うちの子雑記帳(随時更新)
※超絶ネタバレ注意です!
……大丈夫ですか? ではどうぞ!
【花鶏匡俊】
家族構成
祖父 花鶏博美(あとりひろみ) 98
父 花鶏正親(あとりまさちか) 68
母 花鶏展絵(あとりのぶえ) 65
兄 花鶏聖児(あとりせいじ) 39 ※享年12
慶應義塾大学
現在両親とは絶縁中。就職する際に大喧嘩してそのまま。
ただ、高齢の祖父のことは少々気にしている。
生まれてこのかたTVゲーム&携帯ゲームをやったことがない。
バレンタイン生まれなので当日はチョコと誕生日プレゼントで大変なことになる。
慶応には幼稚舎から通っている。生粋の慶応っ子。
小学受験には失敗した兄の教訓を生かし(?)物心ついた頃からスパルタ式で鍛えられた。
ちなみに兄が受かっていたのは灘中。公立小学校からだからかなりすごい。
酔うとキス魔になる。だから人前ではあまり飲まない。
【有栖川飛鷹】
家族構成
父 有栖川敦司(ありすがわあつし) 50
母 有栖川夕子(ありすがわゆうこ) 54
弟 有栖川隼飛(ありすがわはやと) 20
妹 有栖川飛鳥(ありすがわあすか) 20
実家は東京都墨田区。こう見えて下町っ子。
今まで旅行で行ったことのある国はインド、エジプト、オーストラリア、カナダ、グリーンランド(デンマーク領)、シンガポール、台湾、タンザニア、ペルー。
ヨーロッパは仕事で行くから旅行先からは除外。
小学生時代にカリオ○トロの城を見て握りこぶしから万国旗を出す手品をめっちゃ練習した。
あの顔で両親は「親父」「お袋」呼び。父親とは常に喧嘩腰だけど仲は悪くない。
納豆が大嫌い。あの臭いがダメ。食べる人の気が知れない。
他にはチーズも臭いがきついやつはちょっと苦手。
【桜葉丈偉】
家族構成
祖父 桜葉丈治(さくらばたけはる) 92 ※婿養子
祖母 桜葉久里子(さくらばくりこ) 85
父 桜葉景嗣(さくらばかげつぐ) 62
母 桜葉安子(さくらばやすこ) 57
兄 桜葉隆久(さくらばたかひさ) 32
義姉 桜葉舞子(さくらばまいこ) 30
甥 桜葉有嘉(さくらばありよし) 0
姪 桜葉真綾(さくらばまあや) -3
甥 桜葉明生(さくらばあきお) -7
妹 桜葉麗(さくらばうらら) 27
実は片頭痛持ち。スーツの裏ポケットにはいざというときのロキソニンと下痢止めが常に入ってる。
おとめ座なことをちょっとだけ気にしている。
剣道は現在四段。そろそろ五段の試験を受けたいと思っている。
得意料理はサバの味噌煮。きちんと真サバで作るし針生姜もつけるよ!
