半で必ずやる定番のバラード曲を歌えば、正確にハモってくれるという信頼があった。電車が新宿駅について、ベーシストと一緒に湘南新宿ラインのホームまで歩いた。
「それじゃあ、またな」
「ああ。今日はありがとう」
 手を振って僕らは別れる。僕には、これが最後だと分かっていた。携帯電話が鳴る。新宿駅は人が多すぎて、誰も僕のことを気にも止めない。運命が僕を迎えに来る。もうすぐだ。こうして世界は分かたれる。
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soul-eater-novel · 2 years
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p126 皆が注視していると、男はまとわりつくような奇妙な抑揚をつけた声で、高らかに叫ぶ。 Gazing around at everyone, the man shouted in a curiously inflected voice.
「汚らわしい反乱軍の皆さん、お待ちしていましたよ」 “The filthy rebel army. I’ve been waiting for you.”
その男こそが、ミルイヒ・オッペンハイマーだった。 The man was none other than Milich Oppenheimer himself.
つばの広い真っ赤な帽子に薔薇を刺し、貴族が着るような提灯袖がついた白い衣服に身を包んでいる。 A rose adorned his wide, bright red cap and he was clad in a white garment with puffy sleeves of the type that the aristocracy favored.
そして赤いマントに黄色いブーツ。 He wore a crimson cape and yellow boots.
口の上に生やした細い髭を揺らしてミルイヒは続ける。 The thin mustache above his upper lip fluttered as he continued.
「馬鹿な人たちですね、私にかなうわけがないというのに……。私の可愛いアントワネットの愛の結晶とっておきの花粉でさっさと消えていただきましょう」 “Rats like you could never hope to be any match for me. I’ll sweep you away in an instant with my darling Antoinette’s magnificent pollen, the fruit of her love!”
負けじとビクトールも、剣を振り上げミルイヒに叫ぶ。 Undaunted, Viktor shook his sword at Milich and shouted,
「何を言ってやがるオカマ野郎!今その首根っこつかんでやるから覚悟しろ!!」 “What the hell are you on about, you asshole?! Get ready to have your head handed to you!”
しかしミルイヒはふんと鼻で笑うと、バルコニーに咲いた巨大な薔薇の茎を愛おしげにさすった。 But Milich just laughed scornfully and lovingly stroked the stalk of the giant rose blooming on the balcony.
すると薔薇が花弁を震わせ、ビクトールたちの頭上に粉のようなものをまき散らしはじめた。 As he did so, the rose’s petals shuddered and a dust-like substance began to waft over the heads of Viktor and the others.
その様子をティルは部隊の後尾て見ていた。 Tir watched all this happen from the rear ranks.
「マッシュ、あの花粉は…… ?!」 “Mathiu, what is that pollen?!”
マッシュもやはり、危険を感じ取ったようだった。 The tactician also appeared to sense imminent danger.
「よくわかりませんが、いったん軍を下げましょう」 “I do not know, but let’s pull back our troops immediately.”
マッシュが近くにいた兵をフリックとビクトールのもとに走らせた。 Mathiu dispatched a nearby soldier to run to Flik and Viktor with the orders to withdraw
P127 しかしその時にはもう振りまかれた粉は風に乗り、両部隊に降り注いでいた。 but it was too late; the powder had already been carried by the wind and was raining down upon both units.
突然、フリックとビクトールの部隊の様子がおかしくなった。馬が激しく嘶き、暴れだす。 Flik and Viktor’s units immediately began acting strangely. The horses grew skittish, braying violently.
兵が苦しげにもがき、ばたばたと倒れていくー。 The soldiers looked to be in pain, and collapsed to the ground, their armor clattering.
さらに悪い事態が発生した。 And then things got even worse.
それまで静かだった城外の陣の天幕が揺れ、帝国兵が次々に飛び出してきたのだ。 The Imperial Army troops stationed outside the castle walls, who had not made a sound until that point, now leapt out of their tents one by one.
皆、口と鼻を白い布で覆っているせいか、帝国兵は花粉の影響を受けないようだった。 Each Imperial solider had a white cloth tied around their nose and mouth and in this way seemed to be unaffected by the pollen.
