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oriori-ki · 5 years
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第44回 『台北市動物園』
台北に行ったらメトロで動物園へ
 いつ行っても穏やかな暖かい台湾は、のんびりして食事もうまいし、足つぼマッサージも手軽で廉いし、絶好の観光地である。今回は、メトロに乗ってまだ訪問していなかったアジアで指折りの規模である動物園に行ってみた。
 動物園駅を下車してエスカレータで降りると、待合せなのか、見物客がたむろしていた。動物園入口までの歩道には、動物たちの足跡がいく種類も点々とレリーフで並んでいた。形がずいぶん違ったり大小それぞれ異なっていたりおもしろい。早く入って足跡の主をみたくなる。一般客は60元、日本円換算約120円で入場券を買って園内に入る。
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 まず、入口で日本語版の園内地図を選んでもらい、最初に入るパンダ館参観券を一緒にもらった。切符には入場時間が指定されていて、混む時には並んで待たないと見られないこともあるらしい。今回はすぐに入れた。
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 パンダは中国から2008年12月に、オスの團團とメスの圓圓のつがいを寄贈されたもの。そして2013年7月6日には人工授精でメスの赤ちゃんが生まれている。
 立派な建物のなかにパンダはいた。館内は歩きながらゆっくり見られるようなスロープになっていたが、休日だからか家族連れで混んでいた。そして大きなガラス張りの洒落た展示場のなか、パンダは少し離れたところにじっとしていて、客のそばにはなかなか来てくれない、こちらに向いてもくれない。だから、愛らしい姿も見えず、カメラにも撮りにくく、何枚も撮ってみたが、残念ながらいい写真にはならなかった。
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アジア屈指の動物園
 この動物園はアジア最大だそうで、東京ディズニーランド2個分の面積がある。展示種類も360種、2300点もいるという。休日なので人も多く、せっかく来たのに見たいものが見られないのは残念だから、つい急ぎ足になる。
 ところが園内バスが何台も巡回していて、5元出せば子どもも大人も乗れて、奥の方まで連れて行ってくれる。おとぎの国のバスのように車体は可愛らしく飾られていて、休日でお客さんがたくさんいてしばらく並んで待つほど人気だった。
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 終点で下車すると、コンクリの塀に囲まれた木のうえに静かに寝そべってグリーンイグアナが4匹太陽に当たっていた。怖い顔をしていて背中に並ぶトゲ状の突起物がタテガミのように見える。けれど、よく見てみると草食系でおとなしそうな眼をしている。じっとしてあまり動かなかったけれど、めったにお目にかかれないからしばらく眺めていた。
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 この近くに両生・爬虫類館があった。カエルは日本でもなじみでかわいらしいけれども、珍しい真ッ黄色のカエルがいて目を見張る。表情もなかなか愛嬌があって、仲間同士活き活きしていてかわいらしくさえある。
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 この部屋にはヘビやトカゲなどたくさんの種類が展示されていて、見るだけで疲れてしまうほどいた。正直いってそう好きな生きものでないけれど、ガラスの向うにいるからじっとよく見てみると、怖いようでもあるが、なかには愛嬌のある顔をしているものもある。
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 1点1点丁寧に見るほど長居すべきところとはどうしても思えないから、ちらっと見てはとなりのガラス窓の部屋へと移動して、両生・爬虫類館から出てきた。でもけっこうな時間を費やしていたようだ。
じっくりモウコノウマを眺める
 馬はなんども見ているが、いろいろ種類があって、蒙古の馬というのがいるとは聞いていたが、なかなかじかに見ることがなかった。日本のあちこちの動物園にもいるけれどもうまく見られなかったが、ここでゆっくり見ることができた。
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 競馬馬に比べるとずっと小ぶりで農耕馬のようにどっしりとして、一昔のまえのもの静かな種類の馬のような感じで、親しみやすく馴染める感じがした。
 向かいに足を運ぶと、谷間のような景色の向うにアメリカバイソンがゆったり群れをなして歩いている。太い重そうな角を生やして体も大きいが、ウシの仲間の草食性でおとなしい。まさに自然のなかの野生種のように見えるけれど、実のところこのバイソンは野生種がほぼいなくなってしまったそうだ。20世紀はじめには世界で500頭ほどしかいなくなり、目下のところ世界各地の動物園が保護して、絶滅を防いでいる現状であるという。
 動物園では、かわいい動物の子どもを増やしたり育てたりして、世界の生きもののバランスを崩さないよう、目に見えない努力を積み重ねているのである。
オリのなかのチンパンジーと記念撮影?
 さて、その向かいはチンパンジーのコーナーである。この写真はオリに入って記念撮影と洒落こんでみた?わけではない。チンパンジーがオリから手を出しているようにリアルに造ったブロンズ像なのである。入場者への記念撮影用の園のサービスであるようだ。
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「ほんもののチンパンジーと仲良く写っているように見えるでしょう?」
 けれ��も、ほんものはちゃんとオリのなかにいて、静かに物思いにふけっているような気取ったポーズをしていた。なかなか愛嬌があって、下あごに白く生やしたヒゲがなんともお洒落で、ヒトとあまり変わらない知的な表情をしている。
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 ことばはしゃべらないが記憶力はけっこう確かで、ヒトとのやりとりを覚えているようである。例えばカメラを向けると、得意のポーズをするものもいる。
 世界に広く分布し、食生活もヒトと似ていて、甘い果物が好物で菜食もし、昆虫や卵も好み、さらには集団で狩りをして動物の肉も食べるのである。
 となりのコーナーではお客さんがケータイで写真を撮っていた。同じヒヒの仲間で、アヌビスヒヒと書いてあった。日本の動物園にはあまり見かけない種のようだが、カメラを前にしてじっとポーズしてサービスする健気なサルである。
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「東非ヒヒ」とあり、OliveBaboonと英語で書いてあった。サルの仲間とは姿を見ればわかるが、どんな生き方をしているのか。草原で群れをなして生活し、あまり樹のないところ小石まじりの丘に住み、まれには木に登ったりする。オスは他のオスと戦ってメスを得て性交し子孫を増やす、と簡単な説明がしてあった。
サイもカバもたくさんあちこちに
 シロサイが近い場所2か所に別れてたくさんいた。仲間どうしで遊んでいるのか角突き合わせているのか、仲間が何頭もいる動物園は珍しい。オス同士でメスの取り合いでもしているのか。
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 いくつかの動物園でサイを見てきたが、だいたい1~2頭で、退屈そうに水辺で水を浴びたり、横になって寝ていたりしていた。ここのサイはゆったりではあるがよく活動している。
 何頭いるのか調べてないが、別のところにいたシロサイは、仲間から離れて散らかっているフンを検証しているようだ。サイは眼があまりよくないが、聴覚や臭覚はすぐれているので、仲間や家族のようすを散らばったフンから感じ取ってでもいるのだろうか。
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 こんな巨体のサイも、角が高く売れるというのでヒトに襲われて、悲しいことに絶滅の危機にさらされており、いまや地球上で2000頭ほどになってしまっている。
 ここにはカバも数頭いた。カバは河馬と台湾では書くが、日本語でもおなじだ。身体が大きくて丸っこいのに泳ぎがすばらしくうまい。イヌは首だけ出してイヌカキで泳ぐけれど、カバの泳ぎはけっこう潜って泳ぐし、カバカキというのだろうか、子どもたちがその泳ぎを食い入るように眺めていた。水上に上がって顔を出すと、鼻の穴を大きく広げて呼吸をする、そのとき水しぶきが勢いよく飛んでくるのがおもしろい見ものであった。ガラスの囲いでしぶきは飛んで来ないから安心して見物できる。
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 この池のとなりのコンクリートの庭では、池で泳いでいない親子のカバがゆったりと日を浴びて、エサでも探しているのか散歩していた。
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キリンとシマウマが同居して
 かなり広いコーナーの遠くにキリンが見えた。その同じ区画にシマウマも一緒にいた。いつも同じコーナーにいるからだろうか、お互い素知らぬ顔でじゃれ合いも遊びもしない。双方草食性でおとなしく、追いかけて襲ったりもせず、興味なさそうな感じだ。ケンカするようでは一緒に飼育できはしないけれど。
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 そのてまえにシマウマが団体でいた。どうしてこんなにたくさんいるのか。初めて目にする光景である。
 何頭もきれいに背中を並べて群れているようすを上から眺めると、じつに壮観である。じっとしてあまり激しく動かないから体の模様が幾重にも重なって、珍しい美しい幾何学的な模様になる。のぞきカラクリメガネとか抽象画とかを見ているような錯覚に陥る。
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 日本や世界に数多く動物園はあるが、こんなにたくさんシマウマやサイやカバがいるのは珍しい。この台北動物園ならではの見ものかもしれない。台北に足を向けた折りには、ぜひこの動物園に足を運んでみてはいかがか。
動物園で漢字のお勉強
 この動物園にはラクダが2種、ヒトコブラクダとフタコブラクダと柵を隔ててほぼ一緒にいて、それらの大きさが違うのがよくわかる。日本人の場合「月の砂漠」の歌のイメージから、ラクダはフタコブに決まっていると思っている人が多いはずだが、フタコブラクダは、荷物を運搬したり人が乗ったり、乳を搾ったり毛織物の材料にしたり、家畜用に育てたもののようだ。
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 コアラが樹のうえで寝ていた。夜行性の生きものだから昼間は寝ている時間が長い。時々は動くけれど、近くでなでたり触ったりはできないから、長居してもおもしろくはない。かわいいけれども、つぎに行こう。
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 ゾウ舎だ、ここにはアフリカゾウがいた。こことは別のところにアジアゾウのコーナーもある。アフリカゾウはアジアゾウに比べると気が荒いが、遠くにいるから大きさがあまり実感できず、眺めているだけでは怖いとは思わない。ある動物園のゾウはストレスがたまっていたのか、長い鼻で観客に向けて水鉄砲のように振り撒いていたこともある。
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 この柵には、ゾウの漢字「象」の変遷が掲示されていた。甲骨文字・金文・小篆・隷書の書体が並んでいた。小学生のお勉強にはちょうどいい。むしろ大人も甲骨文字になると分からない人が大半だろう。漢字だから日本人でもよくわかって勉強になる。
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 そろそろくたびれてきたので帰り路につこうと歩いていくと、大きな箱があった。これはゾウの引っ越しに使った箱であった。
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 説明板によると、もと台北市内の北にあった動物園から、いまの動物園に引っ越しした時に使ったものだという。外から見ても感じはつかめるが、なかに入ってみると、いかにゾウが大きいかまざまざと実感できるのがおもしろい。
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 嫌がる大きなゾウをこの箱に追い込むのはたいへんな苦労があったろう。入れたあとここまで運んでくるのも大仕事であったことだろう。
 この動物園はとても広く、ほかにもアジア熱帯雨林区、台湾動物区、子ども動物区、虫の谷、鳥園など1日ではとても全部は見切れないほど充実している。今回はざっと半分ほど見たろうか。なかなかすばらしい動物園であることを確認したので、また来てみたいと思いながら帰途についた。
(磯辺 太郎)
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oriori-ki · 5 years
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第43回 『しろとり動物園』
しろとり動物園
〒769-2702 香川県東かがわ市松原2111 電話0879-25-0998 
高松から電車に揺られて讃岐白鳥へ
 今回は香川県高松から電車に揺られて1時間ちょっとの讃岐白鳥(さぬきしろとり)まで来た。乗り降りする人がごく少ない鄙びた駅で、学校帰りの生徒とか、動物園に行く人とかがたまに降りるだけだが、高松市郊外の住宅地なのだろう。
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 駅前には客待ちタクシーがいなくて、電話連絡して呼び出しなさいと看板にある。呼べばすぐ愛想のいい年配の運転手が駆け付けて来た。走り出すと人家のあいだの細い路地をくねくねと曲がっていくと、あっという間に動物園に着いた。
 しろとり動物園入口のまえで下車すると広い駐車場があり、来園者の多くは家族連れでマイカーに乗って来るようだ。四国の瀬戸内海東外れの山と池とに囲まれた私設の動物園である。子供が好きなトラやライオン、ゾウなど多種類の動物がいて、小さな動物たちと遊べるコーナーもあって、工夫に富んでいる。
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 入園料は、中学生以上の大人1300円、3歳以上の子供600円、65歳以上のお年寄1100円。午前9時から午後5時まで開園していて、年中無休なのがありがたい。
 入口には今日のイベントの時間が掲示されていて、エサやりとか学習発表会とか、飼育員さんの汗の結晶がみられるようだ。
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生まれたばかりのライオンとトラの赤ちゃんがいっしょに
 さあ園内に入ろう。すぐ目のまえにお子さま歓迎の記念撮影用の絵看板があり、その奥には大きなガラスケースのなかに、生まれて2か月ほどのあどけないライオン、オスが3頭、メスが1頭、ベンガルトラのメス2頭が仲よくいっしょに遊んでいた。いきなりかわいいトラなどがいるので、だれもがしばらく足を止めて、戯れるようすに釘付けになってしまう。いっぺんにたくさん生まれるというのは何頭もの親ライオンがいるということで、じっさいにあとで奥のほうに進んでいくと、いくつものオリに別れて親たちが昼寝していた。
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 先に行くと目がクリッとしてこちらを睨み付けているフクロウが並んでいた。怖そうで足を運んで近付くのがためらわれる。怒っているように見えるが、実際はどうなのか。
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 最近都会の街なかではフクロウを鑑賞しながらコーヒーを飲ませる店があちこちにできてきて、首がくるっと回ったり目が丸かったりして、可愛いと感じたり、珍しがったりする人がいて、不思議と人気があるようだ。
 一様にみなこちらを向いて木に乗っているだけのようだが、よく見ると飛んで行かれないように脚にヒモが付けてある。飛んだところはめったに見られないが、ヒトの100ほど視力に富んでいて夜間の暗闇でもものが見え、さらに耳もよく、地面すれすれに大きな翼を広げて飛び、野ネズミや昆虫など小動物を捕らえてエサにする肉食のトリなのである。
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 だから、鋭い目付きをしているのは本性なのだろう。だが残念なことに、近年は日本でも世界でも森林が狭まって住みにくくなり、野生種の数が少なくなっているという。
ポニーに乗った坊やのそばにおしゃべりベニコンゴウインコが
 フクロウの前のコーナーには、ミーアキャットとカワウソが並んでいた。ミーアキャットは遠くを眺めるような立ち姿が人の立ち姿に似ていて、お人形さんを思わせ、カワウソは泳ぎが上手で、どちらも小さくて愛くるしい姿をしていて人気がある。
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 でも今日のミーアキャットは寝てばかりいたので、
「立ってサービスしないと��行っちゃうからね!」
 ととなりに行く。そこにはワオキツネザルが長いシマシマの尻尾を立たせていた。でも、今回はちらっと見て先に行くことにした。
 その先にある野外ステージを横目で見て先に進んでいくと、エサやりタイム用のエサ売り場があった。その横を見るとポニーの背中に乗った坊やが、係りのお兄さんと園内を散歩していた。どこの動物園でもよく見られる風景だが、ここでは散歩コースが柵で仕切られていないから、緑豊かな園内をゆったりとフリーな感じで楽しんでいる気がした。
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 そのてまえに大きなインコがつがいでケージのなかにいた。ベニコンゴウインコとある。じつに身体が大きく、くちばしも長くて大きい。いまはお話してくれなかったが、とても頭がよくて、おしゃべりが得意なのだそうだ。
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 パナマから南アメリカに生息していて、羽の色が赤・白・青・緑とじつにカラフルできれいだ。世界一綺麗といわれるトリがいるけれど、これかな? 彼らは果物やヒマワリの種や小型の昆虫をエサにしていて、長いクチバシは強力でクルミやナッツの殻を簡単に割って、なかの身を出して食べるそうだ。
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 そのうえとても長生きで、平均50~60年も生きるそうだ。なかには動物園で80年以上も生きた記録があるという。
ウサギやヒヨコと遊べるコーナー
 この動物園にはところどころに、例えば子ウサギとかヒヨコとかの危険性が少ない生きものたちと遊べるコーナーがある。囲いが低くなっていて手がすぐ届くようになっている。
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 ヒヨコなどは写真のように、子どもたち用とは別に、大人のために台の上に乗せてしゃがまなくてもすぐ抱けるようになっているところもある。おとなも子どもも手のひらにのせてヒヨコと遊べて、ぬくもりを感じられるようになっていた。
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 生きものを抱くことなど初めてで慣れない人が多いからだろう、飼育員さんが抱く要点を親切に掲示板に書いてくれているので、ここに記してみよう。
「ヒヨコの持ち方 一匹ずつ優しく両手で包むように持ってね!〇
 高いところにはあげないでね!
 投げたり握ったりすると怪我をしてしまいます✖」
 つぎつぎに通りがかった人がもの珍し気に抱いて愛しんでいた。生まれたばかりのものはなんでもかわいいものだが、ヒヨコはごくからだも小さくて鳴く声もかわいらしい。つい手を出して抱いてしまう。抱いてその目を見ながらぬくもりを感じて、
「うちの子も、こんなふうにかわいかったのよね!」
 としばらくのあいだ、幼いころのわが子を思い出して感慨にふけっているのだろうか。
ブチハイエナが2匹であそんでいる
 オリのなかで激しく乗りかかったり噛み合ったりじゃれあったりして、ブチハイエナがあそんでいる。ハイエナの仲間では最大種で、体長約1.3mある。
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 夜行性で死肉も食うというので、怖い生きもののイメージが強い。サハラ砂漠以南のアフリカに生息して、野生下では約33年、飼育下では40年以上も生きるとある。
 ここの飼育員さんの書いた掲示板には実に興味深いことが書いてあるので、写真と重複するが記してみよう。
「オスよりもメスの方が 体が大きい。」
「陰部 実はメスにも“おちんちん″が付いているんです。メスの膣と尿道が一緒になったもの。なので外性器からの雄雌の区別はしづらいです。」
「声 12種類もの鳴き声を使い分けます。」
 こういう知識は実際に飼育してみないと見つけられないことで、事典や資料などで調べてみても、なかなか書いてない貴重なことがらである。
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 そういえば、さっきなんとなく見ていたオリのなかで遊んでいたハイエナのようすはどうだったのだろう。優勢にうえに上に乗ったりしてじゃれあっていた大きい方がオスだとばかり思って見ていたが、違うのだろうか。一段落したあと小さい方が反撃して大きい方に噛みつき返していたから、なにか妙だなと見ていたけれど、看板の説明のように、小さい方がオスなのだろうか、きっとそうに違いない。なぞが解けた。
どうぶつ学園でサーカス?
 ブチハイエナのまえに「どうぶつ学園」があって、始まる時間になるとどこからか親子連れやおじいさんおばあさんに手を引かれた子どもたちが集まってきた。
「どうぶつ学園」
 とはいったいどんなものなのか、ちょっとわからなかったが、始まってみるとすぐに解決した。ブタやネコやイヌやヒツジたちを仕込んで芸をさせるのだった。綱渡りさせたり輪をくぐらせたり細橋を歩かせたり、結構危険なしごとだから訓練しないとなかなかできない。お客さんの見ているところでするのだからなおさらである。
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 ちょっと合図をすると、「おれの出番なのか」とはいわないけれど、わかったようなそぶりでブタが舞台の中央に出てきて、指示されたことをきちんと演技するのだ。ほぼ毎日おこなわれ、これが学習なのであろう。
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 サーカス的な動作を成功させると、褒美に好物のエサが与えられる。しごとがうまくいったヒツジが舞台から降りると、係りの飼育員のおにいさんやおねえさんのそばに寄ってくる。少しでもエサが遅れると、必ず係りの顔を見上げたり、脚で係りのからだを掻いたりして褒美を請求する。動物たちの真剣さがよくわかって、それが興味深かった。
不思議なからだの変化をするニホンジカ
 奈良公園とか安芸の宮島とかの神社には、放し飼いにされた鹿が境内にたくさんいる。昔から神の使いと崇められていて、みんなに馴染みが深い。だからだろうか、二ホンジカが動物園で飼われているのがまれなのは。
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 二ホンジカは北海道から沖縄まで広く生息している。からだにある白い斑点は夏だけに現れ、冬になるとほぼ消えてしまうのである。角はオスのみに生えて、毎年3月頃に抜け落ちてしまい、4~5月にかけて袋角が生えたのち、9月頃にはそれが立派な硬い枝角になる。
 秋が深まればオスは盛んに鳴いてメスを呼ぶ。その時期が来ると、オス同士がこの強い角で角突き合わせて戦い、勝った強いオスはたくさんのメスを従えてハレムをつくって暮らしていく。強いオスの子を孕んだメスは、やがてくる春から夏にかけて1子を産み育んでいく。生きものの世界は強くなければ子孫を残せない仕組みになっているのだ。
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 ところでこの動物園では、シカの角の神秘的な変化のようすについて詳しく説明した掲示板があり、具体的な絵もはいっていてたいへん興味深かった。園外公開禁止?な貴重品かもしれないが、カメラにおさめてきたので興味ある人はご覧いただきたい。
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愉快な顔をした古代からの家畜・ラマ
 シカの先の山すその奥の方まで歩いていくと、おもしろい顔をした大きな動物がいた。南アメリカにいるラマと書いてある。このラクダ科のラマ(またはリャマ)は、アンデスの高山地方の人たちに3000年以前から飼われていて、いまは野生種がいないという珍しい家畜である。
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 毛は織物として、肉は食用として、脂はロウソクなどに使われ、お乳はたいへんおいしいそうで、いってみれば最高の家畜である。
 そばで見ると、体高は約1.2m、体長は約2m、体重は約140kgあって大きいが、顔は左右の目が離れていて愛らしく優しそうだ。おっとりと歩き、すぐに人に馴れる感じがする。長いあいだヒトに飼われて穏やかな表情になったのだろうか。今流行りの「ゆるキャラ」にすれば人気が出そうな顔だとおもう。
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 また山すその細道を来園の人たちとすれ違いながらコースを行くと、カバやカピバラやワラビー・シマウマ・ヤマアラシなどのオリにでた。
 暑い盛りで、カピバラなどは日陰にはいってじっと目をつぶってゆったり休息時間を楽しんでいるようすだった。そんなようすをながめていると、動物園は彼らにとって外敵に狙われることのない安心して暮らせる文字通りの楽園なのだろう、とふと思ったので、そっと頭を撫でてやりたくなったが、オリの向うで手が届かない。
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 帰り口まで順路を歩いて行くと、いくつかのコーナーにペリカンやガチョウが一緒になって来園者がふれあってあそべる場所がここにもあった。その一つのコーナーで数匹の仔ブタにエサを与えている親子の姿が目に入ってきた。
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 生きものとの交流は言葉では通じ合えないけれど、例えばエサをやるという行為で生きものとの仲間意識が芽生える。そしてそれは、生きものを慈しむ心を育てる情操教育になるはずである。この動物園にはその機会がけっこうたくさん設けてあるとおもう。
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 電車で来るとちょっと遠い気がしたけれど、なかなかユニークな動物園で、愉しく興味深いものがあった。パンフレットによると「移動動物園も相談ください」とある。いろいろな動物に会えない人たちには、すばらしいサービスだとおもう。
 機会をみてまた来てみたい動物園だった。
        
(磯辺 太郎)
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oriori-ki · 5 years
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第42回 『とくしま動物園』
とくしま動物園   
〒771-4267 徳島県徳島市方上町・渋野町 電話088-636-3218 
URL:http://www,city.tokushima.tokushima.jp/zoo/
工夫凝らしたバードケージがお出迎え
 今回は徳島市、阿波と呼ばれるにぎやかな街の、とくしま動物園に来た。
 徳島駅前からバスに乗り25分ほどで着く。本数がかぎられているので利用する場合はあらかじめ時刻表で調べておくほうがよい。
 入園料600円を支払って園内に入ると、広々とした緑豊かな公園のようだ。
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 各種展示場の動物園センターをのぞいてみると、コーナーに所狭しと、クマやシカやオオカミなどさまざまな動物の剥製が展示されていた。暑い盛りにはクーラーが効いていて、ここでゆっくりいろいろな動物をながめていると、もう動物園を半周ほど歩いたような気になってしまう。
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 さて、気を取り直して歩きだす。手前に見える小屋が何だろうかと、いぶかりながら入ってみた。その向こうにある大きなバードケージの入り口だった。このフライングケージは高さもあり、なかにはトキやシギ、カンムリヅルなど10数種が同居していた。
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 ケージのなかは池や岩山・滝などを配して、自然な環境を模して工夫を凝らしていた。散歩道がめぐらされていて、ごく近くでトリのようすが観察できるのがとてもいい。
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 この動物園にも海外の観光客が来ていて、韓国や中国の家族連れと一緒になった。展示しているトリの写真をボードに並べて説明書きしてあったが、日本語と英語のみで書かれていて、何人かの若者がちらっと見ていたが、わからな���ったのではないか。
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カピバラ・シマウマ・オリックスが一緒にのびのびと
 ケージを出ると、順路の看板が樹木の緑のなかに映えて目にはいいてきた。その順に進んでいくと、生きものたちのための自然公園のような広いところに出た。涼しそうな木陰に小池が配置されていて、大都会にある動物園ではめったに見られない広さがあり、その自然なすがたが観客の目を楽しませてくれる。
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 そこにはシロオリックスとカピバラ、その向こうにはシマウマが夏の日差しを浴びていた。暑い日差しに「参った」と��いわないけれど、ぐったり目をつぶって横になっているカピバラが点々と横たわっていた。なかには日差しをよけて、木陰を楽しむように立っているオリックスや、池の水にどっぷり浸って涼しげな顔をしたカピバラもいた。
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 じっくりその顔を見ていると、人間社会にもよくある鷹揚に構えた要領のいい人物を思い浮かべてしまう。
 そのさきの休憩所の建物にはいってこの広場を別の角度から俯瞰すると、目のまえで建物の日陰にじっとたたずみ、まったく身動きもしないで涼んでいるシマウマがいた。かれらにも夏のこの暑さはやっぱり堪えるのだろうか。
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うまく見えないアフリカハゲコウ
 休憩所から出てみると、また小さな池があって、フラミンゴが20羽ほど池に姿を映していた。よくみる片足立ちではなく、寒くないから両足で立っていた。ここのフラミンゴは、たぶんチリフラミンゴだろうか。ほかの種にヨーロッパフラミンゴ、ベニイロフラミンゴなどがいる。フラミンゴを紅色に染めるには、ニンジンやそれなりの色素をもつエサを与えないと、きれいなピンクにはならないようである。
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 そのとなりには、アフリカハゲコウと塀に書いてある小屋があった。塀に覗き穴が空いていて、そこから眺めてみたが、残念なことにあまり近くにいて、うまく全体が見えなかった。けっこう珍しいトリでどこの動物園にもいるわけではない。
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 大きくて鋭い顔をしているけれど、大らかな性質らしい。はじめて秋吉台サファリランドでケージのなかのアフリカハゲコウを見た。ここでは、なんども訓練して秋吉台の丘から丘へと大空を遊飛させて、野生に生きる姿を来園者に見せてくれたという。なんともすばらしい企画であったが、たびたびの事故でたいへんな苦労をしたようだ。
 となりには、ミーアキャットがいた。立っている姿がどこの動物園で見ても可愛らしいので、何をながめているのかと、ついしばらく足を止めてしまう。両前足をだらんと垂らして立ち、みな同じように目がくりっとしてなんとも愛らしい顔をしている。穴を掘って生活し、夫婦仲良く子育てをするけれども、サソリをもエサにする「サバンナのギャング」と呼ばれて、小さいながらけっこう獰猛な生きものなのであるという。
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 ちなみにミーアキャットとは、オランダ語で「湖のネコ」の意で、別名「スリカータ」というマングースの仲間である。 
セイロンゾウやワニもいる
 ゆったりした洒落た舎屋にセイロンゾウがぽつんといた。大きなガラス板でうまく観られるようになっていたが、見るのによい場所にゾウはきてくれない。エサやりタイム以外はおとなしいけれども近寄れないから遠回りに横目で見て、となりのワニのコーナーへ行くことにした。
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 ここのワニは小さいけれど(1.5mくらいはあるが)、姿かたちを眺めただけで恐いと思ってしまう。古代エジプトなどでは神聖化されていたというが、トカゲとかヘビとか、ハ虫類は個人的に好きになれない。でもときどきは怖いもの見たさで鑑賞するのも少しは勉強になるかな?
