Tumgik
#絞り振袖
bakinginstruction · 5 days
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solitude-klang · 8 months
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ANOND ROCK FESTIVAL 2023 @長野CLUB JUNK BOX
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今日混んでた。長野でこれだけ集まったら2024もあるでしょどう考えても。
Chanty
芥さん衣装のジャケットを最初から脱いで登場
白光から始まったアノンドフェス長野 メンバーを呼ぶ声も逞しくバンド側のエネルギーも高くて最初から盛りあがってた
コロナ禍で見たトッパーのChantyと同じバンドと思えないほど攻撃的なステージングで結構後ろまで腕が上がってた
ソラヨミを終えると三三七拍子
芥さんのMC
アノンドロックフェス 23 てことは 24、25って続いてっていつか野外とかでやるようになって
若手がアノフェス出てぇ~っとかって言うようなイベントに俺たちがしてかなきゃいけない
多分5曲目だったと思うので赤いスカーフかな
ベタな昭和歌謡みたいな曲でギターソロがHIZAKIさんのソロみたいだった。ChantyらしくなさとChantyらしさが融合されて新たなジャンルに聴こえる。かっこよかったなこれ。
もし君たちが何かマイナスな思いを抱えていたら、全部ぶつけてほしい
俺たちがプラスに替えて、ぶつけ合いたいと思ってる。それには君たちに、ほんのちょっと不幸で いてほしいって、思ってた時があって
でもそんなことねぇよなぁ?
毎度胸がギュッと掴まれるような思いで聞いてるおねがいごと前のMC 今日も素敵でした
https://x.com/chanty_news/status/1710977184289190014?s=46&t=uhUsDFLEfL0OfgvCYi4Eog
THE MADNA
MAD GAME久々に聴いた 涼太さんのステージパフォーマンスかっこよくなったなぁ
絞り染めの楊柳の服とかインド雑貨売ってる店で流れてる曲あるじゃん。それ��今日のBGMだったんだけど(笑)マドンナお香焚いてるからマドンナセレクトだと思ってたら涼太さんが歌マネしながら
怖いよ!って言ってた
で朋さんに似合ってたよ(そのBGMが)
(オレ?)
まぁ 今日のために仕上げてきてるからね?
今日さぁ 楽屋入ったら…なんかすごい 穏やかな空気が流れててさ
亞んちゃんの声しか聞こえないのよ
このMC面白かったけど忘れちゃった、、w思い出したらブログに書きます
スタンドマイクで星型タンバリン持って歌ってたのはグロテスク?セトリに書いてないけど、お客さんの振りがマルコの社会・窓(誰にも伝わらないw)お客さんもちょっと踊るやつ楽しかった。やっぱりNOIZと対バンして欲しい(笑)
Spotifyにないから書いてないのかも?極彩色もやってたよね…?
DEEP6 逆ダイパートで袖で見ていたと思われる亞んちゃんを招き入れ逆ダイリピート
バンギャとバンドは友達とか恋人を越えた関係性だみたいなこと言ってたけどちょっと感動したし今日もすごい楽しかった!
https://x.com/themadna__jp/status/1710991067737374738?s=46&t=uhUsDFLEfL0OfgvCYi4Eog
ザアザア
幕がないけどSE取って登場 新SE
一葵さんの髪がカクレンボッチの時みたいな結び方
五月蝿い季節で始まるも、今日は冒頭からだいぶ熱い。名前呼べ!とかなんだって?とか荒々しい煽りに応えて叫ぶフロアもかっこいい。
左に寄ってくださいで始まる蜘蛛の糸人が多いと走れないのか(笑)揉みくちゃになって楽しかった。
最後に言わせてが終わると春さんがスタンドに乗ったアコギを持って来た。これが出てくるというだけで構えるw
少しジャカジャカした後 雫 のあのイントロが
まさかの生アコギで聴ける雫やばい 曲の激情が最大限に表現された雫凄すぎて終わってからもしばらく立ち直れなかったのにすぐMC(笑)
今日初めて新譜がアニメのエンディングテーマ曲として流れたのに長野にいたせいで観れなかった話してたw
茨は二の腕 最後をラストダンスで締める楽しい終わり方
ステージに残った亞んちゃん
アノンドって、子供の頃から行ってる ほんとちっちゃなカレー屋なんだけど、それがタイトルになって、地元でこうやってイベントできるって、ほんとすげーことだと思ってる、ありがとう!
公演終了のアナウンスが流れても鳴り止まないアンコールに応えてくれた
ネクタイ外してノースリシャツだけで現れた一葵さん、レッドブル開けてw飲みながら何やる、、何やるの??
感電!けがのおそれがあります!!!
→即カウント
このチームワークかっこよかったな
笑顔で手を振る亞んちゃんを零夜さんがギューって抱き締めてたのも印象的
セトリ上がってないから私の記憶を乗せとくけど公式が公開する時代になってから覚える気がなく見てるので自信ないな、、君の心臓がどこだったか思い出せないし
【追記】公式セトリ上がったので差し替えました!
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最近の数本はザアザアが、
俺たちのザアザアが戻って来てると思う。
通常の対バンイベントでは得られない満足度の高いイベントが続いてる。ワンマンが少ない年だったけどこれだけの熱量で組まれるイベントなら今年冒頭に一葵さんがツイートしてたことの筋が通るなと思って観てる。
迎える周年に期待が膨らみます。
翌日休み取っとこうかな。余韻休暇 笑
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itocaci · 1 year
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人気の"rihei"デニムシリーズ - rihei "Denim Jacket" / "Denim Pants"
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こんばんは。
関西は10年ぶりに5月に梅雨入りの発表があり、ここ数日はスカッとした青空もあまりみることが出来ない。
明日はかなり強めの雨になりそうだ。
一方週末は晴れ間が少し覗きそうだったり。
お天気にコロコロと振り回されて、なかなかと思い切って洗濯物を外に干せないのが辛い。
でも街を歩くと、あちらこちらでいつの間にか紫陽花が綺麗に咲き始めて、夜中にスカイビルの横を歩くと、カエルの鳴き声が聞こえる。
地元に住んでいた頃、当時は田畑に囲まれていたので、夜中になるとカエルの鳴き声に苛々としたこともあるけど、今、カエルの鳴き声を聞くと、ちょっと懐かしく感じられて、心地よくすら感じる。
正直、梅雨は鬱陶しい。
でも、嘆いていても必ずやってきてしまう。
それだったら、この時期にしか楽しめない、梅雨の風景というものを楽しんでやろうじゃないか。
そんなことを思った。
明日はかなり強い雨になるそうだ。
おそらく、お店にはのんびりとした時間が流れるはず。
静かな音を流しながら、雨の音にでも耳を傾けてみようかと思う。
ちょっと美味しいコーヒでも飲みながら。
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さて、今日は、昨年人気で即完売してしまった"rihei"のデニムアイテムをピックしてみようかと思う。
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rihei : Denim Jacket (blue) ¥35,200 (tax in)
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rihei : Denim Jacket (black) ¥35,200 (tax in) sold out
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rihei : Denim Pants (blue) ¥30,800 (tax in)
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rihei : Denim Pants (black) ¥30,800 (tax in) sold out
ちょっと”black”カラーは既に完売してしまったのだが、ブルーはまだ上下で1組残っているのでご紹介させてもらえればと思う。
それにしても、本当に”rihei”のデニムは人気である。
昨年登場した"rihei"のデニム。
パンツは少し仕様や色も変わって今季も登場。
そして、昨年はなかったデニムジャケットが新たに登場した。
春夏でも快適に着用いただけるように、シルエットは上下ともゆとりのあるデザインとなっている。
また、素材は通常のデニムと比べると、少し薄手のデニム素材となり、これからの季節でも十分活躍してくれるアイテムとなりそうだ。
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ジャケットは身幅にゆとりを持たせただけではなく、アームホールにもゆとりを持たせている。
以前、"rihei"のリネンジャケットやパンツを紹介したときにも話したのだけど、ゆるーい、やる気のないような、脱力感あるシルエットになるのに、着用すると可愛い。
特に、このジャケットはバックからのシルエットがオススメだ。
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背面が少し、ふっくらと膨らむようなシルエットがとても印象的で、美しい。
緩いのに、美しい。
ストレスや肩を張らずとも、美しく見えるなんて、めちゃくちゃ重宝できるアイテムではないだろうか。
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首周りの生地を裁ちっぱなしにしたデザインも"rihei"の特徴的なデザインの一つである。
生地の切れ端から糸が少し出ているんだけど、ちょっとしたフリンジみたいでデザインのアクセントになっている。
また、襟のない、ノーカラー仕様のデニムジャケットになるので、首周りもすっきりと見せることができて、これからの季節にもオススメだ。
梅雨の肌寒い日に、ちょっとこんな素敵なジャケットを羽織ってお出かけを楽しむ。
雨で気持ちが上がらない日こそ、こんな美しいジャケットを纏ってお出かけしてみて欲しいなぁ。
(デニムジャケットなので、雨に濡れても家で洗えてしまうので、そういった実用面でもオススメだったりする。)
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デニムパンツも同様にウエスト部分や裾の部分は裁ちっぱなしにしたデザインを採用。
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昨年は、裾を大胆に折り返したデザインになっていたのだけど、今年はシンプルな仕様に変更されている。
実は、こちらの方が使いやすくて、ロールアップの幅も自分の好きな具合に調整が効く。
クルクルとラフに巻いて履いても良いし、何回か折って履いても良いし、逆に1回だけ大きく折って履くのも良い。
つまり、着用する人間が、その日の気分やコーディネートに合わせて好きに調整していただける。
着る私たちに任せるような余白が、今年のデニムにはあったりする。
だから、ついつい僕は今年も"rihei"のデニムを個人用でもオーダーしてしまった。
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しかも"rihei"のデニムはベルト付きでもあるので、ちょっとお得だったりする。
ウエストがめちゃくちゃワイドになるので、元々このベルトでキュッと絞って着用することを前提としており、女性から男性までユニセックスで着用が可能なアイテムとなる。
実際にブランドの公式では女性が着用している。
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これからの季節であれば、サンダルとか履いて、ロールアップして、夏のラフな装いに取り入れていただくのが一番良いのかなぁなんて思っている。
梅雨や夏のジメジメとした暑い日にも、少し薄手で、かつ家でのお手入れも簡単な"rihei"のデニムパンツはかなりこれからの季節にオススメしたいアイテムだ。
ここ数年、かなり"rihei"の人気が出てきている。
それはここ数年のアイテムが素敵なことはもちろんなんだけど、"rihei"を購入している方のほとんどが、一度"rihei"のアイテムを購入して、実際に着用したことがある方なのだ。
つまり、一度着用すると、すっかりその魅力に取り憑かれてしまっているということなのだろう。
見た目ではなかなかと目に飛び込んでこないのかもしれない。(こんな言い方をしたら失礼だけど。)
でも、着用した者にしかわからない世界があるのだ。
そして"rihei"の魅力を感じていただくのに、このデニムは最も入りやすいアイテムになると僕は思っている。
もちろん"rihei"のことを既に知っている人にもオススメしているので、ぜひ、この機会に一度袖を通してみてはいかがだろうか。
