TEDにて
ティム・リーバーレヒト: 機械学習が発達する時代に人間らしい会社を創る4つの方法
(詳しくご覧になりたい場合は上記リンクからどうぞ)
人工知能や機械学習に直面している我々には徹底した人間中心主義が必要だと、ティム・リーバーレヒトは言います。
古代からの人類が蓄積した膨大な概念。
ケビン・ケリーの言う「人工知性」
これは自身を「ロマン派ビジネスマン」と称するリーバーレヒトにとって、効率よりも本物であることを、答えよりも問いを重んじる組織や職場をつくることを意味します。リーバーレヒトは、美しいアーティスティックな組織を作り上げるために必要な4つの(紛れもなく主観的な)原則を提案します。
今後20年間で労働人口の半分がソフトウェアやロボットに置き換えられると予想されています。経営者の多くは、利益を増やすチャンスだと歓迎しています。効率の良い機械に比べ人間は複雑で扱いにくいものです。
でも、私は、組織には人間的であって欲しいと思うのです。それどころか、組織には美しくなって欲しいと思っています。機械は、人間の仕事を奪い、私たちよりも効率良く作業します。そうなれば、私たち人間に残されるような仕事には効率の良さよりも美しさが求められることでしょう。
この第二次機械化時代で人間らしさを保つには、美意識を生み出すしか選択肢はないかもしれません。美の定義は難しいです。
ですから、少々のお時間をいただき紛れもなく主観的なものではありますが、美しい組織を作るための原則を4つ提案させてください。
まず1つ目。必要でないことをする。
数ヶ月前のことですが、チョバニヨーグルトのCEOで創業者のハムディ・ウルカヤが、2千人の全社員に株式を譲渡すると決めて大きなニュースになりました。市場や株主からの圧力があった訳ではありません。
2つ目の原則は、親密さを作り出すこと。
自分の本性を晒け出すのは、日常的な仕事の場では難しいことです。なぜなら、組織と従業員の関係は例えるならば、冷めてしまった夫婦関係のようで裏切りや失望に苦しめられ、もう一度、お互いのため美しい関係にしようと必死です。
どちらにとっても美意識への一歩を踏み出すには度胸が必要です。醜くなろうとする度胸です。
3つ目の原則は醜くあろう。
「美しさは皮一重。醜さは骨の髄まで」 作家のドロシー・パーカーの名言です。本物であろうとすれば、醜く生々しくなるのです。楽しみは捨てろとか、粗野や皮肉を甘んじて受け入れろと言うのではなく、本当の醜い生々しい真実を語ろうということです。
人間の体で一番醜いのは脳みそです。文字通りにも神経学的にも脳は見慣れないものを醜いと見なします。モダンアート、無調音楽、ジャズもかもしれません。ついでに、VRゴーグルも見慣れない物や音や人はみんな。
でも、人間は、誰しも一度は醜かったのです。不恰好な赤ん坊であり、近所の新しい子であり、外国人だったのです。そして、新たな場所に行けば、また醜い存在とみなされます。
真実や意味が1つだけで問いがなく答えしかないとき、物事は醜くなる傾向があります。美しい組織は絶えず問い続けます。
4つ目は、不完全であり続ける。
美しい組織は運動であり、いつまでも不完全ですっかり整うことはありません。だから、陳腐にならないのです。そういった組織には、何かがあるけどはっきりとはわかりません。いつまでも謎でありつづけ目が離せないのです。そんな組織を私たちは美しいと感じます。
4つの原則を胸に組織を作るなら、美しさで世界を救うことができます。
人工知能や機械学習に直面する今、新しい徹底した人間中心主義が必要です。新しい美意識と感情的な教育を手にし普及させるべきです。
そうしないと私たちが最終的に行き着く姿は、知的な機械に満ちた組織や社会システムの中のよそ者です。機械は何であれ、不要なことを認識しません。親密さという概念を認識しません。不完全さを認識しません。そして、醜いという概念なんて、認識しません。
技術が、すべてのことを解決できると言いますが、我々が、100倍エネルギー効率のいい乗り物を作ることができるとすれば、大枠としてこれは正しい意見です。
しかし、エネルギー効率ではなく、生産性を高めた結果、イギリスは見事に産業が空洞化してしまいました!
これでもバカのひとつ覚えのように、生産性を高めますか?基本的人権も無視して・・・
ロビン・ハンソンの言うように、一神教での仕事や労働の概念、定義などがパラダイムシフトを起こし、ベーシックインカムや年金を毎月支給されるだけで生活できるようになるかもしれません。
そうすれば、アンソニー・ゴールドブルームの言うように、機械に先んじる可能性が開けるでしょう。
キャシーオニールによると・・・
思考実験をしてみましょう。私は、思考実験が好きなので、人種を完全に隔離した社会システムがあるとします。どの街でも、どの地域でも、人種は隔離され、犯罪を見つけるために警察を送り込むのは、マイノリティーが住む地域だけです。すると、逮捕者のデータは、かなり偏ったものになるでしょう。
さらに、データサイエンティストを探してきて、報酬を払い、次の犯罪が起こる場所を予測させたらどうなるでしょう?
あら不思議。マイノリティーの地域になります。あるいは、次に犯罪を犯しそうな人を予測させたら?あらら不思議ですね。マイノリティーでしょう。データサイエンティストは、モデルの素晴らしさと正確さを自慢するでしょうし、確かにその通りでしょう。
さて、現実は、そこまで極端ではありませんが、実際に、多くの市や町で深刻な人種差別があり、警察の活動や司法制度のデータが偏っているという証拠が揃っています。実際に、ホットスポットと呼ばれる犯罪多発地域を予測しています。さらには、個々、人の犯罪傾向を実際に予測しています。
ここでおかしな現象が生じています。どうなっているのでしょう?これは「データ・ロンダリング」です。このプロセスを通して、技術者がブラックボックスのようなアルゴリズムの内部に醜い現実を隠し「客観的」とか「能力主義」と称しているんです。秘密にされている重要で破壊的なアルゴリズムを私はこんな名前で呼んでいます「大量破壊数学」です。
民間企業が、私的なアルゴリズムを私的な目的で作っているんです。そのため、影響力を持つアルゴリズムは私的な権力です。
解決策は、データ完全性チェックです。データ完全性チェックとは、ファクト(事実)を直視するという意味になるでしょう。データのファクトチェックです!
これをアルゴリズム監査と呼んでいます。
(個人的なアイデア)
アメリカのノーベル賞受賞経済学者ミルトン・フリードマン、元FRB議長であったベンバーナンキの書籍「大恐慌論」も言うように、金融危機2008、コロナショック2020などの急落に直面する対策として、ゼロ金利、マイナス金利、金融政策が出尽くした後に、よく登場する最速実行再分配政策が、個人への緊急的な現金給付!!!
各国によってスピードは異なるが、政策閣議決定後、人間の限界を遥かに超えるスピード。1秒以内で現金到着が理想。各国競争してみれば、今後の恒久対策として中央銀行のデジタル通貨なども考慮しつつ、新産業が産まれプラスサムになるかもしれません。
MMT(Modern Monetary Theory)によると、現状の貨��での現実的なアイデアとして、社会保障に還元される日本の消費税は現状維持しつつ、現金給付額にも消費税がかかるので現金給付額を上げて、毎月給付にすると消費税率と社会保障費下支えとが均衡状態になる?と同時に、実体経済の経済成長率「g」の下支えにも寄与する?
これらの総量が、急激な不況時の資本収益率「r」以上なら、もしかして?回復して正常な経済環境に戻る期間も短縮できるかもしれません。
スペイン風邪から国民皆保険を構築した岸総理(他には、国民皆年金、最低賃金法もあります)現政権の安倍総理、母方の祖父を見習いコロナウイルスから、毎月の国民皆給付を構築すれば歴史に残る業績になるし、継承する権利もある!
現政権の安倍総理、麻生副総理。この二人でしかできない天命を果たせ!アベノミクスの最終地点がコレだ!
この絶妙のタイミング!天命と言わずにはいられない!
感染症との戦いは、人類の宿敵とも言っていい未知のウイルスとの戦争です!
今までは、パンデミック時の対策としてデータのないスペイン風邪の書物や言葉を参考にしていたが、インターネットの発展やCPU、GPUがムーアの法則によりスーパーコンピューターの領域に現代は突入している。
情報技術が発展し、スマートフォンとして手のひらサイズに収まり、ウイルスを感染予防するための距離を広げながらも、データとして全世界と光速で共有できるため、そのスピードとウイルス伝播のスピードと伍している?局面ごとに対策を適性に行えば伝播速度を上回りコントロールできる感じもある!ラリーブリリアントが構築したシステムの功績もあります。
量子コンピューターも量子超越性を達成してることもプラスです。
ジョンズ・ホプキンス大学のシステム科学工学センター(The Center for Systems Science and Engineering:CSSE)感染者ダッシュボード
新型コロナウイルスの場合、新規感染者数が、2倍になる日数が10日以上になれば、R0(アールナート)が1以下に減衰してピークアウト状態になると理解できる。
日本の場合、PCR検査の結果が判明する14日後より短いから、検査結果日数を10日以下にできれば、ヤキモキせずスピード感ある判断が可能になりそうだ。
つまり、未知のウイルス。アウトブレイク発生確認後の緊急事態宣言発動は、クラスターが発生しやすいチェーン店などの大規模な場所から早期閉鎖が原則とデータから判明した!