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 このコーナーにはトラもピューマもいたはずだけれど、寝ていたようでうまく見られなかった。今回は素通りということでご了承のほどを。
チンパンジーと裸のマントヒヒ
 やっぱり人気はサルの仲間で、見ているだけでおもしろい。人類に最も近いというチンパンジーがいた。野生のかれらは10匹から100匹ほどの集団で、ほぼ血縁の家族で群れを成して生息しているという。体重はオスが平均43kg、メスが33kgで、エサは主として果実食だが、集団で小さな動物を狩猟し、その折の貢献度によってエサを分配するようだ。 
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 また、たとえば石を金づち代わり使って固い実を割って食べたり、細い棒を使ってほじくり出してエサを捕り出したり、身近なものを道具に利用する頭脳がある。
 さらには、薬草の利用や狩りの仕方を、声やしぐさなどコミュニケーションを取る方法が世代を超えて受け継がれていると、観察研究の報告がある。まさに人類のとなりにいるといわざるを得ない。
 今この動物園でそんな姿を眺めることは短時間のあいだには出来ないけれど、飼育員さんの力作の掲示板を見ると、1日の行動予定が示されている。頭脳がかなり発達していて、ヒトを観察したり会話したりするようすが書かれている。呼ぶと肯いたり、笑ったりする行動はヒトの赤ちゃんに似ていなくもない。
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 となりはマントヒヒがいて、堂々とピンク色に染まったオスのシンボルがまるだしで見える。どこの動物園でもおなじだが、今回は1mほどのすぐそばにいるからだろうか、妙にリアルにオスを感じてしまった。裸の人生も包み隠しが無くてさっぱりしていてなかなかいいかも、などと人間世界とくらべてみても愚かしいことだろうか。
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 かれらは1頭のオスと数頭のメスとその子供たちからなるグループで集団を作り生活している。古代エジプトでは、聖なる動物として崇められパピルスに描かれている。
寝姿かわいいコツメカワウソと泳ぎのうまいホッキョクグマ
 となりにコツメカワウソが小さく丸く重なって寝ていた。親子なのか子供同士なのか。泳ぎが得意で、たいていは休みなく泳いでかわいらしい姿がみられる。今日はお昼寝の時間にあたったのかもしれない。寝姿もとても可愛らしいが、起きて活発に泳ぎ回るまで待てないので先に行こう。
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 白い大きなクマがいた。きれいな水槽に気持ちよさそうに泳いでいる。ホッキョクグマとある。夏だからよけいに嬉しげに見える。
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 ガラス板のそばに来ては首をあげて水上に顔を出して向うのほうの岩までバックで行き、そこで水中に潜って回りながらまたガラス板のまえを音もなく、全身の大きな姿を観客に誇示するように泳いでいく。そこでこちらを向いたまま水上に首を出し、またバックで岩まで泳いでいく。
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 それをなんども繰り返し、その表情はおっとりしていて、つまらないのか嬉しいのかよくわからないけれど、大きなクマがしなやかな泳ぎを見せてくれるので、飽きもせずに10分ほど見ていた。隣でも子どもが連れだって、不思議そうに興味深げに声もたてずにじっと見いっていた。
目がくりっとしてかわいいリスザルはただいま41頭
 ホッキョクグマの前はピクニック広場で、その向かいにはトリたちの小さなケージがいくつもあり、コンドルやハタオリドリなど珍しいトリがずらっと並んでいた。
 西出入口のてまえには、こども動物園のコーナーがあった。そこには子供たちの人気者のペンギンやアヒルやポニーがいて、また珍しい黒いイノシシが寝ていた。
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 なかでも小さくてかわいい眼をしたリスザルが、オリの中でちょろちょろと動き回って人気者である。南アメリカに生息するリスザルは50から100頭の集団でお互いに助け合いながら活動しているという。ここでも飼育員さんの手書きの看板に「リスザルの森 生息状況 ただいま41頭」とある。でも、そんなにたくさんいるようには見えなかった。どこかに隠れているのだろう。
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 活発に動き回るリスザルのようすは見ていてなかなか飽きないが、初めのフライングケージに工夫を感じ、シマウマ・オリックスやカピバラが一緒にいるサバンナ広場がイキイキしていて印象的だったと思い返しながら、そろそろ時間になった。西口からを出て遊園地の観覧車を遠くに横目でにらみ、バス停に向かった。
(磯辺 太郎)
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oriori-ki · 5 years
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第41回 『宇都宮動物園』
●栃木県民にとって馴染み深い場所
「宇都宮?」といえば、おそらくほとんどの人が「餃子」と答えるでしょう。そのくらい宇都宮の餃子は世間に知れ渡っています。このレポートが食に関するものなら、すぐにでも餃子店のはしごに出かけなければなりません。また、餃子ばかりではなく、宇都宮市周辺には大谷石を採掘した跡の広大な洞窟を見学できる大谷石資料館、それに隣接している大谷観音像などもあり、どれも一見の価値があります。しかし、目的は動物園の取材です。餃子や史跡観光は取材が終わってからとして、動物園に向かいます。宇都宮動物園です。
「楽しい動物園だね。動物と触れあえるし、遊園地やプールもあって、子どもたちをあきさせないしね」
 この動物園、宇都宮市民、いや栃木県民にとっても保育園や幼稚園、小学生の時分に訪れる馴染み深い場所であるようです。東京在住の同県出身者が教えてくれました。
 宇都宮動物園は、「自動車で行く場合、東北自動車道の宇都宮インターから約5分、電車の場合は、JR宇都宮駅から関東バスで『下金井』停留所下車、徒歩でおよそ5分」と案内パンフレットにあります。私が訪れた日は日曜日、しかも快晴の好日とあって、動物園入口前の駐車場は満杯でした。すぐ近くに休耕田をそのまま利用した駐車場がいくつも並んでありますが、園に近いところはすべていっぱいで、園からどんどん離れていかないと駐車スペースがありません。駐車案内の係員の誘導も大分遠くからです。普通乗用車1000台、大型バス70台が収容できるとパンフにあります。
●宇都宮動物園の概要
 宇都宮動物園は、1981年に開設された民営の動物園で、宇都宮市の北西部郊外、林や田んぼに囲まれた一画に位置しています。動物園の入口も緑豊かな木立に囲まれています。11時頃に到着したのですが、入園券売り場には長い列ができています。ほとんどが2,3歳の幼児から小学生くらいまでのお子さん連れの家族です。入口には「ペットホテル」の看板が掲げられ、それには「大型犬も預かります」と書かれています。公営ではなく民営の動物園らしいところです。
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宇都宮動物園の入口
 一般入園料は、「動物園+遊園地」で大人���高校生以上)1200円、小人(3歳以上)600円、「動物園+遊園地+プール」でそれぞれ1400円、700円、「プール」だけだと年齢を問わず350円となっています。民営動物園ながら非常に良心的な金額設定です。
 この施設は大きく動物園、遊園地、プールの三つに分かれます。
 もっとも広い面積を占めるのは動物園で、約90種、400頭(羽)の動物が飼育・展示されています。そのキャッチフレーズは、「自然とどうぶつとこどもたちのふれあいテーマパーク」で「チビッコ動物飼育体験」や「なかよしランド」での動物とのふれあいも売り物の一つになっています。
 動物園とは別の一画にある遊園地には、観覧車、ジェットコースター、スカイバルーン、豆汽車、モノレール、メリーゴーランドなどの乗り物があり、わんわんショーなどの催し会場もあります。プールは入園するとすぐ左にあります。そうとうに大きなプールですが、訪問した時には水がありませんでした。ちょうどこの時期は、冬期の釣り堀から夏期のプールへの切り替え時だったのでしょう。
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動物園に隣接する遊園地
 また、園内には、至るところに「雨天休憩所」が設けられています。案内パンフによると、動物園エリアだけでも7か所あります。この地域は雨の多い気候なのでしょうか。プールの横を通り動物園の方に向かうと、左手前にお城が見えます。このお城、遠くから見るとまさに江戸時代の天守閣のようですが、近くでみると、違和感があります。それもそのはずで、実はこのお城も「雨天休憩所」なのです。この動物園の附属施設として建てられたもので、宇都宮城というそうです。この日、お城の前の広場にはたくさんの人々が集い、バーベキューを��しんでおりました。
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宇都宮城
●猛獣舎
 軽食堂で腹ごしらえを済ませてから、すぐ近くの猛獣舎へと向かいます。猛獣舎は横一列に檻が並び、イリオモテヤマネコ、ブチハイエナ、アムールトラ、アフリカライオン、
ツキノワグマなどが飼育されています。
 どの動物園で見ても同じですが、相変わらずブチハイエナは檻の中を右に左へと動き回って、ちっとも落ち着かず、なかなかカメラに収まってくれません。このハイエナ、人気がいまいちですが、それは、いかにも悪賢い面構えとなんとなく薄汚れた感じの体色模様、それに他の猛獣が仕留めた獲物をスキをみて奪い取ったり、死肉さえ食べたりするその貪欲さが嫌われるからでしょうか。本人(本獣?)には何も責任も落ち度もないのにと、少し可哀想な気がします。ところで、ここのブチハイエナは飼育歴が40年ほどに及んでいるそうです。通常野生では寿命が33,34歳といいますから、そうとう長寿です。
 ライオンには、リオン、オリーブと名付けられた夫婦とステルク、アルマルという名前のホワイトライオンの番いの二組がいます。また、ホワイトタイガーも飼われていて、珍しいです。
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ホワイトライオン
「これから猛獣たちのエサやりタイムです。みなさん、こちらに集まって下さい」
 と、拡声器をもった女性飼育員が呼びかけています。大勢の入園者が集まりました。少しでもよく見えるようにと、お父さん方が我が子を肩車にします。そうしたなか、後方にいる私には檻の中がよく見えず、ライオンの食事の様子はお伝えできませんが、エサに齧りつきながらグワッ、グオォーとあたりの空気を振るわす迫力のある吠え声はしっかりと聞き取れました。
●夜行性のクマたち
 猛獣舎の隣にはアライグマ、ホンドタヌキ、アカハナグマなどの飼育舎があります。これらの動物たちは、巣穴に潜り込んでいたり、棚の上で眠り呆けていたりで、まともにその姿をみせてくれません。しかし、これらは夜行性ですから、この姿が本来の有様です。動物園といえども、いや動物園だからこそ、そうした自然のセオリーを無視することはできないと思います。
●魚雷?
 クマ舎の隣には、マゼランペンギンのプールがあります。ペンギンのプールは、これまで見てきた動物園では円形や正方形に近いものが多かったように思います。これらはペンギンが水中を早いスピードで泳いでも壁にぶつからないようにと、ある程度の広さが用意されていました。また、頭上高くにプールをつくって、その底を透けて見えるアクリル製として、泳ぐペンギンたちを下から見上げる動物園もありました。それぞれに見せるための工夫がこらされていました。
 しかし、ここ宇都宮動物園のペンギンプールはそれほど広いとはいえず、幅が2m、長さが10mほどの細長い形です。その中に5,6羽のマゼランペンギンが飼育されていて、プールサイドにたたずんでいたりプールで泳いでいたりと、思い思いにしています。と、そのうちの1羽がすごいスピードで水中に飛び込みました。羽をまるで飛行機の翼のように斜め後ろにのばし、両足をお尻の方にまっすぐにそろえて、突き進んでいます。「泳ぐ」という動詞では正確に言い表せません。「突っ走る」といったほうが的確でしょうか。まるで水中に発射された魚雷(見たことはありませんが)のようです。そして「壁に激突する」と思ったその途端、クルリと体を反転させると今度は空中にビュンと躍り出て、一瞬後に再び水中を突き進むのです。1羽が始めると他の1羽も続くといった具合に、一定の間隔でこのショーが続きました。プールの造りは至極単純でこれといった特色はありませんが、このショーは、見ていてあきません。
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空中に躍り出たマゼランペンギン
●壮観なキリンたちのそろい踏み
ワラビーたちが日陰にのんびりとたむろしている様子、プールから陸に上がって大きな図体を横たえてお腹を波打たせて息をしながら寝入っているカバを横目で眺めて進むと、大勢の子どもたちの歓声が聞こえてきます。
 みると、4頭ものアミメキリンが柵から大きくて長い首を突き出しています。キリンたちは、子どもたちが柵の外から差し出すエサの草束に向かって首を突き出しているんです。4頭もそろうと圧巻です。子どもたちは、お父さんに肩車してもらったりお母さんに抱っこされたりして、小さな手にもった草の束を必死にのばして、「キリンさーん、ご飯だよ」とか、「こっちにあるよ」とか、必死です。しかし、キリンが長い首を回して大きな顔を子どもたちのすぐ目の前に突き出すと、男の子はあわててお父さんの頭にしがみつき、「こわいよー」と身を隠します。確かに離れた場所からみればキリンの顔は愛らしいですが、すぐ目の前に、それも大きくて長い顔が迫ってくれば、大人でも怖い感じがします。子どもたちにとってみれば、キリンの顔は自分の顔の十倍にもみえるでしょう。でも意外に、男の子より女の子のほうが臆することがないようです。怖さをふりきるように草束をキリンの口元へともっていきます。
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顔を突き出した4頭のアミメキリン
●善人顔と悪人顔
フサオマキザルは、人に例えるならば、「おっさん」顔をしています。それもある程度歳を重ねて温厚になった「気の好いおっさん」です。その絵に描いたような「おっさん」ぶりは、何度見ても「ぷっ」と吹き出さずにはおられません。ただ、ふてくされて寝そべっているかのような格好は変えてくれず、いい写真を撮らせてくれません。ところが同じサル舎にいるワオキツネザルは、どこからみてもまったく正反対の悪人顔です。全身はほぼ白いのに目と口の周り、それと股間だけが黒いのですが、その黒い目の縁取りの中に黄色い眼球が鋭く光り、黒く囲まれた三画顎はいかにも意地悪そうで、指先にも細く鋭い爪が尖っているのです。でも、こうした感想は人間に照らしての勝手な想像であります。もちろん遺伝子がなせる技であり、本人(本猿?)にはまったく負うべき責任はなく、また、善人顔、悪人顔という自覚もないのが救いでしょうか。人間とは勝手なものですね。
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悪人顔のワオキツネザル
●「なかよしランド」
 動物園エリアの一番奥は、「なかよしランド」です。このエリアでは、ヒツジやヤギなどにエサを与えたり、直接にテンジクネズミ(モルモット)やウサギなどの動物に触れあえたりできます。クジャクやインコなどの鳥類も飼育・展示されています。また、ポニーに乗馬することもできます。体高が大人の腰の高さほどしかないポニーに小さな鞍がつけられていて、そこに女の子がちょこんとまたがり、目を輝かして得意顔です。もちろん、お姉さん飼育員が手綱をとってサポートしてく���ます。このポニーの乗馬、子どもたちに大人気らしく、幾人もが行列をつくり,自分の番を待っていました。
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ポニーに乗ってご満悦の女の子
●チンパンジー
 これまで触れてこなかった草食系の動物(アジアゾウ・マーコール・ニホンジカなど)や豊富な鳥類(エミュー・アンデスブロンズトキ・ホオカザリヅル・オオワシメンフクロウなど)と、見所はまだまだありますが、それらは実際に訪れてみていただくとし、最後にチンパンジーについて報告します。
 ここには7頭のチンパンジーが飼育されています。これまで見てきた動物園ではもっとも多い飼育数です。身長は150~170cm、体重はオスで60~80kg、メスで45~68kgと説明にあります。だいたい人間と同じ体格といえるでしょう。
 7頭は、結構広い檻の中で天井から吊り下げられたロープにぶら下がったり、大きなトラックのタイヤにまたがったりして、てんでに遊んでいます。檻の正面はアクリル板ですが、その内側から人間を観察している学究肌のチンパンジーもいます。裏のほうは鉄の柵になっています。その柵の近くで寝ていた1頭、檻の外にいる私を見つけると、むっくりと起き上がって、なんと、手を内側に向けて「お出で,お出で」とまるで私を呼ぶような仕草をするではありませんか。私が檻に近づくと、かれも寄ってきて、まるで会話をするかのように「ウンウン」と頭を上下に振りながら、こちらに視線を向けます。その人(猿?)なつっこい笑顔(?)の愛らしいこと。そのつぶらな瞳は、まだ世間の垢にまみれていない幼児のそれと同じです。そしてなぜか、遠い故郷を想うときに感じるような懐かしさを私に与えてくれるのです。「もっとも根源的な心の平穏は、人間ではなくヒトとして自然のままに考え振る舞うことによって得られるのだ」ということを、暗に教えてくれたのかもしれません。それも動物園のもつ効能でしょうか。
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瞳の優しいチンパンジー
 折からの天気同様、爽やかな気分で宇都宮動物園をあとにしたのでした。
緒方三郎
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oriori-ki · 6 years
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第40回 『愛媛県立とべ動物園』
愛媛県立とべ動物園は、愛媛県松山市内から車で約20分、陶磁器の砥部焼で有名な砥部町にある動物園。園内には、約180種1000頭の動物が、生息地や種類ごとに10ゾーンに分かれて展示されている。なだらかな丘陵地の自然の地形を利用した、立体感のあるパノラマ展示が特徴だ。入園料は大人500円、高齢者・高校生200円、小中学生100円、幼児無料となっている。
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(エントランスの足跡クイズ)
とべ動物園の人気者 ホッキョクグマのピース
1999年に誕生し、国内初の人工哺育ということで注目を集めたホッキョクグマのピースは、とべ動物園でも不動の人気を誇る。一緒に生まれた2頭のうち1頭は生まれてすぐに死亡してしまったそうだが、ピースは飼育員さんたちに見守られて現在も人工哺育の記録を更新中。現在18歳のピースは「てんかん」を患っているものの、訪れた日も元気な姿を見せてくれた。大きな体でプールに飛び込み、気持ちよさそうに水に当たる姿は本当に愛らしい。
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(シロクマのピース)
充実のエサやり体験 とべ動物園の動物舎の前には、小さな自動販売機のようなものが設置されている個所がいくつかある。これは動物のエサ販売機で、お金を入れるとその動物のエサが出てくる仕組みとなっている。もちろん動物の食べる量には限りがあるので数量限定、早い者勝ちとなる。20種類以上のサルが展示されているモンキータウンでは、100円でエサを購入し、好きなサルにエサやりを楽しめる。1988年の開園当時からの人気アトラクションとのことで、サルのアピール合戦が見もの。さらに、来園後一番最初に訪れる人も多いカリフォルニアアシカのエサやりも外せない。200円で豆アジ2匹を購入して柵の前に立つと、アシカたちの興奮ぶりがとにかくすごい。今回は見られなかったが、エサをもらうためにジャンプして柵の間近まで上ってくるアシカの姿は、たびたびTVでも紹介されているそうだ。
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(アシカのエサ自販機は魚2匹)
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とべ動物園ホームページ(https://www.tobezoo.com/animals/idol/2016/11013400.html)より
大迫力!ライオンウォッチング
毎日14:30から開催されているライオンウォッチングは、普段は見られないライオンの激しい一面を「ウォッチング」するというもの。
開始時間近くにライオン舎に行くと、すでにガラス張りの向こうでメスライオンがうなり声をあげている。いわゆる、獲物に飢えた猛獣の鳴き声。イベントのことを知らなかった人たちも、「なんだ、なんだ?」と近寄っていく。おびえて泣き出してしまう小さな子供も。
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この獰猛なメスライオンの名前は「デイジー」。かわいらしい名前とは裏腹に、とべ動物園でも1、2を争う「やる気」の持ち主とのこと。ガラスの向こう側の天井にエサを落とす穴があり、飼育員さんがそこから肉を落とすのだが、穴の近くのガラスはデイジーの爪痕で傷だらけ。
早く肉をよこせと、ガラスのこちら側にいるお客さんにまで牙をむいて吠える、吠える。
穴に向かって後ろ足で立ち上がる時の足や肩の筋肉、爪の鋭さ。普段動物園で見るライオンは木陰で寝そべっていることが多いだけに、これは必見だ。
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ペンギンのお食事タイム。飼育員さんのトークも最高!
