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yamanaka-lab · 5 months
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2023建築レビュー#3
・建築レビュー#2(設計者: Asymptote Architecture ) 発表者 :杉山 (M1) 講評者 ;小俣
第3回の建築レビューでは「アシンプトート・アーキテクチャー」というアトリエ事務所を取り上げた。
彼らのコンセプトは、「非の打ちどころのない空間性」を定義し、探求することだ。パラメトリックツールの活用、環境問題への取り組み、建築の形式性の発明欲求など様々な関心を持っているが、それらはバラバラなものではなく、一つの問題意識の構成要素であり、これらに対し包括的に取り組んだ先に目指すものがあるという姿勢だ。つまり、このような芸術と建築の間に働く引力と斥力による振幅を認め、「非の打ちどころのない空間性」へと漸近していくことが彼らのコンセプトといえる。以上を踏まえ、彼らの作品を三つ見ていく。
事例1『 Steel Cloud』アメリカ環太平洋移民を記念するモニュメントの国際コンペ(1988)
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この作品は、1988年、アメリカ環太平洋移民を記念するモニュメントの国際コンペにて、アシンプトート結成前の二人が受賞した作品になります。建設されることはありませんでしたが、ハリウッドに通じるハイウェイの上に、壮大な「都市のゲートウェイ」として計画されました。
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プログラムとしては移民博物館、水族館、庭園、劇場、映画館、図書館などが計画されており、華奢なスチールで繋がれたそれぞれのヴォリュームは互いに干渉し、振動し続けます。
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発展するテクノロジーの奴隷となることなく、独自の身体感覚や表現を獲得している点において、近代化の波をうまく乗りこなしている印象です。
いくつも備え付けられたスクリーンや、モニュメンタルな建ち方、部分が振動を共有している点において、様々な速度を持った者たちが通り過ぎていく中で、人々に情報を与える建築としての在り方を試みているといえるのではないでしょうか。
事例2『 Hermitage museum 』モスクワ
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二つ目の作品では、彼らの理念は「情報化社会の実態化」という形で試みられているといえます。この作品は、モスクワ市内中心部近郊にある工場跡地にギャラリーや展示スペース、カフェ、レストランなど様々な機能が複合されている事例になります。デジタル社会において、あるいは肥大化した都市に対して、アーティストや美術館がどうあるべきか。あるいはどのように出会うべきかといった問題意識に対して、建築家・アーティスト・一般人が対等に議論するための場としてデザインされました。
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全体の構成はプログラムを充てたヴォリュームをスタックし、表皮で覆うOMAを彷彿とさせるものとなっています。
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わずかにずれたヴォリュームやその重ね方、不規則な開口による有機的な関係性をスキップフロア的に接続し、利用者同士の接触を誘発するような構成といえます。フィルタリングされているという現状はありますが、様々な分野において、多くの人々がフラットな位置に立つことを可能としたデジタル社会ですが、美術館において美術とアーティスト、鑑��者をフラットな関係性をもって再構築することで相互作用を試みているといえるのではないでしょうか。
事例3『 Yas Marina and Hotel 』アラブ首長国連邦 アブダビ
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三つ目の作品では、「合理的応答により顕在化される非合理」という形で彼らの理念が試みられているように思います。この作品は、アラブ首長国連邦・アブダビにある大規模宿泊施設で、F-1レース場をまたいで計画されるという特異な事例となります。
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10層の楕円形ヴォリューム二つで構成され、方や陸上、方や入り江水域に位置する配置計画となっています。
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F-1レーストラックの上に架かる大きなフリースパンの胴体のような鉄橋がヴォリュームを接続し、レースとその周辺を見渡せる眺望を作り出しています。
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この建築を特徴づけているもう一つの要素である皮膜は、グリッドシェル構造と呼ばれ、流動的なフォルムを作り出す一方で、熱せられた空気をビルのファサード上に排出するスタック効果を補助しています。
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楕円形の立面、複雑なシェル構造を併用することで空と周辺環境を映し出すスクリーンとなります。
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砂漠気候の地域にある入り江に計画されたF-1サーキット場という特異な与条件をテクノロジーにより合理性とともに解決し、同時にレース場をまたぐようにして横たわる流動的なフォルムという極めて表現優位なアプローチの重なりから、いくつも顔をのぞかせるクリーチャーのような建築といえます。
複雑な与件に対して、あくまで合理的な応答に徹することで、プロジェクトの持つ本質的な非合理性と、そこに内在する空間的可能性を体現しているといえます。「非の打ちどころのない空間」の定義はアシンプトートの解釈によるところが多分にありますが、概ね構造と空間および空間体験が断絶されておらず、造形的な美しさも兼ね備えたものといえるのではないかと思います。この際に必要となる他分野の横断を、テクノロジーというツールを用いて行っているというようなかたちではないでしょうか。テクノロジーを駆使する一方で、人間の魂や精神に触れる「言い表せないもの」を体現すると述べているアシンプトートですが、一見、矛盾するものの間を振幅しながら「非の打ちどころのない空間性」へと漸近しようとする姿勢は、加速度的な発展を遂げてきた現代社会あるいは混沌を増していく未来において妥当性を帯びているのではないかと感じました。
・引用
・漸近線アーキテクチャ (asymptote.net)
・漸近線アーキテクチャーへのインタビュー:「私たちは空間エンジニアです」 |アーチデイリー (archdaily.com)
・漸近線銃がモスクワのエルミタージュ美術館と新しい塔の計画を発表 |アーチデイリー (archdaily.com)
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yamanaka-lab · 11 months
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2023建築レビュー#2
・建築レビュー#2(設計者: ARCity Office ) 発表者 :池田 (M1) 講評者 ; 安西 -
建築レビュー第2回目 はARCity officeを取り上げた。
この建築家は2016年に張玉興とHANジンによって設立された建築事務所である。彼らは中国に拠点を置き、活動を行っている。
彼らのコンセプトは「アダプティブリユース」として本来の役割を終えた建築物に対してその歴史性を保護しつつも今までは破棄されたいたような材料などに対して新たな価値を与えることで再生する事に対して重きを置いて活動している。
今回は彼らの建築作品を3つ取り上げて紹介する。
事例1『 Shajing Village Hall 』中国 深セン(2020)
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中国の深セン市の廃墟となっていた発電所を活用し、先祖を称える祭りや結婚式、葬儀にも使われる中国特有の「アンセストラル・ホール」として生まれ変わらせるプロジェクトです。 
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主に物質的側面と精神的側面の両方からの遺跡再生を試み、基本的には、古い痕跡を最大限に保存しています。
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一方、赤く印した、新しい鉄骨構造やガラスは、古い遺跡を支えつつ、挿入または織り込まれることで、古いものと新しいものの絶対的な境界を曖昧にします。
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構造躯体だけでなく、正方形の窓の開口部や、発電所の換気ダクト設置用の丸い穴などの痕跡も、「廃墟構造」の一部となり、これらは歴史を物語り、空間に予期せぬランダムさと謎の感覚を加えます。
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建物の解体時に出た多くの石やレンガなどの廃材は、太い鉄筋で編んだ網に入れて壁をつくり、庭全体の仕切りとして再利用されています。
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事例2『Qiaotou Ruin Garden』 中国 深セン (2019)
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Qiaotou Ruin Gardenは深センの遺跡庭園となっている建築です。この建築は工業用建物をスラブ、屋根、壁、床が一部撤去し「廃墟構造空間」へ変化させました。
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もともとこの建築は1980年代に建てられましたが、長期間の空き家状態でした。そして工場跡地の周囲には広い空き地があり、多くの村人が車を一時的に駐車したり、建設用具や廃材を積み上げたりするのにも使われていました。
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このプロジェクトは、躯体を残しつつ床、屋根、壁を部分的に撤去する方式を採用し、見えない建物の実体を明らかにし、閲覧・活用できる新たな空間を創出します。都市空間におけるサステナブルな建築を目指します。
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ソフト面においても、ビエンナーレなどイベントの開催の影響もあり、村の多くのコミュニティ活動がこの工場跡地で行われるようになりました。
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このように、既存の活用可能な構造躯体を村のインフラとして捉えることで、将来的には、取り壊され、標準化された超高層ビルに置き換えられるかもしれない未来に、この廃墟のシンボルが根付き、発芽し始めることで、廃墟が増える都市化した村も成長が可能であることを証明しました。
事例3『Rejuvenation of Shajing Ancient Fair』 中国 深セン (2019)
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現存する最大の混合型歴史街区であり、歴史的および文化的価値の保護を最大化し、新しい設計コンセプトに基づいて、都市再生のモデルを探求するプロジェクトです。
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主に、約70メートルの模範的な河川修復と景観変換を実施します。同時に、場所の特性を維持することに基づいて、川沿いの代表的な場所を選択し、社会構造と空間の質感の崩壊を避けるために「鍼治療」のようにわずかに介入していきます。
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創造的なデザインと展示の助けを借りて、村人やコミュニティは歴史的遺物のユニークな美的価値を発見し、新しい文化的統合シーンを創造します。衰退する傾向にあった地元の生活コミュニティを活性化することを望んで、さまざまな種類の公共活動を実行するために組織されています。 
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かつてここに流れる川は、貿易と輸送に不可欠でした。その後、川は封鎖され、道路や家が川を占領し、幅2メートルの臭いの溝に変わりました。そこで、水路を2つの層に下層は下水、上層は雨水に分割し、川の原始的な魅力の体験を可能にします。
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さらに、川岸の両側の手すりを取り除くことによって、花の池、座席、橋、遊歩道を設計しました。川岸のスペースは日常生活に回帰し、人々が楽しみ、体験できるシーンになりました。