そして帝国兵が喊声をあげて、フリックとビクトールの部隊に斬り込んだ時。 The soldiers roared a battlecry and hacked their way through Flik and Viktor’s units.
「いけません、退却します!!」 “No! Retreat!”
マッシュが部下に旗を振らせた。 The soldier under Mathiu’s command waved the flag for retreat.
両翼のレパントとハンフリーを前に出し、フリックとビクトールの部隊を救い出す。 Lepant and Humphrey’s units on either side rushed forward to rescue Flik and Viktor’s units.
帝国兵を止めるため、キルキスの射手に矢を射させる。 Kirkis’ unit let loose a volley of arrows to drive back the Imperial soldiers
しかし動けなくなった部隊を抱えた解放軍の歩みは遅く、帝国軍の執拗な追撃に応戦することもできなかった。 but the Liberation Army’s retreat was slow because they had to carry their wounded and they were unable to repel the persistent attack of the pursuing Imperial soldiers.
ティルたちは甚大な被害を出して、ガランの関所まで退いていった。 Tir’s forces suffered major injuries and they retreated to the Garan checkpoint.
ーーー
関所に戻ったティルたちは、広間に集まり早急に軍議を開いた。 Once they made it back to the Garan checkpoint, Tir and the others immediately gathered in the hall and held a war council.
退却中に手当を受け、フリックとビクトールはすでに元気を取り戻していた。 Flik and Viktor had received medical care during the retreat and were already back on their feet.
致死性の毒でなかったのが唯一の救いだった。 They had only survived because the poison had not been lethal.
皆が集まったとたん、ビクトールが悔しげに言う。 As soon as everyone gathered, Viktor said, his voice filled with regret…
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higashiazuma · 21 days
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じゃれ本 1卓目の作品
「じゃれ本 オンライン試用版」を使ったセッションで紡がれた物語たちです。前の文の前後関係がわからずに何かを書こうとするとこうなります。参加した本人たちはめちゃくちゃ楽しかったです。
お題:ホラー ページ数:8P
『忘れられた木』
幻視を見た。夕日を背中に浴び、吊るされた死体。枝という枝に麻紐で吊るされていた……これは幻。 私は小さい頃から良くこういったモノを見た。
そして、私がそういう幻視をすると決まって何か似たことが起こる。建設現場の作業員が、足を踏み外して死んでいた。首には命綱が絡まっていたそうだ。幻視が正しかったことを確かめるためにSNSを漁った。
スクロールしながらふと、特定の話題に連なるコメントをまとめて「木」と呼んだなと思う。ああいう掲示板やwikiには、時折得体のしれない信憑性があったものだ。 ふと検索欄に指が向く。ある単語が「浮かんだ」
「菩提樹」 小さな検索窓に、たった三文字の言葉を打ち込んだ。 すると、ひとつのスレッドか過去ログ倉庫から発掘された。 無数の話題「木」の中に埋もれた、1本の「忘れられた木」。
昔々の事であった。その村は絹を生業としていた。土地には良質な桑の木々があり、蚕を育てるにはうってつけだったのだ。そんな桑の原の真ん中にポツンとある「菩提樹」それがその木である。
その「菩提樹」のために、囲いを作ったのが悪かった。人間の余計な世話で水が溜まって流れていかなくなった。根が腐り、どうしようもなくなってしまった。だから先祖は、「菩提樹」を失ってしまった。
菩提を失う。――悟れない。涅槃に至ることはない。そうして行き場を失った亡者どもが、今も私が見続けているものたちなのだろうか? だとしたら私の務めは、囲いを崩すこと。 それで蘇るのは、本当に木だろうか?