運転免許は持ってるけど滅多なことでは運転しない。運転中は眉間の皺が二割増し。
焼肉で一番好きな肉の部位はハラミ。こんなところでも庶民的。
実は蜂が大の苦手。小さい頃外で遊んでいて刺されてバンバンに腫れて以来、あの羽音からしてもう無理。「あの時の丈偉は一晩中泣いて大変だった」by隆久
今度エイサとちょっと遠い温泉に行きたい。有馬とか下呂とか。
桜葉家には本家に子供が生まれるたびに桜の苗木を植える風習があって、それで家の周り一帯が桜の群生地になっていて、春には薄紅色の霞に包まれる日本家屋、みたいな幻想的な光景が広がっていると良いよね、という妄想。もちろん丈偉の桜もあるよ!※1
【直見英佐】
家族構成
祖父 直見英幸(なおみひでゆき)81
祖母 直見佐保子(なおみさほこ)75
母 直見絵梨(なおみえり) 55 実はおみむーと同じ職場(違う部署の管理職)
叔父 直見橘平(なおみきっぺい)37
エイサの名前は祖父と祖母の名前の頭文字をとっている。
のと、『英』には「光り輝く花」という意味があって、絵梨さんが「光り輝く花のように魅力ある人になるように、それでいて他人の補佐もできるような、思いやりにあふれた人になるように」という願いを込めて付けた名前だったりする。
おばあちゃんには「英ちゃん」と呼ばれている。
高所恐怖症。小さい頃遊園地で乗っていた観覧車が最上部で停止して閉じ込められた経験がある。
ちなみにその時は橘平おじさんと一緒に乗ってたけど、我慢できずに漏らしたのを処理してもらってたりする。おじさんには今でもからかいのネタにされる。
イメージ画像を見る限り彼は地毛がちょっと癖毛なのかもしれない。それをストパーで真っ直ぐにしてる感じ。
焼肉で一番好きな肉の部位はタン。
今度ジョーイと島に行きたい。淡路島とか沖縄とか。
【麻績村朔人】
家族構成
父 麻績村静雄(おみむらしずお) 57 高校の国語科教師
母 麻績村淑乃(おみむらよしの) 54
弟 麻績村日向(おみむらひゅうが)29 精神科医
カントリーマアムが大好き。
お酒の辛い味か嫌い。カシスオレンジとか甘い系しか飲めない。
体が固い。前屈がまるで出来ない。
面白がったみなちに後ろから押されて「痛い痛い痛い」ってやってる。
三年前、血統書つきだが生まれつき片目が見えないため買い手がついていなかったジョセフに店先で出会い、その場で購入を決意した。
手がごつごつとしていて色っぽい。
私服もかっちり目。パーカーとか着たことない。ノーネクタイでもジャケットは羽織る。最大限ラフな格好でロングカーディガン&シャツ&ジーンズ。
ブラックミント系のガムを噛むと必ずくしゃみが出る。鼻の粘膜が弱い。風邪は必ず鼻風邪。
【薬袋千秋】
家族構成
父 薬袋慎一(みないしんいち)53
母 薬袋知世(みないともよ) 55
妹 薬袋小春(みないこはる) 15
リラックマが大好き。
スプラッタもホラーも虫も平気。強心臓の持ち主。
G退治ならまかせて!(丸めた新聞紙を装備しながら)
妹ちゃんとは仲がいい。一緒に買いものとか普通に行く。渋谷とか原宿とか。
「ちぃくんはアイス食べ歩きたいだけ��しょ?」by小春
妹が高校生になったら変な男に引っかからないか心配。
笑いのツボがおかしい。そしてずっと笑ってる。
めっちゃお酒強い。水のようにウォッカを飲む。
ベッドは人を駄目にするソファ。リラックマぬいぐるみに囲まれて、タオルケットにくるまって寝る。まるで何かの生き物の巣。よくジョセフと一緒に寝てる。最近はおみむーにもらった抱き枕を常用している。
名前の由来は、二度の流産を経てようやく授かった、一日千秋の思いで待ちわびた我が子だから。別に秋生まれだからとかじゃない。
【麻績村日向】
家族構成
父 麻績村静雄(おみむらしずお) 57 高校の国語科教師
母 麻績村淑乃(おみむらよしの) 54
弟 麻績村朔人(おみむらさくひと)29 百貨店のバイヤー
野菜の好き嫌いが激しい(ピーマン、トマト、椎茸、なすび……etc.)
