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#秘伝の煮汁しょうゆ味
yuppiii369 · 2 months
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この組み合わせが最強説
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喜びと幸せで人生が満ちる毎日をお過ごしのあなたへ
ゆっぴーのブログに訪問頂きありがとうございます💖
お久しぶりのブログは料理レシピというほどのものではないくらい簡単なのですが、我が家でそばの食べ方といえばコレ!と定番化している内容をシェアしようと思います♪
1年の中で最も寒い2月でも、すっかり日中は春めいてきて、あっさりとお蕎麦が食べたいなと思うくらい外の氣温もあたたかく感じる日が少しずつ増えてきましたね🌸
※こちらはインスタストーリーズで以前シェアしたモノです
では早速シェアしていきます。
《材料》 約3人前
・アボカド 1個
・舞茸 2〜3パック
・十割そば 1袋 (二八そばでもお好みで)
・オリーブオイル 大さじ3
・天然塩 2つまみ
・お好みのめんつゆ 適宜
①オーブンを180度に予熱します
②めんつゆを作ります
(時間ない方は市販でOK)
③オーブンの天板にクッキングシートを敷き、舞茸を食べやすい大きさにして重ならないように広げ、オリーブオイルを全体に回しかけ天然塩をパラパラと振りかける
→予熱が終わったオーブンへ入れ30分焼く
④そばを袋に書いてある表示時間どおりに茹でて、水でよく洗いザルで水を切っておく
⑤アボカドを食べやすい大きさにスライスする
⑥器に④そばを入れて、オーブンから取り出し焼き上がった③舞茸をたっぷり乗せて、②温かいめんつゆを上からかけ、空いてるスペースに⑤アボカドを盛り付けて完成
※お好みで本わさびを添えても美味しいです
このそばの調理方法だと調理が楽なのもあってパッと作れるし、オーブンの予熱段階から、めんつゆをつくり始めて、蕎麦を茹でて一氣に完成させて同時に終わるのが個人的に作っていてキモチイイです😁
※②めんつゆ作りについて※補足
めんつゆは我が家は昆布と干し椎茸を水につけて一晩寝かせたものを使用することが多いです。たまに煮干しだしを使用して作ることもあります。(その際は頭と腹わたを取って1度鍋で乾煎りしてから水を加えてだしを取っています)
あとは3人前のつゆなので、使う器に水を入れ3回分を鍋に移し、鍋のこのくらいの量でできる目安を作っておくと非常に楽でめんつゆの味も安定します。
出汁が沸騰したら、味の母をお玉2杯くらい、有機白しょうゆはお玉に適量(4杯から5杯くらい)入れて、味見していい塩梅に調整して完成です。お玉で計ってるので完全に目分量ですが、各ご家庭の鍋のサイズもあると思うので味を見ながら調整なさってください。
※※補足以上※※
そばの風味と舞茸グリルの香りと絶妙な塩加減が、アボカドのクリーミーな食感も加わり、味のハーモニーがたまらない一品です✨
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よく混ぜ合わせていただきま〜す😋
我が家の定番でもあり、特に疲労回復したいなという時や1時間以内に調理を終わらせたいなぁという時にもよく作ります。家の中に舞茸グリルの香りが漂うと、カリカリ舞茸そばの日だと娘も分かるので、出来上がりを楽しみにしてくれています♪
アボカド選びは、できればすぐに使えそうな柔らかさがいいですね🥑PLUコードが貼られている果物や野菜は"9'から始まる5桁のものはオーガニックのものですので、よく見てみましょう。最近はスーパーでも手に入りやすくなりました。
調味料選びについても、こだわりポイントをいくつかシェア💡
◯オリーブオイル
エキストラヴァージンオリーブオイルやオーガニックのもので、遮光瓶や缶に入ってるものがベスト。
酸化してしまうので日に当たらないように保管することも大切です。(体内になるべく酸化したものを入れないことが若々しさを保つ秘訣)プラスチック製のものはできるだけ買わないようにしています。
◯天然塩
海水から汲み上げ、天日干しして採取したシンプルな工程で作られたものや岩塩など、舞茸に合いそうな少し粗めのお塩だと、そばの風味も引き立てるアクセントになるしオススメです。ミネラル豊富な塩選びも他のお料理に使う際もとっても大切です💡
◯市販のめんつゆ
原材料ラベルのチェックは基本です。できれば遺伝子組み換えでなく、化学調味料不使用で保存料なども無添加のものを選びたいですね。
◯有機白しょうゆ
そして、我が家に欠かせない調味料が七福醸造さんの有機白しょうゆ!!普通のお醤油よりも和食や洋食問わず頻繁に使ってます!
愛知県碧南市にある日本で唯一の白しょうゆJAS有機認定工場低温でゆっくり熟成されて作られている有機白しょうゆ。原料や製法にもこだわって作られていて、長期熟成だからこそ出せる「甘さ」と「旨み」がたっぷり凝縮されています。
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楽天で購入してるのですが、いつも名入りで御礼が一筆ついてくる真心に感動🥺有機白しょうゆを使ってできる料理レシピもついてくるので、調理の際に試せる情報も沢山あります👍
ネット注文だと、おそらく膨大な注文量であるはずなのに、一軒一軒お客様を大切にされて、名前を覚えて下さっているショップの氣遣いも温かくてリピートして買わせてもらってます✨
https://a.r10.to/hkQ7H8
↑七福醸造通販サイト 味とこころさん
我が家は、塩味の野菜炒めやパスタソースの決め手に、またホワイトシチューの味を締める役割だったり、お菓子作りにも使ったりと出番が沢山あるので、ストックも欠かせません。素材の味を引き立ててくれる調味料なので、とにかく色んな場面で使えるのでオススメです!
つくってみた感想も知りたいので、よかったら是非お試しくださいね😊
御縁がつながることに感謝して🙏💞
あなたが嬉しいと
わたしも嬉しい
最後まで読んで頂きありがとうございます✨
Yuppiii(ゆっぴー)
ピンタレストにピンを投稿中です📍
クリエイター近づけるようにコツコツ発信していきます👣他の暮らしに役立つかもしれない、今よりちょっと生活の質が上がるような情報もあるので、どうぞご覧くださいね♪
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harinezutaka · 10 months
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二年前日記28(2021年7/9〜7/15)
7月9日 仕事の日。土曜にかけて大雨との予報だったが、朝は晴れていたので職場の置き傘でいいやと思う。お昼ごろに雷が鳴り警報レベルの雨。夕方には少し弱まった。帰りの電車のなかで、胎動らしきものを感じたような気がする。モニョモニョした感じ。帰宅後、横になり少し本を読んでいると寝てしまった。晩ご飯は、買ってきた焼き鳥、穴子入り卵焼き、お麩じゃが、ケークサレ、ぬか漬け。『コントが始まる』の第6話を見た。ご飯を食べるとまた眠くなり、気づいたら寝ていた。
7月10日 いくつか用事があり淡々とこなす。実家にも行った。明治の人が来て母が断れなかったらしく、父が訪問販売お断りの貼り紙をすると言っていて母は怒っていた。予約の本を取りに図書館へ。4冊借りた。帰宅後、横になって借りてきた本を読む。晩ご飯は、わしたポーク焼いたの、夏野菜のあげ浸しとほうれん草のサラダ、茄子と豆腐のあんかけ、味噌汁。『コントが始まる』第7話を見る。
7月11日 夫は、弟が帰省するとのことで義実家へ。私は一日、フリーになった。家事と読書をぐるぐるする。貴重な梅雨の晴れ間で洗濯も三回転した。充実。夕方、来客。妊娠の報告をすると、あっけらかんとした反応だった。普通のことなんだよなとあらためて思う。夕方、クリーニングを取りに行き、買い物へ。安くなっていた焼きそばを買う。材料の欄には豚肉と書いてあったが、何も入ってなかった。サザエさんを見ながら、ノンアルコールのビールを飲みながら食べた。9時前に夫を迎えに行く。みんなお酒が入ってて楽しそうだった。妊娠の報告をしてから義実家に行くのは初めてだったので、喜んでくれていて嬉しい。お義母さんは、「こればっかりは産まれるまではわからないから」と言ってくれた。ほんとそう。まだまだ不安なので、わかってもらえてるようで嬉しかった。報告する人が増えるたびに、何かあったときの報告をしなきゃいけない人も増えるのが気が重い。だんだんお腹は大きくなるし、報告するまでもなく妊婦になってしまうのだけど。今日も野菜をたくさんいただいて帰った。お義父さんが作ったレモンが入ったお寿司も。トマトは完熟。そのままがぶりとひとつ食べた。弟くんは、大福をくれた。いつも美味しいものをくれる。センスがいい。
7月12日 朝、郵便局で野菜を友人に送る。晩ご飯用の蚕豆をゆでて皮をむいておく。プチトマトはオーブンでセミドライにして、蜂蜜とオリーブオイルに漬けた。今日は版画教室の日。バスに乗ろうとすると雷と大雨。びっちゃんこになる。ランチはドガリに行こうと思っていたが、外を歩きたくなくて駅近の蕎麦屋に入った。初めてエキゾを散策。駅沿いだからEKIZOなのかな?全部ビルの中にあるイメージだったから、地図が理解できなくてうろうろした。私の他にも同じような人が何人かいた。ご飯を食べて、地下一階と二階をうろうろして、少し休憩したくなり上島珈琲店へ。ノンカフェインの黒糖ミルクコーヒーを飲んだ。時間になったので版画教室に向かう。悪阻だったりでなかなか行けず、久しぶりすぎてすっかり行程を忘れていたが、先生は優しく教えてくれた。今日は刷りの本番。水で紙をしめらし、版もしめらし、のりをちょんちょんと載せて刷り込み、絵の具を載せて刷り込み、紙を載せてオーブンシートを載せてバレンで擦る。何度も同じことを繰り返すのでだんだんわかってきた。混色も先生が手伝ってくれるのでいい感じだ。10月に発表会があるらしく、勢いで出ることになってしまった。通えるのもそれぐらいまでになるだろうし、せっかくならしっかり覚えて一人でできるようになりたい。頑張ってみよう。帰りは高速バスで帰った。晩ご飯は、たらこバターごはんのオムライスと蚕豆のポタージュ。
7月13日 仕事の日。午後から少し手持ち無沙汰になる。同僚の仕事のチェックを頼まれるが、自己流でやってきたところもあって、それで何も言われなかったけど合ってるのかどうか(そもそも正解などないようなこと)わからないので、それを伝えていいものなのかどうなのか迷う。年上の女性のことを簡単におばちゃんと言うのがじわじわ気になってしまう。どういうつもりで言っているのか純粋にわからない。言ってて自分で傷つかないのだろうか。自分も歳を重ねていっているのに。そんな風に感じるというのは、自分に刺さってるからなんだろうけど。晩ご飯は、とうもろこしご飯、夏野菜たっぷりの豚汁、蚕豆に豆腐ソースをかけたもの。とうもろこしから蟻がたくさん出てきた。甘いものね。友達に送ったやつは大丈夫だっただろうか。
7月14日 来客の予定だったので、ちょっと丁寧に掃除をする。昼前に買い物にも行った。3時からの約束で、2時ごろから雷がすごくなってきて警報も出たので、今日は中止にさせてもらうことにした。音楽をかけて料理をする。晩ご飯は、茄子と豚肉の煮物、切り干し大根のエスニックサラダ(お昼に食べたちくわの磯辺揚げもトッピングした)。デザートにプチトマトのコブラー。夫は知らないうちに2個食べていた。気に入ってくれた様子。
7月15日 朝、鍼灸。電車と徒歩で行くのも慣れてきた。ちょうどいいウォーキングだ。先生からは「妊婦さんらしい脈になってきましたね」と言われる。妊婦にしては弱かったらしい。わたしは何もしていないので、赤子の力なんだと思う。「私、妊娠できると思ってましたか?」と聞いてみると、「思ってましたよ。何でできないのかな?と最近は特に思ってました」と言われた。そうだったんだな。嬉しい。帰り、気になっていたサンドイッチ屋さんでランチボックスを買って帰宅。ごろりと横になる。今日は雨も降らなさそうだったので、昨日来られる予定だった人に連絡すると、来ますとのこと。それまで少し休憩した。予定が終わり、また少し横になり晩ご飯の支度。晩ご飯は、切り干し大根のチーズ春巻き、豚ごぼう、茄子の田舎煮、高野豆腐含め煮、プチトマト、小松菜と揚げの味噌汁。『コントが始まる』第9話を見る。丁寧に丁寧に色んな話が回収されていってすごく満たされた気持ちになった。いいドラマだなぁ。以前に相談していたさよたんていしゃの秘書さんから回答メールがきた。てっきりボツになったんだと思っていたから嬉しい。ごもっとも!という解決方法だった。
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2ttf · 12 years
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asukl · 3 years
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親孝行にアジア旅行☆これだけは食べたいアジアの肉料理(鶏豚編)
どうもアスクルです🎵
  
もうすぐ年末となるので帰省を考える友人が増えてきていますが、この時期に帰省することを悩んでいる人も多いと思います😂
アスクルは実家が近いので、さらっと帰って両親を安心させたいと思っていますが、皆さんはどうする予定でしょうか❓
このご時世なので帰るかどうか悩ましいところではありますが、しっかりと対策をして両親に元気な顔を見せたいと思います🤩
 
折角帰省するなら普段から美味しい料理を作ってくれる両親に、美味しいものを食べさせてあげたいとふと思いました🍳
昔はよく誕生日に家族で肉料理を食べに連れていってくれたので、美味しい肉料理をプレゼントしたいですね🎁
 
 
目次
1. 親孝行にはアジアの料理を食べさせたい!
2. アジアの鶏肉料理
3. アジアの豚肉料理
4. さいごに
 
 
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1. 親孝行にはアジアの料理を食べさせたい!
何を食べさせてあげたいかということを考えているときにふと思い出したのが、友人の向山雄治さんが親孝行で台湾の九份に招待した話です🇹🇼
九份と言えば、千と千尋の神隠しの舞台になった場所で、勝手に料理を食べてしまい両親が豚になってしまうのが印象的です🐖
旅行のときの写真を見せてもらいましたが、料理がとても美味しそうでめっちゃ食べたくなりました😂やはり、親孝行するなら絶対に美味しいというものを食べさせてあげたいです🍴
聞いたり見たりすれば食べたくなるのですが、意外と思い出せなかったり、知らなかったりするので、今回はこれだけは食べておきたいアジアの料理(鶏編、豚編)をいくつか紹介したいと思います🤩
 
 
2. 鶏肉料理
北京ダック
名前の通り中国の北京を代表する料理で、
アヒルを丸ごと焼いた後にカットして、
ネギやタレと一緒に薄い生地に包んで食べるのがスタンダードです🇨🇳
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チキンフォー
ベトナムで毎日食べられているライスヌードルをフォーといいます🇻🇳
鶏もも肉のゆで汁を使うので旨みがたっぷりとつまっていてとても美味しく、自分の好みの具材をトッピングしてアレンジができます😄
ちなみに、フォーの語源はフランス語の「feu」でポトフ(スープ)という意味だといわれています🎓
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ガイヤーン
鶏を丸ごと甘辛い秘伝のタレに一晩漬け込んだタイの料理です🇹🇼
炭火でゆっくりと焼いているため皮はパリッと中はジューシーで、
そのまま食べても美味しいですがピリ辛のタレにつけても絶品です🐔
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参照元:https://www.sbfoods.co.jp/recipe/detail/07884.html
 
タンドリーチキン
カレー屋さんでよく見かけるタンドリーチキンはインドの料理で、
鶏肉を串に刺してタンドゥールと呼ばれる壷窯で焼いたものです🔥
スパイスが効いていて飽きが来ない美味しさです😆
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3. 豚肉料理
サムギョプサル
スライスした豚のバラ肉を焼いて食べる韓国・朝鮮の肉料理です🇰🇷
焼いたお肉に岩塩を溶いたごま油につけたり、
青唐辛子のスライスやネギの和え物と一緒にサンチュやエゴマの葉などに巻いて食べます🍀
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魯肉飯(ルーローハン)
煮こんだゴロゴロの豚バラ肉と温泉卵をホカホカの白いごはんに乗せた台湾の料理です🇹🇼
トッピングとして、ごま油で炒めた高菜を乗せると酸味が効いてより美味しくなります☺️
独特な甘い香りの五香粉を入れすぎるとしつこくなってしまうので注意が必要です‼️
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参照元:https://hamukoubou.jp/recipe/recipe/1072/
 
リチョン
豚を丸焼きしたフィリピンの代表的な料理です🇵🇭
豚の体内に香草を入れて臭みを取っていて、塩味が効いたシンプルな味です🌿
フィリピンでは祝い事で食べられる料理ですが、セブ市では専門店があるほど有名な料理です🤩
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4. 最後に
まだまだ他にもたくさんあると思いますが、今回はこのくらいにしますが、どうでしたでしょうか❓
有名な料理もありますが、マイナーな料理も紹介したので、知らない料理もあったと思います👍
知ってるからこそ一番良いものをオススメできると思うので、とことん親孝行をするなら色々なことを知っておきたいです😆
向山さんも九份にいったときは九份でしか食べられないものを調べて親孝行したと話されていました😂
併せて聞いたのですが、親孝行するときにもうひとつオススメなことが頼られることだと教えてもらいました🌟
仕事を任されたり、信頼する友人を紹介したり、自分がしっかりとやっている姿を見せることが両親を安心させることになり、それも一つの親孝行になります🍀
 
向山さんは株式会社RNSの社長として結果を作ってから、両親が旅行に連れていって欲しいないと頼ってくれるようになってとても嬉しかったと話されていました🤩
アスクルも早く自他共に認められるようになって、両親が喜んでくれる旅行に連れていってあげたいですね🎵
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abcboiler · 4 years
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【黒バス】no day but today/只今日已ガ或
2017/01/29 発行コピー本web再録
明日も明日も明日も来ずとも
今日と今日と今日が在ります
   明日も明日も明日も死すとも
今日と今日と今日を逝きます
         「先生、センセ、どこにいるんですか」
「もう見つけている癖にわざとらしい。さっさと来い」
 四月の頭は春の狂乱。薄青い空は、桜花の気配を反射して柔らかく香る。春の季節は花よりも短い命だ。先生はこの季節が一等お好きなので、常日頃閉じこもる部屋から、この時ばかりは、あちらこちらへと、凧より不確かに、童より落ち着き無く彷徨っている。
 春。あらゆる芽生え。美しき目覚め。
「たまには、先生の方からお越し頂いても良いと思うんですけどね」
 サテ、どのようにあんな所へ登られたのかしらん、と丁寧に手入れされた庭をぐうるり見渡せば、咲き終えた桃の木の陰に梯子が立てかけられている。どれだけお誘いしても動こうとしない偏屈な男は、こんな時ばかり行動をするのでこちらとしても苦笑いを浮かべるより他に無い。初めて雪に出会った犬が、気でも違ったかのように走り回るように、初めての衝撃は人を狂わせるものだ。先生は、何年を過ぎても、春に初めて出会う獣だ。所々の釘に緑青が浮き出た屋根の��、黙ったま��遠吠えをする。
「先生、今月の原稿」
「そこにある」
 高台にある先生の屋敷の屋根からは、東京の平屋が見渡せる。えいやらこいやと屋根を登った功労者を労わることもなく、先生は眼下の街を指差した。否、指したのは、己の書斎の、黒檀の書斎机なのだろう。目を閉じるまでも無く、あの沈黙に包まれた部屋で沈黙を守る原稿が見えた。
「なんというか、これは、アレだ」
「なんだ」