とべ動物園には大きなペンギン舎があり、フンボルトペンギンたちが泳ぐ姿をガラス越しに見ることができる。
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1日2回行われる「お食事タイム」は、飼育員さんの楽しいトークつきの人気イベントだ。
まず観客全員のココロを奪ったのは、飼育員さんの目の前にちょこんと立ってエサをおねだりする1頭のおばあちゃんペンギン。名まえは「465(しろこ)おばあちゃん」で、御年30歳。人間にすると100歳を超えるという。水中で魚を食べる気力・体力はすでにないため、いつもこうやってエサをもらうらしい。ちなみに、ペンギンの名前は全て番号制とのこと。
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飼育員さんが大胆に魚を水中にバラまくと、それまで隊を作って泳いでいたペンギンたちが一斉に乱れ泳ぎ、キャッチした魚を次々に飲み込んでいく。
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そして面白かったのは、飼育員さんが教えてくれたペンギンにまつわる話。ペンギンのカップルは、一度ペアを組むとどちらかが死ぬまで決して別れずに添い遂げる(水槽の横には、ペンギンにあやかった♥付きの撮影スポットも用意されている)、ペンギンの性別は人間にはわからないが、ペンギン同士は分かっている、など知らないことばかり。
最後に出されたクイズは、「ペンギンのお腹はなぜ白いのでしょう?」。
手を挙げて最初に答えた子供は、プロのカメラマンが撮影したペンギンのブロマイドをもらえるので、頑張って答えてみよう!
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このほかにも、とべ動物園にはいろいろな「体験」が待っている。
カバへのエサやり体験(200円・30名)、ライオン舎探検(300円・10名)、ポニーの乗馬体験(無料・10名)などの週末限定イベントのほか、モルモットやウサギに触れ合えるふれあい広場や、オラウータンが空中散歩するオランウォーキングタイムなどもある。
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(ふれあい広場)
また、夏休みなどの週末には「夜の動物園」が開催され、夜9時まで開園時間を延長し、普段見られない動物たちの姿を観察できる。今年の11月には、人気のグランピング(自然の中でありながら豪華で快適な滞在ができるキャンプ体験のこと)と動物園を組み合わせた「TOBE ZOO GLAMPING」も開催される予定。「夜の動物園探検ツアー」「夜のキーパートーク 」「モーニングツアー」など動物園ならではのアトラクションのほか、オシャレな食事や温泉施設へのの送迎までしてくれる。想像するだけでワクワクしてしまうくらい楽しそう!
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(サバンナエリア)
様々な体験を通して、動物について新しい発見の場を与えてくれる「体験型動物園」のとべ動物園。ただ見るだけでなく、もっと動物について知りたい!という人は、多くのイベントが開催される週末に訪れるのがオススメだ。
(moto)
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oriori-ki · 6 years
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第39回 『桐生が岡動物園』
都会の喧騒をはなれて
コンクリートジャングルの都会の喧騒を離れて、1時間と少し、高崎で乗り換えて桐生に向かう。支線電車の窓から眼下に流れる川をなにげなく見ると、清々しくきれいな水が気持ちよく目に飛び込んできて、爽やかな気分になる。関東平野のドまんなかは、青々と田園が広がり、のびのびと健康的に暮らせるのどかな街に移り住んでみたくなる。
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JR線桐生駅を降りて10分ほど歩くと、小高い丘の上の桐生が岡動物園南門に着く。門には扉もなく係りの人もいない。入園は自由なのである。入って左手に行くと事務所があり、案内地図などが並べてあった。園内地図を頼りに歩きだすと、目のまえの深い溝に囲まれた区画にタヌキがいた。
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タヌキはイヌ科でも?
目がクリッとしていて愛らしく、本州以南に広く生息しているイヌの仲間である。ころっとしているが、有名な館林の茂林寺の狸のように大きな腹鼓が打てるようなお腹はしていない。体長は50~60センチで、一夫一妻制で睦まじく、オスも子育てをする。
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イヌ科だけれども、イヌは穴掘りが得意だが、タヌキは苦手、逆に木登りは、タヌキはうまいが、イヌは登れない。また、イヌはトイレの場所を覚えさせてそこでフンをするようしつけるが、タヌキは自ら場所を決めてフンをする習性がある。複数のタヌキがするフンで山盛りになることがあり、これを「ためフン」と呼ぶ。というように、同じイヌ科でもこんなに違うという比較は、この動物園のブログの情報によった。
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しばらくタヌキのかわいらしいようすをながめていると、となりのケージに自然と足が向いてしまう。というのは、数羽いるクジャクが大きく美しい羽根を広げて見せているからだ。なんどもなんども広げたり閉じたり繰り返している。めったにお目にかかれないから、急いでシャッターを切ってしまう。羽を広げるのはオスである。
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インドクジャクのオスは2月から7月にかけて、メスにプロポーズするときに飾り羽を広げて気を引こうとのディスプレイをしていのだ。このきれいな飾り羽は上尾筒(じょうびとう)といい、恋の季節が終わる8月以降には、徐々に抜け落ちて尾羽だけになってしまうらしい。そしてまた11月頃から再び伸びはじめて、翌年の2月頃までには1メートルほどの美しい羽になって、春のプロポーズ季節に間に合う自然の流れになっている。
オスの首はきれいな青色だが、メスは首が緑色で、体全体地味な色をしている。これは外敵に見つかりにくい保護色なのである。動物園でクジャクを見ると、いつも羽を広げてきれいな姿を見せてくれるものと思ってしまうが、気に入ったメスがそばにいて、なおかつ恋の季節でなければ、きれいな羽を広げてはくれないのである。
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今日はちょうど恋の季節なのであった。
気持ちよさそうなカピバラ
大きなネズミであるカピバラがいるコーナーに行ってみると、飼育員のお姉さんが無心にカピバラを横にして毛繕いしていた。サルなどは仲間同士で時たましているさまを見るが、すべての生きものはときどき健康管理のために汚れや虫などを取ってやらないと長生きしない。カピバラも慣れているようすで、眠っているのか目をつぶって、まるで母親にしてもらって甘えているように、じつに気持ちよさそうな表情をしていた。
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浮かんだ丸太のうえに、カメが5~6匹集まってじっとして日向ぼっこしている小池があった。そのまわりをアヒルが連れだって泳いでいた。この池のあたりは高いところまで、クモザルの遊び場の鉄筋つくりのハウスになっていた。
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樹上生活をしているクモザルのために、太い金属製の柱には何本も綱がさがっていて、長い手でぶらさがって遊んでいる。狭い休み場所も設置されている。
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下からも上からも観察できるような作りになっていて、彼らクモザルの不思議なというか、おもしろいというか、その寝姿やロープにぶらさがって移動するさまが、いかにも楽しそうで見飽きることがない。
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寝そべった姿はなんともいえない形で、ユーモラスだ。じっとしているクモザルの目をのぞき込んでみると、なにか考えことをしている哲学者のような目付きだった。
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 クモザルはおもに中南米に生息していて、果実や種子・若葉・花・蜜などの食糧を求めて、一日中樹から樹へと移動し続け、その距離5キロメートルに及ぶこともあるという。
 たえず仲間を入れ替えて小さな集団をつくり、なわばりを作って生活し、オスもメスも体の大きさはさして変わらず、5~6歳で性成熟し、子供を産む。発情期には、オスはメスの尿を嗅ぎまわったりなめたりしてようすをさぐり、積極的にメスから働きかけることもあり、1日に3~4回も交尾することもある、との報告もある。
おしりに草を飾って歩くマントヒヒ
 体が黄色い眼のクリっとした小さなサルがいた。絶えず動いていてなかなかカメラに収まりにくい。野生種はペルーからブラジル北部の川辺に20~50頭の集団で生息しているリスザルである。体の大きさは30センチほどなのに、尻尾は40センチほどと長い。
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おもに果実や昆虫を食料としていて、1日のうちの70~80%を移動しながら採食している。なかなか野生で生きていくのはたいへんなことなのだ。
また、臭覚や聴覚がよく発達していて、敵つまり食肉獣や猛禽類の危険が迫ると、特徴ある大きな声を頻繁にあげて仲間とコミュニケーションをとって警戒するという。
 となりにマントヒヒがいた。狭い場所をたえず動きまわっていて活動家だ。かれらの野生種は、果実・木の葉・種子・昆虫類をおもな食糧としている。オリのなかには食べ残した草が散らかっていて、その上にちょこんと座るから、お尻には飾りのように草の屑がついている。ピンクのお尻に青い草、なかなか彩り豊かで、これもお洒落なのか? と笑った。
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 ここでは一夫一妻制のようだが、アフリカ北部からアラビア半島南部に生息する野生種は一夫多妻である。オスのからだの大きさは80センチほどで、頭はいい。
かれらは夜に寝るとき、敵に襲われないよう岩山や崖の斜面にぴったり寄り添って休息するという。そして動物園で生まれたマントヒヒにも、同じような習性が見ら���、壁に貼りつくような格好で休息する、との報告もある。
一見怖そうな顔をしているが、古代エジプト王朝では、聖なるものとして崇められており、パピルスにも描かれているそうだ。
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お昼寝中なのか、ニホンザル
 ムフロンがいた。地中海のコルシカ島・サルジニア島原産で、大きな角が生えていて一見獰猛な格好をしているが、牛の仲間である。家畜のヒツジの祖先といわれていて、人にも慣れて結構おとなしい動物である。
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動物園では飼育員さんが来ると集まったり、掃除をしていると親近感を持つのか後ろについて回ったりすることもあるという。その反面、なにか異変を感じると集団で走り回って驚きを表わし、警戒心も強いようだ。
繁殖期になるとオス同士で、この大きな角を突き合わせてメスの取り合いで争うこともある。まだ見たことがないが、さぞ壮観だろう。
 サル山をのぞいてみると、壁ぎわで並んでみな横になっている。岩のうえでもごろんと横になってたむろって寝ている。なかには岩から転がり落ちそうになっているサルもいる。いつものニホンザルらしく嬉々としていない。急に暑さが増したからだろうか。昼間だというのに、こんなにみんなが同じような格好で寝ている姿はめずらしい。
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 ニホンザルの生息地は青森県下北半島が北限、南は屋久島までである。食べ物は雑食でおもに植物性だが昆虫も食べる。芋を海水に浸して齧っているサルの写真をみたこともある。
ただし戦後の森林伐採や奥地開発などでニホンザルの生息地域は徐々に狭まって、里に近づいて畑などを荒らさざるをえなくなり、有害獣として何千頭も駆除されたこともあり、絶滅する方向に向かっているらしい。
 そういう話を聞いてみると、ここのサルさんはのんびり昼寝できて、彼らの欲するだろう自然がないけれども、エサは与えられるし仲間がいるし、ある意味では幸せなのだろうか。
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ともあれヒトを含めてすべての生きものとは、すべからく何かしらの障壁を乗り越えなければ生きていけないのだ、なんてね。
ライオンの子どもが去年生まれたばかり
 ところで、この桐生が岡動物園は昭和28年4月1日の開園である。
その主な業務は、1.動物の飼育・展示。2.動物愛護思想の普及。3.動物に関する調査研究および資料の収集。4.野生鳥獣の保護および救護、などである。
そして現在のところ、哺乳類20種174点、鳥類33種224点、ハ虫類10種19点をはじめ、計115種698点の動物が展示されている。ゆったりとした場所でとてもよい環境下にある動物園で、お近くの人は是非とも足を運んでいただきたい。
もうだいぶ大きくなってしまったがこの子ライオンは、生まれて10か月くらいである。父ライオンの名前はチャコ、母はライラ。子の名前はオスがオリト、メスがシルクとつむぎ。桐生は織物の名産地だから、ライオンの名前も因んでつけたという。
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夫婦2頭だったスペースのところがいきなり5頭になったので、手狭に見える。
子供のライオンは子供どうしで戯れているが、飽きてくると、ときどき父ライオンに遊んでくれと戯れていく。けれども、なんどいっても父ライオンはめんどうくさそうに無視して、そこらを行ったり来たり絶えず歩きまわり、知らん顔だ。それでも子ライオンたちが寄ってくるといい加減にあしらって、まるで自分の子供ではないような顔をしている。
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愉し気に遊ぶ子供ライオン兄姉妹と父母のライオンの様子をしばらくながめていたが、時間がいくら経っても見飽きない。見ていて気付いたのは、家族ならば父ライオンが無視していても、まったく違和感がなく感じられ、妙な可愛がり方をするより、それが本来の家族の姿なのだろう。ライオンに教わることもあるようだ。
フラミンゴもペンギンもいる広場
北門のてまえにはフラミンゴのケージがある。その前は広場だ。ゆったりくつろげる公園のようだ。ベンチに座ってお弁当を持参すれば、一日楽しく遊べる。
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北門に向かって坂道を歩いていくと、途中にペンギンがいた。フンボルトペンギンだ。小さな池は自分たちが出したフンなどですぐに汚れて水中のようすが見えにくくなってしまう。週に2~3度入れ替えるけれど、ペンギンは飛び込むまえにしっかりのぞき込んで、敵や危険がないか確かめるほど警戒心に富んでいる。
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よちよちと歩く姿を眺めているとユーモラスで愉しくなるが、泳ぎは達者で素晴らしく速い。目にもとまらぬほどのスピードで自由に泳ぎ回る。カメラにおさめようとすると、苦労するほどのスピードである。歩く姿と対照的だから、初めて泳ぎを見た時には驚いた。野生に生きるペンギンは、そうでなければエサも取れずに生きてはいけないことになる。
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 この動物園には先にも書いたように、現在115種の動物がいて、キリンもカンガルーもシカもヒツジもヤギもいる。ポニーもいるし、水族館もある。「こどもどうぶつコーナー」もあるが、今回は印象に残った動物たちを取り上げてみた。
 休日なしで入場自由の動物園だから、親子でなんども足を運んで動物に接して楽しみながら、動物愛護の心を育てていただきたい。
(磯辺 太郎)
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oriori-ki · 6 years
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第38回 『野生の王国 群馬サファリパーク』
●ダチョウとカメラ
 あっという間でした。手にしたカメラをひったくられたのは。いや、その瞬間は何がおこったのか、皆目わかりませんでした。
 それは、ダチョウを撮影していたときのことでした。人慣れしているのか、あるいはエサをくれると思ったのでしょうか。柵の中で1羽だけ展示されているダチョウが歩み寄ってきて、柵の上から長い首を折り曲げ、ギョロリとした目をむきだしにしたまま私に顔を近づけてきたのです。
「これはいいチャンスだ、ダチョウの顔の大アップ写真を撮ってやろう」
 少しでも間近な顔を撮影しようと両手を前に突き出してカメラを構えました。そのときです、突然、ダチョウがカメラにぶらさがっていた20cmほどのストラップを大きなくちばしで咥えてカメラごとひったくり、そのまま後ろ向きにブーンと振ったのです。そして数回大きく首を回すと、咥えていたカメラを放り投げました。
 ガシャ、カラッ、カラッン
無情にもカメラは地面を転がっていきました。柵の中です。
「ああっ、カメラが」、近くにいたお子さん連れの若いお母さんが悲痛な声をあげました。私は、あっと言う間のできごとにあっけにとられ、声もでません。         
 やっと我にかえった私は近くにあったホウキでカメラを柵の中から掻き出しました。慌てて液晶モニターを見ると、「SDメモリーカードが損傷しました」と、埃と傷だらけになった画面に表示が出ています。
「今朝から撮影した写真が全部だめになったか、今からの撮影もできないのか」と、目の前が真っ暗になりました。
「壊れちゃったんですか」、若いお母さんものぞき込みながら心配してくれています。
「……はぁー、どうもそうらしいです」
 しかし、奇跡的にカメラは大丈夫でした。「念のため」といったん電源をオフにして再起動し、撮影データを再生してみると、すぐ目の前に迫ったダチョウの大きな顔は映っていませんが、それまでのデータは無事でした。自動的に閉まるレンズキャップが痛んでいてきちんと作動しませんが、新たな撮影もできます。そのまま取材が続けられます。
 改めてダチョウに目をやると、柵のすぐ側に「ダチョウは好奇心が強く、なんでもエサと思ってくわえる習性がありますので、手にもったタオルや小物、ヘア用品など、物を取られないようにご注意下さい」と注意書きが掲げられていました。
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この直後に私のカメラを奪い取ったダチョウ
●群馬サファリパーク
 富岡製糸場といえば、多くの人が中学校や高等学校の歴史で教わった記憶があるでしょう。明治のはじめ、西洋諸国に追いつこうと時の政府が殖産興業の一環として建設した国営の製糸工場です。2014年に世界遺産に登録されたことは記憶に新しいと思います。その製糸場のある群馬県富岡市の郊外の山に36万平方メートルもの広大な面積を占めて1979年に開園したのが、民営の群馬サファリパークです。全国で5番目、東日本では初めての開園でした。
 群馬サファリパークは大きく二つのエリアに分かれます。いうまでもなく一つは動物園の「サファリ・エリア」、もう一つは「アミューズメント・エリア」と名付けられた子供用の遊園地です。ミニのジェットコースター、「サファリ列車」と名付けられたミニ鉄道、メリーゴーランド、大観覧車などがあります。今回の取材目的は動物園ですので、ここでは紹介だけにとどめておきます。
 サファリ・エリアでは山の起伏や傾斜を利用して、約100種の哺乳動物や鳥類が1000頭羽も飼われています。その全てではありませんが、たくさんの哺乳動物や鳥類が自然のままに放し飼いにされているのが特色です。このエリアは、アジアゾーン・アフリカゾーン・アメリカゾーンなどのように大陸・地域別に動物が展示されている区域のほかに、おそらく当園の最大の目玉である、トラゾーン・ライオンゾーンが独立して設けられています。
 訪れた日にちは5月26日、初夏の快晴の土曜日でした。そのためか、動物園入口前にある第一駐車場にはたくさんの乗用車がおかれ、大型観光バスもひっきりなしに到着します。駐車場は第三まであります。サファリパークの入園料金は大人一人(高校生以上)2,700円、子ども一人(3歳から中学生)1,400円ですが、それに見学コースによって異なる乗車料金が加わります。園の運行するコースのうち、シマウマの柄を施した大型バスに乗って定められた道から見学する「サファリバス」コースは一人500円、トラやライオンなどの形をした中型のバスに乗って草食・肉食動物にエサを与える「エサバス」コースはエサ付きで一人1,300円、オフロードカーで時には道から外れて動物に大接近する「レンジャーツアー」は、草食動物用のエサも付いて一人1,300円となっています。
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エサバスコースのライオンバス
 これらのコース以外に自分の乗ってきた自動車でそのまま園内に入って見学するマイカーコースもあり、その場合、「ガイドラジオ料金」として1台につき500円が加算されます。もちろん、オープンカーやトラックなど、安全でない車は園内に入れませんし、園内で車の窓を開けたり、車外に出ることは禁止されています。以前、車外に出て動物に襲われたケースもあります。これらは絶対に守らなくてはならないルールであることは言うまでもありません。「群馬サファリパーク入園のご案内」には、こうした注意事項のほかに「如何なる場合も動物による車の被害には、当園は一切の責任を負いません」とも明記されています。あとで飼育員さんに聞いた話では、こうした実例は「動物のほうが慣れていて」めったにないそうですが、相手は野性をもつ動物であることを忘れてはならないでしょう。  
           ●オフロードカーに乗って見学
 どのコースにするか、一思案後、私は「レンジャーツアー」で見学することにしました。このコースは、土・日・祝日のみの運行です。他のコースはおよそ20分ごとに運行されていますが、この「レンジャーツアー」は、30分あるいは時間帯によっては60分ごとの出発で、コースを90分ほどかけて一回りします。
 オフロードカーには5,6人の見学者が乗り込めますが、10時30分発には、ご夫婦の二人連れ、私のつごう3人が乗車し、運転手兼ガイド役として若い女性の大槻さんが乗り込んできました。
「サファリーバス」や「エサバス」のコースは山の起伏をくねくねと縫うように舗装された道に沿って運行されます。一方、「レンジャーツアー」のコースは、オフロードカーで舗装された道から外れ、動物の放し飼いにされたエリアにも入り込んで行き、上下左右に激しく揺れることもあります。しかし、すぐ目の前でみる迫力のある動物の姿態は格別でしょう。
 入園ゲートをくぐると、すぐにキリン、エランド(ウシの一種)などの草食動物がいます。車が近づくと、彼らは慣れていて、一直線に駆け寄ってきて車の窓にはられた金網の隙間から口を差し込んできます。金網の幅は数センチ四方なので口といっても唇だけですが。彼らは見学者の持つエサが目当てです。「レンジャーツアー」にも2束の草がエサとして付いてくるのです。エサを隙間から差し出すとすぐに食いちぎります。金網があるとはいえ、人の顔と動物の顔がくっつくほどの至近距離です。ものすごい鼻息と唾が私の顔に飛んできます。
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オフロードカーに近づいてくるエランド
 しきりにエサをねだって車に近づいてくる彼らを見送り、お尻の縞柄色の薄いチャップマンシマウマや2.5トンも体重があるシロサイを間近に眺めながら、オフロードカーはつぎのエリアへと進みます。左側の急な崖のような斜面の端にバイソンの群れがいます。かつてよく観たアメリカの西部劇映画(最近はすっかり制作されなくなりました)には、草原を馬で疾駆するカウボーイの背景によく映っていましたから、バイソンには見覚えがあります。間近でみると、その大きさに圧倒されます。大槻さんの説明によると1トンくらいにもなるとか。でも映画とは違い、ここのバイソン、どれもがよれよれに破れかかった衣服を着ているかのように、体の半分ほどは長い毛が抜け始めてボロボロに垂れ下がった情けない格好です。
「ちょうど今、毛が冬用から夏用に生え代わるときなんです。今日は快晴でまだいいんですが、梅雨の時期になると、抜け切らない毛が雨と泥に濡れて体にへばりつき、もっとみすぼらしくなります」
「彼らは繁殖期になるとオスを中心にハーレムをつくり、オスの周りにメスを侍らせます。しかし、子育て中はメスが強くなります。『あなたはあっちに行ってて』と。人間とおなじですよ」
と大槻さん。
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エサに釣られてきた毛の生え代わり最中のアメリカバイソン、鼻息が私の顔にかかる距離
●ニホンゾーン
 次の日本ゾーンへと入っていくと、ニホンジカが数頭ゆったりとエサや草を食んでいます。シカそのものはそんなに珍しくはありません。そのすぐ側にあるニホンザルのゾーンに目が行きます。岩の上や樹下にサルたちが思い思いに毛繕いし、追いかけっこしてはしゃぎ合っております。でも、得意なはずの木登りをするサルは見当たりません。よく見ると、植えられている樹木のそれぞれの根元にはなにやらコードが巻き付けられています。
「あのコードには電気が流れています。放し飼いにしてあるので、冬に食料が不足すると木の皮を食べてしまうので、その防止のためです。もっとも今はたんなる脅しで電気は流れていません。彼らは学習能力が高いので同じような痛い目には二度とあわないのです」