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きっと、"rihei"のデニムアイテムを纏ったら、虜になる。
その自信がある。
後悔などさせないし、手にして良かったと絶対に思ってもらえると信じている。
そんな訳でもし良かったら一度お試しあれ。
なおこちらは現在オンラインショップでもご覧いただけるので、合わせて見ていただけると嬉しく思う。
それでは次回もお楽しみに。
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wayntstore · 1 year
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今週末の3月25日はパーティーとなるでしょう。
STRIPES FOR CREATIVE から 3rd Delivery 、SEDAN ALL-PURPOSE からは 5th Delivery が同日発売を予定しています。
どちらも店頭はオープン時間の12:00、オンラインはそれから1時間後の13:00から販売を開始します。
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6POCKET SHORTS - Navy x Yellow/ Black x Green / size: M, L, XL / price: ¥26,400-taxin
大きめの配色マチ付きカーゴポケットを配置し機能性を高めたワイドシルエットのカーゴショーツ。素材は天然素材のようなスパン調の柔らかい風合いで光沢をもった100%リップストップナイロンを使用。裏地には高多汗処理機能を持ち、肌面を快適に保つ配色メッシュ素材を使用。
WIDE TAPERED EASY PANTS(MESH) - Black / size: M, L, XL / price: ¥28,600-taxin
SFC TAPERED EASY PANTS をさらに腰回りを大きく福幅を広く、ワイドなシルエットにアレンジしたワイドテーパードパンツ。裾のアジャスター付きドローコードを絞ることでシルエットのアレンジも可能。表地の素材は目の細かい軽量のメッシュ素材を使用。裏地には吸水速乾性の優れた肌触りの良いポリエステル素材を使用しています。
SUPER BIG FLAT TEE - Black, White, Navy / size: L, XL / price: ¥12,100-taxin
極端に身編、袖幅を大きくアレンジした SFC SUPER BIG TEE。裾はフラットに少し長めの着丈にしています。素材は30S を双糸を使用した、しっかりとした厚手の天竺素材。また柔軟仕上げをすることで柔らかい風合いを持たせています。
SUPER BIG POCKET TEE - Grey, White, Navy / size: L, XL / price: ¥13,200-taxin
左端に身に、神転を大きくアレンジした SFC SUPER BIG POCKET TEE。裾はラウンドさせた丸みのあるシルエット。素材は30SのMVS(毛羽の少ない糸)を使用し引き揃えて編む事でハリ感を持たせた、しっかりとした厚手の天竺です。
BIG MAX TEE - White, Navy, Black / size: XXXXXL / price: ¥12,100-taxin
SFC SUPER BIG SS TEE の身幅を極限までに広げたSUPER WIDE SS TEE。素材は 30S を双糸を使用した、しっかりとした厚手の天竺素材。また柔軟仕上げをする事で柔らかい風合いを持たせています。
SUPER BIG DRAWSTRING TEE - White, Navy, Black / size: L, XL, XXL / price: ¥15,400-taxin
極端に身幅、油伝を大きくアレンジした SFC SUPERBIG TEE。裾にドローコードを入れているので彼ってシルエットの調報が可能。プリントデザインは SS23NEW デザインです。素材は30SのMVS(毛羽の少ない糸)を使用し引き揃えて編む事でハリ感を持たせた、しっかりとした厚手の天竺です。
SUPER BIG SIDE STRIPES TEE - Grey, Navy / size: L, XL / price: ¥14,300-taxin
極端に身幅、油転を大きくアレンジした SFC SUPER BIG TEE。脇下の切り替えパーツのみに SFC オリジナルストライプ柄を配色。素材は30SのMVS(毛羽の少ない糸)を使用し引き揃えて編む事でハリ感を持たせた、しっかりとした厚手の天竺です。
SIMPLE CAP (MESH) - White, Black / size: Free / price: ¥8,800-taxin
6 PANEL のベーシックな BASEBALL CAP に長めのつぱでバランスを調整した SFC オリジナル CAP。素材は目の細かい軽量のメッシュ素材を使用。
WASHED SIMPLE CAP - Red, Navy, Black / size: Free / price: ¥11,000-taxin
6 PANEL のベーシックな BASEBALL CAP に長めのつぱでバランスを調整した SFC オリジナル CAP。素材はコットン100%の肉厚キャンバス生地を使用。ミストブリーチを施す事でケミカルな色落ち感のある USED のような仕上がりにしています。
WASHED BUCKET HAT - Navy, Black, Red / size: One Size / price: ¥9,900-taxin
つばを少し長めにとったベーシックな BUCKET HAT。素材はコットン100%の肉厚キャンバス生地を使用。ミストプリーチを施す事でケミカルな色落ち感のあるUSEDのような仕上がりにしています。
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OG LOGO S/S TEE - White, Oxford Grey, Navy / size: L, XL, XXL / price: ¥8,580-taxin
OGとは言わずもがな「オリジナル」の略である。スニーカーでもなんでもOGモデルに目がないのはみんな同じだと思う。ブランドが続く限り使うであろうOGロゴを刺繍した。空紡挽きの綿を使って日本製の生地ではあまり見ない丸胴ボディが特徴の1枚。自分の好きなカリッとした風合いと厚みのある生地でアメリカンスタイルのTシャツが出来上がった。今シーズンよりXXLサイズも展開。
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※上記記載の商品のみの入荷となります。記載に無い商品・サイズ・カラーは入荷しませんので、お間違いなく。
Coming Soon...
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お支払い方法は、オンラインクレジット決済・銀行振込 のどちらかとなります。通販をご希望の方は、上記InstagramのDMまたはメールアドレよりご連絡ください。
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idealhowl · 1 year
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するから、しあわせに
 人にはとびきり愚かな年頃があって、それは十三歳の頃だと私は信じつづけていた。そして、その中でも最も愚かだった瞬間として記憶されつづけているある水曜日の午後があった。具体的な日付は覚えていない。夏ではなかったと思うけれども。  その頃、同じく最も愚かな年頃を過ごしていた幼馴染の浅倉透は、幼い時分に遊んだぜんまい仕掛けで動く船のおもちゃに執心していて(彼女には散発的な流行があった)、記憶によるとそれは両手で持てるくらいの大きさで、真っ赤な船底をしていて、喫水線には透の名前が書いてあるのだという。きっと円香も知っているはずだと透は言い張ったが、あいにくそんな記憶は無かった。現在にしろ当時にしろ、一般に私の方が利発な子供だという評判だったために、そうでなくとも透はあまりにもぼんやりとした子供だったために、このことについてまともに議論が交わされたことはなかった。  しかし、船はあった。愚かな水曜日の朝に、私は学習机の傍らにある引き出しの奥にそれを見つけた。昼にはさらに愚かさを重ねて、私はそのことを透に打ち明けてしまった。透はわずかに身震いして訊いた。「ある? 今」  私が頷くと、透はすぐに私(と私の鞄)を引っ張って、中庭へと連れ出した。 「動かそ、船」と透は隅の方にある池を指して言った。「パス」と私はすかさず返す。 「えー。パスパス」 「いや、本気でパスなんだけど……」  中学校の池は小学校のものとは違っていくらかこぢんまりとしていた。中学生にもなって池に鯉やオタマジャクシがいるかどうかなどといったことに興味を抱く生徒は稀なせいだろう。それどころかむしろそうした生き物たちは忌避の対象になっていくのが普通だった。私もそうだ。透はそうじゃなかった。 「こっちこっち」と透は私の手を引く。言い出したら透は聞かない、と愚かな私は(たぶん)考えてついていって、池のそばに腰を下ろした。予想に反して池の水はひっそりとしていて、生き物の気配はあまりしなかった。もしかすると、教員も全然この池には興味が無いのかもしれない。  私は観念して鞄から船を取り出した。透はそれをじっくり観察して「え、おんなじやつ? これ」と言い放った。 「これのことでしょ」 「こんなんだっけ」  透が船を持ち上げる。船は両手のひらに収まるくらい小さく、底は褪せた赤色をしていて、喫水線にはもはや何が書かれていたのかは判然としないが、霞んだインクの痕跡が認められた。「昔の感じで思ってるからじゃないの」と私は言い聞かせるように透の顔を覗き込んだ。  そっか、と透は少し考えて「ありがと、円香」と笑った。そしてぜんまいを抓んだ。しかし、それはうまく回らなかった。 「逆なんじゃない」と私は投げかける。「それか、もう錆びてるのかも。古いし」  透は聞いているのか聞いていないのかわからない様子でひたすらぜんまいと格闘していた。しつづけていた。私はしびれを切らして言った。 「貸して」 「もうちょい、だから」 「見つけたの私だから」  強引に私は船に手を掛ける。透は逃れようと身をよじって、そして池に転げ落ちた。 「透!」  私は反射的に叫んだが、透はあっさり上がってくると隣にあぐらをかいて座りなおした。濡れた袖を絞ってみたり靴を脱いで逆さにしてみたりしながら「うわー、びしゃびしゃじゃん」「ねー、どうしよ、円香」などとまったく深刻さの感じられない口調で透はつぶやいている。しかし私はいっさい答えられなかった。  ただ私はじっと見ていた。透の、ちょうど開かれた両膝のあいだで持ち上げられたスカートの布に、池の水がちょっとしたうみを作っているのを。少し姿勢を崩せば、たちまち無に帰してしまうだろうちっぽけなうみを。ふと「止まって」という言葉が口をついた。辺りには中途半端に日が差していて、なにか奇妙にぬるい匂いが立ちこめていた。それで、魔が差した。 「透、動かないで」と私は重ねる。 「え、なんで」と透は首を傾げようとする。 「動くな」  私は身を乗り出して、船を捕まえた。乱暴にぜんまいを掴んでみると、それはさっきまでの格闘が嘘のようにたやすく回転した。だからそのまま手を伸ばして、うみに船をそっと近づけた。  船の底がうみに触れる。  静まりかえった中庭の一角に、ぜんまいの音のみがわずかに波を立てた。途端に振動がすばやく指先を伝った。私は驚いて、いきおい船を離してしまった。船はあっさりと転んだ。  透は膝を下ろした。うみは流れ出た。私は黙って立ち上がって、その場を去った。  中庭と校舎を結ぶドアを開けると、どこかの教室から昼の放送が漏れ聞こえてきていた。それがきっと穏やかな合唱曲だとわかって、私はその場でほんの少しの間うずくまった。  ひどくまちがった気分になったのだ。
   *
 真夏の港なんて来るものじゃない、と私は思う。それから、呼び出したやつが遅れてくるなよ、とも。  スマートフォンを取り出して、「十二時」「ここ」とだけ記された、透からのメッセージを再びにらむ。透は二十歳になった。しかし、なったからといってなんだということはなかった。十九のときに成人年齢が引き下げられたせいで、その数字がかつて私たちに与えてくれたはずの意味の多くは、以来ずっと宙づりになってしまっていた。だから透がこれから何をしようとしているのか、私には完璧に予想がついていた。  私は七年前にそれをやめた。透は今からそれをする。正確には、透はそれに失敗したから代わりに私を相手にしようとしているのだ。そういうわけなので、するべき返事も自ずと浮かんでいた。  要するに、あいつはフラれた。私もあいつをフる。もちろん、シンプルな比喩だが、比喩が真実と一致することは必ず無いと証明できる者など、果たしてこの世に存在するだろうか?  帽子を深めに被りなおして顔を上げる。酷暑のせいか、辺りに人はほとんどいなかった。おそらくろくに釣れないのだろう。海からはやはり厭な匂いがしていた。いくらかくたびれてきたシャツブラウスを着てきたのは正解だったなと思いながら、自分が贅沢な人間になったことを自嘲する。ここのところ衣装を買い取ったり頂いたりすることが増えていたから、そろそろクローゼットの全容を把握できなくなりつつあった。 「整理する必要がある」  整理する必要がある、と私は心のうちで繰り返す。多すぎるのだ、何もかも、積み重なってきたものが。  振り返ると、遠くに自転車の群れが見えた。おそらく中学生かそこらの集団だろう。大声で歌でも歌っているのか、離れた港にまで彼らの声が残響のように聞こえてくる。自分にもそういう時期があったっけ、と考えてみたが、うまく思い出せなかった。どちらにせよ、どうでもいいことだが。あったとしても、再びああいう風に歌いたいとはとても思えなかったし、なかったとしても、ああいう歌をあえて聞きたいとは思えないだろうから。  だから私はそれを聞くともなしに聞いていた。自転車はゆっくりと走っていた。早々に海へ向きなおってしまったので実際のところは知らな��けれども、音を聞く限りはそうだ。曖昧な音程に合わせて、私は頭のなかで適当なポップ・ソングをあてはめようとしてみる。これも違う。それも違う。あれも違う。そうしているうちに、曖昧だった音の輪郭が、次第にはっきりしてくるのがわかる。彼らがきっと声を張り上げたのだ。歌詞は一向に聞き取れないが、私はこの歌を知っているという予感がした。まもなく、それは確信に変わった。  私はこの歌を知っている。  ああ、これは、あの合唱曲だ――
