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#遅筆堂ネタフリ亭じべ。
theatrum-wl · 7 years
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【鼎談】ハードコア・シアターゴアーの世界
3人で年間観劇1000本超えています
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〔じべ。さんの観劇予定リスト〕
2017年3月25日(土)@新宿 名曲・珈琲らんぶる 聞き手・構成:片山幹生(WLスタッフ)
年間300本以上小劇場を中心に観劇を続ける筋金入りの観劇人3人を招き、彼らの演劇生活と演劇観について話を聞きました。WLの企画こまばアゴラ観劇隊の中核メンバーだった「りいちろ」さん (twitterID :@riichiros)、歩く観劇家としてWLの取材を受けたことのある「遅筆堂ネタふり亭じべ。」さん(@chihitsudo)、そしてWLのスタッフ「小泉うめ」(@co_ism1_U_Me)です。年間300本以上の観劇を行うのは、金銭的にはもちろん、体力的にも相当厳しいはずです。彼らはいったいなぜそこまで演劇にのめりこむことができるのか? 演劇への深くて濃厚な愛が込められた3人からのメッセージをお届けします[インタビュー中の(数字)は注。記事末に注一覧あり]。
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〔撮影:廣澤梓。左からじべ。さん、りいちろさん、小泉うめさん〕
【年間観劇数200本を超えるとダメ人間?!】
WL:今日来て頂いた3人の年間観劇数は合計すると1000本を超えています。1000本というのは、千本ノックとか千人針とか『千夜一夜物語』とか、普通は象徴的な数字で「たくさん」の記号的表現なのですね。それがこの3人の1000本は象徴ではなく、実数で1000本です。今回の鼎談を通して、年間300本を超える観劇をしている観客だからこそ見える演劇の風景を語って頂きたいと思います。まず1年間の観劇本数をお聞きしたいのですが?
じべ:去年が360本、2015年が408、14年が379本。2012年には604本見ました。これはちょっとどうかしてましたね(笑)。
WL:年間で604本ですか! これは観劇の金字塔と言える数字ですね。
りいちろ:私はかわいいものですよ、確か去年は326本だったかな。
うめ:私は1日1本超えの366本ということでWLで公表しています。ホントはもうちょっと多いかも。
WL:なるほど3人で1000本、確かに超えていますね。
じべ:ちなみにこれはのべ本数で、同じ作品を3回見た時は3回とカウントしています。
うめ:細かいことなのですが、どう数えるかというのもちょっと問題なんですよね。
じべ:私の数え方は、例えば2つの劇団が2つの演目を一緒にやる、でも公演としては2本立てで3000円だよ、というのなら、1本としています。
WL:つまり劇場の入口に入って、出てくるまでで1本という考えかたですね。そのなかで何本の作品が上演されようと。
じべ:かつてニフティサーブに小劇場好きが集まるフォーラムがありまして、そこで出た説で年間観劇数が200本を超えるとダメ人間というのがありました。
WL:なぜ200本なのですか?
じべ:200本の根拠は、平日に1本も芝居を見なくても、土日祝日にマチ・ソワ(1)で観劇すれば200本ぐらいは見られるわけですね。あるいは逆に、土日祝日は芝居を見なくても、平日の夜、会社帰りに1本見て帰ると年間200本ぐらいは見られる。となると年間200本を超えるようになるともうダメ人間だね、というのがゴアー(2)のあいだでほぼ定説になっていたんですよ。
WL:なるほど、それは説得力がありますね。年間200本だったら芝居から離れて真人間に戻る日が確保できるわけですね。
じべ:そうそう別の趣味が入り込む余地があるわけですよ。
りいちろ:(ここで割り込んで)昔はそうだったんですよね、昔は。(一同・爆笑)
WL:なんですか、昔はというのは?(笑)
りいちろ:だってほら、今は平日多少見なくても、土日の3本回しというのがけっこう可能じゃないですか。作る方もだんだん考えてくれてきていて、朝昼晩というのができるようになっているんですよ。11時、3時、6時とか。そうすると200本ダメ人間というのは昔の話で、今は別に〜。
じべ:待って、待って。一日3本見るというのがそもそも変なの(笑)。その時点でもうダメ人間だよ。(一同・爆笑)
WL:真人間との臨界点である年間200本を超えたシアターゴアーは都内でどれくらいいるのでしょうか?
りいちろ:週に複数回劇場で会ってしまうみたいな感じで、確実に200本は超えていると思われる人が10人はいます。
じべ:よく見かけるけれど話はしたことはない人を含めるともっと多いですね。10人どころではないですね。
うめ:演劇をなりわいにしていない方で200本以上見られるかたは、おそらく30人ぐらいはいらっしゃると思います。
りいちろ:でもそれはあくまで私たちが見ている範囲での話ですから。小劇場ではなく、大きな劇場ばかりで見られている方もいるはずですし。ミュージカルや歌舞伎を年間200本とか。あるいはダンスばかりを集中的に見られている方とか。
じべ:われわれ3人の見ているのは小劇場が中心ですが、それでも重ならない部分がありますし。
りいちろ:3人で年間1000本超えといっても、われわれは東京の演劇シーンのごく一部をカバーしているに過ぎません。
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【観劇にどれくらい使っているか?】
WL:観劇費用って年間どれくらい使っていますか?
