Tumgik
va134on · 24 days
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反応の早い料理店
 最近はよくショート動画を見ている。Tiktokなんて未来永劫縁がないかと思っていたけれど、彼氏が紹介料欲しさに勧めてきたのでインストールすることになった。その後は何時間もカーペットが綺麗になるさまや(どうしてあんなに泥だらけのカーペットが世界に何枚もあるのだろう?)、犬が食べ物の誘惑に負けたりする瞬間や(そもそも勝とうと思っているのかもわからない)、15秒間だけのダンスを見ることになり、結果として暇つぶしの手段がひとつ増えたのだ。
 Tiktokは私の時間を積極的に奪おうという前向きな姿勢に難ありだが、ある程度焦点を絞りながらもそこそこバラエティ豊かな内容を送ってくる点は評価している。問題はInstagramの方だ。トレーニングのモチベーションアップに繋げようと思ってひとりボディビルダーをフォローしたばかりにリールはどんどん肌色になり、スワイプするたびに筋骨隆々の男が際限なく出てくるようになった。そして紛れて現れた煽情的に尻を振る男の動画を最後まで真面目に見たが最後、筋肉を見せたいのか裸体を見せたいのか判断しかねる人間ばかりが私のInstagramに集っている。最近は動画の中にほんの一瞬だけ別撮りした全裸の写真を映りこませる人々(個人的に「サブリミナル勢」と呼んでいる)も現れ、治安の悪さがますます露呈することになった。InstagramはキラキラしたSNSと思われがちだろうが、全然そんなことはない。ちょっと路地裏に入れば男が事故に見せかけてパンツを引きちぎっている。
 こんな調子だと同じアプリを使っていてもてんで人と話が合うことはない。眺望の良いお手頃価格の宿も、人目を引くような料理も私の世界には存在していないことになっている(人間の代わりに犬が料理を食べることはある)。このまま裸体を誇示する人々に囲まれながら毎日を過ごした場合どのようなことになってしまうのかは定かではないが、万が一人生観に大きな影響が出てしまったら大問題だ。Metaはそういうところまでしっかり考えているのだろうか。どうしようもなく心配になってきた。
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va134on · 5 months
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落ち着きがある
 どっしり構えて元気に過ごしている間に今日になってしまった。今年は元気に過ごしすぎたせいで文章を書くのを完全に怠ってしまい、大変に反省しています。毎日楽しく過ごしたり楽しく寝たりしないのが文章をたくさん書くコツなのかもしれないが、日々から楽しさを取り除くのはあまりにも捨て身すぎる。
 年末年始の好きなところは休みが長いことで、嫌いなところは年賀状を書かないといけないところだ。こんにち年賀状なぞ送ってくるのは会社の人たちだけなので余計に面倒くさい。知己ならば下品な書き出しから文を始めればいいかもしれないが、相手が相手なのでそういうわけにもいかない。かと言って検索結果から拾ってきた定型文をはがきに張り付けてお茶を濁すぐらいならそもそも送らない方がよく、毎年頭を悩ますことになる。仕事をぼちぼちこなすよりも心身に負担がかかるので金銭の授受があってしかるべきなのにそれさえない。全然新年おめでたくない。
 今年を振り返れば、一番印象深かったのは彼氏の実家とその猫かもしれない。彼氏の部屋にはいろんなジャンルのものが堆積し、まったくもって他人には手を付けようがなかった一方で年輪を覗き見たような気持ちになった。今までレコードもチョコエッグも買ったことがない私にはない模様だった。
 猫のふうちゃんは猫グッズがそこかしこにある家で大切に育てられているようだった。ふうちゃんを受け入れる際は家庭内反対活動もあったらしいが、蓋を開ければスムーズに家の中心に鎮座することになったようだ。近くに来てかわいいお腹を見せてくれたので、私の人格の豊かさに免じて撫でることを許されたのかと思って手を伸ばしたら驚くほどの速さで逃げていった。ついでに訪れた彼氏の祖母の家でも、3匹いる猫は彼氏にしか寄っていかなかった。猫は本当に人を見る目がないのだと思わされた。
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va134on · 2 years