 少し離れたところに、なにかが光って見えた。  船だろうか、と私は目を凝らす。  ざざざざざざざざ。  そいつはものすごい速さで近づいているみたいに見える。  ざざざざざざざざざざざざ。  そいつはぎらぎらと太陽を身体にまとわせてしぶきを上げる。  ざざざざざざざざざざざざざざざざ。  そいつが光る。ぱあっと光る。そいつの投げた光が一直線に網膜を焼く。私は眩んだ目を閉じて、そのまま耳を澄ませた。獰猛な獣の唸り声が徐々に収まって、それから軽やかに連なる朝の雨を私は聞いた。雨は私の鼻先で止んだ。「あれ。失敗? サプライズ」 「ばれてないと思ったの」 「何も言わなかったし、樋口も」 「ばれてるってばらさなかっただけ」  そっか、と雨は答える。そうして、わかるんだ、とも小さく漏らした。「じゃあ、行こ」  風が止んだ。太陽はまだ辛抱強く照り付けていた。私はいっそう強く眉根を寄せてくらやみを作りながら問うた。 「なんで。ていうかどこに」 「えー。わかってるんでしょー」 「知らない」 「ショーシン、してるの」ショーシン、とそいつは確かめるように発音する。「だから、行かなきゃ、旅行」  くらやみのなかで、目の前の空気が微妙に熱を持つのがわかった。私は顔を上げたまま口を開いた。 「私はべつに、傷心してないし」  えー、とそいつは不満そうに笑って、「じゃあ傷ついてよ」と短く投げつけた。 「は?」と聞き返す間もなく、そいつは重ねる。 「なろ、ふしあわせに」  ふ、と私は笑ってしまう。笑ってしまったから、計画はそこで台無しになった。私は手を伸ばした。そこにはちゃんと透の手のひらがあった。 「ていうか、なんで閉じてるの、目」 「……ライト、つけっぱなし」 「あれ。ほんとだ。まぶし」
   *
 それからはエンジンの轟音がすべての声をかき消した。  円香は目を開けた。たちまち潮の匂いをはらんだ風が乾いた瞳に飛び込んできたが、彼女はもう瞬きひとつしなかった。ただ透きとおる風を吸い込んで、自らの瞳の奥に海と同質の水脈が眠っていることを彼女は知ったのだった。
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comoda2013 · 1 year
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STILL BY HANDの春のお洒落を楽しくしてくれるシャツジャケット。 ドロップショルダー、たっぷりな身幅、そして広いアームホール。 STILL BY HANDならではの抜け感のある、たっぷりなオーバーシルエットが大好物という皆さま、今回も間違いなく期待を裏切りませんよ。 まっ、それは着用画像をご覧いただければ伝わりますよね! 少し大振りな襟、前立ては比翼仕立てに、その比翼に挟むようにデザインされた大きなWポケットがアクセント。 袖に入れられたダーツもミリタリー感があってギャップ萌えで、稼働性を高めるだけでなく、単純にかっこいいの一言です。 オリジナルファブリックを使用したオーバー シャツ。縦糸と横糸の色を変えることで 奥行きのある色を表現しています。比翼仕立ての 前立てにWポケットを挟んだディテールが特徴。 ライトなアウターとしてスウェットなどの上に 重ね着出来るようなボリューム感です。 軽い生地感ながら、スウェットやパーカーなどの上に重ね着できるボリュームは、インナー使いも含めてオールシーズンで使える着回し易さも魅力。 今回はサイズ46と48に絞りましたが、この2サイズで大抵の体格の方はカバーできると思います。 #メンズファッション #メンズスタイル #メンズコーデ #コーディネイト#ファッション #今日の服 #セットアップ #テーラードジャケット #スラックス SELECTBRAND #eelproducts #stillbyhand #avontade #lamond #jackman #manualalphabet #ordinaryfits #audience #fobfactory #military #vintage and more! https://www.instagram.com/p/CpuhmgmPDZF/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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rokuromi6963 · 1 year
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・ Leh BADBADNOTGOOD MILITARY PONCHO ・ ミリタリーをデザインベースにしたボックスシルエットのポンチョ型ジャケット。 ・ 適度なハリと凹凸感のある表情を持ったコットン×和紙の特殊な生地を使用。 重厚感のある雰囲気ながらも軽やかな生地感が特徴です。 ・ 大振りのフードはワイヤー入りで立体感が崩れない仕様に。 裾にはコットン×ナイロン生地をレイヤード。 ・ 肩内側あたりに付いたコードを肩のループに通し絞ることで 袖周りの表情に変化を付けることも可能。 ・ 随所に「whole earth catalogue」から デザイナーがコラージュしたリネン素材の生地を散りばめています。 ・ フロントポケットが前後で深さが違い、超大容量収納出来ます! ・ 様々なテイストとデザイン性が盛り込まれたブランドならではのアウターとなっております。 ・ ・ WEBSTOREへは、プロフィール欄の公式HP→ https ://rokuromi.shop-pro.jpへ!商品の詳細、お問い合わせは[email protected]まで!! ・ ・ #rokuromi #ロクロミ #ろくろみ #tokyo #高円寺 #ルック商店街 #Allgender #leh #style #mods https://www.instagram.com/p/CoGvGUTP7YG/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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vlst-tblr · 1 year
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NORWEGIAN RAIN ニューモデル 待望のタウンユース仕様 レインチョやスーチング(SUITS)を意識したモデルの印象が強いノルウェージャンレイン 雨天時のスーチングStyleに耐え得るレインウェア、或いは単調になる雨天Styleを底上げするデザイン力 イギリス🇬🇧サヴィルロウに出自を持つDesigner故に、その領域に於いては他の追随を許さない徹頭徹尾なクリエーション 世界的ブランドでありながらも親日家のDesignerの意向も大きく反映された日本市場での認知拡大と、聞こえてくるストリート、タウンユースモデルに対する要望 私もその声を上げる一人でした 売れるモノから創造された洋服が売れるほど現代社会は甘くも簡単でもなく、ブランドの核に意図、熱量、理念が備わっていなければユーザーは手にしてくれません Designerが創造したいモノとユーザーの声、クリエーションのその先 高い高い、そのハードルを超えるには、ある程度の年月は必要だったのかもしれません 因みに本モデルがインラインとしてラインナップされた事はブランドとジャパンエリアの代理店が長年培って来たコミュニケーションの賜物である事は間違いありません(exclusiveで解決出来るほど簡単な話では無いので) 今期DROPされた本モデル、HARMATTAN UNISEX CROPPED 正にクリエーションのその先を体現しています イングランドでも、フレンチでも、ユーロ圏のどこでも無く、アメリカンなストリートウェアのコーチジャケットがデザインソース そう来たか!の感嘆の声が聞こえそうです 当然スーチングStyleにもフィットしたトラディショナルな要素を掛け合わせるクリエーションは流石 1枚目の画像の通り、肩周りのパターンは前身頃から後身頃に掛けて一枚のパーツが取られています、生地効率よりも優先するのは雨天時の雨露が玉になって流れるように肩周りに縫い目を取らない事 そして流れるようドレープが生み出すeleganceも一枚取りゆえに表現されるもの 身頃と同素材の細い腰紐、何処となく和装の匂いを感じされるのも、このブランドならでは 紐を絞るとmilitary wearのような丸で違う表情を見せるデザイン性の振り幅はあらゆるジャンルに造詣が深い証 日本のファブリックメーカーと共同開発した最新でサスティナブルな生地は上品な艶と堅牢性を併せ持っています 機能性も本ブランドには外せない要素で脱着可能なフードパーツにはお馴染みのマグネットボタンで片手のボタン留めを可能にしています (ツイードランを嗜むDesignerならではの自転車乗りが運転中にボタン留め出来るように配慮されています) 最新鋭に振り切るだけではなくフロントポケットにはアナログな返しの付いたポケットで雨の侵入とを防ぐと共にミニマムな雰囲気を壊さない工夫がなされています ほとんどのモデルに採用されているiPad収納可能な蓋付きポケットを内側の左右に配備(片側にはファフナーポケットも) 裾にはドローコードを通して下部からの風の侵入と蓄えられた熱を逃さない工夫がされています 袖口の仕様も注目ポイント、二段階のフィット性を選択出来るボタン配置と手首が見える程度に捲り上げて固定出来るパーツを配備、コレはグローブを付けて着用する際に手首周りがスッキリ着用出来るようにする為の配慮です(故に袖丈問題が発生する女性にも、このdetailでスマートに着用出来ます) wool、corduroyの天然素材との相性も着用画像を見ればお分かり頂けると思います 別売りのライニングベストを搭載すれば真冬のシーズンもゆうに乗り越えられます ユーザーへの愛が詰まったモデルです (VELISTA) https://www.instagram.com/p/CmJaQKFPtFN/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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冬本番がいよいよスタートを切ったかんじです。
今年は秋が長かったので
ヘビーアウターのご準備など
まだできていない方も多いのではないでしょうか。
ここ数日でぐんと気温が下がった気がするので
そろそろ
たっぷり毛並みのファーコートの出番です。
柔らかくてふわふわで
ついつい触りたくなるファーのコートは
着るだけで
心もふんわり包んでくれる気がします。
トレンドもあれど、
やっぱり寒い季節に
心惹かれるのは
ふかふかしたファーなのは
乙女心ってやつでしょうか。
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Fur coat
¥12,800
Size (平置) 肩幅     47 身幅     60 着丈     62 袖丈     52 ウエスト   ー
Good sizeでナイスなボディ、
楽ちんに
着やすいのはこちらではないでしょうか。
着丈も長すぎず
いい塩梅のボリュームで
ボトムス問わず合わせやすそうです。
毛並みには表情があり
艶やかで重厚感も感じられます。
クラシックな真紅のリップが
似合いそうです。
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Fur coat
¥12,800
Size (平置) 肩幅     40 身幅     47 着丈     57 袖丈     52 ウエスト   ー *MADE IN ENGLAND
比較的ライトな。
黄身の強いボディカラーに
コンパクトなシルエット。
一目見て、
ロンドンのクラブシーンを切り取った
大好きな写真集があるんですけど
その中で虚な目でこちらを見つめる
ロンドンガールを思い出しました。
彼女はボーダー柄のTシャツを着てたけど
散々踊り終わったら、
こんなファーのジャケットを羽織って
フラつく足取りで帰ったに違いありません。
そんな妄想で
ボーダーの薄手のニットに
アイスウオッシュの切りっぱなしデニム
っていうルーズなスタイリングです。
かっこいいですね!?
