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#横浜脱毛
cubiaesthetic · 1 year
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kennak · 1 month
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「消滅可能性」744自治体 人口戦略会議 239自治体が脱却 / 日本農業新聞
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kachoushi · 1 year
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各地句会報
花鳥誌 令和5年5月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年2月2日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
厨女も慣れたる手付き雪掻す 由季子 闇夜中裏声しきり猫の恋 喜代子 節分や内なる鬼にひそむ角 さとみ 如月の雨に煙りし寺の塔 都 風花やこの晴天の何処より 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月4日 零の会 坊城俊樹選 特選句
暗闇坂のチャペルの春は明日あたり きみよ 長すぎるエスカレーター早春へ 久 立春の市の算盤振つてみる 要 冬帝と暗闇坂にすれ違ふ きみよ 伊達者のくさめ名残りや南部坂 眞理子 慶應の先生眠る山笑ふ いづみ 豆源の窓より立春の煙 和子 供華白く女優へ二月礼者かな 小鳥 古雛の見てゐる骨董市の空 順子 古雛のあの子の部屋へ貰はれし 久
岡田順子選 特選句
暗闇坂のチャペルの春は明日あたり きみよ 冬帝と暗闇坂にすれ違ふ 同 大銀杏八百回の立春へ 俊樹 豆源の春の売子が忽と消え 同 コート脱ぐ八咫鏡に参る美女 きみよ おはん来よ暗闇坂の春を舞ひ 俊樹 雲逝くや芽ばり柳を繰りながら 光子 立春の蓬髪となる大銀杏 俊樹 立春の皺の手に売るくわりんたう 同 公孫樹寒まだ去らずとのたまへり 軽象
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月4日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
敬􄼲な信徒にあらず寒椿 美穂 梅ふふむ野面積む端に摩天楼 睦子 黄泉比良坂毬唄とほく谺して 同 下萌や大志ふくらむ黒鞄 朝子 觔斗雲睦月の空に呼ばれたる 美穂 鼻歌に二つ目を割り寒卵 かおり 三􄼹路のマネキン春を手招きて 同 黄金の国ジパングの寒卵 愛 潮流の狂ひや鯨吼ゆる夜は 睦子 お多福の上目づかひや春の空 成子 心底の鬼知りつつの追儺かな 勝利
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月6日・7日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
潮騒を春呼ぶ音と聞いてをり かづを 水仙の香り背負うて海女帰る 同 海荒るるとも水仙の香の高し 同 坪庭の十尺灯篭日脚伸ぶ 清女 春光の中神島も丹の橋も 同 待春の心深雪に埋もりて 和子 扁額の文字読めずして春の宿 同 砂浜に貝を拾ふや雪のひま 千加江 村の春小舟ふはりと揺れてをり 同 白息に朝の公園横切れり 匠 風花や何を告げんと頰に触る 笑子 枝川やさざ波に陽の冴返る 啓子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月8日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
雪を踏む音を友とし道一人 あけみ 蠟梅の咲き鈍色の雲去りぬ みえこ 除雪車を見守る警備真夜の笛 同 雪掻きの我にエールや鳥の声 紀子 握り飯ぱりりと海苔の香を立て 裕子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月10日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
東風に振る竿は灯台より高く 美智子 月冴ゆる其処此処軋む母の家 都 幽やかな烏鷺の石音冴ゆる夜 宇太郎 老いの手に音立て笑ふ浅蜊かな 悦子 鎧着る母のコートを着る度に 佐代子 老いし身や明日なき如く雪を掻く すみ子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月11日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
朝光や寺苑に生るる蕗の薹 幸風 大屋根の雪解雫のリズム良き 秋尚 春菊の箱で積まれて旬となる 恭子 今朝晴れて丹沢颪の雪解風 亜栄子 眩しさを散らし公魚宙を舞ふ 幸子 流れゆくおもひで重く雪解川 ゆう子 年尾句碑句帳に挟む雪解音 三無 クロッカス影を短く咲き揃ふ 秋尚 あちらにも野焼く漢の影法師 白陶 公魚や釣り糸細く夜蒼し ゆう子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月13日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
犬ふぐり大地に笑みをこぼしけり 三無 春浅しワンマン列車軋む音 のりこ 蝋梅の香りに溺れ車椅子 三無 寒の海夕赤々漁終る ことこ 陽が風を連れ耀ける春の宮 貴薫 青空へ枝混み合へる濃紅梅 秋尚 土塊に春日からめて庭手入 三無 夕東風や友の消息届きけり 迪子 ひと雨のひと粒ごとに余寒あり 貴薫
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月13日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
浅春の眠りのうつつ出湯泊り 時江 老いたれば屈託もあり毛糸編む 昭子 落としたる画鋲を探す寒灯下 ミチ子 春の雪相聞歌碑の黙続く 時江 顔剃りて少し別嬪初詣 さよ子 日脚伸ぶ下校チャイムののんびりと みす枝 雪解急竹はね返る音響く 同 寒さにも噂にも耐へこれ衆生 さよ子 蕗の薹刻めば厨野の香り みす枝
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月14日 萩花鳥会
水甕の薄氷やぶり野草の芽 祐子 わが身共老いたる鬼をなほ追儺 健雄 嗚呼自由冬晴れ青く空広く 俊文 春の園散り散り走る孫四人 ゆかり 集まりて薄氷つつき子ら遊ぶ 恒雄 山々の眠り起こせし野焼きかな 明子 鬼やらひじやんけんで勝つ福の面 美惠子
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令和5年2月15日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
吹雪く日の杣道隠す道標 世詩明 恋猫の闇もろともに戦かな 千加江 鷺一羽曲線残し飛び立てり 同 はたと止む今日の吹雪の潔し 昭子 アルバムに中子師の笑み冬の蝶 淳子 寒鯉の橋下にゆらり緋を流す 笑子 雪景色途切れて暗し三国線 和子 はよしねまがつこにおくれる冬の朝 隆司 耳目塗り潰せし如く冬籠 雪 卍字ケ辻に迷ひ���せぬか雪女 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月16日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
指先に一つ剥ぎたる蜜柑の香 雪 大寒に入りたる水を諾ひぬ 同 金色の南無観世音大冬木 同 産土に響くかしは手春寒し かづを 春の雷森羅万象𠮟咤して 同 玻璃越しに九頭竜よりの隙間風 同 気まぐれな風花降つてすぐ止みて やす香 寒紅や見目安らかに不帰の人 嘉和 波音が好きで飛沫好き崖水仙 みす枝 音待てるポストに寒の戻りかな 清女 女正月昔藪入り嫁の里 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月17日 さきたま花鳥会 坊城俊樹選 特選句
奥つ城に冬の遺書めく斑雪 月惑 顔隠す一夜限りの雪女郎 八草 民衆の叫びに似たる辛夷の芽 ふじほ 猫の恋昼は静かに睨み合ひ みのり 薄氷に餓鬼大将の指の穴 月惑 無人駅青女の俘虜とされしまま 良江 怒号上げ村に討ち入る雪解川 とし江 凍土を突く走り根の筋張りて 紀花 焼藷屋鎮守の森の定位置に 八草 爺の膝捨てて疾駆の恋の猫 良江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月19日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
古玻璃の奥に設ふ古雛 久 笏も扇も失せし雛の澄まし顔 眞理子 日矢さして金縷梅の縒りほどけさう 芙佐子 梅東風やあやつり人形眠る箱 千種 春風に槻は空へ細くほそく ます江 山茱萸の花透く雲の疾さかな 要 貝殻の雛の片目閉ぢてをり 久 古雛髪のほつれも雅なる 三無 ぽつねんと裸電球雛調度 要
栗林圭魚選 特選句
紅梅の枝垂れ白髪乱さるる 炳子 梅園の幹玄々と下萌ゆる 要 濃紅梅妖しきばかりかの子の忌 眞理子 貝殻の雛の片目閉ぢてをり 久 古雛髪のほつれも雅なる 三無 老梅忌枝ぶり確と臥龍梅 眞理子 山茱萸の空の広さにほどけゆく 月惑 八橋に水恋うてをり猫柳 芙佐子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月21日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
師を背負ひ走りし人も雪籠 雪 裏庭開く枝折戸冬桜 同 天帝の性こもごもの二月かな 同 適当に返事してゐる日向ぼこ 一涓 継体の慈愛の御ん目雪の果 同 風花のはげしく風に遊ぶ日よ 洋子 薄氷を踏めば大空割れにけり みす枝 春一番古色の帽子飛ばしけり 昭上嶋子 鉤穴の古墳の型の凍てゆるむ 世詩明 人の来て障子の内に隠しけり 同 春炬燵素足の人に触れざりし 同 女正月集ふ妻らを嫁と呼ぶ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月26日 月例会 坊城俊樹選 特選句
能舞台昏きに満ちて花を待つ 光子 バス停にシスターとゐてあたたかし 要 空に雲なくて白梅すきとほる 和子 忘れられさうな径の梅紅し 順子 靖国の残る寒さを踏む長靴 和子 孕み猫ゆつくり進む憲兵碑 幸風 石鹸玉ゆく靖国の青き空 緋路 蒼天へ春のぼりゆく大鳥居 はるか
岡田順子選 特選句
能舞台昏きに満ちて春を待つ 光子 直立の衛士へ梅が香及びけり 同 さへづりや鉄のひかりの十字架へ 同 春の日を溜め人を待つベンチかな 秋尚 春風や鳥居の中の鳥居へと 月惑 料峭や薄刃も入らぬ城の門 昌文 梅香る昼三日月のあえかなり 眞理子 春陽とは街の色して乙女らへ 俊樹
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年2月 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
ポケットの余寒に指を揉んでをり 勝利 黒真珠肌にふれたる余寒かな 美穂 角のなき石にかくれて猫の恋 朝子 恋仲を知らん顔して猫柳 勝利 杖の手に地球の鼓動下萌ゆる 朝子 シャラシャラとタンバリン佐保姫の衣ずれ ひとみ 蛇穴を出て今生の闇を知る 喜和 鷗外のラテン語冴ゆる自伝かな 睦古賀子 砲二門転がる砦凍返る 勝利 小突かれて鳥と屋や に採りし日寒卵 志津子 春一番歳時記の序を捲らしむ 愛
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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tatsuyafurusawa · 2 years
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『室長、30年ぶりに剣士になる』
夜な夜な公園で素振りするdays . 『室長、30年ぶりに剣士になる』
鶴見市場駅から徒歩2分、八丁畷駅から徒歩5分。お顔そりとヘッドスパで眠れる理容室、理容フルサワ「LIVINGROOM」室長の古澤達也です。 乾燥肌に特化したエステシェービングと眠れるヘッドスパで忙しい毎日に癒しのひとときを提供するメンズバーバーです。 カットはメンズオンリー、お顔そりは男女問いません。疲れたなと思ったら、または乾燥肌にお悩みでしたら、どうぞお気軽にお立ち寄りください。   2022年の10月は激動の月となりました。 先日お知らせました髭脱毛、こちらを正式に始めたのがまずひとつ。 https://riyo-furusawa.yokohama/blog/2022/10/13/7874   そして時を同じくしてもうひとつ新たに始めたことがあります。 それは剣道です。   僕、小中高から20歳まで剣道をしてまして。それはもう当時は「横浜鶴見に古澤あり」と夢の中で誰かが言ってた…
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kutikomiinfo · 1 month