じべ:100万くらいかな? 3000円くらいの芝居を300本観れば大体それくらいになるでしょう。逆に言えば平均すると3000円くらいの芝居をたくさん観ている。4000円だったらたまに行くけど、5000円だったらもう行かない(笑)。いや行かないじゃなくて行けないって感じかな。
うめ:少し本数を減らせば行けるんじゃないですか(笑)?
じべ:だから、そういう意味では「3000円のを2本観るより5000円のを1本観る方が安いし、しかも本数も減らせるでしょ?」って思うんだけど、そうならずに3000円のを2本観ちゃうのは何なんだろうねって自分でも思います。
WL:りいちろさんはいかがですか? 予算的にはどのくらいでしょうか?
りいちろ:アゴラ(3)と王子(4)では会員(5)になっていますので、あんまり値段は考えないんですけど。ただチケット代が6000〜7000円くらいになると月に2回くらいの贅沢にしようというのはありますね。ただ6000円とか7000円、さらに1万円とかになるとしても、ナイロン(6)とかの作品になるとそれはそれだけ払っても観たいから、そういうものは観るし。
うめ:私も支援会員で効率的に観ていることと、あとは割引チケットのようなも��を探したりもしています。多分おふたりよりは高額の大劇場の作品を観る機会が多いと思うのですけれど、そこは全体のバランスの中で意識してやりくりをしている感じです。あと、私は遠征もするので結構交通費や宿泊費もかかっていますので(笑)。関西の公演に出かけた時なんかに作り手の方からも「3000円の芝居を観るためになんて無茶なことしてるんですかっ!」って言われるんですけど、そういうのを足して考えると結構恐ろしいですよね。
【いかにしてハードコア・シアターゴアーになったのか?】
WL:観劇歴についてお聞きしたいのですが、いつごろから観劇をしはじめたのですか?
じべ:就職して4年間北九州で暮らしていまして、そこが民音(7)に加盟していたので劇団四季なんかの巡業は見ていました。それから東京に戻ってきて、89年にはじめて13本と2ケタを超えました。92年からコンスタントに2ケタ見るようになり、1999年と2000年に3ケタ、100を超えました。その後、3年間また二ケタに戻って、2004年以降ずっと3ケタになりました。
WL:真人間とダメ人間の臨界である200本を超えたのはいつですか?
じべ:えーっと、2005年に215本で、以降は増える一方で、2012年の604本をピークに減らしつつあるという感じです。
WL:りいちろさんはいかがですか?
りいちろ:私は一番最初はミュージカルなんですよね。学生の時に、父親がイギリスにいた時期がありまして、それで私も八ヶ月ぐらいイギリスに行ってまして。そのときにウエスト・エンド(8)で『ジーザス・クライスト』とか何本か見ました。その後に帰国して就職して、職場の先輩に芝居を見に行く方がいまして、1980年代の半ばからですが、青い鳥(9)とかジテキン(10)とかを観に行ってました。
WL:3人とも観劇は1980年代半ば過ぎからなんですね?
うめ:私はお二人より年下なんですが、高校時代から見始めていたので、観劇のスタートは同じ頃ですね。
りいちろ:私はその後、仕事でニューヨークに赴任して、このときにミュージカルをよく見に行きました。2年間でのべ100本ぐらいの作品を見ました。それで劇場に行くくせがつきまして、帰国してからは年に4~50本ぐらい見ていました。ただ200本越えは2008年ですね。
じべ:私が小演劇を見始めたきっかけは、91-2年頃です。『12人の優しい日本人』(11)の映画 が91年なんです。そのころに『やっぱり猫が好き 』(12)や『子供欲しいね 』(13)で三谷幸喜がブレイクしはじめていて、やっぱり三谷幸喜おもしろいや、じゃあ東京サンシャインボーイズ(14) を見に行こうか、という感じで関心が小劇場に傾き始めた。同じ頃に友達に誘われて、ONLYクライマックス(15) の『沈黙の自治会』という大傑作を本多劇場で見たのもきっかけのひとつだし。もうちょっと後だったかもしれないけれど、関西の劇団が東京に来るようになって『十二人のおかしな大阪人 』(16)という……
うめ:(割り込んで)ありましたねぇ(笑)
じべ:『十二人の優しい日本人』を大阪人がやったらどうなるか、中に小学生もいるというへんな芝居で。そういうものがあって、それが関西の名だたる小劇場のオールスターでした。そんならそとばこまち(17)やMOTHER(18)やM.O.P. (19) を見ようかなという感じになって。
りいちろ:小劇場の人たちがテレビに進出してきた時期があったのです。関西では『テレビ広辞苑 』(20)という番組がありましてそとばこまちなどの方が、その後の『ムイミダス』(21)などには新感線 (22)のメンバーが出演されていました。東京では『IQエンジン 』(23)という番組に第三舞台(24)の人たちが出てましたね。こうやってある程度小劇場の人たちからプチ・メジャーな人たちが出てきて、それに引きずられてマイナーなものにも視線が向けられるようになったというか。90年代から2000年にかけて小劇場が世に知られる一つの潮流がありました。大人計画(25)やナイロン100℃などが出てきたのはもうちょっと後だったように思いますが。
WL:うめさんは関西出身ですよね。当時どんな劇団がありましたか?