「優秀過ぎてつまらないなあ」
 緑間先生が、〆切を過ぎたことは一度も無い。俺が先生附きになってから、本日まで。三度目の春を迎えても尚。
 何を馬鹿なことを、という目で先生は俺を見た。この国には珍しい、否否、恐らく唯一であろう、明るい若葉の瞳が俺を写して瞬きをする。それ以上言葉を接ぐのは億劫になったのか、先生は花に霞む橙色の街を見ながら呟いた。
 春は五月蝿いな。春ばかりは、こうも五月蝿い。
   *
「なんと言いますか、編集になったら、というか、他の輩はね、先生の原稿を追っかけ東奔西走、京都の旅館で芸妓さんと戯れてる所をとっ捕まえ、陸奥の炉利端で魚焼いてる所をとっ捕まえ、浅草で芸妓と戯れ等してるのをとっ捕まえね、必死に連れ戻しちゃあ見張って、追い立て、原稿を取り立てているんですよ」
「芸妓ばかりか」
「そうですね、真ちゃん以外はね」
 半時ほど屋根の上で黙りこくっていた先生は、突如立ち上がると俺に一言も告げずに、その大きな身体に見合わぬ機敏な動作でひょういひょいと梯子を降りて屋敷の中へ戻っていってしまった。慌てて追いかければ、台所でじいっと鉄瓶を沸かしている。思考の一つもその原動力も解らないけれど、何故だか先生の原稿だけは西洋の錬金術かと紛うばかりの不可解さでもって、〆切までに現れている。そうしてまた、尚の事不可思議を極めることに、この原稿がまた読みやすく、人の情緒に潜り込むのである。
「その呼び方はやめろと何度も言っているだろう、高尾」
「はいはい」
 実際の生活に於いて、人の心など微塵も解するつもりの無い先生は、二人分沸いた湯でもって、己の分の茶だけを点てた。矢張りその侭、俺を無視して部屋へ戻るので、こちらも此の呼び方を変えるつもりはない。というのも、元はと云えば、冬だから酔わねば為らぬ、付き合えと突如言い出した先生が、存分にしこたま酒を喰らい、湯水のように酒を煽り、泥酔の挙句、飲んだ酒の分だけ語り、笑い、己でこの愛嬌ある呼び名を漏らしたのが悪いのである。
 高尾、お前は己がまだ罪悪に目覚めていなかった頃を覚えているか。幼い頃? それは幾つだ? 五つか六つ? 馬鹿を言うものじゃない。子供など罪悪の根源なのだよ。悪辣の化身よ。それより以前だ。尤も最たる無罪は生まれた瞬間だ。その時だけが赦されている。はは、ははは、俺もその頃は、先生等という、何者でも無い呼び名など無かったが、ふん、今や名前に意味など無いな。お前もそうだろう? お前の名前は『文芸青い森』氏だろう。人など、どうせ記号と象徴に消えて逝くだけだ。足掻いてもがいて縋らなくては、己の名前など、母しか知らん物になる。何だ其の顔は。俺にも母くらい居るに決まっているだろう。お前は珠に俺を神か悪魔かと勘違いしている。母だけが俺の名前を知っている。ははは、真ちゃんとしか呼ばれなかったがな。ははははは。笑い声は母の連なりだ。はははは。
 翌日、記憶を無くさなかった真ちゃんが、悪鬼も裸足で逃げ出す形相で、昨晩は忘れろと迫ってきたのも懐かしい。
「真ちゃんは面白いなあ」
「そうか。お前は大概失礼な奴なのだよ」
 曲がりなりにも、文士と編集という関係で、そこまで砕ける奴がいるか、と、そう言いながら真ちゃんは原稿を投げて寄越す。俺の無作法を許容しているのだから、なかなかどうして、そちらも同じ穴の狢と思う。原稿の枚数だけを確認して鞄にしまいこんだ。まだ日にちは有るので、ゆっくり線を引けば良い。つくづく、人間性は置いておいて、優秀すぎる男だった。
「そもそも、文を書くため文を書き、文に殉じて文士になったのに、何故書かない? その時点で理解に苦しむな」
「学生になったからって、勉学に励む奴ばかりとは限らないでしょ?」
「ああ。確かに居るな。ふむ、懐かしい。赤司なんかは、貴方達に教わることなど無いと、教授を片端から論破して、後は圖書館に引き篭るか、どこかへ流れてばかりいたし」
「そうじゃあない。そんな飛び出した奴のことじゃない」
 赤司といえば、恐ろしく有名な華族の一派だと思うが、まさかそこの嫡子のことではないだろう。先の戦争でいち早く物流に目を付けて、いざ火薬が飛び交う頃には全ての武器から薬剤、食料、布、それらの元締めを押さえていたという恐ろしい先見の一族。緑間という苗字も相当名の知れた家であることは間違いないのだが、赤司と繋がりがあるというのなら、それは兵器と身内ということだ。その経歴から只者ではないことは知っていたが、この男は想定を簡単に超える。
「そもそも、何故、作家になぞなろうと思ったかね」
「何度も話しただろう。生きる意味だ」
「何度も聞いたけど、全く解りませんね」
「わからなくていい。お前とは考え方が違う。お前もそう思っているのなら、お前は作家になっている」
 高尾、俺はな、人として生まれたからには、何かを残さねばならないと信じているのだよ、と真ちゃんは説く。何かを生まねば、生まれてきた甲斐が無い、と。
「俺は、今しか信じない」
 此処に存在するものが全てで、此処で己が感じたものが全てで、それ以外は存在していないのだと。故にその存在を残すのが、己が役目だと彼は信じている。
「未来などなくていい。永遠に訪れないものになど興味は無い。俺は今生きていればそれでいい。今、生きているのだから、人として生きた証を残せればそれでいい。それが、俺が死んだ未来も残るというのなら面白い。それだけだ」
「そんな生き方、苦しくねえの」
「明日は死ぬかもしれないが、昨日は既に夜かもしれないが、何、どうせ生きるのは今日だけなのだよ。何を気負うことがある」
 縁側で茶をすする姿は、一見して平穏の象徴のようだ。陽射しが反射して黄金に降り注ぐ庭は赤詰草が地面を覆い尽くし、小さな丸い花を細かくつけている。桃の木の下には薄紫の碇草、垣通。黄色い鬼田平子は縁側から飛び出すように伸びているし、廂の下には烏柄杓が弦を巻いている。
 春は目覚めで、春は狂乱だ。緑に埋もれて、緑の人は、静かに目を細めている。その中身が烈火よりも尚熱いことを、どれほどが知るだろう。迂闊に触れれば火傷どころか、その覚悟の前に骨から燃やし尽くされることを。
「…………それじゃあ今回も完璧な完成原稿をありがとうございました」
「はい、お粗末さまでした」
「今、何を考えてるの?」
「春は五月蝿いなということを」
 この五月蝿さは、どうすれば伝わるのだろうな、という真ちゃんの目には、静寂ばかりが見える。
   *
「仕事を寄越せ」
「先生が仕事人すぎて俺は本当に怖い」
 一週間ぶりに真ちゃんの書斎を訪れれば、原稿用紙およそ三百枚の束を押し付けられながら、淡々とそんなことを言われるので思わず頬が引き攣るのを感じる。物量はそのまま圧力である。質量保存は精神に及ぶ。たった二枚半の書評を書くのに三ヶ月先延ばしにしている作家もいる中で、この男は一週間でこれを書き上げ、次を求める。先生の全集の編集作業だけはやりたくない。
「っていうか、そもそも俺、こんな原稿依頼してたっけ」
「自主的に書いただけだ」
「嘘だろ」
「別に載せろというつもりはない。が、一応渡しておく」
「『春について』か。まんまだね」
「己でまとめられそうに無いから三百で書いた。捨ててもいいし、どこぞの穴埋めにしても良い。使う時の許可もいらん。ただ、使うなら半分は削れ。この話に三百は無駄だ。削る場所はお前が決めていい」
「珍しいね、真ちゃんが最後を人に任せるなんて」
「まだ俺には早かったんだろうな」
 欠伸をしている所を見ると、どうやら完成したばかりらしい。人間として規則正しい生活が最も原稿を進めるのに適していると信じているこの人は、朝は必ず六時に目覚め、夜は十一時に床につく。お役所の方だって、ここまで時計に忠実には動くまいという正確さだ。ただし、どうも先生の中では、最終の区切れ目があるらしく、その一線を超えると、後は書き終えるまで一睡もしない。それが例え残り三枚であろうが、五十枚であろうが、関係なく。それはただ彼の心の中にのみ存在する線であるので、俺から調節することは不可能だ。今回は、どうやらその線を随分と早く踏み越えたようだった。
 興味本位でぱらぱらと原稿をめくるが、几帳面な文字が整然と並び、所々自身で入れている赤ですら、列を成して整っている。いつも通りの、緑間先生の完成稿である。性分とはいっても、これはあまりに厳格が過ぎる。
「真ちゃんの原稿、誤字脱字なぞは勿論あるけどさ、全部自分で赤入れてあるから、それ以外の、つまり、真ちゃんも気づいていない誤字、一度として、見つけられたことが無いんだよなあ」
「当たり前だ。読み直した時に気がつくだろう」
「普通は見落とすんだよ。普通はね」
 この、自主的に書いたという、いうなれば仕事でも何でもない手遊びの原稿だって、どうせ一文字も狂いが無いに決まっているのだった。
 とはいえど、俺の担当している文芸でこれ以上真ちゃんの頁を増やした日には、雑誌の名前を『月間緑間』に変える必要が出てしまう。一度も原稿を落とさないから、重宝されているのだ。重宝しすぎた。一人だけ、連載のように一定の頁を持っているから、完全にうちの紙面は緑間で成り立っている。成り立ちすぎて、緑間専用誌にならぬように編集長まで確認しているくらいなのだ。どこか別の所で、今月穴を開けそうな所はあったかと皮算用している俺に、真ちゃんは淡々と繰り返した。それで、仕事はないか。
「真ちゃん、うちで長期の連載もあるし、随筆も持ってるし、他誌でも連載してるし、珠に寄稿なんかもして、若手の同人の書評もしてるでしょう」
「別にそれくらいだろう」
「それのどこがそれくらいなのか教えてくれ」
 間違いなく、今、真ちゃん以上に書いている輩などいない。あまりに節操なしに手当たり次第に書くものだから、批判的な所からは「飢えたハイエナ」「そこにあるものは全て食らおうとする卑しさが見える」とか好き勝手言われているほどである。実際は超上流階級特権階級育ちの、血統でいうならこの日本でも十には入る一族の嫡男なのだが。
「書かせろ。何でもいい」
 確かにこの欲求は、そう評されても仕方が無い程過激である。というより、そんな事を適当に並べ立てる彼らの中の誰も、緑間真太郎がここまでの基地外じみた文字狂いとは思っていないだろう。文字を食らって、文字を吐いて呼吸しているような人だ。その姿勢を知っているひと握りは、こと緑間真太郎に対しては口をつぐむ。触れたくないのだ。その真摯さは、その一途すぎる情熱は、少しでもその道に足を踏み入れたことがある者からすれば恐怖の対象である。
「真ちゃんは、もう少しばかり、遊びっていうものを覚えてもいいんじゃないの?」
「遊び?」
「うーん、座敷遊びとか」
「お前、経費で行きたいだけだろう」
「そんなことありませんよ」
 本当だ。真ちゃんと一緒にそこに行って、面白いとは思えない。いいや、綺麗な人の形をした花に囲まれて、ずっと物騒な顔をしているこの男を見るのは面白いかもしれないが、それは花遊びではないのだ。どうせなら俺は花を愛でたい。日向の庭に咲く小さな明かりではなく、夜の行灯の下で賑やかに艶やかに咲く方をね。まかり間違っても、この男ではない。
 この男を見るのは楽しいが、夜の花と一緒に愛でる、ものでは、無い。
「興味が無いな。そんなことに時間を割くなら、一文字でも多く書くし、一つでも多く学ぶだけだ」
「でも、世界が広がるかもよ?」
「何だと?」
 今まで全く反応を示さなかった真ちゃんは、ぴくり、と眉をあげた。この男は、兎角、視野だとか世界だとかの広さを気にする。見えなければ書けない、俺は見たことが無いものを書く事はできない、というのが口癖だ。そもそも、俺がこの偏屈に最初に認められたのも、俺の視野の広さによるものなのだから。徹底しているといえば徹底している。
「そういった、遊びだとかに興味が無いって云うのはさ、其れ等のものに命を賭けている人や、それに関わる物事を無視してるってことだろう? 人間の命題の一つとして、堕落だって書かないといけないんじゃあないの?」
「もう堕落を題材にした話は書いたのだよ」
「そうでした」
 半年前の原稿を思い出して肩を落とす。あらゆる堕落の果てに辿りついた人生のどん底で、男が周囲を恨み妬みながら、次第にその気力すら無くしていく話。最後は真冬の酒場の前で、真っ白な雪に埋もれて息絶える。読んでいるだけで、こんな人間の屑がいるものかと呆れ果てたし、其の男と己の共通点を、読み進めるほどに見つけ出してしまって苦しくなっていった記憶。
「何で真ちゃんは或れが書けたんだ……」
「周囲に堕落している人間が多かったからな」
 見たことがあるものは書けると言っているだろう、という真ちゃんは、何を思っているのだか、暫く難しい顔で考え込んでいた。
「しかし、お前の言うことも一理ある」
「お?」
「そういった遊びも、知識として必要なのかもしれん」
「いいねいいね」
「黄瀬にでも連絡をとって」
「却下」
 突然出てきた名前に慄きながら、俺は咄嗟に真ちゃんの肩を掴んだ。不満げな顔が俺を見下ろすが、今、俺はお前の心の大事な、こう、柔らかい部分を守ろうとしているのだ。少女が一人物騒な夜道を歩こうとするのを引き止めるのと同じ理である。そんな顔をされる筋合いは無い。
「黄瀬クンは止めよう」
「何故」
「何で先生は突然そう、段階をすっとばすかな!」
「こと遊興にかけて、あいつに適う者はいないだろう」
「いないよ。いませんけどね? いきなり上級者の最高級品にいってどうするのって話」
「どうせなら最高のものを体験したほうがいいに決まっているだろう?」
「先生は本当に頭が良いのか、俺は突然わからなくなる」
 黄瀬といえば今、帝国劇場で押しも押されぬ一の役者だが、その分、女遊びも派手なことで有名だ。というより、女の方から寄っては散り、寄っては散りしているのだろう。一度だけ、真ちゃんに連れて行かれて楽屋まで行ったが、あれは他人に興味など全くない類の人種だった。というより、懐いた人間以外、全て同じに見える、という、素直すぎる男である。この世は好きか無関心。
 あらゆる人間の細かな差異に、いちいち目くじらを立て腹を立て、文句を言うような真ちゃんとは真逆に位置しているのだろう。故に、思考は合わないが相性は良い。好かれた人間にのみ構って欲しがる男と、誰にでも平等に構うが、一見ではその意味に気がつけない男。
 だからこそ、黄瀬は、誰彼構わず、請われるがままに適当に相手をし、そして何彼問わず、適当に流してあらゆるものをやってのけるのだ。そんな男に任せたら、間違いなく戻って来られないような世界に案内される。それも善意で。黄瀬にできるあらゆる接待で歓待するのだろう。
「高尾?」
「赤司といい黄瀬といい、どうして他者巻き込み破滅型の人間が真ちゃんの周りには多いんだ……? 普通作家自身がそうであるものじゃないのか……? それともやっぱり真ちゃんが実は破滅型で、類は友を呼んで……?」
「高尾、聞いているのか」
「はい、すみませんなんでしょう」
「それならお前が連れて行ってくれるのか?」
「はい?」
「お前もなかなか遊び慣れていそうではある」
「何ソレ。真ちゃん、そんな風に俺のこと思ってたの?」
「違うのか?」
「若い頃は色々やりました」
「だろうと思っていたのだよ」
 黄瀬と比べるべくもないが、しかし周りと比べれば、どうだろう、なかなか俺も堕落した人生を過ごしていたことには違いなかった。金になるならと闇まがいのこともしたし、その辺の店で得体の知れぬ使いっぱしりをしたり、野菜をかっぱらったり、適当な女の家に厄介になったり、まあ、それなりに。嗜みとして。
「俺は若い頃に何もできなかったからな」
 そう、しみじみと漏らす真ちゃんは、まるでもう寿命を終えるような口ぶりで話す。まだ二十も半ば、男の盛だというのに。まだ世間では若いと言われるような歳で、真ちゃんが振り返る過去は学生の頃のことなのだろう。
「家のことだけだ。言われるがままに言われたことをこなしただけだった。俺自身のものなど何も無い」
「それも十分立派だと思うけどね」
「そうだな。悪くない。それは決して悪いことではない。俺は赤司の生き方を否定はしない。家を守り、家に殉じ、家を遺す生き方は誠実であるだろう。だが俺は我が儘なのだよ」
「存じ上げていますけどね」
「俺が遺したかったのは緑間の家ではなく、『緑間真太郎』という存在だったからな。フン、ついぞ理解されなかったが、仕方が無い。誰も間違っていないのならば、そこにはただ違いが残るだけだ」
「しかしまあ、よく出してもらえたよな」
「というより、作家になると言ったら絶縁されたからな、なんとも気楽な自由の身なのだよ。最高だ」
「最高とか言うなよ。周囲から見たら驚きの凋落だわ」
「そうか? 誰だって自由には憧れるものだろう? 俺ほど羨ましがられる人間は他にいるまい」
「その自信も凄いけどね」
 それで、お前はどこに連れて行ってくれるんだ、と言う真ちゃんの中で、もうどこかへ遊びに連れて行かれることは確定しているらしい。何で俺が、と思わなくもないが、何せ言いだしっぺが此方なので、何とも断りにくかった。かといって、彼と花街には行きたくない。絶対に。絶対にだ。ならば残る選択肢は少なかった。
「……すき焼きでも食べに行く?」
「すき焼き」
「食べたことある? 流行りだして店も増えているけど」
「無い。うまいのか」
「まあ、うまいね。牛肉をね、こう、甘っからく煮て、そこに生卵をかけてね、白米かなんかと一緒にかっこむの」
「行く」
「先生は、案外、食に対して貪欲だよなあ」
   *
 最近は晴れてばかりの陽気だから、地面は乾いて歩きやすい。乾きすぎて土煙が上がっているくらいだ。真ちゃんは歩く時、あまり音を立てないが、そのあまりに高い上背と、緑の出で立ちは人目を引く。俺も背は高い方だけれど、真ちゃんの隣では子供のようだ。
 人目を引くから外に出たくない訳ではなく、単純に不精なだけの真ちゃんは、先程からすれ違う女生徒達の一種の欲を秘めた瞳にも全く気がつかないらしい。やれやれ。どれだけ若くても女は女。そして朴念仁は朴念仁らしかった。
「真ちゃんは、だれかとお見合いとかしないの」
「何故見合いなんだ」
「真ちゃんが自主的に自ずから恋に落ちると思えない」
「失礼だな」
「恋に落ちるの?」
「女とそんな関係になったことはないな」
 あっさりとそんなことを言ってのける、この男の作品の中には、男女間の恋愛を描いたものもそれなりにあった筈だが、当の本人はこの言い草だ。恋は目に見えない。彼にとって、堕落を知るのが周囲の人間を介してであるように、恋愛も、周囲を介して学んでいるのだろう。
 あまりにも人間としては不適当だが、それが文壇にて脚光を浴びるのだから世も末である。
「しかしまあ、見合いも無いな。家からはもう一切の連絡が来ないし、たいした関係も無い輩から持ってこられても断るだけだ。かといって、世話になった人からそういった話が来るとも思わんしな」
「何で」
「お前は、見合いの相手として俺を紹介したいと思うか」
「思わない」
「そういうことだ」
それは自分で言って悲しくなりやしませんか、と思うのだが、真ちゃんからすれば、それはただの事実、の一言らしい。客観が過ぎるのも考え物だと思う。簡単に言えば、可愛げがない。指摘されて慌てふためく姿に人は愛嬌を覚えるのであって、開き直られたのでは腹が立つだけである。彼は圧倒的に後者だった。それも、特別に質が悪い。
「真ちゃんが誰かとお見合いなんてすることになったら、真っ先に教えてくれよ」
「何故」
「真ちゃんの悪口を百個くらい言って、期待の度合いを下げておいてあげるからさ」
「迷惑極まりないな」
花の香りと砂交じりの風に巻かれながら辿り着いたのは、最近このあたりにできたばかりのすき焼き屋。幟が風にはためいて、白く抜かれた文字が裏返っている。
 俺の隣にいた真ちゃんは、「ここだよ」と指し示す俺を追い抜かすように暖簾をくぐりながら、
「そもそも俺は、女に対してそういった欲求を抱いたことがない」
「え?」
 そんな意味深長なことを言って俺を困惑させるのだった。
 暖簾は紺で、緑はとっくに女中の案内を受けている。
   *
「うまい」
「良かった」
「これは良いな。良いものが来た。良いものが現れた。これは残るぞ。これは残る」
「意外だな。真ちゃんは、こういうハイカラな物は嫌いだと思ってたけどね」
「嫌いなことがあるものか。新しいというのは、それだけで意味があることだ」
 すき焼きが出てきた瞬間、眼鏡の奥の瞳がきらめいたと思えば、そこからは一言も喋らず淡々と箸を進めるだけだったので、これは気に入ったのだろうなあと眺めていたら、締めの雑炊まで食べ終わって、真ちゃんはやっと満足げな息を漏らした。そしてこの言いざまである。どうやら相当に、お気に召したことは間違いなかった。
「あんまり、新しいものが好きっていう印象は持っていなかったけど」
「新しい文化はいつだって迫害される。迫害され、追いやられ、蹴落とされても残ったものは本物だ。ただそれを待てばいい。自ら追いかけるほど暇ではない」
 本物は残る。本物はいずれ耳に届く。お前が俺をこの店に連れてきたようにな、と続ける姿は、堂々としていていっそ小憎らしい。俺が一度ここに来ていて、ここなら出汁も効いているし、真ちゃんも好きだろうなあと、思ったことまで見透かされているようで猶更である。
「それにしても、そんなに新しいものに興味はないだろ」
「ただ、俺は新しいものに自分の調子を崩されるのが嫌いなだけなのだよ」
「それって結局嫌いなんじゃん」
「そうかもな」