白衣のポケットには必ず飴玉が数個入っている。よく夜勤の看護師さんに配ってる。
カナヅチ。どうしてか本人は覚えてない。実は5才くらいの時に海で溺れかけて大嫌いな兄に助けられたことを含めて、溺れかけたショックで全て吹っ飛んでる。ただ深層意識に水への恐怖だけが刻み込まれて、それでカナヅチになった。
料理は下手。ダークマター製造機。
カフェイン中毒。水の代わりにコーヒー飲んでる。
【森井戸侑】
家族構成
父 森井戸文穂(もりいどふみお) 60
母 森井戸愛子(もりいどあいこ) 53
毎日その日の分の食材しか買わない。なので冷蔵庫には瓶の炭酸水と調味料しか入っていない。
低血圧。寝起きはものすごく機嫌が悪い。
イライラすると爪を噛む癖がある。
絶対音感の持ち主。だから音程のあっていない歌とか聞かされると頭が痛い。なのでカラオケが大嫌い。誘われても絶対行かない。
こう見えて職場の人との仲は悪くない。職場での愛称は「ミステリアスプリンス」。
蜘蛛が大の苦手。視界に入ってきたら飛び退く。「ひゅ、日向さん、くも、蜘蛛が」「はいはい、分かったからしがみつくのはやめてね。捕まえられないから」みたいな。タランチュラとか見たら(たとえ写真でも)卒倒する。
ハリーポッターのDVDを日向と一緒に観た時にはアラゴグで絶叫した。
「侑くんのあんな声初めて聞いた」by日向
滅多に笑わないけど笑った顔はものすごく可愛い。
先日定年退職を迎えた父親と、父親を支えてきた母親をねぎらうために海外旅行をプレゼントした。基本的には良い子。
【有栖川隼飛】
家族構成
父 有栖川敦司(ありすがわあつし) 50
母 有栖川夕子(ありすがわゆうこ) 54
兄 有栖川飛鷹(ありすがわひだか) 26
妹 有栖川飛鳥(ありすがわあすか) 20
中学高校とサッカー部に所属していた。大学ではフットサルサークルと軽音サークルに所属している。担当はドラム。
大量ガス体質なのでサツマイモは食べない。食べたら翌日に腹が張ってガスが止まらなくなる。
お化けが大嫌い。でも妹が大好きだから夏場の心霊番組視聴は無理矢理同席させられる。
「だからやだって言ってるだろ飛鳥!」「そうやって嫌がる隼飛がいけないんだよ、もっといじめたくなるから」「ドSか!!!」とかやってる。勝てない。
就職してからも実家住み。あと一、二年してお金が貯まったら同棲を切りだそうと考えている。それまでは節約&我慢。
寝相が悪い。ベッドの上で寝ていたはずなのに二回に一回は目覚めると床に落ちてる。
【舞鶴永】
家族構成
父 舞鶴光矢(まいづるみつや)60
母 舞鶴敬子(まいづるけいこ)56
長兄 舞鶴明(まいづるあける) 32
次兄 舞鶴拓(まいづるひらく) 30
三兄 舞鶴聖(まいづるきよい) 29
長弟 舞鶴巧(まいづるたくみ) 25
次弟 舞鶴希(まいづるのぞむ) 23
妹 舞鶴香(まいづるかおり) 18
家族構成を見てもらえ���わかる通り六男一女の七人兄弟。大家族。
なのでおっとりしているように見えてわりと押しは強い。じゃないとやっていけないので。
大家族ゆえあまりお菓子だとかを食べられずに育ってきたため、ケーキとかチョコレートとかを貰うとすごく喜ぶ。可愛い。
歯医者さんが大嫌い。あの音とか特徴的な臭いとか全部だめ。親知らずを抜きに行ったときには本気で泣いた。
侑とは従兄弟同士。(母親が姉妹)
秋田出身。油断すると相槌が「んだ」になる。色白な秋田美人。でも出すモノは立派()
乗り物酔いが激しい。バス、船、飛行機。全部だめ。酔い止め飲んでも途中で吐く。車での長距離移動も好きじゃない。
なので就職して上京してくるときは新幹線の中で吐いて大変だったし、修学旅行は憂鬱の塊だった。