ふと、私は背後を見やった。 暗い部屋の中、ディスプレイのみの明かりで照らされた私の影。それに無数の「別の影」が纏わりつき、まるで菩提樹のような影を落としていた。 ああ―― 私も、忘れられた木になるのだ
『仄暗い水死体』
じいさん曰く、死体の色には明るいのと暗いのがある。明るいのは悪くて、暗いのはいいんだと。明るいのはまだ魂が引っ付いてるんだ。明るいのを見っけたらわざとしばらく見ないふりをして”干し”とくんだと。
すると目の前にあるずぶ濡れのこれは"干す"必要がある。人ん家の屋上でなんという仕打ちだ、と舌打ちした。頭にあるのはこれで値打ちがどれほど下がるかということばかり。一番怖いのは人間の欲だと我ながら思う。
だが"干す"となると、ここ以上に適任の場所はあるまい。止むを得ず、僕はそれを屋上に放置することにした。 もちろん、そのまま置いておいては騒ぎになるだろう。 そこで一計を案じた。
「工事中・立ち入り禁止」 安直だが準備無く出来るのはこれが最善だろう。もちろんここの管理者が見れば不信がるのは避けられない。エレベーターの無い屋上の管理を真面目にこなさないことを祈った。
あれは明るい死体だった。現代日本で死体が見つからないわけがない。時間を稼げたらいい……。 僕の頭はあの死体でいっぱいだった。白熱電球のような明るい死体だった。時間だけがほしい。
どうすれば? ――翳を作ればいいんだろう。暗くすればいい。夜を、もっと早く夜を。夜を呼ぼう。太陽も星も沈めてしまえ。ストロボライトもカメラのフラッシュも、みんな空に向いちまえ。死体が干上がるまで。
そうだ。――視界に、あるものが止まった。 浄水槽。百均の網を使えば、あの暗闇の中でこれを干せる。
網を取る。広げる。置く――死体を。ツンとした腐敗臭に目をしかめ、手早く、手早く行う。 そして暗い円筒へ。
水死体は仄暗い闇の中。
『包帯はまだありません』
残念ながら私の右腕には呪いが掛かっている、と言われた。中学生の妄想ではない。浮き出た痣のような模様はどことなく死んだ祖父に似ている。 一応は隠すかと包帯を探していたら、声が聞こえた。「まだだ」と。
ぎょっとして右腕に目をやった。浮き出た痣が心なしか濃くなり、祖父が死んだ時の――棺の小窓から覗いた時のあの顔を思い出させるような模様になっていたが、他に異変は無い。
僕はその腕を用心深く長袖に隠した。消えるわけではないができる限り目には入れたくない。もちろん見られるのも困る。挙動不審にならないよう辺りを見回し皆のところに戻った。
「あのね」 ほとんど話したことのないクラスメイトに話しかけられた。僕が腕を隠しているのは、リストカットの類ではない。僕はそういう苦労を背負っているわけではない……。 「わかるよ」と言われ申し訳な思う。
解られたところで仕方がないのだ。適当に会話から離脱するため、教科書など開いたところで耳に届く。 「お祖父ちゃんだった? それともお祖母ちゃん?」 手から滑り落ちた本は、机上で「雨月物語」の項を開く。
雨と月の物語。 それがこの痣と関係あるとしたら。 脳裏にあるビジョンが浮かぶ。祖父が亡くなる前、裏山のお社に連れて行かれた事があるのだ。天気雨の降る真夜中。辺りをぼんやり照らすおぼろ月。
周りは不思議に明るかった。 僕は空気に飲み込まれそうになって祖父の手を握り込んだ。 ――次の瞬間だ。影が動いた。明るい、恐ろしい月明かりの中影が動いたのだ。
祖父の影は僕の影を林檎の皮をむくようにくるくると剝ぎ取る。そして毛糸玉を丸めるように身にまとっていった。僕はまだ影だ。身体の内側にも影があることを悟った。影と陰が。
『邪神の霊安室』
僕がその存在を知ったのは、古本屋で買ったオカルト誌の記事がきっかけだった。 神というだけでもいかにも胡散臭いのに、それが霊安室に眠っているというのだから。それも、神田駅から徒歩15分圏内に。
時はもうすぐGW。ブラックだった弊社もとうとう有給を使って長期休暇を取らせてくれるようになった――有給を強制という点は目をつぶった――つまり丁度僕には時間があるわけだ。
「病院?」恋人がさりげなく言った。カウンセリング?いやだ。せっかくもぎとったGWを埋めるものは娯楽ではなくてブラック労働でぶっ壊れた心身のマイナスをゼロに戻すことだなんて。それよりディズニーとかさ……
「ほら、一種のアトラクションには違いないでしょ。体験型アクティビティ、ってやつ」 癒やし系ってやつか。私は頭を振り、心を温めたいわけじゃないんだと示す。どうせなら底の底まで行きたいんだ。
息を止めると、思い切って温水プールに飛び込んだ。 底へ。底へ。底へ。 違和感があった。 このプール、こんなに深かっただろうか…?