大きなヘッドホンでUKロックでも聞いてください。
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Fur coat
¥14,800
Size (平置) 肩幅     42 身幅     55 着丈     87 袖丈     54 ウエスト   ー
たっぷりボリュームで
これでもかってくらい
ヘヴィーなのはこれ。
厚み、着丈ともに贅沢です。
マダムに全振りかと思いきや
フロントホック部分に
コロンとまあるいしっぽみたいなのが
ついてるとことか
愛らしくて好きです。
全体のフォルムも案外まあるい印象。
ただ襟も大きめ、ボリューム満点、
やはり主役級な彼女(?)なので
インナーは薄手で
胸元はシアーで透け感のある
ボディスーツです。
写真では見えていませんが
背中はざっくりオープンです。
▶︎Velours leotard
これくらい攻めの姿勢で
素肌感だったり、体のラインだったり
を感じられるインナー合わせが
Goodバランスだと思うのです。
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Fake fur double buttons coat
¥7,200
Size (平置) 肩幅     42 身幅     43 着丈     78 袖丈     53 ウエスト   40
これはフェイクファー。
フェイクファーはやっぱり軽くて
お気楽です。(お値段もかわいい。)
リアルファーに比べて
テディベアみ(?)を感じる毛並みです。
そのくせに
ダブルボタンに
ウエストも絞られていて
シルエットはコンサバめ。
カジュアルと絶妙なバランスを保っています。
それならっと、
70‘sナイキのフーディパーカーに
サイドラインのカジュアルパンツ
(シルエットがパジャマっぽいんですよね)
で合わせてみました。
▶︎“NIKE“70‘s hoodie
おそらく彼女は起き抜けのカッコに
ソファーに置きっぱなしだったコートを
引っ掴んで出てきたんですね。
コーヒー片手に髪は雑にまとめて
地下鉄を目指します。
そのくらい大雑把な
(いや、実のところ全然雑じゃないんですけど)
スタイルって逆に大人っぽい気がしちゃいますよね。
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youkaimikantext · 2 years
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夕鶴④
 あの日以来、ふぶき姫は毎日のように放課後に迎えに来てくれるようになった。 モグモグバーガーでポテトをつまみながらおしゃべりしたり、かわしま商店で駄菓子を買い食いしたり、ピコピコランドでレトロゲームの対戦をしたり。 学校の近くを一緒に歩いているところを同級生に見られた時は、可愛い彼女がいて羨ましいと言われた。 ケータも『いいだろ』と自慢したし、何よりふぶき姫を褒められたことが驚くほど嬉しかった。 夜はウィスパーとジバニャンが熟睡しているのを確認してから、密かに体を合わせた。 不思議なことに、その回数を重ねるごとに、日を追うごとに、ふぶき姫のことをどんどん好きになる。 『好きな男の子を振り向かせる妖力があったらいいのに』とふぶき姫は言っていたけれど、実はそういう妖力を使っているのではないかと思うほど。
「ケータくん、まだ寝なくて大丈夫なの?」 「もう1回したら寝る」 ベッドの中で、密着したままくすくす笑い合う。 「ケータくんとずっと一緒にいたいな」 「オレも」 ふぶき姫の髪を指に絡ませながら、ケータも頷いた。 頷きながらも、どうしても引っかかることがある。 「でもちょっと怖いんだよね」 行為後の心地よい疲労感の中で、ケータはうとうととまどろむ。 「何が怖いの?」 「ふぶき姫とこのまま一緒にいていいのかなって……」 そこまで言って、ケータははっと目を開けた。 言うつもりはなかったのに、口をついて出てしまった。 「あ、いや、あの……好きになりすぎて怖いって意味だから……」 弁明するように言う。 ふぶき姫は表情を変えることなく、ケータをじっと見つめる。 「……人間と妖怪って時間の流れが違うから……多分ふぶき姫よりオレの方があっという間に年取るだろうし……」 その続きを遮るように、ふぶき姫はケータの体にしがみついた。 「じゃあなおさら今を大事にしなきゃ……」 小さな声で言う。 ケータもふぶき姫を抱きしめ返す。 「私のことだけ考えて……」 「……うん」 好きになりすぎて怖い、それはケータの本心に違いない。 できることなら、このままふぶき姫と一緒にいたい。 会いたいし楽しくおしゃべりしたいし抱きしめたいし、いやらしいこともたくさんしたい。 それが普通の17歳の男子であるケータの本心だった。 体が痛むほど強く抱きしめ合って、唇を重ねる。 ケータは今まさに青い春の只中にいた。 そして、その蜜月を脅かす衝撃は突然やってきた。
「え! なにこれ」 土曜日の日中、自室でゴロゴロしていたケータが飛び起きた。 ふぶき姫は動画の編集作業のために帰宅していて、ケータの部屋にいない。 暇つぶしにふぶき姫が上げてくれた自分の日常動画をぼーっと見ていた時だった。 「どうしたんですか?」 「あ、いや……」 ウィスパーが振り返ると、ケータはスマホをさっと背後に隠す。 ケータの後ろで昼寝をしていたジバニャンが、すかさずスマホをかすめ取った。 「どうしたニャン?」 「あ、ちょっと待って……」 ケータがそれを奪い返すより一瞬早く、ジバニャンは動画の『再生』を押す。 寝転がってうたた寝をするケータに紛れて、一瞬だけ何かが見えた。 「今のなんニャン?」 ジバニャンがスライダーを動かそうとすると、ケータは慌ててやめさせようとする。 どうやら動画を巻き戻しされたくないらしい。 逃げ回るジバニャンの素早さに追いつけるはずもなく、巻き戻しはあっけなく実行されてしまった。 ケータが一番見られたくない箇所で一時停止する。 「ケータ……」 「どういうことです……?」 ジバニャンとウィスパーはスマホを覗き込んで固まる。 そこには、下着であられもないポーズをとるふぶき姫の姿があった。 顔は口元以外隠してはあるけれど、見る人が見ればふぶき姫だと分かってしまう。 少し再生してみると、同様に一瞬だけふぶき姫の画像が現れる。 それは谷間を強調するように前屈みになって胸を寄せた画像だったり、両脚を開いて下着をずらすように指をかけた画像だったり、ほぼ裸同然で畳の上に横たわる画像だった。 ケータはスマホを取り上げると、動画を閉じる。 何も言えずに呆然とした。 「だからこんなにバズってたんですね……」 ただのケータの日常動画だと思って誰も気にしていなかったが、ふぶき姫の画像を一瞬だけ差し込んで再生回数を上げる仕組みになっていた。 二人の目にも、ケータとふぶき姫はうまくいっているように見えていたのに。 ケータにかける言葉がない。
 召喚されてケータの部屋に現れたふぶき姫は下着姿だった。 驚いて体を隠そうとするふぶき姫に、ケータは黙って自分のパーカーを差し出す。 それを受け取ると、全て察したのかふぶき姫も黙って袖を通した。 「私が動画の編集してる間は呼ばないでって言ったのに」 「編集ってなに? なんでこんなことすんの?」 ケータはふぶき姫と目を合わせないように、顔を背けたまま言う。 「ケータくん、怒ってるの?」 ふぶき姫は口元に手をやって、困り顔で言う。 「ケータくん、動画がバズって喜んでたことあったから……ケータくんに喜んで欲しくて……」 ふぶき姫がつかえながら言うと、ケータは重くうなだれた。 「喜ぶわけないじゃん……ふぶき姫の考えてることが分かんないよ……」 ケータの声が震える。 「ごめんなさい……」 ケータが泣いているのかと思って、ふぶき姫は焦って言った。 「ケータくんが喜んでくれると思ったから……」 「だから喜ぶわけないじゃん、自分の彼女が他の奴に裸とか見せて平気なわけないだろ」 「裸にはなってないけど……それに私は人間の女の子とは感覚が違うから」 「そういう問題じゃない」 食い気味に否定されて、ふぶき姫はもう一度「ごめんなさい」と言い直した。 重苦しい沈黙が室内を満たす。 どうしてこんなことになってしまったのか。 「見られちゃったからには、もうお別れだね」 ふぶき姫が小さく言うと、ケータは少し驚いて顔を上げた。 そこで初めてふぶき姫と目を合わせた。 「一緒にい���れて楽しかった」 ふぶき姫は目に涙を溜めたまま、穏やかに笑う。 「……ふぶき姫はそれでいいの?」 「だってケータくんに嫌われちゃったら、もう一緒にいられないもん」 ふぶき姫は目を細めて、涙をひとしずく零した。 「彼女って言ってくれて嬉しかった……じゃあね、ケータくん」 そう言ってふぶき姫が背を向けると、静観していたジバニャンとウィスパーが動いた。 「ちょっと待つニャン! ケータはふぶき姫のこと嫌いになってないニャンよ!」 「そうでうぃす! ケータくんこれでいいんですか? 引き止めて下さい!」 ウィスパーに言われても、ケータの表情は変わらない。 「無理だよ」 絞り出すように、ひとことだけ言う。 それを確かめると、ふぶき姫は冷たい風に巻き込まれるように一瞬で消えてしまった。 別れはあまりにも突然だった。 次へ Back
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gallerynamba · 2 years
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◇DOROTHEE SCHUMACHER(ドロシー シューマッハ)◇ブラウスが入荷しました。 定価:60,500円(税込)⇒SALE価格:36,300円(税込) 弊社通販サイト商品ページ⇒http://www.gallery-jpg.com/item/G71607-10-55G/ 素材:レーヨン60%、シルク40% カラー:オリーブ×ライトグレー×パウダーピンク サイズ:1 着丈 約68cm、肩幅 約40cm、袖丈 約53cm、バスト 約94cm、ウエスト 約98cm (平置きの状態で測っています。) ジョーゼット素材のブラウス。 オリーブグリーンにパステルピンクとライトグレーの花柄がプリントされています。 袖は絞りデザイン。 軽やかなブラウス。 在庫ラスト1点です。 再入荷の予定はありません。 ※ご覧いている媒体により、色の見え方が多少変わる場合がございます。 ※店頭でも同商品を販売しておりますので、通販サイトの在庫反映が遅れる場合があり商品をご用意出来ない場合がございます。予めご了承頂きますようお願い致します。 ※コンビニ決済、ネットバンク、電子マネー、銀行振り込みなどの決済方法を選択される方は弊社からの在庫確認のメールが届いてからお振込み下さい。 Gallery なんばCITY本館1F店 〒542-0076 大阪府大阪市中央区難波5-1-60 なんばCITY本館1F 【営業時間】11:00~21:00 【休館日】9月無休 【PHONE】06-6644-2526 【MAIL】[email protected]
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eyes8honpo · 6 years