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川全体を「歴史的シーンの博物館」と見なし、川の景色を一望でき、村人が気軽に休憩して交流できる小さな居場所を与えます。
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こちらは、公衆トイレの屋根を使用して、大きな階段などを含むスカイブリッジシステムを構築し、村人が座ってリラックスしたり、2階レベルで歴史的建造物を見学したりできる屋外広場に変わりました。
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以上のように固有の展示やデザインは、一種の保存と活性化、風景と景色、更新と郷愁まど...さまざまな要素を組み合わせて、過去と未来の時間を編んでいきます。時間は全世界の共通のシルエットであり、すべての人の体が感知できる最小の体験ユニットでもあるからこそ、この実験的な行動により、時空間進化が始まることを期待しています。
私はARCity officeの設計について、主にはサスティナブルというコンセプトでありながらもこれは熱や風などの環境面ではなく中国の急速な発展に伴う建築的な資源を見直すことがこれからの中国の都市を引き立てる存在になりえるように感じた。
さらに建築的な操作としても、廃墟を受け入れつつもパッチワーク的な建築操作によって基礎、梁、柱を含む既存のコンクリート構造を補強しつつも再利用することで古い廃墟の周りに新たな建築が巻き付くことでノスタルジアな感覚が生まれるのではないかと感じた。
古いもの・新しいもので区別をするのではなく、維持しどう現代に繋いでいくのかを考えていくことが持続となるのではないかと考える。
山中は、現在急速に発展している中国だからこそ、歴史的価値のある建物というのは、ヨーロッパにあるような千年単位のようなものではなく、数十年レベルでの更新が起こっている所に中国の建築の魅力が��ると述べた。
また、廃墟をより廃墟らしく仕立て上げているという建築の見方をすることがこの建築の魅力を感じさせると述べた。
引用: Archi Daily
https://www.archdaily.com/974458/rejuvenation-of-power-plant-arcity-office?ad_source=search&ad_medium=projects_tab
https://www.archdaily.com/946133/qiaotou-ruin-garden-arcity-office?ad_medium=widget&ad_name=more-from-office-article-show
https://www.archdaily.com/951504/rejuvenation-of-shajing-ancient-fair-arcity-office?ad_medium=widget&ad_name=more-from-office-article-show
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yamanaka-lab · 1 year
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2023建築レビュー#1
・建築レビュー#1(設計者:URBANUS) 発表者 : 安西(M1) 講評者 ; 小野寺-
建築レビュー第1回目は、中国に拠点が置かれているURBANUSを取り挙げる。
URBANUSは1999年に劉暁都、メン・ヤン、王輝によって設立され、深センや北京を中心に活動する建築家集団である。
彼らは社会的ネットワークや歴史的な場所で繰り広げられる都市の更新、保存、再生プロセスを都市の記憶や都市現象から探すことで、新たなまちの活性化を目指すことをコンセプトとして設計を行っている。
今回は、彼らが作り上げた3つのリノベーションの事例を紹介する。
 事例1『Kingway Brewery Renovation』、中国 (2022)
深センにあるこの建築はかつて醸造所として使用されていた。1980年代の急速な都市開発に伴って周囲の建築が取り壊されていく中、この建築は深センが発展してきた象徴として残され、現在は産業遺産として残されている。
全体の構成として、産業遺産である既存の建築を分散的に残し、全体的にかさ上げすることで、外部は展示スペース、新たなプラットフォームとしている。また、南側の都市広場から始まり、A、B、C、D と通過し、北側にある公共広場までを通ることで、キングウェイ ブルワリーの物語を表している。
チームは、歴史的産業遺産の保存と再生は、場所だけでなく精神も回復できるという信念のもと、その豊かな記憶と遺産を再発見し、強調し、増幅して、新しいアイデアと無限の新しい可能性を生み出し、新しい命を吹き込む必要性を訴えている。
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事例2『The Renovation of a Little House in a Historical Neighborhood of Guangzhou』、中国 (2018)
このプロジェクトは、1985年にレンガとコンクリートで作られた家のリノベーションである。この家の最大の特徴は曲がりくねった路地の中にあり、隣家との幅が80cmしかないという立地にある。チームはこのような小さく暗い建築を、日常生活の重要な機能としてのインテリアから改修を行い、特に床板を削ることで、建物全体に一体感を生み、居住空間に連続性を持たせることを目指した。
階段など構造的な補強を行いながらも、垂直方向の循環に対して意識を持ち、さらに壁面のさまざまな位置に配置されている窓は、各フロアに光を取り込むためだけでなく、視線の抜けを意識して配置されている。外部の細く暗い街路から内部に入り、1階から最上階へと昇っていくうちに、暗闇から徐々に明るみのある空間が姿
を現し、抑圧から解放されていく空間構成になっている。外壁は周囲の古い建物と色が調和するように、外壁にはあずき色の石を使っており、密集地の中に心地よい場所としての空間を作っている。
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事例3『Holy Fire Lit Place for the Second China National Youth Games 2019 at Xihoudu Archaeological』、中国 (2019)
この建築は中国全国青少年競技大会で使用された聖火の点灯場所である。この場所は180 万年前に人類が最初に火を使用した火の遺跡として残された場所であり、中国の山西省に構える。このプロジェクトでは新たに聖火イベントを開催するために、旧聖火広場を改修することが求められ、既存の設備を壊さずに新たなデザインをすることが求められていた。そこでチームは人類文明における火の物語の三部作を「火の発見」、「火の儀式」、「火の征服」とし、人類の歴史を追体験する空間を構成した。新たに作られた聖火広場は、自然の中に神秘的に作られ、訪問者を原始的な風景に導く空間となっている。特にこの場所は人類が最初に使用した火の遺跡でもあることから、黄河の最も壮大な場所としての遺跡の空間体験をしつつも、同時に中国の青少年競技大会の聖火が灯された場所として、中国の現代スポーツ史にも記憶が刻まれていく場所になっていく。
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私は以上3つの事例から、URBANUSは建築の形態・規模・用途に関わらず、既存の建築が紡いできた歴史的価値や人々の記憶を深く丁寧に読み解く建築家であると考えた。既存建築の身体性を残しつつ、新たな空間を付加していくことで人々の記憶を継承しつつ、豊かな空間を創出していると感じた。また、既存建築の機能に応じて人や隣家、歴史など、継承する記憶の対象を繊細に変えていることで、まちに新たな可能性を吹き込んでいると感じた。
山中は、彼らのいう「社会構造」にこそ設計者のアイデンティティが含まれていると捉えた。また、近年の中国の産業遺産建築は急速に発展した影響で比較的新しい素材が使用されており、歴史的時代差がないためにコントラストが無いように見えると捉えた。遺跡の事例では、新しいものを使って古いものを作り出していると捉え、これまでの歴史的建造物に対するアプローチとは異なると評価した。
引用
https://www.archdaily.com/998283/kingway-brewery-renovation-urbanus?ad_source=myad_bookmarks&ad_medium=bookmark-open
https://www.archdaily.com/920197/the-renovation-of-a-little-house-in-a-historical-neighborhood-of-guangzhou-urbanus?ad_medium=office_landing&ad_name=article
https://www.archdaily.com/946576/holy-fire-lit-place-for-the-second-china-national-youth-games-2019-urbanus?ad_medium=office_landing&ad_name=article
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yamanaka-lab · 1 year
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2023 #17
<M2> 有賀未貴 池部海都 伊藤菜々子 榎本海月 久米夏子 後藤龍太郎 鈴木佳奈 新倉未友 長谷川理奈 藤井朋美
<M1> 安西祥大 安藤秀太 池田桃果 伊藤幹也 梅宮大空 小野寺翔 小俣陽也 黒川星奈 杉山陽祐 鈴川英輝 田仕光 紫安洋平 安村文汰 楊井愛唯
<B4> 池田椋 遠藤美沙 河上晃生 川島瞭 工藤朱理 倉光楓 小林由実 塩澤翔 神保太亮 妹尾美希 高松えみり 野村月咲 長谷川侑美 原田僚太
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yamanaka-lab · 1 year
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2022建築レビュー#7
-建築レビュー#6(設計者:Allies and Morrison)発表者:藤井(M1)講評者:後藤-
建築レビュー第7回目はアリーアンド・モリソンを取り上げた。
この建築家は、ロンドンとケンブリッジを拠点に活動している建築設計事務所について紹介していきます。インテリアから建築、マスタープランの計画に至るまで幅広い規模のプロジェクトを行っている。
1984年にボブアリート・グラハム・モリソンによってサスティナブルな建築設計をすることを理念に創設された。
この建築家には5つのサスティナビリティ戦略がある。
1つ目は『既成観念に捕らわれない』ことだ。社会文化や微気候などの地域の特性について理解を深めてから設計を進めている。
2つ目は『進化と洗練』です。同様の用途の建物を計画する場合でも継続的にアプローチを改善していくことで洗練されたデザインへと進化させる。
3つ目は『様式ではなく手法』です。サスティナブルデザインは意匠性よりも性能にこだわる点だ。
4つ目は『価値観』だ。経済的な実現可能性と環境影響のバランスを考慮しながら計画をしていく必要がある。
5つ目は『長寿命』だ。建物や場所の変化へ適応できる能力を高めた建物を建設することで将来的な二酸化炭素の排出量を抑えることができる。今日は、このようなサスティナブルデザインの手法を用いたプロジェクトを3つ紹介する。
事例1『Msheireb Downtown Doha』Doha,Qatar[2010-2020]
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ムシェイレブ・ダウンタウン・ドーハはドーハ湾からほど近い港湾都市だ。
かつてのドーハではシッカと呼ばれる路地網の周りにアドービという砂、砂質粘土とわらまたは他の有機素材で構成された天然建材で作られたシンプルな中庭が配置されていたため、自然な日陰ができ、歩行しやすい都市であったと言う。
しかし、他の湾岸都市と同様に、ドーハも近年の急速な成長によって、自動車中心の都市機能が飛躍的に拡大した。このような流れを変えることを目的としてこのプロジェクトは始動した。地区全体の構成としては、市民会館や文化施設などの公共施設を始め、住宅や礼拝のためのスペース。観光客のためのホテルやオフィス。ショップやレストランなどの機能がある。
ムシェイレブ・ダウンタウン・ドーハでは、7つの開発の指針が設けられており、これに沿って計画がされている。
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1つ目は「敷地全体のインフラストラクチャーの開発」。街中にトラムを走らせることで、車に頼らなくても移動できるようになっている。
2つ目は「コンパクトな街区で構成されるヒューマンスケールな都市構造」。奥に見える近代的な都市と比較しても分かるように、ムシェイレブ・ダウンタウン・ドーハは高くても5層程度のスケールで街並みが構成されている。
3つ目は「カタールの伝統的な建築の形態や表現と新しい建物の連続性」。赤い線で囲われた部分がムシェイレブ・ダウンタウン・ドーハになるのですが、計画エリア周辺の建物と同様の形態であることが分かる。