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minangosblog · 1 month
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martes, 23 de abril 2024
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河童コスは着脱可能………🤣
木彫の熊🐻さんの可能性を探ってます😂楽ちぃ🩷
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本日も20:00までお待ちしております
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お取り置きや通販にも対応させていただきます。
※お取り置きはお買い上げ前提とさせていただきます。
※カード💳でお支払いいただけます。
お気に召すアイテムがございましたら、
コメントまたはDMを下さいませ。
追ってご連絡申し上げます。
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bimemo · 8 months
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aikokogallery · 1 year
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(c) Koji Kato 2023                                                          English below;
加藤 康司
自主回顧展:もう一度思い出す
2023年3月9日〜3月25日 17:00 ~ 20:00 
木・金・土・祝 オープン
AI KOKO GALLERY(台東区竜泉1-19-12第二轟ビル601)※移転しました ※エレベーターはございません
要事前予約(各回30分・最大5名様まで)
入場無料・ご予約は前日までに以下URLから申し込みください。https://forms.gle/CnBGE2FfFJ4VJR99A
直前でのお問い合わせはメール [email protected] か電話 050-5806-5596 までご連絡お願いします。
トークイベント
3月11日(土)17:00 ~  ゲスト:木村絵理子(横浜美術館主任学芸員)
3月18日(土)17:00 ~  ゲスト:星野太(美学、表象文化論) 各回1時間程度・最大8名様まで
概要
AI KOKO GALLERYはこの度新スペースに移転しました。柿落としの展覧会として加藤康司の2度目の個展を開催いたします。
加藤は近年、特定の土地や物が持つ歴史的背景に焦点を当て、独自の視点から過去と現在、大きな物語と小さな物語、社会的な問題と個人的な物語を接続し、等身大のフィルターを通して新たに”物語る”映像作品を中心に制作してきました。
本展では「自主回顧展」と題した、アーティスト自身がこれまで作品を通じてリサーチしてきた「米軍基地」、「インドネシアと出島」、「父親」、「広島の慰霊碑」、「モンタヌスの『日本誌』」など、異なる様々なテーマを再度取り上げ、その関係性を紐解き直す自主企画の個展を開催します。
また来場者特典NFTとして、昨年2月にAI KOKO GALLERYで初公開された「空想紀行」を社会学者・毛利嘉孝が書きおろしたレビューのオリジナルデザインデータを無料配布します。
アーティストステイトメント
最近すごく忘れっぽい人間になってしまった。
目の前の制作や仕事に集中して、それらを積み重ねていくごとに、何か大事なことを少しずつ忘れていってしまっているような、慢性的な不安にかられてしまう。
制作はいつも、その時その瞬間の、目の前にある大切なこと、重要なことに目を向け、そこに形を与えていく作業のようなもの。映像であれ、彫刻であれ、絵画であれ、そのメディウムに記憶や意志を込める。
そしてその、大切だと思った何かを描いた痕跡が、自分の中の一部になったような感覚と共に、自身の活動の一部と称したりする。だからこそ、いつもそこには自分らしさが重要だったりする。
人は忘れる生き物だから、といえばそれまでの話だが、忘れるべきではない(忘れたくない!)という抗う気持ちも、当然ある。
この展覧会は、かつて触れていたこと、考えていたこと、大切だった何かを描き直し、当時の感覚を「展覧会」を通じてもう一度語り直すための自伝的”回顧録”としたい。
作家略歴
加藤 康司 https://www.kojikato.info/
1994年生まれ。2016年弘益大学校(韓国)交換留学。2021年東京藝術大学大学院グローバルアートプラクティス(GAP)専攻修了。 行き止まりスタジオ主宰。PARADISE AIRコーディネーター。
映像、立体、絵画など多様なメディアを用いて、協働性や政治性に焦点を当てた作品を制作。近年ではコラボレーションの手法を多く取り入れ、歴史化された権力構造からの逸脱、再解釈を試みる。
主な個展
2022 「空想紀行 / Real Imaginary Travelogue」AI KOKO GALLERY(東京)
2021    「For Whom We Fight ”A面”」gallery G(広島)
「For Whom We Fight ”B面”」THE POOL(広島)
2019   「爆発の輪郭線」Toride Genkan Gallery(茨城)
   「父を語ることは、世界を語ることかもしれない」blanClass(神奈川)
受賞歴
2021 アートアワードトーキョー丸の内2021、審査員 木村絵理子賞
youtube
Koji Kato “Auto-Retrospective” 
March 9 - March 25, 2023, 17:00 - 20:00, open on Thursdays, Fridays, Saturdays, and Public holidays
AI KOKO GALLERY (Room#601 Dai-ni-todoroki Bldg., 1-19-12 Ryusen, Taito-ku, Tokyo) *Gallery has relocated. *There is no elevator.
(Up to 5 people per 30 minutes)
Entrance Free. Please make a reservation at least one day in advance at the following URL. https://forms.gle/CnBGE2FfFJ4VJR99A
(For more inquiries, please contact [email protected] or 050-5806-5596 )
Talk Event
March 11, Sat, 17:00~  Guest: Eriko Kimura (Chief Curator, Yokohama Museum of Art)
March 18, Sat, 17:00~  Guest: Futoshi Hoshino (Aesthetics, representational culture theory) Up to 8 people per 1 hour.
Overview
AI KOKO GALLERY has moved to a new space. As the first exhibition after the relocation, we are pleased to announce Kato Koji's second solo exhibition.
In recent years, Kato has focused on the historical background of specific places and objects, connecting the past with the present, big stories with small stories, social issues with personal stories from his unique perspective, and creating new "narrative" vieo works through a life-size filter. The exhibition will feature a "Retrospective" of the works.
This exhibition is an independent retrospective exhibition in which the artist will reexamine various themes that he has researched through his works, such as "U.S. military bases," "Indonesia and Dejima," "Fathers," "Cenotaphs in Hiroshima," and "Montanus's Japan Magazine," and redefine the relationship between these themes. The exhibition will be held as a special benefit for visitors.
As a special NFT for visitors, we will distribute free of charge the original design data of the review "Real Imaginary Travelogue" written by sociologist Yoshitaka Mohri, which was first shown at AI KOKO GALLERY in February last year.
Artist Statement
I have become a very forgetful person recently.
I am chronically anxious, as if I am forgetting something important little by little as I concentrate on the production and work in front of me, and as I accumulate more and more of them.
Creation is always like a process of focusing on what is important and significant in front of me at that moment in time, and giving form to it. Whether it is a video, sculpture, or painting, I put my memory and will into the medium.
And with the feeling that the traces of something I painted that I thought was important have become a part of me, I sometimes call it a part of my own activities. That is why it is always important to be oneself.
It would be a stretch to say that humans are forgetful creatures, but there is also a sense of resistance that says, "I shouldn't forget (I don't want to forget!)," which is natural.
This exhibition is intended to be an autobiographical "retrospective" to re-draw what was once touched, what was once thought, and what was once important, and to recount the sensations of that time through an "exhibition”.
Biography
Koji Kato (https://www.kojikato.info/)
Born 1994, Koji received his BFA from Tama Art University in 2014, MFA from the Global Art Practice at Tokyo University of Arts in 2021. Also, he studied at Hongik Art University in Korea through an exchange program in 2016.
His work is mostly video of his interests in exploring relations between political or social issues and himself for finding out power structure.