うめ:さきほどじべさんの話に出てたMOTHERの前身の売名行為とかM.O.P.とか。万歳一座(26)やリリパ(27)はずっと観てますね。遊眠社(28) や劇団3○○(29)、第三舞台の公演は関西にも来ていました。就職後は、私は福岡勤務だったので、東京の劇団の地方公演や地元の劇団を見たり、あるいは大阪や東京に遠征して芝居を見ていました。年間100本ぐらいの低空飛行(笑)がしばらく続いていたのです。ブレイクしたのは震災があった2011年ですね。あれがきかっけで「(演劇を)見なきゃ」に切り替わったというか。
【公演情報の探し方と観劇記録】
WL:東京には膨大な数の公演がありますけれど、公演情報を得るためにどのようなソースを利用していますか?
じべ:僕はこりっち舞台芸術の新着公演のサイトを毎日見ています。あとはツイ廃状態なんで、Twitterから流れて来る情報を見ています。
りいりろ: Twitter情報は「何それ!?」みたいな爆弾(30)が多いんですよね。人がスケジュール組んでるのに、全部組み替えることになるような(笑)。
じべ:「急なんですけど、何月何日に公演します」って流れてきて、「おいおい、そこだけかい?」みたいになることがある。あとは当日パンフレットの次回出演情報。あれをみると次回はこの公演に出るんだ、あるいはあの公演にあの人出るんだとか、そういう情報があるので。
WL:りいちろさんはいかがですか。
りいちろ:折り込みチラシでしょ、当日パンフレットの次回ご出演情報でしょ、それからTwitterとかFacebook。あとブログを巡回できるようなソフトがあるのでそこから情報を頂いたり。オフィシャルな告知でなくてもこれを観て来たとか、チケットが取れたとかの情報で、公演を知ることもあります。また作り手の方や役者の方からの直接のご案内を頂くことがあります。あと終演時に「次どこにご出演ですか?」って訊ねて教えて頂くことも。それから、アフタートークの告知などで知る場合もあります。あれ大事なんですよ。面白いアフタートークをやってくれている方の次の作品って観たいんですよ。
WL:もうほとんど網羅された感じありますが、他に何か補足することとかありますか。
うめ:私は最近完全にチラシだけになってきているんですけど。毎月もらったチラシを上演月ごとに仕分けして保存していて、それを月末に50公演くらいまでに絞って整理して、翌月のスケジュールを立てています。年に200本位までのときにはこりっちやシアターガイドのサイトがすごく役に立っていたんですけど、臨界点を越えるともう今は自分の方が情報を知っているという自信が出てきたので(笑)。僕はオールジャンルで芝居を観るので、既成の情報サイトではどれも不十分な感じになってしまっていて、結果的に集めたチラシとtwitterを中心に頼るようになってきています。
WL:なるほど。うめさんは当日券派とうかがったことがあるのですが。
うめ:いや、けっこう予約もしてますけどね。アゴラは支援会員なのにほとんど当日券ですね。なんで会員なのに一番最後に入って来てるんですかって、笑われるんですけど。
じべ:割引日とかあるいはアフタートークのゲストなんかでこの日行きたいっていうのは先に予定を入れたり、あるいはギャラリー公演なんかでキャパが少ないときは先に予約しちゃうとかいうのもあるし。逆の判断で迷ったら予約しないで、直前まであったら行くっていうこともありますね。予約しようと思ったらなかったとかもありますけれど、まあそれも縁かなと。
WL:みなさん観劇記録をつけてらっしゃるようですが、それはどういうかたちで何を記録しているのですか?
じべ:観劇記録以前に公演情報把握用として、日時、タイトル、公演主体、会場、指定席・自由席の別、あるいは整理番号、初日と楽日、料金など、もろもろ。エクセルでやっています。エクセルでソートして日にち順に並べて。バッティングしているときはこれでチェックできますし。それで、見たものは別のページにコピペして観劇記録にしています[記事冒頭の写真]。
WL:おお、かなり詳しく記録を残しているのですね。りいちろさんはいかがですか?
りいちろ:グーグルのカレンダーにどんどん入れていって予約したり、見た作品はその旨のマークをつけています。これはすぐ取らなきゃ売り切れちゃうという公演はすぐ決めちゃって、残りのやつは1ヶ月とか3週間前に見直して。観たいものが集中しそうな時期には、グーグルのカレンダーに公演期間も書き、一コマや二コマを爆弾用に開けておきます。感想があるものはtwitterか自分のブログに書くようにしています。
WL:うめさんはどのように記録されているのですか?
うめ:私は基本的にパソコンの中でスケジュール管理していまして、それに記録は残っています。手帖に見た作品は全部つけているので、何月何日に何を見たかというのはわかります。
WL:どんな項目を記録しているのですか?
うめ:タイトル、会場、団体、それくらいですね。最近の公演はネットで後から公演記録は確認できるので。
WL:あとチラシの管理についてもお伺いしたいのですけど、整理の方法を教えて頂けますか?
うめ:去年1年もらったチラシの枚数を数えてみたんですけど、僕は毎月のべ枚数で1500枚位のチラシをもらっているようです。フェスティバルシーズンになると2000枚くらいになっていました。だから3枚くらいチラシを貰うと観に行こうかなと思ったりして。それがまた病気なんですけどね(笑)。
WL:その膨大なチラシを、そのあとどのように整理されるのですか?