日本の場合、アウトブレイク発生確認後から緊急事態宣言発動までの余裕日数は、新規感染者数が、2倍になる日数です。例えば、5日で2倍なら、5日以内で初動初速最大化発動しないと危険ということ!
R0が2.5付近では、発動日から10日でピークアウトが最速値。7、8割の人の外出制限要請StayHome(元々、人がいない地域での7、8割削減は意味ないし不可能だから政令指定都市だけにすること)ソーシャルディスタンス。などの初動初速最大化すれば、収束までさらに10日で計算上は20日で解除可能領域に近づける目安となります。
生産管理手法のクリテカルチェーンもリアルタイムの感じた感覚で考慮すると余裕バッファーをもう10日で、ひと月。えっ。ここまで自分で書いてよく見ると現実の数値にかなり符号する。
休業要請解除を10段階くらいに分けて地域ごとに段階的に基準を決めて行う。
日本の場合。緊急事態宣言、休業要請は現金給付や保証とセットで最速実行が原則。
日本の場合、透明性を持たせて休業要請解除の基準を決め、きめ細かく設定しないと現在の都知事とか権力者の気分で権力濫用されたり選挙に悪用される危険性がある。
今後の医療崩壊回避のため、医者を含めた疾病や保健所などの医療従事者を単純に現在の倍に育てて増員したら余裕バッファーが半分くらいになりそうな直観が出た。
今後は、休業要請解除!スペイン風邪同様第二波三波、第四第五の小波に備え、国からの現金給付支給をもう数度実行してもいい。Rtが1以下になり次第、休業要請解除!の後に、緊急事態宣言を機動的に解除。
この局面でもっとも効果的なソーシャルディスタンス領域をかんたんに実行。かんたんに実現できる小規模な所から。
時間軸のあるR0をRtとした都道府県別。新型コロナウイルスリアルタイムデータ
クラスター発生地点の見守りを継続する。再びアウトブレイクになり次第。最速で緊急事態宣言を再び発動して、1年かけて5、6回繰り返し、新規感染者数をピークアウトさせて分散、減少させていく!
未知のウイルスは、医療従事者や専門家も素人同然に成り下がるのは、東日本大震災2011の地震学者(こちらは理論破綻)で証明されてる。
にもかかわらず、今回、新型コロナウイルス2020でも、プライド、特権意識が邪魔をして、アマチュアの意見も引用して受け入れないため、未知のウイルスの伝播力で後手に回る。
現場で経験したアマチュアを含めて知見が集まるまでの人の手でデータにするまでの時間は、 CPU、GPU、量子コンピューター、インターネットで情報を光速で共有できるメリットを最大化できなくなると判明もした!
理論も大事だが現場経験が先!まぁ、カントも言ってることだから専門家、教授レベルなら熟知してると思うけど、知らないのかな?
日本の場合、ウイルス感染力低減対策のひとつ。緊急事態宣言後、最速で、高速道路、鉄道の法人であるJR、私鉄が協力体制をとって、都道府県内で折り返し運転をして他県に移動しづらくする方法。
それか、違う効果的なアイデアがあればいい?たしか、東日本大震災の時も実行してたような?
サブスクシェア経済は、具体的に言うとウイルスをベタベタな手で撒き散らすような強欲不潔感なイメージ。
食品扱うなら公衆衛生は最高レベルで!
公衆衛生の義務を厳格徹底し、感染症に欲のスキを突かれるため、強欲不潔な法人を規制して、事業停止を保健所は機動的に強制執行できるように法律を改正。
デフレスパイラルも危険なので、最低賃金以上を義務化、公衆衛生の義務を厳格徹底することで、抑止力をサブスクシェア経済に与えること!
さらに、人間を追跡する人工知能のストーカーアルゴリズムのみを今後禁止にして、ベンチャー企業がサブスクを開発したら高額罰金を与えるのはどうだろうか?
すでにある企業にも、悪用予防で高額罰金をかけていく。個人情報保護法に追加。GAFAは、指摘を受け止めて改善するが、それ以外の中小規模がより危険。
Uberなどは、その一つです。ドン・タプスコットが「ブロックチェーンレボリューション」の中で、UberやAirbnbやTaskRabbitやLyftといった。共有経済について話題にしています。対等な個人がいっしょに富を生み出し、共有するというのは。とても強力なアイデアです。
でも、私に言わせるとそういった企業は本当に共有をしてはいません!!実際、これらの企業が成功しているのは、まさに共有しないことによってなのです。さらに、高インフレの国でないとデフレスパイラルが起きてしまい、次第に賃金が上昇しなくなります。
現在の唯一の解決法は富の再分配でデファクトスタンダードをとっているプラットフォーマー企業に課税して広く配分するということです。ここが重要!!と言っています。
人間の概念を数値化できないストーカー人工知能では、不可能!と判明した。
未知のウイルス。新型コロナウイルスでは、様々な概念が重なり合うため、均衡点を決断できるのは、人間の倫理観が最も重要!
複数概念をざっくりと瞬時に数値化できるのは、人間の倫理観だ。
しかし、サンデルやマルクスガブリエルも言うように、哲学の善悪を判別し、格差原理、功利主義も考慮した善性側に相対的にでかい影響力を持たせるため、弱者側の視点で、XAI(説明可能なAI)、インターネット、マスメディアができるだけ透明な議論をしてコンピューターのアルゴリズムをファクトチェックする必要があります。
さらに、近日中に、AppleとGoogleが、協調してプライバシーに配慮し高いセキュリティの、APIを提供する予定です(中国のアプリは危険なため)
以下は、アプリの作成に当たってライセンス上、守るべきガイドラインです。
第一に、アプリは公衆衛生当局が自ら作るか、外部機関に依頼して作らせたものでなければならず、しかも「COVID-19対応」以外の目的では利用することができないライセンスになっている。できるだけ多くの人が、同じアプリを使用し分断が起きないようにAPIの利用は1カ国1アプリのみ。
第二に、Exposure Notification API(濃厚接触通知API)の利用の前に、ユーザーの同意を得る必要がある。
第三に、利用者のCOVID-19感染が確認された場合、結果を共有する前に、必ず利用者の同意を得る必要がある。(同意を得ると当局が利用者のデバイスにひも付いた「Diagnosys Key(診断鍵)」に対して「陽性」の情報を登録する)
第四に、アプリは、利用者のスマートフォンから可能な限り最小限の情報しか獲得してはならず、 その利用はCOVID-19対策に限られる。ターゲティング広告を含め、それ以外のあらゆる個人情報の利用は禁じる。
第五に、アプリは、スマートフォンの位置情報獲得を求めてはならない。
などの個人を特定しにくくする工夫が加えられている新型コロナウイルス「濃厚接触通知」のプライバシー強化がほどこされています。
<おすすめサイト>
データ配当金の概念から閃いた個人的なアイデア2019
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人工知能が人間より高い情報処理能力を持つようになったとき何が起きるか?2019
ニック・ボストロム:人工知能が人間より高い知性を持つようになったとき何が起きるか?
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ジェレミー・ハワード:自ら学習するコンピュータの素晴らしくも物恐ろしい可能性?
ハワード ラインゴールド: 個々のイノベーションをコラボレーションさせる
アレックス・ウィスナー = グロス:知能の方程式
ルトハー・ブレフマン:貧困は「人格の欠如」ではなく「金銭の欠乏」である!