喉に手を当てる。不思議に肺も苦しくなかった。……死んだ? 背筋に汗が、いや、今はプールの水の中なのだから水圧か? とにかく深く進んだ。
肺に水が溜まりきってからというもの、不思議と苦しくはなくなった。大理石に埋もれた魚の化石が欠けた目玉でこちらを見つめている。
帰れない。 僕は悟った。 生きてはいられる。 でも僕は水の生き物だ。
水を得た魚とはいうけれど、この水はきっと良い交わりなど運んではこない。鱗のような空から降る雨のように、やがて僕の血を烏賊のそれと同じ色に変えるだろう。
お題:特になし ページ数:4P
『大げさな本』
この本を読んでいるあなたはとっても幸運だ。この本を読めば人生が変わること間違いなし。成功まったなしだ。何々をするとかそういう面倒なことは一切なし。『読むだけ』だ! つまりこの文が読めていさえすれば、
あなたはすぐさまハッピー!人生の勝ち組というわけなのです!ああ、本はまだ閉じないで。始まったばかりですからね。ここまで見ている賢明なあなたならこの本を読破するのにそう時間がかからないであろうことが、
全知全能の神が地を見そなわすごとく一目瞭然です。 改めて書きましょう。今後読み進めるにあたって、たった一つの手順を守るだけで、あなたはまさに時代の寵児、人類の救世主。守らなければ? あなたは死ぬ。
私は恐ろしくなって本を落とした。だが何ともない。 このような書き方はビジネス書や自己啓発書にはよくあることじゃないか。ただの大げさな本だ。 それを廃品回収に出しに行こうとした私に、トラックが迫っていた
『口紅と串刺し』
それを買ったのはデパートのとある化粧品売り場だった。 買うつもりなんて微塵もなかったはずなのに、鋭利なそれにひと目で心を奪われてしまったのだ。 「これはどうやって使うんですか?」 アドバイザーに尋ねる
「つまり」アドバイザーは答えを溜めた。「なすがままにです」 気が付けば包装紙に包まれた口紅を持っていた。 形状からいって、これを唇に塗りつけるとは思えない。鋭利にとがりすぎている……。
「……これはペンですか?」 拙い中学生の英文のような質問をしてしまう。 鋭利に尖った口紅。身を飾るものではなく筆記用具なのではないか?そうであってくれ。
「いいえ、口紅です。…教科書どおりじゃなくてごめんなさいね」 薔薇色の先端に鋼のハイライト。次の瞬間、僕の口から同じ色の液体が溢れ出す。いま唇は真っ赤に濡れている。
『最高のドーナツについて論じよ』
最高のドーナッツを語るに���まず「ドーナッツ」の定義を定める必要がある。もちろん料理の歴史の本を確認すればある程度先行研究の結果が分かるのだが、ここはあえて改めて定義し直したい。
さもないとX(旧twitter)でどこからともなく、「ドーナッツではなくドーナツです」、なんてbotに絡まれ…ることはなくなったが、同様の事態を引き起こしかねない。 一つ譲れないのは、そう、穴だ。
なんとしても、ダース買いしてしまったこのカスタード&エンゼルクリームの山に穴を開けなくては。全てはそれからだ。 私は手始めに、オールドファッションを最高にインスタ映えしそうな角度で撮った。