4つ目は「素材への共通のアプローチ」。左は商業エリア、右は住宅エリアの写真になるのですが、どちらも共通の素材で建物が作られていることが分かる。同じ材料を用いることで用途が異なる場所が混在していても街全体に統一感を出すことができる。
5つ目は「伝統的なイスラム都市の特質である『インフォーマル』な建物配置」。道路側に開くのではなく、中庭を設けたイスラム建築と同様の特徴が見られる。
6つ目は「コロネード、オーバーハングの利用」。建物の低層部をセットバックさせ、上部を張り出させ、列柱を配置することによって日陰を生み出す。
7つ目は「日陰の道、屋上、中庭、テラスを一体化し、快適に歩けるようにする」。先ほどのような建物の形状や配置を工夫することで暑い気候であっても歩きやすい街になっている。このように、再開発される都市であっても土地のコンテクストに着目することで、土着的な環境を作り出している。
事例2『Madinat al Irfan』Muscat,Oman[2015-2044]
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マディナット・アル・イルファンは2015年に始まり、40年計画で行われている現在進行形のプロジェクトだ。
計画国であるオマーンは国連開発計画が人間開発指数の算出を開始して以来、最も指数が改善されたとして位置づけられた国である。
国において、この建築は、首都のマスカット市内に新しい都市中心部を建設するというプロジェクトとなる。計画エリアの大部分は未開発の土地で、アラビア半島に特有の“ワジ”と呼ばれる枯れ川が敷地の一部に含まれている場所が建設予定地となっている。
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全体の計画は、マディナット・アル・イルファンは地質学的特徴であるワジを中心として、特殊な地形を活かし、都市機能を点在している。配置計画は、北部に密集した中心地域、南部にある丘の上に住宅系の地域という構成となっている。
中心地域にはモスクや商業施設が集められ、住居系の地域にはヒューマンスケールの街並みが広がる場所や、ワジの眺望を楽しむことができる場所、ワジの中に作られた公園などがある。これらの都市施設は、ワジの上に橋を通すことによって繋げられ、貴重な自然環境を壊さない開発がされている。
マディナット・アル・イルファンは、まだ建設中のプロジェクトだが、アラビア半島の独特な地形であるワジに敬意を払うことに重きを置いた事例である。
事例3『Wood Wharf』London,England[2014-2035(完成予定)]
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このプロジェクトは、ロンドンの旧港湾地帯の中心であるアイル・オブ・ドックスに位置するカナリー・ワーフを東側へ拡張するプロジェクトである。
ウッド・ワーフは、世界有数の金融センターとして朝9時から夕方5時までしか使われていなかったカナリ-・ワーフの場に、生活や遊び、リラックスなどの機能を加えることで、24時間365日営業の都市型地域へと変化させることを目的としている。
袋小路や行き止まりではなく、直線的な街路パターンを採用することで、人々の移動を促し、周辺のエリアと論理的に接続させ、規則正しい形状で都市ブロックを形成することで、街の一部であると感じられるように計画されている。
また、グランドレベルを活性化し開放することで公共空間を豊かにし、地下にあったショッピングモールを地上へと移動させることで、通りに活気を与えている。
敷地内には広場や公園を配置し、建物の区画ごとにオープンウォーター、パブリックスペース、公園のいずれかに面するようにすることで、敷地内の価値を分散させている。これは、1階部分の多孔性と豊かさを表現した模型で、建物そのものよりも、その間にある空間が重要であることを示している。
また、各区画に「優位な用途」を設定し、各区画の用途の51%のみ指定している。
51%がワークスペース、残りは文化、住宅、小売、学習で構成される区画もあれば、51%が商業、残りが住宅と宿泊施設のような区画も作ることができ、このような仕組みを構築することで、建築区画は特徴的なエリアを定義しながらも、独創的な新しい用途を可能にし、急速に変化する市場に対応するために必要な柔軟性を得ることができる。
ウッド・ワーフは、ウォーターフロントという他の2つのプロジェクトよりもコンテクストが弱い土地の中で、設計のヒントを見つけ出し、既存の街区割りを引用しながらも時代に合ったデザインを付加していくことで、一体的にまちづくり運営している。
私は、〈Msheireb Downtown Doha〉に関し、都市を取り巻く環境への配慮を感じられ、あえて普遍的な建築形態を用いいることで都市を引き立て、建築ではなく、都市に着目してもらうための工夫ではないのかと考えた。また、都市を構成する建物に素材の統一による町並みとの調和や、建築空間としては伝統的なイスラム建築の所作を感じ取る事ができ、風土・歴史を尊重しながら開発している事がわかった。
山中は、Msheireb Downtown Dohaが魅力的だと述べ、中庭中心の配置計画、直線的なグリッドの回避などの点でイスラム文化を継承・再現しているのではないかと考えた。
引用
https://www.archdaily.com/966087/msheireb-downtown-doha-masterplan-allies-and-morrison-plus-aecom-plus-arup?ad_medium=office_landing&ad_name=article
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yamanaka-lab · 1 year
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2022建築レビュー#6
-建築レビュー#6(設計者:Haworth Tompkins)発表者:後藤(M1)講評者:池部-
建築レビュー第6回はHaworth Tompkinsを取り上げた。
1991年に建築家グラハムハワースによって設立され、ロンドンで活動する建築家集団である。
再生可能な実践、生態系境界線を壊すことなく建築物に対する社会のニーズを満たすという枠組みによって、従来のサステナビリティの概念を再考している。主に既存の建物の改修・保存を行っている。保全と遺産 、歴史的文脈指定を制約としてではなく、豊かさと可能性の付加的な層として捉え設計している。
事例1『Bristol Old Vic』
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このプロジェクトは2018年の前面道路側の計画であり、グルジア劇場の新しいファサード改修とパブリックスペースの提案である。
2012年にオーディとリアムの改修を行った。ロンドンで最も古い歴史を持つブリストル・オールドヴィック劇場の、第一級建造物である劇場正面スペースとスタジオシアターブリストルの市民生活と公共空間の中心に劇場を繋げることを目的としている。
既存と提案
左部分オーディとリアム側の床を減築し、スタジオ部分に床を積層させることで、壁がむき出しになりそこに新しくエレメントを挿入している。また、右部分のロビーを減築しホールを作る。既存のスタジオがあった場所にパブリック機能を付加している。
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空間の中心は、ジョージアン様式の講堂の大きく変化したファサードで、通りから初めて見ることができ、新しい開口部によって歴史的な改造の痕跡が上書きされるようになっている。
ホワイエは、街路の延長線上にあり、屋根のある広場であると同時に、独立した建物であることを意識。この空間は、構造材とガラスによってフレーム化され、覆われており、部屋の奥まで日光を取り込むことができる。
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内側からの視点
オーディとリアムを閉じ切らない操作
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中二階のギャラリー、曲がりくねった木製の階段、展望台は、ショーの前後に観客全体が上下左右に移動できるようにし、ホワイエはカフェ、バー、集会所として地域の人々に一日中楽しんでもらえるように設計されている。
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南側に面した通りのファサードは、パブリックアート作品として構想され、手で操作できる可動式の日除けシャッターに、1766年にギャリックが行った就任演説と、ブリストル市の元詩人マイルズ・チェンバースの詩のテキストを組み込んでいる。劇場の長い歴史の重要性を強調すると同時に、現在および将来の地域社会全体の生活における劇場の役割に期待している。
メインホワイエに加え、新しいスタジオシアターは、1階と地下の旧クーパーズホールの樽貯蔵所を利用し、歴史的な壁面を生かし、通りの窓から日光が入るようになっている。1階にあるオリジナルのCoopers' Hallは、通りを見下ろす大きなパブリックルームに改築され、ホワイエの延長として、多目的ルームとして機能する。
事例2『Punch drunk』
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ロンドン南東部にある劇団の新拠点、仮設エントランスパビリオンでオフィスとしての機能する。
仮設パビリオンは「One Cartridge Place」と呼ばれ、ショーを開催する3つの指定建造物の間の車道を横断し、エントランスホワイエ、ボックスオフィス、公演中に建物をつなぐ内部通路が含まれている。
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グレードIIに指定されているキヤノン製造倉庫の「寄り棟」部分にクロークとトイレを設計し、仮設パビリオンに接続している。
Punchdrunkの最初のオフィススペース計画や、倉庫内の中核となるショーのインフラをサポートし、ショーのデザイナーであるLivi Vaughanと共同で防火区画、中二階、空調、エレベーターなどの技術計画を作成した。内部レイアウトは、このビルが初めて完全にアクセス可能になるように開発された。また、この工事は非侵襲的かつ可逆的であることを意図している。
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一時的な寿命と、歴史的建造物や凹凸のある路面との接続ディティール
軽量な木造フレーム構造は、砂袋の基礎システムによって支えられた内部の床レベルを複雑に交渉している。ポリカーボネートと鎖帷子の装飾が施されたリンクビルの素材パレットは、隣接する第二級産業建築の重要性を認識させ、同時に陽気で快適な目的地であることを告げている。
事例3『Battersea Arts Centre』
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コミュニティや劇場で使用するための市庁舎の文化施設への再生を行っている。
バタシー・タウンホールは、1893年にE・W・マウントフォードが設計したロンドン南西部の美しい作りの市民会館で20世紀初頭の参政権運動や労働運動の誕生に重要な政治的役割を果たしたことからグレードII*に指定されている。1974年以来、このアートセンターは、英国で最も重要な新しいパフォーマンス作品のインキュベーターのひとつとみなされている。
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2015年に建物の一部を焼失した、火災後の大ホールの再建
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赤煉瓦部分が既存で、白いレンガ部分が補強された部分である。
光井戸を選択的に剥がし、補修することで新しい公共の屋外中庭パフォーマンス空間を作り出したり、使われていない屋根裏や屋上を組織のオフィスや庭に転用したりすることが含まれている。
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建物の既存の豊かさとアーティストによる使用パターンを活用している。
即興的で侵襲性のない改造が数多く行われ、変化のための戦略を試し、遊び心がありながらも厳格な建築言語を発展させてきた。
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以前の装飾的なしっくいの丸天井であったが、新しい木製のグリッド天井を作り、演劇の可能性とはるかにクリアな音響を可能とした。
ホールとその周囲の廊下の壁の表面は、ポンペイの火災後の豊かさと複雑さで保存されている。
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劇場用の建物を、既存の劇場観客の市場占有率を競うような個々の存在としてではなく、コミュニティ全体が利用でき、かつ有意義な、多様で複合的な市民空間として捉えることができる「文化的コモンズ」の確立に向けて利用させることを望んでいる。