 新しくなくなればいいのだから、時は偉大なのだよ、と言う、真ちゃんは手元に運ばれてきた茶碗を確認している。藤色に瑪瑙のような緑色。今までこんな色の茶碗を見たことは無かったけれど、これも西洋の文化と共に流れてきたのだろう。まるで俺の考えていることがわかるかのように、真ちゃんは呟く。新しいな。これは新しいものだ。
「新しいものがどんどん流入してくる」
「そうね」
「悪いことではない。ことここにいたって、日本の遅れは目に余る。日清で勝ったからといって、この浮かれ様はなんだろうな。皆、心の奥にある不安を、黙って見過ごすこともできず、話を恐れて、綺麗に話題を避けた結果がこれだ。戦に勝った。日本は選ばれた。馬鹿馬鹿しい。一時の盛況は未来の浪費��。自分の意見が無いというのは、迷惑をかけないという意味ではない。むしろ真逆だ。全ての罪悪は相手由来になる。新しいものを手にしなければ時代に取り残されるが、ただ流すのでは、いずれどこかでしっぺ返しを食う。それだけのことなのだよ」
「次の話の題はそれ?」
「『古き悪しきもの、新しき良きもの、愚か者』か? 語られ尽くしたという感は強いがな」
 すき焼きの話から、また真ちゃんの好きな原稿の話になってしまった。なってしまったというか、俺がそうさせてしまった。どうもつい、俺は彼の仕事癖に呆れている反面、先生にはこうであって欲しいという気持ちがある。どうしても。書いていて欲しい。何もかも。全て。
   *
「それで真ちゃん、すき焼きで何か学べた?」
「うまかったな」
「真ちゃん結局それしか感想言ってないけど」
「何だ? あそこのすき焼きの店でエッセイでも書けと? それならばそうと言え」
「違う。何で先生にそんな大衆雑誌の穴埋めみたいなもの書かせないといけないの」
「大衆誌は偉大だろう。結局、聖書を除けば一番読まれているのは新聞なのだから。大衆こそ国で、大衆こそ世界だ。大衆向けに作られているものは強い」
 何だかんだと食後のお茶までして、真ちゃんの家へと戻る道は、もう夕暮れの終わりだった。空は赤紫と濃紺の間で、複雑に折り重なっている。太陽はいくつもの細かい線になって、折り重なり絡み合い、木々の隙間を通り抜ける。家々は、夜より一足早く、軒先に行灯を下げていた。がらがらと、手水の水を捨てる音。豆腐屋の喇叭がどこかから木霊して、小石が小さく反射している。
 あたりが丸くぼんやりと光る中を、男二人でぽちりぽちりと歩いていく。
「そういえば、官能小説のようなものには、手を出していなかったな」
「何を突然」
「お前が言ったのだろう。花街に行くのも勉強だと。お前の所に、これ以上俺の話を載せるのは、紙幅の関係上無理であろうことは分かるし、他誌にも限界がある。しかし、俺はその分野には一切手を出していないからな。参入の余地はあるだろう?」
「何でそこに参入の余地を見出したんですかね」
 まるでさも名案を思いついたと言わんばかりの顔で、密やかに頷くものだから脱力してしまう。参入の余地があっても、入るべきでない場所は沢山ある。
 貴方は麻薬の密売の人手が足りないからといって薬を売りさばくだろうか? いや、別に官能小説が麻薬と言っている訳では無いけれど。けれど似たようなものだろう。
「今日は行かなかったが、次回、行ってもいいかもしれん」
「何でいきなりそんな乗り気なんですか」
「食欲性欲睡眠欲は、人類の三大欲求だろう。人類から性欲が無くなれば、それは滅びの時だ。逆に、性欲について傑作が書ければ、それは永遠になるのではないか?」
「先生は本当に馬鹿だなあ」
「何だと」
 鼻白んだ様子で真ちゃんが俺の顔を見やった時、丁度真ちゃんは屋敷の門を開けようとしていた。夜は徐々に深まっているとはいえ、まだ宵の始まりだ。行こうと思えばこれからだって、街にもう一度繰り出せるだろう。繰り出せる。俺たちは遊興に行けるだろう。
「嫌です」
「何故。遊べと言ったのはお前だろう」
「否、そうだけど、然様ですけど、真ちゃんと行っても、楽しくなさそうだし」
「別に、お前は帰るか、別の店にでも行くかすればいいだろう。というより、同じ場所にいることは無いと思うが」
「いやいや、それでも」
 真ちゃんと一緒に行って、真ちゃんを、見るのは、面白いだろうと、思う。思うが、俺は、どうせなら花を愛でたい。日向の庭に咲く小さな明かりではなく、夜の行灯の下で賑やかに艶やかに咲く方を。まかり間違っても、此の男ではない。此の、人では、無い。
「俺、先生のこと好きなんですよ」
「そうか」
 此の人では、無いと思うのに、此の人が、女を抱いている所を想像したく無かった。それが嫉妬でなくば何だろう。
この様な形で自覚をするのは、自分としても御免被りたかったのだが、しかし己の思うままに己が動いてくれるのならば、人が過ちを犯すことなど無いのだった。
「だから、先生のこと連れて行きたくないです」
「そうか」
 俺は此の人に世界を見て欲しいと望むが、その世界に俺がいないことが耐え難い。其の我が儘な感情を、俺は知っている。恋だ。これは紛うこと無き愚かな恋だ。周囲を巻き込んで、破滅していく、はた迷惑な恋なのだ。
「……それで、何だ高尾その顔は」
「なんか、思いのほかあっさりと受け入れられてびっくりしてる顔ですね」
「何を言う。お前は俺をどんな朴念仁だと思っているのか知らんが、曲がりなりにも作家だぞ。人の気持ちが繊細なものであることはわかっている」
「真ちゃん……」
 淡々と告げる瞳に、侮蔑や嫌悪は見えない。本当に、真ちゃんは気にしていないのだろう。周囲が暗くなっていく中、まだ明かりを灯さない緑間宅の前は一層と暗い。ただ緑の光だけが、爛爛と輝いている。
「此れはあれだろう? 俺がお前からの告白を勘違いした所、『友達としてに決まっている』と言われ、恥ずかしい思いをするという」
「ちげえよ馬鹿! お前に期待したのが馬鹿だった! っていうか逆だろそれ!」
「はあ?」
 真ちゃんは突然罵倒されて意味がわからないのか、一人で首を傾げているが、俺からすればその思考がわからない。何故だ。今のは話の流れでわかるだろう。返す返すも、何故ここまで人の心が読めない男が、作家などをやっているのか理解に苦しむ。
 その作品に雷鳴を撃たれ、こうして編集にまでなって追いかけている俺だって、他所から見れば、理解に苦しむのだろうけれど。
「恋愛として! 好きだって言ってんの!」
「は?」
 これだけ直截的に伝えているにも関わらず、全く理解が追いついていない様子なので、却って此方の方が落ち着いてきてしまった。開け放たれた門を挟んで、一人と一人。
「もういっかい言います?」
「頼む」
「恋愛的に、恋愛として、性的欲求の対象として、真ちゃんが好きです。だから真ちゃんを花街に連れて行くのは嫌なのでお断りします」
 しばしの沈黙。これは間違えたかと思ったけれど、真ちゃんは体中の錆び付いた螺子をぎしぎしと動かして、掠れた声で呟いた。
「帰れ」
「え?」
「かえれ。かえれかえれかえれ」
 門が唸りをあげて、あらゆる軋みを訴えながら勢いよく閉じられる。がしゃん、という音が地球の裏まで響き渡って、俺は少しはみ出していた脚を強く打ち付ける羽目になった。脛である。人体の急所である。
「原稿は来週の水曜日には仕上げておく!」
 その叫びは、家の中へと走り込みながら発されたのであろう。俺が顔をあげた時に、後に残るは舞い上がった砂と哀れな男、則ち、俺のみであった。
「逃げ足、早すぎるだろ……」
 ああ言われてしまえば、俺は来週の水曜以降に訪れることしかできない。基本的に、困難には拳で立ち向かっていくような男だと思っていたのだけれど、流石に同性に告白されて、尚立ち向かうことは出来なかったか。
 しかしそれにしても、ハテ、「俺がお前の告白を勘違いする」というのは、どういう意味なのだろう。
 勘違いの仕様が、無いではないか。勘違いする筈が無いのである。何故って、「高尾和成が緑間真太郎のことを友情として好きである」或いは「恋愛として好きである」のどちらの解釈をしたとしても、それを「勘違い」と、真ちゃんが思う筈が無いのだ。「『高尾和成が緑間真太郎を恋愛として好きである』という『勘違い』をしてしまう」ためには、それには、つまり、真ちゃんが、俺のことを、好きでなくては、いけないじゃないか。そうでなくては成立しない。己の内に秘めた恋心に、迂闊に触れられそうになった時、「勘違いしてはいけない」と、人は己を守るのだろう。
 真ちゃんが、俺のことを好きで、好きだから、俺からの告白を「これは友情の告白なのだから勘違いしてはいけない」と解釈したの、だと、すれば。
「ええ……」
 顔が、首から段階を踏んで熱くなっていく。今すぐこの門を乗り越えて会いに行きたいのだけれど、恐らくそんなことをすればあの先生は本当に拳で殴ってくるに違いないので、此度は大人しく退散するより他に無い。
    *
「二科展に行く」
「珍しい」
「どうしても野暮用でな」
 覚悟をして出向いた水曜日、出不精である筈の男が珍しく外套などを着て、今にも発たんや、と謂わんばかりの出で立ちで門を開けてくるので、すわこれはまた逃げられるのか、と思いきや、どうやら本当に用事らしい。珍しい。
「紫原の作品が出ているらしい」
「紫原ってあの?」
「あのがどのかは知らないが、そうなんじゃないか」
 紫原といえば、これもまた古くからある名家の一つである。一つであるが、最近はそこの嫡男が、春季賞を二期連続で受賞したと新聞に載り、そちらの方が有名である。
「俺の家の茶器は全てあいつのものだぞ」
「やめてやめて知りたくありません。俺、普通に脚で押したりしていた」
「茶菓子が好きだったから、それが高じてそこまで行き着いたらしいが、詳細は知らん」
「知らないのかよ」
「黄瀬と青峰が話をしていたのを聞いただけだからな」
「今、日本国軍陸軍長官の家名が聞こえた気がするのは無視させて頂きますよ俺は」
 玄関先の立ち話で、出すような名前では無い。つくづく、目の前の男は、圧倒的な権力の知己が多過ぎる。数える程しか友人などいない癖に。
「真ちゃんの交友関係が恐ろしいのだよな、俺は」
「そうか?」
「あらゆる世界のトップと繋がっているだろう」
「腐れ縁だ」
「腐れ縁って」
「初等部の時に同じ組だった」
「恐ろしい場所だなそれは」
 別に、五歳だか六歳だかの子供に、何が出来たということも無いのだよ。肩をすくめながら、真ちゃんは奥の書斎へと消えていく。原稿は案の定仕上がっているらしい。このままここで待ちぼうけても良いのだが、何とはなしに落ち着かず、後を追いかけて書斎へ入った。途端、投げて寄越された原稿用紙の束。
「『改題、春の目覚め』?」
「以前お前に『春について』を渡しただろう。まだどこにも出していないな? あれは捨てておけ。こちらに差し替えろ。書き直した」
「あゝ、自分で削ったのか」
「そうだな、それに、少々足した」
 以前の原稿は既に下読みを終えてあるが、半分削るというのはそう簡単に出来る作業でもなく、未だどこにも出されず俺の机に眠っている。最初の数ページを読めば、出だしから既に変わっていたので、これは削ったというよりほぼ書き直しに近いのであろう。
「今回の原稿」
「何だ」
「珍しく、こう、表現が柔らかいというか、迷っているというか、これはこれで人間味があって俺は好きなんだけど、真ちゃんらしくないというか」
「五月蝿い」
「これってもしかして俺のせい?」
「五月蝿いと言っている」
 俺を無理矢理押しのけて、真ちゃんは出かけようとする。構いはしない。どうせこの家に戻ってくるのだろうし、緑間真太郎は書かずにはいられない。それを載せるのは俺の仕事だ。けれどしかしまあ、成程。知っていなければ書けないと、真ちゃんは何度も繰り返し言っていたが、他人から聞いていたものが、いざ自分のものとなると、文章はここまで変わるものだろうか。
「認めち��いなよ。俺のこと好きでしょ、先生」
「うるさいうるさい黙れ死ね」
 春はうるさい、と真ちゃんは叫ぶ。もう既に桜は殆ど散り終えて、木には濃い紅の萼を残すばかりだ。それでも空気は柔らかく、庭の雑草は軒並み空に向かって体を伸ばしている。春。春。この世の春。
「世界も広がるんじゃないの。今までに無い恋愛体験、禁断の恋、参入の余地が」
「…………それでどういう話を書けというんだ」
「ううん、そうだなあ。お話にするなら悲恋? 考えようによってはね、相当の悲劇を演じられるとは思うけど」
「周囲に理解されず心中?」
「そうそう、そんなの」
「つまらないな。つまらない話だ。そんなもの」
「ありゃ」
 ばっさりと、切って捨てられ俺は思わず笑ってしまう。まあ、己の告白を悲恋に昇華しろというのもノンセンスな話ではあった。門を開けば、悲劇など起こりそうに無い、春の一途。
「俺はな、人間が強いという話を書きたいのだよ。どれだけ脆かろうが弱かろうが、最後には立ち上がり、己が道を掴むという話だ。俺はそれが好きだ」
「俺には好きって言ってくれない癖に」
「馬鹿だな。たった今、お前が好きだと言ったのに」
 読解力を養った方が良いんじゃないか、とおもしろそうに笑って、真ちゃんは俺を置き去りに、馬車を呼び止めて乗り込んでいってしまった。滝のような言葉に、俺はただ呆然と立ち尽くしている。春が五月蝿いと文句を言っていた男は、それこそ、その象徴のような嵐であった。
 門の内側に取り残された俺は、彼が帰ってくるまで、良い子に留守番などしていないといけないのだろう。手の中に残された原稿を、めくる。改題、春の目覚め。もともとは三百枚あった原稿は、随分と薄くなっており、俺はあっという間に半分以上読み進めてしまう。
 「……あ、誤字」
  皆が浮かれて騒ぎ立てる、春は今、目覚めたばかり。
   ―――春の陽気を長閑等と形容する者も居るが、私にはどうもそれが理解し難く感ぜられる。先ず、目を開けた瞬間の眩しさがいけない。冬などは慎ましく、夜明けは暗闇からじわじわと染み入って来るものを、春に成った途端、光は遠慮無しに襖の紙を透かして部屋の中を踊ってゐる。それではと硝子戸を開けてみれば、庭には繁縷や鬼田平子が我先にと手を延ばし、虫の羽音や近所の子供の数え歌、此方は一人だというのに、彼方からも其方からも、やれ花の香りだ絹の空気だと、全身に春を訴えて来る。之を如何に長閑と形容しよう。私は春に対し五月蝿いとしか思わない。穏やかと云う優しさは、冬にこそ已、赦される可きで或る。冷たく密やかに息づいていた心は、有無を言わさず起出され、其処ら中を跳ね回って、己が物とは思えぬ程掴み難く辟易する。口は勝手に賛美歌を歌い、足は気が付けば屋根へと登る。其れ等全て、春の成す業で或る。春の所業で或る。此れを五月蝿いと形容せず如何に成ろう。私はこの五月蝿さを、愛してゐるに違い無いのだから。
緑間真太郎著『春の目覚め』より抜粋
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kaoru-gohan · 6 years
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♡がムダにもりもりしてるはにかむのなかみ: 【しょうがひたしまめ】豆は硬派!ぽりぽり手が止まらない〜。硬めに茹でた山形の秘伝豆、豆の煮汁にだししょうゆみりん加えてPhilのファームで掘ってきてたショウガの千切りをプラス。 【おひさまにんじん♡】 ごま油と塩だけ、ほっくりあまーいニンジンのソテー 【だしまき】 おだしがじゅわーっと沁みてくる♪ 薄口醤油であまくない、ふっくらだしまき 【大根の皮のきんぴら】実山椒がピリリ。ともだちが作った大根はじめいろんな大根の皮のパリパリした食感がたのしい。 【おひたし】いだたきもののとれたてほうれんそうにえのきだけにんじん湯葉をプラス、ほんのり粉山椒を効かせたシンプルおひたし 【大根のゆずみそ♡】塩麹と醤油のたれでじっくり焼いただいこんに柚子みそと柚子の皮をあしらいました。 【こんにゃく時雨煮】檜原村のプリプリこんにゃく、黒糖ときび砂糖、Philのショウガたっぷり。 【れんこんのはさみあげ】カワイすぎるカタチのレンコン、どうしても使いたくて。海老叩いてレンコンで挟んで抹茶の衣まとわせて揚げた(←揚げるのへたくそ)。 【きんぴらロール】 しゃきしゃきごぼうのキンピラを豚肉でギュギュッと巻きました。 【おにぎり】「しばづけとえだまめのまぜごはん」は京都:土井のしば漬け枝豆ゴマちりめんじゃこ。お米は新潟産コシヒカリ 「菜飯」ともだちの作った大根の葉っぱをさっと湯がいて刻んで。Philのしょうが、ゴマをたっぷりと。 【大根甘酢漬け♡】大根と(探しまわった)紅くるり大根を梅酢につけて 味色食感いろいろ考えて準備したはずのおかず、詰めてみたら...なんか、いろとりどりっちゃーとりどりやけど、なんか、ぼやけてる。目玉がない。そんな印象。 ソレって…ワタシそのもの…?
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xiaorian-blog · 7 years
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わくわく土鍋
episode1
突然ですが、想像してみてください。💭
雪降り積もる季節、部屋でテレビを見ながらコタツに潜り込む。グツグツ…プシューッ!じっくり煮込んだ旬の野菜や、ぷりぷりの鶏肉のおいし〜い香りをのせた湯気を思い切り吸い込み、目の前の土鍋と目が合った。さぁそろそろ食べごろだろう、蓋を開けた瞬間……。
幸せな冬のひと時です。
さて、記念すべき初投稿は”土鍋”の話題。力が入ります。
私事ですが、先日土鍋を購入しました。仕事上この季節になるとたくさんのお鍋たちに囲まれるので、ついにはその誘惑に負けてしまったという次第です。
買ったのは「長谷園」の伊賀焼アメ釉土鍋くん。
まずはご覧ください、どど〜ん!
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このどっしりとした、溢れ出す土鍋の貫禄…う〜ん惚れ惚れするなぁ、これからなが〜くお付き合い、よろしくお願いします!
はじめにまじめに
ところで土鍋って、立派な日本の伝統工芸品なんです。考えてみると、ヨーロッパではル・クルーゼやストウブといった鉄ホーロー鍋が一般的だし(そちらも絶品なのですが…)、方やお隣の中国や韓国の火鍋、金属鍋がほとんどですよね。道理で、海外のお客様が物珍しそうに眺めるはず。
秋冬が近づくと、眠っていた土鍋をいそいそと引っぱり出してくる家庭も少なくないのではないでしょうか。水炊き、煮込みうどん、雑炊におでん…寒い季節に美味しい料理の代表チームを全て任せられる土鍋は、冬の食卓の人気者です。そしてわたしみたいに一人暮らしで料理をする暇も限られた人間には、簡単な上に栄養たっぷり取れるなお鍋料理は、まさに正義の味方!!そして今年の冬は、この土鍋のおかげでお鍋料理がグレードアップです。
ひいては、この素晴らしい土鍋の楽しみ方について共有したく、熱く語りたいと思うのです。
土鍋のススメ🍲
その① なんといっても…美味しい!
土鍋の料理ってなんで美味しいのでしょう。
理由は、煮込み時間にあります。土鍋は金属のお鍋と比べると火の通るのに時間がかかります。しかし、そうしてゆっくりと加熱することで、素材を芯からふっくら炊き上げ旨味をしっかり引き出すのだそうです。土鍋で炊いたご飯が甘〜くて美味しく感じるのも、お米の甘さや旨味を引き出す酵素の最もよく働く温度で炊く時間が、通常の炊飯器よりも長いからだとか!
また、土鍋は保温効果も高く料理がなかなか冷めません。そして何と言っても、土鍋の味わいある佇まいも料理を美味しく見せる秘訣です。土鍋は、鍋であって料理を盛り付ける立派な器なんです。
その② 種類もいろいろ
一概に土鍋といっても、その素材の種類によって性質や見た目も変わります。一般的には、伊賀焼、萬古焼、セラミック鍋の3種類に分けられます。伊賀焼や萬古焼が陶器であるのに比べて、セラミック鍋はさらに高温で焼き上げた磁器です。以下は簡単に、それぞれの違いをまとめてみました。
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・伊賀焼は、三重県伊賀市を産地とする焼物。萬古焼やセラミック鍋に比べると、土が粗く水分を吸収しやすいため、しっかり目止めを行ったり使い終わりはよく乾燥させないといけません。もともと古琵琶湖の湖底であったという土地で取れた貴重な土を使う伊賀焼の土鍋は、非常に火に強く簡単には割れない丈夫さで、古くから日本人に愛されてきたそうです。
・萬古焼の産地は、三重県四日市。伊賀焼同様、伝統工芸品にも含まれる焼物です。伊賀焼と違って土目の細かい萬古焼の土鍋は水に強く、汁を吸収しないため匂い移りの心配もありません。つるっとした表面には、色鮮やかな模様やデザインが施され、食卓を明るくする土鍋です。
…ちなみにわたしが伊賀焼の土鍋を選んだ理由は…その味のある、土目の粗くボコボコした土鍋の様相に惚れたからです☝️
その③ なが〜いお付き合い
上手に使えば、土鍋は何十年も使い続けることができます。お手入れには金属のお鍋と比べると少々手間がかかるかもしれません。しかし、あくまで私の考えではありますが、お手入れをするとはつまり愛情♡をかけるということ。愛情かけて大事に育てたお鍋で食べる料理はこれまた、別格と思いませんか!?