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 夏のことは大嫌いながらなぜか夏らしいものは嫌いではないという複雑な心境を抱えて生きてきた結果、この夏はかの有名な稲村ヶ崎に行った。サザンも稲村ヶ崎について歌っていたらしいがその曲はサビしか知らなかった。
 鎌倉までそこそこの距離を南下し、ぎゅうぎゅう詰めの江ノ電に乗り込むと普段の電車では乗り合わせないような人たちと出くわす。その日は暑いしちょうどいいだろうと少しいかついブランドのショートパンツに柄の半袖シャツを着て行ったのだが、その程度では本場のやんちゃボーイたちにはてんで追いつけないことがわか���た。ボーイたちはみな金のネックレスを身につけており、まさに金本位制の申し子といった出で立ちなのだった。サングラスを後ろ前につけている人を見かけたときは本場は違うとひとしきり頷くほかなかった。
 稲村ヶ崎で何をするかについてはまったくアイデアがなかったため、着いていきなり昼食を取った。おしゃれなイタリアンに行きたいとせがんでイタリアンに入ったは良かったものの、洒落すぎていて"Aセット・Bセット"にあたるものがすべてイタリア語で記載されていて読めず、「このAセット的なものをください」と堂々と言い放ったところウェイターの顔が曇ってしまった。先程まで金のネックレスが求められていたと思えば今度はイタリア語の知識を求められる稲村ヶ崎の難しさを感じた。ちなみにウェイターの顔を曇らせたにも関わらずイタリアンはとても美味しかったので、今度は初級イタリア語の勉強をしてから再訪するものとした。
 稲村ヶ崎のことを全く知らずに行ったのだが、サーファーの聖地であり海水浴客よりサーファーのほうが多いぐらいだった。天候が穏やかでも波が高くなりやすいようなので、海水浴で来るにはハードすぎるのかもしれない。そういう立地なわけで、すれ違う男性の3割ぐらいが上半身裸で道を歩いていて、これほど上半身裸で過ごしやすい町もなさそうだった。せっかく海の近くには来たが潮の匂いがきつく、足がベタベタになるのも嫌なので非人道的な日差しを浴びながら公園で海を眺め、海についてはこれで十分満喫したということになった。
 その後すぐに温泉に行き、むやみやたらと時間を使ったあとで海とは反対側にある住宅街を見て回った。坂がちの地形を切り崩してコンクリートで無理やり水平を取って作る家々は我が八王子と同じギミックなのだが、なんだか雰囲気がほんのりお洒落なのは海辺の町だからだろうか。ところどころ無計画的に残された林や海の香りが西日を有機的で少しノスタルジックに見せてくる。ちょっと羨ましい光景だったが、ものぐさは多分塩害に耐えられないので羨ましく思っている程度でいいのだろう。
 歩けば歩くほど特に自分と縁がない場所だと思わされたのだが、街並みが好みだったので思い出した頃にまた行きたい場所になった。今度は勇気を出して金のネックレスを二重に首に通しておきたいと思う。
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va134on · 2 years
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つぶつぶ
 苺にはなんだかいつも裏切られる。裏切られるという言葉はおそらく正しくなくて、私の苺への期待値が少々高すぎる。
「昔は苺なんて潰して牛乳と砂糖をかけて食べたのに」と言われるたびに苺に対する気の持ちようが間違っていると気付かされる。そう、元来苺はそんなに甘い食べ物ではないはずなのだ。酸っぱさの方が先に伝わってくるぐらいが自然なのだろう。ところがどっこい私の苺観はジャイアントカプリコいちご味を通じて形成されてしまっている。チョコと砂糖と苺の香料が脳で渾然一体となり、苺はとっても甘くておいしいものだと刷り込まれている。一方で苺は特に人生のすべてを甘さに注いだりはしていない。そこで常に齟齬が生じる。
 最近は人間がなだめすかしてなんとか苺側に甘い方向で生きてもらったりしているらしい、というので秩父に行って(別に苺のためだけに行った訳ではないが)、あまりんという名のブランド苺を食べた。5番煎じのゆるキャラのような名前は気に入らなかったが甘さは存分に伝わってくる。
 そして大枚はたいて購入したあまりんはさほど甘くなかった。数個のうちふたつは甘いものがあったが高すぎる期待には届かず、残りは無味(そんなことあっていいの?)か酸っぱさが目立った。もはやうなだれるほかない。