それでも海外への出張命令が出たら行く。真面目。
【胡桃沢恵眞】
家族構成
実父 胡桃沢岳(くるみさわがく) 70
実母 胡桃沢百恵(くるみさわももえ) 66
姉 胡桃沢めぐ実(くるみさわめぐみ) 46 享年35
養父 戸枝作之助(とえださくのすけ) 71
養母 戸枝絹代(とえだきぬよ) 69
義兄 戸枝怜文(とえだあきふみ) 38
甥 伊武和希(いぶかずき) 18
家族構成から察せられるように生い立ちがものすごく複雑。
不仲な両親のもとに生まれ、年の離れた姉に守られながら育つ。
しかしそんな姉も6歳の時に失踪し、以後は怒号が絶えない家庭環境で息を殺すように生き延び、10歳の時に母親を刺し殺そうとした父親を止めようとして背中を切り裂かれる。
その後病院に搬送され一命は取り留めたが、背中には今も大きな傷跡が残っている。
事件をきっかけに両親は離婚。父親は刑務所に行き、母親の行方は知れない。
児童養護施設に引き取られた後、12歳の時に戸枝家の里子になる。
戸枝家が恵眞を里子にしたのは一人息子の怜文が「弟が欲しい」と言い出したから。
義兄とはつかず離れずの関係。考え方が根本的に合わない。エマが唯一といっていいくらい珍しく苦手に思っている人物。
就職してすぐに姉が亡くなったことと、彼女がシングルマザーで息子を遺して逝ったことを知り、甥を引き取る決意をする。以来11年間、甥っ子を男手ひとつで育ててきた。
甥っ子には「俺も今年で高校卒業して一人暮らしするし、大学には奨学金で行くから、恵眞さんはそろそろ自分が幸せになったほうが良いですよ」と言われている。でも本人は人並みに幸せになるつもりがない。
つたないなりに自分を守ろうとしてくれていた姉のことを尊敬し、敬愛している。だからこそ彼女の訃報を知った際、彼女が実父に性的虐待を受けていたこと、その果てに妊娠・中絶したこと、そのために自分の前からいなくなったことを知り、実父に言いようのない殺意を覚えた。※2
と同時に、そんな男の血が流れている自分は誰かと幸せになってはいけない人種だろうと思い、それからは誰とも付き合わず、行きずりの相手とのセックスしかしていない。
「いつか姉さんを見つけて恩返しをしよう」という向上心で生きてきたし、和希を引き取ってからは「この子を立派に育てよう」という責任感で生きてきた。どちらにせよ自分に厳しい生き方。
自分にも冷酷な部分があることを自覚している。
※1 桜の話
直桜が結婚して数年経った後、麗ちゃんが里帰り出産することになって(結婚は直桜の一年前くらいにしてた)ジョーイに電話がかかってきて「丈兄ちゃん、たまには帰ってきたら?」「いや、だって……」「お父さんがぎっくり腰やっちゃってね。舞子さんのところにも三人目が生まれるでしょ?隆兄ちゃんは有嘉(ありよし)くんと真綾(まあや)ちゃんの相手で忙しいし、人手が足りなくってお母さんがてんてこ舞いなの。だから帰って来てよ。二人分の人手、あてにしてるからさ」※有嘉くんと真綾ちゃん…隆久の長男長女。つまりジョーイの甥っ子姪っ子。「二人分?」「え、丈兄ちゃん一人で帰ってくるつもり?」「いや……いいのかなって」※ジョーイは結婚してから一度も実家に帰っていません。「何言ってるの? お母さんが言ってたんだよ。丈偉に英佐さんと帰ってきて模様替え手伝いなさいって言いなさいって」コロコロと電話口で笑う妹に、肩の力が抜けるジョーイ。「……そっか。帰って来なさいって、母さんが言ってたのか」「うん。……だから帰ってきて。みんな待ってるよ」「ああ、分かった」