個人賃金保障、ベーシックインカムは、労働市場に対する破壊的イノベーションということ?2020(人間の限界を遥かに超えることが前提条件)
世界の通貨供給量は、幸福の最低ライン人間ひとりで年収6万ドルに到達しているのか?2017
ベティーナ・ウォーバーグ: ブロックチェーンが経済にもたらす劇的な変化
量子コンピューターの基本素子である超電導磁束量子ビットについて2019
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ゲームデザイナー座談会 in 名古屋
この記事は「Board Game Design Advent Calendar 2017」1日目の記事です。
去る2017年8月16日、名古屋で開催された「ファミリーゲームフェスティバル2017」のオインクゲームズブースの特別企画として、「ゲームデザイナー座談会」を開催しました。オインクゲームズ代表でありデザイナーである佐々木が、ダンジョンオブマンダムのデザイナーである上杉さん、インサイダーゲームのデザイナーであるイトオさんの2名をお招きして、ゲームデザインに関するあれやこれやをざっくばらんにお聞きするというものです。予定の一時間を大幅にオーバーして、濃密で大変貴重なお話が伺えたので、ここに公開致します。
佐々木隼(ささき じゅん) @44gi
オインクゲームズ代表。同社発売ゲームの企画・ゲームデザイン・グラフィックデザインを手がけている。ボードゲーム作品は、海底探険、藪の中、エセ芸術家ニューヨークへ行く、小早川、スタータップス、死ぬまでにピラミッドなど。
上杉真人(うえすぎ まさと) @dbs_curry
名古屋在住。2010年から I was game としてボードゲームを制作。好きな食べ物はグミ。ダンジョンオブマンダムエイト、ヴォーパルス、ドワーフの城塞など。
アキヒロイトオ @etiquettepistol
1992年生まれ、teamInsiderrrr代表メンバー。FPS歴15年、アナログゲーム歴1年。こっそり新作製作中。インサイダー・ゲームなど。
製品になるアイデアは数パーセント
佐々木
こういう試みは初めてでちょっと緊張しているんですけど。三人でアナログゲームのゲームデザインや、ゲームを作るとはどういうことかみたいなことを、ざっくばらんに話していければいいなと思っています。
みなさんのゲームを、オインクゲームズから出させていただいています。上杉さんは「ダンジョンオブマンダム」、イトオさんは「インサイダー・ゲーム」。ぼくも「海底探険」や「スタータップス」、「藪の中」などなど。まずは、そういう「自分のゲーム」を完成させるまでに、みなさんはどのくらいボツを出しているのか聞いてみたいです。
上杉さんアイデアベースではたくさん出していらっしゃる方だなという印象があるんですけど、いかがですか?
上杉
そうですね。僕の中では5%の法則というのがあって。思いつくうちの5%が真面目にプロジェクトとして取り組む価値がある、と考えています。
佐々木
「思いつく」というのはどういうレベルのものでしょうか?
上杉
まあ、本当に一行アイデアレベルですかね。
佐々木
その一行ではどういうことを書くんですか?
上杉
例えば「ダンジョンオブマンダム」だと、最初に思いついたのは、「マンマミーヤ」というピザを作るゲームがあるんですが、そのような感じでみんなで一個のダンジョンを作るゲームっていう一行のアイデアから始まっています。
そのアイデアを実現するために、どんな現実的なゲームデザインが必要か、というのを一つのプロジェクトとして立ち上げて、進めていくという流れですかね。
佐々木
なるほど、そういう一行のアイデアが20個あったとしたら・・・
上杉
そのうちの一個は具体的に考えはじめる価値がある。
佐々木
いま、製品になってるのは何作品ありますか?
上杉
4個か5個くらいです。
佐々木
ということは、その20倍の量のメモがあるってこと・・・
上杉
いや、その20倍のプロジェクトがあってその20倍のメモがある。
イトオ
400!
佐々木
あ、なるほど!
プロジェクトになるのが5%で、そこからさらに5%しか製品にならないってことなんですね。
上杉
そうです、そうです。
5%が二段階あるんですよ。
佐々木
400個のアイデアから一個ができあがるんですね・・・
イトオさんはどうですか?
イトオ
ぼくは製品化って言ってもインサイダーゲームしかないですし、そのほかも特にない状況なので・・・
佐々木
はじめて完成したのがインサイダーですか?
イトオ
はじめて作ったのがこれ。だから、これ以降がもう分からない状態なんですよね。
佐々木
じゃ、まだ何分の一かが出せないんですね。
イトオ
何分の一かが確定してないんですよ。無限分の一みたいな状態。
佐々木
僕の場合は、だいたい10個に1個くらいですかね・・・
イトオ
すごい。
佐々木
どこからを「1個」と考えるかによって、もっと全然多くなると思うんですけど、だいたい10%くらいかなと思っていて。
上杉
佐々木さんに聞いてみたいんですが、僕やイトオさんはアマチュアなので、締め切りのない世界じゃないですか。でもオインクゲームズさんは企業なので、たぶんゲームマーケットに合わせてゲームを発売するというスケジュールがありますよね。そこに向けて製品を完成させなきゃいけないというときに、必ずしもうまくできあがっていかないんじゃないかと思って。そういうときどうするんですか?
佐々木
イヤこれはもうほんとに胃の痛い話で。仰るとおり、ゲムマに合わせて新作を完成させなきゃいけなくて、締め切りはあるんですよね。
僕らみたいな小さい会社にとっては、ゲームマーケットの売り上げって全然馬鹿に出来ないどころか、それがなくなると会社が傾くかも、ぐらいの勢いで重要なんです。
単純にゲムマ自体であげる売り上げという意味でも重要ですし、ゲムマみたいな大きなイベントに合わせて新作を出すことでプロモーションコストも抑えられるんですね。宣伝を頑張らなくても、みんながイベント自体に注目しているので、話題になりやすい。だから、ゲームマーケットの新作を絶対に出さないわけにはいかない。
その「絶対に」をどう守っていくかですよね・・・。それは本当に苦労しています。答えとしては「必死にがんばる」ことしかできていない状況です。
本来なら何個もストックがあって、余裕を持って「次はこれを出しましょう」みたいに考えることができるのがいいんでしょうけど。いつも、ううーアイデアが出ない、出ない、どうするどうしよう・・・みたいな感じで悩みに悩んで、考えに考えて、ギリ間に合う、みたいな感じです。
上杉
佐々木さん以外の、オインクゲームズの外のデザイナーの方の作品も出版されたりしていますよね。
例えば春には自身の作品で、秋には人のゲームをパブリッシュして、とか、ペースを考えたりもされているんですか?
佐々木
ざっくりはあります。ですが、そんな都合よくよい作品を見つけられるわけではないので、埋まらなかったら自分が埋める、みたいな感じなんですよね。ただ「よいゲーム」というだけでは駄目で、オインクゲームズが出すことでお互いを活かすことができるような作品を見つけなければならないので。
上杉
大変ですね。
佐々木
そうなんです・・。自分でゲームを考えるのは本当に大変で、常日頃なんか良いアイデアないかなと、ずーっと探してる感じになるんですよね。ずっと休まらない。
あ、ただ、僕の場合、ゲームデザインする人とグラフィックデザインをやる人がどっちも僕なので、ゲームアイデアが出てからはすごく早く仕上げていけるんです。ゲームデザインがこれで行ける!となってから、実際に発売されるまでの時間はすごく短縮できるので、ギリギリまで粘ることができる。締め切りに間に合わせるという意味ではそこは利点なんじゃないかなと思いますね。
イトオ
なるほど。
これはいける!と思う瞬間
イトオ
ちなみに次のゲームマーケットまでには、何か考えてらっしゃるんですか?
次どんなの来るんだろうと、みんな見ていると思いますよ。
佐々木
当然、考えてはいますが・・・今年もエッセンに出展するので、なんとかそこに間に合わないかなと思っています。
上杉
もうホントすぐですよねエッセン。じゃあ「考えてます」っていうレベルじゃなくて、具体的にあるんですね?
(注:この対談は8月6日で、エッセンシュピールは10月26日から4日間開催)
佐々木
ぜんぜんそんなこともなくて・・・。この質問難しいですね(笑)
イトオ
社会人(笑)
佐々木
僕の場合、ゲームをつくるとき「できた」「できてない」の境目がすごくはっきり分かれている感じで。調整していくことでじわじわ完成していくのではなく、それまで雲のようにもやもやしていたものが、ある瞬間に「あ、ゲームができた!」みたいになる感じなんです。それまではまったくゲームじゃなくて、そこからはっきりとゲームになる。もちろんそのあとしっかり調整するフェーズはあるんですけど、その「ゲームになったー!」が来てしまえば、あとはすごく早く完成まで持っていける感じなんです。その瞬間をギリギリまで粘って待つ感じですかね。
上杉
それは面白いですね。僕はむしろゲームっていくらでも調整できる、完成してから本当にもうなんの一分の隙も無く完成したっていう状態まで、すごくムラがあるなと思ってるんですよ
佐々木さんの場合は、すごくメカニズムで完成している、なんていうか、データのあまりないゲームにしてるじゃないですか。そのあたりに違いがあるなといま思いました。
佐々木
あ、確かに。僕は構造ができあがったら、そのまま突き進めることが多いです。例えば海底探険だったら、ピースの枚数や、ピースの裏の点数などの調整はわりとすんなり決まっていきます。「こういう面白さが実現したい」というのがあって、それに向かって、「これしかない」というところに行き着くのは早い。それよりは構造自体が出来るまでがすごく悩むし、時間がかかります。そこは上杉さんと個性が違うところかもしれないですね。
おふたりに聞きたいんですが、さっき上杉さんがおっしゃられていたように、例えばダンジョンオブマンダムが一行のアイデアから生まれて、ひとつの作品になっていきますよね。そんなふうに最初のアイデアをかたちにしていく中で、「このアイデアは行けるな」みたいに思う時ってどんなときなんでしょうか。イトオさんは、インサイダーゲームを、どこで「これはおもしろい!」って確信しましたか?