詳しい使い方については、今やネットで調べたらすぐ出てきますし、土鍋を買えば丁寧な説明書もついてくるので心配ご無用ですが、せっかくなので簡単に手ほどきを…。
愛情レベル♡  使い始め
伊賀焼や萬古焼といった陶器の土鍋は使い始めが肝心で、土物の器と同じように、「目止め」という作業が必要です。やり方は簡単で、8分目くらいまで水を入れた土鍋に、残りご飯をその5分の1ほど入れ、吹きこぼ���ない程度に弱火で20〜30分ほど炊き上げます。終わったらご飯とお湯を取り除き、軽く水ですすいでよく乾かすだけ。これをすることによって、土の粒と粒の小さな隙間をお米のでんぷん質でしっかり蓋をし、お汁が漏れたり染み込んむのを防ぎます。
火にかける前は、鍋の底が濡れていないか確認しなければなりません。もしも濡れていたら、急激な温度変化によってお鍋の底からヒビが入ってしまうかもしれないからです。
愛情レベル♡♡ 使い終わり
先ほど述べた通り、急激な温度変化に弱い土鍋は熱いまま急に水をかけたりしてはいけません。しっかり冷やしてから洗うようにしましょう。また、洗うときは表面に傷がつかないように柔らかいスポンジで。洗剤や水につけ置きして洗うことは、お鍋を痛めたり洗剤を吸収してしまう恐れがあるので控えます。
焦げつきを取りたい場合は、プラスチックスプーンでこすりとるか、半分くらい水を入れた土鍋に重曹を2、3杯を入れて30分ほど煮立たせると取り除けます。
愛情レベル♡♡♡もしカビが生えたら…😱
どんなに乾かして使っていても、梅雨の時期など湿気の多い季節には水分を吸収してカビが生えてしまうこともあります。
カビが生えてしまったときは、茶葉で殺菌をすれば問題ありません。
まずは土鍋のカビ部分を洗いしっかり乾かします。次に8分目まで水を入れた土鍋に、茶葉を適量入れ、弱火〜中火でじっくり温めます。沸騰したら弱火にして10分ほど煮立て、最後にさっと洗い流して完了です。
※季節が終わって土鍋をしまうときは、①なるべく湿気の多い場所を避ける。②湿気を吸収する新聞紙で包む。などの対策をしましょう💡
以上、土鍋の楽しみ方まとめでございました。🍀
生活にイイものを取り入れると、自然と丁寧な暮らしになると思います。生活の質をあげるというのは考えてできることではなく、まずは普段使っているもの一つひとつを見つめ直し、それらへの姿勢を正し、自然とできてくるものではないでしょうか。
…と自分に言い聞かせながら、だらだらと日々を過ごしてしまう自分のお尻をパンパンパァ〜ン‼︎と叩くわたしでした。
モノ好きの長〜い独り言でした。最後までお付き合いいただきありがとうございます😁
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release-info · 5 years
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佐野ひなこが誌面と動画でナビゲート 「旅色」×湯浅町タイアップ別冊&動画公開 醤油発祥の地のレトロな町並みや豊かな海の幸をのんびり堪能 無料で読める電子雑誌を発行する株式会社ブランジスタ(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:岩本恵了、証券コード:6176)は、旅行電子雑誌「旅色」の別冊として、和歌山県湯浅町とタイアップした特別編「旅色 -湯浅町[和歌山県]-」と動画を公開いたしました。 ■ 佐野ひなこさんがナビゲートする「おとな気分でいく のんびり湯浅の旅」 http://bit.ly/2IWgbwC  電子雑誌「旅色」は、和歌山県湯浅町と提携し、醤油発祥の地として醸造文化の伝統をいまに伝えるレトロな町並みや豊かな海の幸、マリンレジャーの楽しみなど、魅力あふれる湯浅町を特集する別冊を公開しました。女優、タレントとして幅広く活躍する佐野ひなこさんが旅をナビゲートし、誌面と動画で紹介します。 ■ 第一特集「レトロな町並みとグルメを満喫する 湯浅あるき」 http://bit.ly/2IGBPFv  紀伊半島の西岸に位置する和歌山県湯浅町は、波静かな海岸線と緑の山々に囲まれた町。古来より熊野古道の宿場町として栄え、日本の食には欠かせない醤油発祥の地として日本遺産に認定されています。江戸時代には多くの醤油蔵が軒を連ねていたという「湯浅町湯浅伝統的建造物群保存地区」では、古民家カフェでひと息ついたり、江戸時代から続く老舗で醤油の起源となった「金山寺味噌」を購入してみたり、ノスタルジックな散策を楽しみます。  醤油醸造の伝統とともに受け継がれる醤油蔵で櫂入れ体験や醤油のテイスティングを楽しんだ佐野さんは、「歴史を知ると旅がもっと楽しくなる」「醤油の口あたりがさまざまで、料理に合わせて使い分けるというのは目からウロコ!」とチャーミングな笑顔を見せてくれました。また、湯浅名産のしらすの天日干しなどの加工を見学したり、初めての醤油ソフトや新鮮な生しらす丼を食したりと、湯浅をのんびりと堪能されたようです。 ■ 第二特集「ふるさと納税で届く 湯浅のイイモノ」 http://bit.ly/2IW2cqy  たくさんの自治体がふるさと納税に取り組むなか、全国6位(平成29年度)の寄付金額を誇る湯浅町。その人気はなんといっても返礼品の質の高さです。湯浅湾で獲れるしらすや近海で獲れる幻の魚・天然クエといった海の幸や、みかんなどのジューシーな柑橘類、また醤油や金山寺味噌など……自然と歴史が育む美味しいものや魅力的な品は、ほかにはない逸品揃い。なかでも人気の品々を、ふるさと納税担当者のおすすめポイントともにご紹介します。 ■ デジタルブックと連動した動画&冊子も展開 動画 → https://youtu.be/zXhtjE3nfwI  佐野ひなこさんが湯浅町を旅するスペシャルムービーも同時公開中。「旅色」のウェブサイトや湯浅町ホームページからもご覧いただけます。そのほか、電子雑誌の内容を冊子にしたフリーマガジン2万部も発行し、湯浅町内の観光施設や観光案内所などで配布を予定。電子雑誌、動画、紙版冊子での立体的なPRを展開します。 <株式会社ブランジスタ 会社概要> URL   :http://bit.ly/2mluzUo 本社所在地:〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町20-4 ネクシィーズスクエアビル 代表者  :代表取締役社長 岩本恵了 設立   :2000年11月 事業内容 :電子雑誌出版・電子広告・ソリューションサービス 本リリースに関するお問合せ  株式会社ブランジスタ  広報担当:田口隆一 e-mail: [email protected] TEL:03-6415-1183 #佐野ひなこ #グラビア #神ボディ #プロポーション #顔 #湯浅町 #湯浅 #和歌山県 #和歌山 #ひとり旅 #観光振興課 #旅行電子雑誌 #旅行電子雑誌動画 #動画 #名産品 #神秘的 #海 #アクティビティ #絶景 #フォトジェニック #ふるさと応援寄附金 #モデル #写真 #フォロワー #Instagram #SNS映え #インスタ人気 #インスタ映え #映え #人気 #絶景 #観光誘客 #恵み #フォトジェニック #イベント #観光振興 #食 #幻想的 #スピリチュアル #満喫 #大浴場 #美しい #季節 #食材 #スペシャルナビゲーター #ナビゲーター #ふるさと納税 #ブランド牛 #冊子 #フリーペーパー #観光施設 #観光案内所 #風景 #PR #特産 #名産 #特産品 #物産 #ランドマーク #ご当地グルメ #ご当地 #グルメ #ブランジスタ #地方 #タイアップ #特別誌 #タイアップ特別誌 #観光 #宿泊 #旅館 #旅色 #旅色コンシェルジュ #ホテル #リゾート #旅 #温泉 #源泉かけ流し #無料 #電子雑誌 #食 #ランチ #飲食店 #レジャー #体験 #厳選 #自然 #ベストシーズン #散策 #プロモーションメディア #メディア #プロモーション #伝統 #国内 #湯めぐり #国内旅行 #食べ歩き #旅行 #雑誌 #露天 #露天風呂 #巡り #めぐり #タレント #お土産 #土産 #観光資源 #女優 #満喫 #魅力 #清流 #デスティネーション #アクティビティ #名湯 #インスタフォロワー #SNS映え #インスタ映え #映え #読者 #インスタグラム #思い出 #写真 #旅写真 #スポット #レトロ #トリップ #SNS #買い物 #食べ比べ #山の幸 #海の幸 #伝統工芸 #返礼品 #ご当地グルメ #話題 #工芸品 #歴史ロマン #歴史 #ロマン #名物 #料理 #アート #泉質 #宿 #温泉街 #湯けむり #文化 #体験 #パワースポット #スピリチュアルスポット #スピリチュアル #スポット #ファッション誌 #名店 #リゾート #フォトジェニック #スポット #フォト #フォトスポット #ブランド牛 #インスタ #醤油 #醤油発祥の地 #醸造文化 #町並み #マリンレジャー #熊野古道 #宿場町 #醤油蔵 #湯浅町湯浅伝統的建造物群保存地区 #古民家カフェ #老舗 #金山寺味噌 #ノスタルジック #醤油醸造 #櫂入れ体験 #テイスティング #しらす #天日干し #醤油ソフト #生しらす丼 #生しらす #天然クエ #クエ #みかん #柑橘類 #真木よう子 #文化庁 #日本遺産 #認定 #伝統文化 #風習 #伝承 #文化財 #地域活性化 #醤油醸造 #醸造 #しょうゆ #紀州湯浅 #ストーリー #店 #高僧覚心 #味噌 #製法 #最初の一滴 #船積み #戦国時代 #大坂 #紀州藩 #醤油醸造業 #ソイソース #和食文化 #土蔵 #本瓦葺き #木格子 #虫籠窓 #酵母菌 #角長 #醸造蔵 #木桶 #醤油資料館 #見学 #熊野牛 #紀伊山地 #植物性飼料 #うなぎ #国産うなぎ #国産 #関西風 #宿泊券 #紀州のかくれ湯 #栖原温泉 #湯浅城 #湯浅温泉 #切り絵 #切り絵画家 #岩本正秀 #ままごとキッチン #木工職人 #紀州のヒノキ材 #ヒノキ #檜 #子ども #ジュース #甘酒 #名産地 #みかん農園 #果汁100% #主井農園 #オリジナル柑橘甘酒 #ギフト #梅干し #紀州南高梅 #南高梅 #減塩 #丹波種黒豆100% #黒豆 #再仕込醤油 #おかず味噌 #釜揚げしらす #紀伊水道 #赤穂天日塩 #黒潮 #有田郡 #みかん #有田みかん #温州みかん #セミノール #採れたて #かどや食堂 #古由青果 #ジェラート #完熟フルーツ #アイスクリーム #合成着色料 #香料 #保存料 #一切不使用 #果物 #釜揚げしらす丼 #生しらす丼 #湯浅醤油 #白上山 #施無畏寺 #湯浅湾 #太田久助吟製 #アイランドストリーム #栖原海岸 #無人島 #洞窟 #シーカヤックツアー #シーカヤック #しらす屋 前福 #前福 #ちりめん #佃煮 #蔵カフェ #蔵カフェ #醤油ソフトクリーム #醤油ソフト #醤油づくり体験 #杉樽 #北町茶屋いっぷく #焼き魚 #刺身 #楠山商店 #たまごごはんセット #甚風呂 #戎湯 #浴場 #文化遺産 #特急くろしお #PR動画 #Youtube #Youtube動画 #旅好き #トリップロス #カメラ #初挑戦 #テレビで中国語 #Eテレ #NHK #ヒロイン役 #魔法少年☆ワイルドバージン #ヒロイン #ワイルドバージン #前野朋哉 #斎藤工 #映画 #出演 http://bit.ly/2XH7dY2
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masuodosu · 4 years
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こはつかセルフワンライ
耳ではなく、鼻の刺激から意識がゆっくりと覚醒される。
食欲を刺激するこの匂いは味噌汁だろう。冷蔵庫にあった白味噌をぼんやり思い出す。他の美味しそうな匂いが漂ってきて、食欲が刺激される。少し大きな…シングルでないことは間違いないベッドから起き上がる。床に落ちてある衣服を遠慮なく踏みつけながら五センチほどの隙間が開けられていた扉から出てリビングに向かうと、見慣れた後ろ姿が目に入った。
台所に立っている彼は、ユニットの曲を鼻で歌いながら楽しげに台所で動いている。最初、彼が…朱桜司が料理を作ろうとしているのを見て慌てて包丁を取り上げたのがつい最近のことのように思える。
紺色のエプロンと学生服という組み合わせは、思春期真っ盛りのこはくのアレソレを刺激してしまう。しかしそれとは別に、永遠に眺めていたくなるほど愛おしくもある。朝一番のかわいいだなと、納得しながらテーブルに着くと椅子を動かす音で気付かれて振り向かれた。
「あ、起きたんですね。おはようございます。こはくん」
「おはようさん、坊」
嬉しそうにしながら、料理をこちらに運んで並べ出す。手伝おうとすると、飲み物を出して欲しいと頼まれたので冷えた緑茶を二つのグラスに注ぐ。
飲み物を冷蔵庫に戻して席につくと、座って待ってた司が待っていた。椅子に腰掛け、手を合わせる。
「いただきます」
湯気の立つ豆腐とワカメの味噌汁。ちょうどいい焼き加減の塩鮭。ほうれん草の和え物に、昨日の残り物であるにんじん大根コンニャクの煮物。どれも実家で出されていた食事とは異なる味付けだが、舌も腹も満足せてくれている。そんなこはくを、司は目を細めて見つめている。それがなんだか照れ臭くて、習慣でつけたテレビから流れ出した星座占いの話題を振る。それでも楽しくて、話題が弾んでしまう。
「くっ…おひつじ座が最下位など…!」
「まさかわし、いやみずがめ座が一位とは、ますますご利益ありそうやわぁ〜」
「上機嫌ですね…私は別に、こんな占い信じてませんがね。こはくんこういうの信じてるなんて、純粋でかわいいですね」
「八つ当たりすんなや」
この少々騒がしく、穏やかな光景とは裏腹に、この同居には厄介な背景が隠されていた。
今から半年前。朱桜司が寮を出る瞬間に倒れたのが始まりだった。
聞けば、どうにも多忙な仕事をこなす他にも学院で暴れていたりしたようだ。不良か。ジャッジメントだがチェックメイトだがカロリーメイトだが知らないが、かなりの無茶をしていたようだ。
しかも面倒なことに本人には過労の自覚がなかったことだ。疲れを感じてはいたようだが、立場上自分が疲労を感じるのは当然だと放置していたようだ。本人は、どうして倒れたのかまったく理解していない様子でノートパソコンを取り出し仕事を始めようとしている。反省してないのかこいつは。没収したら拗ねてシーツを頭まで被って文句を垂れ流してる。
「決めた。坊、わしと一緒に暮らすぞ」
「それって…桜河の新しいお役目ですか?」
「阿呆。わしがそんな大事な役目を貰えるわけないやろ。桜河の落ちこぼれが、朱桜の当主に近いのなんか誰も良しとせんよ」
「なら、どうしてそんな面倒なことを」
シーツを被ったまま、こちらを見つめてくる。いや大事な場面だぞ取れ。しかしまぁ、表情がわからないので、逆に物怖じせず伝えられるからいいかもしれない。
「わしが坊のこと心配だから、もうこんなこと起きんように守りたい。ずっといたい。それだけのことや」
「…ふーん」
肯定か否定か、何とも言えない反応をされた。もぞもぞ動きながら、以前より細くなった手だけを出してきた。シーツの網目からしっかりこちらが見えたようで、司の手は右往左往することなくしっかりとこはくの手を握ってきた。
「一緒に家、選んでください」
妙なところでツンデレだと思いながら、シーツごと抱きしめて頭を撫でてやった。この白い生地と違って、本人の顔は火照って赤くなってるのがわかった。
虫籠のような部屋で暇潰しにミルクパズルををした。白い部屋にぴったりだろうという理由で選んだが、なかなか時間を消費できるのでいい。楽しんでいると、看護師がリストにいない人間が面会に来たと知らせに来た。訪ねて返ってきた名前に、通しても大丈夫だと許可を出してパズルを片付ける。バラバラにして、気まぐれにピースを一つ手にして見つめていると、ノックの音が響いた。
どうぞ、と声をかければ律儀に見舞品の花やお菓子など持っている男がいた。来ないはずのイレギュラーな客人がきた理由は知っている。私が呼び出したからだ。
「お待ちしてました、斉宮先輩」
「僕と君は、そこまでの接点はなかったように思えるが」
「ふふっ。瀬名先輩があなたを運んでヘリへ降りたときから、縁は結ばれていますよ?」
「それで、秘密厳守してほしいほど大事な話というのは何だ?」
宗はコートを着たままベッドの側に置かれたパイプ椅子に座った。長居する気がないのがよくわかる。
「斉宮先輩。私の人形を、作ってくれませんか?」
「…僕は人形を作ったつもりになったことはあるが、生憎とドール製作は専門外だ。衣装なら、得意なんだがね。そういうことで、僕の適所ではないようだから失礼させて貰うよ」
「聞きましたよ。あなたは最近、ドール作りも始めたと」
「誰から…って影片だな。あいつはまったく…。いいか、あれはただの趣味だ。他人の目に晒せるレベルに達していないし、僕が納得して出来上がった作品はまだ一度もない。恥ずかしくて口にしたくもないが、完成したことがないんだ」
「妥協がないのは、いいことですよ」
「それにこの広い世界は決して、僕ひとりだけが芸術家ではない。教えろ朱桜司。何故、この斉宮宗を選んだのか」
「あなたの作品は完璧だからです」
その答えは、正解だったようだ。宗は先程よりも機嫌良さそうな雰囲気になった。顔もどこか緩んだようだ。
「わかった。約束しよう、完璧に『君そのもの』の人形を作ってやろう」
「ありがとうございます。ちなみに納期は私が死ぬまでです」
「とんでもない依頼人だな労働組合に駆け込むぞ」
フリーランスは無理ですよと返すと、宗は溜め息を吐く。早まったと、後悔し始めてるかもしれない。
「あともう一つお願いが。その人形を、桜河こはくに届けてくれませんか?」
「注文が多いな。まぁ、それくらいならいいが」
「ありがとうございます。あと報酬はこちらに、好きな額を振り込んでください」
差し出された小切手に、斉宮は何の迷いもなく走り書きした。そして、それを置いたまま病室を出ようとする。
「構わないよ。今の君はとても、創作意欲を刺激するからね」
本来、金額を記入すべきスペースには納期を伸ばすために努力しろという文言がフランス語で記載されていた。
それを細かい欠片になるほど破いて、そして形を繋ぎ合わせる。ああ、やっぱりミルクパズルと違って柄のあるこれは簡単ですぐ終わった。
服が散らばり、インスタント食品のゴミが詰まった袋が積もっている。冷蔵庫に敷き詰められた緑茶のペットボトルから、自炊できる材料がないのがわかる。
リビングに設置された目立つサイズのテレビは、ずっとずっと録画された同じ映像を再生している。
『─それでは今から二十四時間knightsの朱桜司追悼ライブを始めたいと思います。朱桜司さん本人のライブ映像も放送して』
テーブルにいるこはくは、幸せそうな顔で占いで最下位だったおひつじ座を慰めていた。
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shibaracu · 4 years
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●お膳●お膳立てする●チャブ台
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●お膳●お膳立てする●チャブ台 昔は必ず家族団らんに使っていた。 今では殆ど見えなくなった。 コレ見ている人も知らないことが多いだろう。 特に時代劇の大衆ドラマでは必ず出てきた。 時代劇を見ない人には馴染みの無いものばかりだろうね。 寂しい限りだ。   ★驚愕の事実・・・「巨人の星」 星一徹は、ちゃぶ台を返していなかった!! (9) https://plaza.rakuten.co.jp/shiawasenohana/diary/200802120000/ 2008/02/12 「ちゃぶ台返し」と言えば、アニメ「巨人の星」の主人公・星飛雄馬の父、星一徹ですよね!? https://multimedia.okwave.jp/image/questions/17/175751/175751.jpg ところが、です。 星一徹は、一度も、ちゃぶ台返しをしていなかったという事実を最近知って驚きました。 いや!!!絶対、見たことがあるというあなた。 実は、本編では、一度も、星一徹はちゃぶ台を返しておらず ただ一度だけ、飛雄馬の言動に激怒して 殴りかかりに行ったとき、ちゃぶ台にぶつかって、結果としてひっくり返ったということが あったのみなんですって。   ★星一徹 - Wikipedia  https://ja.wikipedia.org/wiki/星一徹 星 一徹(ほし いってつ)は、梶原一騎原作・川崎のぼる作画の野球漫画『巨人の星』に登場する架空の人物で、主人公である星飛雄馬の父である。右投げの三塁手だった。現役時代は右投げ左打ちだったか、引退後、飛雄馬を鍛えるときと中日コーチ就任時は右投げ右打ちとなった。 アニメ版での声優は加藤精三。 年齢、生年については原作ではどこにも触れられていない。一徹現役時代に川上哲治を呼び捨てにしてタメ口で話していた(飛雄馬の巨人入団以降は「川上さん」と呼んで敬語使用)ことから河崎実は『「巨人の星」の謎』で「一徹は川上と同い年」と推定している。すると一徹初登場の昭和32年(アニメ)または昭和33年(原作)で37歳か38歳。『新・巨人の星II』最終回で川上哲治と同い年だったとすると58歳になる。   ★お 膳 の 起 源 と変遷(Adobe PDF) file:///C:/Users/asahi/AppData/Local/Temp/no17_j_011_014.pdf 日本の「食」は、中国をはじめさまざまな国の食文化を受容し、融合し合いながら 独自の文化として発達し、現在にいたっている 。 そして食文化を構成する要素は食材だけではない。 その発達を支えたのは調味料や調理道具であり、食具や什器類にいたる脇役たちの 存在を疎おろそかにすることはできない 。 今回は、「お膳」を取り上げ、古代から今日までの変遷をたどりながら、 日本の食文化を探ってみる 。 「膳」の 文 字 は 神 話 か ら まず「 膳 」の文字の初出は『日本書紀』である   ★膳(読み)ぜん 食器を載せる盤または食卓をいう。日本料理独特のもので,古く平安時代から食事の際に使われた。種類も今日の食卓と同じような大きな4脚つきの台盤 (だいばん) ,1人用の懸盤 (かけばん) ,1人用で脚のない折敷 (おしき) ,あるいは高い脚のある皿様の高坏 (たかつき) などがあった。こ���らは主として会食用として用いられ,膳の上の食物の配置なども決められていた。この風習は近年まで伝えられ,1人用の膳は懐石料理,本膳料理などに欠かせないものとなっている。   ★かしわ‐で〔かしは‐〕【膳/膳夫】 《古代、カシワの葉を食器に用いたところから。「で」はする人の意》 1 古代、宮中で食膳の調理をつかさどった人々。 「水戸神(みなとのかみ)の孫(ひこ)、櫛八玉神(くしやたまのかみ)、―となりて」〈記・上〉 2 中世、寺院で食膳調理のことをつかさどった職制。 3 食膳を供すること。また、食膳。〈色葉字類抄〉   ★ぜん【膳】 [名] 1 料理をのせて人に供する台。脚付きのものや、折敷(おしき)などがある。「膳につく」 2 調えられた料理。また、食事。「10人分の膳」 [接尾]助数詞。 1 食器に盛った飯を数えるのに用いる。「2膳の御飯」 2 はし2本を一対として数えるのに用いる。「5膳のはし」 ぜん【膳】[漢字項目] [常用漢字] [音]ゼン(呉) [訓]かしわで 1 料理した食物。「膳羞(ぜんしゅう)」 2 食物を載せて出す台。また、それに載せた料理。「膳部/饗膳(きょうぜん)・御膳・食膳・配膳・本膳」 [名のり]よし [難読]膳夫(かしわで)