うめ:とりあえずは全種類ためておいて、それを月末の段階で来月観る候補作品として50作品くらいに絞って、仮チラシと本チラシをセットにして束にします。
WL:それは観る予定の芝居のチラシということですか?
うめ:観たい芝居ということになりますね。すべては観られませんが、最終的にはこの中から30本位を観ている状況です。 そして、観終えたら当日パンフレットで仮チラシと本チラシを挟み込んで重ねていって、結果的には月末には観劇した作品の仮チラシ、本チラシ、当日パンフレットをセットにしたものが観劇した順番に並んでいるという状況にしています。
じべ:昔やっていたのはほぼそのスタイルで、ポケットがたくさんあるファイルを買ってきて、それにね、その月の上旬、中旬、下旬、来月、更にもっと先という感じでポケットを分けてチラシを入れておいて、観たものはそこから抜いていく。観られなかったけど観たかった作品とか、あるいはデザインが良いなとかいうチラシを保存にしてたんですけど。最近はもうひたすら積んでいて、時間がある時に整理をして、これダブってるなとか確認しながら処分しています。
WL:では基本的には観た公演のチラシは保持されているのですね。
じべ:今は探せば出て来るという状態です。もしかすると出てこないかもしれない。
WL:うめさんは几帳面にファイリングされているので、過去に見た公演のチラシは結構出て来る感じですか。
うめ:何年の何月に観たということが分かれば出て来ると思います。あとこの量になるときれいにファイリングしようとしても無理ですので、月単位でまとめておくくらいがちょうどいいですね。
WL:素晴らしいですね。りいちろさんはチラシの管理はどうなさっていますか?
りいちろ:私はそんなことはしないですよ(笑)。貰ってきたら、とりあえず前にビニール袋を置いて、いらないものをどんどん捨てて、残ったものを棚のところにボンと置いておきます。公演の予約を入れたらそのチラシは放置しておいて、1ヶ月くらいしたらゴミ出しの日に紐でまとめて捨てます。
じべ:最近はこりっちや団体のサイトでチラシに記載されている情報が出ているものがあるので、チラシは捨てちゃっていいような気がしますね。
りいちろ:でも当パンは取ってます。
うめ:当パンが大事ですね。
りいちろ:当パンのない公演も最近はあるんですよ。さらには紙のチケットもないような公演があって。そういう公演ではチラシでももらった紙っぺらでも残すようにはしています。ただチラシもないような作品も最近は多いですからね。
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【つまらない公演?ありません!】
WL:年間300本となると自分の好みの作品だけを見るというわけにはいかないですよね?
じべ:いやそんなことはないですよ。僕は自分の見たいものだけしか見ていないという感じですね。
WL:じべさんはこまばアゴラ劇場と王子小劇場の会員ではないのですね?
じべ:会員になったほうが得なのはわかっているのだけれど、そうなると「あ、これで見られるんだったら見ておこうか」となるのが自分で恐いので、あえて会員にはなっていないのです。年間600本の年をピークに、今、思うところがあって観劇本数を減らそうとしているので。年会費払っているとやっている公演は全部見られるとなるとずるずると本数に歯止めがかからなくなるような気がして。
WL:みなさんそれだけ作品を見ていて、はずれと思う作品はないのですか?
三人:?(間)
うめ:「はずれ」ってどういうことですか?
WL:見に行ったけれど、自分に合わなくて、時間と労力を損したと思うような作品ですが。
じべ:逆にそう思いたくないから、どんなに退屈した作品でも何とか一つはいいところを見つけようとする(笑)。いやせっかく時間と金を使っているのだから、何にも得るところがなかったというのは馬鹿馬鹿しいじゃないですか。だからしみったれた考えだけれど、一つでもいいところを見つけて帰ろうというのが楽しいじゃないですか。
りいちろ:ひとつの観劇だけで完結しているわけではなくて、他の舞台とのの比較で楽しむというのもあるんですよ。たとえば観ているときその舞台にあまり興味を引かれなくても、他の舞台を見る上のこやしになることもあるし、逆に別の作品を観ていてその舞台を思い出し初めて気づきが訪れることもある。そういうことが蓄積していくことで深まっていく楽しみってあると思うのですよ。だから別にその舞台を観て「損をした」とか、「しまった」とか思うことはあまりないですね(笑)。
じべ:さっきの話に1つだけ追加すると、実はね、今まで1回だけ観終えて拍手をしなかった、拍手できなかった公演があるんですよ。それでも1つだけ良い所があって。それはね「上演時間が短かった」っていうことなんです(笑)。
りいちろ:分からなかったというのはあるんですよ。でもそれがために、作品を拒絶するようなことはまずないです。わからなくてもやっぱりそこに何かはあって、それが何だったのかということを考えているだけでも結構面白いし。その場でなくても、観劇後や、帰宅してからや、数日たってからもらったものがすっと解けることもあります。だからそういう作品について呟く時や終演後作り手の方や役者の方とお話をさせていただけた時には、わからなかったことも含めてその時点で自分が感じたことをそのまま表現するように心がけています。