イトオ
僕の場合は最初インサイダーをオンラインのチャットでテストプレイしてみたんですよ。でもあまり面白くなくて。
チャットだと、マスターの人がすごい速さで答えをタイピングしなければいけなかったんですよね。もうタイピングゲームみたいになってしまって。あとは、顔が見えないので、発言の印象が文字だけになり、誰が何を言ったのか記憶に残らなかったんです。表情も見えませんし。ところが、対面でやってみたらすごく面白くて。「うわこれは」みたいになりました。
佐々木
なるほど。オンラインでやってる状態ではいまひとつ来るものがなかったんですね。で、対面でやったときに「これはいける」と感じた?
イトオ
それがですね、実は僕、地元は愛知県なんですけど、そのときは仕事で地元を離れて暮らしていたんですね。で、帰ってきたら友達の間でインサイダーが流行っていたんですよ。
佐々木&上杉
おお~
イトオ
逆に僕に対して「お前インサイダーって知ってる?」みたいな状況になっていて。それを聞いて「あ、いけるんだ」って思って。
だから僕は、その「いける」っていう瞬間を見ていないのかもしれないです。勝手にまわりが「すごく面白い」みたいになっていた。
佐々木
自分のいないところで、周りが勝手に盛り上がっていた(笑)
イトオ
そう、勝手に盛り上がって(笑)
佐々木
上杉さんは、例えばダンジョンオブマンダムならどこで「いける」と確信したんでしょうか?
上杉
僕はですね、「ダンジョンオブマンダム」を作った時に、この作品はすごく削ぎ落とした、要素の少ないゲームにしようと思っていて。
このゲームには元々オリジナル盤には6つのアイテムがあるんですよ。このうちの2つはHPを上げる防具で、1つは小さなモンスターを倒す「たいまつ」、それと大きいモンスターを倒す「ドラゴンランス」で、最後に中間のモンスターを倒す「聖杯」というのがあって、その5つのアイテムでパターンをもう全部網羅したから、完成度で言えばこれは完璧な構成だなと思ったんですけど。それだと一味足りない感じだったんですよね。
それで、妻に『何かあと1個足したいんだけど何がいいかな?』と聞いたら、『剣がいいんじゃない?』と言われて。
佐々木
おおー
上杉
『剣って言われても、もう武器あるからなー』と思ったんですけど、そこでプレイヤー自身がどのモンスターを倒したいか決める「ヴォーパルソード」というアイテムを試しに作ってみたら、それがすごくハマって。普通に考えたら、このアイテムは揺らぎが大きくて、ゲームの完全性からしたら少しずれるようなアイテムなんですよね。プレイヤーの選択によって大きく揺らぐので。
佐々木
なるほど
上杉
むしろ揺らぎがあった方が、ゲームが上手く引き締まるなっていうのを発見しましたね。
佐々木
なるほどなー、なるほど。
僕の場合は、「これはいけそう!」って思うことは割とあって。でもそれはだいたい誤解で、そこから全然ダメで完成しないこともあるんですけど。
ですが、本当の意味で「これでいける」となったなとあとから思うのは、構造的に破綻がなくなって、まあ実際は完全にないわけではないんですけど、自分的にいろんな仕掛けが腑に落ちて、やりたかった面白さが実現できたなーと思ったときなのかな・・・。そんな感じです。
上杉
それすごいわかります。破綻のなさってすごい重要ですよね。やっぱり破綻している部分って、あると感じちゃいますよね。
佐々木
でも、ちょっと矛盾しますけど、最後の最後で、『何かここバランス崩したいな』ってなってテストプレイしてみると、そのほうが面白かったり、盛り上がったりすることがよくあるんですよね。で、実際崩したほうのルールを採用したりすることも多い気がします。さっきの上杉さんのヴォーパルソードの話に通じると思うんですけど。
上杉
テストプレイって、バランスとるんでしょって思う方がよくいると思うんですけど、いかにバランスのおかしいところを作るかっていうのを考えたりすることもある。それを表面的には隠蔽しつつ、内部的にはすごく崩れている、みたいなところを作りたいなーっていう場合もあって。そういうのが大事ですよね。
佐々木
ほんとそういうところがあって。
「海底探険」という作品では、最後全員が0点で終わるみたいなことがまあ起こるんですけど、これ微妙だなと思った時もあるんですよね。でも、全員0点で終わったーワハハーみたいなのがやっぱり面白かったんですよね。もうこれはこれでいこう、となった。
上杉
それは、テーマの良さもすごくありますよね。海底探険は海底で死ぬんだったら結構ロマンがあるし。
佐々木
たしかにテーマにも助けられていますね。
あとは全員0点でも、もっかいやろうってなれば、それでいいのかなあ、とも思って。
なんか「いける」となってからもいろいろ崩していく、っていう話になっちゃいましたね(笑)
ゲームをデザインする上で最も重要なこと
佐々木
ゲームデザインをするうえで「これが最も大事だ」「これは押さえておかなければ」みたいなポイントってあったりしますか?
上杉
僕は「楽しさ」ですかね。���楽しさ」ってあまりに当たり前すぎて、軽視されてる部分もあると思うんですけど、ゲーム自体の構造がどんなに優れていて、すごく革新的で美しいゲームであっても、楽しくなければやはり誰もプレイしない。だからとにかく楽しさを第一に考えなければならないと思っています。ゲームの存在価値はプレイされることだと思っているので。
佐々木
なるほど。
イトオさんはどうですか?
イトオ
僕はですね、上杉さんの話に若干かぶるんですけど、一つ一つのゲームの間で、中だるみしないみたいなことが結構重要だと思っていて。
例えばデジタルゲームとか特にそうだと思うんですけど、1個アクションした時の手触り感みたいなもの。例えば海底探検の場合は、サイコロを振るだけでも楽しかったりするじゃないですか。そういう所がすごい大事なんじゃないかなと感じています。まだゲーム制作については見習いみたいな感じですけど、そういうのめちゃくちゃ思います。
佐々木
なるほど。
僕は大きく二つあって、一つは、最初に自分が思った面白さの種みたいなものが実現されていることです。
最初のところからズレて行って、違うところに着地するみたいなことがあまりなくて、最初に描いたものが実現されてることが自分的にはすごい大事っていうのがあるんですよね。
もう一個は、ずっとおぼろげに思っていたことを最近理解した感じなんですけど、「プレイのコスパ」というのを自分は重視しているみたいなんですよね。例えばそのゲームを遊ぶ時に、購入するためのお金もそうですし、家に保管しておいて、人を集めて、運んで、箱から出して、インストをしてとか、そういうことを全部含めた、プレイにかかるコストというものがありますよね。それに対して、面白さがどのくらいの大きさか、という考え方なんですね。それが大きくなるようにしたい。
例えば、今から2秒でやりますっていうゲームであれば、コストが小さいので、コスパはよくなる。逆に、すごく値段も高いし、プレイ時間も2時間かかるようなゲームであれば、その2時間分のプレイのコストを超える面白さがないと、厳しいと思うんですよ。で、なるべくプレイのコスパが高くなるようなゲームをつくりたい。
面白さって結局主観的なので、難しい���ですけど、このぐらいの面白さならもうちょっとゲームの時間短くしたいなみたいなことがあるんですね。逆にこのくらい面白さが大きいんだったら、もうちょっと準備に手間がかかってもいいから、これを入れようみたいな考え方。
ゲームデザインとしてだけではなく、製品になった時に、どうそのコストを面白さが上回っていくか、という考え方を自分はしているなあ、と。最近気づいたんですけど。
上杉
そのコスパっていうのを聞いて思い出したのが、PCのシビライゼーションを作ったシド・メイヤーの言葉だったと思うんですけど、『面白さというのは、ある単位時間における意味のある選択の量である』というものがあって。それってまさにコスパの話ですよね。
佐々木
なるほど。まさにそうかもしれないですね。
上杉
あと一つ目におっしゃってたいたのは、コンセプトが大事だぞということですよね。
テストプレイとかでよく『このゲームどうしたらいいんですかねー?』っていう話になるんですが、そういうときに、「このゲームで何がしたかったの?」と、一番最初に立ち戻って考えるアドバイスが一番重要かなと思っていて。今おっしゃったことと近いことなのかなと。
佐々木
テストプレイしてると、いろんな面白そうなアイデアがどんどん出てくることがあるじゃないですか。でも何を実現したかったのかがないと、そこでふわふわして、完成まで中々行かないんですよね。
上杉
そうですよね。
イトオ
インサイダーをオインクゲームズと作っている時にも、どう調整するか電話やメールでもたくさんやりとりしましたね。
上杉
最初のバージョンからけっこう変わったんですか?