私は、〈Bristol Old Vic〉に関し、空間の中心のヴォイドにおいて、講堂のファサードが内側に覗かせていると感じる。この構図が内側に都市が拡張されているような感覚を彷彿とさせていると感じさせた。さらにそれら“旧”の要素に対して、 “新”のマテリアルを組み込んで空間を構成していることで、歴史の痕跡が浮き彫りになって鮮明に見えるように感じた。総じてあらゆるマテリアルを組み合わせていることで空間に新しい秩序を付与していると考えた。
また、〈Battersea Arts Centre〉では、火災で残った市民会館の赤煉瓦の壁面を補強する形で、対比となるような白いレンガを用いて一つの壁面を再構築している点が何か、保存(歴史の保存/構造の保存)を目立たせて 行っていると感じた。さらにもともと劇場用であった空間の丸天井に対して、音響効果の増加が期待できる木製のグリッドを用いて天井に新たなスキンを付与している点��、環境設備という面からの旧マテリアルへの新しいアプローチであると感じた。
山中は、Bristol Old Vicが魅力的だと述べ、背面の壁はストリートに面していないから雑に作った可能性があると捉えた。
今回は素材的な意味で旧の部分が荒々しく感じる、と述べた。
引用
Archdaily https://www.archdaily.com/910720/bristol-old-vic-haworth-tompkins
https://www.archdaily.com/983679/punchdrunk-entrance-pavilion-haworth-tompkins?ad_medium=office_landing&ad_name=article
https://www.archdaily.com/910491/battersea-arts-centre-haworth-tompkins?ad_medium=office_landing&ad_name=article
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yamanaka-lab · 1 year
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2022建築レビュー#5
-建築レビュー#5(設計者:Carmody Groarke)発表者:池部(M1)講評者:伊藤-
建築レビュー第5回はCarmody Groarkeを取り上げた。
Carmody Groarkeは、ケビン・カーモディとアンディ・グロークらによって2006年に設立された建築事務所であり、それぞれの名前を組み合わせた事務所名となっている。
ロンドンに拠点を置き、数々の建築賞暦のある建築家達です。
彼らのコンセプトは、「都市が抱える文化的問題を、空間・光・素材などの様々な文脈から意図的に追求し、解決するための建築デザイン」である。
今回は、彼らの建築作品を4つ取り上げて紹介する。
事例1『Manchester’s Science and Industry Museum』Manchester(2021)
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ギャラリーは、1880年代に建てられた建築物であるニューウェアハウスの1階部分にある。今後数年間で、博物館は、既存の歴史的建造物やスペースと、ヴィクトリア朝の鉄道高架橋のネットワークとの間に、敷地全体の方向性とアクセスを強化することを目指している。
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美術館のロウアーヤードからの新しいエントランスは、「パイナップルライン」とも呼ばれる新倉庫に線路が通っている歴史的な高架橋のアーチ型の下屋を修復し、このエリアを明るく心地よい空間に変え、来館者の方向性を明確にし、到着の気分を盛り上げるものとなっている。
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新しいギャラリーは、グレートウェスタン鉄道によって1882年に建てられたニューウェアハウスのアーチ型の地下室の西端に位置する。一連の操作により、古いただの保管スペースであった空間は1つの空間に合併され、世界クラスの科学展示物を展開し、さまざまな巡回展を開催する博物館としての魅力を高めている。
ガラス繊維でできた高さのある壁は、外から内へと訪問者を迎え入れる。また、「頭上の貨物車の重量を支持するために設計された、ヴィクトリア朝の重い構造物の重さ」を軽減し、さらには歴史的建造物を永続的に維持していくためのメンテナンス作業をするために取り外しが可能になっている。新しいグラスファイバー製のパネルは一つ一つ手作業で鋳造され、周囲の風化したヴィクトリア朝のレンガ造りを引き立てるためにテラコッタ色に着色されている。
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この新しいギャラリーは、広大な倉庫の1階部分の広さと特徴を���かして、鋳鉄とレンガの複合構造、高さ5mのアーチ型天井、そして上部の歴史的な鉄道路線とプラットフォームの形状に沿うように配置されている。ギャラリー内の歴史的建造物も復元され、元の倉庫の壮大さとスケールを体験しながら、新しい展示体験ができるようになっている。
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事例2『The Hill House Box Museum』London (2019)
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ヒル・ハウスは、チャールズ・レニー・マッキントッシュの最も重要な作品の一つで、スコットランドで最も高く評価されている建物の一つであり、20世紀初頭のヨーロッパの代表的な建築でもある。グラスゴーの西30kmに位置するヘレンズバーグにあるこの建物は、1902年に出版社のウォルター・ブラッキーとその若い家族のために建てられ、クライド川河口の南のパノラマビューを見渡すことができる。
★チャールズ・レニー・マッキントッシュ
スコットランドの建築家、デザイナー、画家。アーツ・アンド・クラフツ運動の推進者であり、スコットランドにおけるアール・ヌーヴォーの提唱者の一人でもある。
この住宅は先鋭的なレイアウトと3次元的な空間進行を提案し、建築はスコットランド・バロニアルの絵画的な伝統の中に組み込まれながらも、マッキントッシュはヨーロッパの他の地域で起こっているモダニズムの現代技術の進歩にも明らかに影響を受けている。このように伝統と発明が混在した珍しい建築であったため、長期にわたる水害という根本的な問題が発生し、この家を存続させるために大規模な保存修復プロジェクトが必要となっていた。
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修復の間、この家を視界から遠ざけるのではなく、より積極的な保存へのアプローチがとられている。最大15年かかるとされるこの保存修復の不可欠な要素として、このプロジェクトは、ヒルハウスを「芸術品」として収め、保護するための「大型の」仮設博物館を提案し、同時に、訪問者がこの家にアクセスできるよう維持することを提案している。
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この安全で保護された建築作業の領域で、「博物館」は、ヒルハウスの周囲を高い位置からぐるりと囲む高架歩道によって、進行中の保存修復を一般の訪問者に体験してもらう仕組みになっている。博物館の囲いには、独立した木造の建物にビジター用の施設も設置される予定である。
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新しい美術館の建築的アイデンティティは、抽象化された巨大なガーデンパビリオンで、その壁はステンレススチールのチェーンメイルメッシュで全体が覆われている。この半永久的な囲いは、雨に濡れた既存の建築がゆっくりと修復される間、元の家の基本的な「乾燥室」のシェルターとなる。この繊細な囲いは、昼夜を問わず、マッキントッシュの建築の象徴である風景を遮ることなく眺めることができるようにするものでもある。
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事例3『Windermere Jetty Museum』Windermere(2019)
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蒸気船博物館といいます。この新しい博物館は、湖水地方国立公園ウィンダミアの海岸に、国際的に重要な船のコレクションを収蔵している。蒸気船、モーターボート、ヨットなどの展示スペースがあり、その建築と湖に関するストーリーが語られています。この場所は、歴史的な砂利採取工場を再利用しており、船の積極的な保護プログラムによって、この場所の活動を継続している。人、船、水、そしてこの場所の絵のように美しい産業遺産の再解釈を提供する公園の風景の中で、訪問者が建物の中で体験することに重点を置いている。
一棟の大きな建物ではなく、平面が正方形の小さな建物たちは、そのコンテクストによりふさわしいスケールを生み出している。そのため、美術館は土地や水と地形的な関係を強く持っている。波止場は博物館の中心的存在で、湖を体験の中心にすえ、水面下でコレクションを展示する。メインエントランス、保存ギャラリー、解説、教育、カフェなど、来館者の動線を構成する他の建物は、すべて波止場の周りに集まっているが、洪水の危険性から逃れるために、基礎が高くなっている。保存修復工房は、作業船渠の水面近くに設置された独立した建物である。
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この美術館の建築言語は、ウィンダミア湖周辺にあるヴォイジーの豪邸やブロードレイズハウスやチャールズ・ヴォイジーのブロードレイズハウスの大きく張り出した軒や、湖水地方の典型的な農業・工業建築から引用した、ヴァナキュラーな屋根の型式によって特徴付けられている。建物の形態はどこか親しみやすいものですが、張り出したキャノピーによって、建物の内部空間が全天候型のシェルターとして景観に溶け込み、特別なものとなっている。内部は、湖岸に面した大きな主室を中心に、付属空間と外部キャノピー空間が左右対称の断面構成でバランスよく配置されている。
美術館は、陸上と水上、さまざまな高台から四方八方から見られる。そのため、屋根と壁が形式的な構成において重要な地位を占めている。これらの要素に建築的な一貫性を与え、美術館の建物が全体としてまとまったものになるように、酸化銅が決定的に重要な素材として使用される。銅を折り曲げ、真鍮の留め具で規則正しく留めることで、高層部に独特の質感を与え、さらに時間の経過とともに風化していくことでその質感を高めている。非常に大きな窓とドアによって、ボートは容易に外と中を行き来することができ、建物と建物の間のミュージアム・ルートも明確に読み取ることができる。
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自然な銅の外観は、モノリシック(巨大)なコンクリートの基壇とは対照的に、建物に軽快さを与えている。また、外装を包むじゃばらが水平方向に繰り返されることにより、美しい湖のコンテクストを表現している。
事例4『7 July Memorial』Hyde Park(2005)
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2005年7月7日、午前8時50分頃、ロンドン地下鉄トンネル内の3カ所でほぼ同時に地下鉄の車両が爆発し、同日午前9時47分頃ラッセル広場近くのタビストック・スクエアを走行中のダブルデッカーバス、デニス・トライデント・2型1台が爆発した。
カーモディ・グロークは、この最悪な同時爆破テロによって亡くなった犠牲者の遺族と協力し、恒久的な追悼記念碑を設計した。
ハイドパークに位置するこの記念碑は、新しい公園の小道にあり、ロンドン最大の公共の場所の1つで静かな熟考の場を提供する。爆撃によってもたらされた唯一無二の集団的損失は、記念碑の性格を物語っている。
52本の850kgステンレス鋳造の垂直柱は、それぞれが失われた52人の命のうちの1つを表し、爆弾の4つの場所を表す4つの連結されたクラスターの開いたパターンに配置されている。
各石碑は、オープンキャストプロセスによって引き起こされた表面のユニークなマークと、失われた各生命の日付、正確なタイミング、場所を説明する目の高さで運ばれた碑文によって特徴付けられる。
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問者は石碑の間を歩き、その意味を深く考えるように勧められる。プラークは道の端にあるバームにあり、各犠牲者の名前を記録している。
抽象的な建築の言語を通して、記念碑は家族のための和解の象徴であると同時に、爆撃の壊滅的な影響を何世代にもわたって恒久的に思い出させることを意図とする。
私はCarmody Groarkeの設計について、コンセプト(文化的問題を、様々な文脈から意図的に追求し、解決するための建築デザイン)からは分からなかった、人が建築の重要な部分に介入し視線を大切に設計している建築家であると感じた。非日常を体験する空間として既存の壮大なスケール感を生かした新規部分の挿入が行われていると感じる。また、既存部分を生かした新旧の差がはっきりとわかる新たな素材の挿入も魅力的に感じるが、それだけでなく考えられた構造デザインがより既存を引き立たせているのではないかと感じる。