そんなこんなで帰ることになって、どうにかこうにか都合をつけて土日含めて三連休くらいもらって、直見の運転で茨城まで行くんだけど、緊張しまくった直見は道を間違えるし田んぼに落ちそうになるし散々。「どうした、お前」「いや、緊張して」「らしくないな。昨日はあんなに堂々とプレゼンしてたくせに」「親御さんに会うんですよ? プレゼンより断然こっちのほうが緊張しますって!」「そんなもんかね」「丈偉さんは緊張しないでしょうよ、うちの絵梨さんはあんなだから」「あんな、ってお前な」※絵梨さん…直見のお母さん。
ようやくたどりついた立派な日本家屋は、ちょうど桜の時期でもあり、辺り一面に植えられた桜の木で覆われていて、まるで薄紅の霞に浮んでいるよう。思わず見惚れる直見を微笑ましげにジョーイが見守っていると、玄関が慌ただしく開く。「ああ、車の音がしたからもしかしてと思ったらやっぱり!」出てきたのは割烹着を着た初老の女性。母さん、と呼ぶジョーイ。固まる直見。ジョーイに呼ばれた母さんこと安子(やすこ)さんは二人を見るなり「丈偉、あなた手先が器用だったわよね?じゃあ後でベビーベッドを組み立てるのを手伝ってちょうだい。最近老眼がひどくって小さいネジとかがよく見えなくって困るわ。英佐くんは……そうね、背が高いみたいだからお台所の整理を手伝ってもらおうかしら。景嗣(かげつぐ)さんったら一番上の棚に重いものをしまうんだもの。あれじゃあぎっくり腰になるわよね」と矢継ぎ早に話す。上品な見た目の御婦人のマシンガントークに圧倒される直見、ああ懐かしいなぁこの感じ、と思うジョーイ。その場から動かない二人に安子さんは付け加える。「あら、ごめんなさい。言い忘れてたわね、お帰りなさい」にこっと笑う安子さんに、二人は顔を見合わせた後、揃って言う。「「ただいま帰りました」」と。※作者はここまで考えて既に泣いてた。
その後は言われたとおりに台所の鍋を整理したり年代物のベビーベッドを組み立てたりしてお昼になり、居間に全員集合。隆久さんや舞子さん、麗ちゃんに「どうも」と改めて挨拶する直見。※舞子さん…隆久さんの奥さん。現在三人目妊娠中。と、そこへぎっくり腰で寝込んでいたお父さんこと景嗣さんもやってくる。今日一緊張する直見。「お、お邪魔しています、桜葉さん」「あら、ここにいる人は全員桜葉さんよ」くすくすと笑う安子さん。そうだな、と同意する景嗣さん。やらかしたー!と内心滝汗な直見に景嗣さんは言う。「桜葉景嗣だ。呼ぶときは名前でいい。私も君を名前で呼ぼう。英佐くん、だったか。良い名前だな」一拍置いて、意味を理解して「あ、ありがとうございます、景嗣さん!」と頭を下げた直見、勢いが良すぎて座卓に頭突きしてひとしきり皆に笑われる。
お昼ごはんが終わった後、甥っ子姪っ子と遊んでいる(というより遊ばれている?)ジョーイを遠巻きに微笑んで見守っていた直見に、麗ちゃんが声をかける。「英佐さん、もしよければちょっと外を歩きませんか?」断る理由はないので承諾して外に出る。一面の桜。「すごいですね、この桜」「でしょう? これは桜葉家の本家に子供が生まれるたびに植えられる桜なんです。丈にいちゃんの木もありますよ」ほらあれです、と麗ちゃんが指差したのはカーネーションにも似たの濃い紅色の花が重そうに枝を枝垂れさせている木。「福禄寿、って品種なんです。おじいちゃんが選んで植えたんですよ。丈偉桜(じょういざくら)です」「丈偉桜?」「ええ、ここの木は誕生を祝って植えられた木だから、その子の名前をとって呼ぶんです。隆にいちゃんなら隆久桜(りゅうきゅうざくら)、お父さんなら景嗣桜(けいしざくら)。女性の場合は桜を『おう』と読むので、私の木は麗桜(れいおう)、真綾ちゃんの木は真綾桜(しんりょうおう)です」「へぇ、なんというか、雅ですね」「桜葉家の名前の由来ですから。江戸時代から続くしきたりです」呼吸をするように出てきた『江戸時代から』の言葉の重みを噛み締めて黙る直見。