He has exhibited his work in group shows such as “Warmth of Stone (and) Trace of Breath” (Youkobo Art Space, Tokyo), “Strange Neighbor” (ART PARK, Seoul), “Re: mind the GAP” (HART Haus, HongKong), “Barrak: survibes Bangkok Biennial 2018” (White Line, Bangkok), “Openness?: The method of acquiring freedom” (Tokkaten|tochka, Tokyo), “Maebashi Media Festival 2017” (Old Yasuda Bank Security Warehouse, Gunma)
Selected Solo Exhibitions
2022
“Real Imaginary Travelogue”, AI KOKO GALLERY, Tokyo, Japan
2021    
“For Whom We Fight ”A面”, gallery G, Hiroshima, Japan
“For Whom We Fight ”B面”, THE POOL, Hiroshima, Japan
2019
"Outline of Explosion", Toride Genkan Gallery, Ibaraki, Japan
"When I talk about my father, which may mean talk about a world", blanClass, Kanagawa, Japan
Awards
2021
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cubiaesthetic · 1 year
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kennak · 1 year
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信用調査会社の東京商工リサーチによると、東京都港区に本拠を置く脱毛クリニック運営の「株式会社TBI」は、5月31日付で事業を停止し事後処理を弁護士に一任、自己破産申請の準備に入ったことが明らかになりました。 2021年に設立の同社は、「ウルフクリニック」の屋号で男性専門脱毛クリニックの運営を手掛け、東京・横浜・大阪・名古屋に計5店舗を展開するなど事業を拡大していました。 しかし、急激な事業拡大に伴う借入金が負担となるなか、2023年4月に運営する5店舗を突如として閉鎖しました。一方、返金を求める客とのトラブルや、従業員への給与未払いが明らかになるなど信用不安が広がるなか、5月末に事業を停止し今回の措置に至ったようです。
男性脱毛「ウルフクリニック」が破産申請へ、4月に突如閉鎖 国内倒産 - 不景気.com
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kachoushi · 5 months
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虚子自選揮毫『虚子百句』を読む Ⅰ
花鳥誌2024年1月号より転載
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日本文学研究者
井上 泰至
 「恋の季題」は材料も尽きてお開きとしたが、書き物は続けてほしいとのお話だったので、『虚子百句』を私なりに読んでいくことにしたい。
 まず、本書の成り立ちや、おおよその性格を説いて、なぜこの書物を丁寧に読んでいくことにしたのか、その理由をあらあら述べておきたい。
 本書は昭和三三年、すなわち虚子の亡くなる前年の自選句集である。京都の便利堂からの依頼を受けたもので、短時日の間に選んだものであるから、本書の価値は、ある程度割り引いて考える必要はある。が、ともかくも虚子が、自分の代表作と認めた百句だったことは間違いない。
 選句の基準については、追々検討を加えていくが、まず揮毫しやすく、たびたび揮毫してきた句であったことは、序で虚子自身が明らかにしている。本書は、虚子の揮毫を写真で掲載し、五十句ずつを高濱年尾と星野立子が分担して、簡単な句の評釈をつけるという趣向のものだった。年尾の跋文によれば、虚子も事前に二人の文章を検したという。
 本書の企画を持ち込んだ便利堂は、明治二十年創業の書店兼出版社である。コロタイプ印刷機を早くに導入し、美術書の出版で信頼を得た。岡倉天心が創始し、今日でも美術史学の権威的雑誌の位置を保っている「國華」は、便利堂の図版印刷の高度な技術が遺憾なく発揮されたものである。
 四代目店主中村竹四郎は、国宝級の貴重書の複製印刷をも数々手がけ、『虚子百句』刊行の翌年には文化功労者として表彰されている。虚子の字は、それ自体が俳句文化の遺産としての価値を持つ、と認識されていたわけである。
 つまり、主役は百句のみならず、その揮毫でもあったわけで、この点には留意しなければならない。書は、運筆から句の呼吸や中心点を確認できる。同じ字であっても、楷書か行書かといった書き分けがあれば、それは句の眼目ともなる。
 一例を挙げよう。小諸市立虚子記念館に残る十二ヶ月十二句の揮毫を屏風に仕立てたものは、展示の目玉だが、「心」を詠んだ句が三句ある。
  鶯や文字も知らずに歌心 虚子
  二三子や時雨るる心親しめり 同
  我が心ある時軽し罌粟の花 同
 このうち三句目のみ「心」はきちんと楷書で書かれ、他の二句はややリラックスした崩し字となっている。三句目は愛児六を失った悲嘆の中で詠まれた句だからである。書道家に聞くと、「心」の字のバランスは、筆をとる者の「心」を反映するのだと言う。
 こうした鑑賞の醍醐味も『虚子百句』にはあることが、当然予想される。年尾の跋文によれば、この頃の���子は眼が弱って、それが字に出てしまっている、という。確かに、青年期・壮年期のそれから比べ、運筆の力や字配りを焦点化する眼の力の衰えは隠せない。それでも、修練とは凄いもので、序文の虚子自身の言によれば、百句の大方は一、二時間で揮毫してしまったというから驚きである。字の味わいも、私の能力の範囲で解説を試みたい。
 本書の構成は、春夏秋冬・新年の部に分かれ、各部の句の配列は、成立順となっている。従って明治・大正・昭和と万遍なく句が拾われている。『百人一首』が古典和歌そのものの粋であり、歴史でもあるように、『虚子百句』も虚子の句業の入門書にして到達点でもある。これが本書を読む何よりの理由である。
 本書の装幀を担当した福田平八郎(一八九二〜一九七四)についても、簡単に触れておこう。虚子との縁は、『虚子京遊録』(昭和二三年)『喜寿艶』(昭和二五年)に続き、これが三度目である。  大分出身で、上村松園や竹内栖鳳も出た京都市立絵画専門学校を卒業。京都日本画画壇で重きをなす。トリミングやデザイン感覚に秀で、書物の装幀も得意とした。『虚子句集』の竹の絵は、自家薬籠中の画題であったと考えられる。
 本書は二〇一〇年、岩波書店から復刊された。解説は東京大学教授であった、日本近代文学専攻の野山嘉正が担当した。
 最後に一言。平成期、伝統派で、虚子句の解説つき選集といえば、稲畑汀子氏の『虚子百句』が定番だった。虚子自身の選句とは違ったところに新味を出した素晴らしい本だが、時に稲畑氏らしからぬ、非常に硬い内容と文章の評釈があるのは惜しい。この連載は、あくまで虚子の自選に立ち戻り、虚子句の成立事情と、選句の背景を平易に語ることに徹したい。ただし、この自選句集の性格上、私の虚子観・俳句観が問われることは言うまでもない。
1 美しき人や蚕飼の玉襷
 初出は明治三十四年四月三十日の新聞『日本』。季語は「蚕飼」。蚕はふつう四月に孵化して繭籠る。
 初出では「蚕」の題で内藤鳴雪・坂本四方太・河東碧梧桐・佐藤紅録らの各三句も載る、題詠句である。虚子の他二句は〈蝋燭の灯影に白き蚕かな〉〈蚕飼ふや年々ふやす桑畠〉。『新歳時記』にはこの句を採用せず、写生句らしい〈逡巡として繭ごもらざる蚕かな〉を載せたか。
 蚕は食欲旺盛だ。食べ残した桑やフンは蚕網(さんもう)を使って取り除く。蚕は眠る。睡眠と脱皮を四回ほど繰り返して成長すると、絲を吐き始める。ここで蔟(まぶし)という仕切りのある箱に移す。繭籠らせるのである。絹糸を吐き、繭を成す様は、実に神秘的だ。春の陽が漏れてくる中、吐き出されたばかりの絹糸は光そのものである。この過程に、ひと月ほどはかかる。
 蚕網をかけ、桑を与えると、蚕は網目を通り上にあがる。蚕網の下は蚕のフンと桑の食べ残しが残る。網を上げると、蚕とフン、食べ残した桑の分離ができる。蚕の成長に合わせて網目の大きなものへ変えながら使用する、といった具合である。丁寧さと経験が要求される女性の仕事である。
 養蚕は、明治期日本の主要産業だった。欧州では産地の南仏で病害が発生し、需要が高まったのである。巨利を成した者も多い。出荷は横浜が多かった。
 女性は襷掛けで、髪も縛る。明治期の浮世絵等を見ると、襷の色は赤が代表的である。かの富岡製糸工場では、技術のある女工は赤襷をして周囲から尊敬されたという。
 国を挙げての養蚕業振興を宮中も率先して奨励し、皇后美子が手ずから養蚕を行い、浮世絵などで宮中養蚕が喧伝された。皆赤襷で、髪はおすべらかし、すなわち、後ろでまとめた髪に「長かもじ」を継ぎ、水引や絵元結などを掛けて、長く垂らしたのである。
 結髪の問題にこだわったのも、襷掛けの女性は、皆髪を結ったり、挙げたりして、うなじがあらわになる点が一句の焦点だと考えるからである。つまり、「美しき人」の美しさの拠って立つところは、「襷」に暗示される、黒髪と白いうなじだったのだ。
 「玉襷」という言葉は、『万葉集』以来ある言葉で、これ自体一種の神々しさを醸し出す。『虚子百句』の評釈で、年尾が宮中養蚕を詠んだと解したのも一理ある。しかし、もっと重要なのは、「玉襷」は「うなじ」の連想から、大和の畝傍山を呼び出す決まり文句だったことの方である。謡曲の「恋重荷」に用例がある。虚子がこれを知らないはずはない。
 蚕と繭の「白」と、後れ毛を残したうなじの「白」の連想が、この女性の「美し」さを支えるものだったと考えたい。虚子は、和装の女性の髪にはかなり執心した。
 「まあ旦那でいらしつたんですか。どなたかと思ひましてね。お断り申しましたですけれど何だか気になりまして、一寸御挨拶だけに。どうも姉さん有難う。姉さん有難う」と二人に挨拶して末座に坐つたまゝ一寸こぼれた鬢を掻き上げる。
 小光は総髪の銀杏返しに結つてゐるのが仇つぽくて、薄つすらと白いものゝついてゐる額の広々としてゐるのも美しい。 (『俳諧師』)  小光のモデルは、女義太夫の竹本小土佐で、虚子は彼女の語りがかかる東京中の演芸場へ出かけ、追い回したのであった。虚子の眼裏に焼きつけられた美しさは、挙げた髪やこぼれた鬢にあった。
 谷崎潤一郎も言っている。女性美の焦点は首だと(『陰翳礼賛』)。和服で身体が露出するのは、首・手先・襟足だ。首は細く長くなければいけない。「猪首」という言葉を想起すればよい。肌は白くなければいけない。そこにうなじの後れ毛が色気を呼ぶ。