イトオ
そうですね。僕がやっていたバージョンは、インサイダーの人がマスターの人にお題を渡すっていうスタイルでした。それで答えを言わす、みたいな、映画のSAWパート2のように、本当に悪いやつと、その手前で動いている悪いやつとがいるような感じでした。
上杉
真の黒幕と。
イトオ
そう。そういう話だったんですけど、佐々木さんと話しながらいろいろ変化していって。
佐々木
イトオさんが元々作ったオリジナルはもちろんすごく面白かったんですけど、製品としてどう出してどう売っていくか、という時に、インサイダーの持ついろいろな側面の中で、よりここを強めたいというのがあったりして。そこはだいぶ電話をしながら・・・
イトオ
長電話をしながら・・・
上杉
なんかいいですねー。熱いじゃないですか。
美しいと感じるゲーム
佐々木
インサイダーって製品にするときにいろいろなバリエーションがある気がしていて、例えばもっと複雑にしていくとか、もっと推理をしあう方に注力していこうとか、もっとクイズ寄りにしていこうとか、いろんな方向にチューニングができると思うんですね。
そういう、可能性がいろいろある中で、ゲームにおいて、こういうゲームが美しいとか思うことってあります?こういうゲームに美しさを感じる、というような。
上杉
さっき佐々木さんが、完成に向かう時って自分の中で破綻がなくなった時っておっしゃってたと思うんですけど、僕もそれが一番美しさかなと思っていて。要は、ゲームの中での経済が完全に成り立っていること。たとえば、コストとリターン、リスクとリターンが、完全に美しく同等に成り立っていること。
佐々木
それは、すごい危険な選択肢を取れば、それに見合っただけのものが手に入る可能性がある、というようなことですか。
上杉
ひとつにはそうですね。で、かつ、それが明瞭すぎない。
それはプレイヤーから隠蔽されているんだけれども、ゲームとしてはうまくそういうことが取れてるよというのが美しいなあと思います。
佐々木
なるほど。
イトオさんはどうですか。ゲームにおける美しさってなんだと思います?
イトオ
なんですかね(笑)
佐々木
なんですかね(笑)
さっき手触りが、とかそういう話がありましたけども。
イトオ
僕は、なんか逆に美しくないことが美しいみたいなのもあるんじゃないかなーと。
佐々木
なるほど、崩してある?
イトオ
あー崩してある、そうですそうです。
佐々木
一見不整合なように見えて・・・
イトオ
そうです。例えば格ゲーとかで、あのキャラが強くてあのキャラが弱いみたいなことがある。でも、弱いキャラが強いキャラを打ち倒した、みたいな時にドラマって生まれると思います。
キャラの強弱があるのは、一見、あまり美しくないじゃないですか。バランスが取れているゲームがいいゲームだと錯覚しがちですけど、そうじゃなくて、実はバランスが悪いことがきれいなゲームに繋がったりするのかなあと思います。
佐々木
僕は、遊んだ時に、作者の意図に触れるようなゲームに美しさを感じますかねー。
例えば、クニツィアの「モダンアート」には12枚から16枚の絵のカードがありますけど、「あ、こうだから12から16なんだ!」みたいなことをちょっと感じたりとか、「あ、こうだから4ラウンド制なんだ!」とか感じるというか。たぶん、みんな意図を持ってゲームデザインしていて、でもそれを感じるところまで表現されているって結構レベルが高くて、でもそういう部分に触れた時に美しさを感じる気がするんですよね。逆に意図を感じないうちは美しさが見えていないんですよね。こういう意図でこうなってんだ、すげーみたいな時に、美しい。
上杉
その気持ちはプレイヤーとしてすごくわかりますね。プレイヤー目線で考えているんですね。
佐々木
逆にだから作るときも、細部に至って意図を埋め込んでおきたいと思う。
上杉
そうですよね、意図を持って作って欲しいですよね。デザイナーに。
佐々木
グラフィックとかに関しても、結構細部まで意図を埋め込みたい方で、感じてもらえてるといいなと思いつつ、感じないようなところにも色々意図を埋め込んで、誰か一人でもいいから気付いてくれーみたいな気持ちで作っています。
ゲームにおけるグラフィックやストーリーの役割
佐々木
またちょっと話は変わって、ゲームにおけるグラフィックとか、ストーリーについてはどう思いますか?そういうもの意義について。
ボードゲーム好きの中でも議論になったりするじゃないですか。システムが大事だとか、見た目も大事だみたいな。まあどっちも大事だとは思うんですけど。ストーリーなりグラフィックが、ゲームにおいて何をしていると思われますか?
イトオ
僕は、例えばインサイダーであれば、「インサイダー」や「マスター」という名前は、想像させるものとして、インストされる時にイメージしやすいと思うんですよ。例えばダンジョンオブマンダムなら、積み上げられた山がダンジョンになりますよと言われたら、あーなるほど、と理解することができる。それも物語の一つだと思っていて、そういう意味で言えば、さっき佐々木さんが言った「プレイのコスパ」の、コストを下げる、下げやすくする工夫の一つなんじゃないかなと思います。
佐々木
プレイするときの心理的な障壁を、ぐっと下げられる。
イトオ
箱見て、あー、これこういうことするゲームなんだと理解できた方がいいんじゃないかなと思います。
佐々木
上杉さんはどうですか?
上杉
さっきゲームデザインで一番大事なのは楽しさだって言ったんですけど、それはかなり観念レベルの話で。実務レベルでは、調和が大事だなと思っています。ゲーム全体で調和がとれていること。
メカニズムという無味乾燥なものがたくさん箱の中に詰まっている。それを本当に結びつけて、一つの体験にしてるのは、テーマでありそのテーマを作るグラフィックだと思っているんで、そういう意味ですごく重要だと思っていますね。
佐々木
僕はグラフィックは、すごい重視はしているんですけど、グラフィックはストーリーのためにあり、ストーリーはゲームのためにあると思っています。
ゲームを一回プレイすること自体、みんなで何をやっているのかっていうと「物語」を作ってると思うんですよ。ゲームプレイ自体が物語ではあるんですけど、テーマが何もないゲームだと、その物語に浸れるのは少し難しくなると思うんですよね。
さあ、みなさんは何々で、こういうのを目指しています、というバックストーリーがあると、プレイの中でも物語が生成されやすいと思う。誰かが何かゲームの中でひどい目にあった時なんかに、それに対して意味づけを行うことができる。ぐっとそのゲームに入って行きやすくな���んですよね。だから、与えられているフレーバー自体が魅力的であることが重要だなあと最近より強く思うようになりました。
上杉
プレイヤーを引き込みたいんですよね、ゲームの中に。いわゆるマジックサークルの中に入ってもらって、ゲームの中の出来事を実体験として感じて欲しい。そのためのものですね。
佐々木
まさにそうですね。でもなかなかストーリーとゲームシステムってうまく合わない時があるじゃないですか。
ちなみに、どちらから考える派ですか?ゲームシステムか、テーマからか。
上杉
僕はまずコンセプトがあって、でそのコンセプトのためにテーマを考えるんで、メカニズムよりはちょっとテーマが先ですね、結構重視してます。
佐々木
イトオさんはどんな感じですか?
イトオ
僕は、メカニズムっていうか、こういうことをさせたいなーみたいな。
させたいなっていうか、こういうことしたら面白いんじゃないかっていうのから引っ張ってきてっていう感じです。
佐々木
僕は構造からで、ストーリーはほとんど後付けです。「海底探険」だけは例外で、ストーリーから。構造が先にできるので、後でどういう物語をつけるかのか、すごく悩むんですよね。「マスクメン」とかめっちゃ悩んだんですけど。
上杉
それはすごくいいアイデア見つけましたね、最後に。
佐々木
そうですね、すごく悩みました。「藪の中」も、殺人事件とか何もなかったんですよね。最後に芥川の小説の物語がぴったりだ、と思いつきました。
ゲームを売ることに対する思い
佐々木
ゲームデザインの話から少し離れて、「ゲームを売る」ということについて話してみたいんですけど。
イトオさんは、インサイダーのゲームルールができあがってから、Webサイトでそれを公開してましたよね。自分でパッケージをつくって売ろうという気持ちはあったんですか?
イトオ
ルールができてから、team insiderrrっていう名前でツイッターのアカウントを作ったんですよ。パクられないために(笑)
完全に盗まれたら嫌だなと思って、ツイッターのアカウント作って、先にやっていたことを主張できればと思っていました。
佐々木
売りたいとは思っていたんですか?
イトオ
「どっかから声はかかるやろ」みたいな(笑)
でも、それよりパクられるのが先かも、とも思っていました。ただ、なんかよくわかんない自信に溢れてましたね。
佐々木
上杉さんはどうですか?