山中は、写真の良さを差し引いて何が印象深さに繋がっているのかを疑問視し、既存の部分と新規の部分が常に同時に存在している点が面白いと述べた。また、元の建築により少ない手数で新しいものを共存させることで洗練されたものになっていると捉えている。
『Manchester’s Science and Industry Museum』では蒲鉾状のアーチ状の天井の造形を新しい建築が引き出していること、カートディの操作がシンプルであり、このような操作を行うことにより、元々の既存の時より特徴的な部分の魅力を感じさせると述べた。
The Hill House Box Museumはマテリアルの数が増えないということが重要であり、コンバージョンなどではなく、自分達の中で二項対立の関係を作り出していると捉えた。
Windermere Jetty Museumに関しては、屋根の高さ勾配、窓の高さが一緒という同じ操作しかしていないことによって湖畔の魅力を引き立たせている。また、最少の建築操作しか行っていない、
つくり切らないという設計が魅力的であると述べた。
引用
Carmody Groarke HP  https://www.carmodygroarke.com/
Archi Daily Carmody Groarke | ArchDaily
Carmody Groarke: Architects of the Moment  Carmody Groarke: London's Architects of the Moment | PORT Magazine (port-magazine.com)
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yamanaka-lab · 1 year
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2022建築レビュー#4
-建築レビュー#4(設計者:Helen&Hard)発表者:伊藤(M1)講評者:新倉-
 建築レビュー第4回目は、ノルウェーに拠点が置かれているHelen&Hardが取り上げられた。Helen&HardはStavangerとOsloを中心に木造建築を得意とした29名のチームである。既存を利用した作品が多く、場所性を生かし、人々が集う空間の計画などがある。
 特に彼らは「木造」「トランスフォーメーション」「社会的持続可能性」「システム設計」の4つに着目し、設計を行っている。
 今回は、彼らがつくりあげた3つの住宅を取り上げ、それぞれの計画によって異なる活動を考察する。
事例1 「Vindmøllebakken Housing」[2019]
 元々倉庫のようなものが敷地内に分散しており、既存の外壁の一部を残し、周囲の外部空間の敷居として機能させている。
 「Gaining by Sharing(共有による利益)」モデルに基づいた住宅。
 現在の社会的ニーズに応えられないことの多い標準的な住宅の建て方への対策案である。時間・空間・資産を共有することで、環境だけでなく、社会的・経済的・建築的な面でも、より持続可能なくらいを実現させる。
 全体構成は、40の共同生活ユニット、4つのタウンハウス、10のアパートメントである。3〜5階建ての低層建築で計画され、プレハブの木造部材で建てられ、人間、社会、環境のニーズを持続可能な方法で満たすモダンな住宅タイポロジーとなっている。
 平面的には、円形劇場を起点にアパ��トメントへ分かれている。
 屋上にはライブラリーや温室へと続くオープンな階段室とギャラリーが配置されている。この部屋は、空間と人との視覚的なつながりを生み出し、居住者に共同生活への参加の選択を自由に提供する。
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事例2 「Venice Biennale」[2021]
 1959年にSverre Fehnによって設計されたパビリオン内に設置された構造である。実験的なコハウジングのプロジェクトとして、コミュニティの設計と構築のためのフレームワークを提示しており、「Vindmøllebakken Housing」の住民参加と持続可能性を基盤にしている。
 平面的には中央に共有スペースが位置し、その周りに住宅が位置する。
 個人の自由を守るプライベートゾーン、プライベートとパブリックの間の中間的なゾーン、
 すべての住人が集うことのできる、中央の共有ゾーンの3つの空間である。
 3つのレイヤーを重ねた空間は、プライバシーと共同性のグラデーションを作り出し、住むための場を提供する。
  共有スペースにはランド、スケープのように水平に伸びる棚のような木材があり、空間的に地面と関係させている。屋根を最良の状態に保ち、壁、地面、階段、梁などの連接要素を集合させてできた空間を守り、活用する。
 共同住宅モデルの空間構成は、床、壁、家具を作るセルフビルドシステムにしている。
 そのため、この提案は持続可能であり、時間の経過とともに変化する可能性がある。
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事例3 「Samling Library 」[2020]
 この建築は、図書館の機能をメインとし、参加への敷居を低くした住民のための新しいリビングルームのような集いの場である。
 楕円形のアトリウムから放射状に広がる空間は、建物を超え、周囲環境へと広がる。また、重厚な木造の骨組みは、地域の豊かな木材の歴史と呼応し、ガラスのファサードを通して周囲の森林とつながる。自然と建築の対話を示唆している。
 木造フレームは放射状に配置され、様々な用途に応じた空間を分離・結合させる働きをも持つ。
 中央に開放的なアトリウム的空間が位置し、そこから放射状のジオメトリーによって建物の構成を作り出している。この構成によって、建物の中心機能にリビングルームとしてのライブラリー、その周りに各機能が集まる静かな空間を置き、人々をつなぐ。
 中央の開的なスペースは、壮大さと控えめさを併せ持ち、居心地のよいヒューマンスケールを持つ。
 木材を、ほぼすべての建築要素に使うことにより、木造建築の文化遺産と地域の木材産業を反映し、より持続可能で責任ある社会を鼓舞している。
 天井と構造体に見られる柔らかな曲線は、銀行、図書館、共有スペースでの部屋の体験と質を高めるための重要な要素である。
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 私は、Helen&Hardの設計について、小さなスケールの集合の中に差し込まれたヴォイド空間が利用者の居場所となり、多様な機能を付加させ行動を促進させる。木材が生み出す温かさに包み込まれた空間が持続可能な暮らしを誘発させるのだと感じた。
 山中は、Helen&Hardの作品から、コモンの役割を場所ごとに模索し、コモンにただ場所を与えるのではなく機能を設定するといったコーポラティブハウス的な視点を用いることにより、建築・空間にして落とし込んでいると捉えた。
 北欧の建築は、福祉に対して国全体で意識が高いため、共有部をシェアすることに注目する理由の一つになったのではないか。木材の使われ方も、北欧ならではの特徴が見られる。またコモンは、吹き抜けや劇場など場所ごとに異なった役割を果たしていると述べた。
出展
https://www.archdaily.com/?ad_name=small-logo
https://helenhard.no/work/samling/
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yamanaka-lab · 1 year
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2022建築レビュー#3
-建築レビュー#3(設計者: 100architects )発表者:新倉(M1)講評者:長谷川-
建築レビュー第3回目は、上海に拠点が置かれている100architectsが取り上げられた。100architectsはマルシアル・ヘススを中心にストリートアーキテクチャーと都市への介入を専門としたチームである。
 彼らは「遊びは最も純粋な創造性である」をコンセプトに都市は年齢や社会的地位に関係なく、市民の遊び場実験計画アプローチを通じて、今日見ている都市景観を明日には超刺激的な都市景観に変えることを目的として活動を行っています。
 今回は、彼らがつくりあげた3つの公共スペースや施設を取り上げ、それぞれの計画によって創造される都市景観を考察する。
 事例1:「High Loop」[2020]
このプロジェクトは、閘北区(コウホクク)と静安区(セイアンク)を結ぶ蘇州川に架かる上海のプージロード歩道橋を改修する提案である。
橋の長さはおよそ1kmにおよび、ただの橋を作るのではなく、上海の密集した地域を通る、ユニークな都市の旅を提供する高架公園に変えることを目指してつくられた。灰色のアスファルトは大胆で明るい色に変わり、橋を一目引く高架都市のランドマークに変貌させ、さまざまな循環を色で整理し、橋を通過する際のリズムとスピードを表現している。グリーンの直線レーンは自転車やバイクの道路と定義し、歩行者の循環を遅くするためにマゼンタの曲がりくねった道が意図的に導入されました。歩行者がゆっくりと歩き、旅を楽しみ、上海の都市景観と蘇州川の特徴的な景色を楽しむことを目指された。
カラフルな塗装の景観を用いて循環システムを改善し、機能的なポケットを追加するだけで、デザインは既存の構造を変えるのではなく変換することを可能にした。
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 事例2:「Hermit retreat」[2021]
このプロジェクトでは伝統的なスタイルとモダンなスタイルの組み合わせが、田舎の環境でブティックツーリズムであると考え、中国の農村建築の伝統的な特徴をデザインしたつくりとなっている。
2つの異なる区画に分割された1つのホテルを設計するため、両方の区画を一緒に縫うことを目的として区画の間のメインパスが脊椎であるフィッシュボーンスキームを使用し、そこからセカンダリパスを介して全てのパビリオンに簡単にアクセスできる配置にしている。プレミアムでプライベートな居心地の良い空間を提供するために、同じ建物内の部屋ではなく、山の上に建てられた独立した木製ヴィラでユニットを整理し、プライバシー意識が向上し、より近い方法で自然と繋がるためのプライベートテラスを作り出している。ロビー棟は、地上から持ち上げられた屋内空間が存在し、グランドレベルにはゲスト間の社会的交流のためにオープンな公共スペースとなっている。
プロジェクト全体の延床面積は非常に限られていましたが、ロビー棟をオープンにすることで延床面積を抑え、ヴィラ・屋外テラスに多くの面積を取ることに成功した。
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 事例3:「Red West Gate」[2016]
このプロジェクトは地元の生鮮市場に占領されていたことで西門の文化が時間と共に失われ、伝統的な西門を嘉定のダウンタウンに改修することを目的に行われた。
文化遺産を取り戻すだけでなく、商業的・文化的活動の��入によって、地域の再活性化も目的とし、占領されていた生鮮市場には全体に広がる赤いデッキを架け、新しい小売店や文化的スペースが挿入された高架通路がつくられている。約800年の歴史を持つ嘉定は、職人技の伝統が強く、さまざまなアイデアや信念を尊重する文化として知られ、知識を伝える教育機関で歴史的に有名な街であるため、遺産を継承していく提案が考えられた。西門の舗装材料や壁の後ろに隠された小さなパティオ、ファサードに存在する特徴的な木工品など、現代的なものを取り入れながら、伝統的な形式を維持してつくられている。「社会に何かを還元する」という考えに基づき、商業活動だけでなく、地域全体の公共空間を改善した。
小売業者、売り手、地元の職人だけでなく、利用者は歩き、話し、共有し、楽しむための新しい公共スペースによって西門と嘉定とのコミュニティを生み出した提案となっている。
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 私は100architectsのプロジェクトについて、視覚的にその地域の人々や都市を楽しませる操作がされつつ、その土地特有のデザインコードの形態や色を反映させることでどこか親しみやすい建築となっているのではないかと感じた。
 山中は外部空間の作り方が上手く、設計者の意図を表現するために色彩の使い方がされていると捉えた。
デザインを記号的に現すためのダイアグラム的な色使いを行うことで、図と地の可視化がされていると述べた。
 出展:
https://100architects.com/project/hermit-retreat/
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yamanaka-lab · 1 year
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2022建築レビュー#2
-建築レビュー#2(設計者:Architensions/ATE)発表者:長谷川(M1)講評者:久米-
  建築レビュー第2回はArchitensions/ATEを取り上げた。
  Architensions/ATEは、Nick RoseboroとAlessandro Orsiniにより2010年に創立された。ニューヨークとローマに拠点を持ち、住宅やインスタレーション、子供の遊び場といった様々な規模のプロジェクトにおいて活躍している建築デザインスタジオである。