★かえし - Wikipedia  https://ja.wikipedia.org/wiki/かえし かえしとは「煮かえし」の略された物で、蕎麦汁(そばつゆ)に使われる調味料。このかえしを出汁で割って蕎麦汁が作られる。また、ラーメンにおいてもスープで割る前のタレの事をかえしと呼ぶ事がある。   ★御膳味噌(ごぜんみそ)は、徳島県で生産されている味噌の一種。 https://ja.wikipedia.org/wiki/御膳味噌 「御膳味噌」の名は天正15年(1589年)、阿波藩邸に仕えていた茶人の考案により当時の藩主蜂須賀家政の御膳に焼き味噌が供されたことに由来する。   ★御膳海苔(ごぜんのり)https://ja.wikipedia.org/wiki/御膳海苔 徳川家(江戸城)及び上野寛永寺へ御菜魚と同様に海苔運上(税)の意味で上納した新海苔を指す。   ★海苔(のり)https://ja.wikipedia.org/wiki/海苔 海苔(のり)とは、紅藻・緑藻・シアノバクテリア(藍藻)などを含む、食用とする藻類の総称。日本では、古く「紫菜」「神仙菜」と呼ばれた。食品として、それら藻類を加工した「生海苔」や「板海苔」などが食されており、米飯のおかずや江戸前寿司などで重要な材料となっている。 日本語の「ノリ」はヌラ(ぬるぬるするの意)を語源とする。水中の岩石に苔のように着生する藻類全般を表す語で、広義には食用とする紅藻類・藍藻類の総称である。平安時代末期は「甘海苔」といい、アマノリを板海苔に成形した「浅草海苔」が江戸時代以降に広まった。 海苔はタンパク質、食物繊維、ビタミン、カルシウム、EPA、タウリン、ベーターカロテン、アミノ酸などが豊富に含まれており、栄養に富んでいる。日本のほか、中国、韓国、イギリス、ニュージーランドで養殖もされている。1980年代にアメリカでも養殖が試されたが、失敗に終わっている。   ★御膳酒(ごぜんしゅ)https://ja.wikipedia.org/wiki/御膳酒 江戸時代の日本において将軍や大名など、いわゆる殿様の飲用として醸造・納品された日本酒をいう。 文脈的に何も特記がない場合は徳川将軍家の御膳酒をさす。   ★薬膳(やくぜん)https://ja.wikipedia.org/wiki/薬膳 中医学理論に基づいて食材、中薬と組合せた料理であり、栄養、効果、色、香り、味、形などすべてが揃った食養生の方法である。   ★薬膳の基礎知識 http://www.tokyoyakuzen.jp/kisotishiki.html 薬膳とは、中医学(中国伝統医学)の理論に基づいて季節・年齢・体質・環境などの目的に合った食物や中薬(生薬)を組み合わせる料理処方です。季節や体質との調和を配慮しながら、病気にかかりにくい体づくりを目的にしています。医の源は食であり、食物も中薬と同じように使用されるという「医食同源」の思想が基本にあります。薬膳学習にあたって、知っておくべき基礎知識をこちらにまとめました。ご活用ください。   ★お膳立て 意義素 何かをするための手はずを整えること 類語: ⇒ くわだて【企て】 ⇒ ようい【用意】 ・仕度 ・ 準備 ・ 支度 ・ 下拵え ・ お膳立て ・ 下準備   ★膳立て【ゼンダテ】デジタル大辞泉の解説. [名](スル) 1.膳の上に食器・料理を並べること。また、膳を据え並べること。 2.(多く「お膳立て」の形で)すぐにとりかかれるように準備をすること。また、その準備。 「お膳立てが整う」「見合いをお膳立てする」   ★ぜん【膳】 類語: 御膳 食膳 箱膳  ▽本膳  二の膳  三の膳  珍膳  献立(こんだて)  膳立て  料理 ⇒ りょうり【料理】   ★ちゃぶ台 - Wikipedia  https://ja.wikipedia.org/wiki/ちゃぶ台 ちゃぶ台、チャブ台(ちゃぶだい)は、日本で用いられる四本脚の食事用座卓である。 一般的に方形あるいは円形をしており、折り畳みができるものが多い。 上座、下座という上下の関係があまり感じられず、昭和初期の家族の団欒を象徴する シンボルとして取り上げられる。 1887年(明治20年)ごろより使用されるようになり、1920年代後半に全国的な普及を見た。 しかし1960年(昭和35年)ごろより椅子式のダイニングテーブルが普及し始め、利用家庭は減少していった。 チャブダイと書く漢字としては卓袱台以外にも、茶袱台、茶部台、食机、その他にも古くは森田草平の『煤煙』や徳田秋声の『黴』で書かれている餉台などがある。 また、地域によっても呼称は異なり、富山県、岐阜県、三重県、兵庫県、佐賀県、長崎県、熊本県などの一部ではシップクダイ、シッポクダイ、ショップクダイと、岩手県、富山県、岐阜県、滋賀県、鳥取県、島根県、愛媛県などの一部では飯台と呼称される場合がある。 語源についても諸説あり、正確には判っていない。 有力なものとしては中国語でテーブル掛けを意味する卓袱(南中国音ではチャフ)から来たとするもの、同じくご飯を食べることを意味する吃飯(チャフン、ジャブン)から来たとするもの、中国人移民からアメリカへ広まった料理チャプスイ(英語: Chop Sui、チョップスウイ、チョプスイ)が元になったとするものなどがある。   ★飯台(はんだい)hhttps://ja.wikipedia.org/wiki/飯台 ・寿司を入れる櫃、寿司桶 ・卓袱台(ちゃぶだい)の別名   ★朝ドラの「ちゃぶ台押さえ」が面白い 星一徹のような「昭和の父親像」の誤解 https://news.yahoo.co.jp/byline/horiikenichiro/20191129-00152929/ 2019/11/29 連続テレビ小説『スカーレット』は楽しく見られるドラマである。 細かいセリフ廻しがなかなか素敵である。 戸田恵梨香のコメディ演技がとてもおもしろい。 それはたとえば父役の北村一輝とのやりとりで絶妙な味わいを出している。 父はよく喋るが、頑固親父である。おそらく大正生まれだろう。 戦争に行って、戦地で助けた戦友(マギー)を頼って滋賀の信楽に来ている。 この世代はだいたい亭主関白である。とにかく偉そうにする。 たとえばこの父は「女には教育はいらん」といつも言っている。 娘にもそう言わせている。 いまとはまったく違う時代のまったく違う家庭の風景である。 亭主関白というか、一家の主人というだけで精一杯偉そうにする時代だった。 それは社会と国家が後押しする制度だったので、日本国中はそういう家庭でいっぱいだった。 戦争に負けてそのシステムは終わったはずなのだが、そう簡単に人は変われない。 昭和の中期まではそんな頑固親父で溢れかえっていた。 ただ本当に強い人だったらいいのだが、そんなに強くもなく、心が弱い人でもその強い“亭主”を演じなければならなかった。いろいろ破綻する。弱い人が無理に偉そうにしようとすると、やたら攻撃的になってしまう。それはいまも昔も変わらない。 『スカーレット』は「ちゃぶ台押さえ」のドラマである ドラマ『スカーレット』では11月に入って、主人公が滋賀の信楽に戻ってきてから、父の傍若無人ぶりが目立つようになった。 主人公の妹たちが大きくなって、父の言うことをきかなくなったからだろう。 ときどき「ちゃぶ台をひっくり返す」シーンが出てきている。 最初に出たのは38話。帰りが遅くなった主人公が家にたどりつくと、父が怒ってちゃぶ台をひっくり返したあとだった。 理由は風呂がわいてなかったことと、次女が、いちいちうるさいねん、と口答えしたことである。ちゃぶ台には食器だけが乗っかっていた。食事はまだ準備中で、茶碗と箸だけである。それを父がひっくり返した。 ただ、きちんとひっくり返すシーンがあったのはこの回だけだったようにおもう。 そのあと42話では、酒だと騙されて水を飲まされた父が怒ってちゃぶ台をひっくり返そうとしたのだが、主人公の喜美子が父と重なるように上から押さえた。ちゃぶ台はひっくり返されずに、押さえつけられた。 また45話でも同じく、次女の口答えに怒った父がひっくり返そうとるすが、主人公が父の近くで、三女はそ���後ろでちゃぶ台を押さえ、ひっくり返されなかった。 娘の勝ちである。「ちゃぶ台押さえ」がひっくり返しに勝った。 このときの主人公(戸田恵梨香)の表情がたまらなくいい。というか、ただおもしろい。 傍若無人な父の「ひっくり返し」を押さえきり、ひっくり返させない。その目を見開いて父を睨む表情を見てると、おもわず噴き出してしまう。父の暴力シーンのはずが、とてもコミカルなシーンになっている。 このあたりの味わいが『スカーレット』の魅力だとおもう。 いまはこういう所作を「ちゃぶ台返し」と呼ぶようだが(私にとってはけっこう新語である)、この主人公喜美子の所作は「ちゃぶ台返し返し」とでもいうような技になる。佐々木小次郎もびっくりだ。あっさり言うなら「ちゃぶ台押さえ」だろう。 『スカーレット』は「ちゃぶ台押さえ」のドラマなのだ。 ただ、「ちゃぶ台をひっくり返す」という行為について、かなり大きな誤解があるとおもうので、その点を説明しておきたい。 『巨人の星』では一度たりともちゃぶ台はひっくり返されていない 「ちゃぶ台をひっくり返す」というと、出てくるのは『巨人の星』の主人公の父・星一徹であり、ドラマ『寺内貫太郎一家』の主人公、小林亜星演じる寺内貫太郎である。 『巨人の星』はまさにどんぴしゃの世代なので、もともと深く読んでいたし、のちすべてのコマを真剣に読み込んで本も書いた。(『巨人の星に必要なことはすべて人生から学んだ。あ。逆だ』)。 原作漫画を仕事として何度も読んだから、断言できるが、星一徹は一度たりともちゃぶ台をひっくり返していない。 『スカーレット』で父がやるように、ちゃぶ台の端を持って、上に乗っているものをぶちまけることが目的で、ちゃぶ台をひっくり返すということは、一度たりともしていないのである。 そしてドラマの『寺内貫太郎一家』も同じである。 かつてとびとびに見ていた印象で、星一徹はひっくり返してないが、寺内貫太郎はひっくり返していた、というふうにおもいこんでいて、それをどこかで書いたような記憶があるが、このたび第一シリーズを全話きっちりと見て確認したので、それを訂正したい。 寺内貫太郎も、一度たりとも、ちゃぶ台をひっくり返したことなどない。 大事なことなので、もう一度書いておきます。 昭和時代、星一徹や寺内貫太郎は、ちゃぶ台を意図的にひっくり返す、ということは一度たりともしていない。 両作品をすべて調べたので、(寺内貫太郎は基本である第一シリーズ全編)そう断言します。訂正できるものは、いまからでも訂正したほうがいとおもう。 「誤った昭和の父親像」 そもそも昭和時代、現実世界でも強権的な父親は、ちゃぶ台をあまりひっくり返していなかったのではないだろうか。あらためて、それは平成時代に作られた「誤った昭和の父親像」ではないかとおもっている。 彼らはそんな生やさしい存在ではないのだ。 ちゃぶ台をひっくり返しても、後片付けをすればすむだけである。誰も痛いおもいをしなくてすむ。(人に当たらなければ、だけど、だいたいちゃぶ台をひっくり返してる人は当たらないようにしている) 怒ったときの星一徹も寺内貫太郎も、そんなやさしい存在ではない。 怒らせた原因を痛めつけようとする。それが戦場に駆り出された世代である。 もし、ちゃぶ台が言うことを聞かず、しかも口答えしたのなら、ちゃぶ台を痛めつけただろう。いろいろ殴ったりひっくり返したかもしれない。でも『巨人の星』でも『寺内貫太郎一家』でも、ちゃぶ台は喋らない。 口答えするのは、だいたい子供である。(そういえばどちらも姉と弟の二人姉弟である:寺内は第一シリーズに限るが)。強権親父は、口答えしたやつ、約束を守らないやつを殴る。投げる。平手打ちをする。ちゃぶ台なんかひっくり返さない。そんな無駄はしない。 徴兵された世代をなめないほうがいい。 ちゃぶ台をひっくり返すというのは、弱者の抵抗である。直接、怒りたい相手にぶつけられないからモノに当たってる人である。 大正生まれの強い父はそんな面倒なことはしない。 そういうのはその子供の世代、反抗することがいいことだ、とおもってた世代のやりそうなことである。具体的に言うなら戦後にまとまって生まれたベビーブームの世代、学生運動でしきりに造反有理と謳っていた世代。彼らは自分たちの心情を反映する形で、歴史を歪め、自分の親世代をそう描いてしまったのではないだろうか。 無意識だろうが、かなり意図的な歪曲である。上の戦争体験世代に対するアンチテーゼの一種だろう。 大正生まれは、子供をふつうにひっぱたく。(もちろん人によりますが)。 寺内貫太郎もちゃぶ台を一度も返していない 星一徹がちゃぶ台をひっくり返す人として誤解されたのは、ちゃぶ台にかまわず息子の飛雄馬を殴ったからである。飛雄馬は秘密の練習器具(大リーグボール養成ギブス)を絶対に見せないという約束を破ったうえに、父にうそをついた。そのために父はめちゃくちゃ怒った。まあ、怒るのは正しい。そして当時はそういう子供を殴るのも正しいとされていた時代である。(書いていてどうかとおもうが、歴史的事実なのでそう書くしかない)。 前にちゃぶ台があり、食事中だったのもかまわず、殴ったのだ。 ちゃぶ台が傾き、上の皿や小鉢がすべり落ちていった。 それだけのことである。 ただこのカットがアニメのエンディングで毎週流れた。殴る一徹。殴られる飛雄馬。傾き皿が落ちているちゃぶ台と、驚く姉の明子。このシーンが視聴率20%を超える人気番組で毎週流れたので、ちゃぶ台をひっくり返したかのように信じ込まれているのである。 『寺内貫太郎一家』も同じである。 このドラマが放送されたのは、昭和49年、1974年のことである。 寺内貫太郎の設定はこのときで50歳。大正末年の生まれとなる。 石屋の主人。頑固親父で、妻も子供にも、すぐ手を出す。 第一シリーズだけで39話あった。昭和49年の1月から10月初頭までの放送だ。その第一シリーズ全39話を見た。 こちらも同じである。 寺内貫太郎は、ちゃぶ台をひっくり返していない。 星一徹とまったく同じである。 ちゃぶ台というより6人から8人くらいで囲んでいるから食卓といったほうがいいのだけど、その食事中に家族に怒って、平手で打ったり、投げたり、突き飛ばしたりするから、食卓の上の皿が落ちていってしまう。それだけである。 寺内貫太郎も、ちゃぶ台の端に手をかけて、ちゃぶ台をただひっくり返すということは一度たりともしていない(第一シリーズは全話そうである) ドラマは1月から放送されたので、1話から9話までは、こたつで食事をしていた。10話から最終39話まではちゃぶ台(食卓)である。 だいたい貫太郎と長男(西城秀樹)がとっくみあいの喧嘩をする。 食卓や皿、小鉢のことはまったく構わず喧嘩をするので、女性陣がさっと食卓を隣室に引っ張っていった。後半はそれは祖母(樹木希林、当時の芸名は悠木千帆)とお手伝いのミヨちゃん(浅田美代子)の役目だった。それっと息を合わせて二人で隣室に引っ張っていく。 それでも投げ飛ばされた長男がちゃぶ台の上にひっくり返り、そこにある料理の乗った皿や小鉢がすべてすべり落ちていくことがある。 それも、そんなに多くない。 ちゃぶ台の上のものがすべり落ちたのは、27話、34話、37話の3回だけである。 ほかにちゃぶ台の脚が折れたことが7話、25話、33話、34話の4回。 ちゃぶ台や、乗っかってるものに被害があったのはその6回だけだ。(34話は脚が折れて、上の枝豆と灰皿が落ちたので重複している) ただとっつかみあいの喧嘩はほぼ毎回あったので、きちんと記録して見てないと記憶は混濁するだろう。 貫太郎は一度たりとも、ちゃぶ台をひっくり返していない。『巨人の星』と同じく、ちゃぶ台は斜めになって、上に乗ってるものがすべり落ちていくだけである。 ちゃぶ台に証言させても「傾けられたことはありますが、返されたことはありません」と言うだろう。 ちゃぶ台ひっくり返す男、というのは幻の存在ではないだろうか。 1980年代にいろんなものが変わった もちろん日本は広いから、実際に食卓をひっくり返した父というのはいただろう。 ただ申し訳ないが、それはかなり弱い人物だとおもう。完全なやつあたりである。 強い父は、妻にも子にも直接向かわなければいけない。 直接向かわず家具に当たるのは、相手より弱い存在である。かつての日本では一家の主人はそんな立場にはないはずである。 ちゃぶ台をひっくり返すというのは、本来は反抗する子供がやることである。 1980年代にいろんなものが変わって、1960年代の『巨人の星』や1974年の『寺内貫太郎』の世界がまったくわからなくなった。 1980年代の大人が、記憶を改変していった。 戦争に加わった人の心情を想像せずに(彼らは国家から暴力装置になることを強制され身体に刻み込まれた世代なのだ)、反抗を美学とする世代が大人になったときに、記憶が変えられたのではないだろうか。 「ちゃぶ台返し」という言葉が生まれたのも、1980年代以降、おそらく平成に入るころだとおもわれる。パロディ番組で、それまで存在しなかった「ちゃぶ台そのものをひっくり返す」というシーンが描かれるようになったところからだろう。そのときに生まれた新語である。(30年ほど経ってるから昭和世代にとっての新語でしかないですが)。 おそらくみんなちゃぶ台を一度、ひっくり返して��たかったんではないか。気持ちはわかる。 くどいが、繰り返しておく。昭和時代はちゃぶ台は「返されて」はいない。傾いていただけだ。傾いて皿がすべり落ちてることを「ちゃぶ台返し」と呼ぶものではない。 そして、令和となると娘にちゃぶ台を押さえられてしまうようになった。 なかなか素敵である。見ていて楽しい。歴史的事実と関係なく、そういう世界観はとてもいいとおもう。 『スカーレット』は、傍若無人な父の「ちゃぶ台返し」に負けない娘の物語だ。 まだまだ「ちゃぶ台押さえ」の戸田恵梨香の表情を見てみたい。   ★ちゃぶ台返しとは - はてなキーワード 1.ちゃぶ台とは四脚の低い食事用の台。円形または矩形であることが多い。「ちゃぶ」は「卓袱」の中国音 zhuofu(チュオフー) の転で、卓袱(しっぽく)は中国で食卓の被いのこと。転じて、その食卓の称となった。 2.星飛雄馬の父、一徹がひっくり返すことで有名*1。 3.ストレス解消の手段、あるいは激しい怒り・もやもやの表現。 4.あめぞう掲示板ちゃぶ台返し板では以下のような顔文字が使用されてきた(細部に各種バリエーションあり)。ちゃぶ台をひっくり返したら、ちゃんと後の人のために元に戻しておくこと。ちなみに、ちゃぶ台返し板でひっくり返したり戻したりする人たちは「ちゃぶ隊」と呼ばれている。   (ノ ̄□ ̄)ノ ~┻━┻   (ヽ´~`)ヾ┳━┳”(ちゃぶ台を戻して片付け)   (ヽ ̄ー ̄)ヾ┳━━┳ ┳━━┳~(^^~) (お片付け)   (о^◇^)⌒”┳━━┳ (ふきふき)   ★軽くて丈夫な丸型ちゃぶ台(卓袱台) - ダンボール倶楽部 https://www.dumboo.com/SHOP/DF011.html 星一徹になれる!?^^ 「ちゃぶ台」 軽くて丈夫な折り畳み式の卓袱台です。 二層強化段ボールと三層強化段ボールを組み合わせた頑丈なつくりに、 段ボールのぬくもりと、かわいらしさを持っているでしょ! 足の微妙なカーブがそれを演出しています。 使わないときは簡単に折りたため、収納の隙間に入り邪魔になりませんよ。   ★【レシピ記事】 DIYキットに挑戦【折りたたみちゃぶ台】 - フェリシモ女子DIY部 https://www.felissimo.co.jp/diy/blog/diyworks/table/lowdiningtablekit/ 2018/09/13 フェリシモ女子DIY部のオリジナルDIYキット、第二弾が誕生しました! 今回ご紹介するのは「折りたたみちゃぶ台 DIYキット」。 キットの新作をみんなで考えていたときに、部員のももちゃんから出た言葉。 「ちゃぶ台がほしいです。」 「!!」 まじかー!思いつかなかったわ!ちゃぶ台をDIY!! ただ、このキットの実現にはたくさんの壁がありました。一度は心が折れ、あきらめそうになりました。 でもフェリシモ女子DIY部のおかんこと、けびょにお尻を叩かれながらいろいろと思案し、なんとか実現したのがこのキットです。   ★配膳【ハイゼン】デジタル大辞泉の解説. [名](スル)食膳を客の前に配ること。料理や箸・茶碗などを食卓に出すこと。「客室ごとに―する」「―係」   ★マナーを守ると美しい!ご飯と味噌汁の正しい位置を確認しよう 2017年6月7日 更新 https://macaro-ni.jp/38018 和食の配膳には、じつはいろいろな理由があります。たとえば、ご飯と味噌汁の位置、ご存じですか?毎日の食卓でも正しい配膳ができるよう見直してみましょう!今回は、ご飯と味噌汁の正しい位置や、配膳マナーについてまとめました。   ★一汁三菜とは?日本の食卓を彩る基本の献立・和食の正しい配膳方法 https://allabout.co.jp/gm/gc/71497/ 2019/12/17 毎日の食卓の一汁三菜、それぞれの意味と正しい置き方はご存知でしょうか? ご飯におかずにおみそ汁。日本人ですから、和食の基本の作法はおぼえておきたいですね。今さら人に聞けない、日本料理の献立の基本中の基本、正しい配膳方法をおとどけします。 毎田 祥子 執筆者:毎田 祥子 家事ガイド ご飯におかずにおみそ汁。毎日の食卓、それぞれの置き場所は正しいでしょうか?日本人ですから、きほんの作法はおぼえておきたいですね。今さら人に聞けない、献立の基本中のきほんをおとどけします。 <目次>    一汁三菜とは、日本料理の献立の基本    一汁三菜の配膳方法……ご飯は左、お味噌汁は右   ★なかい[―ゐ]【中居・仲居】大辞林 [1]料亭などで、料理を運んだりして客に応接する女性。《仲居》 [2]将軍・大名などの奥向きに仕える女性。また、その詰めている部屋。おすえ。《仲居》 [3]近世、商家などで、奥女中と下女の中間の奉公人。中通り女。   ★仲居(なかい)https://ja.wikipedia.org/wiki/仲居  仲居(なかい)は現在は旅館で給仕や接待をする女性の職業。 古くは中居と記されて、公家や門跡の邸宅で主人の側で奉仕する人の控室を指し、後に料理の配膳室や家政・経理部門及びその職員の意味でも使われた。宮中では御末とも称した。 上代においては上女中と下女との中間の、小間使の女を意味した。 転じて遊女屋・料理屋、旅館などで、客に応接しその用を弁ずる女性の接待業を意味する。 多くの場合住み込みで、長時間労働である。収入はチップによる歩合を取ることもある。 江戸時代に旅籠や宿場において設置されることがあった公娼である飯盛女とは全く異なる職業である。   ★飯盛女(めしもり おんな、飯売女[めしうり おんな]とも称する) https://ja.wikipedia.org/wiki/飯盛女 近世(江戸時代)日本の宿場にいた、奉公人(cf.)という名目で半ば黙認されていた私娼。 「飯盛女」の名は俗称であり、1718年以降の幕府法令(触書)では「食売女」と表記されていた。 その名の通り給仕を行う現在の仲居と同じ内容の仕事に従事している者も指しており、一概に売春婦のみを指すわけではない。   ★私娼(ししょう)http://bit.ly/IaJLJU 娼婦に公に営業の許可をあたえる制度がある場合、娼婦のうち、公の営業許可を得ていない娼婦をいう。 公(おおやけ)に営業を許された公娼に対する。 日本における私娼 日本における私娼の歴史は、必ずしも明らかではない。奈良時代、天平年間に遊行女なるものがあったことが知られ、これを私娼とする向きがある。『万葉集』には、大宰帥大伴卿が都に上るときに卿に侍した遊行女、児島の、「やまと路は雲かくれたりしかれどもわがふる袖をながしと思ふな」という歌もある。のちに娼婦は遊行女のほかに、白拍子、遊女、傾城、傀儡女などに分かれたが、鎌倉時代は遊女と呼ばれるようになった。   ★公娼(こうしょう)https://ja.wikipedia.org/wiki/公娼 日本における娼婦の種別である。 公に営業の許可をあたえる制度がある場合、娼婦のうち、公に営業を許された娼婦をいう。 公の営業許可を得ていない私娼に対する。 ・関連項目  ・赤線・青線・白線 (性風俗)  ・岡場所  ・歓楽街・風俗街   ★赤線 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/赤線 赤線(あかせん)は、GHQによる公娼廃止指令(1946年)から、売春防止法の施行(1958年)までの間に、半ば公認で売春が行われていた日本の地域である。赤線区域、赤線地帯などとも。   ★青線 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/青線 青線(あおせん)とは 1.日本で売春防止法施行以前に非合法で売春が行われていた地域の俗称。この項目で記述。 2.法定外公共物である水路の通称。「青道()」「青地()」ともいう(法定外公共物である里道の通称は「赤線」「赤道」「赤地」)。