自分でゲームマーケットにも出されて、販売もされてますけど。
上杉
そうですね、最初は自分のゲームを製品っぽく売りたい、いわゆる「ゲームを作る人」になりたいな、っていうのがありました。ですが、それはすでにある程度達成されちゃったので、今はそんなに思わないかもしれないです。
佐々木
なるほど。
僕は今まさに売るっていうことと常に向き合わざるをえなくて。会社でやっていますから、どう売っていこうか日々考えざるをえないんですよね。ただ、最初はじめたときから売りたいという気持ちはあって、会社を作ったのも、自分が作ったカードゲームの裏にバーコードを付けたかったからなんですね。法人格がないとJANコードをとるときにややこしくて、じゃあ法人作ってみようかなと思って、でも結局最初の製品を作るときには法人が間に合わなくてバーコード付けられなかった(笑)
売れると言うのはある種わかりやすい評価だと思いますし、売れないと続けていけないとも思っていました。持続可能性がちゃんとあるものにしたいと思っていたので、ゲームを作っていくにはこれくらい売れてないと続けていけない。そうなると、販路がないとダメだ、と思ったんですよね。製造原価を見て「高っ」て驚いて、販路がないとこれはやっていけない、大赤字になる、というのを覚悟したんですが、でもバーコードが付いていれば販路を後で開拓できるから、ちょっと希望があるかな、と思ったんです。
上杉
オインクゲームズさんて、本当にすごい大きくなりましたよね。最初って、個人で?
佐々木
最初は一人しかいなかったですね。
上杉
ゲームもゲームマーケットのバカ売れするようなタイプではなくて、むしろちょっとアウトサイダー的なところから始まりましたよね。それで今はゲームマーケットを代表する企業になっている。それってすごいなと思います。
何がカギだったんでしょうか。代表作がものすごく売れたとか、自分にノウハウがあったとか、なにかありますか?
佐々木
ノウハウはなかったですよね、ぜんぜん。
上杉
誰にもなかったしれないですよね、当時。
佐々木
うーん、カギというほどではないと思うんですが、僕のもともとの性格として、何かを本物っぽく作るのが好きなんですね。
先日、僕が10歳か11歳くらいのときに学校の図工の時間に作った絵本が出てきたんですが、その一番後ろとのところ、手書きで、なんとか社発行とか、何月何日初版とか、複製禁止とか書いてあったんです。そんなふうに、製品っぽいものがたぶんもともと好きなんです。自分で作るものを、製品のようなクオリティで磨き込みたかった。最初にゲームをつくったときも、誰よりも製品っぽい同人ゲームを作りたいと当時たぶん思っていたんだと思います。そのためには箱がこうじゃないとダメだとか思っていました。そうやってある種過剰にやったのが、ちょっとまわりに引っかかってくれたのかもしれません。
それと、途中からは、売るためにはブランドってものがちゃんとないといけないとも思っていました。そうしないとゲームが単発単発で終わってしまうと。毎回、ゲームを作るのがあまりに大変なので、「このゲーム」っていうひとつの製品だけじゃなくて、作り続けたものが蓄積していく何かがほしいと思った。それがブランドなのかなと。ブランドっていうとたいそうなものっぽいですけど、統一したロゴマークを推していくとか、箱のサイズを統一するみたいなことで、ひとまとまりを作りたいなと。
例えば「海底探険」ていう代表作ができたら、その経験値がブランドってものに跳ね返って、よりブランド側も大きくなっていくような構造にしたかった。いまのところそれがうまくいったのかもしれないなとは思っています。一個一個の作品が単発で終わらずに、売れたものも売れなかったものもブランドの価値として、ブランドが高くなっていく。そういうことが、ノウハウはなかったけど、もともとそういうのが好きだという性格で、やれたっていうことなのかなと思いますかね・・・。
あとは、めっちゃたくさん作ったってことですかね。年2〜3個、できれば3個っていうのを、コンスタントに、この7年ずっと作ってるんですよ。実はそれが一番大事だと思います。それぞれ売れた量には差があったりもしますけども。
上杉
そのブランディングの中で、年3個つくると、ちょっと一個他より劣るんじゃないかみたいなのができちゃったときはどうするんですか?そのブランドに対して、これで大丈夫なのかなみたいなのってありませんか。
佐々木
ある一定のラインを超えないと出せないという気持ちはあります。これだと出しても埋もれてしまうから、出せない、というような。
だから、全体の出来どうこうもあるんですけど、どんな製品も必ず突出した何かをつくりたいと思っています。別に不細工でもよくて、でも、こいつはちょっとアゴ長めだなってなったら、ひたすらアゴを長く長く調整していくと、他と並んだときも顎の長さでは秀でるんですね。そうなるとそれは製品として出る価値が出る。アゴの長さという意味ではナンバー1なわけだから。
上杉
所有する理由をつくってあげるっていうのはありますよね。
佐々木
この製品の価値がなんなのか、ていうのは考えますね。どういう価値をつくるか。毎回作ったものに対していろいろ言われたりするのも、アゴを伸ばしたからなのかなあって・・・。
ゲームへの批判と制作のモチベーション
佐々木
僕は批判を食らうと悲しいんですけど、そういう自分が作ったゲームへの批判とかそういうのって、どう思いますか。批判されるとどういう気持ちですか?
上杉
僕は自分では自信を持って作っているつもりなので、そんなに批判されて「うわー」とはなりませんが、褒められてばっかりだと同じことばかりしてしまうので、批判は変化のきっかけだなと思ってよく読むようにはしています。
佐々木
ゲームの内容とか関係ないことで批判してこられたりとかはないですか?
上杉
よくありがちだと思うんですけど、ルールをすごく間違ってプレイして、これクソゲーだなと言われたりすることはあります。そういうのはちょっと反省点になるなと思って。
佐々木
「伝えられなかった」っていう感じですね。
イトオ
僕は正直あんまり気になりません。たぶん今一作目ってのもあるし、一作目だし良いっしょみたいな気持ちです。
佐々木
僕は批判を食らうとすごいダメージをくらって、毎回ぐったりして、ベッドでうつ伏せに寝転がっているみたいな感じなるんですよね。
上杉
批判は自分から見られるんですか?
佐々木
ゲームの評判を知るのは大事だと思っているので、普段は調べたりもします。ですが新作を出した直後などには意見の量がバッと増えますよね。批判を批判と捉えられれば良いんですけど、それにはちょっと時間が必要で、そういうときには一旦リサーチを完全にやめて、しばらく一切見ないですね。誰かに、良いのだけ教えてくださいみたいなことをしますかね(笑)
イトオ
良いシステムですね、ジャンプのアンケートみたいな(笑)
佐々木
なにせモチベーションを保つのがすごく大事だなと思っていて、作る気がなくなるのが一番困るんですよね。批判をちゃんと読んでいくのも大事だと思っていますが、それ以上にモチベーションが大事だと思っていて・・・。それが下がったらおしまいだな、という。
上杉
モチベーションって本当に大事ですよね。一番大事じゃないですか、制作続ける上で特に。
佐々木
本当にそう思います。批判読まなきゃなと思いながら、一旦シャットダウンして、落ち着いた頃にまた調べ始めます。
モチベーションって、なにをモチベーションに作りますか?ちょっとふわっとした質問ですが。
上杉
「シェフィ」を作ったポーンさんの言葉なんですけど、『自分の創作はミューズへの捧げ物である』っていう。ミューズって芸術の神で、美に対する捧げ物として作っているっていう、良い言葉だなと思ったんですよね。自分でも、自分の中での美しさというものを形にしたいから、それがモチベーションですね。
佐々木
なるほど。
イトオさんはどうですか?
インサイダーはどういうモチベーションで作られました?
イトオ
一人で仕事で県外に来て、寂しくて。
佐々木
寂しさがモチベーションだった?
イトオ
楽しいことを自分で探さなければならなくて、そういうので作ってました。逆に今は、地元帰ってきそれがなくなっちゃってどうしようみたいな感じです。前ほど一人でじっくり考える時間がなくて。なにかを作るときは、一人でじっくり考える時間も必要じゃないですか。
上杉
やっぱりどこかハングリー精神が必要ですよね。
イトオ
実家にいるとハングリーさがどんどん失われていって、ただ寝てるだけになっちゃう。
佐々木
満たされてしまうんですかね。
イトオ
でも、もう一個ゲームをつくりたいなあというのはやっぱりあって。人と集まった時に、自分のゲームで面白いねとなりたいですね。
佐々木
僕はモチベーションでいうと、身近な人を驚かせたいとか、そんな感じです。ほらこんな面白いの作ったよみたいな
一同
(笑)
佐々木
そんな感じなんですけど、今は若干責任感みたいなものが出てきちゃって辛いところもありますね。ただやっぱり、最初のモチベーションは身近な人に遊んでもらって、おお、面白いじゃん、って思ってもらいたい。
あと、自分が作るゲームだと、自分も見たことないゲームができるわけじゃないですか。自分も知らない、完全に自分好みの何か。それが見たいという気持ちもありますかね。
イトオ
あ、それすごくわかります。
佐々木
細部にわたって全てコントロールできるものってなかなかないですよね。自分の作品ってそういう意味でもいいですよね。
上杉
全体をコントロールできることってボードゲーム作りの良さですよね。とくに佐々木さんてグラフィックまで自分でやられてるから。
佐々木
そうですね。ボードゲームって少人数で作れるし、そういう意味ではすごくいいジャンルですよね。
なぜボードゲームを作るのか?