 こうなればもはや一粒1000円の苺を買うしかあるまいと考えたところで、苺を潰して砂糖と牛乳をかければいいのではないかと気づいた。この食べ方で特許が取れるかもしれない。
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va134on · 2 years
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あちら側から見ることはできない
 おしゃれなビュッフェと風呂目的でヒルトン小田原に行くというとってもリッチな観光に行った。ビュッフェは個人的にあまり響かなかったが(少食なので、ビュッフェで元が取れな指数が高い)、同行の二人は結構満足していたのでやるじゃないですか……という態度に改めた。自分ひとりでは食に対する評価をきちんと下せないまま生きている。
 せっかくひと山全部ヒルトンになっているのだからとビュッフェを終えてからあちこちうろうろした。よくわからないが水が張ってあってあるおしゃれな場所に行って蚊柱に襲われた。山をぐるぐる回って下山していたら遊歩道があるらしかったので立ち寄ったところ、本当に無人だった。なにせトイレも封鎖されていて、花の世話も滞っており、本来遊歩道の一部だった場所が立ち位置禁止になっていたりして明らかに手が入っていない様子だった。しかも遊歩道全体が異様なほど滑りやすく、常にすり足で移動しないと危険なほどだった(遊歩道の地面の滑りやすさを競う催しがあればかなり上位だと思う)。豪華なリゾートの付帯施設にしてはあまりにもうらぶれていたのが物悲しかったが、すり足で移動するのに忙しく寂しさを感じる間もなかった。大きな欠点が別の欠点を覆い隠してくれることもある。
 そんなヒルトンで目を引いたのはガラス張りの屋内プールだった。なかなかに入場料が高いので入らなかったが、子供がプールではしゃいでいるのがよく見えた。ふと自分の幼少期を思い出して、こんなリゾートホテルに連れてきてもらえるような人生を歩んでいたらどうなっていただろうかと少し考えた。別に子供のころにヒルトンに連れてこられても大して喜びはしなかっただろうが、ヒルトンに連れてきてもらうことに特に疑問を覚えないような出自がなんとなく恨めしくて羨ましいのだった。30歳になる前に遊歩道で滑っておきたかった。
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va134on · 3 years
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パラダイス銀河
 江ノ島という柄ではまったくないのに江ノ島に行ってしまった。海が好きだからという理由で軽率に足を踏み入れてしまったのだ。これまでの江ノ島との関わりは江ノ島さんというおっとりした記事がすてきなライターさん(プロフィールのお写真がすでに400万点ぐらいだと思う)のことを坂を上ったり下ったりしている間に考える程度だった。つまり親密度0から100に急接近したわけで、仮に私と江ノ島が大型の星だったならばとん���もないことになっていたと思う。世が世なら銀河の危機だったかもしれないわけだ。
 江ノ島というと小旅行のイメージを個人的に持っていたのだが、ふと冷静に考えれば家から一時間とちょっとの距離にすぎない。池袋に行くよりも楽なのだ。よって理論上は表参道に髪を切りに行くたびに小旅行をしていたということになり、知らずのうちに小旅行の経験を積んでいたことになる。意識せずに小旅行ができるほど自分に才能があることも知らなかった。世界には知らないことが多い。
 湘南モノレールの速さに怯えながらたどり着いた江ノ島は観光地としての風格を十二分に備えていた。まず人間の情緒に影響を与えるほどの大きな橋がある。さらに海は近いしみやげものの店と飲食店が途切れることなく続くし現在地が看板で示されているしでこちらの欲しい観光地成分がまとめて配合されている。さらに単なるエスカレーターが有料だったり、休憩のために入った喫茶店ではケーキセットでバウムクーヘンが出る(人生初)などのうれしいサプライズもそこかしこに見られ、おもてなしの精神を全身で味わうことができた。エスカレーターに金払いたくないので階段を使った。喫茶店のコーラはコップ1杯で600円だった。
 江ノ島はとにかく若い人が多く、高校生が潮風を浴びながら騒いでいたり、初々しいカップルがたどたどしい会話をしたりしている横で乳首の話などを楽しんだ。観光地と乳首の話は相性がいいのかもしれない。もしかするとそうでもないかもしれない。