ここのドーナツはやたらと写真写りが良い。普通のドーナツの写真なのに、またたくまに恐ろしいほどのリアクションが付いた。 やれやれ。『絵に描いた餅』……こと映えるドーナツである。さて、あと11。
『髪の間から覗くピアス』
それまで誰かの耳を特別だと思ったことはなかった。パーマを当てすぎた髪の間に、赤くぷっくりとした粒が見えたときまで。 思わず「耳んとこ、血が」なんて言いかけて、それが彼女の意志表示だと気付く。
それは、赤い石だった。 如何せん、宝石には詳しくないもので、何という石かはわからない。彼女の耳元で艶やかに存在感を放つ、ささやかな意思表示。 思わず声をかけずにはいられなかった。
「どなたの石ですか?」 え? ――え? どうしてそういう言葉が出たのだろう? 女性の様子も変だ。さっと顔を青くして、ピアスをもぎ取ると逃げるように去っていった。残されたそれをなぜか手に取っている。
――ま、そういうこともあるか。 なんとか自分をなだめ、残ったそれをポケットの奥に突っ込んでおく……あのピアスが女性の耳を輝かす姿でも想像しながら。
お題:特になし ページ数:8P
『背びれアラビックヤマト』
子供の頃から魚になりたいと思っていた。最初は「人魚になりたい」だったのが、自分はそんなメルヘンに相応しい存在ではないという自覚だけはあったせいだ。私には鰭がないから、厚紙で作って背中に貼る。
だから、なるべきは「魚」だ。人魚はずうずうしいかもしれないが、鮮魚売り場に並んでいる魚には別に文句もあるまい。あら珍しい魚だわ、なんて思われるくらいだろう。どうやって煮つけにするか調べられるだけで。
来てくれないだろうか。麗しきマダム。あるいは朗らかな料理番。もしくは小さなお使いさん。「魚」扱いしてくれる魅力的な来客よ。
だけどそれは叶わない。なぜならこの身には背びれがあると同時に――「液状のり」の刻印が刻まれているからだ。 案の定、その来客は私など眼中に無いようだ。 私は心の底で叫んだ。
くそったれ。お前のそのふざけた帽子の下にはでんぷん糊でも詰まってるのか。今日び人の肌色を論うのは道義的問題が生じるから、その目に痛い黄色のことは勘弁してやるが、帽子のセンスは許しがたいぞ。
編集長の後ろ向きな承認の言葉で締めくくられた手紙を、私は勝利宣言とらえた。やった! これで、私の人魚を修正しなくてすむ。私の理想を資本主義に売り渡さずにすんだ! 人間性だ。これぞヒューマニティだ。
今晩は最高のパーティを開こう! 使用人も全員参加だ! 隣のケチババアもこの際呼びつけよう。なにせ資本主義に勝ったのだから! 私の持つ資産をなげうって盛大な祝いをするのだ!
私は自らの手で招待状を送ることにした。何せこんなに目出度いことは無いのだから! そしてその招待状の糊付けに使うのはもちろん、消えいろPITなのだった。
『サラサラシンギュラリティ』
私は自慢じゃないがこのキューティクルが自慢だ。 陽光の元燦然と輝く天使の輪。 歩けば誰もが振り返る、そんな美しいキューティクル。 だけどある日私は、出会ってしまった。いつもの薬王堂で、それに…
「シンギュラリティ」。 普通AIとかで用いられるやつだろう? 知ってる知ってる。でも、目の前にある玩具みたいな瓶には、さも当然とばかりそのバズワードが踊っているのだ。ここはシャンプー売り場だぞ?