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三章 荒野に歌を祝福を
「敬人ちん」  そんなトンチキな敬称をつけ��俺を呼ぶのをゆるされるのは、この学院においてただの一人しか存在しなかった。  図書室に向かう廊下の途中、背後を振り向けば、数冊の本を抱えた仁兎が真ん丸な赤い目を瞬かさせていた。腕の中の背表紙に数秒、視線をやって、要らぬ世話かと思いつつも立ち止まり、仁兎が近付いてくるのを待った。 「資料なら、進路指導室にもいくつかあるぞ」 「ん~ん。あそこはもう見たんだ。薫ちんに教えてもらった」 「羽風に?」  思いの外大きな声が出てしまい、はっと口を押さえる。廊下は静かに。貼り紙に筆で書いた己の文字を思い返していると、仁兎は噴き出すのを堪えるようにして小さく笑った。 「そ。あいつ、ああ見えて、ちゃんと考えてるんだよ。生きる、ってことをさ。まあ、それで結局、資料が要るのはおれだけになっちゃったわけだけど」  手元の本と、プリントの入ったファイルを見下ろして、仁兎は目を細めた。穏やかな、笑うような仕草だった。 「大学はもう決まったんだ。ただ、どの分野に進むか、やっぱり迷っててさ。色々見るなら、あそこのがいいと思って。おれ、けっこう図書室詳しくなったんだぜ~? つむぎちんたちと書庫の整理とかしてさ」  行き先が同じであることを察してか、仁兎は俺より先に歩き出した。横に並ぶと、金髪のつむじが見下ろせる。表情は伺えない。小さな歩幅に合わせてゆったりと歩を進める。仁兎は、いつもと変わらない、少し舌足らずな口調で話しながら、抱えた一冊のファイルを数ページめくった。 「ほんとはこのまま放送系に進もうかと思ってたんだけど……初年度に、うまいことコマを取れれば、一通りのことは広く浅くやれそうなんだよな。道を絞るのは、それからでも遅くないって、いっそ開き直っちゃおうかと思ってさ。ただでさえ、出遅れてるんだ」  開いたファイルを閉じる音が、ぱたん、とやけに響いた。 「おれはアイドルしかやってこなかった」 ――その一言に、どれほどの闇と傷が含まれているのか。  一年目は、斎宮宗の操る至高の天使として。  二年目は、糸のもつれた空洞の人形として。  三年目は、ようやく一人の、自我を持った人間として。 「でも、それも全部、自分で選んだことだから」  それを今、全て抱きかかえて、進もうというのだ。  小さな体の、一体何処にそれだけの力があるのだろう。不思議でたまらなかった。壊れたものは、元に戻らない。いつだったか瀬名が独りごちるようにそう言っていた。この数年の間、壊れたものなど山のように存在する。けれど仁兎も、つぎはぎ合わせの状態からここに至るまで、歩いて来たのだ。  やめようと思えばいつだってやめられた。  それは夢ノ先学院のどの生徒に対しても言えることだった。  単なる惰性だけで生き残っていられるような世界ではない。去年の大規模な革命から、その傾向はよりいっそう顕著になった。努力しなければ評価されない。それを理解した上で、惰性でなく、自己の確固たる意志をもって、信念を貫き通したものだけが、今、この緑のネクタイを首に携えている。 「……そうか」  小柄な仁兎の白いカーディガンから、俺のものと同じネクタイが覗いている。俺はその色に、仁兎の覚悟と、ここまでの道のりを想い、胸のうちで静かに称えた。
「斎宮は、海外へ行くと言っているようだな」 「はは。あいつらしいよ。芸術が芸術として、正しく評価される所へ行くんだ。むしろそれ以外有り得ないだろ? 向こうで認められるんなら渉ちんとの共演も夢じゃない」 「あぁ……昔はよくやっていたな。斎宮が演出と脚本、日々樹は……いったい何人分の役を演じ分けていたんだか……」 「すごかったよなぁ~あれ。なんで演劇科に入ってくれなかったんだ、って、あっちの先生らは結構、悩ましい顔してたみたいだぞ」  あはは、と笑う口元が、数秒してふとまっすぐに結ばれる。そっか。ひとこと放って、仁兎は黙考するように口をつぐんだ。  図書室へ向かうのであろう生徒が、立ち止った俺たち二人を追い越して歩いていく。 「でも、追いかけたりしないよ。おれは、おれの道を行くんだ。一年、いろんなやつらに恨まれながら、それでもみんなに助けられて、ここまで生きてきたんだから」  その背中を見て、焦るような気持ちは、きっともう何処にもないのだろう。  そう在るために、考え抜いて、見定めたのだろう。まっさらな大地から、己の進むべき道を。 「強いんだな、お前は」 「ううん、弱いよ。みんながいたからここまで来れた。友ちんに創ちん、光ちん、テニス部の連中、放送委員の二人、それに他のユニットの奴らも……おれだけの力じゃない。一人じゃ生きていけないんだ。人間って」  うんしょ、と資料を左腕に抱え直し、右手の親指から順に数を数え、最後にぎゅっと握りしめると、仁兎は大きく息を吸い込んだ。 「なあ、敬人ちん。おれ、天祥院に、お前のしたことは消せない、おれたちの記憶からも消えないって、言ったことあるんだ」  ス、と血の気の引くような感覚がした。  続く言葉を待つ間、指先が冷えて、眩暈でも起こすかと危ぶんだほどだった。  何を言われても、受け止めるしかない。  奥歯を噛み締めて覚悟を決めると、仁兎は、声色を変えることなく、うん、と一度頷いて、小さく微笑んだ。 「でも、同じだったんだな。あいつも、敬人ちんも、自分の足で立ち上がって、どんな道でも歩いてやるって思えるやつらを、待ってたんだろ?」  俺は、色素の薄くなった唇を、ぼう、と開けてそれを聞いた。 「よかったよ。おれは、三年間、ここに居られて」  三年間。  その全部を、大切なものとして抱きかかえ、前を向く。 「敬人ちんは、後悔してる?」  それが、一体、どれほど困難なことか。 「……後悔、しそうなことは、何度もあった」  誰にも晒したことのない、懺悔のような想いが、溢れて口から零れていった。  潰すことしか出来なかった。  それを修復する手伝いも、してやれなかった。 「けど、お前が、お前たちが。歩みをとめなかったから。俺も、前へ進むことを許されたんだと思う」  輝かしい夢を抱いて、初めて舞台袖に立ったあの子兎らが、どれほど涙を流したのか、俺には分からない。そんなものをいちいち目の当たりにしていては、どうにかなってしまうと思った。やはり、鬼龍や斎宮の言うことは当たっているのだろう。俺は、他人に何か与えることもたいがい下手だが、奪うことが得意というわけでもないのだ。  だから嬉しかった。  もう一度、天の川の下、彼らと相まみえたことが。 「……お前たちのマーチングに、励まされたんだろうな」  柄にもないことを言ってしまった、軽く咳払いをしながら視線を床に落とすと、仁兎は、へへ、とくすぐったそうに笑った。 「まだまだ続くよ、敬人ちん。あいつらのマーチングは、俺が抜けたあとも、どこまでも、空高く、続くんだ。……その道を開いてくれたのは敬人ちんだろ?」  うんと背伸びをして、満面の笑顔を見せつけるようにして、仁兎はその白い歯を見せた。 「ありがとう。あいつらに、全力でぶつかってくれて」  あぁ、こんなところでも。  ニ、と細められた、うさぎのように赤い両目。  手渡された裁縫セットの硬さがよみがえる。  礼を言われるようなことなど、何もないのに。
「あっれぇ、なずなくんじゃん。と、蓮巳くん? 何々、どういう組み合わせ?」  弾かれたように、二人して声の方を向く。  向かい側――図書室の方向から歩いてくる、くすんだ金髪に、片眉を吊り上げる。薫ちん。仁兎が呼ぶと、やっほ、と羽風は右手を振った。 「偶然居合わせただけだ。特に意味はない」 「うん。おれが資料見に行こうとして、たまたま途中で会ったんだよな~」 「ああ。蓮巳くん、暇さえあれば鬼の形相で棚の整理してるもんね。実はあれ、結構後輩に怖がられてたんだって、知ってた?」 「別に鬼の形相などしているつもりはないんだがな……」 「まあね。昔に比べたら、うんと優しい顔になったと思うけどね」  お前にそんなことを言われる筋合いはない、と言い返す間もなく、羽風は軽く後ろを振り向いて、手ぶらになった両手をズボンのポケットに突っ込んだ。 「俺は、色々と、返してきたとこ」  何を。  聞くまでもなかった。  仁兎が、両腕のそれをそっと抱え直すのを、俺は目の端で捉えていた。 「必要、なくなっちゃったから」  そっか。  仁兎が低く、けれどどこかすっきりした声で相槌を打つ。 「よかったな、薫ちん」 「あはは、うん。なんか、まだ、執行猶予付き、みたいな感じだけどね」 「大丈夫だろ~? おまえなら、きっとさ。……うん。おれはもうちょっと、色々借りてくるかな。じゃあな~!」  羽風と入れ替わるように背を向けた仁兎が、俺を置いて足早に進んでいく。手を振る羽風の、憑き物が落ちたような横顔が、どこか憎たらしくて、俺は両腕を組みながらフンと鼻を鳴らした。 「ようやく腹を決めたか」 「ええ~ちょっと……そんな親みたいな顔でほっとしないでくれる?」 「俺とて不本意に決まっている。しかし、夢ノ咲の卒業生が華々しく芸能界で活躍しないと我が校の今後が云々――などと言われる立場でもあるんだ。……まあ、そのあたり、英智の気苦労には到底及ばんだろうがな」  軽く眼鏡を直しながら当てつけがましく言い放つと、羽風は突然頬を強張らせて、表情を曇らせた。 「……蓮巳くんはさ」 ……少しばかり、言い過ぎたか。いや、こいつの進路に関して口喧しく上層部から聞かれ続けたのは事実だ。これくらいの文句は受け付けてもらわねば気がすまん。代わりに俺もあらゆる罵倒を受け流そう。それだけのことをした自覚もまた、俺にはある。 「……天祥院くんのために、薔薇色の青春時代を、棒に振ったの?」  何を言い返されるかと身構えていたところへ、存外真面目な質問を寄越されてしまい、俺は拍子抜けしてしまった。ハア、と大袈裟に聞こえるように、わざとため息を放る。顔色を伺うような羽風は、「俺、そういう馬鹿みたいに真面目な奴を、一人知ってるからさ」と案じるように続けた。 「貴様までそんなことを言うのか。……呆れてものも言えんな」  それが誰のことを指しているのか、なんとなく察しはついたが、あんな正義の味方と一緒にされてはたまらない。 「そんなわけがないだろう。俺の人生は俺のものだ。英智の掲げた目標が関わってくることも、まあ、多少はあるし、そこは否定できんが。あくまでも、共感、賛同できるから道を共にしただけだ。貴様、覚えていないのか? 一度派手に喧嘩をしたことがあったろう」 「ああ~あのなんか暑苦しいやつね、覚えてる覚えてる」 「あれだって、英智の言いなりになっていたならば、紅月は解散していたんだぞ。そんなことをさせてたまるか、全く、俺には俺の船がある。舵を取るのも俺自身だ」  そして、その航海を支えられるのは、同じ船に乗った同志だけだ。  真っ赤なオールバックと、紺碧の艶やかなひとつ結び。それでも各々、その双眸で捉えた世界の形は異なるはずだ。当然だろう。違う生き物なのだから、同じ場所に立っていても、見える景色が一緒とは限らない。 「……だから、ここまでだ。あいつと道を同じくできるのは」