 彼らは、「プロセスを大切にし、美学を探求する」という設計思想を持つ。多くの目標と成果が期待される建築研究に取り組んでおり実践や教育を絡め、建築空間を模索し、建築とアーバニズムを再接続することを目指している。 
 今回は、彼らの建築作品を3つ取り上げ紹介する。
 事例1『The Playground』,UNITED STATES (2022)
 このインスタレーションは、アメリカの音楽祭で採用されたものであり、カラフルな鉄骨造りの塔は『遊びの場』を表現している。
 構成は、足場システムのような4つの鉄骨造タワーで構成されており、色は3色を基調とし、3色の関連する隣接関係を考慮した単色で塗装されている。素材は、差し込む光、見る角度によって様々に表情を変えるダイクロイックフィルムのスペクトルから派生した色を使用したりすることで、意図的に鮮やかな色を実現している。
 オランダの画家コンスタント・ニューウェンホイスの視覚的ユートピア「ニューバビロン」の思想や、イタリアの建築家アルド・ロッシの「世界劇場」の空間の影響を受け、この構造は特定の都市の特徴を模倣し、多様な色とりどりのアーチで設計された。
 形状は、都市の類型を参照し、風景に秩序を与える多孔質のグリッド内に垂直に配置されている。
 都市にある模倣的なタワーの現代的な機能とは対照的に、タワーを楽しい場とし、移動の自由を人々に促進するためのフレームワークとして提案している。 
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事例2『dwelling without corridors』,UNITED STATES (2019)
 この作品は、2019年開催のニューヨークの住宅についてのコンペティションである。
  彼らは、都市構造の基本的な構成要素は、アイデア・文化・知識の交換に参加することであると提唱し、提案した。
 住宅における「ロビー」や「廊下」などの活用されていない空間を、各リビングユニットにサポート機能を備えるような空間に転換させるプランである。
 住宅は住民間の関係を育むため、各個室やコアとなる部分を左右に設け、その間にリビングなどの共有スペース兼廊下の役割を果たすものを配置している。断面的には2層を1層として扱い、真ん中に共有スペースを設け中間階に個室を配置している。
 廊下を排除し、そこに各個室へと向かう動線を設けることにより、共有スペースでの活発な活動を促す。
 またファサードは、周辺地域の歴史を兼ね合わせ、開口や扉のデザインがされている。
 彼らはこの住宅を通して、住宅は都市で行われる公共生活から分離された私的領域として捉えられている中で、住宅は都市構造の一部となるような計画を提案した。
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事例3『Children's Playspace』,UNITED STATES (2020)
 この遊び場は、少人数の子供たちのための創造的で集団的な遊びのための屋内空間を目指したインテリアの作品である。
 自然の要素から遊び心を持ち抽象化している。森林の砦を通る動き、木々を流れる薄暗い光、雪から反射する太陽の輝きなどから、デザインアイデアが出されている。
 自由形式の遊びを奨励する先駆的な環境であるイサム・ノグチのプレイグラウンドや、アルド・ファン・アイクのアムステルダムのビルの遊び場などから刺激を受け、デザインされた。
 多面的な形を持つことにより、様々な相互作用や活動に影響を与えることを目的としている。
 ツリーハウスを参照した緑の円筒形では、子供たちは階段を登り、葉の効果を期待できる緑色の布メッシュを通し、空間を観察する。
 半透明の和紙で覆われた天井からぶら下がる円錐形のようなものの中で、子供たちはきらめく雪の効果に似た独特の光を経験する。
 この屋内建築は、子どもたちが、多様化された空間の中で、それぞれ異なる姿勢で境界を作り、そして自分たちの周りの世界を再発見するような空間が目指されている。
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 私は、Architensions/ATEの設計について、建築とアーバニズムの再接続に焦点を当て、人の行動に対して実験的に建築をつくり都市に向けて効果や成果をつくりだす建築家であると感じた。また、直線や幾何学の形態のつくり方が独特であり様々なものから刺激を受け、形態に落とし込んでいる建築家であると感じた。
 山中は、Architensions/ATEの作品から、社会的要因に対するデザインの応答を実験的に模索しどのように落とし込むのか模索し、容易に認識できるルールを規定することにより、建築・空間にして落とし込んでいると捉えた。
 20世紀的なボキャブラリーを使い、設計におけるデザインコードやルールを規定している。幾何学の使い方、置き換え方が建築家アルド・ロッシを彷彿とさせている。また、視覚的ユートピア「ニューバビロン」の思想とは、変化していくための座標や基準を設定して、変化を許容している部分は通じているが、「ニューバビロン」ではその基準がより複雑である。Architensions/ATEの設計は、乱雑なように思えるが軸があるため均整がとれていると述べた。
引用 
・Designer of the Day: Architensions – SURFACE (surfacemag.com)
・https://www.archdaily.com/980374/the-playground-architensions?ad_medium=office_landing&ad_name=article 
・architensions - Architensions
・Children's Playspace / Architensions | ArchDaily
・Il teatro del mondo.アルドロッシ - 風光明媚な宇宙展望台 (cargocollective.com)
・Teatro del Mondo - 八濱漂泊傳 (goo.ne.jp)
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yamanaka-lab · 2 years
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2022建築レビュー#1
-建築レビュー#1(設計者:KOKAI STUDIOS)発表者:久米(M1)講評者:藤井 (M1) -
  2022年度1回目の建築レビューではイタリアの建築家ユニットのKOKAI STUDIOSを紹介する。KOKAI STUDIOSは2002年にFillipo・GabbianiとAndrea・Destefanisによって上海で設立され、WANワールドビルディングニュースアワード2021やDezeenデザイン賞2021などの受賞歴がある。
事例1『Baoshan WTE Exhibition Center』SHANGHAI,CHINA (2020)
 Baoshan WTE Exhibition Centerは産業遺産である製鉄工場を展示センターに転用した建築である。既存の構造に対してポリカーボネートでできた半透明の膜を独立させて配置することで、新たな展示室を作り出していく。半透明の素材は内部に配置された鋼管や錆びた機械の重さを構造的に支えるだけでなく、空間内に自然光を取り入れる役割も担っている。
 過去と現在。不透明性と透明性。
  それぞれに明確な違いを持たせて構成することによって、両者ともに対話可能な空間を作り出している点において評価すべき事例である。
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-Baoshan WTE Exhibition Center
事例2『Shanghai Shimao Festival City Renovation』SHANGHAI,CHINA (2018)
 Shanghai Shimao Festival City Renovationは、ショッピングモールの動線を訪問者の属性に応じて明確化させた改修事例である。『劇場』がコンセプトで、建物を「ホワイエ」、「観客席」、「楽屋」としてエリアゾーニングを行うだけでなく、上海を訪れた人々を“観光客”、上海の住民を“観客”、近隣のオフィスワーカーを“役者”としてイメージしているという。
▊ホワイエ×観光客:建築全体を一周するように配置されているレッドカーペットは“観光客”のための動線である。エスカレーターで3階の「ホワイエ」に直接誘導することで低層部と上層部との流動性が高まり、建物を含めた周辺地域一帯がパブリックな場所として機能するようになる。
▊観客席×観客:中層階には高級レストランやバーなどを配置した「観客席」を設ける。垂直な木製ボードで実際よりも天井を高く見せ、開放的かつ感動的な“観客”を魅了する空間を作り出していく。
▊楽屋×役者:“役者”のためのエリアは「楽屋」として 観光客向けのホワイエとは対照的なデザインがされている。グレーのルーバーやスモークガラスを用いてモノトーンで落ち着いた空間とするとともに、効率の良い動線になるような計画がされている。
 議論の中では劇場のような奥行きを感じさせるために視覚的に空間のスタディをしているのではないかという考察や、利用者に役割を与えることで空間の使われ方に違いは出るのだろうかと疑問視する意見も見られた。
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-Shanghai Shimao Festival City Renovation
事例3『Anting New Town Central Square Renovation』 SHANGHAI, CHINA (2019)
 Anting New Town Central Square Renovationは、上海の衛星都市である安亭鎮(Anting)の中央広場を再生するプロジェクトである。1点で交わる4本の道を都市の軸として定義し、軸の先にあるプログラムを引用することで広場に賑わいをもたらす。
▊NORTH:軸線の先に果樹園が広がっていることから広場の北側にはプランターが配置され、住民がハーブなどの植物を育てられるようになっている。
▊EAST:広場の東側には湖畔の風景と連続するように水辺空間を設けるとともに、滞在性を向上させるためのベンチも計画されている。
▊SOUTH:南側にある公園と繋がるようにバスケットボールコートや滑り台などの遊具を設置することで子ども達の遊び場となり、若年層から溢れる活気のある場所としている。
▊WEST:広場の西側には地下鉄駅やバスターミナルなどの交通結節点がある。建物のファサードを開くだけでなく、歩道の拡張やテラス席を整備することで広場から駅まで歩きやすい道路空間を実現している。
 4つのエリアの中心にあるパビリオンは安亭鎮のランドマークでもあり、各軸線から異なる見え方になるように屋根形状がデザインされている。
 住民同士が交流するきっかけとなるようなプランターやイベント開催にも利用できるパビリオンなど、 広大なスペースの中に 安亭鎮 オリジナルなプログラムを配置することによって多様なアクティビティを生み出している。
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-Anting New Town Central Square Renovation
 私は以上3つの事例から、KOKAI STUDIOSは既存空間との「接続」に対して丁寧に設計をしている建築家であると考えた。既存部分と改築部分とを切り離して構成していく方法や、地上レベルから直接上層階に接続する動線を設ける方法、都市の軸線を利用して周辺の環境と繋げる方法など 、接続する方法には様々なバリエーションが見られた。異なるモノ同士をを隣接させる際、素材や形態などをどのように扱うかが論点になりがちであるが、 一貫して KOKAI STUDIOSはあえて異質なモノを挿入することで既存の建築(都市)空間と呼応させようとしていると感じた。
 山中は、環境の中に役割をキャスティングしているところが面白く、リノベーション設計において役割分担をすることで新規と既存、観光と現地のような対比関係が明確になっていると評価した。また、あらゆるものにおいて主客を設けることで明快なダイアグラムを描くことができ、咀嚼しやすいデザインになると述べた。
出典: Arch Dairy
https://www.archdaily.com/949222/baoshan-wte-exhibition-center-kokaistudios
https://www.archdaily.com/914872/shanghai-shimao-festival-city-renovation-kokaistudios
https://www.archdaily.com/925100/anting-new-town-central-square-renovation-kokaistudios
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yamanaka-lab · 2 years
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2022 #16
<M2> 飯森廉 荻島紗季 北村円香 坂口智 志澤卓磨 中村操香
<M1> 池部海都 伊藤菜々子 久米夏子 後藤龍太郎 新倉未友 長谷川理奈 藤井朋美
<B4> 安西祥大 安藤秀太 池田桃果 伊藤幹也 岩上悠輝 梅宮大空 小野寺翔 小俣陽也 黒川星奈 杉山陽祐 鈴川英輝 藤本裕月奈 紫安洋平 安村文汰 楊井愛唯