うめ:私は「分からなかった」というのは絶対に避けたいんですよね。例えば、自分のとらえ方が間違えているとしても、この人たちはこういうことがやりたいんだろうということを考えて先ず観るので、その上で、だったらもっとこうすれば良かったのにとか、それがやりたいのであったら失敗しているよねと考えることはあるけれども、やはりそれ自体が楽しいので。
WL:だからつまらなくて、腹が立つというようなことはないんですね。
じべ:いい人発言しちゃうと、さっきのうめさんに近いんだけど、自分が好みに合わないと思った時に「どこが気に入らねぇ」、「どこが自分に合わない」のと考えることが面白いんですよ。
うめ:その辺は逆にお聞きしたいんですけど、研究者の方からするとそういうところこそ批評の本質的なところじゃないんでしょうかね。
WL:それは大事なことだと思います。ただどうしても私は「つまらない」と思ってしまうことが多いのですが……
うめ:「肌に合わない」とかの理由でTwitterなどで面白くないとか書いている方を見かけますけど、それはその人個人の感想であって、それで面白くないで終るのではなく、何を失敗しているのか指摘して説明してあげるべきだなと思います。
WL:それはちょっと反省したいと思います。目から鱗の落ちる指摘ですね。まさにそうだよなっていう(モゴモゴ)(一同・笑)。そういう意味では苦手なジャンルや作品があっても、あまり問題ではないということになるんでしょうね。
りいちろ:違和感がトリガーになってより深い奥行きや理解が訪れることもあります。一期一会ですからね、作品は。自分が期待した通りのものが必ずやってくるわけでもないし、そうなることだけが面白いわけでもない。自分が行くとセレクトした公演ではあっても受けとめにくいところなんて普通にあるわけで「この感覚ってどこからどうして訪れるのか」って思いながら委ねるのも楽しい。というか、自然とそうなっちゃいます。
WL:最近見たなかでいいなと思った作品は何ですか?
じべ:たくさんあるよ。
りいちろ:言うとそれだけで2時間くらい取れるよね。
WL:愚問でしたかね。あり過ぎてこんな質問されても困りますよね。
りいちろ:困りはしないですけど、時間がかかる(笑)。ただ、今の時点でということで強いて言うのであれば、西尾さん(31)の作品をソロ公演と鳥公園と2作品続けて観たので、それが印象に残ってますね。それから今回のシアターシャインのものも含めてこのところの日本のラジオ(32)の公演は結構印象に残っています。
じべ:直近と言えば、たすいち(33)の再演。あれはベストキャスティングだと思った。初参加の人も含めそれぞれみんなきちんとキャラができていて、これは演出家の手腕だなと思った。作品自体も初期たすいちの感じがバッチリでていて、初めて「あれ?ちょっとキャラメルボックスに似た香りがする」とも思った。作品の構造もすごく良かった。
うめ:関西で期待している劇団のうちの2つが今年これから東京に来るんですが。ひとつは京都の努力クラブ(34) 。リクウズルーム(35)とのジョイントでアゴラで公演予定です。リクウズルームもダークホース的なところではひとつ注目して欲しいんですけど。この合同公演にはぜひ期待をして欲しいなと。あともうひとつは匿名劇壇(36)という、主宰の福谷圭祐さんはiaku(37)なんかにも出ている大阪の若手劇団で、今年王子で初めて単独の本公演を打つということで、東京のみなさんに注目して欲しいなと思っています。
りいちろ:くによし組(38)など面白いですよね。國吉さんの発想や作り方はとりたてて奇異なものではなく視座や表現にちょっとバイアスをかけたりちょっとずらしてるだけなんですよ。ちょっとずらしているだけなのだけど、そこからあからさまになるものや滲むものや浮かぶものがいろいろあってしかもそれが緻密でビビッド。あと第27班(39)。主宰の深谷さんは語り口のバリエーションが豊かで作品を観るのが楽しみ。また、観るたびに、さらに何かを見せてもらえる期待感があります。
じべ:そういう意味だと、劇団SUBUTA!(40)と劇団皇帝ケチャップ (41)はおさえとけというのはある。
りいちろ:今や人気劇団ですがmonophonic orchestra(42)の須貝英さんが作る作品はイメージの編まれ方や重ね方が様々に豊かで面白いですね。はじめて吉祥寺にあったギャラリー百想での公演をみたときから「この人の世界の組み方はこれまでに観た演劇とは違う!」と思い続けているのですけれど、この前、ピヨピヨレボリューション(43)での作・演出を観た時に、改めて彼の語り口ならではの世界の広がりを感じました。
うめ:あと私は岸田賞の候補になりそうな作品を全部見ておきたいと思っているんです。それはちょっと意識すれば十分可能だと思います。
【ノーシアター、ノーライフ?】
WL:この辺でまとめたいと思うんですが、「あなたにとって演劇とは何?」という陳腐な質問なんですけど。
じべ:楽しみのひとつ。
WL:それはまたあっさりと。
じべ:別に生きがいですとか、どうでもよくて。そんなこと言わないし。楽しみのひとつ。
WL:りいちろさんは、いかがでしょうか?
りいちろ:うーん。あんまり考えたことないです���ど。まあ、空気とかと同じじゃないですか。ごはんとか空気とか。
うめ:それでいうと生活の一部ですよね。朝起きて顔を洗うように、夜は劇場に行く。No Theater, No Life!