1の青線は、1946年1月のGHQによる公娼廃止指令から、1957年4月の売春防止法の一部施行(1958年4月に罰則適用の取締りによる全面実施)までの間に、非合法で売春が行われていた地域である。青線地帯、青線区域ともいわれる。   ★白線 (ぱいせん・ばいせん)https://ja.wikipedia.org/wiki/白線 日本で非合法の売春行為の俗称。また、日本で売春防止法施行以前にあった、米軍基地周辺などの白人兵士相手の売春街。読み方は「ぱいせん」あるいは「ばいせん」。白線 (性風俗)を参照   ★白線 (性風俗)  https://ja.wikipedia.org/wiki/白線_(性風俗) 白線 (ぱいせん・ばいせん) は、1958年4月の売春防止法の全面実施後も、もぐりで行われていた非合法の売春行為を指す。   ★岡場所(おかばしょ)https://ja.wikipedia.org/wiki/岡場所 江戸時代、江戸における女郎屋を集めた吉原などの公許の遊廓に対し、私娼屋が集まった歓楽街のことである。 「岡」は「傍目」(おかめ)などと同じく、「脇」、「外」を表す言葉である(例:傍目八目)。 吉原の浅草堤移転にともない、湯女風呂に替り、江戸周辺部の寺社門前地の茶屋から発展した。宝暦から天明年間にかけて最盛期を迎えたが、寛政改革における統制強化により、整理統合が進められた。天保改革により廃絶された。岡場所は私娼窟だけでなく、寺社門前地や広小路に展開した盛り場を形成する要因の一つであった。   ★吉原遊廓   https://ja.wikipedia.org/wiki/吉原遊廓 吉原遊廓(よしわらゆうかく)とは、江戸幕府によって公認された遊廓である。始めは江戸日本橋近く(現在の日本橋人形町)にあり、明暦の大火後、浅草寺裏の日本堤に移転し、前者を元吉原、後者を新吉原と呼んだ。元々は大御所・徳川家康の終焉の地、駿府(現在の静岡市葵区)城下にあった二丁町遊郭から一部が移されたのが始まり。
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天ヶ瀬さんちの今日のごはん9
『肉じゃが』with 神速一魂
 9月中旬。世界はようやく秋の存在を思い出し、ゆったりと気温を下げていこうとしていた。稀に手を滑らせたかのような猛暑日の時もあるが、天の気まぐれと言う奴なのだろう。暑くなったり寒くなったり台風が来たり、天気予報を見ていても「忙しい」という感想ばかりを抱く。
 忙しい、その言葉は冬馬自身にも言えた。  秋クールのドラマの主演。冬馬にとっても事務所にとっても世間に名を知らしめる非常に大きな仕事が舞い込んできていた。  幸いなことに恋愛系ではなく漫画を原作としたスポーツ漫画で、ヒロインとの恋愛も仄かなまま終わると事前情報で告げられた。ともすれば、以前冬馬を色んな意味で散々悩ませたキスシーンは皆無。  いつかは出来なければいけないということは分かっていつつも女子を、それも演技とは言え自分の事を好いているような蕩けた顔の少女を眼前にすると脳味噌が沸騰し、全身が固まってしまうのが現状である。今回は無くて良かった。 「天ヶ瀬ー! こっちも頼む!」 「冬馬君! 次はこっちも……」 「あまがせー!!!!」 「あーあー! 全部行くからちょっと待ってろ!!!」  そんな冬馬は今、久しぶりに高校に顔を出している。  前述した通り、有難いことに仕事は大変忙しいのだが、秋を迎えようとしている9月中旬に担任の教師へ電話で「秋クールにドラマ出るんでしばらく学校行けないっス」などと伝えると、電話口の先生が神妙そうな声音で一言、 「天ヶ瀬君あなた、このままだと留年するわよ」と。  一度はトップアイドルに上り詰めたとはいえ、冬馬はまだ高校二年生である。961プロダクションに所属していた時の黒井社長の口添えのおかげでいくらか学業の免除の効力は続いているものの、それでも全く授業に出ずに進級できるほど高校は甘くない。 ���出席課時数が足りてないと言われればドラマの主演などという輝かしい肩書が待っていようとも有無を言わさず指定の授業に参加しなければならない。プロデューサーと話し合った結果、仕事をしながらの登校という多忙な数週間を迎えることが決まった。  学校帰りに「学業のことを失念していました」と酷く所在なさげに言ったプロデューサーがアイドル達以上に疲労を溜めている気がして、冬馬は心労を和らげるために「気付かなかった俺も悪いんだ」と差し込む。実際、アイドルの方に熱中しすぎて学業が疎かになっていたのは確かである。  当然、ドラマの撮影は既に始まっているので夕方から撮影だと言う時にも午前中からお昼過ぎにかけて授業に出席、タクシーを飛ばして現地へ向かう。そんな忙しい日々、流石の同級生達も時折気を遣って食堂の自販機のパックジュースを知らぬ間に冬馬の机の上に積み重ねていってくれた。 「ごめんねえ、天ヶ瀬君が家庭科得意なのは十分分かってるんだけど県の決まりだから」  いつも家で使用するエプロンを首に通し、冬馬は女子に借りた髪ゴムで後ろ髪を結ぶ。隣で本校唯一の家庭科教師が久しぶりの冬馬の存在を前にニコニコしている。彼女は家庭科が得意な生徒は好きなのであって、決してその生温かな視線はアイドルの冬馬に対してのものではない。  大きく溜め息を吐く。調理室一帯が生徒達の雑談で敷き詰められていた。  冬馬はアイドルを始めてからというもの、一度もまともに調理実習と言う物に参加したことがない。これは以前High×Jokerの五人が家に来た時にそう言えばと思い至ったのだが、たまのオフに学校へ顔を出すと決まって家庭科の授業は裁縫なり調理実習なりと予備知識または長期的な製作を想定された授業にぶち当たる。その際は決まって『どうせ次も来れるか分からないんだろう』という決めつけの元(正しいのだが)手伝いをしてくれれば諸々を免除しようと言われた。その時ばかりは家庭科が得意で良かったと思ったものだ。  おかげさまで久しぶりの天ヶ瀬冬馬にテンションの上がった友人、及びミーハーな同級生達に引っ張りだこにされているのだが。 「ねえ、天ヶ瀬君、お水ってこれくらいでいいのかな……」 「ん? ああ、火にかけると蒸発して濃くなるからちょっと入れすぎぐらいの方が美味く仕上がると思うぜ」
「あっまがせー! 味見してくれー!」 「そんくらい自分でやれよ!」 「お前が味見した方が安心出来んだよー!」 「ったく………」  仕事現場の張り詰めた緊張感に慣れた冬馬にとっては高校で出会う人達はずっと幼く見えるしうるさく感じる。高校ってこんなところだったかとすら思うことがある。  しかし、315プロダクションやJupiterの三人でいる時の騒がしさ、そして高校での年相応の騒がしさ。そのどれもが冬馬にとってはかけがえのない居場所の一つだった。
「調理実習レポートぉ?」  無音の部屋に冬馬の声が消える。怪訝に顰めた眉毛がぴくりと跳ねたが、真面目を形作った朱雀と玄武の顔は動かない。 「ああ、協力しちゃ貰えねえかと思ってな」  ここ最近の事務所の上がり調子によるイベントやライブ、番組収録、のおかげで現役高校生である神速一魂の二人の成績資料が足りていないのだという。全国模試で優秀な結果を叩きだしている玄武はまだしも、朱雀は勉学の成績もお世辞にも良いとは言えず、その上先日のフランスツアーのおかげで出席日数すら足りていないらしい。
 そこで、仕方なく出されたのが各科目の課題。  うち家庭科は『調理実習レポート』と呼ばれるA4サイズ2~3枚のポートフォリオで、曰く『授業で作った肉じゃがを家で作り、作り方や考察、感想などを纏めてくれば今回の単位は免除してあげる』とのことだった。つまり、冬馬がすべきことは彼らの前で肉じゃがを作り、レポートに書き込める雑学を伝えること。  二人からの依頼を聞いた瞬間、冬馬は真っ先に『お前らもか』と思った。一連の問題は心当たりがありすぎる。むしろ、家で出来るだけまだ冬馬よりもマシというものだ。 「なるほどな、だから肉じゃがなのか」 「俺達がいない間に調理実習で作ったらしい。一応レシピは貰ってきたが同じ作り方じゃなくても良いと言っていたから冬馬に任せる」 「料理ならアスランさんの方がうめえと思うんだけどな……」 「俺達も初めはそう思ってアスランさんのとこ行ったんだけどよ、なんかシモベとか、ケンゾク、とかって全然分かんなかったんだよな」 「ああ、アスランアニさんの料理の腕は確かだが、今回は[[rb:黜陟幽明 > ちゅっちょくゆうめい]]。冬馬に相談することにした、忙しい中引き受けてくれて感謝するぜ」 「こんくらいなら飯作りながら一人事言うのと変わんねえしな。材料は買ってあるから遅くならねえ内に作り始めるぞ。レシピ見せてくれ」  朱雀からぐしゃぐしゃのそれを手渡され、広げながらキッチンに向かっていく。内容はなんてことないスタンダードな肉じゃがの作り方である。材料はじゃがいも、牛肉、玉ねぎ、人参。白滝は無し。 「すき焼きのたれ……は、使わないか」  スタンダードとされる肉じゃがのレシピの中で使用されるのは醤油、みりん、砂糖、場合によっては酒の日本食テンプレートだ。しかし、最近では調味料も随分と進化してきたもので素人が頑張って一から作るよりもずっと美味しく仕上がる魔法の液体が売られている。  その中の一つが『すき焼きのたれ』であった。  本来肉じゃがのつゆは日本食テンプレートの調味料と出汁を混ぜて作られる。出汁を取るのには鍋を沸かして大量の鰹節や昆布を用意してと、面倒を凝縮したような工程が必要なのだが、なんと驚くべきことに『すき焼きのたれ』さえあればその面倒な作業を全てカット出来るのである。  冬馬自身も手間暇かける料理は好きだが、出汁の貯蔵が無い限りはすき焼きのたれの世話になっている。調味料の節約にもなるし、何より時短になるのだ、使わない手はない。  しかし、レシピも手間暇かけていることだし、なにより折角遠路はるばる神速一魂の二人が冬馬の家を訪ねてくれたのだ。どうせならば良い物を食べさせてやりたいと思うのが自分である。 「っし!」  冷凍庫のシリコンボックスには黄金色の氷が半分ほど入っている。これだけあれば十分。 「なんだそれ?」 「ただの氷じゃ無さそうだが」  二人から隠すようにぱたりと冷凍庫を押し込んで不敵な笑みを残す。説明してやりたいのは山々だが、折角解説をするのだからかっこいいところは格好良く決めたいと思うのが男心というやつだ。料理を嗜む天道にすら「すごい」と言わしめた秘密兵器の出番はまだ後である。 「そんじゃ、まずは野菜の皮剥きから手伝ってもらっていいか?」  パックまな板と包丁を置くと、すかさず玄武が資料用に携帯電話で写真を撮る。そうか、レポート用の写真も必要なのか。北斗もごく稀に大学で出されたというレポート作成の為にパソコンを叩いているが、確か彼も参考資料を集めるのに苦労していたと思う。結局いつの間にかどこかから回収してきていたのだが。  そう言う意味では確かに誰かに作ってもらって随時撮影して資料を集めていくのは賢い。 「皮剥きってよ、包丁使わねえといけねえんだよな?」 「使わない手もあるから無理しなくていいぞ。確かピーラーなら……っと」  調理器具を大量にしまい込んでいる棚の中から使い古されたピーラーを一つ取り出す。冬馬が小さい時に使っていたものは昔じゃがいもを剥く時に壊れてしまったから、これは二代目だか三代目だかだった気がする。包丁での皮剥きに慣れてからは使われることもなく棚の肥やしになっていたものだ。  水道水と石鹸で埃や汚れをよく流し、朱雀に渡そうとする。が、耳を刺す玄武の声と共に冬馬はその光景を目にしてしまう。ぎょっとして咄嗟にピーラーを置いた。 「危ねえ!」  高校生にしては大きめの手をぷるぷると震わせ、朱雀はその鋭い刃先をじゃがいもに向けていた。冬馬がたまの休みに砥石で砥ぎ、購入してから数年は鋭利を保ち続けている包丁だ。緊張して強張る朱雀を刺激しないよう、冬馬はゆっくりと言葉を掛ける。 「一旦下ろせ、な?」 「お、おう……やっぱアスランさんと天道さんみてえにスパパパーン! とはいかねえな……」 「ったく、野菜どころか指も簡単に切れちまうから気を付けろよ。ほら、ピーラー。脇の丸い突起使えば芽も取れるぜ」  言われた通りに受け取ったピーラーでじゃがいもの皮を剥いでいくが、動きはどうにもぎこちない。ピーラーで腕の皮まで剥いてしまうことは流石に無いだろうが念の為に玄武に見張っててもらうことにした。  その間、冬馬が朱雀の言う『スパパパーン!』の早さで人参の皮を落としていくと、隣チームが三つ剥き終わる頃には残る全ての皮剥きを終えてしまった。 「冬馬、これは何て品種の芋なんだ?」 「ああ、メークインだよ」  玄武が抜かりなくメモを取っていく。冬馬も横目で確認しつつ野菜に包丁を差し込んでいく。洗ったじゃがいもを四等分、人参は乱切り。 「『男爵いも』とか『メークイン』とか『新じゃがいも』とか色々あるけど、煮物は長い間火にかけるから崩れにくいメークインを使った方が見た目が綺麗になるんだ。つっても、少し崩れた方がとろとろになって美味いって思う奴もいるから人ぞれぞれだな」  温めた鍋にサラダ油を引き、玉ねぎを炒める。この辺りは洋風のスープなどを作る際も共通している作業だ。あまり炒めすぎると玉ねぎの形が無くなってしまうので程良く固さの残っているところで牛肉を投入、軽く炒めて水にさらしておいたじゃがいもと人参を加えた。   すると、あっという間に鍋の中はごろごろと野菜だらけになってしまう。水気が油に跳ねてぱちぱちじゅうじゅう鳴いている。 「そしたらここに出汁を入れる」  ドヤ顔で言うと、朱雀が「出汁ィ?」と目を丸くするが、かまわず件の黄金色の氷を中に放り込む。常温に放置しておいたが、この短時間ではやはり溶けきらなかった。しかし、どうせ火にかければ溶けるだろう。醤油、砂糖、酒、みりんを加えて蓋をした。 「ああ、鰹節でとった出汁を凍らせただけだけどわざわざ出汁取らなくても済むだろ? つっても多分先生は出汁の取り方からやらせたいんだろうから……後でまとめて送っとく」 「助かるぜ」 「んで、落し蓋をしてっと……」  あとはアクを取り除きつつ煮込んでいくだけだ。煮込み料理は野菜と調味料を入れて放置するだけで食える物になるので多忙な人間には有難い。いつもの冬馬ならばこの間に台本のチェックなり出演イベントのタイムテーブルなりのチェックをする。  念のためにカウンターの上に主演ドラマの台本を置いてあるが、神速一魂の二人がいる手前自身のことばかりやるのも気が引ける。  すると、朱雀が台本の存在に気付き、手に取った。 「そういや、冬馬さん今ドラマ出てんだよなァ。しかも主演だろ、すげぇよな!」 「んなことねえよ。今後もまた貰えるか分かんねし、まだまだだ」 「ふっ…俺達もまだまだだが、万里一空。一時も努力を怠るつもりはないぜ」 「おう、Jupiterともまた一緒にライブやりてぇしな!」  狭いキッチンに朱雀の咆哮が響き渡る。隣から苦情が来ないことを祈りつつも冬馬はそうだなと首肯した。  神速一魂とは時折仕事を共にすることがあるが、そう言えばここ最近は一緒になることはなかった。とは言え、15ユニットも存在している315プロダクションの中でもFRAMEやS.E.Mのように未だに同じ現場になったことがない人達もいる。  この仕事は一期一会だからと誰かが言っていた。善澤さんだっただろうか、芸能界に飛び込んでからの膨大な時間と記憶の中で曖昧になってしまったが、その言葉には頷ける。 「にゃー」 「お前もそう思うか! にゃこよ!」 「にゃーにゃー」  朱雀の肩から顔を出した猫と目が合う。二度、三度と瞬きをして小さな生き物の存在を脳みそで認識した。そしてようやく失念していたことに気が付いた。
 ……猫って何食うんだ?  冬馬が住んでいるマンションはペットを飼うこと自体は許されているものの、なかなか家にいることが出来ない冬馬に生き物を買うと言う選択肢すら無かった。業界人が飼っている猫や犬の自慢をしているのを羨ましく思いながら聞いている冬馬はそちら方面の知識は非常に疎い。  猫がネギ類を食してはいけないという程度の情報ならあるが、それ以上の知識はない。犬に夕飯を分け与えるということも家庭によってはあると聞いたことはあるが、冬馬が今作っている肉じゃがには玉ねぎが入っている。  困り困ってどうしたものかと頭を掻いていると、尻ポケットに差し込んでいた携帯電話が着信を告げた。
「まさかキャットフードの為に呼び出されるとは思わなかったよ」 「どうせ仕事終わったばっかだったんだろ、ついでだついで」 「俺の家反対側なんだけどな……」  突然の着信、電話口から聞こえた第一声の『突然ごめん、何かしてた?』で瞬時に要件を察した冬馬は、その後、『冬馬の声が聴きたくて』に続く"仕事に疲れた北斗構文"を適当に流して『飯食わせてやるからキャットフード買って来い』と一方的に叩きつけると、電話口の彼は珍しく困惑の色を見せたのだった。  それもそうだ、確か今日はずっと秋のコレクションイベントの新作の試着だと言っていたから、午後は服を着たり脱いだり着たり脱いだりと着せ替え人形のように扱われていたのだろう。ダンスレッスンやボーカルレッスンよりも"何もせずそこにいるだけ"の時間が一番疲れると言う北斗がその時間を終え、ようやっと癒しを求めて恋人に電話したんだろうに、愛の言葉を適当に流された挙句に前説無しの『キャットフード買って来い』なのだから、困惑して当然である。  かくかくしかじか説明すると彼はすぐに『なるほどね』と膝を打って『電話で言ってた通り、俺の分の肉じゃがもあるのかな?』と図々しくも聞いてきたのだった。 「悪いな北斗アニさん。気ぃ遣わせちまった」 「気にしなくていいよ。こないだドラスタと飲んだ時以来冬馬に会えてなかったから少し心配してたんだ。冬馬の事だから頑張りすぎてないかって」 「余計なお世話だっつーの」  キッチンの隅で眠っていたプラスチック箱の蓋に猫用カリカリを一袋出すと、にゃこが嬉しそうに鳴いた。お腹が空いているのは人間だけではないらしい。  玄武と朱雀に口頭で今までのおさらいを話しつつ、お茶碗に米をよそって北斗に押し付ける。彼は何も言わずにそれらを冬馬の部屋へと運んで行ったのだった。恋人とは言え、その扱いがただの召使いだ。キャットフードのお使い含めてこれが夕飯代だからな、働け働け。なんて思いつつ、冬馬は少しだけ唇を歪ませながらも仕上がった肉じゃがを器によそうのだった。  神速一魂は二人並んでいるからこそ神速一魂なのだと冬馬はしばしば思う。  315プロダクションはユニット数が15という程々の数を保ちつつ、内二人組ユニットはAltessimoとWと神速一魂の3ユニットだけだった。  しかし、Wは双子ユニットであることを売りにしていることからパフォーマンスも一心同体を体現しているかのようだし、Altessimoも並ぶと言うよりも"共に音を奏でる"と言う印象を受ける。  それを踏まえた上でも神速一魂は二人(正しくは二人と一匹なのだろうが)隣同士で何かをするというのは随分と絵になる。  今も完成した肉じゃがを見て興奮する朱雀と、冷静に料理の写真を撮影しながら「見た目も良いな」とレポートのことを気に掛ける玄武の二極化した様子が視界に収まり、微笑ましそうにしている北斗が見切れていた。 「腹減ったろ? 食おうぜ」 「おう! 冬馬さんの肉じゃが……ぜってぇうめえよなァ!」 「にゃぁ…」  肉じゃがの香りに誘われ、にゃこが"自分も食べたい"と言わんばかりに寂し気げに鳴く。  こればっかりは仕方ない、人間用の食品というのは思っている以上に人間向けの手が入っている。冬馬の中にあるほんの少しの「食べさせてやりてえな」という気持ちに素直になればにゃこを傷付けてしまいかねない。 「う、そんな目で見んなよ。ほら、終わったらこれやるから」  冬馬が掲げたそれはスティック状のキャットフードで。見るや否や垂れていた耳が勢い良く立ち上がり、先程の悲しみが嘘のようににゃこは「にゃあ!」と元気に鳴いてみせた。そんなに好きなのか、これ。  自分が出演している番組のCMにあったキャットフードの映像、スティックの先端から出る餌を猫が必死にぺろぺろと舐めとる様子は冬馬にとっては甘美な映像であった。いいなあ、試してみてえなあ、そんな思いを胸に悶々と生きていた。  しかし、そんな日々も今日までだ。北斗に我儘を言って買ってきてもらったスティックフードを前にしたにゃこの歓喜を見ればあの映像はもうすぐ目の前である。  だが、今はまず腹ごしらえだ。 「いただきます!」  時間の関係で大皿によそった肉じゃがとスーパーで買った出来合いの漬物、出汁氷で作った納豆と青ネギの簡単なお味噌汁という質素な食卓になってしまったが、先程から朱雀がうおお、だの、すげえ! だのと興奮しっぱなしなので良しとする。今まで何度も人に食事を振舞ったがここまで喜んでくれたのは朱雀が初めてかもしれない(四季達も興奮はしていたがここまでではなかったと思う) 「納豆の味噌汁か。懐かしいな、昔はよく出されて飲んでたぜ」 「そう言えばお前らって茨城出身か」  冷蔵庫の食材が乏しく、かと言って具無しも味気ない為仕方なく賞味期限が迫っていた納豆を入れたが悪くない。納豆の独特な香りが嫌いでなければ味噌と納豆の大豆コンビが良い味を出す。段々冬に向けて寒くなっている世界のことを思うと、これからは味噌汁が一層美味しい季節になるんだろうなあと温まる胃にほっと一息吐いた。 「茨城か……まだ行ったことねえな」 「ねぇのか!? Jupiterならもうとっくに全国回ってると思ってたぜ!」 「俺はドラマの撮影で行ったことあるけどね。言われてみるとJupiterではロケでも行ったことないな。食べ物も美味しいって言うし、茨城くらいなら行こうと思えば車で行けるから、仕事が落ち着いたら翔太も誘って遊びに行こうか」 「美味そうな飯があればどこにでも行くからな、あいつ。今度誘ってみようぜ」  北斗が朱雀の取り皿に肉じゃがをよそう。その間、自分でよそったじゃがいもを割って欠片を食べてみた。  口に入れたじゃがいもは舌で触れるとほろほろ形を壊していく。男爵いもなどとは違い、溶けると言うよりも崩れると言った方が正しいだろう。とろとろにした肉じゃがも美味いが、これもまた芋らしさを味わえて良い。  つゆの染みた肉をおかずに二口、三口と米を味わい、今度は平らになったお茶碗の上に箸で穴を作る。真ん中にぽっかりと出来た空間につゆをかけてやると、米粒と米粒の間を埋めるようにつゆが米を慣らしていく。肉をいくつか乗せて、真ん中に置いたじゃがいもを箸で崩せばどんぶりの完成だ。  ごくり、出来た食物兵器の味を想像し、早く早くと苦情を送る腹に唾液を送る。  一気に掻き込む。箸が茶碗の端を叩き、カカカッと小気味の良い音が響く。 「~~~~~~ッ」  腹が減っている時のどんぶりはなんて美味いんだろう。求めていた物が一気に満たされた充足感。体の中に染みる温かさとつゆの優しさ。外食ではなかなか味わうことのない肉じゃがは『作ってもらいたいものランキング』なるもので堂々の一位に輝くのも納得する。素朴な味だがじゃがいもの柔らかさから玉ねぎとにんじんの甘み、そしてつゆの香りまですべてが柔らかく、食べている側でありながらも自身が温もりに包まれているような錯覚に陥る。  再び米を掻き込むと、冬馬を真似て米ごと肉じゃがを掻き込んだ朱雀が、「肉じゃがとか久しぶりに食ったぜェ! うんめぇな、冬馬さん!」と、目を輝かせる。 「おう、まだまだあるからどんどん食えよ!」  やっぱり、自分の作った料理を美味いと言って食べてもらえるのは気持ちが良いものだ。  嬉しさに顔を綻ばせながらも冬馬はもう一度それを掻き込んだ。