 そもそもは江ノ島アイランドスパといういい感じの施設に行きたくて江ノ島に行ったのだけれど、あまりにもちゃんと観光地なので想定の5倍ほど楽しんでしまった。当初はさっさとスパに行って延々ぐだぐだして一日を終える予定だったのに、ちゃんと昼から夕方までしっかり観光したのちのスパとなり、意図せず正しい作法での観光となった。スパには温水プールがついていて、ひとりで海を見ている人、エクササイズのために歩いている人、常時身体を接触させているカップルなどが全くお互いが見えていないかのように存在していた。あれほどみんなの心が一つになっていない空間も珍しかった。浴場では大柄な男性がセイウチのように寝そべっており海を感じさせてくれた。どこを見ても海に思いを馳せられるというのは本当にいいものなのだった。
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va134on · 3 years
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迷惑ありがた
  通勤途中のある地点で水の音がするのが好きだった。家と家の間のよそものが入り込む余地がほとんどないような道から見える場所で水が落ちたり跳ねたりさらさら流れたりしていた。毎朝その場所に差し掛かるとわざとゆっくり歩いて水が流れているのを目と耳で確認して、明日も流れていてくれよと願っていた。なぜなら水が流れているのは崩れたコンクリートの穴のなかで、穴に入れられた小さな水道局のコーンが恨めしげに水に浸かっていたからだ。水が穴から溢れている様子は見たことがなかったから、穴の両端にあるパイプが絶妙な水位を常に保っていたようだった。そしておそらく水を流れていることを歓迎していたのは私だけだったと思う。
 だいぶ長いあいだ水は流れ続けていて、水のある日々に慣れてしまった私の願いが弱まった頃にとぷんとぷんという音は止まった。コンクリートは崩れたままなのに、赤いコーンもそのままなのに、水だけが止まってしまった。やや正しい状態になったのだ。正しい道路はとても静かで寂しい。最近は仕方がないのでiPhoneから水のせせらぎの音を流して正しく自分を慰めている。室見川の音ではなくても正しい。
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va134on · 3 years
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アマチュアなんですけど
 念願かなってiPad Proを買った。大昔に胸をときめかせて買ったiPad Airは7年の月日を経てiOSのアップデートを打ち切られ、雑誌のページをめくるだけでもきしむような引っかかりが起こり、かつて最新のトレンド機器として見せていたすばらしい動きをすべて喪失していたのだ。後継機の目覚ましいスペックの向上にあわせてOSのヘビーさも向上していくので仕方ないのだが、いかんせん凋落が激しすぎてかつての華々しい広告を思い出して少しやるせなくなる。栄枯盛衰のスパンに私の感覚が追いつかない。
 新しいiPadはとんでもなくきれいで高性能なので椅子に座ってインターネットをするという大役にふさわしい働きを見せている。翻って普段見ているパソコンのモニタが汚く見えるというお茶目な一面もあり好感度が高い。せっかくなのでApple Pencil2まで買ったのだが、単純に指紋をつけずにブラウジングできるというだけで結構便利だった(一部のジェスチャが使えないのが不便だけれど)。冷静に考えるとこんなに金のかかったモニタを指の油でベトベトにするのは正気ではない。miniLEDも私の指紋を照らすために設置された訳ではないと思う。
 Apple storeの店員さんに「発売してすぐのモデルってことはやっぱりお仕事で使われるんですか?」と聞かれ笑いながら「何に使っていいかわからないんですよね」と答えたところかなり強めの愛想笑いを頂戴したので、店員さんも「こいつに売りたくないな……」と思った可能性があるが、がんばってインターネットをしつつ有意義な用途を考えていく(最初の取り組みとして「iPad 使い道」と検索しました)。
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va134on · 3 years