じべ:でもなくなったらなくなったで、それはそれで生きていけるんじゃないかなって気もする。今年は年間300に抑えたいと思って、すると月25本じゃないですか。1月はぴったり25本だったのですが、2月は30本になってしまった。それで3月は気を引き締めて20日までで8本しか見なかった。これはこれですごく快適というか。こうなるとすごく楽だし、他にも何かできるね、ということがあるんで。何年か前に金銭的にすごく切羽詰まってひと月に2本しか見なかったことがあるんだけど、それはそれで。行けなくなったら行けなくなったで別の楽しみがあるし。
りいちろ:観劇で失っているものっていっぱいあると思いますよ、気が付かないけど。例えば木曜日の10時にテレビを見る楽しみとかね。
WL:今日はどうもありがとうございました。
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【注】
マチ・ソワ:マチネ(昼公演)とソワレ(夜公演)のこと。
ゴアー:goer(英語)。ここではもちろんtheater goer、観劇人を指す。
アゴラ:こまばアゴラ劇場のこと。
王子:花まる学習会王子小劇場のこと。
会員:劇場支援会員のこと。年会費を支払うことで、該当劇場の公演を年間全て観ることができるなどのサービスがある。 
ナイロン:ナイロン100℃。ケラリーノ・サンドロヴィッチが主宰する劇団。 ちなみにナイロン100℃の公演のチケット料金は現在6000~7000円くらい。1万円というのはケラリーノ・サンドロヴィッチの外部作品のことでしょう。
民音:一般財団法人 民主音楽協会。国内外のアーティストの招聘、コンサート・各種コンクール・イベントの主催・企画制作、チケット販売を行っている。
ウエスト・エンド:ロンドンの一地区。数多くの劇場があり、ニューヨークのブロードウェーと並ぶミュージカルの中心地。
劇団青い鳥:1974年に結成された女性だけの集団創作劇団。
自転車キンクリート:1982年に鈴木裕美ほか、日本女子大学在学中のメンバーが中心となり結成された女性だけの劇団。
映画『12人の優しい日本人』:中原俊監督。三谷幸喜脚本。
『やっぱり猫が好き』:1988年(昭和63年)10月11日から1991年(平成3年)9月21日まで、フジテレビ系列で放送されていた日本のコメディドラマ。もたいまさこ、室井滋、小林聡美が三姉妹役で出演。
『子供欲しいね』:1990年4月10日から1991年3月28日までフジテレビ系列局で放送された日本のテレビドラマ。工藤夕貴が出演。
劇団サンシャインボーイズ:1983年、日本大学芸術学部に在籍していた三谷幸喜を中心に旗揚げ。
 劇団ONLYクライマックス:北野ひろし主宰で、1987年に結成された。
『十二人のおかしな大阪人 』:東野博昭・G2・生瀬勝久(作)、生瀬勝久(演出)。1995年1月28日~31日に全労済ホール/スペース・ゼロに公演があった。
そとばこまち:1976年に京都大学演劇研究会を母体にして誕生した「卒塔婆小町」が発祥。1978年に創設メンバーが脱退し、辰巳琢郎・川下大洋らが新たに「劇団卒塔婆小町」として立ち上げた。1979年6月に現在の名称となる。上海太郎、生瀬勝久らを輩出。
劇団MOTHER:1991年に旗揚げ。座長の升毅と座付き作家G2の2大看板で独特の「ギャグ・ファンタジー」の世界を築き上げ、人気を博してきた。2002年に解散。
劇団M.O.P.:主宰は演出家、脚本家、劇作家のマキノノゾミ。つかこうへい作品を次々に上演し、関西学生演劇ムーブメントの中心的劇団のひとつとなる。
テレビ広辞苑:1988年4月4日から1989年3月20日までよみうりテレビが毎週月曜 25:10 - 25:40 に放送していたコントバラエティ番組。
ムイミダス:一部日本テレビ系列局と一部独立UHF局で放送された読売テレビ製作のバラエティ番組。
劇団☆新感線:1980年、大阪芸術大学に在籍していたいのうえひでのり、こぐれ修らを中心に結成。初期にはつかこうへいの作品上演で人気を博し、関西学生演劇ブームの中心的存在となった。
IQエンジン:1989年1月10日から同年9月までフジテレビの深夜番組放送枠『JOCX-TV+』で放送されたクイズ番組。
第三舞台:1981年、早稲田大学演劇研究会の中の劇団(アンサンブル)として結成された。鴻上尚史主宰の劇団。小劇場運動第3世代の代表的な劇団の一つ。
大人計画:1988年、旗揚げ。異色かつ意欲的な作品と個性的な俳優達の確かな演技で支持を集め1990年代、小劇場演劇を代表する劇団となった。
南河内万歳一座:1980年10月、大阪芸術大学(舞台芸術学科)の有志により結成された劇団。
笑殺劇団リリパットアーミー:1986年6月に中島らもと若木え芙(現・わかぎゑふ)により旗揚げされた劇団。
夢の遊眠社:1976年、東京大学演劇研究会に在籍していた野田秀樹を中心に旗揚げ。駒場小劇場を拠点として活動するアマチュア劇団から、その後の演劇ムーブメントの先駆けとなった。1992年に解散。
3○○:渡辺えり子(現・渡辺えり)主宰。1978年に舞台芸術学院の仲間と劇団2○○旗揚げ。その後、劇団3○○に改名。
爆弾:告知期間の短い急な単発・短期間の公演のこと。
西尾さん:西尾佳織。劇作家・女優。劇団鳥公園を2007年7月に結成。 
日本のラジオ:代表である屋代秀樹がカノン工務店、ちぃむinuguiを経て、自作の戯曲を上演するため2006年に立ち上げた劇団。
+1(たすいち):主宰目崎剛。早稲田大学発、2007年結成の東京を拠点とする劇団。
努力クラブ:2011年3月に佛教大学劇団紫で団長をしていた合田団地と立命館大学劇団西一風で座長をしていた佐々木峻一を中心に結成。京都を中心に活動。
リクウズルーム:ク・ナウカで俳優だった佐々木透が2007年にはじめたソロユニット。
匿名劇壇:2011年5月、近畿大学文芸学部芸術学科舞台芸術専攻の学生らで結成。「悪い癖」で2016年OMS戯曲賞大賞を受賞。