「見ろよ北斗! 写真撮ってくれ!」 「はいはい」  食事を終え、皿洗いくらいはとキッチンに向かっていった神速一魂の二人を見送った冬馬は楽しみを待ちきれない少年の如き勢いで件のスティックキャットフードに手を伸ばしたのだった。  スティックの存在も考慮して少なめに入れられていたカリカリは腹ペコのにゃこの前には雀の涙で、無くなるのは驚く程一瞬の出来事だった。  スティックフードを必死に舐めとるにゃこをまるで愛し子を見つめるような瞳で見つめる冬馬はだらしない顔を隠そうともせず、ニコニコと北斗が向ける携帯電話のカメラにピースを向ける。 「撮れたよ。送っておくから」 「おう、サンキューな、後で旬と山下さんに送ろうと思ってんだ!」 「ふふ、冬馬が嬉しそうで良かったよ」  以前より"猫"を共通の話題にすることが多かったS.E.Mの山下次郎とHigh×Jokerの冬美旬はこうして事あるごとに猫の写真を送りつけ合っている。道端に突然現れた猫、仕事を共にした猫、取材で指定された喫茶店で飼われていた猫など、見つける度に写真を撮っては『どうだ、可愛かろう!』と叩きつけ、お互い癒されて終わる。  聞いたところによると、THE 虎牙道の円城寺道流が営んでいるラーメン屋の傍にも猫が出没すると聞いた。タケルと漣から聞いた話だが、チャンプと覇王という名前を聞くので二匹いるのかもしれない。機会があれば男道らーめんを食べに行くついでにこのスティックフードを片手に会いに行ってみようか。 「……冬馬、翔太からグループにメッセージが入ってるよ」 「翔太から? なんだって?」 「来月の旅孫サタデーで享介君達のお休みの回ができたからゲストで来ないかって」 「あーそういや天道さん達が今度Wとイベントやるって言ってたな。行けるなら行きてえけど……」  旅孫サタデーとは翔太と蒼井兄弟が持っているレギュラー番組で、全国のおじいさんやおばあさんのいるところを周るロケを中心としている。しかし、レギュラーと言いつつもアイドルを生業としている人達が毎週ロケの為に駆り出されるのは厳しい為、局との話し合いの上で調整次第ではイベントを優先しても良いということになっていた。その場合は315プロダクションの中から代理ゲストを立てるのだが、どうやら今回もその機会がまわってきたらしい。 「冬馬は厳しいかもしれないな。10月はドラマ撮影の真っ只中だろうし」 「だな。一応プロデューサーには頼んでみるけど、無理そうなら北斗だけでも行って来いよ。俺は一回出させてもらったことあるけどお前は初めてだろ?」 「そうだね、そうさせてもらうよ。もしも何か貰ったら冬馬の所に持ってくるから」  フードを食べ終えたにゃこが物欲しげな目で見つめてくるのをぐっと耐える。そんな宝石のような純真無垢の瞳で見られるとうっかりあげてしまいそうになる。 「ったく、少しは持って帰れよ。お前も料理は多少出来んだろ」 「出来るけど、男は恋人が作った料理を食べたいものだよ☆」  そう言ってウィンクを飛ばす北斗に、冬馬は心底面倒くさそうに長く溜め息を吐く。どうしてこの男はこうも気恥ずかしいことを簡単に言えるのか。 「……暇だったらな」  このままだと砂糖を吐きかねない気障な恋人に素っ気ない言葉を返してやると、彼は「食えないなあ」と困ったように笑ったのだった。
 
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[ゴロリじゃないよ、コルリだよ]
今回のカレーは見た目が普通なわりには作る工程でいままでにない試みをしているので、ざっくりと文章化をしてしたいと思う。で、ここであらかじめ断らなきゃならんのですが、僕はいわゆる「料理人」ではなく「カレーが好きなヒト」なだけなので、きちんとしたレシピの掲載は控えたいと思います。つまり「ふだん家でカレーを作る人が読んだら楽しい筆者の見地」には出来るようにまとめたいのですが、人に「教える」と言うのは恐れ多いと言うか、まだ出来ないです。あくまでも自分が楽しめることを追求しているだけなので。とはいえ、素人(筆者)のレシピくらい、プレゼントとして読んでくれている方々に載せたいものですが。いやあ、まだまだですね。
【今回の牛すじカレーについて】
1.玉ねぎを炒める。
多くの人がオーソドックスなスパイスカレーを作る時、恐らく気にすることのひとつが最初の「玉ねぎ炒め」ではないだろうか。欧州カレーの人気店なんかだと、これがブイヨンだったりするみたいなんだけど、別に長い「カレー論」を書くわけじゃないし、どっちも大事だせ、と言われたらそれまでなんだけど(どっちもですよね)。まあ、言葉のあやです。知る人ぞ知る、カレー研究家・水野仁輔氏(以下水野氏)によると「玉ねぎは何時間もかけて炒める必要はない。少し焦げるくらいの火で15分炒めれば充分」らしいのだが(やり方がある。15分炒めれば大丈夫なのは恐らく普遍的ではないかもしれない)、今回���時間があり且つ、「シンプルな作り方の延長上にあるカレー」をぼんやりとイメージしていたため、じっくりと炒めることにした。でも単体では40分くらいかな? その後にんにくと生姜をすりおろして入れる。その後トマトなどを入れベースを整える。
2.牛すじを時間をかけて煮込む
牛肉に塩、胡椒、いろいろで味付けをして、余っていた赤ワインを使ってじっくり煮込む。煮込めば煮込むほど柔らかくなり、食感が増すので焦らず気長に煮込む。
2.スパイスを焼いてみる
これが初の試み。上記の水野氏による「カレーの奥義」と言う本を読んだ。これは氏と一流店の料理長10人との対談形式の本で、それぞれの章でテーマごとにカレーについて語り合うと言う内容の本である。(まだ行ったことないけど)東京の「デリー」とかも出てくる。この本の中の「レストラン吾妻」の竹山正昭氏の作り方が興味深くて、今回は真似をしてみたわけだ(もちろん成功したとは言いがたいけど)。氏は玉ねぎを初めにベースとするカレーは「玉ねぎを炒める。うん、それは手抜きだよ」と一喝する。 これは、多くの「ベースとしての玉ねぎを大切にする」シェフたちにとってはこわいくらいの反逆的な発言だけど、それとは別の(カレースター)水野氏を含め、既存の「自分独自の、うまいカレーを作ろう」と考える「プロではないけれどプライドがあるカレーアマチュア料理人」たちにも衝撃を与えた。なぜかと言うとみんな、「オリジナルカレー=まず、玉ねぎを炒める」の公式を頭に入れていたわけである。あえて例えるならば、それは「地球は四角だ」と唱える学者が世の大半を占めた時代に「いや、もしかすると丸もありうるんじゃあなーいの?」と、言うくらい(一部のカレー界において)異を唱える事件だった。
元々、英国から伝わった日本のカレーは紆余曲折経て、今の大まかな(しかし全体を見ると全くまとまりのない)スタイルになっていったのだが、黎明期の洋食屋さんのカレーのルーと言うのは多くの店が「焼いていた」らしい。スパイス(粉)を焼く?どういうこと?と、あなたはおっしゃるかもしれない。この焼き方と言うのは(竹山氏の場合)いたってシンプルで、調合した(クミン、コリアンダー、ターメリック…etc. )スパイスをバターを入れ、小麦粉を加え、ペースト上にしてオーブンで4時間(!)じっくりと焼くらしい。ただ悲しいことに、今回は自宅に温度調節が出来るオーブンがないので、我流でフライパンを使い焼くことにした。
3.再び玉ねぎを炒める
前回まであまり玉ねぎに関して意識して考えなかった。が今回は玉ねぎを2度の場面で使おうと考えた。
今までは単にベースとして使う、刻んだ玉ねぎだけだったからで、混ぜた時に玉ねぎそのものうまみや歯触りは他の食材(トマトやリンゴ、バナナなど)に混ざり合い、隠れてしまった。それはそれで良い。今回もベースは刻んだ玉ねぎだ。その上で、今回は歯触りとしても、玉ねぎを選ぶことにした。そしてそれはニンジンやじゃがいも等のがっちりとした具ではなく、もっとシンプルに(まだ経験が浅いのだから)、僕が今後考えるルーの流れの理解した野菜であるべきだ。そしてそれは玉ねぎだ。他の野菜は足し算でどうとでもうまくなる。玉ねぎは、謎が残る。他の野菜にも謎はある。しかし僕が作るカレーのベース(刻み玉ねぎ)を引き継いでくれるのは今は玉ねぎ(スライス)だ。飛び級は才能がある者がすることだ。僕はひとつひとつ間違いながら段を登るしかない。
4.上記を考え、足して行く出汁はコンソメを加え(次回の目標はブイヨン)、自分なりの配合で隠し味を加え、混ぜ合わせる。カレーの出来上がりである。
カレーには謎がある。よくわからない。よくわからない。でも僕は、よくわからないことが世の中で一番好きなのだ。
【水野仁輔氏についての短文】
去年くらいから自分の生活スタイルを見直そうとわりと真剣に考えていて、そこで自分の中で結論付いたのは「下手くそでもいいから自炊してみよう。それを癖付けよう」だった。その上で真っ先に思ったのは「上手・下手、うまい、マズイ、出来る・出来ない、得意・苦手」を頭から取っ払って(これが僕の場合ひとより時間がかかるんだけど)まず「自分が楽しいと思えること、好きだと思うことに焦点を合わる」で、それはやはりカレーだった。とりあえず市販のルーを使い時間を掛けて手順を踏めば大きな間違いにはならない。保存も利くし、スーパーで売っているルーの技術はすごいから、まずくはならない。これが自分の中で楽しかった(そりゃ昔もたまに自分でバーモントカレーくらいは作ったりしていたが、『料理が下手、つまらない』と言う先入観が勝っていたから特に何も思わなかった)。「僕は料理人のひとのようなセンスはないが、とりあえず自分は楽しい」スタートはこれで、ようやく30㎝くらい自炊道の道を進めたのだろう。それから魚の煮物���作ったり、きんぴらごぼうを作ったり、家庭料理を下手くそながらもマイペースに続けている。
話が逸れてしまった。題はカレー研究家、水野氏についての短文のはずだ。でも僕自身、筋を��る話に(その話にもよるが)あまりおもしろ味を感じない性格なので、修正せずに続けようと思う。
水野氏は現在43歳の現役バリバリの「カレー研究家」で、その書籍は数十冊に及ぶ。まあ、この辺の略歴はインターネットが発達した昨今、いくらでも自分が興味が出たと思えば調べられるので省く。僕がこの人が面白い感覚だなと(恐縮ながら)興味を持ったのは、おいしいカレーを作る方法はないかなと考えながらネットサーフィンをしていて、たまたま読んだ「ほぼ日刊イトイ新聞(糸井重里の『ペンギニストは眠らない/1980年』とか、良かったな)」のある記事だった。
氏はここで、「自分の肩書きがわからない」「どういった呼び名でも呼ばれたくないのだが、仕方なく『カレー研究家』で通している」とのことを言っている。「フムフム…」と文字を追う。こういったタイプひと…他人に「なに言ってんの」「よくわからない」と思われようが、そんなもの関係なしに自分自身でいる人に、僕は少なからず興味と共感を覚えてしまうので、つい(もともと深く考えず自分がわかるものに共感しているだけなんだけど)耳を傾けてしまう。氏は続ける。
「僕はカレーになりたいんですよ」
これだ、久しぶりに僕は他人の文章(口述)を読んでレンズに焦点が合った。
「僕はカレーになりたいんですよ」
これ。これほど最近の僕の心臓をえぐった言葉はない。
なぜなら僕も街を歩いていてふと、「ああ、カレーになりたいな…」と呟いていたクチであるからである。店を経営したいとかではなく(そりゃ色々考えたが)単純にカレーになりたい。
追求し出すとまわりの人々はあるいは結果としての、着地点を求める。それは「自分なりの究極なカレーの店」であったり「100軒や200軒なりの店の味を渡り歩いて総評したデータ=レビュー的な本」である。「そこまで情熱があるなら自分のビジネスモデルをある程度見極めて、店舗を作ったり展開していったりして事業として広げていったら?」これは大多数の意見だと思う。理にもかなっている。でも水野氏はそれを単純に否定するではなく、やんわりと否定している。それこそが僕が氏に対して敬するところなんだけど。それは氏によると(以下引用)
「例えば、こんなことをそうぞうしてみる。ある日突然、神様が僕の目の前に現れて、こう言うんだ。君にどちらか一つの願いをかなえてやろう。極上のカレーをつくれる腕前が欲しいか、それともカレーの秘密を教えて欲しいか。腕前が欲しければ永遠にカレーの謎は解明されない。秘密をすべて知りたければ、死ぬまで極上のカレーを作ることばできない。 カレーとは何かを解明したい。常に僕はそう考えている。それは、おいしいカレーをつくりたいという気持ちとはちょっと違う。カレーという料理はなぜおいしいのか、何をしたらおいしくなるのか、そのメカニズムを解き明かしたいのだ。結果、抜群にうまいカレーをつくれるようになるのは、他の誰かでもいい。そう、つまり神様への答えは決まっていることになる。『カレーの奥義 / 2016年』」
僕はこの言葉にすっかり感銘を受けた。なぜかと言うと、この人は「何かを得ること」に執着を置くタイプではなくて「何かを得たあとそれを捨て、そこから再構築」して行くタイプの人だと認識したからである。つまり水野氏にとってのカレーは(いささか大げさかもしれないが)自分の探求心をくすぐる愛すべきツールであり、旅であり、その周りに浮かぶ「出店しなよ」や「食べ歩きエッセイはどう?」への声は自身の自然で自由な探求への足かせになり、いまのところ(これ以上稼ぐ必要もないし)捨てているのである。もちろん、著作数が数多いことからわかる通り、この人は「カレーついて」で日々のごはんを食べていて、本人が好む好まざる関係なしに、あるいは不自由な足かせを付けて活動しているのも確かなのだが。でもみんなそうじゃないですか。その中で水野氏は「より自由とは何か(わたくしが自由とかはではなくカレーが)」「よりカレーであることとは何か(より人間であるということは、よりくだらなさを知らなくてはいけない)。私はカレーになりたい」を的確にくるしくなく、突き詰めている人だと思う。まあ僕は、おいしいカレーを作りたいだけなんだけど。
氏は続ける。「肩書きを周りに提示する意味が本当にわからない」と。名乗らなかったら「とりあえず変な人」だとまとめられるから周りが言う肩書きを名乗っているだけだと。これは、本当によくわかる。周りが求めているのは探求した先の「結果」で、わかりやすい「そいつ」はつまり「利益」である。僕も氏に見習って、どんどん解りにくい人間になりたいと思う。
…そんな氏の「カレーの学校」が6月に京都で初めて開かれる。二日間で受講料が三万三千円くらいだったかな。行きたいけどまあ、行けない。どなたか、レポート待ってます。
※「ほぼ日刊イトイ新聞/水野仁輔ってどんなひと?」を載せます。興味のある方はどうぞ↓
http://www.1101.com/j_mizuno/
2017.5.22(mon )
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sabooone · 7 years
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誘拐、そしてバレッタの乙女/07/2011
ががう、と獅子が吼えるとキャアと歓声があがる。 猿が皿を回したり、馬が台に飛び乗ったりと、花やしきは世相に反して今日も大盛況だった。
「香織!香織!!」
そんな中、一人の婦人が髪を振り乱して娘の名前を叫んでいる。 大勢の人をかき分けて、少女の興味を引きそうな遊具や食べ物屋を次々に回る。 マリオネットがかたかたと動くと幼い子供たちは嬉しそうにはしゃぎ声をあげる。 甘いお菓子をねだる子供の声、それを諌める大人たちの声、笑い声、呼びこみの声。 それらが、渦のようにうねっている。 婦人の金切り声も、そのうねりに飲み込まれてしまう。
ふ、と婦人の目の端に赤い着物に黒髪の少女の背中がうつる。 はっとして、その赤い着物を追いかける。
「香織!!」
叫ぶように少女の手を引く。 痛い!と振り返った少女は、婦人の娘ではなかった。 すぐさま両親らしき人が少女と婦人の間に割って入る。 最近続発している誘拐事件のことがあるので不信に思ったのだろう。 婦人はすみません、すみませんと謝りながら逃げるようにその場を離れた。
(ああ、香織。香織――)
婦人はバレッタを握りしめた。 先程まで娘がつけていたものだ。 宝石が花を模り、パールの房が垂れ下がる豪奢なそれは乱暴に踏みつけられたのか壊れてしまい装飾の宝石やパールは散っていた。 さらら、さらら。 わずかに、二三房残ったパールの束が揺れて音がなる。 その真っ白なパールの粒に、くっきりと赤黒い血が付いていた。
号外! 令嬢誘拐事件。 三人目ノ犠牲者、遺体デ発見セリ。
「まあ……」
百合子は新聞の見出しをみて思わず息を飲んだ。 最近世間を賑やかせている令嬢誘拐事件の記事は新聞の一面を使って誘拐事件の経緯や概要を扱っていた。 試し刷りの粗い印刷で記事の内容は読みにくかったものの、写真の中の在りし日の少女たちはあどけない顔立ちをしていた。 いずれも年齢は十五、六ごろの慎ましそうなおとなしそうな令嬢ばかりを狙った誘拐事件。 少し前まで――没落しかけていたとはいえ――同じような立場だった百合子は胸を痛めずにはいられない。
編集者として働き始めた百合子はまだ雑用だが女だてらに軍手をはめて真っ黒になりながらインキを敷く作業をしていた。 これでようやくその日食べられるくらいの給金になるのだから、働くということは大変な事だ。 爵位を返上し借財を片付けた後、鏡子婦人に小さな仮住まいを用意してもらったものの、兄は時折ふらりとどこかへ出かけて帰ってこないし、副業はおろか本業の方も手が回らないしで百合子は大忙しだった。
働き始めは編集長の怒鳴り声や、他の社員の早口な喋り方に、大きく戸惑ったものだが今はすっかり慣れてしまった。 平民のような言葉遣いもいくつか覚えている。 時々披露すると兄は眉根を寄せてさめざめと泣くのだが、百合子は今の忙しさがとても心地良かった。
「あっ!」
ぼうっと色々なことに思いを馳せていたら、まとめていた髪がはらりとほどけその一房が輪転機に巻き込まれてしまう。
「いけない!ごめんなさい!機械止めてください!!」
百合子の声に隣で作業していた同僚が慌てて機械を止める。 ぐるぐると巻き込まれてインキだらけになってしまったが、どうにかぎりぎりで顔を巻き込まれずに済んだ。
「ああ、機械止めちゃ号外の売り出しに間に合わないよ!!」 「ええ、すぐ切りますから!」
そう言うと、前掛けのポケットから作業用鋏を取り出す。 逡巡したのは一瞬で、ジャギンと髪の毛を切ると急いで機械を逆回転させて絡みついた髪の毛を取り払う。
「申し訳御座いません!」
百合子はきつく髪の毛を結び直して、再びインキを敷く作業へ戻った。 兄の顔が頭をちらつく、兄には編集者の仕事だと嘘を付いている。 毎日爪の間まで真っ黒にして帰る妹に、疑りの目を向けるが原稿を書いているのだと言い聞かせていた。
(……これは、何て言い訳しよう……)
少女時代の甘い記憶と決別するような気がして、わずかに涙が視界を潤ませる。 けれど、泣くことは許されないのだ。 泣いてしまえば涙でインキの印刷が滲んでしまうから――。
/-/-/-/-/-/-/
号外はどうにか夕方の売り出しに間に合ったようだった。 百合子は動かしっぱなしの腕も立ちっ放しの足もへとへとになり、よろよろと出版社を後にした。 あと何日すれば編集者として働けるのだろう……。 一生このままインキを敷く仕事をするのだろうか、辛い仕事だがそうなったらいつかは慣れる日がくるのだろうか。 夕刻の朱に染まる空を見ながら、ふらふらと歩く。
(明日はやっとの休みだわ、何をしようかしら)
色々考えてみる。 洗濯物が溜まっていたかしら、破れた服の裾を繕わなくては、お部屋の掃除もしなくちゃ……。 そうなると、休みなどあってないようなものだ。 とりあえず、お布団で眠りたい。そんな事を考えながら歩いていると――。
「くく、だいぶお疲れのようだな。お姫さん」
その声を聞くと、急に気力のようなものが体の芯から湧いてくる。 くるりと振り返ると、長身の男が立って腕を組みにやにやと笑っていた。
「いいえ、ちっとも?斯波さんもお暇なのね、会社のほうは大丈夫?」 「?! おい、百合子さん。その髪はどうしたんだ!」 「べ、別にどうもしませんわ。ちょっとヘマをして機械に巻き込まれたから切りましたの」 「き、切りましたの、ってあなた――。ああ、もう我慢ならん! 最初はお姫さんの戯れだと思っていましたが、今日という今日は言わせていただく! 無謀なことはやめて、さっさと俺と結婚してくれ!」 「嫌ですこのスットコドッコイ!おととい来なさい!」 「お姫さん!ああ、もう、ああ――もう!どこでそんな言葉を!」 「ごきげんよう!」
ああ、すっきりした。 不思議なことに、百合子は斯波の前では気力を振り絞って立つことができる。 なぜか前を向いて歩き続けようという気持ちが湧いてくるのだった。 それは、斯波が百合子には無理だと決めつけていつ諦めるかという気持ちが透けて見えるせいだろうか。 口では習いたて覚えたての文句を吐きつつも、 働くということがお金を稼ぐということがこんなにも大変なことなのかと心のなかでは斯波を敬服していた。
「分かった、分かりました。――では、せめてその御髪をなんとかさせてくれ! 折角の美しい髪がもったいない!」 「……近所の髪結いの方にお願いしようと思ったのですけど、 ちょうどここでざくざくと切ってもらえばと」 「ざくざく?!俺の知り合いに腕のたつ髪結いがいる! 変なところで切られるとザンギリにされてしまうぞ!」 「でも私、お金が、その……あまり持っていなくて」 「そんなのあなたが気にする必要はありませんよ!」 「いけないわ。斯波さんにばかり頼ってしまうと」