 「玉襷」はその呼び出しであり、それは説明しないことが肝要だから、「美しき」とだけ冒頭に置いて謎を掛けた。だから、『喜寿艶』でも、この句については、木で鼻をくくったような説明しかしていない。
 完全な主観句で、実際にそういう女を見たのか、絵の中の女か、記憶の中の女か、そんなことはどうでもいい。小説家志望で主観派が本質だった虚子らしい、冒頭の一句なのである。『虚子百句』は『新歳時記』のような教育的意義を取り払った、「作家」虚子の選集だった。
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井上 泰至(いのうえ・やすし)   1961年京都市生まれ 日本伝統俳句協会常務理事・防衛大学校教授。 専攻、江戸文学・近代俳句
著書に 『子規の内なる江戸』(角川学芸出版) 『近代俳句の誕生』 (日本伝統俳句協会) 『改訂雨月物語』 (角川ソフィア文庫) 『恋愛小説の誕生』 (笠間書院)など 多数
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toshiki-bojo · 2 years
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俊樹五百句
虚子の「五百句」と対峙したい。虚子はそれを五十年ほども掛けたが、この作句期間は一週間に過ぎない。出来不出来以前にこの名著なる存在と対峙したかった。俳句の存在意義だけがこの試行錯誤の源である。短い人生である、我が愚行を是非批評して頂きたい。
坊城俊樹 令和4年8月
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弔ひの夜に横たはる暑き襤褸 浮浪者の襤褸に星降る夜となりぬ 弔ひの夜の白服なる異形 弔ひの杖に樹海の町暑し 浮浪者の眠る窓とて朧なる 夏の灯のまたたき琴座鳴るといふ 幽霊や露台に支那の戦没者 幽霊の招く小路の風死せり 夏の路地女幽霊絢爛に 星の降る夜へ英雄の霊かぎろふ
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国士無双あがる男へ星流れ 夏の夕遺族は骨を探索す 夏夕べ黒き連鎖の遺族たち 遺族らは夜より黒し星流れ 哀しさは真夏の盆へ地震きたる 地震の町に吠える家守の夜でありし 恋人も濡れる家守の夜となりし 母死して星も死すてふ家守の夜 家守らの目の爛々と星見上ぐ 家守らに昭和の記憶ありにけり
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金色の家守は母の野望とも 父がつけし渾名の犬へ星流れ 大蛇の我が天井を護りたる 姫蛇の碑へと真夏の夜の夢 蛍火に意思といふものありにけり 山泣くも山笑へるも蛍へと 犬死して総理も死して蛍へと 一億の蛍の一つ死してをり ほうたるの火に照らされて万華鏡 ほうたるの乱舞を待てる半旗かな
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火蛾ひとつ火焔の中を舞うてをり 蛍来る夜は両親へ星降る夜 死ぬ匂ひして晩年の蛍籠 怪しげな教会へ入る蜥蜴かな 万華鏡の色の蜥蜴や月を追ひ 猊下そは百歳に死し蜥蜴また 猊下死す百一の星流る夜を 猊下逝く蜥蜴は天の星仰ぐ 猊下逝く十の契りを夏の夜に 総理逝きしばらく夜の火蛾として
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猊下逝く祇園の夏の夜の契り 星流る方へ杖つき神楽坂 夏の夜の三味の灯しは籠もらざる 懇ろに幽霊を待つ簾上げ いつも見てゐて見てゐない裸かな 貪りて夜の怨霊の裸とも 風通す裸の窓をすべて開け 恩讐もある傷跡の裸体とも カンバスに幾何模様なる裸体 日当たるとやはらかくなる裸体かな
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陰翳の裸の体囁ける 因果なる裸体を褒めてゐて死せり 裸体なる女カオスの縮図とも 茅舎忌の我を白痴と思ふかな ヌードデッサンせんと孤高の茅舎の忌 茅舎忌といふ忌まはしき忌なりけり 俳壇に生けるも死ぬも茅舎の忌 茅舎忌の猿股を日に干してあり 金剛の露現今の茅舎ゐて 口唇に薬挿し入れる茅舎の忌
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河童忌の屋根に墜ちたる龍之介 河童忌といふ祝祭のやうなもの 蚕豆に天使の翼ありにけり 蚕豆の妻の故郷はカタルーナ 蚕豆といふ処女作のやうなもの 蚕豆を剥き深緑やや遺憾 蚕豆の筋のあたりを背骨とも 蚕豆のやうな赤子を授かりし 蚕豆とは一卵性双生児 バンクシーの絵は白黒に夜の秋
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我が瞳孔まもなく朽ちて夜の秋 丑三つのマンゴーゆつくり熟すなり 丑三つの蜘蛛透明な糸を吐く 斬られる待つ丑三つの熟柿かな 愚かなる夢の中なる熱帯夜 しづかなる女の舐める熱帯夜 黒蛇が白蛇を呑む熱帯夜 括れざる腰振る真夜の熱帯を 母さんが父さんを呑む熱帯夜 口唇を襞と思へる熱帯夜
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熱帯夜朱き口唇とて腐臭 熱帯夜とはずぶ濡れの吾子の夢 峠路に幽霊を待つ月見草 裏切りの美人薄命月見草 月光やちやん付けで呼ぶ影法師 月見草火星より木星が好き 月見草路地の子やがてゐなくなる 星の降る夜はひとつきり月見草 月見草恐らく祖母は浮気した 新婚の路地の匂へる月見草
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日覆を立てる穴とて深淵に 日覆のおほひて赤子腐敗せり ビルよりも高き日除けを立てにけり 男一人日除けを出でず老いにけり 裸族らし我が家の下の夫婦かな 裸にて人に逢ひたく皮を脱ぐ しづかなる蛇しづかなる自死をせり 蟻と蟻獄を出でたる如出逢ふ 灯の蟻といふ見当たらず羽蟻とす あの蛇を保育園へと見失ふ
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青条揚羽より高き蝶のなき 金輪際黒筋揚羽見失ふ 黒揚羽より正装の男かな 瑠璃揚羽祖父の遺墨を飛び立てり 暑き電線暑き電線と出逢ふ とぐろ巻く蛇地境を管理せり 大いなる物の崩れががんぼの死 青き星流れて白き星流れず 蟷螂と格闘をして日記とす 暁に麦飯を食ふ祖父の髭
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亡霊が炊いた麦飯吾れのため 麦飯の茶碗に描くただの柄 麦飯に卵二つの豪華さよ 麦飯を母は嫌がり父も嫌がり おばQを見て麦飯を食ふ至福 箸は茶で洗ふ麦飯たひらげて 麦飯を父は食はずにバタを食ふ 麦飯といふ軍縮のやうなもの 麦飯にのりたまかけて邪気かけて 仏教にあらず神道麦飯を食ふ
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麦飯を御霊に捧ぐことならず 麦飯で鉄腕アトム見てをりぬ 昭和三十六年の麦飯豪華なり 麦飯といふ神道のやうなもの 瑠璃鳴くや御霊のやうな声溢れ 神域を歌へる瑠璃のすきとほる 殉職の御霊へ瑠璃の鳴きにけり 銃弾に斃るるときに瑠璃鳴けり 天照大神きて瑠璃鳴かせ 天辺の虹の上より瑠璃鳴けり
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虚子とのみ彫られし墓へ瑠璃鳴けり 坊城家六代目へと瑠璃鳴けり 勾玉の青のひとつは瑠璃の声 瑠璃何か喩へてみれば金剛に 夏燕折り返し来る消防署 三次元を四次元に斬る夏燕 生れ替るなら岳麓の夏燕 青空を巻き込んでゆく夏燕 夏燕鏡を斬りてさかしまに 天辺に仏来給ふ朴の花
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朴の花白く翳りて懇ろに 朴の花の中に釈迦尊をらざりき 虎尾草に毛並のありて逆立ちて 虎尾草の揺れて待ちたる未通女かな 金輪際虎尾草と縁切ると言ふ 虎尾草の先くねくねと蠅を追ふ 梧桐に影といふもの濃かりけり 樹海めく梧桐たちに迷ひたる 梧桐を仰ぐ超高層仰ぐ 梧桐の葉とは天狗の団扇かな
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梧桐やブランコは立ち漕ぎ続け 梧桐の翳に不良の煙草吸ふ 梧桐に青春である疵を彫り 梧桐の伐られ虚空の天となる 山笠の波動花鳥子より届く 山笠の句の勇壮な波動来る 山笠に恋といふものありにけり 博多つ子純情の夏なりしかな 山笠の日と生誕の日と隣る 純情の山笠に夢馳せてをり
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山笠に天神颪とは来たり 金亀虫裏返りたる真夜の褥 黄金虫夜を引き摺りて灯へ入りぬ 灯に入手夜の帝国の黄金虫 羽蟻の夜玻璃にべたりと都市の闇 羽蟻翔ちお日様に溶けなくなりぬ 子を捨てし母は戻らぬ羽蟻の夜 羽蟻の夜金輪際の父は帰らぬ 羽蟻の夜弔問はなほつづきをり 茅舎忌の卍となりて日章旗
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露の世へ消ゆる人あり茅舎の忌 茅舎忌の夜が流れてしまひたる 隻眼が見えなくなりぬ茅舎の忌 龍子の絵どこか稚拙な茅舎の忌 茅舎忌の流れ流れて星ゐない 吾妹子の胸やはらかき虎が雨 吾妹子の海へ尿する虎が雨 煙草屋もとうに死に絶え虎が雨 土用波恋愛はもう星屑に 岬越え来る土用波白々と
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土用波いよよ怒濤となり崩れ 子が一人攫はれてゆく土用濤 土用濤灯台を越え来たりけり 元総理死にて土用の波濤へと 波怒濤土用の夜の人攫ひ 伝説の出水川とはこの小川 子を攫ひ妹を攫ひて出水川 出水川と記憶流れて悪夢とも 出水川恋の破綻も流しゆく 虚子塔に人来ぬ日なる最澄忌
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最澄忌千日回峰終るころ 叡山は星の降る夜の最澄忌 叡山をさ迷ふ夜の最澄忌 最澄の忌の極楽の湯舟かな 最澄忌灯す頃の先斗町 祇園にて猊下と酌みし最澄忌 萍の隠沼として河童棲む 萍を髪に見立てて河童立つ 萍の茂り月光留めたる 妖精が腰掛けてゐる蛭蓆
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丑三つの月光にある蛭蓆 優曇華へ星やさしくて月やさし 優曇華のいのち揺らぎて月を待つ 儚きは優曇華の茎なりしかな 優曇華にいのちあかりの灯せり 優曇華に神降臨すひとつづつ 母死して優曇華の情なしとせず 優曇華へ言葉少なき真夜の人 ケルン積む星降る夜となりしかな ケルン積む大岩壁と対峙して