iaku:劇作家・演出家の横山拓也が立ち上げた演劇ユニット。横山拓也のオリジナル作品を各地域で上演していくこと、また各地域の演劇を関西に呼び込むことを指針に2012年から活動開始。
くによし組:國吉咲貴が主宰する劇団。「異常で、日常で、シュール」をコンセプトに、國吉節と呼ばれる特徴的な台詞や、誰もが通る悩みや壁をオカシク描く。
第27班:「絶望を遊べ」「かっこいい世界観、どうしようもない人々」をコンセプトに2011年より発足した劇団。現在は代表の深谷晃成を中心に5人で活動中。
劇団SUBUTA!:学生時代演劇やっていた宗像・黒川 2人が、2014年に立ち上げた、できたてホヤホヤの社会人劇団。
劇団皇帝ケチャップ:吉岡克眞主宰。2014年から活動。
monophonic orchestra:2010年2月に旗揚げされた演劇企画。俳優、須貝英が俳優活動を進める傍ら、脚本を書き、演出を行い、その作品を上演するために立ち上げる。
ピヨピヨレボリューション:右手愛美の描くポップだが確かな後味の残る世界観を、歌、ダンス、台詞にのせて表現する。
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theatrum-wl · 9 years
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‘歩く観劇家’じべ。さんについて行ってみた
廣澤 梓
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4月某日。「歩く観劇家」じべ。さんから送られてきた、待ち合わせ場所を知らせるDMは以下の通りだ。「11時頃に練馬区豊玉南2丁目25あたりの環七の交差点を通過予定です。新宿-王子間を走る都営交通・王78系統の練馬北郵便局前バス停と豊玉中バス停の間、電車なら西武新宿線野方駅から環七沿いに1kmほど北上したあたりです」
その交差点で待っていると、向かいからやってくる男性の姿。あいさつもそこそこに、お手製の地図を数枚手渡してくれた。今日歩く予定の道のりが赤鉛筆でなぞってある。「容赦はしませんよ」と言ってじべ。さんは早速歩いて行ってしまう。後ろをついて行ってみた。
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もらった地図。じべ。さんは早々にイヤフォンを装着した。
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じべ。さんのことを初めて知ったのは、ワンダーランドの短期連載「観客が発見する」第一回、新道喜一郎さんのインタビューの際に話題に挙がったときのこと。年間の観劇本数がずば抜けて多い(あるときは600本だった!)上に、「歩く観劇家」を自称しておられ、劇場間を徒歩で移動されているとのこと。歩くことと観劇の関係性とは?興味を惹かれて、取材をお願いした。
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西落合4丁目あたりでペース落ち着く。このあたりは直線だから、速度が安定している。じべ。さんは曲がり角の移動がとにかく素早い。
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スタートして20分を過ぎた頃。「なかなかやりますね。ここでおよそ半分です」。振り向き、イヤフォンを外したじべ。さんにスタート以来初めて声をかけられた。気がつけば豊島区。スタートから中野区、新宿区に続き、3区目に入る。
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基本的には進行方向に対して右側の歩道を歩くのがお好みとのことだが、左に曲がる際は、その少し手前から左側に寄って行く。
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離されてきた。じべ。さんのペースは落ちない。
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住宅地を抜け、大きな通りの信号待ちに当たる。スタートして20秒以上留まっているのはここが初めて。(止まらなくてもいいように、調整しながら歩いているそう。)ここで聞いている音楽を尋ねたところ、この日は♪TSURIMELA→♪NO NAMEとのこと。途中で切りたくない、アルバムは全部で1曲という考えなので、時間を計算して、次聞くアルバムを決めている、らしい。
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一気に池袋らしい景色に。地図上でも、池袋はすぐそこ。
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目的地はそろそろらしい。
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受付開始15分前に目的地の劇場へ到着。約7キロ弱の道のりを1時間弱で。じべ。さんも驚きの好タイムだったもよう。常に左手に持っていた携帯で確認していたのは、この画面だった。開演まであと1時間。これからどうするのか尋ねたところ、ここで待つ、とのことだったので、話を聞いた。
―お住まいはずっと東京ですか?
「基本的には東京です」
―東京で演劇をご覧になっているんですね。地方に行ったことは?
「1回だけ名古屋遠征があります。東京で見るものがたくさんあって、遠征すると1泊しなければならないな、そうするとあれが見られないな、ということになってしまう。そのときはたまたまあまり見たいのがなくて、普段は東京で公演をやっている某団体が、名古屋でしかやらない演目をやるというので行ったのだけど、その後東京でもやっていました(笑)」
―たくさんある中で、この公演を見に行こうという決め手は何ですか?