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光さす黄泉
 ゴールデンウィークということなので、そろそろ量子金融システムへの切り替わりが行われ、プールが一杯になるほどの量の金塊を元手に一人あたり6億円が振り込まれるかなと期待しているが未だにその兆しがない。ちなみにこの荒唐無稽にも思われる話はTwitterで少なくとも3人が自信ありげに語っていたので、文殊の知恵によって導かれた理論なのだ。現代の文殊には感謝しないといけない。
 残念ながら職業柄ゴールデンウィークを自主的に拡張することは許されていない。厳密に言えば理論上は拡張可能だが、職場の全員から白い目で見られることを加味しないといけない。悲しいかな白い目で見られていることを想像しながら悦に入るスキルをまだ手に入れられていないのだ(ちなみにこれが私の人柄の良さという話もある)。本当は10連休がほしい(もっと本当のことを言えば8那由多連休がほしい)ところだが、仕方ないので5月の第二週は多少のたうちまわればすぐ土日が来るので身体に優しく、エコであると認識することで見える風景を���しく彩っている。
 なお今のところゴールデンウィークで最も印象深かったできごとは、彼氏が作った卵黄のタレ漬けをパスタに乗せて食べたら「絶対にご飯にかけて欲しかったのに」とたいへんに嘆かれたことだ。卵黄とパスタから始まる哀しみもあるらしかった。
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va134on · 3 years
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どこへゆく
 自分の書いた文章を読み返してそういえば父親が亡くなっていたのだったと思い返した。しばらく会わないうちに亡くなったので、そういえば最近会ってないなあなんて形で思い出すこともある。未だに死を受け入れられていないのか、そもそも認識すらできていないのかあまり判然としないまま1年と半年が経った。
 いまいち死を身近に感じられないのはおそらく父親のことを思い出す材料が自分の周囲に全然ないからかもしれない。車に乗らないから父親の上手な運転を振り返ることもないし、何度でも「うんこのビル」と叫んではしゃいだことも思い出さない。なぜか父がたまに振っていた木刀は今の家にないし、距離を開けて二人が座れるソファもない。
 そう考えると遺品には少なからず意味があるなと思う。「思い出の品々」なんてなくたって人のことぐらい思い出せるじゃないかと昔は思っていたが、物があると感触がずっとくっきりしてくる。父がどこかで買ってきた安物の腹筋ローラーでさえいつかの空気を内に含んでいる。別にどれも大した思い出じゃないけれど、私達はあのとき一緒にいたんだねと言えるだけで価値がある。
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va134on · 3 years
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おいしそうですよね
 目下の問題として手が荒れている。しかも2年ぐらいに渡って荒れ続けている。もはや戦乱の世かと思うほどだ。
 もともとアトピー性皮膚炎なので、ともすれば手が痒くなりがちなのはかねてからの話であるけれども、ここまで荒れが長期化するのは珍しい。大体は手をちょっと見て「ああ、はい」と頷かれた後に出される薬を塗ればすぐに治るというのに、今回ばかりはしぶとい。というよりは治ったと思うと別のところが荒れ始める。ワニワニパニックを2年間プレイし続けているようなものだ。
 世の動乱を収めるためには「紙を触らない」「手洗いをしすぎない」ことが大切だと主は言い給うたが、私の職場はいまだにFAXとメールが同じぐらいの地位にいるぐらい紙が大好きなのだ(前世がヤギなのかもしれない)。それに昨今の情勢を考えると手洗いをしないわけにはいかない。まるで社会に王手飛車取りをかけられ続けているようであり、これは対戦相手が悪いとしか思えない。もう少し手加減を覚えてはいかがかと思う。 
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va134on · 4 years
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延伸する雨季