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ケルン積むひとつひとつに女の名 行李から恐らく祖父の登山帽 恋をして山登りして死に逝けり ロッククライミングの刹那あの夏を しづかなる人しづかな死夜の秋 夜の秋幽霊ももう寝静まり 恋をして失恋をして夜の秋 瞳の奥の闇へと星の流れゆく 星の降る中に月降る夜の秋 蟻ひとつ彷徨うてゐる夜の秋
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死顔の威厳なるかな夜の秋 曾祖父も祖父も今宵は夜の秋 星ひとつ艶然とある夜の秋 夜の秋網膜剥離みたいな灯 羅を着て恋などに惑はされず 浴衣着て金魚の柄を泳がせて 羅を着て老いらくの恋をせむ 羅に序破急といふ恋のあり 妙齢は達磨柄なる浴衣着て 浴衣着て恋に窶れてしまひけり
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祖父と祖母らし残像の藍浴衣 羅の包んでをりぬ裸体かな 羅の包み適はぬ恋をして 浴衣着て恋の乳房となりしかな 浴衣着て恋人と逢ふ浜の路地 羅を着て蝮酒召し上がる 浴衣の子星とおしやべりしてをりぬ 後ろ手に団扇はさんで恋浴衣 白兎波間に跳ねて卯波くる 人死して星の卯波となりしかな
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卯波寄す森田愛子の臥所へと 九頭竜の卯波漣ほどのもの 夏の波真砂女の卯波とぞなりぬ 月光が卯波流してをりにけり 滴りの金銀の粒金剛に 滴りに輪廻転生ありにけり 滴りて岩壁となる日本海 東京スカイツリーの天辺滴りて 滴りて浅草線の三ノ輪駅 ゆつくりとしづかに歩む蛇ひとつ
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蛇の夢見てその蛇を見てをらず 蛇酒といふ極楽の中に死す 滴りの岩壁を行く数学教師 滴りの後ろ姿の女体山 蛇女邪心となりて星流れ 蛇ふたつ絡んでをりぬ月光に 蛇絡みつつ愛欲の中にあり 権現の無数の蛇の降る社 炎帝の統べるままなる総理の死 炎帝へ斬首の鴉羽ばたけり
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炎帝いま月の裏側焼きにけり 炎帝といふ今生の大宇宙 勲一等正一位なる墓灼けて 勲一等の軍馬の墓は緑蔭に 暗夜行路書きし墓とて茂り中 暑き固き墓石の如き絵画館 イザベラの墓に彫られし薔薇香る 銀杏並木の緑蔭もとんがりて 茂りてはいつも探せぬ乃木の墓 坊城は俊ばかり付く墓涼し
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殉教の墓へマリアの南風吹く 寝棺そのものを横たへ夏の墓 緑なる線対称の銀杏かな 八月の面対称の絵画館 サンドレスとは青山のあつぱつぱ 青山の墓みな灼けて無言なる 夏日燦超高層といふ墓標 無機質の超高層を旱とも ソファーめく茂吉の墓へ夏蝶来 茂吉いま夏蝶となり利通へ
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墓に挿す供華も明日より秋薔薇 秋の蝶クルスの墓を懇ろに 夏果てて石より重き絵画館 緑蔭のハチ公の墓何処なり ハチ公の供華はおそらく水羊羹 異国なる地下に眠りて薔薇の墓 夏の蝶マリアの指に触れてより 喪主だけが半袖で乗る霊柩車 蟬の音は聞かず真昼の野辺送り 蟬死して蝙蝠ばかり飛んでをり
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蝙蝠は帰る逆さになるために 蝙蝠の裏切る音を聴いてゐる 蝙蝠も消え失せグリム童話の夜 めまとひはめまとひとして囁けり めまとひは無責任なる大家族 婆の眼の脂にめまとひ親しめり めまとひを払ふ多情の口を閉ぢ めまとひの中を葬列続くなり 朱烏夏の夜の夢覚めし頃 茅舎忌の月光ことに夢を食ふ
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茅舎忌の虫の音といふ哀しけれ 茅舎忌のシュミーズは幽霊の自慰 そこはかとなく隠微なる茅舎の忌 キリストと生きる男へ茅舎の忌 茅舎忌に金子みすずを読んでをり 白鼻心白夜の夢を見てをりぬ おぼこ今白夜の夢を見てをりぬ 白夜とは神の数だけありにけり 熊に似る男涙の炉辺話 雪女帰らず解けてしまひたき
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金輪際なき眼光の鯖を食ふ 鯖を食ふ恋愛をした夢を見て 銀色に無限のありし鯖を食ふ 恩讐の臭みの鯖を食ふ女 鹿島灘あたり怒濤や鯖を食ふ 鯖を食ふ女臀部を揺らしつつ 鯖を食ふ潮の香りを煮てをりぬ 黒潮を炊いて鯖煮となりしかな 鯖食ひ男鯖食ひ女淫靡なる 鯖食うて惜別の情無しとせず
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我が生の金輪際の虹に逢ふ 虹死して首都凡庸の空となる 奈落より虚子の墓へと虹の橋 蚊柱となりて青山墓地を舞ふ 吾妹子の子宮男の子を生みにけり 我が家より大いなる虹架かりけり 苔の花とは妖精の小さき眼 苔の花喋るぺちやくちやぺちやくちやと 苔の花海に流れてしまひさう 我が生も淋しからずや苔の花
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大漁の夜の纜に苔の花 苔の花阿呆の黄色楽しくて 苔の花金輪際の生にあり 苔の花哀しくなれば咲いてをり 苔の花苔を大地として咲けり 苔の花の夜は近づく大宇宙 未熟児に産まれる人へ苔の花 そよぐことなき苔の花小さすぎ 流星と同じ色して苔の花 苔の花咲きて天動説となる
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苔の花影といふものありにけり 囁きの夜に閉ぢたる苔の花 河童忌を星の吹雪と思ふなり 河童忌の蛇口ひねれば湧いてをり 河童忌に砂糖を舐める女あり 河童忌のしんがりの児は引き込まれ 河童忌にベートーベンを聴いてをり 河童忌を皇后陛下畏くも 河童忌の童は杓子定規かな 怒濤とし童押し寄せ河童の忌
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滴りて山又山を濡らしをり 絵画館の壁の隙より滴れり 夏の水汲み元勲の墓域へと 滴りに栄枯盛衰ありにけり 滴りて富嶽をすこし潤せり 滴りに奈落といふは先のこと 滴りてゆつくり濡れてをりにけり 滴りて巌の命を疑はず 幻か滴る先に河童の子 滴りて四国三郎ありしかな
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蟻ひとり穴ひとつあり佇みぬ 増上寺国葬にあり蟻ひとつ 群衆の蟻群衆の蟻に逢ふ 山蟻の威厳の黒に死してをり 黒蟻と赤蟻言葉交さざる 蟻ひとつ地下迷宮を出で来たる 蟻塚に蟻の声のみ充満す 蟻塚の掘りたての土匂ふなり 蟻地獄静謐といふ美しき あとづさりして身を隠す臆病に
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岳麓へ行者道めく蟻の道 蛾の破片ゆらゆら運ぶ蟻の道 ビール飲む眉間に皺を寄せながら 麦酒飲むますます法螺を吹きながら 白魚のやうな指もて麦酒注ぐ 我が世とぞ思ふ望月の麦酒かな 麦酒のむいつか焼かれし喉仏 女ひとり化粧濃くして黒麦酒 蛇苺姉の我が儘永遠に 蛇苺庭に埋めし金魚へも
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侯爵の墓の片隅蛇苺 蛇苺男鰥の庭の恋 山笠の西の便りを句に乗せて 博多つ子純情いまも山笠に 山笠の男だらけの怒濤なる 傀儡の関節錆びて夏の雨 白雨きて蛍光灯の切れかかり 関節はぎしぎし老ゆる夏の雨 飴玉が降る音のして夏の雨 連続の数珠の音して夏の雨
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夏の雨身の内の獅子唸るなり 旋律はボブマーリーに似て夏の雨 戦後すぐ膣より産まれ夏の雨 白雨きてボサノバの雨合体す 白雨きてコーラの壜の女体めく おそらくは黄泉の国とて夏出水 夏出水遺品の遺書の何処へと 高貴なる神に押し寄せ夏出水 最果ての鵺の夜へも夏出水 土用波七里ヶ浜で祖父に抱かれ
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土用波みたいな嬶の乳房かな 柏翠の療養所へと土用波 土用波森田愛子の身の内へ 土用波虚子と愛子の物語 髪洗ふ乳房の先を湿らせて 髪洗ふ妬み嫉妬を流すとか 女百態懇ろに髪洗ふ 髪洗ふ幼き頃の金盥 あんな女に嫉妬して髪洗ふ 犬洗ふ即ち犬の髪洗ふ
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昼寝して夢の合戦破れたり 元首相撃たれし頃の大昼寝 夜よりも昼寝彼の世に近かりし 貪るは蛸か女体か昼寝覚 昼寝して夜には死んでをられたる 昼寝覚女百態消失す 昼寝覚地獄の釜を押し上げて 昼寝覚一年損をした気分 昼寝して虚子と話をして戻る 昼寝覚范文雀と別れ来て
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蝙蝠の彼の世此の世と飛翔せり 蚊食鳥煙のやうなる蚊を追へり 蚊食鳥夕焼け小焼けの唄に乗り かはほりの逆さに夢を見る昼間 かはほりに迷子探してもらふ夕 蚊食鳥夜の女は出勤す かはほりは街の電波と交錯す 蚊食鳥幼稚園児はもう家へ 友人の納骨を終へ蚊食鳥 学習院初等科の上蚊食鳥
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あぢさゐの萎れし夕べ蚊食鳥 かはほりと月と金星置きどころ 青林檎みたいな乳房持つ少女 青林檎囓る気もなく接吻す 青林檎真夏の夜の夢の中 昭和とはヌード写真と青林檎 麗人の口怖ろしく青林檎 漆黒の夜は青ざめて青林檎 青林檎堅しと思ふ瑪瑙より パテイーデュークショーを観ながら青林檎
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青林檎がさつな漢の手に堕ちる 夏の夜の夢とはならず老いゆけり 夏の夜の罪ある墓標御影石 唇は濡れて真夏の夜の夢 夏の夜のネオンサインはジジと切れ 漆黒の真夏の夜の夢となり 入れ墨の夏の女を持て余し 金魚玉夜に入る頃の小宇宙 絢爛の金魚は恋をしてをりぬ 絶縁の夜に浮きたる金魚玉
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和服着て振り袖を振る金魚かな 勲一等正二位の飼ふ金魚かな 飛魚の飛んで越え行く隠岐の島 隠れキリシタン飛魚となり戻りけり 飛魚の流刑の島を飛び越えて 炎帝に見つからぬやう昼に寝る 日輪が炎帝をまた拐かす 炎帝に翳といふものありにけり 白日夢とは炎帝が司る 炎帝が紛れ込んだり夢の中
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盆栽といふ炎帝の置き土産 炎帝も銀河の裾の一部分 我が霊も炎帝となり銀河へと 観音の笑みて溽暑を遠ざけて 観音の炎暑の唇を赤しとも 陽炎へる陽子の墓や禁色に 墓の苔とて万緑の一部分 観音の胸乳あたりへ夏の蝶 五輪塔とは緑蔭のただの石 乾きたる稲毛氏の墓とて旱