佐々木
なぜ他の創作形態でなくて「ボードゲーム」なのか、みたいなのもあると思うんですよね。
上杉さんは、なぜ創作する対象として、ほかのメディアではなく、ボードゲームなんですか?
上杉
ひとつ、ゲームって総合芸術だなって思うところがあって、一般的に総合芸術っていうと昔は演劇、今は映画ですけど、ゲームも長いストーリーを語れるし、グラフィックもあるし、いろんな体験が生まれる。だから総合芸術だなと思ってて。
ゲームの中でも、なんでボードゲームなのかっていうと、普通のゲームって、まあビデオゲームは規制されたルールの中で勝手に動くじゃないですか。でもボードゲームって、この箱の中に、言ってみればガラクタが入っているだけで、それがルールによって意味を与えられている。それってすごく宇宙感があるなと。
宇宙って、ただ単に大きなストレージがあるだけなのに、それが物理法則というルールによって、たとえば人間のような複雑なものが生まれたりするじゃないですか。ボードゲームも、単純なピースからルールによっていろんな体験が無限に生まれるのがすごく面白いなっていうのがあって。
佐々木&イトオ
なるほどなるほど。
佐々木
イトオさんはどうですか?
なんで、フラストレーションがたまって何かやろうって時に、ゲームなのか。それが別に違う作品なり、違う解消の仕方でもよかったはずなのに、なんでゲームを作ったのかなっていう。
イトオ
僕はやっぱほんとゲームがすごい好きで、特にデジタルゲームがすごい好きで。ボードゲームに行き着いたのは、人の顔が見れるし、デジタルゲームにはないところがあるなあっていうのがあって。
チャット人狼だと、嘘ついている顔なのか何なのかわかんないところがあるじゃないですか。インサイダーもそう。僕はそういうところがボードゲームの魅力だと思ってます。
上杉
対面の良さってありますよね。
佐々木
僕は、ボードゲームのすごい好きなところは、、今ここでルールを作った瞬間に、そこにいきなり面白さが現れるってことがすごいなって思っていて。
例えば子供が横断歩道を渡るときに、白いところだけ踏んでいくぞ、って思っただけで世界が面白くなるじゃないですか。ルールっていうものの凄さ。それでいきなり面白くなる。それが最も生のまま、刺身で出てきているのがボードゲームかなと。
イトオ
あぁ。
上杉
確かに。
佐々木
僕、デジタルゲームもめっちゃ好きなんですよ。よくやるんですけど、デジタルゲームは誰かが見つけてきた魚を調理する感じがけっこうあると思うんですよ。一人称シューティングっていう魚を誰かがとってきたら、それを味噌漬けにしてみたり、焼いてみたり、味付けを変えて、切り方を変えて料理をつくったりする。それに比べて、ボードゲームもそういう部分もあるんですけど、一人一匹捕まえてくるみたいな感じがあるよなあと。
上杉
コンセプトがそのまま出ていて、素材の良さがそのまま生きている、みたいなことですね(笑)
佐々木
そうですね。刺身でやるからごまかしも効かないし、味付けにしても、醤油にするか、違うものつけるかくらいの、ルールむき出しの良さがすごい好きなんですよね。このたとえ変ですかね?大丈夫ですかね・・?
上杉&イトオ
はい(笑)
佐々木
でも刺身だからこそ大変ていうところはありますよね。いつも新しい魚を捕まえてこなければいけないですから。誰かが捕まえてきた魚を、調理法を変えるだけではなかなか形にできない。新しい魚採るの大変ですよね(笑)
最近すごいと思ったもの
佐々木
あ、そろそろ時間なのかな?じゃあ、終盤に話を向けて行きたいんですけど、最近、これは凄いなと思ったものあります?これ全然終盤に向かってないか。
一同
(笑)
佐々木
単純に聞きたかったんですよね。どういうことに興味を持たれているのかなみたいな。
上杉
これ本当にどうでもいい話になっちゃうんですけど、最近僕の中で一番ブームなのがフリースタイルダンジョンていうテレビ番組です。
佐々木
あー
イトオ
僕もめっちゃ見てます。
上杉
フリースタイルっていうのは、ラップの一形態でその場で即興でラップすることで。フリースタイルバトルっていうのがあって、その場で即興でディスりながら勝敗を決める。それがすごく面白いんです。
イトオ
僕は、FPSをずっとやっているんですが、最近はスプラトゥーン2を買ってやっています。先日、後輩のそれなりにゲーム好きだけど洋ゲーとか全くやらない女の子から「リスキル」っていう単語が出てきたんですよね。復活して生き返ったところをすぐ狙われるっていうことで、洋ゲーだと当たり前の単語なんだけど、ゲーマーじゃない人から使われたことなくて、聞いたことも見たこともなかったので、マジで?って変な声が出ちゃって(笑)
本当それ最近一番驚きましたね。腰抜かしました(笑)
一同
(笑)
上杉
すごいですね。まさに本当、キャズムを超えた例っていうか。
佐々木
スプラトゥーン2面白いですよね、僕も本当好きなんですよね。1の時からずっとやってて大好きですね。
僕は最近凄いなと思ったものは、自分で聞いておいてあんまりないんですけど・・・あ、Nintendo Switchはすごいなと思ってて、何が凄いって、何が凄いのかよくわからないところがすごいなって思ってて。すごく売れてるじゃないですか、でもWiiとか3DS、DSみたいに、根本的にこれがウリっていうのが見えにくいハードだと思うんですよね。何でこれが売れてんのかって考えてもフワフワしてて正解が見えないんですよ。でもたぶん、作った人はわかって作ってるんですよ、絶対。
上杉
僕もすごく思ったのが、Nintendo Switchの一番のウリって、テレビでもできるし、置いても手元でもできるしってところじゃないですか。それ、『欲しい人いないでしょ』ってすごく思うんですよ。実際手に入れてみると一番いいのは、ゲームしようかなって思って起動するまでがめちゃくちゃ早い。今までのほとんどのハードより早い。GameBoy並み。それ凄いなと。
佐々木
うんうん、それはめっちゃいいところですよね。
イトオ
なにげにSwitchってソフトの幅が広いなって思ってて、ダウンロード版で結構マイナーなゲームが出てる。ネオジオのとか出てる。そういう裾が広いなってのはすごい思います。
上杉
オインクゲームズさんってスイッチでゲーム出したりしないんですか?
イトオ
それ気になってる。
上杉
スマホゲー出してるからね。
佐々木
デジタルゲームも作る会社なんですけど、まあ、色んなハードは常に考慮に入ってはいます。
上杉&イトオ
おー
上杉
楽しみにさせていただいて。
佐々木
そうですね、Switch大好きなハードなんで出せるなら出したいですよね。
今後について
佐々木
じゃあちょっと本当にまとめに掛かっていきたいんですけど。えっと・・・今後どうなっていきたいですか?
上杉&イトオ
(笑)
佐々木
ゲームも出て、売った。で、先ほど満足したみたいな話もありましたけど、これからどうなっていきたいか。ゲームに限らないんですけど。
上杉
今後もぶれずにゲーム作っていきたいな。自分が求められているようなゲームを作っていきたいです。
佐々木
どんなゲームが求められていると感じてますか?
上杉
これは自分で言ってあってなかったらイヤなんですけど、よくいわれるのがヴォーパルスみたいなのをまた作ってくれって言われるんで、そういうのを作っていきたいなと。
佐々木
ほんとああいう、緻密に、様々な変数を上手くまとめていくデザイナーってすごいと思います。そういうのを作っていくんですね。
上杉
そうですね。希望として。
佐々木
もう具体的なやつはあるんですか?
上杉
全然無いです。
佐々木
イトオさんは?
イトオ
僕はうーん、そうですねやっぱりチャット版のインサイダーがどうにかなんないかな。
佐��木
あー前々から相談はあるんですよね。
イトオ
どうにかなんないかなーってのはずーっと思ってて。でもまあそればかり考えてても仕方ないんで別のゲームも作りたいなとずっと思っていて、ちょっとずつ着手はしてるんですけど、
考えながらハングリーさがちょっと失われちゃってるヤバいですね。ちょっとおなかが出てきたなーみたいなことを思ってるんですけど(笑)
佐々木
(笑)
是非出来たら遊ばせてください!