 そろそろ夏休みという単語がちらついて校舎を徘徊する子供たちが好き勝手な事を言いながらいつもよりはしゃいで下校する時期なのに今年はまだそうならない。大人が夏を先送りしたから。感染症の危うさは4月より今のほうが高まっているはずなのにみんな少し落ち着いたような顔つきになって、そもそも恐怖それ自体が伝搬するものだということを思い出したりする。
 誰も体験したことのない夏が来ると言われても僕はそもそも夏自体をあまり体験したくはないので感想は「嫌」の一点から変わることはなかった。このまま世界が夏を先送りし続けて素知らぬ顔で秋を迎えてほしい。長い休みだけはそのままにして。
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va134on · 4 years
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どこかに辿りつけ
 最近(ここ30年ほど)はあまりにも怠惰な生活を送っているため、ふとした拍子に「なにが頑張ったほうがいいのでは?」という気持ちが湧いてくることがある。何しろ15歳の宇多田ヒカルは7回もベルを鳴らしているし20歳の椎名林檎は祖母に手を引かれたりしているのだ。私も14回ベルを鳴らしたり曾祖母に手を引かれたりした方がいいと感じてしまう。
 「やればできるから安心しろ」と周囲に言い続けてきたが実際のところ特にやらないことが多すぎたせいで結局次善の選択肢(最善の選択肢はハーバード大学を出て全身に巻き付けたダイオードを青色に光らせながら帰国することだった)ばかり取っている。とりあえず買った学術書は1ページも開かれることなくエアコンから射出されるさわやかな春風に吹かれている。辛い思いをして種をまかねば花は咲かないというがうちの職場は鳥が全然辛い��いをせずにばらまいてきた種が申請書も書かずにすくすくと土地を占領している。知識もこういう雰囲気ですくすく育つべきだと思う。そうなると目下の問題は私が鳥を飼っていないことになるのかもしれない。
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va134on · 4 years
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電気で常夏
 この間ハワイアンズについに足を踏み入れた。もとからハワイに行きたいことでお馴染みの私だったので、まず前哨戦としてハワイアンズに行くのは必然としか言いようがない。
 ハワイアンズのいいところは宿泊者は送迎バスが無料で使えるところで、とはいえ僕だけみんなとやや離れて暮らしているので家族連れの詰め合わせみたいなバスに一人で乗った。せっかくなので車窓をのんびり眺めて寂し気な物思いにふけったりしていたが、どうあがいても常夏の楽園に辿り着いてしまうので物思いはやめて土岐麻子を聞いたりして過ごした。
 ハワイアンズに行ったからにはハワイっぽいものを食べようかなと思いつつハワイっぽいものが特に思い浮かばなかったので最終的にラーメン屋に入った。こんもり盛られたザーサイと意外なほど麺の多いラーメンを食べた。施設のど真ん中にある店だしどうせ高くて少ないだろと思ったら高くて多かったので若干納得がいかなかった。
 もともと運動もできないしプールも苦手だった。プールに入ったのも 12年ぶりぐらいだったのだけれど、流れるプールで浮いているだけでなぜかとても楽しめてしまい人間はちょろいな……と思ってしまった。私がamazonで買った浮き輪は大きすぎて浮いている間にあたりの小学生と衝突し続けていた。そのあと500円で乗ったウォータースライダーでは「急に高低差が出てきて頭をぶつけて出血したらどうしよう」と冷や冷やしながらチューブの中を高速で回っていた。特に出血はしなかった。
 インターネットにはハワイアンズは料理がおいしいと書いてあったので期待してビュッフェに行ったらちゃんとおいしかったので感心してしまった。私の胃袋の小ささではビュッフェを堪能するまでには至らなかったが、爪痕だけ残そうとチョコレートファウンテンの写真を撮った。そしてテカテカした茶色の静止画は特にテンションの上がるものではないことに気づいた。
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va134on · 4 years
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遠くへと消えていけ