そのまましばらく無言で桜の海を眺める。「自分と結婚しなかったら丈偉さんも父親になれてたのかな、とか考えてます?」「えっ」「ふふ、その反応は図星ですね」「……どうして分かったんですか?」「この世の終わりみたいな顔で桜を見てましたから。さっき丈にいちゃんを見てた時の顔とは大違い。そんな顔をする理由なんて、あんまりないでしょう? あとは想像です」「……まぁ、考えないわけにはいきませんよ。どう頑張っても俺が丈偉さんに残してあげられないものの一つはそれだから」「丈にいちゃんも同じこと言ってましたよ。店で迷子を見つけた時、手を繋いで親を一緒に探してあげている直見を見ると心臓が痛くなるって。自分の我儘に付き合わせて申し訳ないって」「そんなこと!」「ない、って思います? だったら丈にいちゃんも一緒です。英佐さんがさっきみたいなこと丈にいちゃんに言ったら平手で打たれますよ」「……それは勘弁してほしいな……」「だったら言っちゃだめですよ。大丈夫、あの人は英佐さんが思っているよりずっと強い覚悟であなたを愛するって決めてますから」ふふ、と笑う麗ちゃんの顔にジョーイの面影を見つけて、兄妹だなぁって思う直見。
一方その頃の居間。「ねぇ丈偉くん、ひとつお願いがあるんだけど」「はい、なんでしょうか舞子さん」「この子の名前ね、丈偉君につけてもらおうと思って」「え?」「有嘉はお義父さんがつけたでしょ? で、真綾は隆久さんがつけて。桜葉本家の子は同じ本家の男性に名づけてもらうのがしきたりだから、次は丈偉君だねって隆久さんと話してたの」ちなみに男の子だよ、とニコニコ笑う舞子に戸惑いを隠しきれない丈偉。「なんなら英佐君と二人で考えてくれ。名付け親が二人なんて贅沢じゃないか」横から飛んできた隆久の言葉に込み上げてくるものがあって俯く。「丈おじさん、泣いてるの?」有嘉に首を傾げられる。「英佐さんと結婚してから泣き虫になったな、丈偉は」隆久の言葉に一同笑う。ジョーイも涙を拭いながら泣き笑い。
そうこうしているうちに三日があっという間に過ぎて、帰る時間になる。帰り際、舞子さんを呼ぶジョーイ。「どうしたの?」「名前のことです」「ああ! 良い案、浮かんだ?」「良い案かは分かりませんが、考えはまとまりました。字は『明るく生きる』で、読みは『あきお』。明るい、という字には『明るく照らす』『夜明け』『光』という意味があるそうです。だから、他人を明るく照らせるように、一日の始まりである夜明けのように可能性に満ちているように、光に満ち、光を満たす人生を歩めるように。そんな願いをこめて、二人で考えました」「そう、二人で、ね。素敵な名前。良かったね、明生」お腹に語りかける舞子さん。「あ、蹴った! 明生もそうだねって言ってるみたい」「なら良かった」笑って、車に乗り込むジョーイ。一礼して続こうとする直見を呼び止める安子さん。「英佐さん」「はい?」振り向く直見。神妙な面持ちの安子さん。「また、帰って来てちょうだいね。待っているから」安子さんの隣で力強く頷く景嗣さん。目を見開いて、それから顔一杯に笑う直見。「はい!」皆に見送られて車を出してからしばらく経って、こそっと話しかけるジョーイ。「……運転代わるか?」「なんでですか」「前、見えないだろ。泣いてたら」「丈偉さん何年ペーパードライバーだと思ってるんですか……あー駄目だ、ティッシュ取ってください」「はいはい」そんな直桜、愛おしい。
※2 キラキラ
初めて見る世界はキラキラに満ち溢れていた。
顔が移るくらいピカピカに磨かれた石の廊下、広い空間。並べられている見たこともないほど綺麗な靴、触り心地のよさそうな服、眩しいくらいの輝きを放つ宝石。行き交う人々も上品で見惚れた。きらびやかな世界に圧倒された。