たかだかシャンプーで人間を超えようというのだから大きく出たものである(消費者庁案件か?)。 つくりもののラベルにAmazonの詐欺レ��ュー画面みたいな大げさな演出。なるではなくなりますと書いてある。
(特許庁案件かもしれない)良く見たら自分の会社が持っているハズの技術名が書かれている。いやなんでだ。こんなシャンプーに? もしかしてGoogle検索でなんとなく技術名をググったのか。
恐る恐る、私はその場でスマホを取り出し我が社のその技術名をぐぐってみた。すると、なんということだ!検索結果はゆうに5万件を超えたのだ。技術漏洩?まさか、そんなはすはない。
我が社のシステムは最新鋭の技術で保守されている。「excelがある程度使える方」とか「タッチタイピングができる方」とか、そんな感じの募集要項で採った平成初期の人材ではない。だが、今や令和。 …よもや。
今やアシスタントAIはなんでも、「できない層」を優しくあやし、母親のようになんでもかんでもやってやるようになった。だから時代が一周してそういう層が出てくるのもおかしくはない。若社長でなければな。
問題は私がその若社長だって事なんだ。甘やかされたい。母親のように……いや、姉のようならどうだろう。マザコンの時代は終わりシスコンの時代がやってくるのだ。 私は姉AIの開発へと歩を進めた……
『紅い茶の密室』
しくじった。 停電により電子錠が動かなくなってしまったせいで、ここから出られない。出ることができない。 ……。 誰かが来てくれれば……。
「パンパカパーーーン★ 王子様登場だゾ★ ゾ★」  そんな声の後ドカンと一発破壊音が響く。何らかの力でとじられていた木の扉が粉々になった。  ……ウソだろ?  鼻先スレスレを破片が飛んだ。
(VFX:Car on Fire) なんてことだ!粉々になって吹き飛んだ木の扉が、表に止めてあったプリウスのエンジンを貫いた! 王子様と名乗るその男は、炎を背に歯を光らせている。
遍くこの世の乗り物はナマの力で動くべきだと信じているんだろう。勝手に犯行動機を想像でもしないとやっていられない。確かにそれは高貴でもクールでもない乗り物かもしれない。だが、私にとっては「愛馬」なんだ。
私は呼んだ。口笛で彼女を呼んだ。密室から外に向かって馬を呼んだ。駆けてきてくれるように祈りながら。絶対に成功しないように見える? 『ばかげていて、全く実用性がない』。それがトリックだ。
ピーー! ヒヒーーン! ピーーーーーー! ヒヒヒヒヒーーーーーン! リズミカルに繰り返される呼びかけ合い。私と彼女の華麗なるハーモニー。 トリックなんてクソ喰らえ。
ここはリオだ!リオのカーニバルだ!! ピーピーピピー!ドンシャカドンシャカ!! 私の彼女のハーモニーがクライマックスを迎えたその時、不思議な事が起こった! 木の扉が元通り塞がってしまったのだ!
どうしたってこれは密室だ。せっかく今の今まで、開放そのものの空気に満ち溢れていたのに。風通しが良いなんてもんじゃなかったのに。私は諦め、床に散らばった紙吹雪を片付ける。冷めた紅茶のような気分だった。
『正方形は溶けてなくなる』
「はい、どうぞ」  男は私に未完成のそれを渡した。  白と青の幾何学図形が……って高尚なこと言おうとしたけれど要は折りかけのオリガミ。 「キミなら分かってくれるよね」
「ううん、わからない。」 私は折りかけのそれの続きを折り始めた。 山折りで膨らみを作り、そっと隙間に差し込む。 「でも、貴方が求めてる答えは、きっとこれじゃないわよね」 私はそれを、手裏剣に折り直した
ただの紙切れごときが人の手にかかれば真心の証にもニンジャの武器にもなる。それは折り紙に限ったことじゃあない。人の手にかかれば… 「《彼》の手に掛かった者の行方を。谷折りの線みたいに辿れれば」
「アイヤアアーーー!」 その時。書架の隙間から、雄たけびを上げてニンジャが飛び出してきた。これが《彼》の追っ手か。私はページをちぎり取ると指示に従ってスリケンをつくった。キーは谷折りだ。つまり……。
私はすごい速度で谷折りを行った!爪の先を使い背中に隠し持っていた30cmの定規を使い折り曲げる。1mmのズレもない。完璧な仕事だ!これはオリガミ界のシンギュラリティだ!