 この案内役兼運転手の大槻さん、説明する動物たちのあたかも姉か母親のような口ぶりで、「彼ら」とか「あの子たち」などと丁寧にわかりやすく、しかも人さまの在りようを例えにしてユーモアをもって説明してくれます。その口ぶりの後ろには動物に対する深い愛情や尊敬さえも持ち合わせているのだと感じます。本当に動物たちが好きなのでしょう。
 なお、ニホンザルの放たれている周囲には高い板囲いが作られています。ただ高いだけではありません。なんせ身の軽いサル君たちですので、彼らが勝手に園外に遊びにいけないようにと、その一番高いところには彼らでも手がかりのないツルツルのブリキやアクリル板が内側に向けて斜めに取り付けられています。
 ニホンザルの反対側にはツキノワグマが2頭、岩の上に寝そべっています。その一画は針金の柵で囲まれていますが、柵はわずか2,3本の針金で張られており、高いものではなく、その間隔も広く、しかも簡単です。とてもクマを囲い込んでいる柵とは思えません。これには都会人は気づかず、あるいは気にもとめないでしょう。実はこれは電気柵なのです。この電気柵、昨今の農山村では秋に普通に見られます。農山村では、人口減少にともない、人の住む領域と山の領域を併せ持っていた里山が消滅した結果、本来は山深く棲息していたイノシシやシカなどが人間の領域まで侵入し、畑や水田を荒らすようになってきました。その防御のために、各地の農山村で山と田畑の境目に設置されているのです。このサファリパークでは、2年ほど前にツキノワグマによって従業員が不慮の事故に遭っていますので、念を入れて設置されたのでしょう。
●ウォーキングサファリゾーン
 ニホンゾーンを過ぎると、10m以上はある高い鉄の柵で囲まれた一画に出ます。その出入り口には、バスも通れる高さの大きな鉄柵のドアがあり、それも二重になっています。見学者はこの前で車から降り、係員の指示に従って中に入ります。車の中から放し飼いの動物を観察するサファリですが、このゾーンだけは普通の動物園のように檻に入った動物を見て回ります。
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��ォーキングサファリゾーンでの動物とのふれあいコーナー
 このゾーンには、チリーフラミンゴなど鳥類、ミーアキャットなどの小動物、アカテタマリンなどサルの仲間、ラマ・シカ・ヤギなどの草食動物がたくさん展示されています。テンジクネズミなどの愛玩動物と子どもたちが触れあえるコーナーもあります。
 しかし、何と言っても、子どもたちの人気が高いのは、ライオンやホワイトタイガーのエサやりでしょう。3cmほどの大きさにカットした肉片が5,6個入ったエサが販売されており、それを長い鉄製の火ばさみのような器具に挟んで檻に設けられた専用の窓から中に差し入れるしくみです。窓は1mほどの高さにありますので、ライオンたちは二本足で立って窓に取り付きます。エサをやる人のすぐ目の前に、大きな鋭い牙をもつライオンやホワイトタイガーの口が迫り、グォッ、ヴォーッと鼻を鳴らし唾を飛ばしながら肉に齧りつく迫力は相当なものです。大勢の子どもたちが火ばさみを持って、「ライオンさーん」「トラさーん」と黄色い声で呼びかけたり、「怖ーい」とお母さんの後ろに隠れいったりしています。
 そうそう、冒頭に紹介した、カメラをダチョウに奪われた話もこのゾーンでのことでした。
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エサに齧りつくホワイトタイガー(ウォーキングサファリゾーン)
●アジアゾーン
 ウォーキングサファリゾーンで30分ほどを過ごして、再び車に乗り込み、アジアゾーンへと向かいます。そこにも、ニホンジカが群れている一画があります。シカたちは勝手にテンでバラバラにいるように見えますが、よく観察すると、数頭で小さなグループをつくっており、グループごとに一定の方向に頭をそろえて並んだり円陣を組んだりしています。あるグループはずらりとこちらにお尻を向けて、同じリズムでしきりに尻尾を振っていました。
「オスのニホンジカにある角は年に一度生え代わります。この角は堅くて鋭く危険なので、奈良公園では人為的に年に一度切り落としています。角のある間のオスは気が強く、時にツキノワグマさえ攻撃します。でも角が落ちると、とたんに落ち込んでしまい、しょんぼりとして気の毒です。今のシーズンには赤ちゃんジカがたくさんいるんですが、見当たりませんね。実は、シカには赤ちゃんを藪の中などに隠す習性があります。ここでもあのU字抗や岩陰にいますので、よく見て下さい」
と、ガイドさん。
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人工的な木のほこらにジッと座っている赤ちゃんジカ
 なるほど、岩の隙間やU字抗などの薄暗い中に小さなシカたちがじっと座っています。「藪などに潜んだ赤ちゃんジカはお母さんが呼びにこなければ絶対に出てきません。そのため、お母さんが事故にあって来られないときなど、潜んだまま餓死したり、雨に濡れて体温を奪われて命を落としたりする赤ちゃんもいます」。赤ちゃんがそれほどまでに産んでくれた母親を頼りとし、母親がそれに必死で応えるのは動物の本能であろう。が、顧みる人間世界では、自己の欲望やわがままのために我が子でさえも虐待し、時には死に至らしめるニュースのなんと多いことか。自然のなかで培われてきた"動物としての本性"を捨て去って、己の欲望だけに生きようとする"人間の不条理"を嘆かわしく思う。動物園は動物の姿に仮託した己自身を見つめ直す場所でもあるのです。
 ヒトコブラクダやスリランカゾウを見やりながら、「ラクダのコブには水が入っているわけではありません。脂肪の塊で、この栄養分を使って砂漠でも一ヶ月は生きられます。そんなに知られてはいませんが、足の裏もぷにょぷにょしていて柔らかいんです。ゾウの妊娠期間は二十二ヶ月です」などと、相変わらずサービス精神旺盛な大槻さんのガイドに耳をかたむけながら、車は進みます。車の左方にたくさんのバイソンがいます。先ほどは崖の上の方から見たアメリカゾーンを今度は下方から見上げるのです。バイソンたちは、先日の雨でぬかるんだ泥を気にもせず、そこかしこにたたずみ、寝転び、思い思いに過ごしています。その中に今年春に生まれた赤ちゃんが2頭ほど親の陰に見え隠れしていました。
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群れ集うアメリカバイソンたち
  ●猛獣ゾーン
 車は猛獣のトラゾーン・ライオンゾーンへと進んで行きます。トラゾーンでは、大岩の上に夫婦でしょうか、2頭のホワイトタイガーが大きな肢体を投げ出したまま首だけをもたげてこちらに鋭い視線を向けてきます。ホワイトといっても真っ白ではなく、薄い墨茶色のトラ模様があります。
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放し飼いのホワイトタイガー
 車が左方向にハンドルを切ります。すると、木の下に、岩陰に、木組みの台の上にと、あちこちにライオンがたむろしています。そのほとんどが立派なたてがみを持つオスライオンです。
「自然界では、普通、ライオンは一頭のオスライオンと数頭から十数頭にもなるメスライオンたちとで一つの家族を構成しています。これをプライドといいます。狩りをするのはメスライオンの仕事です。でも、ここでは狩りの必要がないので縄張りを争うこともなく、ああして複数のオスライオンが一緒にいます。あっ、ちょうど今、エサバスがこちらに来ましたので、エサをたべるシーンが見られると思います」
と、ガイド兼運転手の大槻さん、ガタンと舗装道路を外れて、木の下や岩陰、台上のライオンにと車を急接近させます。窓ガラスに自分のたてがみが触れるほどに車に近づかれても、ライオンは意に介しません。
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オフロードカーの窓に体毛がくっつくほどの距離
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樹下にくつろぐオスライオンたち
 やがてエサバスが停車します。もちろん舗装された道路上です。するとライオンたちが一斉にバスに向かいます。
「わーっ」
「きゃぁー」
 バスの乗客から興奮に満ちた歓声があがります。窓に付けられた金網の間からエサの肉片を挟んだ金ばさみが突き出されていて、ライオンが、オスもメスもが折り重なってそれに食らいついているのです。グヴォー、ヴォーッと腹に響くような低く力強い唸り声をあげながら、バスのエサやり用の小窓に群がり集うライオンたちの迫力の凄まじさ、これがサファリパーク形式の動物園の真骨頂でしょう。
 ガイドの大槻さん、巧みにハンドルを操ってオフロードカーをライオンの鼻先にくっつけるようにして、ライオンの行き先もコントロールしています。「運転が上手くないと彼らにばかにされるのです」。こうした運転技術は、ライオンの群れ全体を管理するうえで必須で、新入社員の研修、訓練でも義務づけられているそうです。
 ところで、放し飼いのトラとライオンを分ける柵らしきものは見当たりません。
「実はトラもライオンも水がにがてなのです。わざわざ水に入ることはしないそうです。そこで水たまりを設け、それで区分けできるのです」
●アフリカゾーン
 起伏では上下に大きく揺れ、急カーブでは左右に激しく振られて、車は最後のアフリカゾーンに入って行きます。ここには、アフリカ水牛、チャップマンシマウマ、エランドなどの草食動物が水辺や小高い岩山などにかたまりになって飼育されています。
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アフリカゾーンにいるアフリカ水牛
 そのなかに数羽のダチョウが頭をツンツンと小刻みに動かして群れています。その大半が、お尻の羽が抜け落ちて地肌が丸出しです。
「気の毒ですが、ダチョウの羽は根元から抜けるとすぐに新しい羽が生えてくるんですが、途中から折れたようになって根元が残ると、すぐ生えてこず、ああした姿のようにお尻丸出しの恥ずかしい格好になるんです。他の鳥のように番で子どもを産み育てるのではなく、メスは何匹もが同じ巣に卵を産みます。で、あとは知らんぷり、オスが卵を温めるのです」
 このようにガイドの大槻さんの動物への愛情たっぷりの、そしてユーモアのある解説と巧みな運転に魅せられて、レンジャーツアーのコースはあっという間に終了したのでした。
 このサファリパークで観察できた動物たちは、どれもがその魅力と愛らしさを振りまいていました。四季それぞれに異なった姿もみせてくれることでしょう。とてもそのすべてをここで語り尽くすことはできません。あなたも足を運んでみてはいかがでしょうか。
(緒方三郎)
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oriori-ki · 6 years
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第37回 『秋吉台自然動物公園 サファリランド』
秋吉台の広々とした大地に
 土曜の夜はホテルが混んでいて早めに予約を入れたが、山口市内に泊まれずに隣町の厚狭に泊まり、乗り換えが多いため早めに起きて、急いでサファリランドに向かいました。新山口からバスで秋芳洞まで乗り、そこからサファリランド行きのバスは便数が少なく、タクシー利用で行くしかありませんでした。
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 近間の住人ならマイカーで行くのがいいのです。そうすれば放し飼いになっているサファリゾーンへもマイカーで入れて、身近に猛獣たちと会えるのです。
 タクシーは、秋吉台のゆったり凹凸した広大な緑の丘陵をどこまでも走っていきます。やっと広い駐車場に入ると、その向うにレンガ色の屋根の大きな建物が見えました。大きなゾウやキリンの像があるサファリランド売店兼レストランの正面口に着くと、タクシーの運転手が、
「着いたよ。そこのガラス戸の正面からなかに入ると切符を売っているコーナーがあるよ。そこで入場切符やエサやりバスの切符を買うといい」
 ぶっきらぼうな口ぶりながら、初めて来たお客さんに要点を一言で教えてくれます。いつもいうセリフなのでしょう、タクシーを利用する慣れないお客さんは多いようです。
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 他の公営動物園と雰囲気が違っていてなんとなく戸惑っていたので、この一言が嬉しく、安心してなかに入っていきました。建物のなかは広々としていて、お土産売り場やレストランがあって、家族連れでたいへんな賑わいでした。
 切符を買いながら、係りのお姉さんに帰りのバス時間や乗り場を訊くと、じつに丁寧に教えてくれました。なおかつ、エサやりバスの時間を1本早めてくれたうえ、
「そう、今日は帰りのバスが夕方までないから、このエサやりバスから帰ってきたら、急いでバス停で待っているといいわ」
と、時刻表を見せてくれ、帰りの路線バス停のありかを教えてくれました。
 それでも、エサやりバスは人気があって、待ち時間は長く、順番が来るまでまだ2時間ほどあります。帰りのバスに乗り遅れては一大事だから、その足であらかじめバス停を確認しておき、待ち時間の間に遊園地ゾーンの先にある「動物ふれあい広場」に足を向けました。
めったにできない自由なふれあい
 「動物ふれあい広場」は、サファリゾーンとは別に動物と親しめる工夫があります。2重になった扉から囲いのなかに入ると、カンガルーやヤギがたくさんいて、休日とあって多くの子供連れの家族がエサをやったり、頭をなでたり、子供と一緒に写真を撮ったり、ほかではめったにできない動物とのふれあいを楽しんでいました。
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 子供たちはごく身近に自由にふれあい、怖がりもせず、動物たちのぬくもりをじっくり味わったことでしょう。親御さんたちは慣れた手つきで子供たちを誘導しているように見え、なんどか足を運び経験済みなのでしょうか。
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 この囲いのすみにある小屋には、お腹の袋のなかに子どもを入れて横になって寝ているカンガルーがいました。具合が悪いのか、ただ寝ているだけなのか判別できませんが、袋状のお腹の大きさに驚き、初めて目にする光景をカメラにおさめておきました。
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  さて、その囲いから出て、この周りに点在するオリには、ホワイトライオンやホワイトタイガー・アフリカハゲコウ・レッドパンダ・ラマ・シロウマ・オリックス・マルミミゾウ・バーバリーシープ・カピバラなどなど、かなりな種類の生きものがいました。けれども彼らすべてにはふれあうことができるわけではありません。
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果敢に野生のトリを飼いならす素晴らしい実験
 このなかでアフリカハゲコウ(下のトリ)という肉食のコウノトリの仲間がいました。このトリの大空を雄飛する姿が眺められたことがあるそうです(現在行われているか否かは未確認)。アフリカハゲコウのプロジェクトチームを作り、フリーフライト、つまり広い園内の小高い丘から丘へ翼を広げて自由に飛ばせて、なんども実験を繰り返して、ついにはその雄飛を観客に見せてくれたのです。
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 それは見事に成功して、アフリカハゲコウはたいへんな人気を博しました。スタッフの笑顔と鳴らすホイッスルの音だけが彼らを指示する道具で、あとは鶏肉や牛肉などのお気に入りのエサでもと居た場所に戻すという、野生の生きものを飼いならそうとするかなり困難な離れ業でした。
 この難易度の高い観客サービスは好評を博してしばらく行われていました。ところが、ある日突然、アフリカハゲコウは自由を覚えたのか、残念なことに大空をまさに自由に翼を広げてどこかに飛んで行ってしまったそうです。
 担当飼育員はあちこち探しまわり、なかなか見つからず、しばらくしてやっと人づてに情報が入り、遠く離れた近畿地方の田舎町まで急遽出かけて行き見つけ出します。やっとの思いでやつれた姿のアフリカハゲコウを動物園に戻しました。その後も再び自由を謳歌してべつのどこかに飛んでいったそうです(これも探し出して帰ってきました)。
「大空を大きな翼を広げて飛んでいる、そういう姿を見てみたいんだよ。何でやめちゃうのか、続けてほしいな!」
 そう、つよくお客さんは勝手に思うかもしれませんが、新しい工夫でたいへんすばらしい実験には、舞台の裏側ではいいつくせぬ苦労があるようです。なにごともなかったような顔つきして小さなオリに静かにたたずんでいるアフリカハゲコウを眺めながら、『動物翻訳家』(片野ゆか著 集英社刊)で読んだすばらしい苦労話を思い出しました。
 ちなみにこの名著には、他にペンギン・チンパンジー・キリンについて、たいへん興味深い話がじっくりと記されています。動物園に行くまえに読んでいくと、動物たちの見方は無論のこと、飼育員さんたちのことも、一歩ふかく見えてくるかもしれません。
さー、エサやりバスに乗ろう
 時間になるとほぼ予定通りにエサやりバスは来ました。バスの正面には子供たちが喜びそうなユーモアあふれるライオンの顔があり、楽しみが大きくふくらんでくる雰囲気じゅうぶんです。子供ばかりではなく初めて経験する人にとっても、猛獣たちがどんな顔を見せてくれるか、胸が躍ります。
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 順番に乗り込むと、見やすいように大きな窓に向けて両面にイスが並んでいます。下部がオリになっていて開閉口から、エサを挟むながい道具(ハサミ)で寄って来た動物にエサを与えるのです。だから子供も大人も安心して猛獣にもエサをあげることができます。
 係りの若いお姉さん運転手が、エサやり口の扱い方やエサ箱のエサの数など細々と説明してくれたあと、手はじめにおとなしい草食動物のシマウマからエサやりを開始しました。おとなしくても大きいからか近くによると迫力があります。
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 幼児のなかには、あまりに近くに寄ったシマウマの顔に驚いて、泣き叫ぶものも出てきます。親御さんやお祖父さんは笑いながらも、なだめるのに大わらわでした。
 シマウマからバスを移動させて、放し飼いになっているゾウやサイを見せてくれます。すべての生きものにエサをやれるわけではないようです。たとえばゾウなどは大きいし力も強いし、長い鼻で乗客に危害を加えかねず、危険をともなうからでしょうか。
 観客のマイカーが通って行きますが、窓を開けたりエサをやったりはしていないようです。そばを通って身近に観察するだけで、危険な行動はしません。ゾウのほうも慣れているようで、半ば無視しているようです。
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 遠くにサイが尻を向けて横になって砂遊びをしているのが見えました���、しばらくすると起き出しました。どうやら砂遊びに飽きたらしく、向うを向いたまま歩きだして遠くの木陰に見えなくなりました。
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クマさんが遊びをやめてエサやりバスにごあいさつ
 またエサやりバスがさきに進んでいくと、池の周りにクマがあちこちに見えます。バスが通るとクマはエサがもらえることを知っていて、近くに寄ってきます。伸びあがってなにかしています。クマの顔がすぐそばに見え迫力がありました。一生懸命なことがわかりますが、はじめは何をしているのかわかりません。
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「バスの外側に蜂蜜入れが備えてあります。バスが来ると彼らはちゃんと、蜂蜜がなめられるのを知っていて、寄って来るんです」
 運転手のお姉さんが説明してくれたので、蜂蜜をなめていることがわかりました。
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 なかには、エサやりバスが通るとわざわざそばに寄って愛嬌をふりまくクマの姉妹?がいました。蜂蜜をいつもくれるエサやりバスがお気に入りなのでしょう。運転手のお姉さんのマイクを通した大きな声を聞きつけて、すぐそばまで駆け付けて2頭のクマさんが仲よくじゃれながら、お客さんに立ち姿のいい顔を見せてくれました。
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 けれどもエサやりバスとクマのあいだには金網の柵があって、近くには来られません。しばらくじっとバスのお客さんを見つめながら、クマは腕をこまねくような格好で立っていました。バスが過ぎ去るまで、残念そうな、騙されたような顔を見せてくれました。めったに見られないじつにかわいらしい縫いぐるみのようなポーズでした。
「かわいい顔をしているでしょう。クマさんが、みなさんにごあいさつに来てくれました。またこんど、おいしいものをあげるからね!」
 いつものことなのでしょう、元気のいいお姉さん運転手はマイクを通して、クマに向かって呼びかけながら進んでいきました。
百獣の王ライオンがエサをぱくついた
 精悍な格好をした3頭のチータが、車を運転してそばまで来た飼育員からエサをもらっています。肉食性で足も速くすばしっこそうですが、金網で区切られたところにいるのは、おそらく一回り大きなライオンとは、生活する場所を別にしたほうが安心して暮らせるからでしょうか。
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 向うの原っぱには百獣の王のライオン数頭が憩うようにたむろして寝転んでいます。エサやりバスが近づくとエサがもらえることを知っているらしく、どこからともなくのそのそとやってきます。
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 だいたいどこの動物園でもライオンは1頭か2頭しかいないので、群れを成して生きていることに気付きません。ふつうオス1頭と数頭のメスと、その子ライオンとで群れをつくり、メスが狩りをしてエサを捕り、オスはナワバリを守る役割をしているそうです。
 メスの牙の長さは7㎝、爪の長さも7㎝もあり、イボイノシシなどエサになる生きものを逃がさないようにチームを組んで取り囲み餌食にします。ときにはキリンでもゾウでも、代わるがわる背中に飛び乗って執拗に牙と鋭い爪とで集団で襲い、餌食にするのです。
 オスのタテガミは黒っぽく濃い色が強い象徴で、メスに好まれて子をなす相手に選ばれます。生まれた子供のオスはタテガミが立派になると群れから出されて、しばらくオス仲間と狩りをしてエサにありつき、放浪の旅で暮らしていくそうです。
 そばに来たライオンにエサをやりました。大きな口を空けて、あっという間に飲み込むように食べてしまいます。肉のひとかけらでは食べた気がしないでしょうが、もらえるだけでいいのでしょう。みながハサミに用意した一口のエサを、なんども黙って食べてくれました。
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 エサをやることで会話したような感じになり、親しみを感じます。そばでながめると迫力に富み、やっぱりライオンはいい顔をしているな、と眺めてきました。
岩に上ってポーズをとってくれるトラ
 ライオンのつぎはトラです。草原で小用を足しているトラもいましたが、岩のうえに乗ってエサやりバスのお客さんの目の高さから見やすくポーズをとっているトラがいました。
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 むろん飼育員さんの指導でしょうが、サービス満点です。
 エサはすでにみな与えつくしてしまいトラの分はありませんが、別に���ラは文句をいいません。「エサなしバス」はしばらく止まって鑑賞させてくれました。
 そばで見ると、じつに大きく縞目がきれいです。鋭い眼を見ると澄んだ聡明そうな顔をしていて、よく人になれているせいか、威圧感がありません。まるで生きている美術品を見ているようです。だからこそ、虎の毛皮の敷物が古来人気あるのが肯けます。
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 こんなにすばらしいトラは、かつては地球上に10万頭もいたのに、自然破壊や獲物の減少などによって、いまや4000頭にまで激減し、絶滅寸前のありさまだそうです。そのため世界の動物園では、いろいろな絶滅種の繁殖に力を入れているそうです。
 という間に、名残り惜しくもほぼサファリゾーンを1周して、エサやりバスは終点に戻りました。迫力にとんだ猛獣たちとお別れです。1時間足らずのサファリの旅でしたが、幾度となくしてみたい、野生的な猛獣たちとの「会話」ができるすばらしいひとときでした。
 もとのレンガ造りの建物にもどったあと、紅葉しはじめた秋吉台の美しい景色が窓いっぱいに広がるレストハウスで晩い昼飯を摂ったのでした。
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 そして、まだまだゆっくり遊んでいたかったのですが、本数の少ない帰りのバスが来てしまうので、あたふたとサファリパークをあとにしました。また来たいな、クマやライオンやトラにエサをたっぷりあげてみたいな、と後ろ髪ひかれる思いで帰途についたのでした。
(磯辺太郎)
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oriori-ki · 6 years
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第36回 『京都市動物園』
●大混雑の京都と京都市動物園
 京都の街はどこに行っても人であふれていました。2017年11月19日の日曜日のことです。嵐山や市内各地にある神社やお寺の境内で楓が深紅に染まり、見頃を迎えていることに加え、開館120周年を記念した京都国立博物館の一大イベント「国宝展」(10月3日~11月26日)が開かれていたのです。駅も電車もバスもレストランも大混雑でした。
 そうした街の喧噪のなかにあって、ここ京都市動物園は子どもたちが主役でした。子どもたちの手を引き、肩車をした若い夫婦や家族連れの入園者でいっぱいでした。日差しがあったりときおり小雨が降ったりする少し肌寒い日でした。
 京都市動物園は左京区の岡崎公園内にあり、北は二条通り、南は琵琶湖疏水に挟まれてあります。歴史的にも由緒のある一帯で、かつて平安時代に白河天皇が建立した法勝寺もここにありました。園内にその記念碑が建てられています。周辺には平安神宮・南禅寺、京都市美術館、琵琶湖疏水記念館などもあります。また、明治時代に日露戦争開戦を決めた会議場所、山県有朋の別荘無鄰菴(むりんあん)もすぐ近くです。