綺麗だった。だからこそ気圧された。
怯えて、縋るように握った手に力を���めると、優しい声が頭上から降ってきた。
「恵くんは百貨店にくるのは始めてだよね」
「うん。きらきらしてて、すごく綺麗」
お姉ちゃんは来たことあるの? と右斜め上を見上げると、優しいモカブラウンの瞳と目が合う。
「うん。小さい頃に一回だけ。お父さんたち��ね」
「お父さんたちと?」
驚いて聞き返す。そんなの想像できなかった。お酒に酔っていつも怒っているお父さんと、甲高い声でわめいて泣いているお母さん。それが僕の知る二人だ。どう考えたってこんなに綺麗なところに連れてきてそうにはない。
「昔はね、あんなに仲が悪くなかったんだよ。ちょうど恵くんが生まれた頃くらいからかな、仲が悪くなったの」
「どうして?」
無邪気な疑問を重ねると、姉は曖昧に笑って答えてはくれなかった。答えられなかったのだろうと今なら思う。妻が妊娠している間、夫は中学一年生の娘を手籠めにしていて、出産後にそのことがばれて夫婦仲が破綻したのだなどと五歳児に言えるはずがない。自分のせいで家族が壊れたのだ、などと。
答えない姉に首をひねって、でも当時の自分はそれ以上問いを重ねなかった。それよりも目の前の魅力あふれる世界に意識が向いていた。
休日昼間の百貨店で、セーラー服姿の少女と古ぼけたセーター姿の幼児は浮いていただろう。しかも保護者らしき大人の姿は見当たらないのだ。ちらちらとこちらに向けられる視線が怖くなり、幼い自分は姉の背後に半ば隠れるように館内を巡った。
姉はその間、ずっと手を握り続けてくれていた。
今となっては顔すらもおぼろげだ。生き別れたのが六歳の頃で、結局その後一度も巡り会えずに遠く離れてしまったのだから、当然と言えば当然である。
だた、あの優しい手のぬくもりと、キラキラした世界のことだけは強烈に記憶に刻みこまれていた。
幼い自分は無知だった。
姉があの頃もまだ父親に辱められていたことも、その腹の中に命を宿していたことも、出奔を決意していたことも、何一つ知らなかった。ただ、家の中に吹き荒れる嵐から弟を守るために、いつものように遠出をしたのだとしか思っていなかった。
知らなかった。あらゆることを。
成長し、それらの醜い真実を知って、絶望した。
この体に、あの男と同じ血が流れているのだと知り、戦慄した。
そして人並みの幸せを諦めることに決めた。
恋だとか、愛だとか、そういったものを全て。
ただ一つだけ、あの人が遺したものだけは慈しむことにした。
幼かった自分たちのように悪意に潰されないよう、不必要な痛みに晒されないよう、出来うる限り守り、育ててきた。
そのおかげか、元来の性質か、彼は素直で実直な、健やかな少年に成長した。
あなたは幸せになるべきだ、と彼は言う。
今までずっと誰かのために生きてきたのだから、今度はあなたが幸せになる番だと。
善良な勧めを、けれど私は心の中で冷笑する。
こんな人間が、悪魔の子が、幸せになれるはずがないだろう。
そんなことは言えないから、言葉の代わりに、私は微笑む。
あの男に瓜二つの顔を歪めるように、笑う。
「気にするな、和希。今でも私は充分だ」
これ以上を望むなんて野暮は、しないさ。
うちの子テーマソング
アリあと
Wings of Words CHEMISTRY
ドライアイス ハルカトミユキ
直桜
シャングリラ チャットモンチー
麻薬(薬麻)
らへん 近藤晃央
おみもり
FINAL DISTANCE 宇多田ヒカル
不時着 椿屋四重奏
ギプス 椎名林檎
はやはる
正夢 スピッツ
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