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一山の万緑なだれ年尾句碑 薔薇咲かせ流行り遅れの服を売る 昔から麦酒が好きな人の墓 蛍光灯切れかかりゆく夏の果 夏行くや皆んな貧しき灯して 人を待つ心にも似て夜の秋 涼しさの雨の粒とは淋しくて 街の灯の蒼く点りて夏の夜 灯して何読むでなき夜の秋 夜の秋義兄は生れ替りしや
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涼しさの夜の灯の鈍色に 堕胎の子いつも走りて汗哀し 夏逝くや雨の音符の翳色に 夜の秋眼の衰への文字歪む 夜の秋炎集めて住む川原 夜の秋己れ空しく酒を飲む 涼しさの夜雨の音の蓄積す 涼しさは恨みに似たり灯を消せば 幽霊坂うすむらさきの夜の秋 幼稚園死んだ子が居る夜の秋
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夜の秋やがて孤独の誕生日 蛍光灯切れかかりゆく死者の秋 老いてなほ秋めく恋の行方かな 新涼の飴の色とは濃紫 秋めきて失恋をする七回目 新涼の鏡に映す吾の死顔 頭痛して秋めく我の髑髏 新涼の驚き顔となりし天 新涼の犬に哀しき堕胎過去 八月の女ものものしく太り
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usickyou · 2 years
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さよなら恋人
 【A】
 十七歳の夏に加蓮とキスした。正しくは、された。一方的に。  そのときあたしは起きていた。レッスンを終えてスタジオのロビーで加蓮を待っているうちに横になって、うとうとした。目を閉じて、ほとんど寝てはいたけど加蓮が来たので目を覚ました。なのに、そのままでいた。それが間違いだったと思うことはなくて、もしあの時と思うことはよくある。  加蓮はあたしを呼ぶと、あとは黙って近付いてきた。ローファーがよく響くくらい、あたりには誰もいなかった。自販機のうなりや蝉の声が聞こえて、季節は夏そのものだった。足音が止まっても、加蓮は黙っていた。じっと見下ろす姿を想像しているうちに、衣ずれや関節のきしみでしゃがむのがわかった。目も開けられずにじっとしていたら唇にキスされた。  そうだとわかるまでには時間がかかって、リップでしめった感じとかやわさ、形、あと制汗剤のにおいでやっとわかった。キスされた! 加蓮に! それも一瞬で離れようとはせず、数呼吸のあいだ加蓮の息づかいを感じた。混乱しながらあたしは配役を完璧にやり通した。『無人のロビーで加蓮は奈緒にキスをする。奈緒は気付かずに眠っている。加蓮は黙ってそこを離れる』台本はぷっつり途切れて、あたしは続きを待ちながらいつの間にか上げられた舞台の上で眠りを続けた。  そのうち、加蓮が戻ってくる。今度は「なーお」と明るく呼んでくれたので、あたしも「んあ」ととぼけて答えることができた。それからビッグマックとチキンフィレオのセットを食べて、日が暮れるより早く「また明日」と言い交わして別れた。  あたしにとって、夏はそういう季節だ。  もしもそれが二十歳の夏だったら、あたしはもっとうまくできたと思う。正解なんてかけらもわからないけど、きっと魔法みたいにすべてをうまくやってくれたはずだ。めでたしめでたし。ふたりはそれをきっかけに結ばれて、いつまでも仲睦まじく暮らしました。  今、あたしと加蓮は恋人でいる。十八歳のあたしはばかであほでどうしようもないやつで、それでも加蓮に愛されている。
 【a】
シーン1
○緑道(昼)
   『Welcome Ember City. Water and nature,and trust』と記された汚れたシャツ。イクサの後ろ姿。
   イクサは歩きながら白銀の髪をかき上げると目を見開く。長く伸びた緑道の草木を分けて、木陰に横たわる石像を見つける。男性。眠ったまま石になっている。
   イクサは拾い上げた石で、無表情のまま石像を破壊する(石像は映さない)と、手で十字を切る。イクサは再び歩き出す。小さな破片が、風が吹いてさらさら転がる。オープニングクレジット。
 【B】
 十八歳の、高校三年生の夏休みは忙しい。仕事をセーブしてもらってはいるけど、大学受験が本当にきつい。毎日まいにち何か頭に詰め込んでは出ていかないよう蓋をして、次の日にはまたそっと蓋を開けて頭が破裂しないよう慎重に知識を押し込んでいく。もともと頭も要領も良くないあたしは、方法や効率より時間を信じた。夏は、窓の外で過ぎていった。  加蓮とは週一で会うようにしていた。木曜日の午後、時間は都合次第。同じ週に仕事が重なっても会うし、予定が被ったら金曜に会う。つまり、プライベートで毎週必ず会う約束をしていた。  とにかくひどい猛暑だったので、ふたりとも涼しい場所に行きたかった。それにあたしは、日常を離れたかった。何も考えない時間がほしくて、いろいろと話して水族館に行くことにした。葛西の水族館。京葉線の駅で待ち合わせは十時。ひとまわりしたら併設のレストランで何か食べてあとは流れ、それくらいのゆるいプラン。  前の晩は、うまく眠れなかった。冷房が効きすぎて毛布の中でふるえたり、あまりの寝苦しさに目を覚ましたら一時間も経っていなかったり、そういう夜だった。夢の中の舞台で喉がつかえて歌えなくなったと思うと空は白んでいて、どうにでもなれ、そんな気持ちになるとやっと眠ることができた。生まれてからいちばんというくらい綺麗な空を見たけど、現実かどうかは曖昧だった。  結果、あたしはちゃんと起きると支度を完璧に済ませて、約束の十五分前には葛西臨海公園の駅にいた。加蓮は五分前くらいに来て、スカイブルーのトップスとかそこから伸びた白い腕、屈託のない笑顔が、まぶしかった。 「お揃いじゃん、なおー」と加蓮はのぞき込んでくる。近いちかいと内心焦りながらあたしはキャップから出したポニーテールに触って「暑くてさ、でも重いんだよこれ」とため息をつく。加蓮はあたしの髪をわさわさ揺らすと、声を上げて笑って、「けど、かわいい」と言った。あたしが慌ててみせると、それはうまく冗談に変わった。  水族館までの日傘の下、揺れるスカートが何度も脚に触れた。  平日の早い時間で、思った通り人は少ない。入り口のガラスドームを降りると、あたりは静かになる。ふたり並んでゆっくりと見てまわるには最高の環境で、魚なんて普段はぜんぜん興味ないくせにああだこうだ言いながら歩いた。意外とかわいいんだなとか、魚料理ってここで食べれるのかな、とか。  水槽の宇宙をくぐり抜けて、ペンギンのプールではしゃいだりして、あたしたちは回遊水槽にたどり着く。そこは円筒形の海で、大小さまざまなまぐろが泳いでいる。光の加減でその色は白銀やエメラルドグリーン、あるいは黒く染まったりして、綺麗だし退屈しなかった。あたしと加蓮は席に座ると、やっと手を繋ぐ。そこには映画館みたいな高低差があって、最後尾からはまわりが見渡せたし、誰からも見られる心配がなかった。 「台本、読んでる?」と加蓮は訊く。あたしは「まあまあ」と答えるし、実際そうとしか言いようがない。英単語やイディオムと平行して台本を覚えるのは、自分で選んだとはいえ厳しい話だと思う。「私はかなり順調」と言って加蓮は続ける。『ミト、あなたは私の全部。ミトがいるから私は人間でいられるの。それって、石にならないのとはぜんぜん違う。わかるよね』  あたしは拍手をする。それで加蓮と手が離れる。 「まあ私は受験生でもなんでもないからねー」 「ハラ立つんだけどなんか」 「あはは、ごめんってば。仕事も勉強も両立して奈緒はすごいなあってことだよ」 「どっちも、ものにできないかも」 「やっぱり不安?」 「っていうか、恐いよ」 「ん」 「助かる」  加蓮とまた手を繋いで、肩に寄りかかる。人がすっかりいなくなった今、少しの間だけ。目を閉じると、魚の回遊が生む水中の虹を瞼の裏側で眺めた。  それがまぶしくて、涙が出る。  寝不足のせいにすると、加蓮はちょっとむくれた。楽しみでよく眠れなかったと言うと、喜んだ。子どもみたいにころころ変わる表情が、あたしは確かに好きだった。  団体客が来たので回遊水槽を離れると、まだ早いけどレストランへ入る。あたしは海鮮つみれうどんで、加蓮はイクラとサーモンのクリームスパゲティ。さっきまで見ていたいきものを食べるのはなんだか不思議な気がしたけど、どっちもおいしくて、「ごちそうさまでした」とちゃんと手を合わせて言った。  デザートを食べていると、近くで海水浴ができるという話が隣のテーブルから聞こえてくる。あたしたちは目を合わせて、あっという間に水族館を後にすると砂浜へ降り立つ。そこは照り返しでめちゃくちゃに暑かったから、サンダルだけを脱ぐと急いで波間へ逃げ込んだ。だけど狭い海水浴エリアは人でいっぱいで、水はなんだか濁っているしぬるいし、どこか消化不良なままその場を離れることになった。 「あーあ、泳ぎたい」と木陰の芝生で加蓮が言う。濡れたサンダルが、強い日差しでみるみる乾いていく。 「海水浴場はさすがに厳しくないか? あんま知らないけどナイトプールとか?」 「高校生はだめじゃない?」 「ああ、じゃあ無理だ諦めよう」 「やだやだ絶対行く」 「って言ってもなあ」  お手上げ。そうあたしが示してみると、「ん」と加蓮が小指を差し出した。「指切り?」と訊ねると、まじめな顔をして頷く。 「夏のあいだに泳ぎに行く」 「ジムとかじゃなくて?」 「だめ。デートで」 「ふたりで?」 「そうだよ」 「……事務所で訊いてみるか」 「うん。約束だよ」  小指を離すと、あたしたちはまた手を繋ぐ。木陰には海風が吹き抜けるから、それはあまり苦にならない。波の反射とかドッグラン、子どもたちがはしゃぐ景色をじっと見ていて、そのうちにあたしが提案して台本の読み合わせを始める。
 【b】
シーン5
○ミトの家・リビング(昼)
   火のついていない暖炉。続けて部屋の全景。ローテーブルを挟み、イクサとミトはソファで向かい合う。カーラが紅茶を持ってくる。
カーラ  砂糖は好きに入れてね。ミルクもいる?
   イクサは首を横に振る。カーラはミトの隣に座る。
イクサ  ここには二人で? ミト   そうだよ。近くに街はある。でも、二人だけだ。 イクサ  それで、どうやって。 ミト   どうやってか、はは、確かに。どうだ、ここからは交互に質問に答えていく形にしないか。 カーラ  ミト、焦りすぎ。 ミト   焦りもするさ。だってこいつは、どう急いでも三日かかる道をたった一人で、石にならずに歩いてきたんだ。奇跡だよ。いや、本物の奇跡なのか確かめなきゃならないだろ。
   カーラに袖を引かれて、ミトは口をつぐむ。イクサは頷く。
イクサ  私は石になりません。誰に忘れられてもたった一人で生きていける、そういう人間です。あなたの言う奇跡です。本物かどうかは、わかりませんが。 ミト   そんな奴がいるもんか、だったらどうして……。 イクサ  質問は交互に、ですね? ミト   ああ、悪い。 イクサ  どうして、二人だけで生きていけるのですか? ミト   あたしたち不眠症なんだ。眠らずにいれば、忘れられない。ふたりきりでも石にならずに済む。 カーラ  私から、いい? イクサ  どうぞ。 カーラ  何から逃げてるの?