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yamanaka-lab · 2 years
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2021_建築レビュー#5
ー建築レビュー#5(設計者:studio zhu pei)発表者:志澤(M1)講評者:荻島ー
建築レビュー第5回はスタジオジュペイを取り上げた。
スタジオジュペイを主宰するジュペイは中国を代表する建築家の一人であり、2005年に北京でスタジオジュペイを設立した。中国国内ではよく知られている建築家である。
彼が自身の設計思想を語るとき、「自然の建築」という言葉でよく説明する。「自然の建築」は、単にランドスケープデザインや緑の建物ではなく、その場所の気候や文化、技術といった、新しい創造に根を張るような概念と結びついている。
今回は,彼の建築作品を3つ取り上げ紹介する。
一つ目の作品はOCTデザインミュージアムである。
中国 広東省 深セン市(シェンチェン市)の、海から300メートルのところに位置し、この建築のインスピレーションはビーチ沿いの滑らかな石からきている。
滑らかで有機的なフォルムは、シュール(非現実的)でありながら超越(境界線を越える)的な象徴性がある。
1階にはロビーとカフェがあり、2階と3階は主に展示スペースが配置されている。
内部の設計は影を投げず、白い曲がりくねった表面によって覆われている。
その結果、(ジェームズ・タレルのインスタレーションの感覚と同様に)無限に進んでいるような、シームレスな空間となっている。
建物は空白の背景となり、小さな三角形の窓がランダムに散らばり、光を取り入れられている。
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2つ目作品はショウ群文化芸術センター。
ショー郡文化芸術センターは、中国の安徽省(あんきしょう)の古い町から南東1、2キロのところにできる新しい都市に建設された。
ほぼ白紙に近いような敷地条件で,プロジェクトが開始された。
古い住居や遺跡を観察し、垂直中庭を持つ家の内向きの生活パターン、および家同士を互いに結ぶ方向に伸びる狭い車線といった、地域のコンテクストを読み解いた。
建物の各プログラムには、2つまたは3つの中庭が設けられており、正面玄関の広大な庭は、典型的な安徽州の住居に触発されている。
正面の庭から、訪問者は部屋の連続性を中断することなく、すべての中庭を歩き回ることができる。「隠れ、呼吸し、耕し、そしてさまよう。」という原則によって表現された、伝統的な中国建築の芸術的精神を感じることができる。
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3つ目の作品は景徳鎮帝国窯跡博物館(ジンデヘンインペリアルキルン博物館)。
キルンとは窯という意味である。
文字通り、この建築は、世界の「磁器の首都」として知られる中国、景徳鎮の歴史的な地域が計画敷地。
ここ景徳鎮では、景徳鎮窯(けいとくちんよう)という白磁(はくじ)にコバルトで絵付けをされている青花(あおばな)の磁器を1700年以上にわたり、生産・輸出してきた歴史があり、中国最大の古窯(こよう)の発祥地である。
景徳鎮の歴史ある文脈を尊重して2016年に設計された新しい博物館は、陶器を作るために使用される窯の伝統的な形に基づいて、レンガ作りの保管庫を構成している。
機能は、一階に展示室、カフェ、ホワイエなどがあり、地下一階は展示室、多目的ホール、サンクンガーデン等がある。
このようなアーチ型の構造は、複雑な敷地に適応する柔軟性を与えるだけでなく、グランドレベルでのサーキュレーションが考えられています。
またグランドレベルから一層分彫り込まれたサンクンガーデンは、内部・外部のシークエンスと有機的に接続されている。
アーチ状のレンガのテクスチャは、リサイクルされた古い窯(よう)レンガと新しいレンガが混合されている。
質の異なるレンガは面状の光を受けると暖かな色味と軽やかな表情を見せ、線状の光はレンガの色味のコントラストと重厚感を感じさせる。
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私は、スタジオジュペイの設計について、現代と伝統、芸術と形式の関係性に焦点を当て、それらと結びつく文化、気候、歴史などとの共存の可能性を模索し、「自然の建築」という概念に向き合っている建築家だと感じた。
山中は,スタジオジュペイの作品から,環境や状況をどう形に落とし込むか、周りの環境をヒントにして建築・空間にしていると捉えた。
本来の自然は複雑だが、自分にとって必要な「自然」の要素を抽出し,形式性やモデル化を行って設計を行っている。複雑なものを単純化しているダイアグラムが単純な形に変換している。スタジオジュペイは形が強いとシンボリックと批判されることがあるが、突き進める強さを持っていると述べた。
http://www.studiozhupei.com/list/?id=21&siteid=2
https://www.archdaily.com/office/studio-zhu-pei
https://www.archdaily.com/244804/oct-design-museum-studio-pei-zhu
https://www.archdaily.com/934401/shou-county-culture-and-art-center-studio-zhu-pei?ad_medium=office_landing&ad_name=article
https://www.archdaily.com/948083/jingdezhen-imperial-kiln-museum-studio-zhu-pei?ad_medium=office_landing&ad_name=article
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yamanaka-lab · 3 years
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ー建築レビュー #3 <建築家:we architech anonyumous(waa)> 発表者:坂口(M1) 講評者:北村(M1)ー
第3回目はDi ZhangとJack Youngというロンドン大学大学院卒の2人の建築家を中心とした建築グループ、we architech anonyumous(waa)について紹介する。この名前は設計者の独断的な発想でクライアントと衝突することを避け、強制せず、建築の利用者に快適な空間を届け続けたいという願望をもとにつけられたそうだ。
彼らは”humanity”と”place”によって建築を作り出している。
彼らの作品を3つ挙げ、彼らの建築を創造する上での思想や取り組み方を議論し、考察していく。
事例1「Yinchuan Museum of Contemporary Art(MOCA)」[2015]
MOCA 銀川は2015年に建てられた美術館で、中国 銀川の緑豊かな湿地と黄河で隔てられた砂漠との境界に位置している。地質学に焦点を当て、堆積物の侵食などによって生じる景観をインスピレーションとして、6つの操作によって形を作っている。
風化したファサードの内部は実際の洞窟のように、緩急ある空間が自由に広がっており、様々な体験を生み出す。時間の痕跡を記録した「化石」として、ファサードの折り目は材料の堆積によって記録した時間を表している。
また、ランドスケープを建築に取り入れ、GRC技術によって綺麗な曲線が生み出されている。
地域コミュニティの統合と、新しい多国籍学生団体の創設とともに、確立された若いアーティストのキャリアをサポートする物理的なプラットフォームになることが期待されている。
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-Yinchuan Museum of Contemporary Art(MOCA)
事例2「The Playscape−Children’s Community Centre」[2021]
これは、1970年代に北京北部に建てられた穀物貯蔵庫とサイロを含む施設をリノベーションした建築である。施設内部にはレストランやワークショップを行う教室、スタジオ、キッチンなどがある。
プレイスケープは子供達の学習を促進する施設であり、パイプ、屋根、マウンドの3つの主要な建築的介入によって、多くの子供たちが都心部で奪われた経験を体験することができる。建物は、中庭を取り囲む既存の倉庫の集まりによって形成され、公共道路は屋上テラスを結ぶ空中橋の使用によって南側の建物と接続されている。隣接する幼稚園や公園へとつながるアクセスルートも有する。
鉄骨構造のパイプはスケールごとに利用対象が変わり、滑り台、大人が通れる通路、子供のためのトンネル、またライトとして機能するものなど、様々な用途がある。
パイプネットワークは、固有感覚に焦点を当てており、盛り上がった形状は平衡感覚や身体認識に関連する感覚を発達させる。
内外にアクティビティが連鎖する中で、中国の都市で枯渇している子供達の地域コミュニティが体験できるようにしている。
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-The Playscape−Children’s Community Centre
事例3「Eagle Studio」[2020]
この施設は美大の大学入試を控える学生に対して、8ヶ月間の集中授業を行い、一流美大への合格を目指すための施設である。3000人以上に学生を収容できる宿泊施設を完備する大規模な教育施設であり、コンセプトとして、研究、競争、滞在、夢へ焦点を当てた活動空間を形成することを掲げている。
杭州は気候が非常に温暖であるため、屋外スペースがよく利用される。建物は、流動的な動線によって内部と外部の境界が曖昧になっている。
スタジオを囲うようにドミトリーが配置され、通路はスタジオが大きな広場によって分割され、形成されている。
人工照明が無くとも内部に多くの光をもたらす鋸状の屋根など、自然光や通風に配慮し、また、緑化を重視することで日陰を作り出し、サステナビリティに特化した建築を実現している。
教師と生徒の両方が実質的に制御できる、より小さなヒューマンスケールで建築を扱うことで、競争力のあるトレーニングに対するプレッシャーを軽減し、教師と学生の精神的健康を向上させると考えられている。
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-Eagle Studio
以上の3つの事例から私は、waaは元ある敷地に手を加えることによって独自の建築の形を作り出していると感じた。敷地の形状や既存の建物を大切にし、それに操作を加えることによって、その敷地でしか生まれない形を形成することに成功している。敷地の特性を生かして建築を作るのが得意な建築家であると感じた。
総評として、山中はここでのhumanity、placeは、「人間性」、「地域性」の意では無く、「人為的」、「敷地の図形」を指すのではないかと述べた。Humanityアノニマスな人の手、placeはその場所が有する形・要素や、建物を操作する外的な要素のことを指すと考えた。
見る人によって解釈が変わる言葉の方が魅力的であるとし、言葉を解釈する時に、誤解を恐れずに広義の意味を取ることが大切であると述べた。
出典:ArchDairy/https://www.archdaily.com[参照2021/7/13]
   designboom/https://www.designboom.com[参照2021/7/13]
   DIVISARE/https://divisare.com
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yamanaka-lab · 3 years
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2021 建築レビュー#2
2021年度の山中研究室はB4:12名、M1:6名、M2:5名、総勢23名が所属している。2006年から今年で21年目となった下田プロジェクトでは、下田市民と山中研究室が共同で調査・編集した「しもだっこマップ 市民が案内する『まちなか』街歩きマップ」が完成し、下田市内の店舗で配布され始めた。夏に実施される現地調査に向けて今年もプロジェクトが活発に動いている。
 ―建築レビュー#2 <建築家: Diébedo Francis Kéré >発表者:飯森(M1) 講評者:中村(M1)―
第二回目はKere architectureが取り上げられた。Diébedo Francis Kéré(以下ケレ)は西アフリカのブルキナファソで生まれ、ベルリン工科大学を卒業。現在はドイツのベルリンで事務所を持ちながら、母国をはじめとしたアフリカ諸国の他、米国やヨーロッパなど様々な国でプロジェクトを行っており、今年2021年にはSANAAも受賞したトーマスジェファーソン建築賞を受賞した建築家である。
彼の3つの作品を紹介し、彼の建築に対するアプローチやビジョンを考察する。
 事例1「Lycee Schorge Secondary School」 KOUDOUGOU , BUKINA FASO (2016)
ブルキナファソで3番目に人口の多い都市に位置するリセ・ショルジュ中等学校は、地元の建築素材を象徴的かつ革新的にデザインし、地域の教育に対して新しい基準を与えることを目的とし設計された。
 学校は中庭の周りに放射状に配置された9つのモジュールで構成され、中央スペースは風やほこりから保護されている。円形劇場のような中庭は、学校やより広いコミュニティのための集まりや祝賀会などが行われる場所となっている。