 結局俺は、あの陶器の釉薬のような透き通る青の目と、同じものを見られるわけがなかったのだと、気付いたのはいつのことだったろう。  七夕祭の時? 喧嘩祭の時? いいや、本当はもうずっと前から分かっていた。  最初から最後まで、俺たちの未来図はどこか大幅にずれていたのだ。 「寂しい?」  やんわりと尋ねられ、羽風の灰色の瞳を覗く。微弱に揺れる、波のような目元を見て、あぁ、と合点がいった。それは俺に向けての疑問符でなく、同意や共感を求めるために発せられたものなのだと。  こいつも、厄介極まりない水浸しの友人と、もうじき道を別つのだ。そしてそやつは、行く道を誰にも明かさないまま卒業するのだと言う。  それが寂しいのだろう。  羽風薫という男は、存外一人では生きていけない生き物なのだと、気付いたのも今頃になってからだった。 「寂しくはないが、心配、だな。何度言い聞かせても、生き急ぐところがちっとも直らん。あいつ、次に会うのは僕の葬儀の時かもね、とか、平気で言うんだぞ。冗談に聞こえん」 「はは、うちとは真逆だ。足して半分に割れたらいいのに。もうちょっと、生き急がせたいんだけどなぁ、あの人のことは」  思い描いた人物と、遠からず近からずのところを引き合いに出されて、ぎくりと鼓動が跳ね上がる。己の寂しさを隠すための話題転換だということに、気付いてもなお、俺の動悸は収まらなかった。 「そこを、どうにかするのが、お前の役目なんだろう」  あれが命を削るに値すると判断するだけの何かを、羽風薫という男は持っている。  だから承諾したのだろう。そうでなければ動かない人だ。痛いほど分かっている。 「出来るかな」  不安がる要素など、どこにある。  あの人が共に歩くと決めたこと以上の評価が、この世界の何処に存在するというのだ。 「……出来���かった俺に、何か言う資格があると思うか?」  様々な言葉を飲み込む俺に対し、ハッと息を吸い込む音が、端からも聞こえるほどに大きく響いた。底意地の悪い言い方をしてしまった。狼狽える羽風に、申し訳なく目を逸らす。 「違う、そんなつもりじゃないよ。ごめん……ていうか、そうじゃないよ。俺だって、あんな頃の朔間さんを、どうこう出来るわけないって思うし、実際、当時はそう思ってたわけだし。それで、全部諦めて、流されて……今までずっと、情けなくぼーっとしてさ……」  ポケットに入れていた両手は、いつの間にかだらんと力なく地面に向かっておろされていた。 「朔間さんに、もっと頑張れよって言われた時だって、俺は何もしなかった」  灰色の双眸が、虚空を映すようにぼんやりと陰る。俺はこの目を知っている。あの時、あの稚拙な策略とステージを、遠巻きに見世物扱いした時と、似た色だ。虚無を抱えた瞳。全てを諦めた、戦うことを放棄した人間の目。 「俺がさ。頑張ろうと思えたのは、頑張ったら報われるんじゃないかって、嘘でもそんなことを思えるような世界になってからだよ」  それはまさに青天の霹靂と言うに相応しい出来事だった。  羽風薫という男が、あのサイリウムの渦の中に残る決意を固めたのは、本当の本当に、ここ数日のことであるらしい。  何故それを俺が知っているのかというと、あの黒髪の吸血鬼が、俺を見るなり勝手に呼び止めて、聞いてもいないのに報告してきたせいなのだが。 「多分さ、色んな人が傷付いて、色んなものをなくしたと思うよ。でも、今の子たちは……っていうか、俺もそのうちの一人だけど……その恩恵を受けてるわけじゃない。それはさ、蓮巳くんたちが、更地になったところから、種を蒔いた結果だと思うよ」  綺麗事のような話をされている、と、どこか他人事のように聞いていた。傷付いたものが元に戻ることはないし、撒いた種が芽を出す保証など何処にもなかった。  俺の、俺たちの革命は、運良く、奇跡的に、ただの破壊行為で終わらなかっただけなのだ。たまたまその奇跡を、何を思ったのか意図的に起こそうとしたモノたちがいたからこそ、俺たちの殺戮は、意味あるものとなった。 「あの人だって、何か大事なものをなくしたから、変わろうって思ったんじゃないの」  奇跡を起こせるだけの、人間離れした連中が、あらゆる場所に駒を置き、続編のようなハッピーエンドを描いたことで。 「そういうわけだから、俺はただ、タイミングがよかったってだけ。……でも、決めたからにはさ。ここからは、ちゃんと歩いていかなきゃだよね。あのおじいちゃんを、棺桶から叩き起こしてさ」  にへら、といつものように軽薄な笑みを浮かべた羽風は、じゃあね、と廊下を歩いていった。弛緩した表情に反して、その足取りは確かで、力強かった。ふわりと風が吹いても、もう何処へも流されそうになかった。決めたのだろう。この何もない更地から、一歩踏み出すことを。  あの人と共に。  不安など微塵も感じなかった。上手くやるだろう。あいつの足は、自分が思うより遠くへいくためのものを備えている。歩き出したのならば、きっとあの光の中に、居続けることができるだろう。  羨ましいか。  そうっと己に問いかけてみた。  心は静かに首を振った。おそらく、俺の物語は、ここまでなのだ。けれどもう充分だ。  この広大な世界の中で、主人公になれる一瞬があっただけで、俺はもう、それでよかったのだ。  一呼吸置いて、図書室へ向かう足を再び歩かせた。主人公であろうとなかろうと、人生は無情にも続いていく。ならば俺も、俺の道を選び取らねばなるまい。  あの小娘を、一年かけて叩き上げた成果が、ここへ来て俺の力になってくれるかもしれんな。  ふと、革命の象徴となった、未熟な少女の面影を思い起こし、微笑を浮かべた。俺の選ぼうとする道は、あの人の元へと繋がってくれるだろうか。俺の撒いた種は、いつか新芽を生むのだろうか。  英智。  いまだに入退院を繰り返す、病弱な幼馴染みの名を、小さく呼んだ。俺とお前の夢は、まだまだ続いていくと信じていいだろうか。  幼い頃の小さな背中を思い出す。  俺たち二人だけの物語は、きっともう、ここでおしまいだ。けれどいつか何処かで交差するだろう。お前の目指す大きな野望と、俺の思い描く矮小な夢は、同じでなくとも、そう遠いところにあるわけではないのだから。
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usickyou · 2 years
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かがやき
 扉が開く。  君は僕を見る。一度は止めた足を踏み出して、今度は立ち止まることなくベッドのそばまで来る。君は僕を見下ろす。しばらくそうして、固い床にひざまずく。投げ出された僕の手をとると、「ごめんなさい」と言う。「ごめんなさい、ごめんなさい」と何度も言う。何度も、何度も、声が輪郭を失っても続ける。  大丈夫、僕はそう言いたかった。喉が痺れて動かなかった。ただはっきりとした意識で、大丈夫、と僕は言おうとした。大丈夫、大丈夫だよ、ほたる。何度も、何度だってくり返し言おうとした。  僕は首だけを動かして、君を見る。手の骨の稜線を祈りのような涙が伝うのに、その感覚は少しもない。せめて握り返せたらと思うのに、それさえできない。  もう、君に何もできない。  僕は、死んでしまいたいと鮮やかに思った。
 浅い眠りと夢を行き来するうちにひと月が過ぎて、たくさんの事実が頭の上を通り抜けていった。そのうちに、少なくとも数ヶ月や数年で死ぬことはないとわかると、僕は全身不随のこの体を広い世界に適応させるための努力を始めた。幸いにも首から上の機能は損なわれなかったので、人とのコミュニケーションに問題はなかった。問題を首から下と心に絞ることができたのは、まったく、幸いなことだった。  君が訪れたのは、ちょうど僕がテスト用の電動車椅子に初めて乗ったその日だった。  いくつかの注意を終えて(特に、今は一人で動かさないように)看護師が去ると、「少し、痩せたみたいだね」と僕は笑ってみせる。久しぶりの君は記憶にある形よりも痩せて、むしろやつれていて、苦労をかけてしまったなと思う。  君は「はい」と答えた。 「ちゃんと食べたり動いたり、大事だと思うよ」と僕は続ける。「彼とはうまくやってる?」そう訊ねながら、新しいプロデューサーとの関係があまり順調でないことは知っていた。  君はまた、「はい」と答えた。  君の様子を、僕はだいたい聞いていた。引き継ぎやお見舞いで病室を訪れる人は少なくなかったし、あまり僕がしつこく訊ねるから、みんなそれぞれに確信をぼやかしながら君のことを話してくれていた。  だけど、ぼやけた景色も周囲がはっきりとすれば形は見えてくる。嵐の海に小舟を想像するようなやり方で、病室のベッドの上からでも君のことはよくわかった。  君は、事故の翌日からレッスンルームに姿を見せた。誰もが驚き不安に思う中で、君はなにごともないかのように着替えやストレッチを始めて、誰よりも早く準備を終えた。当たり前みたいにレッスンを済ませると、「お疲れさまでした」と帰っていった。必要なこと以外は何も話さなかった。君のひと月は、万事がそんな様子だった。  君のデビューはもう、ふた月後に迫っている。  君のせいじゃないよ。僕のことも、君を傷つけたたくさんのことも、ぜんぶ君のせいじゃない。事故は防ぎようがなかった。靴ひもはちぎれるし、プロダクションだって倒産する。君は優しい。優しすぎるから傷つく。もう少し、うす目で見るみたいに世界と付き合うといい。僕は、ほら、こんな体になってしまったけどそんなには悲観してないんだ。生きている。だって、生きて君と言葉を交わすことができる。ただ、君にもう何もしてあげられないのがつらい。今だって、この車椅子を自由に動かせたなら階段から飛び降りてしまいたいのに舌を噛む勇気もなくて情けない。  僕は「どうしたい?」と言う。「ほたる。君は、どうしたい?」  君は「わかりません」と答える。やっとその目に感情を取り戻したかと思うとすぐにうつむいて、そういうふうにまっすぐ心を伝えた。「何も、わからないんです。ごめんなさい。私は、本当に、何も……ごめんなさい。ごめんなさい」  言葉は、その終わりには嵐に呑み込まれてかたちを失う。それでも、感情は荒波に逆巻く渦のようにはっきりと映った。  そして、僕は見た。君の背にのしかかる無数の影を、油絵具の黒と黒でべっとり塗り分けられたその巨大な黒いかたまりを、君の肩に手をかけては絶えず耳もとで呪いの言葉を囁く悪霊を、僕の姿を、見た。 「そう、かもしれないね」と僕は言う。そのとき僕にはすべきことがわかっていて、それがまた、君にしてあげられる最後だということもわかっていた。  指先が、痛みだした。離断した神経を伝わないはずの痛みを、まぼろしの痛みを今、僕は右のひとさし指に感じていた。 「大丈夫だよ。ほたる」と僕は言う。君と過ごした一瞬一瞬がちりばめられた宝石のようにかがやくから、奥歯を強く噛んで意志をつないだ。  そうして、僕たちは約束をする。