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京都市動物園内にある法勝寺の碑
 大人の一般入場券は一人600円、中学生以下は無料、団体割引や年間入園券もあります。園内に入ると、日本庭園をモチーフにした池や築山がいくつも配置され、周囲の山がまるで借景かのようなふんいきで、いかにも京都らしい雰囲気を醸し出しています。
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寺社の境内を思わせる園内の庭園と園内にある子ども遊園地
 この動物園のホームページには、「どうぶつ図鑑」として、ほ乳類39種、鳥類44種、魚類1種、は虫類・両生類30種の飼育動物が紹介されています。なかでもツシマヤマネコ、ブラジルバク、オオサンショウウオ、マダガスカルミドリヤモリなど���、あまり他の動物園ではみられない珍しい動物です。しかし、ここではこれらの動物たちを全部取りあげるスペースはありませんので、私なりにとくに興味をひいたいくつかの例をご紹介したいと思います。
●ツシマヤマネコ
 西側の岡崎通りに面した正面エントランスから園に入ると、すぐにツシマヤマネコがいます。言うまでもなく、長崎県対馬にのみ棲息する国の天然記念物で、その数わずか100頭ほどと推測されている、絶滅危惧種です。この檻には1頭しかおりませんが、実はこの園には、東側エントランスのすぐ側に「ツシマヤマネコ繁殖施設」があり、ここには現在子ネコ2頭が飼育されています。今年5月にはオス・メス2頭の赤ちゃんが本州でははじめて誕生したと「動物園だより」(no.182:2017,AUTUMN)にありました。この施設はその性格上から非公開ですが、無事に育ってほしいと思います。
●「もうじゅうワールド」
 ツシマヤマネコの檻の隣りには、「もうじゅうワールド」という一画があり、ここには,ジャガー・ライオン・アムールトラの檻があります。
 まず目に飛び込むのは,ジャガーです。真っ黒なのびやかな肢体のジャガーが箱の中に伏せ、頭をもたげて悠然と見物客に視線をなげかけています。鋭い目の輝きが本来の野性の証明でしょうか。その隣りの網で仕切られた檻には黄色の地に黒い斑紋のあるジャガーが右に左にと檻の中で行ったり来たり慌ただしくしています。説明板によると、黒い方がメスで名前はミワ・四歳、黄色の地に黒い斑紋がある方がオスで名前はアサヒ・三歳、ただいまお見合いの真っ最中とか。ジャガーというと、普通はこの黄色の地に黒い斑紋のほうを思い浮かべますが、たまに異変種として黒い色が生まれるといいます。単に真っ黒ではなく、よくみると斑紋がある、と説明板にありました。ちなみにジャガーとヒョウとは同一ではなく、それぞれ模様が異なっていると、写真を添えて、これも説明がありました。この両者はともにネコ科で大きさもだいたい同じ、外観もよく似ていますが、ヒョウがアフリカや南アジアの熱帯雨林地帯や砂漠・サバンナなどに広く分布して、樹上にエサを運び上げるなどの習性をもつのに対して、ジャガーはヒョウよりも一回り大きく、中・南アメリカ大陸のジャングルに生息し、泳ぐことができ、時には魚やボア(ニシキヘビの仲間)なども補食する習性をもっているそうです。
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目の鋭さは野性の証明、黒いジャガー(メス)
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ジャガーとヒョウの斑紋の違い(案内板)
 「もうじゅうワールド」の圧巻は、アムールトラです。トラ舎は入園者の歩道を挟んで二つに分かれていて、それぞれに鉄製の頑丈な金網で設けられたいわば二階があり、二つのトラ舎の二階部分が金網製の通路によってつながっています。その二階の段上をオス(名前オク)が小刻みに往復し、ときおり通路の中に身をズィーと乗り出してもう一つのトラ舎に向かうのです。入園者はそれを真下から見上げます。その想像を超えるトラの姿態の大きさと迫力に、「うおーっ!」「すごーい!」「おっきいー!」「やっぱ、タイガースや!」(阪神ファン?)とだけ感嘆の一語を吐き出し、あとは誰もが息と声をのむしかないのです。上下左右金網に囲まれた通路はトラがやっと通れるほどしかない大きさですが、オクはその中でグワッと頭をもたげて後ろに向き直るや大きな体をクルリと反転させ、再びもとの舎に帰ります。見ると通路はもう一つのトラ舎のところで仕切られています。そして、庇に隠れて気づかなかったのですが、その先にはもう1頭のトラがやはり右に左にと動き回っていました。オクよりは一回りからだが小さく見えます。「そうか、夫婦だったのか」と思い、説明板を読むと、もう一方のトラはメスで名前はアオイ、13歳。なんとオクのお母さんでした。オクは、アオイの産んだ3兄弟の次男だったのです。オクはお母さんのもとに行こうとしていたのです。
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頭上のアムールトラ
 トラ舎の隣では、ライオン(オス、ナイル)が、顔をもたげて立派なたてがみを振るわしながら何度も「ヴオオッー」と正面を見据えて吠えています。その迫力、野生の動物のすごさを感じさせてくれました。
●二つの白菜と自然環境
 次に見た「水鳥舎」では面白いものに出会いました。それほど大きな園舎ではありませんが、水が絶え間なく流れ込む池があり、30羽ほどのコガモ・ホオジロガモなどの水鳥が飼育されています。その水の中に、なんと白菜が二つ生えているのです。 
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水中に生えた(?)白菜(石組みの向こうにもう一つある)
 通りかかった飼育員のかたにうかがうと、次のように教えていただきました。
「自然に近い形でエサを与えたくて考え出された方法で、地面に生えているように白菜を立てるために中に鉄筋を5本ほど入れています。通常は白菜二つが午前中で芯だけになってしまいます。繁殖時期は食欲も旺盛になるのでもっと早くになくなってしまいますがね。また、エサだけではなく、鳥のためになるべく自然に近い環境を心がけています。池に水が注ぎ込んでいますが、注ぎ口のすぐ前にブロックがおいてあるでしょう。あれは、自然の川が岩にぶつかって流れの向きをかえたり、水流の強弱が生じたりするのとおなじように、園舎の環境を整えてやりたいからなのです」
 それが仕事とはいえ、あくまでも動物たちのために住みよい環境を多方面から考えていることに改めて感心しました。
●オオサンショウウオと人間の在り方
 「京都の森」と名付けられた一画にある展示室に、動物園では珍しいことにオオサンショウウオがいました。清流を模した水槽の中に大きな体を横たえてじっとしていますが、ときおり頭を動かします。コイなどの魚も一緒に飼われていますが、これらの魚はオオサンショウウオのエサになるのでしょう。生きている魚がエサになる、これは一見残酷に見えますが、決してそうではありません。今の時代、ともすると私たち人間も、それが植物であれ動物であれ、他の生き物の「命」をいただいて生きている、ということに考えが及ばなくなっています。人間も生態系のなかで生存している、その当たり前の事実に気づかされるのは、野生の動物が自然の中で生きるために他の動物を補食する、その瞬間をみることでしょう。オオサンショウウオの水槽にエサともなる魚が同居している、そのことで、私たち人間も自然の恵みで生かされているということに気づかされるのです。
 この展示室には、ほかに、みじかな自然にすむアオダイショウやマムシ、アカハライモリなどが飼われています。40,50年ほど前には、日本の田園風景のなかでどこでも見かけられたこれらの動物も、近年ではその機会がめっきり減ったような気がします。彼らの住む環境がなくなり、そのために数が減っているのでしょうか。         
●5頭のゾウたち
「一時半からゾウの来園記念ガイドがあります。ゾウ舎にお集まり下さい」
 アナウンスにつられて、「ゾウの森」に向かいました。この一角を占めるゾウ舎は大きく、運動場も広くて立派でした。みると運動場の真ん中あたりに1メートルほどの高さの砂山があり、濃い緑の枝葉が幾本も突き刺してあり、山の斜面には橙色の果物を並べて大きな「3」の字が書かれてあります。
「さー、子ゾウさんたちが出てきます」
 飼育員さんの声にあわせて、子ゾウたちが寝室のある建物から一斉に走り出てきました。子ゾウは4頭いて、それぞれ大きさが違いますが、一目散に「3」の字がある砂山に駆け寄ると、まず橙色の果物を争って鼻で吸い寄せ、クルリと鼻を丸めて口に運びます。子ゾウとはいえ人の高さは優に超えるほどの大きさ、それが4頭もいて、角ではなく長い鼻を突き合わせて果物の争奪をする様は迫力があります。あっという間に橙色の果物はなくなりました。アナウンスによれば、この果物は柿で、ゾウたちの大好物とか。甘い物が好きなのは人も���ウも一緒ですね。柿を食べ終わると、今度は山に刺してあるカシ(樫)の枝葉を鼻に巻き、口でくわえてムシャムシャと食べ始めます。もう争う必要がないのか、枝を喰えたまま砂山から自由に離れ、入園者に愛想を振りまくかのように近くに寄ってきます。
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争って柿を食べる子ゾウたち
 側にいた飼育員さんにいろいろ質問し、教えていただきました。それによれば、この4頭の子ゾウたちは、6歳、7歳、7歳、9歳で、兄弟姉妹のような血縁関係はないそうです。3年前にラオスからやってきました。砂山の「3」の字は、来日3年目を記念したものだったのです。その間の一番の苦労は、子ゾウたちの育ったラオスと日本ではエサにする草や木が同じではなく、日本の草や木を最初は食べず、それを安心して食べるようにすることだったそうです。「今はすっかり慣れて、ああして木の枝を喜んで食べています」。また、ここにはもう1頭ゾウがいますが、彼女は「美都」といい、御年46歳、マレーシアから来たそうです。子ゾウが夢中で柿を食べているときには寝室のある建物にいました。運動場の一角にはプールがあり、水がたたえられています。ゾウが水遊びを好むのは誰もが知っていますが、さすがに冬は水には入らないと思い、飼育員さんに確かめると、意外なことに雪の降る日でも水遊びをすることがあるといいます。でもさすがに冷え込む夜は暖房の入ったゾウ舎から出てこないそうです。ゾウ舎での睡眠時間は3~4時間、立ったままであったり、横になったりして眠るといいます。しかし、横になって眠っても、ときおり向きを変えて、体の上下を入れ替えるそうです。自分の体重で内臓を痛めることを防ぐため、寝返りをうつのです。自分を担当する飼育員についてはその人の声や匂いで識別するそうです。飼育で一番気をつけているのは、ゾウの健康で、健康診断を行うためにもゾウに信頼されることが大切なんだといいます。そういいながら子ゾウたちを見やる目は、まるで自分の子どもを見守る母親のようでした。
●子ネコのような鳴き声、ブラジルバク
 「ゾウの森」に行く途中、「ミュー、ミュー」とか細い鳴き声が聞こえてきました。まるで子ネコのような鳴き声です。思わず立ち止まると、その鳴き声はブラジルバクでした。3頭いて、1頭は子どもです。体の大きさに比べると、まるで似つかわしくない鳴き声です。柵にそってあっちこっちと動き回ります。口の部分が細くとがった長い顔をしていますが、正面から見るとなんともいえない愛嬌のある顔になるのでした。
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愛嬌のある顔、ブラジルバク
●チンパンジーとゴリラ                                                         
 類人猿舎は、西・中央・東グランドの三つに区分けされています。「チンパンジーは東グランドにいます」と案内が出ていました。屋外の東グランドには5頭のチンパンジーがいました。園舎の隅、日だまりに3頭が体を寄せ合って座っています。つい幼い子らの「おしくらまんじゅう」を想い出してしまいました。あとの2頭は自然を模して造られた林にいました。2頭は、長い手を巧みに動かして木に登ったり、地上の林のなかを歩き回ったりと、忙しそうです。そのうちの1頭はまだ小さく、子どもです。案内板によると、これがジェームズとコイコの間に生まれたニイニ(4歳)でしょう。木に見立てた柱のてっぺんを盛んに舐め回していました。なんらかの味があるんでしょうか。  
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柱のてっぺんを舐めるチンパンジーのニイニ
 ちなみに、チンパンジーは、その赤くふくれたお尻がよく目につきます。案内板によると、これは「性皮」というメス特有のもので、発情期になるとだんだんと大きくなり、もっとも腫れた状態で交尾すると妊娠の可能性が高く、オスはそれを魅力的と感じるそうです。「うっとしくないのかなー」は人間の感慨にすぎません。
 もうひとつ「類人猿舎」の隣に大きくて立派な「ゴリラのおうち」があります。このときは小さなゴリラが頭上高く張られたロープにいて、大きなゴリラが地上の見学者のすぐ前にきてくれてどっかと座り、サービスに努めてくれていました。いや、実はゴリラが人間を観察していたのかもしれません。
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庇に身をかくし、突然の雨を避けるキリンたち
 動物の姿や生態を観察するだけでなく、動物の側に立って考える、そのことで新たな動物像がみえてくるのではないでしょうか。いえ、動物の姿を通して,人間の、そして自分の生き方が別の視点から見えてくるのかもしれません。取材の許可をいただいた際にお借りした園の腕章をお返しして帰路につきながら、そんな感慨をもったのでした。
(緒方三郎)
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oriori-ki · 6 years
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第35回 『ときわ動物園』
宇部新川駅通りの喫茶店で
 羽田空港から90分、瀬戸内海に面した宇部空港に着きます。市の中心部の新川駅までバスに揺られて市内見学。駅前通りを散歩していると、あちこちに素晴らしい彫刻が設置してあります。これは2年おきに催されるUBEビエンナーレ展での受賞作品だそうです。
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 ぶらぶら眺めながら街を歩いていて、ふと見つけた洒落た喫茶店に入り、コーヒーをたのむと、注文をうけてから豆を挽いてサイフォンで淹れてくれました。その馥郁とした軽やかな香りを味わっていると、この街の洒落た文化の趣きが幾重にも見える気がしました。
 その店に飾られた日本各地の紅葉風景の写真を眺めながら、これからおもむく「ときわ動物園」の愉しい予感に心がときめきました。
 ときわ動物園には新川駅前からバスに乗って行きました。常盤湖周辺にある「ときわ公園」は、動物園のほかに、ときわミュージアム・ときわ遊園地・ときわ湖水ホール・石炭記念館・UBEビエンナーレ彫刻の丘などあり、楽しめる施設群からなっています。
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 公園入口事務所で動物園の入場券を買おうとすると、
「ここは、公園入口で無料です。動物園はこの先にありますから、そこで買ってください」
 係員にそういわれたので、板作りの洒落た柵が並ぶ細い坂道を上がっていくと、遊園地に出ました。動物園の入口が矢印で示されていました。
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 入口で職員に園の規模を尋ねても返事が返ってきません。調べてみると、ここには32種、200点ほどの動物が展示されていて、広さは約1.9haとごく小規模です。けれども、アジアの森林ゾーン・中南米の水辺ゾーン・アフリカの丘陵マダカスカルゾーン・山口宇部の自然ゾーン・学習施設ゾーンに分かれていて、たいへん見やすく楽しめる工夫に富んでいます。
オリの役割を小池がしているテナガザル舎
 入口からくねくねした道を上り下りして歩いて行くと、池のなかに島があり樹高20メートルほどの樹が何本も植わっていて、インドからバングラディシュの熱帯雨林山地を中心に生息しているハヌマンラングールが、手前の高い樹の梢から梢へとダイミックにぶらんぶらんと移り遊んでいます。
 島は4mほどの小池で囲まれているばかりで柵らしいものがありません。そこにいるのは、シロテナガザル(体重約4㎏、主にミヤンマー・タイ・マレーシア・北スマトラに生息)で、彼らも隣のハヌマンラングールのように、力強い長い腕で樹上生活をしています。
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 シロテナガザルはすばらしく大きな声で歌うように鳴きかわしています。オスがメスとの絆を強めるためや、みずからのテリトリーをお互い確認し合っているのです。
 はじめはやや小さく声を出してウォーミングアップをし、つぎにメス・オス交互に叫び声を繰り返します。おしまいにはメスが精一杯の叫び声をあげ、それに合わせてオスがグレートコールを張りあげて、これを交互になんどか繰り返してお互い満足して終了します。
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 たまたま園内を歩いてお客さんに説明サービスをしていた若い飼育員の木村さん(上の写真の人。「オリオリの記」掲載了承済み)が教えてくれたのです。
「柵がなくてもサルは逃げないんですか」と訊くと、
「この種のテナガザルは、樹上をじょうずに渡り歩きますが、ヒトのように泳げないのです。また、よく見ていてください。ほら、あのように2~3歩しか歩けないんです。だから柵はいらないのです。池の水が柵がわりになるのです。シンガポールの動物園に学んで、周りに池を配して設計してありますから、大丈夫なんです」
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 木村さんは、オスとメスが鳴き合ってテリトリーを主張しあうことなど、ていねいにいろいろ説明してくれました。たしかに彼らは手足で歩くのではなく、ピョンピョン跳ねるように池のふちに寄ってきて、手を洗ったり水をすくって飲んだりしていました。けれども、ながくは歩きません。木のうえが好きなようで2mほどの高さの切り株で、なん匹かが集まってじゃれるように遊んでいました。
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 しばらく行くと薄い網がかかったところにサルがいました。スリランカに生息しているトクモンキーという中型のサルです。頭の上に注目してください。頭部の毛が帽子を被っているように生えていて、やんちゃ坊主みたいで可愛いらしいです。けっこう珍しい種類で動物園でもめったに見られません。日本では、このときわ動物園と愛知県の日本モンキーセンターにしかいない貴重なサルです。
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トンネルをくぐるとおっぱいをねだる赤ちゃんカワウソが
 小さなトンネルをくぐると、薄暗いところにかたまって赤ちゃんコツメカワウソがおっぱいをねだっていました。寝ている母親のおっぱいはなかなか吸えなくて、なんども潜って苦労しています。ちょこちょこ動いていて、こちらになかなか顔を見せてくれません。
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 なんども撮り直して、やっと撮れた顔はまことにかわいらしいものです。すぐまた潜り込んでしまうので、表情は写真で確かめるしかありません。
 親子連れで来たお客さんが、奥まった岩のなかが暗くて探せないらしいので、
「あの奥にいるよ、赤ちゃんがおっぱいをねだっていて、顔をなかなか見せてくれない。飲み終われば、ちょこちょこ出てくるから、しばらく待っていればきっと見られます」
 何がいるのか不審顔しているので、余計なおせっかいですが、先に来てしばらく様子を見ていたから、つい言葉が出てしまったのです。
 カワウソは泳ぎがうまくて、水中では耳の穴も鼻の穴もぴったり閉じることができて、魚やカエルなどを捕まえてエサにしています。東南アジアやバングラディシュでは、彼らカワウソに魚を追い込ませて網で取る伝統漁法があるそうです。しかし現在ではあまり行われていないといいます。
 つぎに、中南米の水辺ゾーンに入ります。まず何匹かのインコがいました。黄色い色のインコはルリコンゴウインコです。トリとしては大きいほうでしょう。オウムの仲間で飼い主になつきますが、飼い主がいなくなると精神的・肉体的な障害を起こすので、ふつうの家庭で飼うのはむつかしそうです。パワフルで大きなくちばしを持っていてややもするとヒトにも傷害を与える能力があります。
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 コンゴウインコは一夫一婦で生涯過ごし、100年生きるともいわれているようですが、50年程度生きるのがふつうでしょうか。ただし彼らもまた絶滅に瀕しています。一つにはヒトによる森林破壊のためです。もう一つには、ペット取引用の不法捕獲によります。大自然を守っていくのはたいへんむつかしいことなのでしょうか。
 そばにフラミンゴがいました。ピンク色をしていてじつに綺麗で優雅な感じ。チリーフラミンゴとあります。βカロチンなどを含むプランクトンや藻類を食べることによってピンクになるので、それを食べなければ羽は白く戻るそうです。ピンクを保っている動物園のフラミンゴは、飼育員さんがピンクに染まるエサを配合して与えて維持させているようです。
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 中南米の塩湖や干潟に生息しているフラミンゴには、塩分やアルカリ性に耐えられる体質があります。トリはふつう2本足で立っているのに、フラミンゴはいつどこで見てもかならず何匹かは1本脚で立っています。不思議におもって見ていましたので調べてみると、冷たい水に体温を奪われないよう、片足立ちしているのだそうです。トリたちも知恵を絞って努力を重ねて生きているのですね。
カピバラが健康そうなフンを…
 その先に体重が3~4㎏の大きさのサル、フサオマキザルがいました。頭の毛が直立して精悍な顔つきをしています。オリの中の木を登ったり降りたり、ちょろちょろと動きまわりじっとしていません。写真を撮ろうと見ているこちらを意識してか、一瞬止まって逆ににらみ返しているような態度をします。
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 中南米の川辺や沼地や海岸の落葉熱帯林に生息していて、オス3~4頭、メス3~6頭からなる10頭ほどの群れをつくって、1日のうち大半は果実や木の葉・花・種子・根などを探し歩いて食べているそうです。
 ヘビや猛禽や肉食獣が寄ってくると警戒して声を張り上げてお互いに知らせ合ったり、石などを道具として巧みに使ったりする「頭のよいサル」として知られています。
 向かいにカピバラがいました。大きさはだいたい体重50~60㎏、体長1mを超えて、ゆったり構えてのどかな顔をしています。日本のネズミのように「チュウ」と鳴く声をきいたことは、まだありません。みなじっと声も出さず静かで、ちょこちょこと活発に動きまわりもしませんから、ネズミの仲間とは思われません。
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 どれも同じような顔をして同じような体型をしている5点ほどいたなかに、すみっこに寄ってフンをしているカピバラがいました。気持ちよさそうな顔をしており、散らばったフンは健康そうな色をしていました。
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 世界一大きなネズミだそうですが、子供たちに人気がありそうです。来合わせた家族連れはしばらく一緒に並んで眺めていましたが、あまりに動かず変化の少ない生きものなのでながく観察するのは退屈らしく、すぐ別のところに移動していきました。
 いっしょに移動して次のゾーンに行ってみることにしました。
アフリカの丘陵ゾーンの珍しいパタスモンキー
 あご・首・尻・腹・四肢の内側が���っ白くて、手脚が長い珍しいサルがいました。パスタモンキーといいます。サハラ砂漠の南からアフリカほぼ中央部のサバンナに、西は西アフリカのセネガルから東はエチオピアまで、広くに生息する乾燥に強い種です。
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 動物園でもなかなか会えず、日本では、このときわ動物園のほかには、愛知県犬山市の日本モンキーセンターと広島市安佐動物園しか現在はいません。
 体重4~12㎏、頭胴長60~75㎝でなかなかスマートな容姿をしており、足が長くて平地を速く走ります。時速55㎞でサルの仲間で世界一速く走ります。
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 1つの群れは1匹のオスと数匹のメスとその家族で20匹ほどからなっていて、子供のオスが成熟すると単独で巣立っていくそうです。群れと群れが水飲み場などで出くわすと争いになり、メスが積極的に戦うといいます。
 また、食物を探して1日に何㎞も走り、その格好がまるで軍隊の移動のように見えることから「軍隊ザル」「軽騎兵ザル」とも呼ばれています。
 雨季に交尾して妊娠期間は約5か月、5年間隔で昼間に地表で出産します。これはヒョウなど夜行性の天敵を避けるためとみられています。ところでオスの陰嚢は青くてペニスが赤い特徴があるそうです。よく眺めてみたのですが、残念ながら確認はできませんでした。
 となりにミーアキャットがいました。直立して日を浴びているようすがなんともかわいらしくて印象的ですが、今日はまったく直立してくれません。
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 キャットといってもネコ科とは関係ありません。ほんらい岩石の多いサバンナに生息しています。ペットにしたいほど一見かわいらしく見えますが、地中10㎝ほど巣穴を掘って生活し、サソリやハ虫類・クモ・トリ・小型哺乳類までエサにしてしまう、かなり獰猛なマングース科の生きものなのです。この動物園のミーアキャットの生活の場が、狭いながら岩や土が穴ぼこだらけで、活き活きとした姿を見ていると、ほんらいの野生の住まいにピッタリなように作られているとおもいました。
手書きの注意書がおもしろいぞ!