 各モジュールの壁は、地元で調達されたラテライト石で作られており、印象的な深紅色が地域性を彷彿とさせる。ラテライトは、掘削したときに、簡単に切断してレンガに成形することができ、太陽の下に置くことで硬化する。この材料は、日中に熱を吸収し、夜間に放射する環境に対して優れた素材である。
 地元のユーカリの木で作られた二次ファサードは、透明な布のように教室を包み込み、教室と教室の間にさまざまな日陰の中間スペースを作り出し、学生が自由に集まって交流をする場となる。有機的な木材という垂直要素が見事な光の演出を生み出している。
 また、各教室の奥にあるウインドタワーは、熱気を逃がし、室内の温度をさらに下げるのに役立つ。これらの塔の彫刻は、建物の本体の上に際立っており、周囲に対してランドマーク的な存在となる。
 この建築は地元の素材を用いてコストを抑え、地域に根付きつつも、パッシブな手段で環境に配慮しており、素材そのものがもつ性質を最大に発揮した、とても魅力ある作品であると感じられた。
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-Lycee Schorge Secondary School 
 事例2「Wooden Art Pavilion」 FISHTAIL MONTANA , UNITED STATES (2019)
 静かな避難所であるこのパビリオンは、木の生命を呼び起こすことが意識され、広大な屋外アートスペースの訪問者が集まって会話したり、座って瞑想できる場所である。
 敷地はアートセンターとハイキングコースの始点の間のわずかに沈んだ地形に位置し、周辺には小川が流れ、ポプラの木々に囲まれている。
 パビリオンに用いられている木は、地元で調達され生木の状態で使用された。
上から見ると丸太は、耐候性の鋼のモジュール式六角形構造内に円形の束としてグループ化され、7本の鋼柱で支えられている。上面は、周囲の丘に溶け込むように曲がりくねったシルエットとなっており、屋根はブルキナファソのコミュニティの神聖な集いの場であるトゥグナに触発されている。
 日光が垂直の丸太を通り抜け、パビリオン内に光と影の柔らかな遊びを作り出す。彫刻が施された木の座席に腰かけると、周囲の様々な景色を眺めることができる。
 日本で木材得意とする建築家は隈研吾であるが、彼の木の加工技術とは異なり、ケレは自身が持つ土地の原風景や素材が持つ形態そのものを活かす力がありそれが彼の魅力だと質疑の中で議論された。
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- Wooden Art Pavilion
事例3「Benin National Assembly」 Porto-Novo , BENIN  (2021-)
ベナン共和国の国会議事堂は、ベナン共和国よりケレに設計が依頼され、昨年度までの2年にわたる設計を経て、現在着工している建築である。ベナン共和国は過去の植民地時代の建築の歴史を超えて、民主主義の価値と市民の文化的アイデンティティを具現化する建築を依頼し、それに対してケレは、「集団の利益のために、木の下で会って���し合いをする」という古くからの西アフリカの伝統である、パラバーツリーからインスピレーションを得た。パラバーツリーは時代を超越したシンボルとされ、自然の雄大な力への敬意を表すものである。
        
集会所は1階にあり、その壮大な天井が上層を支える構造でダイナミックに形成されている。内部は中庭として機能するボイドとなっているため、自然に換気し、間接光を取り入れることができる。中央のらせん階段は、1階の集会所と上のオフィスをつないでいる。最上階の屋上テラスからは、街から離れたラグーンを一望できる。
 敷地の大部分が公共公園として開放されており、開放的な屋外空間にベナンの伝統的な植物が広がる。公園は建築のふもとまで広がり、集会所では市民が集まって熟考できるゆったりとした日陰の空間を提供している。
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- Benin National Assembly
以上3つの事例を考察すると、ケレは地域に根付いた設計アプローチと持続可能な建築様式を大切にした建築家であると言えるだろう。世界各地においてそれぞれの場所の性質や素材を生かし、それと同時に自身の中にある印象的なアフリカのデザインを建築に昇華するスタイルが印象的である。
総評として山中はこのように述べた。私たちはなぜアフリカに建つこれらの建築に共感できるのか。それは、ローカルとインターナショナルが共存しているからである。発展途上国アフリカに特有の土着的性質や素材を用いていながらも、先進国で高度な建築の素養を身につけているということがバックグラウンドにある。加えて、ケレは素材を自然界のそのままの加工しない姿で使うことを得意とするが、そこに生まれる隙に建築の良さがでてくる。
反工業化を行く時代に、私たちはケレの素材そのものに対する向き合い方に習うことができるのではないだろうか。
出典:Arch Dairy/ https://www.archdaily.com/885677/lycee-schorge-secondary-school-kere-architecture?ad_source=search&ad_medium=search_result_all[参照2021/06/23]
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yamanaka-lab · 3 years
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2021 建築レビュー
今年度はコロナ禍の現状で、研究室としては日々苦しみながらもオンラインとオフラインを総動員して活発に動いている。プロジェクトも世代が変わり、現在5つのプロジェクトが並行して進捗している。2017年以降久々に復活した建築レビューの第一弾を講評する。
―建築レビュー#1 〈建築家:Boonserm Premthada〉 発表者:荻島(M1) 講評者:志澤(M1)―
今年度初の建築レビューでは2019年ロイヤルアカデミーのドルフマン賞を受賞したバンコクプロジェクトスタジオの創設者Boonserm Premthada(以下プレムタダ)について紹介する。彼の作品を4つ例に挙げ、議論し、彼の思想やビジョンについて考察する。
事例1「Brick Observation Tower - Elephant World」
ゾウは家族とみなされ、ゾウと一緒に暮らすことは切っても切れない関係性を持っていた。しかし経済成長や森林破壊ののち、彼らは干ばつや食糧不足に苦しんでいた背景にある。
エレファントワールドというプロジェクトはゾウを故郷に戻し、適した生活環境を確保するために開始されたプロジェクトである。このエレファントワールドというプロジェクトは3つの建築からなり、Brick Observation Towerはそのうちの一つである。
レンガ造りの展望台は、高さ28m、幅8m、長さ14m。平面は鋭角をもつ楕円形であり、風の強さを弱め、太陽からの熱を拡散する��80x80cmと35x90cmの開口部が交互にパターン化しており、塔の中央にはスチールの階段、上部からの日光を減衰させながら、遮るもののない空の景色を眺めることができる。
プレムタダはこの建築は時間のデザインということもできるといい、展望塔に時間をかけて登り、風や思いをはせることを考えて設計された。
質疑では、建築とマテリアルについて行われた。煉瓦が構造にはなっていないにもかかわらず構造として見える視覚効果がある。実際には構造はコンクリートで表面のテクスチャとしての煉瓦での表現であるが、コンクリート自体の構造をレイヤー上にし目地スケールを変えていることがファサードのリズムを作っている。「古澤邸」と比較すると「古澤邸」では構造を柱、梁、床に分けているものを、この建築では大きな塊から抜き取っているように見える。このような煉瓦の構造的に不可能なことを可能にしているかのような視覚的効果がとても興味深い建築である。
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-Brick Observation Tower
事例2「The Cultural Courtyard - Elephant World」
 同じくエレファントワールドのうちの一つThe Cultural Courtyardはタイの民族であるクイ族とゾウのためのスペースを同じ屋根の下に備えている。
70x100mの傾斜した屋根が広がり,1.5メートルの厚さの屋根は中央が開いており、6つの塚が屋根の下に人間の空間を構成している。グラウンドはゾウが体温を下げて害虫から身を守るために歩き回る、うねる土を連想させる。
6列のコンクリートベンチが屋根の下に点在し、800人の訪問者のための座席を形成している。屋根の開口部に下には木が植えられ,開口部からの光により木が成長し、象に日陰と餌を提供する。将来的には、祖先と同じように、再び同じ屋根の下に住むことになるだろう。
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-The Cultural Courtyard
事例3「The Wine Ayutthaya」
チャオプラヤー川のほとりに位置するThe Wine Ayutthayaは既存の大きな木と調和して設計されており、建物は高さ9m、幅と長さが11mで、鉄骨強化合板から作られている。ワインハウスの内部は4つに分かれ、それぞれの高さは、訪問者がさまざまな角度から川の美しい景色を吸収するための見晴らしの良い場所として機能し、内部と外部の空間を対比させる。それぞれの床には5つのらせん階段が取り付けられている。
ノックダウンワッフル構造システムは、床、壁、屋根の設計によってデザインにも露出している。外装を厚さ1mmのPVCシートで建物を覆うことにより、雨や湿気から保護する。外部からは、PVCシートの起伏のある反射が建物を視覚的に柔らかくし、その透明度を通して内部空間を露出する。
 質疑では螺旋階段のデザインについて議論された。この螺旋階段は床面と切り離されてなお上方へ伸びたデザインとなっている。ドリル状の意匠はボーリング調査にも見える。このデザインは床の浮遊感による空間の質を意識し、軽い建築を目指したのではないか。この滑らかな曲線美の螺旋階段はワッフル構造との対比により、垂直動線の視覚的な誘導を可能にしている効果もあるだろう。
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-The Wine Ayutthaya
事例4「Kantana Institute」
 カンタナ研究所は学部生の映画・アニメーション学部の入る教育施設である。プレムタダいわくこの建物は、光、影、風、音、においを操作し、生きているという感覚を与える建築であるという。
 建物には、南北軸と東西軸の直線状の廊下が挿入されている。機能は異なる4つのブロックに分かれ,人を集中させる場所の瞑想スペース、中庭につながる多機能スペース、レンガの壁に囲まれた静かな講義室、事務室で構成されている。タイ社会の共通の文化遺産の日常的な材料のレンガは,レンガの簡略化されたものは、普遍的な幾何学的空間に変換される。
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-Kantana Institute
総評として、山中はプレムタダの建築をスタジオムンバイやジェフリー・バワと共通する第三者世界の建築に位置づけ、19世紀や20世紀前半のような洗練されていない構法、技術でできているプリミティブさを示している建築家だと評価した。そのプリミティブさは建築の形態にも反映されている。またプレムタダの建築の特徴的な部分として、現代社会の中で私たちが当たり前のように捉えているスケール感を超越していることや、風土性を内包しつつも建築としての力強さに期待し設計していることを挙げられた。
加えて講評者である私は、プレムタダの建築はマテリアル、建ち方などから、建築自体の新規性と同時に何かと繋がっているという感覚を覚えた。使っている素材は現代のものだが、地球の一部を積み上げているような長い時間を内包した時間の偽装を建築が示しているように思う。これは気候に起因する部分もあるだろうが、建築が一つのシンボル性を持ち、外部環境を建築の内部空間として扱っている点に実際は起因するのではないかと思う。いずれにせよ、プレムタダの建築は現代建築の既成概念を払拭する独自の世界観を作り上げている建築家である。
出典:ArchDairy/https://www.archdaily.com/search/projects?ad_source=jv-header(参照2021/05/23)
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yamanaka-lab · 3 years
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2021 #15
<M2> 阿部晴奈 佐藤澄怜 真崎颯 水野瑛太 山口大毅
<M1> 飯森廉 北村円香 坂口智 志澤卓磨 中村操香 荻島紗季
<B4>   池部海都 伊藤夏菜子 伊藤菜々子 伊藤茉奈 金田南斗 久米夏子 後藤龍太郎 先崎亜美 新倉未友 長谷川理奈 一杉ヤスィン 藤井朋美
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