   イクサは左手を上げる。手首には丸い痣が深く残っている。
イクサ  科学です。奇跡は科学に分解されて自然法則になります。私はまだ、生きていたい。日の光や川のせせらぎに、触れていたい。質問を返しますが、あなたたちの敵は誰ですか? カーラ  街。 イクサ  人間、ということですね。 ミト   不眠症だなんてばれたら、利用される。あたしたちも同じだよ。太陽も月も風も草木も、全部大切なんだ。 イクサ  ですが、関わりを絶つのは難しいでしょう。 ミト   こっちの番。どこへ行くつもりなんだ? イクサ  彼らの手が及ばない場所です。 カーラ  あてがあるの? イクサ  さあ。けど世界は広い、ですから。 ミト   楽観主義なんだな。 イクサ  石化の恐怖を知りませんからね。それで、あなたたちはどうやって街と関わっているのですか? カーラ  私とミトと、体が弱くて遠出できないエヌって子で暮らしてる、ことにしてる。三人家族でひっそり住むのって珍しくないから。 イクサ  エヌ、ですか。 カーラ  その銀髪って天然? イクサ  実験の副産物、らしいですね。 ミト   さあ、他に知りたいことは? イクサ  あと一つ。 ミト   なんなりと。 イクサ  なぜ、私を助けてくれたのですか。
   ミトは口をつぐむ。空になったカップに紅茶を注いで、カーラはミトの手を握る。ミトはゆっくり話しはじめる。
ミト   エヌに、なってくれないか。 イクサ  どういう意味ですか? ミト   この家に、街から人が来る日がある。そのとき、エヌのふりをしてほしいんだ。姿は見せなくていい、家の中からあたしたちと話してくれるだけでいい。 イクサ  エヌを信じさせろと、そういうことですか? カーラ  エヌを人間にしてほしいの。私たちが、二人で生きていくために。 ミト   短い間でいいんだ。三ヶ月、いや、夏の間だけでいい。あたしたちと一緒に暮らしてくれないか。 イクサ  私は、追われる身です。 カーラ  森にいくらでも場所があるよ。隠してあげる。 イクサ  ……もう一つ、教えてください。 ミト   ああ。 イクサ  ふたりは、愛し合っているのですか。
   ミトとカーラは目を合わせる。手を繋ぐと、イクサをまっすぐ見て頷く。イクサが頷き返すと、カーラがミトに飛びつく。イクサはため息をついて、からっぽのカップをかたむける。
 【C】
「イクサ!」とあたしが呼ぶと、アーニャは「ミト!」と大声で言った。高く上げた手をぶんぶん振る姿がぜんぜんイクサと違って、あたしは笑った。イクサはもっと、月みたいに佇む。  大学の、だだっ広い構内をアーニャは迷わず進んでいく。あたしはオープンキャンパスみたいなものだと自分に言い聞かせながら、それでも所在ない心地でいた。なにしろ、アーニャは堂々としている。どこで何をしていても目立つのに、そうだと知っていても、ぴんと背すじを伸ばして全身で日の光をはじく。その姿は誇りみたいな感覚を与えてくれるから、あたしも後ろに隠れたりこそこそ歩いたりはしないけど、時々、ほんの時々だけ羨ましいなと思う。  芝生のグラウンドではもう、両チームがウォーミングアップを始めていた。左のゴール側、水色のシャツの中に美波さんの姿を見つけると、彼女もすぐこっちに気付いて駆け寄ってくる。 「アーニャちゃん、奈緒ちゃん、来てくれてありがとう!」 「ミナミ、がんばってくださいね」 「こっちこそ、誘ってくれてありがとう。なんか、あたしまで緊張してくるよ」 「ふふ、練習試合だから平気だよ。ゆっくり楽しんで、それと、暑いから日焼け対策と水分補給はしっかりね」 「ばっちり、です。ね、ナオ」 「日傘も、ほら」 「良かった、大丈夫そうだね。でも油断しちゃだめだよ」 「ダー、気をつけます」 「うん。じゃあ行ってきます」  そう言って美波さんがチームメイトの輪へ戻っていくと、程なくして試合が始まった。チームは十二人。二十五分ずつの前後半と十分のハーフタイムで、基本的にはサッカーみたいなものだと思えばいいらしい。美波さんのポジションは左のDW、守備をメインにしながら状況を見て攻撃にも積極的に参加していくんだとアーニャが教えてくれる。 「ミナミは右利きですね。左からヴィリズィット、あー、切り込んで、すごくかっこいいです」  アーニャはそんなふうに、目を輝かせて話す。だけど、なかなか思うような展開は訪れない。どうやら対戦相手の攻撃がほとんど右サイドを起点としているらしく、対面する相手の守備に奔走させられた美波さんが攻め上がる場面は一度も見られなかった。  前半を終えてスコアは一対三と、チームはリードを許している。アーニャは途中から無言で、ほとんど祈るような様子で戦況を見つめていたから、あたしは慎重に言葉を選んで言った。 「美波さん、すごいよ。あんな前後左右に振られて、それでもほとんど相手に仕事させてない」  アーニャははっと目覚めたみたいに、あたしを見た。その瞳の中心はあかく燃えたぎっていて、プロミネンスだ、と咄嗟にあたしは思った。焼かれはしないだろうけど、火傷くらいは覚悟した。  ところがアーニャは、「ナオ。でも、ミナミはここからです」とほほえんで、ステンレスマグを差し出してくれた。それであたしも喉の渇きに気付いて、ふたりしてフィールドの人たちよりがぶがぶと飲んだ。  後半が始まって十分もすると、アーニャの言った意味がわかってきた。美波さんの相手の足が少しずつ止まってきて、フリーになる時間ができはじめている。相手チームのシュートをキーパー(ゴーリーというらしい)がブロックして美波さんにパスが通ると、ついにその時が訪れる。  美波さんはがら空きの左サイドを猛然と駆け上がって、相手の一人目をステップで、二人目を味方との一瞬のパス交換で鮮やかに抜き去ると、ゴーリーと一対一になる。あたしは思わず「いけ!」と叫んだ。美波さんはあたしの声と同じタイミングでラケットを振る、寸前に手のひらで回転させると右にステップを踏んだ。タイミングを外されたゴーリーは数コンマ遅れて、また駆け戻っていたディフェンスも数歩間に合わず、美波さんは流し込むようにネットを揺らした。 「ハラショー!」とアーニャが叫んで、青い日傘が宙を舞った。  美波さんは急いでボールを拾うとチームメイトからの祝福を受けながらセンターラインへ戻っていく、その途中で、こっちを見て小さく手を振った。  あたしは手を振り返しながら、たぶんアーニャ宛なんだろうなと思ってつい、苦笑いをする。それから飛んでいった日傘を回収して、試合の続きを眺めた。  美波さんのチームはそこから追い上げを見せて、だけど前半の差を取り返しきれず試合に勝てなかった。
 アーニャは「そろそろ、門限です」と言った。声や表情で心から名残を惜しんでくれているのが伝わるから、あたしは嬉しくなった。「また、現場でな」と伝票に手を伸ばすと、強く掴まれた。不思議に思って顔を上げると、アーニャは冷たい声で言った。「言い残したことは、ありませんか」  それは、あまりに突然だった。さっきまでの、今日の試合のことや演技について話していたアーニャはいなくなって、まるで、彼女はイクサだった。映画の中の、月のように佇むひと。美しく気高い、絶望的な孤独に寄り添われた少女。  あたしが黙っていると、「私には、あります」とアーニャは言った。ファミレスの喧噪は華やかで、細かい棘がびっしり生えていて、告白にはぜんぜんふさわしくないなと思った。「高校を出たらふたりで暮らそうと、ミナミに言われました」  アーニャは続ける。 「私は、泣いて喜びました。本当に、嬉しかったんです。だけど、ひとりになって考えました。ふたりで暮らして、どうするのでしょう。時間を重ねて、どうして、この隔たりが埋まるというのでしょう。問題を先送りにしているだけです。いつ壊れるのか怯えながら過ごす毎日にどんな喜びがあるっていうの。ねえ、奈緒。残酷だよ。ほんとに、ひどいよ」  加蓮の涙がこぼれて、あたしは目を覚ます。心臓があばれていて、息が苦しい。冷房が切れていて、ひどい汗だ。いったい、どこまでが現実だっただろう。アーニャと美波さんが一緒に暮らす、それは事実だったように思える。アーニャは笑っていた? それとも。  それきり目が冴えてしまったので、参考書に向かって朝を迎えた。いつの間にか机で眠っていて、それでも仕事には遅刻せず済んだ。
 【c】
シーン89
○森(夕)
   イクサとカーラは森の中のうろに隠れている。日は翳りを見せはじめている。
カーラ  心配? 大丈夫だから、ね。 イクサ  あいつらが、何をするか読めないんです。本当に、不安で。 カーラ  ミトなら平気、うまくやってくれるよ。
   イクサはカーラに腕や背中を見せる。無数の針の痕を見てカーラが顔色を変える。
カーラ  ……先に戻って、様子を見るよ。 イクサ  ですが、カーラ。 カーラ  打ち合わせ通りにするから、大丈夫。三十分経って戻らなかったら見に来て。慎重にね。 イクサ  いえ、私も行きます。 カーラ  イクサが見つかったらぜんぶ終わりでしょ。任せて、三十分だからね。
   カーラは去る。イクサは立ち上がるが、カーラを見送り両手を重ねて祈る。
シーン91
○ミトとカーラの家・外(夜)
   イクサは開かれたままの家の扉を見る。息を呑んで、中へ入る。
シーン92
○ミトとカーラの家・中(夜)
   イクサは荒らされた屋内を進んでいく。一階をまわると二階へ上がり、ミトの部屋で背を向けたカーラを見つける。
イクサ  カーラ。
   カーラは答えない。
イクサ  カーラ、ミトは……。
   イクサはのぞき込む。その手には山のような錠剤がある。
イクサ  それは……。 カーラ  睡眠阻害剤、知ってる? イクサ  ……はい。
   カーラの手から錠剤がこぼれ落ちる。カーラは静かに泣きはじめる。イクサはカーラの肩を抱いて、天を仰ぐ。
シーン94
○エヌの部屋(深夜)
   イクサはノックに答える。ミトが部屋に入り、ベッドに座る。
ミト   カーラと話した。 イクサ  どう、でしたか。 ミト   考える時間がほしいって。 イクサ  ……そうですね。 ミト   イクサ。頼みがあるんだ。
   ミトは一度俯いて、再びイクサを見据える。
ミト   あたしたちを連れていってくれないか。 イクサ  ここから逃げる、そういうことですか。 ミト   エヌの嘘がばれた。今日は解放されたけど、次はきっと、そうはいかない。 イクサ  睡眠阻害剤があります。それでごまかせないのですか。 ミト   エヌをでっち上げる理由にならない。あたしは、恐いんだ。ひとが残酷になるのは、一瞬だから。 イクサ  私は逃亡者です。 ミト   追われ続ける方が、マシだよ。 イクサ  いえ、そうはならない。あなたたちは違う場所でやり直せる。荷物をまとめて、早い方がいいでしょう。 ミト   ありがとう、イクサ。本当に、ありがとう。
   ミトはイクサの手を握る。イクサもまたミトの手を握り返し、ふたたび祈る。
 【d】
シーン110
○ミトの寝室(夜明け)
   荒々しくドアが開かれてカーラが、次いでミトを背負ったイクサが現れる。イクサは意識のないミトをベッドに寝かせると、顔の殴打痕や両手足の骨折、青黒い腹部の腫れを確かめる。カーラは泣いている。
カーラ  ひどいよ、どうしてこんなこと。 イクサ  カーラ。家中の薬を持ってきて、それと水、布をたくさん。 カーラ  ミト。どうして。 イクサ  カーラ! しっかりしてください、ミトを助けるんです。 カーラ  ごめん、イクサ。どうしたらいい。 イクサ  座って、声をかけ続けて。それと、薬のある場所を教えてください。
   イクサは家中を奔走する。ミトに薬を飲ませ、濡らした布を当て、折った椅子の足で骨を固定し、応急手当をおこなっていく。カーラはずっと、ミトを呼び続ける。
ミト   ……カーラ。 カーラ  ミト! 大丈夫、大丈夫だから。 ミト   ……。 カーラ  大丈夫、だよ。 イクサ  ミト。吐いたものが詰まらないよう体を横にします。いいですね。
   イクサはミトの体を横にする。ミトは口から血の混じった胃液を少し吐き出す。
ミト   イクサ……カーラを、頼む。 イクサ  断ります。あなたが、自分で、支えるんです。 ミト   カーラ、騙して……ごめん。 カーラ  いいの、そんなのいいよ、ミト。 ミト   愛してるよ、カーラ。カーラ。
   再びミトは意識を失う。ミトの苦しげな呼吸音、カーラのすすり泣きが響く。部屋に朝日が射し込んでくる。
シーン115
街・薬局(昼)
   イクサは買い物かごをカウンターへ置く。店主の女性は親しげに笑って、会計を始める。
女性   大風邪でも引いた? それとも怪我? 見えないけど。 イクサ  友人が怪我を。 女性   見ない顔だけど、遠くから? イクサ  エンバーから。モッドへ行く途中です。 女性   そりゃたいへんだ。全部で六十にしたげるよ。 イクサ  助かります。
   イクサは百の紙幣を渡す。女性が釣銭を取り出している間に、キーボックスのインテリジェントキーを確かめる。
女性   道中気をつけて。
   紙幣を受け取る瞬間、イクサには女性がミトを殴打しているイメージが浮かぶ。女性は、笑っている。
イクサ  はい、失礼します。
   イクサは両手で袋を抱えて店を出ると、周囲を見渡す。道は広く、明かりも多くはない。夜になればミトやカーラを連れても逃げられそうだと算段をつける。
   イクサの足下に、柔らかい何かがぶつかる。イクサは見下ろす。黄色いボールが転がっていて、何人かの少年が少し離れて見ている。
イクサ  ごめんなさい、手が塞がっていて。
   少年たちは答えない。イクサはほほえんで、ボールをそっと蹴り返す。その瞬間、軸足に鋭い痛みを感じる。イクサが振り返ると、少女がイクサの脚に注射針を突き刺している。イクサはふらふらと歩いて、倒れる。袋から水のボトルや薬瓶が転がり出す。
少女   ママ、やったよ……。
   少女の声や近付いてくる足音を聞きながら、イクサは気を失う。
シーン144
ミトとカーラの家・外(夜)
   暗闇をヘッドライトが照らす。黒いバンからイクサが降りてくる。首に乾いた血痕をつけたイクサは乱暴に扉を開く。
シーン145
ミトとカーラの家・中(夜)
   暗い室内を手で探り、イクサは照明をつける。リビングは静まり返っている。
イクサ  カーラ! ミト! 行きます、急いで!