 どこの動物園でも観客に注意点を記して事故に遭わないように喚起しています。おもしろく愉しい絵入りで子供たちをひきつけ、わかりやすくひらがなを多くして、漢字にはフリガナをふって読みやすく、配慮におこたりがありません。
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 動物たちにはなにげない自然な行動でも、ヒトには危険なふるまいになってしまうことが多々おこりますから、動物園側では細心の注意を払っているのです。
 つぎには山口宇部の自然ゾーンに足を運びました。まず、オシドリとクロヅルがいました。オシドリはきれいな羽根をしています。オスメス並んで睦まじく心温まるようで微笑ましく感じます。どこのオシドリを見ても同じようなむつまじさで、まさに夫婦の鑑でしょう。
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 ツルのほうは1羽ぽつんと立っていました。特別に孤独なわけではないのでしょうが、オシドリと並んで見ていると表情に乏しいせいか寂しそうに見えて、不憫に感じます。
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 このゾーンにはおなじみのニホンザルやフクロウやタヌキもいて、山口県の自然に生きている動物を紹介しています。少し北には秋吉台の岩山があり、秋芳洞の鍾乳洞は日本有数の規模を誇り、日本を代表する名所です。
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 となりに自然の遊び場があります。さらにそのとなりには、ふれあい動物広場があります。時間を区切って飼育員のお姉さんが指導してくれて、子供たちはかわいい動物たちとじかの交流が楽しめます。そこに着いた時にはすでに終了していて、動物たちを移動用のオリに戻しているところでした。
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 飼育員のお姉さんは作業しながらいろいろ説明してくれ、親切にもそばまで移動用のオリを運んで撮影させてくれました。子供たちが小さな動物たちと交流している姿をじっさいに見られなかったのがまことに残念でした。
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 帰り際にかわいらしい顔をしたけっこう大きな生きものがいました。座っていましたが立てば2mほどの背丈のアルパカです。南米、とくにペルー中心にごくふつうにいる毛がふわふわした生きものです。かわいい顔がマスコットキャラクターになって人気を博しています。この毛を毛織物にするために改良された家畜です。アルパカの毛糸でつくる洋服やセーターは軽くて温かいので、じつに高価なものとなります。
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 これでひととおり廻って出口に向かい、出てみると向かいには遊園地ゾーンの大観覧車がそびえていました。この常盤湖周辺の施設を動物園といっしょに見るために、もっとうまく計画を練って来ようと思い、こんどの楽しみを残してあとにしました。
(磯辺太郎)
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oriori-ki · 6 years
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第34回 『大宮公園小動物園』追録
●大宮小動物園の概要
 埼玉県のさいたま市にある大宮小動物園は,広大な大宮公園の一画にあります。大宮公園は、JR大宮駅から東北方向におよそ1.5km、大宮区と見沼区にまたがる68haの面積を占めていて、その公園のなかに、サッカー場・陸上競技場・野球場・埼玉県立歴史と民族の博物館などがあります。1885(明治18)年の太政官布告によって設立されたといいますから、120年もの歴史をもつ公園ということになります。そして、参道の長さが2kmもある、これも広大な境内をもつ武蔵一宮・氷川神社に隣接しています。
 大宮小動物園は、この広大な公園の中に歩くだけなら5,6分ほどで一周できるくらいの広さ、名前の通りに小さな動物園です。ここにはウシなどの偶蹄目に属するクビワペッカリーという珍しい動物が飼われています。また、今年(2017年)の春に生まれたコモンリスザルの赤ちゃんがいたり、多くの種類の鳥類が展示されていたり、と小さいながらも紹介したい動物はたくさんいますが、すでにこの「オリオリの記」で報告・公開されていますので、ここでは、なるべく重複を避けて、動物のことより前回触れられなかった見所や動物園の来歴をご紹介することにします。
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(クビワペッカリー)
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(コモンリスザルの赤ちゃん)
 ●創立の由来
 まず、なぜここ大宮公園にこの小動物園が開設されたか、です。きっかけは、1949 (昭和24)年に遡ります。当時の埼玉県知事の大沢雄一氏が北海道にある埼玉県の開拓団が住む村「秩父峡」を訪問しました。太平洋戦争が終わって間もない頃のことで、物資もなく困窮していたであろう同郷人を励ましに訪問したのでしょう。知事が埼玉県に帰郷すると、北海道で知事が見た小熊が鰊(ニシン)とともに送られてきました。秩父峡の住民がお礼に贈ってくれたのでしょう。この小熊はおそらくヒグマだったと思われます。そこで、この小熊を飼うために、公園の一画に檻を造ったのが、この動物園の起源です。1953(昭和28)年4月5日のことでした。そしてその後、サルやツルペンギンなども加わって、現在みるような動物園が誕生したのです。この動物園が入園無料なのは、当時の知事さんの秩父峡の住民によせる感謝の念があるからでしょう。
 こうしたこの動物園の由来は、公園を管理している大宮公園事務所の管理担当部長小林利哉さんに教えていただきました。なお、公園に入ったすぐの木陰に由来を記した案内板が立てられています。小林部長さんは、事務所から動物園まで足を運んで下さり、園の特色や見所を丁寧に案内・説明してくれました。「県民や子どもたちにより多く楽しんでもらいたい」と、公園の中に無料の動物園をこしらえた大沢知事の精神が今も生きているのでしょうか。ここではその小林さんのお話を中心に報告します。
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(設立の由来案内板)
 ●強化アクリルの園舎
「へぇー、小動物園っていうから、もっとちゃっちいかと思ったら、ちゃんとした動物園だね」
若いカップルが肩をならべて歩きながら感心しています。夏休み中でもあり、小学生や乳幼児を連れた家族連れがひっきりなしに訪れていました。
「ふわふわだー、さわってみたい」
シシオザルの園舎の前です。お母さんに抱きかかえられた2歳くらいの女の子がはしゃいでいました。女の子の指先にはこれも母ザルに抱きかかえられた赤ちゃんザルがいます。たしかにぬいぐるみのように柔らかな毛並みです。説明によれば、今年(2017年)の春3月に生まれたばかりとあります。この園舎にいるシシオザルは家族で、一組の両親から2014年以降、毎年子どもが生まれており、この赤ちゃんは第4子です。
 小さな女の子でさえ手に取るほどの近さで観察できるのは、ここのサル舎(ニホンザル・シシオザル・フサオマキザル・ケナガクモザル)が通常見る鉄の檻ではなく、強化アクリル板で囲われているからです。
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(強化アクリルのサル舎)
 ●猛獣舎と欠かせないクマ
 猛獣舎では、保母さんたちに引率されてきた保育園児たちがブチハイエナの意外と大きな体とおっかない顔にすくんでいますが、直になれてアクリル板におでこと鼻をくっつけんばかりに近寄って見入っています。このハイエナ君、ホシという名前のオスで、もっかのところ独身、お嫁さんをさがしているそうです。
 その隣の園舎では、ツキノワグマが斜めに立てかけられた丸太を上手に這い上ったり、一段上に設けられた二階に登ったり、地上に撒かれたエサ(おから)をなめ回したりと、忙しそうにしています。こちらも1頭です。オスでヨリーと名付けられています。
「うちのような小動物園や子ども動物園では猛獣は普通飼育されないのですが、この大宮小動物園ではその設立の趣旨から、クマは欠かすことはできないのです」
と小林さん。展示する動物の選択にもその動物園の歴史が秘められているんですね。
●強化アクリルの園舎
 ところでもう一つ。サル舎や猛獣舎で子どもたちが顔をくっつけんばかりにしていた強化アクリル板、これも、この小動物園の特色です。ブチハイエナ・ツキノワグマの猛獣舎、4種がいるサル舎、コモンリスザルの園舎に使われています。鉄の檻の場合は動物に噛まれたり引っかかれたりしないように、見る位置と檻の間に一定の距離をおきますが、アクリル板の場合、本当に動物の鼻先まで近づいて見学できるのです。小林さんの言葉を借りれば、「大規模な動物園はともかく、ここ大宮小動物園くらいの規模では、珍しく、新しい施設です」。
●自然のままの鳥のケージ 
 大宮小動物園のもっともすばらしい施設といえば、それは「フライングケージ」でしょう。池や木立をすっぽりと金網で囲い込んで、中に様々な鳥たちを放し飼いにする施設は、どこの動物園にもあると言っても過言ではありません。しかし、このフライングケージはひと味違うのです。入園者が通常のドアを開けて鎖のすだれをくぐると、このケージに入れます。鳥のケージの中に見学者が入れるのも珍しいのですが、すばらしいのはその中です。地面には低い草木が生い茂り、見上げれば、頭上はるかに樹木が立ち上っており、そのこんもり、うっそうとした景観は、まるで自然の森と錯覚させられるほどなのです。
 そうしたなかにシロトキ・クロトキなどが思い思いに樹間を飛び回り、樹上に羽を休め、地面ではカルガモやオシドリがエサをつつき、池にはたくさんのオオフラミンゴが一本足で立って頭を羽の間に入れて寝入っていたり、羽ばたきしたりと、自由にしています。ハッカンというキジの仲間は、見学者用に設けられた通路を散歩しています。歩いている人をまったく恐れずに足下まで平気で近寄ってきます。鳥たちのテリトリーに人が入らせてもらっている、そんな感じがするのです。
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(頭上はるかなフライイングケージ)
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(フライングケージ内の歩道を歩くカナダガン)
 このフライングケージ、鳥や見学者にとって快適な空間といえますが、こうした環境を維持していくうえで避けられない悩みもあります。樹木が大きく高いので天井に金網があることさえも見学者は気づかないのですが、実はそのことが動物園を管理・運営する人々に思わぬ苦労を強いているのです。
「当たり前のことですが、樹木は毎年毎年生長しますので、天井の金網に届かないように毎年のように剪定しなければなりません。あれほど高い木ですから、それが一苦労なんです」
 小林さんの説明にはうなずくほかありませんでした。ご案内、ご苦労様です。そして、ありがとうございました。
(緒方三郎)
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oriori-ki · 6 years
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第33回 『伊豆アニマルキングダム』
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〒413-0411 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取3344
伊豆急行稲取駅からバスで約10分(300円)。タクシーで1600円から1700円。
1 ウオーキングサファリゾーン
 ルリコンゴインコにかまびすしい叫び声で迎えられ、ウオーキングサファリゾーンに入っていく。多くの草食動物の中で、最初に目についたのがダチョウやシマウマのエサやり。手で触れるほどの距離に近づいてくるダチョウやグラントシマウマに驚いたり、歓声をあげたりしてエサを投げ入れている。
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 キリンが近づいてくる。大きさに圧倒されそう。長くて灰色の舌をベロリと出し、エサをとリ、モグモグし始める。
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 スタッフからの耳より情報① キリンは牛と同じで胃袋が4つあり、食べ物を絶えず反芻しています。30~40回モグモグして胃袋に送ります。
 ラマもいる。
 スタッフからの耳より情報② ラマとアルパカは同じ動物から家畜化しました。ラマは荷物を運ぶために、アルパカは毛を撮るために家畜化しました。ラマは顔の周りに毛がありません。毛があってカワイイのがアルパカ、そうでないのがラマ。
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(ラマ)
(引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%A3%E3%83%9E#/media/File:Llama_La_Paz_Bolivia.jpg)
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(アルパカ)
(引用元;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%91%E3%82%AB#/media/File:Corazon_Full.jpg)
 サファリゾーンの一番上に行くと、大きな卵が5~6個見えてきた。ダチョウの卵である。(本物)。
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 スタッフからの耳より情報③ メスはみんな同じ場所に卵を産んで、50個位になると、群れで一番強いメスが卵を温めます。たくさんの卵の中から自分の卵を見分けて巣の真ん中から自分の卵を見分け巣の真ん中に集めます。一番効率よく“孵化”させ、自らの遺伝子を残すための知恵です。
 他にもエランド、ムフロン、シロオリックスなどが、伸び伸びと元気に動き回っている。人間との距離がほとんどないこと、オリに囲われず、多種類の草食動物が共存していること、この二つが非常に印象に残った。環境エンリッチメントの好例だろう。
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2 猛獣館
 いよいよ楽しみにしていた猛獣館に入る。ここはさすがにガラスと背後の高い柵で仕切られていたが、他の動物園と比べ、ずっとまじかに猛獣の姿が見られるので迫力満点だった。
チータ
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 そら、わかば、こん、こはく、べにという名前の5頭のチータの子供は、余りに可愛くてぬいぐるみと間違えた子供もいた。プロポーション抜群で地上最速と言うのも頷けた。「あんなに格好よくなれたらいいのに」と思わずつぶやく中年女性の声が聞こえた。隣接しているサファリゾーンとの境にやってきてじっと何かを見ている。獲物目線なのか、それともあっちにも行きたいなと思っているのだろうか。
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掲示板情報 チータの速さの秘密
1 最高のプロポーション。小さな頭、細くて長い脚と胴
2 背中の動きがしなやか。丸く曲げた背骨を一気に伸ばすことによりスピードアップ。
3 出っぱなしの爪。スパイクの役目。
ホワイトタイガー
 この動物園の最大の呼び物。餌やり体験には予約が必要だが、休日などには開園して間もなく申し込みでいっぱいになるとか。1回500円で、それほど安くはないが、大人気である。餌やり体験ができなかったので、近くで見物だけさせてもらった。さすがに迫力満点で、近寄ってくると思わず身を引いてしまう大人もいた。白と黒の縞模様がとても美しかった。
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ライオン
 数頭の雌ライオンに囲まれてタテガミも立派な雄ライオンが悠然と座っていた。さすがの貫録。しかしこの群れのリーダーは雌ライオンだそうだ。どれがリーダーだかよく分からなかったが。
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 スタッフからの耳より情報④ ライオンなどの猛獣の胃袋は植物繊維を消化することができません。食物由来の栄養は草食動物を食べることにより、草食動物の体内から植物由来の栄養を間接的に摂っています。
掲示板情報  猛獣 絶食のワケ
 野生の肉食動物は、狩りをして獲物を捕らえて初めて食事にありつけます。しかし狩りはいつも成功するとは限りません。獲物に出会い、狩りを成功させなければ1週間以上何も食べられないこともあるくらいです。
 動物園ではどうかというと、待っていればご飯にありつけるのです。狩りをして沢山走らなくても毎日ごはんが食べれるというワケです。それでは猛獣たちは威厳をなくし、どんどん太っていってしまいます。毎日たらふく食べていいからだの作りになっていない動物たちなのです。
 人間と同じで動物にとっても肥満は病気のモト!!そこで断食日を設け、本来の食事サイクルをからだが忘れてしまわないようにしてあげることも大切なのです。
 だけど、人間はそういうからだのつくりをしていないので、断食は体によくないです。
 毎日3食しっかり食べて健康を保ちましょうね!
 この猛獣ゾーンのすぐ上に、キングダムレストランがあったのでそこで昼食をとった。値段も1000円前後で、リーズナブル。味もよかった。入り口で、スタッフがタイガー側か、ライオン側かお客の要望を聞く。食事をしながらガラス越しにライオンかホワイトタイガーかどちらかをすぐまじかに見ることができる構造になっているのだ。もちろんレストラン内では移動ができるので、両方見ることも可能だ。
 レストランを出て隣のプレイゾーンに行きたければ、無料の送迎トレインに乗ればよい。観覧車、メリーゴーランド、スカイシュート、ゴーカートなど様々な遊びができる。さらに大人用には、スポーツゾーンもあり、パターゴルフや打ちっぱなしのゴルフ練習場もある。ここは複合型のレジャーランドになっている。
3 わくわくふれあい広場
 再びウオーキングサファリゾーンへ出る。わくわくふれあい広場へ入ってみる。メンフクロウ、アルマジロ、マーラ、カピパラ、うさぎなどの小動物に直接触ることができる。特に生まれたばかりのカピパラの赤ちゃんが、小屋の中でお母さんのおなか辺りにぴったり身を寄せている姿がかわいらしかった。マーラも人気者らしい。子供たちは勿論、若いカップルも楽しそうだった。広場を出ると、また色々な小動物がいる。子供目線で見られるようになっているの��家族連れにはうれしい。
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4 バードハウス
 アフリカオオコノハズクの出迎えを受ける。オレンジ色の瞳が鮮やかだが、眼球は動かせないそうだ。タンバリンバトやフィンチと言う小鳥の色彩は、正に神の仕業としか思えないほど美しく、鮮やかであった。オカメインコが、フィンチを見ようとして腰を屈めて近づいていったお母さんと女の子の頭上に襲いかかった。幸いけがはなかったようだったが、その美しい姿からは想像もできなかった。ほとんど放飼い同然なので、これくらいのリスクは止むを得ないのか。
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5 サイにさわりなサイ
 2時からのイベント「サイにさわりなサイ」に参加。結構大勢の参加者がいた。狭い所にサイが顔と頭だけ出してエサを食べている時に、角や皮膚に触ることができる。最初は恐る恐る触っているが、慣れてくるに従って、カメラに向かってポーズをとるほど大胆になっていく。しかし10分か15分ほどするとサイ君、やおら顔をひっこめて、ノッシノッシとお散歩に。飼育員のお兄さん曰く。「人間だって、学習机にしばらく座っていると、飽きちゃうでしょ。それと同じですよ。少しは気分転換させて下さいね」。考えてみれば、食事中、頭や角を触られる身になってみれば、えらい迷惑なことに違いない。納得。
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(参考)イベント情報
 「サイにさわりなサイ」    10:00~ 100円 定員なし
                   14:00~
 「猛獣エサやり体験」(トラ)  11:00~ 500円 25組程度  
                    15:00~
 「バックヤードツアー」(猛獣) 12:00~ 500円 30名限定
                    13:00~
6 おわりに
 コンパクトな割には満足感が十分得られる動物園だった。環境エンリッチメントを配慮して、動物たちの身になった動物園作りが行われていると思った。来園者の視点からは、できるだけ動物との距離をなくし、迫力が感じられるような工夫が随所に見られた。またバリアフリーの構造になっていて、ベビーカーや車いすでも楽に移動ができるなどの配慮も感じられた。情報の発信も、「スタッフからの耳より情報」は白板に手書きで書かれていたり、パンフレットの類も非常に少ないなど、できるだけ無駄を省こうとする経営姿勢が窺えた。公立の動物園とは一味も二味も違うと、感心した。
 高台にあるので、天気が良ければ、地中海風の稲取岬の景色や、伊豆大島をはじめとする伊豆七島の眺望も楽しめる。この日は静かに回る風力���電用の風車が青空に映えていた。
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(やまぼうし)
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oriori-ki · 7 years
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第32回 『千葉市動物園』
千葉モノレールは世界一
 動物公園にはモノレールで行きました。モノレールは千葉駅からとても便利で、動物公園のほかにも千葉港周辺の娯楽施設や、特別史跡・加曾利貝塚など周辺の名跡につながり利用できます。そして懸垂型モノレールとして営業距離が世界最長なのだそうです。
 静かに到着したモノレールの室内に入れば、休日といえどもゆったり座れて、林立するビルや緑の公園やスポーツセンターなどが建ち並ぶ市内を俯瞰して、気分は上々です。
 さて動物公園の駅に着くと、太い柱には愉し気な動物のマンガが描かれ、動物公園へと誘います。入場ゲートが陸橋でつながっていて、子どもたちをいらっしゃいと招いています。
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 入口には、子供向けイラスト看板で本日のイベントスケジュールが掲示されていました。門をくぐって右に行けば野鳥が観察できる大池へつながる道になります。緑豊かな大池の周辺は、夏でも涼しい風が木陰に心地よく、ベンチに座ってしばらく飛んでくる大小のトリたちを観察してみるのも一興です。
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 ところでこの動物公園の開園は1985年4月で、現在(2017年)哺乳類59種、鳥類61種など計130種、1400点ほどいます。広さは約34ヘクタール、上野動物園の約2.4倍もあり、大きい樹木がたくさん枝葉を広げていて、小雨なら木の下で雨宿りできそうです。
悲し気な顔をしたモンキーさん
 左手のだらだら坂を100mほど上って、まずモンキーゾーンに行きましょう。
 はじめにサル山が見えてきます。ニホンザルがたくさん遊んでいます。柵の下は深い谷になっていて、サル山の外には出られません。どこの動物園にもありますが、少しずつ異なった形をしていて、サルたちが生き生きと活動している姿を見せてくれます。
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 山の隅っこでは、2匹のサルが対面して深刻そうに話でもしているようすに見えて、まさに類人猿の名のとおり親しいものを感じさせます。
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 サル山の向かいに小さな池があり手摺りが設えてあり、真っ黒なフクロテナガザルが遊んでいました。脚よりも手のほうが倍ほど長くて力強いのは、樹から樹へと移動するため必需なのでしょう。発達してみごとな腕で、用不用説がリアリティをもって思いだされます。
 やがてもう1匹がどこかから出てきて、仲よくしばらく戯れていました。じっとそんな様を見ていると心が和んできます。
 樹木が生い茂る道のなかを行くと、モンキー舎が連なっています。
 サルの仲間、ラングール・アビシニアコロブス・エリマキキツネザル・ジェフロイクモザル・パタスザル・マンドリル・クロザル・フサオマキザル・ブラッザグェノンなどのオリが並んでいました。樹上性のサルと地上性サルとそれぞれの生活習慣に合わせて、高さや広さを変えて展示施設が造られています。
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 そこを抜けると、大きなオリの高いところでこちらを向いて悲しげな顔を見せているオランウータンがいました。しばらくたたずんで見ていましたが、
「そうか、つがいでないから、つまらなくて、哀し気な顔になるんだな」
 ヒトもサルも生きものたちはみな群れで生きていなければ、活き活きとした表情にはなれないのだと彼の顔を見上げて、わかった気になりました。
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 その対面のオリにはゴリラが、暑さを避けるように遠い岩陰に隠れていました。離れて仲よく並んでいるのは夫婦なのでしょうか。少し離れているからオス同士なのでしょうか。
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身近に触れあえる動物園も
 動物公園のなかに区切られて子ども動物園があります。ヤギさんやヒツジさん、カメさんやロバ・ウシ・カピバラさんやペンギンさんがいて、ごく近くで触れ合えます。お父さんが子どもたちと手をつないで柵のなかに入ってきました。動物たちも慣れているようで、そばに近寄っても半ば無視しているようです。
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 ペンギンコーナーではちょうど餌やりの時間で、係りのお姉さんがペンギンの種類や習性など説明しながら、生きのいい魚のエサを与えていました。
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 円い池の周りの手摺りにつかまって子どもたちが集まっています。初めて本物のペンギンを目にしたうえ、係りのお姉さんとフンボルトペンギンが親しげなようすを、興味ぶかげにじっと聴いたリ、熱心にしばらく眺めたりしていました。
 また別のオリをのぞいてみると、カラスが柵に留まっています。子ウマが興味深げにそばに近寄って見つめていました。馴れているのかカラスは驚きもせず、まだ子ウマも幼いからか、なんでも珍しいのでしょう。弱肉強食の世界に生きる動物たちの交歓するようすはほのぼのとして、なかなか見る機会はありません。
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 この向かいには「ふれあい動物の里」があって、有料ですが、小さい子馬ポニーなどに乗馬することもできるそうです。
レッドパンダ「風太くん」で有名になった動物園
 子どもたちと別れてすぐのところに、人気者のレッドパンダがいます。千葉市動物公園といえば、すぐ思い浮かべるのがレッドパンダ「風太くん」でしょう。2005年に後ろ足2本でしばらく垂直に立って、日本全国の人気者になったからです。
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 はじめはその姿を地方紙に載せたところ、反響が大きく全国紙から問い合わせが殺到して超有名パンダくんになったのです。すると、よこはまズーラシアのレッドパンダ「デール」くんや佐世保市の今の九十九島森きららにいた「海」くんが立って数歩歩くと噂が立って、有名になったと小耳にはさみました。
 レッドパンダの寿命はほぼ10年程度だから、今日のレッドパンダは風太くんの子どもか孫か、とてもかわいいパンダでした。草原に下りたりハウスに上ったり、たえまなく行ったり来たり一時もじっとしていなくて、写真に撮るのがたいへんでした。
 ところでジャイアントパンダが有名になるまえは、レッサーパンダが「パンダ」と呼ばれていたのに、区別するため大きいパンダを「ジャイアントパンダ」あるいは単に「パンダ」と呼び、小さい(レッサー)パンダと呼ばれるようになったそうです。
 ただし、英語のレッサーには��ったという意があり、蔑称の臭いがあるのでレッドパンダ(赤パンダ)と呼ぶような傾向にあります。かわいい顔をしていろいろ楽しませてくれるのだから、レッドパンダと呼びましょうね!