 君は扉を開くと、この空間の広さに驚いたみたいに足を止める。病院のリハビリテーションルームはプロダクションのレッスンルームの数倍の広さを持っていて、「お疲れさま」という僕の声をだらだらと反響させた。  扉が閉じられると、僕たちは二人きりになる。このひと月で一通り動かせるようにはなった車椅子で君を導いて、「悪いけど、操作はお願いするよ」と小さなスピーカーと繋げたMP3プレイヤーを示した。君は少し困惑して、レッスンウェアの袖口を何度か確かめながら、やがて画面に触れる。  そこからは、君のための歌が流れはじめる。  僕たちの、最後のレッスンが始まる。  一度目、僕はじっと君を見ていた。君は何度も僕を確かめて、そのたびに歌詞や振り付けを間違えた。  二度目、僕は車椅子を動かしていろいろな位置、角度から君を見つめた。君はもう、満足に歌うことさえできなくなった。  僕は、ひとさし指にぴりぴりとした痛みを感じはじめた。  三度目のリピート再生が始まると、君は床に座り込んだ。「できません」と言って僕にやめるよう懇願する肩には黒い影たちが、決して低くはない天井まで届くほどに折り重なっていた。 「やめて、どうする」僕は訊く。幻肢痛を辿って目には見えないひとさし指を君へ伸ばす。 「わかりません」と君は答える。 「なら、どうしてレッスンを続けた」 「それしか、ないんです。私にはそれしか、アイドルだけが」 「それをやめて、どうする」 「わかり、ません」 「じゃあ、続けよう。大丈夫だよ、僕を信じて」と僕は言う。そうして裂けるほどに痛む指で、君の耳元で今も囁き続ける悪霊に触れると、彼とまったく同じ言葉を口にする。「がんばれ、ほたる」  君は顔を上げて、目を見開いて、僕を見つめた。もう、三度目の再生は終わろうとしている。僕は君を見返した。そうしながら、心の中でくり返した。がん��れ。がんばれ、ほたる。  四度目、君は立ち上がった。立ち上がると、君の歌を歌った。君のダンスをして、レッスンを終えた。プレイヤーを止めて、僕をまっすぐに見ながら「もう、大丈夫です」と言った。  僕はちゃんと、君に呪いをかけることができたとわかった。  これは、正しいおこないだろうか。僕にはわからない。少なくとも、この悪魔のような行為を肯定することなんてできない。それでも、僕は教えたかった。君には力がある。数多の過去を、不幸を、背負い背負わされた呪いを力に変えるような特別が君にはあると、示したかった。  君は傷ついていた。壊れてしまいそうだった。傷はやがて癒える。時間には、そういう機能がある。それに、君にはすばらしい友達がいる。僕ではないプロデューサーがいて、何より、君を愛してやまないファンたちがいる。傷は必ず塞がる。そうしたら、君はもっと強いたましいを持つ美しいひとになれるだろう。  壊れてしまわなければ、君は大丈夫だ。  僕は守りたかった。心から、君が大切だった。君は応えてくれた、立ち上がってくれた。ありがとうと、僕は伝えたい。君が許してくれるのなら、名前を呼ばせてほしい。僕たちの最後、ひと月後の舞台まで、すべてをあかしてくれるその瞬間まで、僕のアイドルと君を呼んでいたい。  僕は、なにもかも全てを込めて「ほたる」と君の名前を呼んだ。  君が「はい」と言って力強く頷くと、指の痛みはふっと消えた。
 その日、僕の席は二階関係者エリアの最前に設けられた。病院や支えてくれる家族、プロダクションにまでかなりの無理を言って、彼らは僕の願いを押し通させてくれた。その場所からは舞台のすべてを眺めることができて、同時にそこに立つ人の表情さえ確かめることができた。  今、舞台には君と同期のアイドルが立っている。今日はプロダクション主催のツアーの一公演で、新人アイドルのデビューには充分すぎるくらいに恵まれているし、同時に、重圧はいつその膝を折ってもおかしくないほどだろう。それでも彼女は、堂々と舞台に立った。産声をあげたばかりなのに、その振る舞いは紛れもなく彼女というアイドルそのものだった。  もうすぐに、彼女が舞台を終えれば、君の出番がやってくる。  僕は今日、君に会わなかった。楽屋へ行くには物理的な障壁も大きかったし、何よりも、恐れていた。あの日した僕のおこないは、間違いではなかっただろうか。この瞬間の君にとって、どんな意味を持つだろうか。君は舞台の裏、袖の暗闇であの影におし潰されてはいないだろうか。  僕は、信じれば良かった。それはいつだって、どんな奇跡を起こすより難しい。  彼女の出番が終わると、会場は束の間暗転する。予定通りに君が舞台に姿を見せると、僕のひとさし指は突然激しい熱を持った。事故の瞬間と同じ、稲妻のような痛みにうめき声をあげて、僕はいまだ暗いままの舞台を見る。君の背中から沸き立つあの影は今やホールの天井にまで届いて、飽和して、降り注いだ。暗澹たる影は、瞼の裏より深い闇は会場の誰もに滴りながら、誰にも見えない。凝縮されたその呪いは、僕にだけ見える。  僕は絶望した。決定的に間違えたと思った。君のような少女がどうしてこんなものに耐えられるだろう。僕はどうして、そんなことを考えたのだろう。君は壊れる、間違いなく、次の瞬間には失われてしまう。だから、指を伸ばした。錆びた刃物をひかれるような幻肢痛は今や耐え難く、それでも僕は動かないひとさし指を舞台へ伸ばした。僕に、首から下は動かなくなってしまった、誰もができることさえ少しもできない無力な僕に、何ができるだろう。それでも、君を守りたかった。もう、僕のアイドルと呼べなくてもいい。ただ、この舞台を降りてからも君が笑ってさえいられたら、それだけでいい。  すべては、君が舞台に上がってからのできごとは、一瞬だった。  僕の指先は何かに触れた。触れると、包み込まれた。それがあまりに優しくて息を呑む。その感覚を辿った先には、君がいた。舞台の君はマイクを両手でしっかり包んでいて、同じように僕の指先を包んでくれていた。君は顔を上げる。大きく息を吸うと、「見ててください」と言った。その声は、僕にだけ聞こえた。  光が、あまりにまぶしい光がまたたいて、僕は目を閉じた。一瞬の後に開いた目に映るすべては、かがやきだった。  天の闇は透明な光の粒子になって、あるいは白鷺の羽根のように降り注いだ。地には純白の花畑が、暖かな風に合わせて波打った。その中心で君は、背中の影を巨大な光輪に変えて最初のステップを踏んだ。  やがて僕には、君の歌が聞こえはじめる。永遠に続く春のような、人生でいちばん幸せな夢を見た朝のような、そういう歌だ。君が求めた歌。君が求めた衣装、それは艶のある黒を基調にしながらむしろその上部にある白の清廉を主題としていて、君が好きな臙脂色、君が大好きなスズラン飾り、何より君の少女を息づかせるレースカチューシャ、君のためのすべてがいま、君を鮮やかに彩った。  君はその一挙手一投足で、一声ひとこえで、君自身の命に降り積もった数多の呪いを祝福に塗り変えた。  僕は、僕の指は気がつけば君の歌に合わせてリズムを刻んでいた。そんなはずはないのに、神経の通わない指が、まぼろしの指ではなく現実のひとさし指が君と一緒になって踊っていた。僕は君が起こしたその奇跡をしばらく眺めて、また舞台を見た。歌と歌の合間、ちょうどその瞬間に君と視線を重ねた。君は言った。「大丈夫です」と、声ではないかたちで確かにそう言った。だから僕は「がんばれ」と言った。「がんばれ、ほたる」その声は、もう呪いではなかった。君という命への祝福は、この舞台へのエールは君に届いて、君は「一緒ですよ」と答えた。  その瞬間から、僕は舞台にいた。舞台から、君の目に映る景色を確かに見つめた。そこには真っ白な光があって、君を愛してやまない心があって、君の幸福へ手向けられた祈りがあって、そして、それは天と地のはざまに咲く無限の花だった。  僕はその光景を君と、また多くの人とともに見ていた。かつて君を担当したプロデューサー。倒産したプロダクションの人たち。いつか君と同じ夢を見た少女。君と笑い合った子や、舞台を去った彼女。君に憧れた人、君を蔑んだ人、君を救いたいと願ったその人。君の舞台を見て、君の歌に触れて、君のダンスに夢を見ながら、諦めていった人。夢を捨てなければならなかった人。道なかばで倒れた人や、目にたっぷりと涙をたくわえたまま舞台を去っていった人。そして、不慮の事故で全身不随となり君と歩く未来を失った、僕。  そうか、と僕は思う。君は、連れていってくれる。たくさんの終わってしまったものを背負って、それでも、君は飛べる。高くたかく舞い上がって、その場所から見える景色をぜんぶ僕たちに見せてくれるんだ。  君は、アイドルだった。そういうふうに、君は願うままアイドルでいられるんだと、僕は確信をした。  それなのに、僕はもう君に何もできない。  それなのに、僕はもう死にたいと思わない。  だから、僕は君に言う。「ありがとう」と言って、拍手をおくる。まぼろしの拍手は客席からの拍手と混じり合って、現実のものになった。僕は少しも動かない指を見ると、もうあの痛みが起きることはないんだろうなと思って、安堵のため息をついた。  舞台からは、君の声が聞こえた。「ありがとう。本当に、ありがとうございます」と何度も、やがて声が輪郭を失っても、君は何度も、何度だってその言葉をくり返した。
 いつの間に、だろう。夏が来ていた。  顎でする操作にもすっかり慣れた車椅子で、僕は君を病院の中庭へエスコートする。君はおそるおそるという様子で木陰のベンチへ腰を下ろすと、「ここで、ですか?」ともう一度訊ねた。 「誰もいないよ」と僕は言う。実際、こう暑いと病院にいる人はふつう外に出たがらない。  君は、少し迷う。それから、君の歌を僕に聞かせてくれる。  僕は、君の歌を聞きながら視線をおろした。膝の上できちんと重ねた指が、右のひとさし指がひとりでに踊るのがおかしくて、笑った。そういうふうに、君とする最後のダンスを僕は楽しんだ。  君が歌を終えると、「ありがとう」と僕は言った。「未来のトップアイドルの歌をこうして独占するなんて、悪い気がするよ」  君は「そんなこと」と言って、笑った。  君が笑った。困ったみたいに、だけど出会った日よりも少しだけうまくなった笑顔を、見せてくれた。  君が笑う。それだけで、世界のすべては優しい色を帯びる。あまねくものごとの一つひとつが、淡いかがやきを放ちはじめる。  だから、僕は「笑ってくれたね」と言う。「いちばん、よく似合うよ」とせめてもの笑顔をおくる。  君はまず、驚いていた。自分の表情を確かめるみたいに手のひらで頬をむにむにと挟むと、涙を流しはじめた。  それでいい、と僕は思う。君は笑えるようになった。そうやって、過去は過ぎていく。去っていく。一時間は一日になり、一週間、一ヶ月、君が僕を思い出すことは少なくなって、少しずつ、確かに忘れていく。  それでいいよ、と僕は言いたかった。僕がこの日遠くへ行くように、君にも僕を去っていってほしかった。  だけど僕たちは、僕や君と出会ったすべての人たちは、また出会う。それは舞台の上、液晶モニタを隔てて、誰かが君の名前を口にしたとき、眠る前や君の好きなスズランの花を見かけた街角。  君のことを思うすべての瞬間に、僕たちは出会うだろう。君はそうやって、何もかもを連れたまま誰よりも高く飛ぶのだろう。  ほたる、飛んでいけ。そこからの景色を、少し滲んだかがやきを僕たちに見せてくれ。  僕は「幸せに」と言った。「君は幸せになれるよ。僕は、みんなが、わかってる」  君は頷いた。何度も、何度も頷いてくれた。  やがて涙がおさまると、君は新しいプロデューサーのもとで動き出すユニットや、最近できた友達のことを聞かせてくれた。  それからずいぶん長いあいだ、僕たちは君の未来について話した。
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wayntstore · 1 year
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STRIPES
FOR CREATIVE SS23
2nd Deliveryが、今週2月25日(土)より発売開始。今回も店頭販売12:00、オンライン13:00から販売とします。第二便の詳細は下記に記載してありますのでスクロールを。
本日はオフィシャルから公開されましたルックをご紹介。外は雪が降ったりやんだりですが、すでに春夏始まってます。さて、イメージしてください。
SS23 LOOK 2nd Delivery