 いつの間にかiPhone10を買ってから2年経ったので機種変更をしに行った。せっかちな私が早く端末を受け取りたくて郵便局に行ったのに必要書類が足りず、同僚が局員を説得してくれて無理やり受け取った日から2年経ったのだ。あれから住んでいるところも仕事も変わってしまったし同僚も遠くに異動してしまっていて、なんだかとても前のように感じる。時間の長さではなくて今の自分との距離が重要事項なのかもしれない。
 私のiPhoneはほとんど漫画とTwitterとブラウジングのためだけに存在していて、最近の縦長の画面だと漫画が読みづらいので多少恰幅のいい11 promaxを買ったのだった。あまりにも高いのでsimフリーのものを買って格安simを差し込むことにした。貧しいのか豊かなのかわからない着地点だった。
 一番近いApple storeが渋谷だったのでいやいや渋谷に行ったら昔よりは何となく愛せる気がした。若い人ばかりで人が多すぎて歩きづらいところは相変わらず最悪だったけれど、歩く人がみんなどんくさくて楽しそうな顔をしているのがよかった。意外なほど希望溢れる街だとは知らなかった。
 2年前は最先端だったマシンは店員の手で手際よく処分され、あとには割引用のギフトカードだけが残った。私がややこしい会計をお願いしたら「計算がおかしくなるリスクはありますが、お客様のご希望に添えるようにするのがプロですから」と言われたあとしっかりと計算を間違えられたので私が見ていたのは予防線ではなくてイベントフラグだとわかった。
 新しい携帯は大きくて扱いやすくて、そして予定通りほとんどの機能を活かせそうになかった。最新のCPUを駆使したウィンドウショッピングに全ての未来をかけていく。
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va134on · 4 years
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寄り添って愛と呼び
 昨日今日と二日続けてマックに行ったら自分より明らかに若いであろう店員が私の10倍ぐらいすばやく動いていて結果的に彼らの存在に疑問を抱いてしまった。あの歳の人間がはきはきとバイトをし始めているということが理解できないし、その歳でもう働いてるんですか?と訳の分からないことを考えてしまう。冷静に考えれば私もそれなりの歳になったということなのだけれど、12年前の自分がファストフード店のレジに立てるとは到底思えない。今になってそれなりに仕事が何とかなるようになった自分と比較すると非実在的な飛び級の生徒を見ているような気分になる。私の進捗が遅すぎるのはさておく。
 ちなみにマックに二日続けて行ったのは、食欲がないなりに味の濃いものを食べたくなったからだった。インフルエンザなんて3日で治ると意気込んでいたのに2週間たっても思ったほど食欲が戻らず「意外にやるじゃねえか」と悪態をついてもウィルスは返事をしない。わりとニヒルなのかもしれない。
 マックのいいところは予想通りの味のものが毎回ちゃんと提供されることで、いつも期待を上回ったり下回ったりしない。ナゲットから常にナゲットの味がすることで妙に安心する。実は徳の高い場所なのかもしれない。
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va134on · 4 years
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ドタン場でキャンセル
 昔から7188が好きで、聞き始めた当初はメロディラインが単に好きだっただけだったのだけれど、ある時歌詞が自分好みだったことに気づいた。7188はあんまり難しいことを言おうとしないところがいい。選ぶ単語も素直すぎるぐらいで全然かっこつけない。自分がうまくいっていないことを飾らずに詞にできる人は無条件に信頼してしまう。聞こえのいい言葉でふんわりまとめるほうがおそらく簡単だから。
 7188の最高傑作が鬣と言われるのに特に異論はないとして、魚磔までのあけすけすぎるワードチョイスにはもはや畏敬の念が湧く。「パンク」なんてこれがパンクなのかはさっぱりわからないけれど繰り返しこういう言葉を叫べることに感動してしまう。どこかで思いを馳せながらかっこ悪すぎて言わなかった単語たちがちゃんと並んでいるのはすごいことだ。一日中海を見るにはもう寒いんだけど。
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