 さて次は家畜の原種ゾーンに足を延ばしました。トナカイもいました。そのとなりに珍しい動物でアメリカバイソンというウシの仲間がいました。いかつい格好をしていますが、親子仲よしです。アメリカからカナダにかけて広く生息していました。
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 このオスの名はターバン、メスはヒートと命名されて、とても仲好しだそうです。この4月に子ども(メス、ラテと命名)が生まれました。飼育員の報告によれば、 生後10日で母乳のほかに母親をまねて青草を食べていたそうです。2~3年で成獣になります。
 バイソンのオスはだいたい350cm、肩高180cm、体重900kgにもなり、メスは一回り小さいですが体重約500kgにも成長します。
 ヒトが食肉や服や靴・テントなどに毛皮を利用したり、娯楽狩猟したりして、白人移入前の北米大陸には6000万頭いたのが、1890年ころには1000頭に激減したそうです。そこで保護の動きがおこり、1970年ころには約30000頭まで回復しました。
2頭のライオン「トウヤ」くんと「アレン」くん
 若いライオンが多摩動物公園と群馬サファリパークから来園しました。来園してまだ日が浅いが、新しいライオン舎を作ってもらってご機嫌のようです。
 2010年多摩動物公園生まれで「トウヤ」と名付けられました。広い戸外に出て暑い夏も苦にしないようですが、だいたいじっとして寝そべって一日を過ごしています。体のよごれは水浴びするのではなく、砂浴びで清潔を保つのです。
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 アレンくんは2013年5月生まれで、人の手で育てられているせいか人なつこく物怖じしない性格だそうです。ガラス展示場の室内にいて、階段のうえでゆったり目をつぶっていつも寝そべっています。1日18時間は寝ているそうで、タテガミがふさふさしていてハンサムボーイです。百獣の王と呼ぶ貫録もそろそろついてきました。
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 ところで、ライオンの食事は日に1度、馬肉3.5kgと鳥頭2.5kgも食べ、週に2日は絶食して健康管理するそうです。飼育員さんは糞尿を清掃するのも仕事ですが、それを調べて健康状態をチェックするのが大事なことだそうです。
 そしてライオンが起きて動く姿を見るには、朝の開園すぐか、閉園まぎわの寝床に帰るころがチャンスだそうです。走る姿も見たいけどね。
 お尻のほう半分が白い毛がはえたブタかカバの子のような動物が、小さな池で泳いでいるのが見えます。歩いているのか遊んでいるのか定かではないが、珍獣です。
 そう、バクです。マレーバクです。バクにも、アメリカバク、ベアードバク、ヤマバク、マレーバクといろいろあります。
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 お尻が白いのはマレーバクです。マレーシア・スマトラやタイなどに野生していて、今や1000頭まで減ってしまっているそうです。夜行性の動物で、尻の部分が白いのは捕食者(トラ・ヒョウなど)から身を守るためといわれていますが、詳しくは判っていません。
 日本では室町時代から悪夢を食う珍獣「獏」として馴染まれてきましたが、バクと「獏」とが同じものかどうか判然としていません。
 母子でしばらく一緒に生活していますが、基本的には単独で行動し、草食性で子供を1匹ずつしか生まず、寿命は30年ほどですからなかなか増えません。あまり鳴きもしないが、ユーモラスな姿をしていてかわいらしいです。
広場の向こうの長い水槽のなかには
 緑の小高い山を左手に見ながら水系ゾーンの地下通路に足を運ぶと、アシカが泳いでいます。ガラス張りを通してみると、手前に来ればその大きさが実感でき、泳ぐスピードが目にもとまらないほど速いです。ぱっと来てすうっと向こうの方へ消えていってしまいます。時速30kmの速さです。
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 アシカを眺めながら通路を歩いていくと、もっと小さい同じような形のものが泳いでいます。よく見るとペンギンでした。このペンギンは南アフリカに生息するケープペンギンです。みごとに楽しそうに仲間と群れあったり、ひとりで自由に泳いでいたりします。速いように見えますが、スピードは時速10~20kmでアシカより多少遅いようです。
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 地下通路を抜けだして階段をのぼり上から、よちよち歩いているペンギンを眺めるのも、なかなかおもしろいものです。同じペンギンが水中をスマートに泳ぐ姿と、石の上をたいへんそうに歩く姿のギャップが、ユーモラスに感じられるからでしょう。
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 柵のなかに大きなトリがいます。見ているあいだしばらくまったく動きません。じつに奇妙なほど大きなくちばしをしています。ハシビロコウという中央アフリカのコウノトリの仲間です。この大きな木靴のようなくちばしをカタカタ鳴らして求愛行動をします。
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 じっと水の中に立って、魚やカエルや爬虫類が上がってくる瞬間を狙って、この大きなくちばしで捉えて食べ���そうです。まさに珍鳥で、こっちを向くかなとしばらく眺めていましたが、ぜんぜん向いてくれません。しびれを切らして、小高い青い山に向かいました。
緑の小山の向うにのびのび遊ぶトリやウシや
 緑の小高い山が目に清々しく、トリやツノを生やした白い生きものが遊んでいます。この山には一緒にダチョウがいて、お互い素知らぬ顔でぶらぶらしています。
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 ツノを生やしたものは、シロオリックスと掲示板にあります。ゆったりと歩いてウシ科の動物です、オスもメスも双方ツノを生やしているそうです。数頭が仲よく群れていました。アフリカ原産で、乾燥地帯に住んでいて2~3か月も水を飲まなくても耐えられるそうですが、悲しいことに野生種はすでに絶滅してしまったそうです。動物園で見るしかない貴重な生きものです。
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 小山のうえに2羽ゆったりたたずんでいるトリが見えます。少し遠くてよく見えないから、望遠でよく見ると、頭に冠のようなものをつけています。ホオジロカンムリヅルというアフリカ東南部から来た、ウガンダの国鳥でした。
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 この白い頬が、恋をするとき赤く染まるそうです。どんな風な色ぐあいに染まるか、ぜひ見てみたいですね!
 というわけで、ぐるっと動物公園を回ってみました。取り上げなかった珍しい動物もたくさんいます。今日はここまでで、また来るからね!        
 (磯辺 太郎)
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oriori-ki · 7 years
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第31回 『さいたま大宮公園小動物園』
小さくても充実!さいたま大宮公園小動物園
さいたま大宮公園小動物園は、大宮公園の中にあるその名の通り小さな動物園である。訪れたのは7月の日曜日。無料で入ることができ、動物園の前には子供の遊具もあるので、「近所から遊びに来ました」という感じの親子連れやカップルでにぎわっていた。
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同じく無料で入場できる横浜の野毛山動物園に比べて敷地面積も動物の数も少ないのだが、ツキノワグマやブチハイエナなどの展示もあり、なかなか本格的。大きなバードゲージなどの見どころもしっかりある。
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遊具に注目のサル舎
サル舎には、ニホンザル、シシオザル、ブラウンケナガクモザル、コモンリスザル、フサオマキザルがずらりと展示されている。規模の割にはいろいろな種類のサルが見られるのもこの動物園の大きな特徴のひとつだ。それぞれのサル舎の中には、揺らして遊ぶスプリング遊具や、ボルダリング(※)の壁が設置してあり、とてもユニーク。好奇心旺盛な子ザルがスプリング遊具に乗って遊んでいるところは見られたが、残念ながら“ボルダリングするサル”は目撃できず・・・。やはり、サルにとってはボルダリングなんて簡単すぎてつまらないのでは!?
(※クライミングの一種)
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(ニホンザル)
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(シシオザル)
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迫力の猛獣舎
さいたま大宮公園小動物園は2013年に開園60周年を迎えてリニューアルし、猛獣舎(クマ舎、ハイエナ舎)の鉄柵を強化ガラスの柵に改修した。それにより、餌を食べ自由に動き回るツキノワグマやブチハイエナが目の前で観察できるようになった。
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(ブチハイエナ)
ブチハイエナとガラス1枚隔てて向かい合ったのはおそらく初めてだったが、よく見ると首が不自然なほど長く、もの悲しそうな目をしている。ちなみに、人気アニメ『けものフレンズ』では、ブチハイエナは「出るときは出る、引くときは引く、空気が読めるしっかり者」というキャラらしい。最近では、『けものフレンズ』のお気に入りキャラの動物に会うために動物園に来るファンも多いとか。ファンでなくとも、その動物がどんなキャラ設定なのかオリの前で検索してみるのも楽しそうだ。
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https://www.amazon.co.jp
ツキノワグマは、最初はガラスの前にどっかりと座っていたが、突然動き出して池に飛び込んで水浴びを始めたので、見ていた子供たちは大喜び。どの角度からもよく観察できるように工夫がされており、動物たちの生き生きとした姿が見られる。
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一番の見どころ、バードゲージ
動物園の入口のすぐ左側にあるバードゲージの入口を入ると、中が想像以上に広く、天井がものすごく高いことにまず驚かされる。まさに鳥たちの楽園、フライングゲージである。
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中にいるのは、フラミンゴ、トキ、ハト、ホロホロチョウなどのさまざまな鳥たち。種類の違う鳥たちが解放された空間で飛び回り、歩き回っている。入口に、それぞれの鳴き声を記したカードが置いてあるので、それをもって中に入り鳴き声を聞き分けてみるのも楽しい。
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(クロトキ)
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(ウスユキバト)
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(ホロホロチョウ)
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(インドクジャク)
フラミンゴとすれすれまで接近して記念撮影も可能なので、インスタ映えするピンク色のフラミンゴとのショットも忘れずに。
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周辺エリアも散策
大宮公園小動物園はだいたい1、2時間あれば見終わるので、ついでに周辺スポットを訪れるのが良さそうだ。近くには氷川神社のほか、盆栽美術館や鉄道博物館など、面白そうなスポットが多い。大宮公園内にあるサッカー場や野球場でスポーツ観戦もいいだろう。
今回訪れた時には、ちょうど夏の高校野球の埼玉県予選が行われていた。外まで響き渡る応援や歓声を聞いているうちに無性に観てみたくなり、500円のチケットを買ってスタンドでしばし観戦。大宮東高校の勝利の瞬間に立ち会った。いいな、青春!
動物園プラスアルファで、いろいろな楽しみ方ができそうな大宮公園小動物園。駅からも近くアクセスもいいので、ぜひ訪れてみてほしい。
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(moto)
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oriori-ki · 7 years
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第30回 『周南市徳山動物園』
●動物園の成り立ち
 林立する煙突から吐き出される煙と水蒸気、無数のパイプラインで結ばれた石油化学工場群。かつての徳山市、今の周南市といえば、山口県の南西部、瀬戸内海に面した工業都市として有名です。また、山口毛利家の支藩徳山藩の城下町でもあり、港町でもあります。
 その周南市にある「周南市徳山動物園」は、1960年、旧徳山市の市制25周年を記念して、徳山藩主だった毛利家のお屋敷跡に開園しました。
 動物園は、JRの徳山駅からバスで5、6分(210円)、歩いても20分ほどの距離にあります。動物園入口のバス停から歩いて2,3分のやや小高い場所です。動物園の門のすぐ脇には蒸気機関車D51が鎮座していて歓迎してくれます。入園券は大人一人410円、小学生~高校生は100円、幼児は無料です。もちろん団体や市内在住者の割引、年間パスポートなどの制度もあります。
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●好天に誘われて
 この日(4月23日)は日曜日とあって、園内にはたくさんの家族連れが訪れています。とくに乳幼児を抱いたり手を引いたりしている若い夫婦一家が目立ちます。鮮やかな紫色のフジの花もみごとに咲き誇って、出迎えてくれます。
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 入口からすぐのなだらかな坂に沿って、ダチョウ、グラントシマウマ、ムササビ、ニホンザルなどの園舎が並んでいます。初夏を思わせる快い天気に誘われて、ダチョウやシマウマが元気に運動場で飛び跳ねています。シマウマには小梅(11歳)・小春(2歳)というウマらしからぬ?可愛い名前がつけられています。実はこの2頭は母と娘。小梅はすでに4頭の母親ですが、ここには小春しかいず、他の3頭はほかの動物園に譲られていったそうです。父親は残念ながら亡くなったといいます。飼育場を掃除していた係のお兄さんが教えてくれました。
 坂の左側には天井に網を張った円形のプールがあり、50cmほどに貯められた水の中を5匹のフンボルトペンギンが気持ちよさそうに、しかも相当なスピードでスーイ、スーイと泳ぎ回っています。真っ青な空の下、いかにも涼やかに見える光景でした。
  ●ゾウのトレーニングの意味
「10時半からゾウのトレーニングを始めます」と、場内放送が聞こえました。まもなくです。ゾウ舎は坂道のもっとも高いところにありました。
 2頭のゾウが少し離れて運動場にいます。それぞれのゾウの脇には若い男性と若い女性が立っていて、会話しているかのようになにやらゾウに話しかけています。そのうち、「ジャー」とか「ハーイッ」としか聞こえませんが、二人がそれぞれのゾウに短く号令をかけ、50㎝くらいの細い棒でゾウの巨体の一部を軽くたたきます。号令と一緒に左前足をつつくと、ゾウがその足を折り曲げて三本足になります。同じようにほかの足もそれぞれ折り曲げます。また、4本の足を相互に動かしてなんと横に歩きます。後ろ足を折り曲げて座わります。ごろりと横向きに寝転びます。巨体を揺らしながら号令に従って動くたびごとに、埃が立ち、地響きがします。
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よく見ていると、一つの動作ができるそのたびごとに、なにか小さな餌を飼育員がゾウの口に入れています。
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 若い女性がゾウの巨体を意のままに動かしている、その対比が面白くて、トレーニングを終えたばかりのその女性・佐藤優里さんにいろいろと質問してみました。
「若いんですね。トレーニングする人は向こうで調教している男性とあなたの二人ですか。最近、ある動物園でゾウ遣いの外国の方が不慮の事故で亡くなったけど、この園には外国の方はいないんですか」
「ゾウが初めてこの園にきたころは、ゾウの故郷スリランカから専門のゾウ遣いの方が来て、指導してくれたそうですが、今はすべて日本人で飼育員は4人います」
「号令はなんといってるんですか。いくつ位あるんですか」
「号令は日本語ではなく、スリランカの言葉をもとにして、なるべく短くしたものです。その方がスリランカから来たゾウにとって聞き取りやすいのです。今はアレンジされていて、完全なスリランカ語というわけではなくて日本語との折衷です。全部で40から50くらいの号令があります」
「何か、ご褒美を与えていましたが。ゾウ専用の褒美もあるんですか」
「うまくトレーニングができるとそのたびにご褒美を与えます。大型草食動物用のペレットで、トレーニングの内容によって量を変えます。サツマイモや牧草のご褒美もあります。ゾウはそれで正しいことができるとご褒美をもらえるとわかるのです」
「条件反射を利用するわけですね。野生と違って運動不足になる心配があるんですね」
「そうです。でも、トレーニングは単に運動不足を補い健康維持のために行うだけではなく、ゾウの健康管理にも欠かせないものなのです。たとえば定期的な健康管理に血液検査は絶対必要です。そのためには、まず、おとなしく採血させてくれるようにしなければなりません。それは採血する飼育員の安全のためでもあるんです。大きな体ですけど注射針が痛いと思うのはゾウでも人間と同じです。ここにいるゾウたちはおとなしく横になって採血させてくれますよ。耳から約8ccを採血します」
ご丁寧にありがとうございます。
 園内を一通りみて回り、再びゾウ舎にきてみると、雄のゾウが雌のゾウを巨体を揺すりながら、長い鼻をからめ、頭をぶつけ、体を寄せるなどして追いかけていました。土埃を蹴散らして巨体が鼻息も荒く体をぶつけ合う様は迫力満点です。雄はミリンダ(9歳)、雌はナマリー(10歳)、じゃれ合っているわけではないでしょう、そろそろゾウにとっての恋の季節が到来するのではないでしょうか。
 このゾウの園舎、園の入口近くに引っ越しが決まっており、新施設を建設中でした。
 ゾウ舎の前には「夢広場」というコーナーがあり、いろいろな動物を象った真っ白の小さな素焼が並べられています。その素焼に思い思いの彩りをして、自分だけの動物キャラクターをつくってみようという催しをやっているのです。いましも夢中に色づけをしている幼い姉妹がいます。おばあさんとお母さんと連れだって来園した地元の津江田さんという一家です。動物にふれあう子どもたちの笑顔はなぜいつも屈託がなくすばらしいのでしょうか。
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●雄に決まっちょろーが!
 ゾウ舎を離れて少し下ると、アムールヒョウ、ライオン、アムールトラの檻が並んでいます。これらの猛獣は獲物を見つけて狩りをする時以外はあんまり動かない性分なのでしょう。どれもが四肢を伸ばしてゆったりと横臥したまままどろんでいて、微動すらしないか、腹ばいになったまま頭だけを起こして、じっと来園者を観察しているかのどちらかです。動きがすくなく、見学していても印象的な場面には出会いそうもありません。でも、なにか記事にすることがないかと、意外に大きい猛獣たちの肢体をしげしげと見入っていると、
「このトラ、雄か雌かわからんちゃねー。どっちかなー」
すぐとなりで小学低学年らしい男の子のかわいい声。
「雄に決まっちょろーが。○○タマがみえちょるじゃろー」 
と、甲高い声。
驚いて声の主を探すと、男の子の祖母らしい中年の女性が寝そべっているトラの股間を指さしていました。孫のために普段は口にしない言葉がとっさに飛び出したのでしょうか。それとも、檻のなかとはいえ自然のままの動物の姿をみて、つい道徳とか羞恥心といった人間らしさを忘れてしまったのでしょうか。ここでも動物が人に与えてくれる”生き物”としての本来のあり方を感じさせてくれたのでした。
●「命」を考えさせる
 一般道に架けられた歩道橋を渡ると、そこの一画は「周南の里ふれあいゾーン」と名付けられています。来園者が動物に直接にふれあえるコーナーです。ここはとくに幼稚園・保育園から小学生くらいまでの子どもさんが圧倒的に多いコーナーです。
 大きく三つのゾーンがあり、一つにはヤギ・ヒツジ・ミニブタが一緒にいて、柵のなかに見学者も自由に入れるようになっています。とくにミニブタは東南アジア原産で中国で改良されたというブタで、おとなしい性格といいますが、なによりもその顔つきはずっと見ていてもあきないほどです。乗馬もできるポニーのコーナーもあります。
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 もう一つは、「ふれあいルーム」です。ウサギやモルモット(テンジクネズミ)を抱きかかえたり、えさ(牧草を切りそろえたもの)を自分の手で直接あたえたりすることができるコーナーです。大勢の子どもたちが抱いたりエサをあげたりして思い思いに楽しんでいます。ときおり、「動物たちとふれあって楽しんだら、必ず手を洗ってください」などと、係の人が呼びかけています。でも、あまり細々とした注意事項はありません。
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「高い場所からモルモットやウサギさんを落とさないようにしてください」
これが小動物たちにふれあうときのもっとも大事な注意点で、「それ以外にはほとんど制約をつけていません」と、係の大内珠里さん。
「高い場所から落とすと小動物は大けがをしますので。あとは自由に動物たちにふれあっってもらっています。ときには動物におしっこをかけられたり、爪でひっかかれたりしますが、そうした経験を通じてこのかわいい小さな動物たちも生きているということを実感してもらい、そうした体験から自分たち人間の「命」についても考えてほしいのです」
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 このゾーンにくる途中の壁面には「ネズミのお家づくり」「たまごをかえす」「ゾウつかい見習い」「動物のお医者さん」など、動物園の仕事体験への参加を呼びかけるポスターが何枚も貼られています。体験を通じて動物のひいては人間の営みの意味を考えてもらう、これもこの動物園のポリシーの一つでしょうか。この「ふれあいゾーン」には自然学習館と野鳥観察所が今年(2017年)秋に開設予定で、急ピッチで建設が進められていました。
●キリンの幼子
 ゾウ舎のとなりにはアミメキリンの飼育場があり、ゴンタ・サクラの夫婦と子どもキリンがいます。この子どもキリン、4月6日に生まれたばかりで、まだ名前はつけられていませんが、母親の傍らにすっくと立ち、ときおり後足や前足をピョーンと踊らせたかと思うと、ダアーッとすごいスピードで走り出します。柵に激突しやしないかと心配になりますが、くるりと反転して母の側に立ち止まります。みごとな反射神経です。
●カバのエサやりタイム
 場内放送がカバのエサやりタイムの近いことを告げました。チンパンジー・マントヒヒ・マンドリルの檻をみながらカバの飼育舎に向かいました。まだカバはその大きな体をほとんどプールに沈めていて、ときおり短い尻尾をプルプルと揺るがすだけで動きません。そのうち、赤ちゃんの頭ほどの草茶色の塊がカバの尻尾の下からプカリと浮き上がってきました。「あっ、ほら、みて、みて!カバさんがウンチしてるよ」と若いお母さん。「ほんとだ。おっきいねー。カバさんのウンチ」と4,5歳の子どもさん。
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「カバさんのエサやり希望の方はこちらに並んでください」
飼育員の誘導でたちまち数十人もの列ができます。主役はもちろん子どもたち。
 手に一握りの草の束を持った飼育員がカバ舎に入り、7,8段ほどの階段を降りて、プールに沈んでいるカバの背中をその束でつつくと、ゆう~った~りとカバが動き出し、一段一段と階段を登り、コンクリートのたたきにその巨体を運んできます。
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「トンソクみたいね」
階段にかけた前足をみてお母さん。そんな発想はなかなかできませんね。
 やがてエサの草束につられて所定の位置に導かれたカバさん、今度はエサの草を鼻先にくっつけられるやいなや自分の顔を飲み込むくらいに大きな口を開けます。上下の大きな歯が丸見えです。
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 その口をめがけて少し高い位置にある柵の檻越しに子どもたちが草の束を放り込むのです。束といっても、もちろんカバにとっては一口にもならないほどの大きさです。放り込まれた草はあっという間に噛まれ砕かれ、喉の奥に吸い込まれていきます。そして次の草の束が差し出されるとガバッとまた口が開かれます。そのうちカバも疲れたのか、口の奥には草の束がたまっていきますが、口だけはしっかりと開けてくれます。
 こうして延々と並んだエサやりの行列が少しずつ前に進んでいきます。全部の子どもたちがエサをやるまで、相当の時間がかかるでしょうが、それまでカバは辛抱強く口を開け続けてくれるのでしょうか。
 この動物園には、哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類など106種389点の動物たちが飼われています。ここまでこの記事で紹介したのはそのほんの一部でしかありません。幸いなことに、この動物園で働いている飼育員さんたちが書いた「徳山動物園を100倍楽しむ本」という冊子があり、「365日毎日休まずに動物たち」を見てきた飼育員さんが興味深い話を語ってくれています。園内で購入できます(一部350円)ので、ぜひ参考にしてください。
(緒方 三郎)
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oriori-ki · 7 years
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第29回 『広島市安佐(あさ)動物公園』
ひろびろとした安佐の高台に
 広島の街は、山から流れてきた川が運んだ土砂でできた三角州の街です。太田川ほかデルタ6川が流れていて、橋がたくさん架かっています。維新後の日清戦争のころには、明治天皇の行在所(あんざいしょ)があり、広島大本営もあって、帝国議会が開かれたそうです。
 広島市安佐動物公園に行くには、広島駅前から広島電鉄のバスに乗って約1時間かかります。朝早くからバスはあり、8時から14時過ぎまでの間は1時間に3~4本あるので便利です。街の北部をゆったりとバスは走り、郊外の高台にある動物園に到着しました。
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 入口には休日のせいか、国外からの入園者がちらほら見られます。入園料は大人510円、子供と65歳以上の大人170円。
 ここには約150種1650点の動物がいて、公園全体では約51ha、動物のいる観覧部分25.6haと、まずまずの規模で、順路をくまなく歩けば3.2kmにもなります。
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 園内に入ると正面にサルが、やや小さめなヒヒ山にいました。アヌビスヒヒとあり、サバンナヒヒ、ドグエラヒヒとも呼ばれて、アフリカ中央部に広く分布しています。夫婦なのか睦まじく毛づくろいしたり、暑いためかゴロンと無防備にしばらく仰向けに寝ていたりするヒヒもいました。ヒヒにとって動物園は平和な世界なのでしょう。
 野生のアヌビスヒヒの群れは強いリーダーに率いられ、秩序ある社会構造をもっています。体長60~80cm 、体重15~30㎏と小柄ながら、ヒョウやチーター、ライオンなどに狙われると、鋭い犬歯をもっていて噛みついて追い払うことも間々あるといいます。同じサルの仲間チンパンジーにも襲われることがあるそうです。
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のびのびとした動物公園
 ヒヒ山のとなりは水辺になっていて、ペリカンとフラミンゴがいました。ベニイロフラミンゴは鮮やかな色で目立ちます。1本足で立っているもの、2本足で立っているもの、いろいろです。なかには急に暑くなったためか、たくさんのフラミンゴが脚を折って地べたに横たわっていました。珍しいようすなのでカメラにおさめてみました。
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 そばに動物科学館があり、なかに入ると正面にインドゾウの骨格標本が並んでいました。動物のからだと暮らしについて、楽しみながら学習できるよういろいろな装置があるほか、ビデオや動物に関する図書がいっぱいあります。
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 カウンターには本園発行の冊子「すづくり」が置いてあり、無料で提供されます。第46巻にもなっています。ここには動物園の最新ニュースや飼育こぼればなし、動物写真コンクール入賞作品展などが掲載されていました。なかなかすばらしい作品があり、見て楽しいし勉強にもなります。飼育員さんや担当獣医さんの汗の結晶です。また、少し古くなりましたが、「すづくり 臨時増刊号 開園20周年記念誌」(1992年3月発行)も販売されています。
 広々とした半分砂地で半分が緑地の景色が目に入ってきました。何もいないのかと目を凝らすと、砂地の木陰にぽつんとシマウマが1頭はなれていました。緑地にはなにもいません。だらだら道を降りていくと、数頭のキリンが長い首を傾けてエサを食べていました。
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 そこは「キリンテラス」になっていて、キリンは一段低いところのエサ場や小屋にいて、いわば入園者とキリンとが同じ目線で「お話」できるような設計になっていました。このキリンテラスは遊歩道と同じ高さで、わざわざ階段を上らなくても入園者は長い首のキリンの目の位置と平行な目線になります。入園者にとってうれしい設計です。
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 キリン舎のとなりにはシマウマの鉄筋ハウスがあって、たくさんのシマウマが仲よく群れています。その向こうに、さきに見たサバンナテラスの砂地の遊び場が広がっています。砂地と緑地の境目には岩が積み上げられていて、行き来できないようになっています。
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 この動物公園では、できるだけ柵やオリを目立たなくして、入園者にごく自然な動物のすがたを見せるさまざまな工夫をこらしているといいます。
アフリカゾウの種類には…
 キリンの向かいにアフリカゾウがのそのそと歩いていました。2頭しか見えなかったけれど、タカ(オス)、アイ(メス)、メイ(メス)と3頭いると掲示板にありました。
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 ゾウの種類は、アフリカゾウとアジアゾウの2種だと思っていたら、アフリカゾウには、サバンナゾウとマルミミゾウとに分けられると説明にあります。
 タカとメイがはじめいたのですが、ミトコンドリアの遺伝子調査でメイがマルミミゾウで別種であることがわかったため、この2頭のあいだには子供ができないことが判明しました。そこで、群馬サファリパークからメスのサバンナゾウ・アイを2011年11月に迎えたと、ゾウ舎のまえの掲示板に書いてありました。
 また、ゾウは人を見分ける能力をもっていて、いつもエサをくれたり世話をしてくれたりする人には甘えたり指示に従ったりするいっぽう、ゾウ狩りをする人を見つけると覚えていて、攻撃的になって襲ったりするそうです。
 さらに鼻の先には突起した指のような部分があって、仁丹のような細かいものや豆腐のような壊れやすいものを上手につかむそうです。足の裏の繊細さや低周波の音をとらえるなど、ヒトと違った特殊な才能がいろいろあります。動物園に来たらそういう場面に出遭ってみたいですね。注意して見ていればきっと出遭うことでしょう。
ピーチクパークであそぼうよ!