   返事はない。イクサは階段を駆け上がり、ミトの寝室を開く。ベッドの上、ミトの死体と寄り添うカーラの石像を見つけ���。
イクサ  カーラ。ミト。
   イクサはベッドに近付く。『イクサへ』と書かれた紙を取り上げる。そこには徐々に震えを増していく字で次のように書かれている。
   『イクサへ。ミトが死にました。さっき。私も石化が始まって、だからイクサに届くかわからないけど届けばいいなと思って書きます。ミトは私のぜんぶでした。恋人で、家族で、愛していました。だから、いま死ぬのは受け入れられます。イクサには悪いけど。イクサには本当に感謝しています。あと迷惑かけてごめん。金��はカバンにまとめてあるので持っていって。それと、お願いがあります。これを読んだら、私の体を砕いてください。石になると、人のたましいは中にとどまると聞いたことがあります。それだけは、いやだ。私はミトといっしょがいい。空へのぼって、あの、青い空をふたりでおよぎたい。ミト。あいしてるって言いたい。私をよんでほしい。笑って、キスをして。ミト、また私と(判読できない文字が続く)ミト(判読できない)ミト』
   イクサは手紙を置く。机上の地球儀を取り上げると高く掲げ、力なく下ろす。ミトとカーラの体を毛布で覆って、カバンを手に寝室を後にする。
シーン146
ミトとカーラの家・外(夜)
   イクサは助手席にカバンを放り、エンジンをかける。走り出したバンは玄関を突き破ってリビングで停まる。イクサは発電器用の灯油を撒く。灯油で導線を引きながら家を出る。
  イクサは家から充分に距離を取るとマッチに火を点けて地面に放る。火はミトとカーラの家へ続き、リビングで激しく燃え上がる。やがてバンのガソリンに引火し、爆発が起きる。炎が家を破壊するとイクサは去る。振り返らず、森の闇に消える。
 【D】
 十八時の待ち合わせに加蓮は三十分も遅刻してきた。「遅れてごめんね」と謝るだけで、理由は話さなかった。あたしも訊こうとはしなかった。  あたりはひどく暑い。立っているだけで汗が滲んだ。あたしは「行こう」と足早に歩き出して、だけど加蓮はそのままでいた。振り返ったあたしをじっと見て、何も言わず、ただ見ていた。  その瞬間、夢みたいだけど確かに、時間が止まった。停止した時間の中で、視線だけを重ねた。無限に引き延ばされた一瞬の内側で、手を伸ばしても決して届かない距離を隔てて、あたしたちはふたりじゃなかった。  ひとりと、ひとりでいた。  ごお、ごおんと何かの音が聞こえて時間は動き出した。加蓮は「ぼーっとしちゃった。暑くて」と言って歩き出す。今、夏が終わったんだとあたしは思った。こんな鮮やかな季節の移り変わりを、たぶん一生忘れないんだろうなと、心から。 「模試どうだった?」 「判定は来週だけど、手応えはわりと」 「すごいじゃん、もう遊び回ってもいいんじゃない?」 「あたしを落としたいのか?」 「落ちたらどうする?」 「一年間、加蓮とは遊んでやらない」 「あはは、さいあく」  そんなふうに話しながら、あたしたちは目当てのベンチに座る。そこは住宅街の川のそばで、近くには大きな車道があって、加蓮があたしに告白をした場所だった。  それからはふたりして黙ったまま、時間が過ぎていった。ぽつぽつと人が通り過ぎて、舞い落ちた葉っぱが浅い川をざらざら流れていく。少しずつ日は翳りはじめて、頭上の街灯がともったとき「私、ふられるんだね」と加蓮が言った。  はっとして顔を上げるあたしを見ずに、加蓮は続けた。 「いいよ。理由もわかってる、仕方ないよ。だってそんなの、どうしようもないよね。今までガマンさせてごめんね、でも付き合ってくれて、嬉しかった。ほんとに、幸せだったよ」  加蓮は、続けた。 「ねえ、別れても友達でいようね。それくらい、いいよね。私、奈緒といるとやっぱり楽しいし、これからも仕事で一緒なわけだし、変に気遣わせるのもみんなに悪いじゃない? だから、前向きにお別れして、私たち普通の友達に戻りましたってかんじで、ね」  加蓮はずっと、ほほえんでいる。楽しそうに、とは言えないけど普通におしゃべりをするくらいに。それでやっとあたしを見ると、「キスしていい、最後に、一回だけ」と言う。  あたしは、どうにか頷く。加蓮は答える。 「奈緒はさ、優しいよね。そういうところが、大嫌い。優しいって、ひどいよ。つき放してよ。諦めさせて。もう二度ってくらい傷つけてよ。できないよね。奈緒は優しいもんね。そういうところが、大好きだよ。いまも、これからもずっと。じゃあね、さよなら」  加蓮は立ち上がる。すたすた歩き去ったと思うと足早に戻ってきて、あたしの唇にキスをした。ほんの一瞬、触れるだけのキスをして「また明日、現場でね」と笑った。  もう戻らなかった。  あたしはしばらくそのままでいて、あたりが暗くなるとやっとベンチを離れて家に帰る。その夜はすぐに寝付けたし、目覚めることもなく朝までぐっすり眠った。
 【e】
シーン148
○緑道(昼)
   イクサは一人歩いている。荒れた緑道の木陰に石像を見つける。男性。眠ったまま石像になっている。
   イクサは拾った石を振り上げる。頭、両手、両脚、胴体の順に石像を破壊する。腕の一振りごとに表情が歪む。石像を壊し終えると、手で十字を切る。涙を拭って、手のひらを重ねて祈る。
   イクサは再び歩き出す。その姿は遠ざかっていく。行く先には見える限り、道が続いている。暗転。タイトル。『Stones』 エンドクレジット。
 【E】
 誰と誰が付き合ったとか別れたとかそういう情報はまじで光より早いんじゃないかって勢いで巡るから、あたしは何人かとご飯を食べに行ったりみんなから優しくされたりした。映画(三十分のショートフィルムの、そのうち一本)の評判は決して悪くなく、特に主役のアーニャはそれから映画やドラマの仕事が少しずつ増えて、あたしも加蓮もアーニャほどではないけど仕事の幅を広げることができた。それと、あたしはAO入試で早々に進学を決めることができたので、十八歳の秋から冬、春になるまでかなり仕事に集中した。  加蓮とは、仲良くしている。  言っていた通りに、加蓮は普通の友達としてあたしに接した。からかう口ぶりもスキンシップも、女子って感じの仕草もぜんぜん変わらないし、たぶんだけど、あたしも同じようにできていると思う。ただ、ふたりで話したり並んで歩いたりしていると、時々どうしようもないくらい消えたくなる。それか生まれてからの人生ぜんぶをやり直して、まったく違う人間として生まれなおしてもう一度加蓮と向き合いたいと、思うことがある。十九歳のあたしは今もばかであほでどうしようもなくて、二十歳、どころか三十歳や五十歳になっても魔法みたいに全てをうまくできるなんて無理だと気付きはじめている。  今日は、加蓮と遊びに行く。少し前、昔話に花が咲いて思い出した海水浴に、事務所の保有するビーチにふたりで行く。ほとんどプライベートビーチだと聞いたとき、こんなこともあるんだなんて一緒になって喜んだ。  そこが、きれいならいい。まっさおな海が空と見分けがつかないくらい一面に広がっていたら、荷物なんて放り投げて服も着たままで飛び込みたくなるくらいきれいだったら、最高だ。  だって、加蓮の笑顔が好きだ。加蓮が笑っていると嬉しくなる。あたしは生きていてそれが、それだけがどうしようもない。
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virginwax-blog · 5 years
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insyohair · 2 years
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harikyuindan · 3 years
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