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LIGHT HOODIE JACKET - color: Light Purple, Light Green, Blue / size: L, XL, XXL / price: ¥41,800-税込
フロントポケットとフードが特徴のオーバーサイズのプルオーバーフーディー
裾はドローコードでアレンジ可能、背中側のベンチレーションで通気性を高めています。素材は軽量でハリ感の あるストレッチコットンナイロンを使用。防シワ性もあるので、旅先で鞄に入れて持ち運びをしてもシワを気にせず着用できます。裏地には高多汗処理機能を持ち肌面を快適に保つメッシュ素材を使用しています。
SUPER WIDE TAPERED EASY PANTS - color: Black, Grey, Navy / size: M, L, XL / price: ¥31,900-税込
SFC WIDE TAPERED EASY PANTSをさらに腰回りを大きく、裾幅を広く、スーパーワイドなシルエットにアレンジしたスーパーワイドテーパードパンツ
WIDE TAPERED EASY PANTS (NYLON) - color: Grey, Navy / size: M, L, XL / price: ¥30,800-税込
SFC TAPERED EASY PANTSをさらに腰回りを大きく、裾幅を広く、ワイドなシルエットにアレンジしたワイドテーパードパンツ
どちらも裾のアジャスター付きドローコードを絞ることでシルエットのアレンジも可能。素材は柔軟な伸縮性とソフトな風合いが特徴の撥水化繊素材。裏地には高多汗処理機能を持ち、 肌面を快適に保つメッシュ素材を使用しています。
SIDE STRIPES RUGBY SHIRT - color: Black x Orange, Green x Yellow, Navy x White / size: XXXXL / price: ¥22,000-税込
ベーシックなRUGBY SHIRTをSFCならではのサイジングにアレンジしたビッグシルエット長袖ラグビーシャツ
素材はSFCオリジナルサイドストライプ柄をプリントし た超度詰天竺生地を使用。太番手の米綿100%空紡糸を使い特殊な編機を使用し度詰めで編んだハリ感の強い素材です。
DOT STRIPES SHIRT - color: Navy, Black, Olive / size: XXXXXL / price: ¥29,700-税込
ベーシックなB.D Shirtsを極端に身幅と肩幅を大きくアレンジしたSFCオリジナルのビッグシャツ
プリントのデザインは今シーズン初めてとなるドット柄をオリジナルストライプで表現してみました。素材は細番手の高密度素材を時間を掛けてゆっくりともみほぐし、素材の膨らみやナチュラルなシボを最大限に引き出したコットン素材を使用しています。さらに樹脂を付けてワッシャー仕上げをし、独特のぬめりや反撥感のあるヴィンテージ風の風合いに仕上げています。
CRAZY SHIRT - color: Crazy Stripe / size: XXXXXL / price: ¥29,700-税込
SFC SHIRTで使用している生地を組み合わせて配色デザインしたクレイジーパターンシャツ
ストライプの柄はSFCのLOGOでもある手書きストライプを採用。素材は高密度に織られたブロードコットン生地を使用しています。
OPEN COLLAR STRIPES SHIRT - color: Charcoal x White, Beige x Grey / size: L, XL / price: ¥31,900-税込
STRIPES SHORTS - color: Charcoal x White/ Beige x Grey / size: M, L / price: ¥25,300-税込
パジャマをイメージしてデザインしたオープンカラービッグシャツとワイドショーツ
素材は細番手の糸を高密度に織り上げ、超微起毛を施したソフトタッチコットン生地を使用。ストライプの柄はSFCのLOGOでもある手書きストライプを採用しています。
HALF ZIP GINGHAM STRIPES SHIRT - color: White x Black, Black x White, Jasmine x Purple / size: XXXXL / price: ¥26,400-税込
GINGHAM STRIPES PANTS - color: White x Black / size: M, L / price: ¥26,400-税込
SFC半袖シャツをベースにハーフジップ、両胸パッチポケットのワークシャツ仕様にアレンジしたハーフジップワークシャツ
SFC TAPERED EASY PANTSにワークパンツの仕様を加えたテーパードパンツ
股下は少し短めの9分丈のシルエット。ファスナー仕様、ベルトループ付き、内側にウエスト細をつけているのでサイズ調整可能。
素材はオリジナルチェック柄をプリントしたコーマバーバリー生地を使用。光沢に優れた上質なコーマ系で使用し耐久性も兼ねそなえた上品な素材のワークシャツ、ワークパンツです。
SFC MESH SHOULDER POUCH SMALL - color: White, Black / price: ¥8,800-税込
ショルダーストラップ付のスモール巾着バッグ
内着バッグでありながらショルダーバッグとしても使用可能。素材は強度のある網目の大きいダイヤ目のメッシュポリエステル素材を使用しています。
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※記載にないカラーやTシャツ類はオーダーしていません。
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2nd Delivery Start: 2.25(sat)
In-Store 12:00pm start
Waynt Web Store 13:00pm start
at Waynt Store
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https://waynt-store.square.site ←↓ Click
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Coming Soon...
結城
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https://www.instagram.com/waynt_store/ ←Click
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Waynt Web Store未掲載の商品も通販可能です。
お支払い方法は、オンラインクレジット決済・銀行振込 のどちらかとなります。通販をご希望の方は、上記InstagramのDMまたはメールアドレよりご連絡ください。
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最高級古典振袖展開催中❣️  biwa桜だからこそ取り揃えられた最高級品の数々を展示🤩  桶絞り、辻ヶ花絞り、最高級手絞り、金彩友禅など、見るものを圧巻させる最高の品々です👑  また、モデルブランド振袖の種類は県内No.1の品揃え❕ 最新作を県内最速で入荷展示しております🌟  振袖以外にも、小物の種類も県内No.1❣️ 他の店には置いてない、biwa桜だけの最強に可愛い小物が満載😍  一度biwa桜に来店しちゃえば、もう他の店では物足りない🤩 お店の可愛さにず〜っと見惚れて、あっという間に時間が過ぎちゃいます😍  なので、皆んなが可愛さに見惚れちゃうと、店内が密になっちゃいますので、ご来店前は必ずご予約をいただいてからご来店をお願い致します😊🌟 ご予約ご来店で、ご成約いただいた方には、CHANELのルージュをプレゼント致しておりますので、是非ご来店予約頂いてからお越しくださいませ💄🌟 何卒ご理解ご協力の程、宜しくお願い申し上げます🙇‍♀️   biwa桜へのご来店予約&資料請求は、biwa桜公式ホームページより行っています❣️   HPへはプロフ画面リンクから飛んでって下さい♡   @biwasakura_official ⏪biwa桜プロフ画面    #滋賀 #振袖 #振袖ヘア #振袖ヘアアレンジ #びわ桜 #biwa桜 #古典振袖 #振袖前撮り #絞り振袖 #京友禅 #振袖コーデ #成人式 #滋賀振袖  #振袖レンタル #振袖メイク #振袖髪飾り #成人式振袖 https://www.instagram.com/p/CMvV3ErBtch/?igshid=bsk4jzimdpur
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comoda2013 · 1 year
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STILL BY HANDの春のお洒落を楽しくしてくれるシャツジャケット。 ドロップショルダー、たっぷりな身幅、そして広いアームホール。 STILL BY HANDならではの抜け感のある、たっぷりなオーバーシルエットが大好物という皆さま、今回も間違いなく期待を裏切りませんよ。 まっ、それは着用画像をご覧いただければ伝わりますよね! 少し大振りな襟、前立ては比翼仕立てに、その比翼に挟むようにデザインされた大きなWポケットがアクセント。 袖に入れられたダーツもミリタリー感があってギャップ萌えで、稼働性を高めるだけでなく、単純にかっこいいの一言です。 オリジナルファブリックを使用したオーバー シャツ。縦糸と横糸の色を変えることで 奥行きのある色を表現しています。比翼仕立ての 前立てにWポケットを挟んだディテールが特徴。 ライトなアウターとしてスウェットなどの上に 重ね着出来るようなボリューム感です。 軽い生地感ながら、スウェットやパーカーなどの上に重ね着できるボリュームは、インナー使いも含めてオールシーズンで使える着回し易さも魅力。 今回はサイズ46と48に絞りましたが、この2サイズで大抵の体格の方はカバーできると思います。 #メンズファッション #メンズスタイル #メンズコーデ #コーディネイト#ファッション #今日の服 #セットアップ #テーラードジャケット #スラックス SELECTBRAND #eelproducts #stillbyhand #avontade #lamond #jackman #manualalphabet #ordinaryfits #audience #fobfactory #military #vintage and more! https://www.instagram.com/p/CpuhYDLvoLb/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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