「主には知り合いが関わっている、ですが関わっていれば必ずという訳でもないし、チラシやネットの情報でピンと来たものを観に行くことも。ちなみに知り合うきっかけは古くはmixi、近頃はTwitter、他に終演後の呑み会とかですね」
―新道さんから、じべ。さんとはパソコン通信時代のFSTAGEで知り合ったと聞きました。
「そうですね、きいちゃんとはそのときからです」
―歩いて劇場に行くことを始めたきっかけは?
「例えば自宅から中野だと2路線の乗り継ぎになるけれど、歩いて行けば距離的にもそんなに遠くなく時間もあまり変わらない…だったら歩いてもイイんじゃないか?と思ったことからです」
―では、歩くよりも観劇のほうが先なんですね。演劇はどれくらい前からご覧になってるんですか?
「じゃあ確認しましょう。 変遷があるんですよ。と���どきTwitterで��ぶやいている『全手動��べ。bot』というのがあるんです。『89年に初めて2桁になり、コンスタントに2桁越えるようになったのが92年から。97年の59本から毎年50本を越えるようになって、99年に初めて3桁を越えて101本を記録。…(略)』」
―歩いたらいいと思ったのはいつ頃のことですか?
「それはあんまり考えてなかったですね。今住んでいるところに越してから20年になるけど、そこに来てからのことです」
―歩いた先に演劇があったのではなく、ずっと観劇ありきでそこに向かって歩いているんですね。
「そうそう、健康的だし、交通費の節約になるし、マチソワ間は時間調整できるし。電車で行くと1時間くらい余っちゃって、どうしようというところを歩いていくとちょうどいいかな、とか。一石二鳥」
―ぼんやりする時間というか、何もしない時間がないほうがいいということですか?
「歩きながらぼんやりしてることもあるし。歩きながらレビューの下書きしたり。あれをどう書こうかとか考えたりしながら歩いてるときもあります。あそこの桜きれい、とかも」
―わ! 桜見たりとかされてたんですね! あまりに速いので、脇目もふらずに歩いているのかと。今日は今までに通ったことのある、決まったルートという感じですか?
「そうです。慣れた道です。ただ、途中に分岐点があるルートだとうっかり別方面に向かってしまうことも…(笑)」
―演劇ありきということですが、でもTwitterを拝見していると、歩くということにも重点を置いているように見えます。「歩く観劇家」はいつから名乗っているのですか? そのきっかけは?
「ここ2、3年前から。自分で、歩いてるなーと思ったから(笑)」
―自分で歩いて景色が変わっていくことと、劇場で座ってて景色が変わっていくことって違うように思うんですが、そのあたりについて何かお考えはありますか?
「そうかなー、いや全然考えたことなかったです。逆に言えば、歩くことが観劇になるような公演も今まで何度かありますけどね。なかないで、毒きのこちゃんとか、東京タンバリンとか。」
―そういう作品はよくご覧になりますか?
「あれば。でも野外では天候があるから。基本的に晴れ男なんだけど、なぜかそういう公演を見た3回のうち2回が雨でした」
―さきほどの質問に戻りますが、そういった演劇を見ることと歩くことは違いますか?
「そういった意味では歩くのは手段で、芝居は目的ですからね。でも僕にとって歩くというのは時速6キロとかのことだから、まちなかを歩きながら見る演劇は歩くうちに入りません。劇場で見るのと似たようなものです」
―よく行かれる劇場は?
「王子小劇場やサンモールスタジオ。駅前劇場も多いです」
―去年は何本ご覧になったんですか?
「400本割ったかな。3年前は600本超えて、さすがに多すぎると思ったから減らそうとしたけど、その翌年が590とかで駄目だったか…と」
―なぜ減らそうと?
「年間600本も観るのは遊び過ぎではないかと。その費用も馬鹿にならないし」
―じべ。さん、お仕事って何されているんですか?
「内緒です。一説には昔、鍋とかサプリメントとか売ってて、下が育ったから遊んで暮らせるとか、まことしやかな嘘もあるし、あるいは宝くじ当てたとか、遺産が転げこんだとか…」
―物語がついてるんですね。Twitterを見ていると今日みたいに、平日の昼間にもよくご覧になってますよね。
「暦日数を超える本数だとそうなりますよね…いや、土日祝に2本と平日の夜で400本は達成可能か。ちなみに‘FSTAGER’間では年間200本なら平日に観なくても可能なので正常、それを超えると“ダメ人間”という説が…(笑)」
―200本の上の指標はあるんですか?
「あまり皆言わないけど、暦日数を越えるとまずいというのがあるんじゃないでしょうか、感覚として」
―(ここで開場のアナウンス)今日は長時間ご一緒させていただきありがとうございました。
●遅筆堂ネタフリ亭じべ。(ちひつどうねたふりていじべ。) 映画、音楽ライブから芝居まで「お気楽鑑賞家」を自称していたが近年は観劇に重点が傾く。年齢・仕事など謎多き人物。
●廣澤 梓(ひろさわ あずさ) 1985年生まれ。山口県下関市出身、神奈川県横浜市在住。2008年より百貨店勤務。
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