すると、私の肩を叩く人がいた。 何気なく振り向くと、そこには驚愕の人物が立っていた。 「あなたは……SEIKOの社長さん!!」 「君、素晴らしい技術を持っているね」
どうしよう。気まずい。私は悟られないように、何気ない素振りで袖に手首を引っ込める。つい先日スマートウォッチに変えたばかりだ。まさに正方形の液晶画面を持つ… いや、待てよ。正方形じゃない。盲点だった。
このスマートウォッチには緊急通報をする機能がある。外部と通信しているのだ。私は通気口になんとかねじ込ませると、棒の先につけたスマートウォッチをさらに奥に突っ込んだ。思い切り投げる。鍵が開く音がした。
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solitude-klang · 23 days
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ONE MAN TOUR 2024 春時雨@高松DiME
Tumblr media
今日もまためっちゃ良いライブだった
箱スタさんが整番どこまで呼んだかわかんなくなってギャさんに聞いてたところから良かった
体調やテンション関係なくあの中にいたら自然と暴れちゃうみたいなすごい熱量 満足感すごい
それはもはやうざいのボーカルを聴いただけでこれはいつもと違う 今日すごいやつだってわかった
1曲目にして"ウォーウォーウォウォ"の一体感出来上がってて既に超楽しい
蜘蛛の糸 左寄せからどす黒い 広いステージを存分に使って下手上手とめちゃ動く
私の勝手な解釈だけど今日のセトリは2~3曲ずつテーマでまとまって聞こえた
最初は精神異常者パート(笑)排水口だったかな マイクを口に咥えたまま歌う声と身体の動きが気持ち悪くて
いつも虫に見える楽器隊 気持ち悪い
一葵さんの長すぎる袖 気持ち悪い(内蔵みたいに見えるw)
このバンドを好きじゃない人が見たら引く勢いの異常なパフォーマンスがかっこよくて惚れ直した
消えたい~君の心臓までずっと排水口の生物が一葵さんの中入ってたって感じ
春さんのギター前振り
マーマレード(!!ってなる笑)春さんがギターを持ったまま床に崩れるようにして座ったのはパフォーマンスだったのかな(袖からスタさんが検証してるように見えたw)
その でも 座って弾くのが切なくて良かったよね
キオクでは別に何かを思い出したわけでもなくただその音の中にいるだけで涙でた
今日は…会えますか…会えませんか…っていう消え入るような細い声に更に涙でた(笑)これは花占い
この3曲は思ひ出縛り
僕とOD最初の"僕とODOD" をシャウトしていて
こんな 拳が上がる曲なのにこんなに哀しい ザアザアらしいの代名詞
真っ赤な照明に包まれたシルエットが前へ出ると
カ ミ ソ リ
フロアの沸き方も異常でたくさんの手の向こうでギターを掻き毟る姿もまた自傷的で美しい
自傷縛り…w
反骨ドッグの三三七拍子は春さんのホイッスルに先導されながらw 一旦一葵さん捌けて 朗読のBGMが聴こえるとチェックのベストに片腕通した状態の一葵さんが戻ってきた(笑)
ラストは朗読~夢遊病 この終わり方アダルティで好き
~アンコール~
MCは昨日うどん食べ行ったら閉まってた話と
一葵さんがコンビニ行ったら車に轢かれかけた話と
片手にストゼロ持った零夜さんに遭遇した話
やっぱ 声とか掛けるんですか?
ま 知り合いとかだったら
知り合い(俺)
高松のうどん屋さんは月曜日休みが多いらしくて昨日みんなうどん食べれてない話
エルム街に四国はなかった
などでした
子守唄春ギターと一葵さんの"眠れ"からお客さんをピンポイントで眠らせる長いバージョン
照明暗くて一葵さんの視線の先が掴みずらかったのか眠り間違いなどもありながらww
あのびじゅ祭を思い出したりしていました
地元 高松 帰ってくる度 もっと頑張んなきゃなって 思います
バンドを始めた時の気持ちを いつまでも忘れたくない ザアザア始めて 最初に作った曲やります
からの「うそつき」 は彼等の思いが届いてすごく良かった
ほんとによかった
また帰ってくるぞ!って捌けると
フロアに響き始めるWアンコール
終演のアナウンスが流れてから再度ステージへ
Wアンコ 時間がないからーーー!と言いながらwララララ を演奏してくれました
春さん凱旋 本日最後の言葉は帰れ!
【Setlist】
うざい
ラブレター
蜘蛛の糸
どす黒い
排水口
消えたい
君の心臓を食べてしまいたい
マーマレード
キオク
花占い
僕とOD
カミソリ
反骨ドッグ
(朗読)
夢遊病
~en~
劣等生
子守唄
感電、けがのおそれがあります。
「うそつき」
~Wen~
ララララ
https://x.com/xaaxaa_official/status/1785292970234917126?s=46&t=uhUsDFLEfL0OfgvCYi4Eog
このメモにMC足してブログ持ってく予定
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