 その先を歩いていくと、いかにも楽しそうな門の入口がありました。子供たちのお気に入り、カラフルな鳥類のインコやクジャクがいます。小さなリスさんやペンギンさん、カメさんがいます。ウサギもヤギもヒツジもいます。乗馬体験のできるポニーもいます。
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 そしてなにより子供たちがうれしがる、水遊びができる細長い池がありました。靴もクツシタも脱いで素足でバシャバシャ騒ごうよ、お日さまも暖かく、風邪は引かないでしょう。ここで遊んでいると、いくら時間があっても足りません。まだ閉園になるまでたっぷり時間はありますから、だいじょうぶ。一緒に遊んで騒ぐにはちょっと気恥ずかしいので、売店で買ったソフトクリームをなめながら、彼ら彼女らを目で追って、一緒に遊んだつもりで、先に足を運びましょう。
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お日さまを浴びて喜ぶミーアチャット
 さてどう廻ろうか迷いましたが、クロサイがおもしろい形で寝ているのに出会いました。だいたい昼間は水辺で水浴びしたり、木陰で居眠りしたりするのが習性のようです。
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 環境破壊や乱獲のため少なくなり、一時期3000頭以下になってしまいましたが、その後少しずつ増え2013年には約5000頭にまでになったそうです。
 サイのとなりには、頭に湯上りのタオルを乗せたような、やっぱり横になったものが並んで休んでいました。アフリカスイギュウとあります。遠くにいたので望遠でのぞいてみると、頭の上の白いものは、ツノのようです。怖そうな顔をしていますが、珍しいおもしろい形なのでじっと見てしまいました。
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 スイギュウは、昼間は水浴びしたり泥浴びしたりしています。薄暗くなってから活動したり食事をしたりします。野生のスイギュウは草原で100頭以上が群れをつくって生息しています。外敵に襲われて、いざというときに、この角で応戦するのだそうです。
 さて先に進むと、いかにものびのびとして無防備な格好して寝ているものがいました。ミーアキャットです。2本足でヒトのように背筋を伸ばしてまっすぐに立つ格好がおもしろく、目がくりくりしてかわいらしい顔が印象深く、こんな格好して寝ていると、別のもののようです。1匹くらいは起きて得意の立ち姿を見せてほしいものです。
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「うるさいな、いまは貴重なお日さまにあたって、日向ぼっこの真最中なの! かんべんしてよ、寒さに弱いんだからさ!」
 野生種はアフリカ南部に生息し、からだも小さくかわいい顔をしているのですが、なんとサソリや爬虫類や鳥類を食べる雑食のけっこう獰猛な生きものなのです。かわいい顔にひかれてペットとして飼われているようですが、狂犬病を仲介するので要注意! です。
エサをもらいに立ち上がるライオン
「いまからライオン舎では、エサやりをしますので、至急お集まりください」
 園内放送が流れ、ライオンのエサやりに入園者を誘います。園内ガイドマップを広げて、急な道を急ぎ足で駆け付けると、すでに先客でいっぱいでした。
 台のうえに乗った飼育係りのお兄さんが、ライオンの頭部の骨格を手にもって、鋭い牙で肉をかみ砕くようすを、下あごと上あごを嚙み合わせて説明しています。そのあと、
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「オリに入って、これからじっさいにエサをあげますから、みなさん、見ていてください。ライオンが立ってエサをくわえます。迫力がありますよ、大きいのがよくわかります」
と、オリに入っていきました。大丈夫かなと心配していると、ライオンが入れないように  なっている手前のオリに入り、はしごを上り高いところにある窓から与えるのでした。
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 ライオンは立ち上がって、大きな肉の塊をくわえると、そそくさとお客の前から遠ざかって奥のほうで咀嚼しています。立ち上がるライオンはさすがに大きく、迫力満点、百獣の王の貫録がありました。めったに見られない姿ですから、動物園に行かれる場合には、ぜひ、その時間にあたるようお勧めします。
「おーい、そんなほうに行かないで、せっかくだから、みんなのまえで食べてくれよ」
 と飼育員のお兄さんが呼びかけてくれますが、素知らぬ顔をしてライオンは、観客にはよく見えない居心地がいい奥のほうにくわえていって食べていました。3回ともくわえて行きました。たくさんの観客のまえではご馳走も安心して食えないのでしょう。自分の気に入った場所で食べるのがいちばんと、ライオンはいっているのでしょう。
 でも、観客としてはパンダのように、目のまえで��々と食べてほしかったですね。
 ライオン舎のとなりには、トラやヒョウが並んでいましたが、やっぱり寝ているばかりで、残念ながら生きている野生の動物らしい姿には会えませんでした。 
花ざかりには動物公園へどうぞ
 さて、広い園内には150種の動物がいますから、全部を1日で見切るのは大急ぎになります。ちょっと休んで目を遠くにやれば、さまざまな緑に囲まれて色鮮やかな花々が美しく咲いて微笑んでくれます。
 園内の緑あふれる道を散歩する楽しみもいっしょに味わってみてはいかがでしょうか。サクラ、ツツジ、フジなど花の時期には咲き乱れます。そうすれば相乗効果で、より豊かなすがたの動物たちにも会えるかもしれません?
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 さて散歩のさきには、フタコブラクダが脚を折って憩っていました。背中にお客さんを乗せて周回しなくていいので、エサを食べてゆっくり休養しているのでしょう。家畜にとって、動物園は安心して生きのびられる楽園なのでしょうか。
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 そのとなりにはマレーバクの親子がいました。子供のバクは池に入っておお喜び。泳ぐというより水のなかをバシャバシャ歩いている感じで、長い鼻の奥にある目がクリッとしてかわいらしく、お腹から腰にかけての白い毛が鮮明です。
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 親のバクは元気にあちこち散歩しながらエサを探し回って、べつに子供をかまうわけでもありません。さすがに一回り大きく、白い毛の部分が広がっていました。
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 ここにはツキノワグマもイノシシもタヌキもキツネもいます。おとぎ話の絵本に出てくるのではなく、本物のタヌキがおもしろい顔をじかに見せてくれます。
 ほかにもカモシカもブラックバスも、中国から来園したレッサーパンダも、鳥類では真っ白いきれいな大きな羽が印象的なコウノトリもタンチョウヅルもいます。
 ここ広島市安佐動物公園では、ゆったりとのびのびとした敷地のなかに、世界各地に生きる動物たちが生き生きしたうれしそうな姿をして、お客さんを迎えてくれるはずです。ことに花の咲きはじめる春の日には、また秋の紅葉の季節のお休みの日には、緑豊かな動物公園で一日過ごすのは、何といっても心楽しい休養日になることでしょう。
 ぜひお出かけになって、お好きな生きものたちとじっくり「会話」してみてはいかがでしょうか。目と目で見つめ合ってみると、どんな反応をしてくれるでしょうか。いろいろな「世界」が広がって、こころ豊かな安らぎの時間となることでしょう。
(磯辺 太郎)
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oriori-ki · 7 years
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第28回 『智光山公園こども動物園』
○智光山公園について
「香りの宇治,色の静岡,味の狭山」と称されるお茶の産地として有名な埼玉県狭山市は,関東平野の西南部にあります。市内には山はなく,市街域を外れるとすぐに畑が拡がる東京近郊の中都市です。
 その狭山市にある市営の智光山公園は,東京ドーム11個分の広さがあり,アカマツ・クヌギなどの武蔵野の自然林をそのまま取り込んで造られた都市型公園です。広大な公園内には都市緑化植物園,わんぱくの森,自然生態観察園や総合体育館,ヘラブナ釣り場,テニスコート,キャンプ場,ピクニック広場などの施設があり,市内や近在の幼稚園や小学校などの格好の遠足地としてもよく利用されています。
 西武新宿線狭山市駅西口から公園行きのバスが運行されていて,20分ほどの所要時間です。いわゆる圏央道の狭山日高インターチェンジからは2キロ弱のところにあります。
○こども動物園
 終点の「智光山公園」バス停から16面もあるテニスコートの脇を通り,約500mほど歩くと「こども動物園」の入り口に着きます。動物園は,1989年に全面開園し,広さは3.3haです。動物園だけの駐車場も用意されています。入園料は大人一人200円(小中学生50円,未就学児童無料)です。
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 その名前のとおり,子どもたちがいつでも自然に親しめ,動物とふれあうことができることを設立の趣旨にしています。そのためにこの動物園には,ライオンやゾウやキリンなど,一般的に飼育されている動物はいません。その代わりに,ニワトリやキジやオナガといった身近な鳥も含めたたくさんの種類の鳥類が飼われています。また,ブタやヤギといった家畜の飼育もなされています。他にミーアキャットやテンジクネズミといった愛らしい小動物もたくさんいます。
 今回は,興味のある飼育の話と催しものの様子,そして珍しい鳥類の姿をおもに紹介することにしましょう。
○営巣場所による棲み分け
 入り口からすぐ左に下ると,修景池と名付けられた池があります。ここは鳥たちの棲む一画で周囲を網で囲ってありますが,上には覆いがありません。放し飼いにされているのです。フラミンゴやコブハクチョウ,コクチョウ,クロエリハクチョウ,マガモなどが思い思いにエサをついばみ,羽をつくろい,泳ぎ回っています。
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「放し飼いで鳥が逃げ出したりしないんですか?またこんなにいろんな種類がいて,テリトリーをめぐってけんかはしないのですか」
と,飼育員の関谷さんに聞くと,
「羽をつめてあるので飛べません。それぞれの鳥は巣を営む場所が違うので,けんかはしません」
とのこと。えさは朝夕に与えるが,「病気にならないように気を遣う」そうです。
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 そういえば,入園者は「1回100円」のえさやりができるのですが,「鳥インフルエンザがはやっていますのでえさやりはしばらく休みます」と掲示してありました。しかし,ここは全体を覆うケージがなくて自由に野鳥が出入りできるので,野鳥から感染する恐れはないのでしょうか。少し心配になりました。
○卵かけごはんだと何杯分?―タンチョウの卵
 たくさんの種類の鳥がいるのもこの動物園の特色です。珍しい鳥はあとで写真を掲げることとし,ここでは貴重なご報告をしておきましょう。
 タンチョウのことです。北海道の釧路湿原が生息地としてよく知られていますが,頭のてっぺんが朱色,羽を広げると2.5mにもなる大型のツルの一種です。ここにはつがいで飼われています。
 4月16日に訪れたとき,なんとタンチョウの脚下に卵が二つあるのに気づいたのです。8日の写真で確認すると,そのときは1羽が卵を抱きかかえて座り込んでいたので卵が見えなかったのでした。8日は午前中が雨の少し肌寒い日だったので,卵を抱きかかえて温めていたのでしょう。しかしこの16日は,快晴で気温も20度を超えていたので,親鳥は抱卵を一時止めたのでしょう。立ち上がって,脚でさかんに卵をくるくると回していました。そのために卵をみることができたのです。
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4月8日の様子
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4月16日の様子
 タンチョウのケージの外側にニワトリとアヒルとタンチョウの卵の実物大写真が掲示されていますが,この日はその大きさを本物で実感できたのです。ラッキーでした。
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「わあっ,大っきな卵!お母さん,カメラを貸して。写真を撮っとかなくちゃあ」
と大喜びではしゃぐ子どもたちと一緒になりました。むりもありません。タンチョウの卵を目の当たりにする機会など滅多にありませんからね。素直に驚く子どもたちに対して ,
「おおきいわねー。卵かけご飯にすると何杯分できるのかしら」
現実的な計算でその大きさを伝えようとするのは,お母さん。この仲良く気さくな家族は,さいたま市から来た浜田さんというご一家でした。
○ふれあい広場
 この動物園の大きな特色は,その名称の通りに「子ども」を主役として飼育動物が選ばれ,催し物も構成されていることです。その催し物の一つに「ポニーコーナー」があります。4歳から小学生までを対象に1回200円の有料ですが,平日の13時30分,土日祝日の10寺30分,13時30分からの60分間,ポニーに乗馬できるというものです。子どもたちに根強い人気があります。
 他に「ふれあい広場」という催し物も用意されています。毎日(雨天時は中止),10時30分,13時30分,15時30分からそれぞれ30分間,テンジクネズミ,ヒヨコ,ヤギ,ヒツジなどにさわることができるのです。私が訪ねた8日も16日も大勢の子どもたちが,「うわぃー」とか「きゃあっ」とか,興奮と好奇心と愛情に満ちた歓声をあげて動物たちを抱きかかえ,背中をなでて楽しんでいました。
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 そんな「ふれあい広場」のなかで,幼少の子どもも小学生もその親御さんたちだれもが一様に優しい顔で愛おしみふれあっているのはテンジクネズミでしょう。一般にはモルモットとよばれていますが,20cm ほどの体長にふっくらとした体毛,頭にちょんと乗せた小さな耳,短い四肢,ずんぐりとした体つき,なんとも可愛らしいのです。
 広場の中央に吹き抜けの建物があり,その中で大勢の子どもたちがテンジクネズミを1頭ずつ胸に大事そうに抱えて,いとおしみ,愛でている様子は,なんと和やかで微笑ましく平和な光景でしょうか。子どもたちの笑顔はこの愛らしい動物と同じ純真さから生まれるのでしょうね。
○おかえり橋―テンジクネズミのお食事タイム
 こうした幸せな30分間のふれあいタイムが終わると,いよいよ「おかえり橋」となります。子どもたちは,さも残念そうにテンジクネズミを用意された1m四方ほどの浅い木箱に戻します。広場中央の建物から飼育部屋のある愛玩舎までの間を幅20cm,高さ60cmほどの細い組み立て式の橋でつなぎます。この橋の長さは21m,日本一の長さだそうです。橋の両側の地面には石灰で白い線がひかれ,子どもたちはその外側から観察する決まりです。子どもたち  浅い木箱のテンジクネズミ,この箱とはみんなお利口です。線を越えるような子どもがいるとその子のお姉ちゃんが注意します。親たちも前に抱きかかえたり,肩車して子どもに少しでもよく見えるようにと懸命です。
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 一通りのガイドがされると,いよいよ「おかえり」の開始です。まず大きなベルがチャリンチャリンと鳴らされます。すると箱の中にてんでばらばらにいたテンジクネズミたちが急に背筋を伸ばして箱の縁に前足をかけて身を乗り出し,チィチィ,キィキィと鳴き声を立てながら一斉に愛玩舎の方向に顔を向け,そわそわとし始めます。すでに最初のチャリンで彼らはわかったのです。食事の時間がきたことを。ころや良し,飼育係のお姉さんが一枚だけのぞいてあった架け橋を箱につないで,再びチャリンチャリンと鈴を打ち振ると,モコモコ,よちよち,ぞろぞろ,テンジクネズミ君たちは一列になり,前を行く仲間のお尻に鼻先をくっつけて,後ろからはお尻を鼻で押されて,愛玩舎に向かって一生懸命に行進を始めます。そのなんともいえない愛らしさに見物の子どもたちもその親御さんたちも,声をそろえて「きゃーっ,可愛い」と破顔一笑,みんなが幸せいっぱいの表情をみせてくれるのです。写真はその一部です(ネットで「智光山公園,テンジクネズミ」と検索すると動画もみることができます)。
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「日頃からエサは1日3回,与える場所は愛玩舎と決め,その度に鈴を鳴らしています」と,飼育係でこの日「おかえり」の鈴を鳴らした関口さんが教えてくれました。動物の習性に人の手になる条件反射をうまく利用したイベントです。
○貝は動けるんですか?―キタノアカヒラタナゴの人工ふ化
 この動物園にはミニミニ水���館といって,市内を流れる入間川に棲む魚や両生類を展示する施設もあります。ヤリタナゴ・キンブナ・ウグイ・モロコ・ホトケドジョウ・メダカなどの身近な魚たち,アカハライモリ・イモリなどの両生類,マムシなどの爬虫類がそれぞれ水槽で展示されています。
 この日(16日),この水族館の前でキタノアカヒラタナゴの人工ふ化について,飼育員の中村さんが説明していました。みると水槽に長さが10cmはあろうかと思われる大きな二枚貝がいます。その隣には20cmほどの浅い角皿に水が張られ,その中に黄色い1mmくらいのつぶつぶが無数に浮かんでいます。
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「これがタナゴの卵です。黄色くなっているのは受精した証拠です」
 タナゴ類は,近年,全国的にその生息数が極端に減り,絶滅が心配されています。川や池の水質の汚濁などの要因に加えて,貝類が減少しているためです。タナゴ類は二枚貝の体内を産卵の場所にしていますので,産卵場所となる二枚貝,とくにドブガイの減少が致命的になっているそうです。タナゴの養殖は急務ですが,これには大きな壁があります。貝の飼育が非常に難しいためです。とくに二枚貝のえさは水中のプランクトンですから,人が飼育する場合,その代替えさがないのです。
「ここにいるドブガイには実際の川の水を汲んできて与えています」
と中村さん。
「なぜ貝に産卵するのですか,かえって能率的ではないですね」
「いえ,貝に産卵すると他の魚に卵を食べられる心配がありませんし,遠くに卵を運んでもらえるという長所もあるんです」
「ええっ,貝は動けるんですか?」
「動けますよ。一晩で1,2キロ動いた例も報告されていますよ」
最前からしきりに質問をぶつけているのは所沢市からきたという神谷さん母子。
「そうなんですか,勉強になります」
 中村さんは,そうした絶滅の危機を人工採卵,人工授精で救おうと研究を重ねているそうです。目の前の受精卵は雌の体から人為的に絞り出した卵に雄の精子をやはり人為的に絞りかけたものだそうです。
○鳥の仲間たち
 この動物園には,パルマワラビー,ワオキツネザル,カピパラ,ブラジルバク,コツメカワウソなどの哺乳動物もいますが,紙数の関係で紹介できません。最後にこの動物園の特色ともいえるたくさんの鳥類のなかから,目立ったいくつかの鳥を写真で紹介しておきましょう。
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カラフトフクロウ(ユーラシア北部)
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日本のフクロウ 
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ワライカワセミ(オーストラリア)
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ニジキジ(ネパール等ヒマラヤ山脈)
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東天紅(日本,三大長鳴鶏の一つ, 25秒の長鳴き記録)
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尾長鶏(日本,日本の鶏の産出に関与)
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小国鶏(遣唐使が唐から持ち帰る。元闘鶏,今は観賞用)
(緒方三郎)
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