イトオ
よろしくお願いします。
佐々木
僕は・・・
2010年にオインクゲームズをはじめて、2012年くらいであんま売れないし、批判は食らうし、もうやめようかなーみたいになった時期があったんですけど・・・。それでもやっぱり継続をしていきたいなと思っていたんですよね。ゲームをとにかく一生作っていきたい。なんとか継続していきたいというのが常に願いとしてあって。
メディアからインタビューを受けるときとかに「今後の目標は?」って聞かれるんですよ。大体期待されてる答えは「世界で何万本売りたいです」みたいなことなんですけど、正直に「えっと、このまんまで継続したいです」みたいな感じで言うと、「あ、はぁ」みたいになっちゃう。全然面白みのない答えなんですけど。「継続をしたい」ですね。
上杉
でもそれが一番すごいですよね。しかも年に2、3個出すことを、継続している。
イトオ
本当すごいと思います。
佐々木
数は出せるだけ出したくて、量は、質を凌駕するとまでは言わないんですけど、質くらい量は大事だと思っていて、これからもコンスタントに作り続けられるような形を上手く作っていきたいなーってずっと思ってますね。
観客からの質問タイム
質問者1
今日の、一時間くらい割と長時間の対談で、三人での対談を通して「これは新しい発見だったな」みたいなところがあれば教えてください。
上杉
僕は新しい発見というか再確認なんですけど、オインクゲームズはすごい。
佐々木
えっそうですか。どの辺で思ったんですか。
上杉
やっぱり何も無いところか始まっていまこれだけ大きな存在になってる。すごいなーって。いずれ、ホビージャパンとかアークライトも越えてオインクゲームズが日本のボードゲーム界を支配するという。
佐々木
そんなことは全然・・・そうなるとは思えない(笑)
上杉
やっぱその継続して作っていくのもそうだし、自分の製品のコンセプトを統一してやっていくみたいな、完成度の高さがすごくありますよね。
佐々木
嬉しいです。
上杉
今後とも応援しております。
佐々木
ありがとうございます!
イトオさんなんか今日の対談を通してありますか?
イトオ
佐々木さんが意外と打たれ弱いって意外だなーって思いました。寝込んじゃうとか。
確かにインサイダー出た時にメールで「批判とか見ても落ち込まないでくださいね」みたいなメールが来た。
佐々木
そう僕、人も心配になっちゃって。僕がこんな落ち込むんだからイトオさんも落ち込むんじゃないかと思って(笑)
イトオ
「え、ヤバいの来るのか?!」と思ったら、意外とそんなでもなく(笑)
佐々木
単に僕が耐性が低いだけでしたね(笑)
イトオ
それを再確認しました。
佐々木
僕はもうみんなの前でこんな風に喋ることが新鮮でしたね。
その中で、この3人の中での自分の位置、自分のアゴがなんなのか、なにを伸ばしていけばいいのかが、ほんのちょっと見えてきたような気がするようなしないような。
自分のアゴはいろんな出来事を通して浮き彫りになっていくと思うんですけど、そういうワンオブザ浮き彫りの一つだったかなと思います。
質問者2
ゲームを出しているんですが、一番最初のプロトにあたるものを私が書いて、相方がそれに色を付けてくる形になるんですけど、プロトの段階で「おめえのゲームはとってもわかりにくい最初の文章がまずわかりにくい」と言われてしまいます。みなさんどういうわかりやすいプロトの出し方をしますか?なんかコツとかあれば教えていただきたいです。
イトオ
インサイダー作る時に、僕も確かにわかりにくいねみたいなことを言われることがあって、それは僕の文章力とかそういうのもあるんですけど。その時に動画をつくってもらえて。それはチームインサイダーのオカノダイチくんって子なんですけど。その動画を作ってもらえて、やっとわかりやすくなりました。その動画はYouTubeにもアップされています。それを佐々木さんにも見てもらったんですよね。
佐々木
見ました見ました。ルールが伝わりやすい動画ですね。
イトオ
あれって製品が何も無い状態、紙ペン状態の頃だったんで、たまたま知り合いにそういうのがいたからラッキーだった。っていう話ですね。ほんとうによかった。
佐々木
上杉さんは?
上杉
難しいですね。僕が自分でルールのひな形を書く時に気をつけているのは、自分がもしその文章に書かれていることしか理解できないロボットだったとしても理解できるようにしようっていうことで。もう本当に文章に書かれていることだけを、頭を空っぽにして、その動作をやるだけでゲームがちゃんと成り立つように細かく書くっていうことですかね。これが役に立つかどうか分からないんですけど。
佐々木
上杉さんは他の作家さんとコラボレーションもされてるじゃないですか。例えばプロダクトアーツの坂上さんと一緒に作ったり。そういうときってお互いの意思疎通はどういう感じでやられるんですか?
上杉
対面でずっとやってると、むしろあんまり明示的な意思疎通がいらなくなりますよね。そんなふうに、意識を常に共有していく感じで。
佐々木
僕の場合は、これは結構僕の利点かなと思うんですけど、プロットが要らないんですよ。僕が一人で作るから。着想から製品化までほぼ一人で行けるんで、伝える必要がないし、コミュニケーションロスが無いんですよね。
上杉
それはでも、見習うの難しい奴ですね。
イトオ
ずるいって言われるレベルですね。
佐々木
でも一つ言えるとしたら、僕は人に見せるときは必ず遊べる状態で見せます。テキストで説明するわけじゃなく、テストプレイしてもらう。変なコンポーネントでもいいから作って、ちょっとテストプレイいいですか?みたいな感じで呼んで、全然まだルール出来てないんですけど、一回このルールを動かしてみたいんでお願いしますみたいな感じでやります。
だからもういきなり動かすんですよ。文字の状態では見せないです。やっぱり動かしてナンボだと思っていて。
すみません・・・全然いいプロットを書く方法じゃ無かったですね。
質問者3
オインクゲームズさんは、いつも一箱に全てが凝縮されてるじゃないですか。そのまとめる・・なんて言うんでしょうか、説明しづらいんですけど、そのまとめる力というか着想というのはあるんでしょうか
佐々木
これはじゃあ僕が答えますけど、まずこの箱サイズを決めたんですね。最初に。まずは箱にどう詰めるかって言う前に、この箱サイズで全部作ってやろうと思ったのが最初で。でも途中で上手くいかなくて今は二倍の厚さになっちゃったんですけど、でもこのサイズに収めてやろうというのは毎回思ってて。そもそも自分がコンパクトなものが好きなんですよね。
で、どう納めるかってのは非常に難しくて。もう納まるようにしていくしかないんですよね。毎回。
上杉
これ、もうちょっと大きくしておけばなあというのは。
佐々木
めっちゃ思いますよね(笑)
どうしようも無くなったらもっと大きい箱が出来るかもしれないんですけど。
上杉
このダンジョンオブマンダム見ると相当すごいですよね。この納め具合。
佐々木
大変でした(笑)
上杉
ダンジョンオブマンダムエイトは、元々海外で出てたものを逆輸入して作っていただいてるんですけど、海外のやつはこの1.5倍くらいの箱が2つなんです。それがオインクゲームズの箱のサイズに納まっている。ものすごく圧縮しましたね。
佐々木
まず、この箱のサイズを見たらオインクゲームズのゲームだって分かるようにしたいんですよね。だからちょっと独特のサイズなんです。あとやっぱり持ち運びとか、常に自分がボードゲームを遊ぶシーンを考えた時に、自分ちに人呼ぶってあんまり考えにくくて。いろんな人がいるとは思うんですけど。
だから、鞄に入るサイズってのがひとつあって。あとは、プレイのコスパですよね、さっき言った。家の中のスペースをより大きく消費するゲームほど、面白さもそれに比例して大きくならなければいけないと思って。コンパクトにした方がプレイのコスパがよくなる。ただ、そのせいでプレイしにくくなると結局コスパ上がってしまうんですけど・・・そこはすごく難しいですが、これに無理矢理納めるように知恵を絞るみたいなことしかないですよね。
イトオ
知恵を絞る(笑)
佐々木
でもすごい知恵を絞るんですよね。
上杉
でもきっと、今までの積み重ねでノウハウがあるんですよね。三分割したりとか。
佐々木
ありますあります。ずっとこれで作ってるから、色々積み重なってノウハウは貯まっていきます。
インサイダーははじめて砂時計を入れたんですよ。さあ、砂時計どう納めるかみたいなのはすごく難しかった。あとは、お題カードはホントはもうちょっと多い方が良いかもしれないけど、この箱に収めるためにはギリギリこの枚数だ、みたいなな葛藤もあったりして。
自分の作品では、ときにはプレイアビリティ以外の、ゲームシステムの方にも手を加えてでも箱に納めるということもあります。ある種ルールまで戻って考えられるっていうのは僕が一人で作ってるからっていうことの利点でもありますね。なんか箱に納まんないやってルールをいじるって、なかなか出来ない。
上杉&イトオ
できないですね、普通ねー。
佐々木
そこまで立ち返れるって言うのが一つポイントなのかもしれないですね。
いかがでしたしょうか。お三方の作品の根底に流れる考えや哲学が少し垣間見えたような気がします。今後の作品も楽しみですね!
明日から二日間開催の「ゲームマーケット2017秋」では、佐々木隼の新作「トロイカ」がオインクゲームズブースで発売されます。詳細はこちら。お時間があればぜひお越しください。
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