百合子は自分の溜めた給金でなんとかやりくりできる範囲だったので頑なに斯波を拒む。 往来で押し問答を繰り広げる奇妙な二人組に、ちらちらと好奇の目が向けられるがどちらも感情が高ぶると周りなどお構いなしだった。 斯波は我慢ならないとばかりに百合子の腕をつかみ揺さぶる。
「よし、百合子さん。あなたに金儲けの秘訣を教えてやる! いいか?人は利用しろ!あなたは俺を利用してもいいんだ!」 「り、利用だなんて……」 「あなたはまだ鏡子婦人に借財があるんだろう? 一銭だって節約しなけりゃいけないわけだ」 「それはそうですけど、でも――」 「でもじゃあない。こんなちんたらとやっていると金を返しきる頃にはヨボヨボの老いぼれになってしまうぞ? ほら、にっこり笑って愛想して”お願いします”というんだ。 女の愛嬌も武器のひとつですからねえ、生まれ持った武器は活用しないと」 「……お願い、します――」
女の武器などと!と思いはしたものの、斯波の言う事も一理あると思い直し引きつった笑みを浮かべて斯波に頭をさげた。 その顔を見て斯波はぐっと吹き出すのを堪えるように言った。
「これは――まだまだ練習が必要だな」
/-/-/-/-/-/-/
「ゆ、百合子?どうしたんだい、その――髪は……」
瑞人は百合子が帰宅して開口一番にそう言った。
「どうかしら?モダンでしょう?ダッチ・ボッブというのですって ――お兄様はこの髪型の百合子はお嫌い?」 「いや、僕がどんな百合子であろうと嫌いなわけないだろう。 でも、しかし――お前の髪が――」
だいたい予想通りの反応だった。 壊れた蓄音機のように髪が、髪がと繰り返す。 斯波に連れられたときはどんな髪型になるのかと不安になったが、 この髪ならばまた機械に髪をとられる心配もない。 それに、まとめる手間や手入れが省けてより経済的だと思った。
「あ、そうだわお兄様。 明日の朝一番に洗濯してしまいますから長襦袢やおふんどしなどの汚れ物を出してくださいませね」 「い、いや、自分で洗うよ……」 「あらそう?洗濯板でごしごしと洗うのって結構力いりましてよ?」 「大丈夫だよ、僕だって洗濯ぐらいはできるだろう。 それよりも、ほら――お前のために夕食を作っておいたんだ。 せかせかせずに、座ってお食べよ」 「そうね、ええ。いただきます」
百合子が仕事で遅くなるときは大抵瑞人が夕食をつくっている。 始めの頃はぐちゃぐちゃのご飯や、具のない味噌汁など惨憺たる晩餐だったが、 最近はどうやら手馴れてきたのか以前ほどひど��はない。
「……どうだい?」 「まあ、お兄様。この御飯の炊き具合素晴らしくてよ!」 「そうかい?だいたいコツをつかめてきたよ、赤子泣いても蓋とるな♪という歌があってね……」
うんうんと瑞人の講釈を聞きながら一口味噌汁を飲む。
「げほっ!!」 「百合子?!大丈夫かい?急いで食べなくても良いんだよ?」 「お、お兄様。お味噌汁が辛すぎです……」 「あれ、本当に?――おかしいな、塩辛いほうが疲れがとれると隣の奥さんが教えてくれたんだけど」 「限度というものがあります」
食事だけでなく買い物をするのも瑞人が担当している。 客といえば婦人や下男ばかりの市場で、着流しの男がぶらりと風呂敷を持って市場をうろついているだけでも目立つのだが、瑞人のような風貌では尚更だった。
「もし、そこのご婦人――」
と、声をかけられれば商売人はまず客を二度見するだろう。 しかも、困った顔をした瑞人は無駄に色気があるのだ。その色気にあてられながら「は、はい、なんでしょう」と聞くと、その儚い美貌の男はゆらりと立ち消えてしまいそうな霞の微笑みを浮かべてこう問う。
「持ち金がこればかりしかないのですが、妹に精のつく食べ物をつくってやりたいのです……」
帰る頃には風呂敷いっぱいに野菜や米や味噌が包まれていた。 それだけではなく、やたらと近所の婦人や奥様方が「これ、作りすぎちゃって……」や「田舎の母が毎年送りすぎるので……」などと、次々に料理や酒や米などをもってくる。
「親切な方ばかりだね」
のほほんとばかりに瑞人が言うが、百合子は何だか騙しているようで申し訳なくなった。 そしてお裾分けしてもらった料理の皿には、花を入れて返している。 本来ならばいなり寿司なりちらし寿司なり入れて返すのだろうが、そのお金が捻出できないためだ。 元々華道の家元だった瑞人だからこその思いつきなのだろうが――。
「お兄様、くれぐれも気をつけてくださいね」 「うん、次はもう少し控えめに作ってみるよ」
そういう意味ではないんだけど――と思いながら、隣の奥さんから頂いた煮物をつついた。
夕食を食べ終わり、お腹が膨れてくると猛烈な眠気が百合子を襲う。 百合子が働き始めてはかいがいしく家事を手伝い家に居つくようになった瑞人の顔を見て安心したのもあるかもしれない。
「おや、眠そうだね。ここを片付けて布団を敷いてあげるから少しお待ちよ」 「はい。――いえ、私繕い物が……」 「いいから、いいから」
百合子が立とうと腰をあげるが、上手く力が入らない。 ずっと気を張っていて気がつかなかったが、体中の力が抜けていた。
「あら?どうしたのかしら、膝に力が入らないわ」 「ああ、そのまま座っておいで」
瑞人は手慣れたように食器を桶にとり、近くの井戸で汲み置きしていた水につける。 折りたたみ式の台を濡れた手ぬぐい拭き、さっと箒で畳を掃くとそこに布団を敷いた。 帯を解こうと百合子が苦戦しているのを見て、これまた慣れた手付きで手伝う。 寝間着になった百合子をひょいと抱くと敷いた布団へ寝かせた。 意外に力持ちなのだな、と百合子はうつらうつらとしながら思う。
「お兄様は、お休みにならないの?」 「そうだね、僕はまだやることがあるから――」 「そう、なの――ね――」
最後はほとんどささやきのように小さく��れた声で瑞人にお休みなさいと言った。 身体が泥のように眠る傍らで、かちゃかちゃと食器を片付ける音、そしてからからと引き戸が開いて瑞人が家を出て行く音が聞こえた。 眠りの奥底の方で、百合子はああ、またどこかへ出かけてしまうのか――と寂しく思った。 けれど、そんな不安を蕩かすように睡魔がゆるゆると百合子を襲う。
この僅かな期間にあった様々な記憶が入り乱れ、駆け足で夢のようにぐるぐるとめぐる。 新しい夜会服、暴漢たちの足音、背の高い傲慢な男、桔梗の香り、父の青い顔、母の悲鳴――。 その夢の最後には何度も何度も同じ男が現れる。 そして男は、悲しい瞳で真実を告げて去っていく。
暗い闇の方へ向かって歩き出すその男を、百合子は必死に走って追いかける。
『その先へ行ってはダメ!私はあなたを――』
けれど、疲れきった百合子の足は上手く回らず、その場に転ぶ。 だから、いつも夢はそこでおしまいだ。夢の続きを見ることはない。
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ぽっかりと目覚める。 むくりと起き上がりぐぐぐと背伸びした。 外はようやく白み始めたばかりで、鳥が何羽か鳴く声が聞こえた。 身体が軽い。すっかりと疲労はどこかへ行ってしまったようだった。 ふと横を見ると瑞人が眠っていた。 ゆめうつつで彼が出かける音を聞いたような気がするが、気のせいだったのだろうか。 いや、金策をしに出かけていたらしい。枕元に金子の入った袋が置かれていた。 百合子は瑞人を起こさないように気を使い、そろりと布団から忍び出る。 出版社の印刷方に回されてからというもの早起きが癖になってしまったようだ。
寝間着を着替え、新しく井戸の水を汲みに出る。 ついでに顔と手と足を洗い、冷たい水をごくごくと飲む。
「ああ、美味しい」 「おや、百合子さん?今日も早いね」 「おはようございます、高遠さんもお早いのね」 「いやいや、僕はね、ただ夜更かしをしていただけなんですよ」
井戸端会議という言葉があるように、井戸へ行くと必ず誰かに会う。 そこでは様々な噂話が飛び交い、今年の野菜の出来具合を聞いたり、流行のファッションを知ったりする。 そうして近所の者と顔なじみになった百合子は、朝早くにはこの高遠という男とよく会った。 すぐ近くに住んでいて、分厚い眼鏡にぼさぼさの髪の毛見た目を気にしない風体により周囲の者からは奇人変人と言われていたが百合子は特に気にすることもなく普通に接していた。 高遠はタバコの匂いをぷうんとさせながら何やら黒く汚れた手と袖を井戸の水で洗った、そして今更気がついたというように百合子の髪を見る。
「あれ?髪を切ったんですか?」 「ええ、気分を変えましたの」
そんな他愛ない世間話をして別れ、水を入れた桶を運んでいると何やら家の前が騒がしい。 嫌な予感がして、小走りにかけるとその予感は的中した。 家の前に一台の自動車が停まっている。此の様な場所に自動車が停まっているのは珍しい光景だ。
「あなたは相変わらずのようですね、義兄さん」 「ああ虫唾が走る。何だいその義兄さんというのは、やめてくれよ」 「百合子さんの幸せを考えたら、協力こそすれ邪険にする必要はないと思いますけどねえ」 「幸せねえ、今は今で十分に兄妹二人で幸せに暮らしているよ。 ほら、今夜もこのように二人川の字になって一緒に寝たのだし」 「な、なんっって破廉恥な!」 「しょうがないじゃないか、家が狭いのだから」 「だから――」
ただでさえ狭い家なのに、存在感も態度も背も大きな斯波と瑞人がお互いを牽制しあうように気を荒立てているので余計に狭く思えた。 ふと見ると、台の上に欠けた茶碗が置いている。 あれは確か瑞人が下手を打って落として欠けた茶碗ではなかったか、 それにお茶ではなく水が入っているところをみると瑞人なりに客人に飲み物を出したのだろうが、あれは完全に嫌がらせである。
「あの、二人とも朝から喧嘩するのはやめてください」 「お姫さん!ああ、やっぱりその髪もあなたに似合うな! 俺の見立て通りだ!」
あれやこれやと雑誌の切り抜きを髪結いに渡して、百合子を差し置いてああでもないこうでもないと口出しすれば斯波の見立て通りにもなるだろう。 瑞人は百合子の髪に手を加えたのが斯波だと分かり面白くない顔を一瞬だけした。 百合子の長い髪を気に入っていた瑞人からしたら恨み骨髄といったところか。
「ああ、百合子おかえり。 朝御飯が出来ているよ。そういう事だから、ね、斯波君」 「おっと、そうそう。俺は百合子さんに仕事の依頼に来たんだ。 あっはっは、やあ、すみませんな義兄さん」 「あら?仕事の依頼ですか?」 「そう、仔細は自動車の中ででもお話しする。 なあに、なんなら朝食も一緒に……」 「いいえ、結構ですわ。でも、お仕事なら急ぎますものね。 お兄様、支度しますから朝御飯はおにぎりにしてくださいな。 斯波さん、自動車が往来の邪魔になってよ、もっと端に寄せてください」 「うん、分かったよ。お前の言うとおりにしようね」 「おっと、これはいかん――では支度が終わるまで自動車で待つとするか」
百合子は二人をとりあえず捌くと、箪笥の中から手帳と万年筆を取り出した。 独自に探偵の理をまとめた手帳だった。 そして出版社でもらった新聞の切り抜きをまとめたものも取り出す。 それらを鞄に入れ、動きやすい洋装に着替えた。 以前の邸から唯一母の形見として持って帰ることのできた手鏡でささっと髪型を整える。 最後に瑞人のお弁当を鞄に詰めると、編み上げたブーツを履く。
「それではお兄様行って参ります」 「ああ、――くれぐれも気をつけて」
心配そうに声をかける瑞人ににこりと微笑み、身を翻す。 そして、斯波の自動車に乗り込んだ。
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<<事件概要>>
令嬢誘拐事件
発生日   4月17日 被害者   田中千鶴子 年齢    十五歳 発見時   4月19日 場所    山林 死因    絞殺(首をつった状態で発見) 追記    両親は卸問屋を営む。六人兄妹の次女。 要求    17日夕方に身代金要求の手紙。三千七百円の身代金。 受け取りに失敗。以後連絡なし。 特記    最後の目撃情報から女学校の帰宅途中に誘拐されたと思われる。
発生日   4月19日 被害者   山本容子 年齢    十五歳 発見時   4月20日 場所    公園近くの雑木林 死因    殴打されたような痕あり、死因は頸部圧迫による絞殺 追記    両親は酒屋を営む。二人姉妹の長女。 要求    19日夕方に身代金要求の手紙。身代金は三千七百円。 封筒には本人のものと思われる指が入っていた。 受け取り場所に犯人が現れず受け取りに失敗。 特記    最後に目撃されたのは稽古事の舞踊へ通う姿。 教室へ現れなかったため、途中に誘拐されたと思われる。
発生日   4月20日 被害者   新田香代子 年齢    十六歳 発見時   4月21日 場所    川べり 死因    拷問のような痕ああるも直接の死因は絞殺。後に首を切り落とされる。 追記    両親は高利貸しを営む。一人娘。 要求    身代金要求の手紙がくる。三千七百円用意するも以降に連絡なし。 特記    活動写真を見に行くとでかけそのまま帰らず。
発生日   4月22日 被害者   青田香織 年齢    六歳 追記    両親は紡績、貿易商を営む。二人姉妹。 特記    22日昼頃に母親と花やしきへ出かけ、 母親が十数分目を離した時には娘は消えていた。 情報    黒ずくめの格好をした5人組が少女を連れて歩く姿が目撃された。
<<事件概要おわり>>
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「俺の知り合いの貿易商のお嬢さんが行方不明になったんだ。 ほら、今、巷を賑わせているだろ?」 「ええ、令嬢誘拐事件ね」 「そうだ。取引上よく知っている相手でな。 昨日お姫さんと会った後会う用事があったんだが会ってみると あまりに顔色が悪い。 そして急に用事を切り上げて帰ろうとするので問いただしたら娘が帰ってこないというんだ。 ほうぼうに人の手をやって探させているようなんだが、まだ見つからないらしい。 まあ、まだ誘拐と決まったわけでもないんだがな」 「身代金の要求があるとすれば、今日のうちね」
この事件ならば、よく知っている。 百合子は新聞の切り抜きを取り出した。何かの役に立つやもと忙しい合間をぬって色々とまとめていたのが役に立った。 何しろ出版社は色々な人が出入りする。それこそ、記者やら作家やら――。 だから、休憩中の記者からぽろりと話を聞いてしまうことや、伝書鳩の伝聞が漏れ聞こえることはよくあった。 警察から緘口令が出た情報やとても新聞には書けない遺体の状況などもある。 それを作業しながら聞き及んでいたため、下手な記者よりも情報は詳しい。
しばらくして、自動車が停まったのは大きな邸の正門だった。 運転手が門番に二三言喋ると、ぎぎぎと金属音をたてて邸の門が開く。
「まあ、大きな門」 「青田氏は四八歳、青田一族は元々このあたりの庄屋で明治から紡績を始めた。 それが、時代と合致して急成長、青田氏の代から貿易商を始めたそうだ」 「でも、警察はもう呼んでいるのでしょう?私が必要かしら?」 「まあ、実を言うと婦人が相当参っているらしい。 それに婦人とお姫さんの奥方様は元々ご友人だったそうだ」 「そうでしたの。――奥様はさぞお辛いでしょうね……」
推理をしてトリックを解き、犯人を追い詰めることばかりが探偵の仕事ではない。 四六時中警察に護衛され、親族らからは責め立てられ、また自分自身の行動を悔いて泣いているのだろう。
「やれやれ、広い庭だったな。やっと着いたようだ」
長い並木道を自動車で走り抜けて十数分、青田家の邸が現れた。 広大な庭園に噴水、洋風の邸。 百合子が驚きながら建物を見上げる。 すると、邸の窓から一人の少女がこちらを見ていた。 服装や年齢から考えると誘拐された香織の姉の清子だろう。 落ち着いた目付きをしている、目が合い百合子が目礼をするとさっとレースのカーテンを閉めてすうっと部屋の奥へ消えた。
「これは斯波さまお待ちしておりました。――そちらは?」 「俺の知り合いで探偵をしている野宮百合子嬢だ」 「初めまして、野宮百合子と申します。 探偵と言っても状況によりけりで捜査に関わるつもりは御座いませんわ。 ただ、誘拐事件は数回見ておりますので、奥様のお心をお支え出来ればと思いましたの」
明らかに奇異の目を向けられるも、慣れたように付け加えると執事頭はなるほど合点がいったと頷いた。 それと同時に、ふと斯波に不信感を持った。 執事頭の後について廊下を歩きながら、そっと会話する。
「斯波さん、奥様から依頼があったのではなくて?」 「……依頼人は俺ですよ」
どういう意味か、と聞く前に大きな客間に案内された。 そこには警察の人間が数名と、恰幅のよい男性が座っていた。 電話が引かれ、それを囲むよう輪になっている。 その場に不釣合いな二人が現れて、警察の関係者は不信の目を向けて、その内の一人がつかつかと二人に歩み寄った。 黒い制服に身を包み、脇にイギリス式デザインの帽子はさんでいる。 三白眼の黒い瞳がじろりと百合子を見た後に斯波を見上げて鼻で笑う。
「ハッ、あなたが探偵か?」 「いいや、俺はただの付き添いだ。探偵はこちら――」 「野宮百合子です」 「――あなた、が?」
あからさまに侮蔑の濃い声音でそう言うとぱっぱと犬を追い払うように手を振った。
「お遊びじゃないんだ、用がないなら帰ってもらいたい」 「もちろん、お遊びのつもりはないです。 捜査の邪魔はしませんわ。奥様のお側につくだけです」 「聴取ならもうすんでいる」 「聴取するつもりもないわ、ただお側についてお心を和らげてもらいたいだけです」 「ふん、なんだ探偵などというから大仰なと思ったが、それではただの女中ではないか」 「はい、私は目立つ制服でもございませんし、何より身軽なので存分に奥様のお使いをさせていただきます」
警察の制服を着た人間が邸をうろうろしていれば犯人に気づかれるでしょう?という意味を含めてほほえむ。 一見探偵に見えない百合子の容姿は、確かにその点有利といえば有利かもしれない。 そもそも、ほとんど実績のない百合子を怪しむのは当然の事だった。 斯波の紹介とはいえ、令嬢誘拐事件という大きな依頼が来たことに一番驚いたのは百合子自身だったのだ。 不安はあるが、自分に出来る限りの事をなんでもしようと思う。 百合子は深々とお辞儀をし���女中の案内で部屋を出る。 途端に斯波がやれやれと深く息を付いた。
「――どうだ。いい加減諦める気になりましたかね」 「やはり、私を諦めさせようと思って連れてきたのね」 「実際手も足も出ないじゃないか、これでよく分かったでしょう」 「私は私が出来ることをやるまでよ」 「全く、どこまでも頑固だな、あなたは――」
呆れたように百合子を見つめた。 その真っ直ぐな視線、初めて出会ったときはその光の強さに怖じ気づいた。 けれど、今の百合子はその目を落ち着いて見返すことができる。
「……はあ、分かった。分かりましたよ。 お姫さんの頑固さは筋金入りだからな」
そう言うとわざとらしくあきらめのため息をついた。 依頼人が斯波なら彼の意向ひとつでこの仕事はなかった事にできるはずだ。 百合子はひとまずほっと胸をなでおろした。
「ただし、俺を助手にすること!それならいいだろう?」 「斯波さんが、助手?」 「ああ、そうだ」 「私の?」 「そう、お姫さんの助手だ」 「ええと、何を手伝ってくださるの?」 「それはまあ……ならず者の手からお姫さんを守ったり、銃弾の盾になったりだな――」 「まあ……。でも、お給金は少ししか出ないわよ?」 「いらん、と言ったら駄々をこねるんだろうな」 「おかしな話、依頼人が助手だなんて」 「今回だけじゃない、今後何かある時は俺を助手で使ってもらいたい」 「……本当は頼ってはいけないと思っていますけど」 「けど?」 「危険手当はつかなくてよ?」 「結構!」 「斯波さん、……よろしくお願いしますね」
そう言うと花がほころぶような笑みを斯波にむける。 その可憐な笑顔に斯波はぎゅんと心臓が縮まり、どくんどくんと高鳴る音が頭に響く。 今にも百合子を抱きしめて接吻したい、いやそれ以上のことも!
「百合子さ――!」 「ん、今のは子供っぽかったかしら? 愛想笑いもなかなか加減が難しいわね……」
びきりと斯波は心臓の止まる音が聞こえた。
/-/-/-/-/-/-/
それから婦人の部屋へ案内され、百合子は疲れきった様子の婦人の話し相手をした。 まずは自己紹介をし、母と婦人が友人関係にあったことの話を少しする。 最初は警戒していたようだが、百合子と話をするうちに少しずつうちとけていく。 今は平民へと身をやつしてしまった百合子だが、生まれながら持った気品や教養のある言葉、頭の回転の早さは普通の令嬢とは少し違っていた。 何より、多くの経験は百合子を少しずつだが強い人間にしていた。
「ああ、百合子さんありがとう。少しだけど落ち着いたわ」 「そんな何のお力��もなれませんわ――こんな時だからこそお気をしっかり持ってくださいませ」 「ええ、私がしっかりしなくてはね――私が……」
そう言いながらも婦人は湧き出る泉のように、瞳に涙を浮かべる。 その時突然電話のベルがけたたましい音を立てた。 邸内に緊張がはしる。 ぎゅっと痛いほどに婦人は百合子の手を握った。 冷たくなった指がぶるぶると震えている、浅く呼吸を繰り返す婦人を落ち着かせるようにその手を握り返した。
ほんの数分ほどの沈黙の後、がやがやと部屋の外で人の話し声が聞こえた。 どうなったんだろうと、斯波が外の様子を見に行こうと立ちあがるのと同時にさきほどの警察官が扉を開ける。
「野宮君――君に相談がある」
誘拐犯の犯人は、身代金の金額と受け取り場所を指定する電話をかけてきた。 身代金は五千円、場所は東京駅の構内、そして受け渡し人には青田家の人間を指名したのだ。 婦人、もしくは清子嬢を。
「つまり、私が清子様のかわりに身代金を届ければいいわけですね?」 「ああ」 「俺は断固反対だ!」 「やります」 「お姫さん!」
何を言っているのだと悲鳴のような声をあげる。 確かに年齢も同じころだし、背格好や雰囲気も似ている。 かもじを使って同じ髪型にし、同じ着物を着ればほとんど見分けはつかないはずだ。
「すぐに支度しますわ」 「ありがたい」
女中の部屋を借りて着物を着る。女中たちが手伝ってくれるが着物を着るのは手慣れたものだ。 あっという間に着替え終わると、用意されたかもじをつけて髪留めをする。 とんとんと扉がノックされたので、すぐさまどうぞと声をかけた。
「契約破棄だ!依頼を取り下げる!」 「私が行かなければ誰が行くというの?奥様?それとも清子様?」 「俺は――俺はあなたが危険な目に会うのが嫌なんだ! どうして、あなたは普通の令嬢のようにじっとしてくれないんだ! あなたには誰よりも幸せになってほしい、それだけなのに。 どうして自分から危険な事に首をつっこもうとするんだ!!」 「斯波さん……」
爵位を返上したというのに、斯波は相変わらず百合子への求婚を続けた。 どうして、どうして。と斯波は繰り返すが、百合子の方こそどうして彼がこれほどまでに自分に求婚し続けるのかわからない。
「私、自分の幸せくらい自分でつかめるわ」 「俺は、俺があなたを幸せにしたいんだ! あなたの幸せが、俺の――幸せなんだ! それなのに、あなたときたら手がぼろぼろになるまで働いて、髪の毛を切って、 あんな小さな家で貧しい物を食べて、今だってそうだ!!」 「……。 私、あなたの気持ちが――ようやく少しだけわかったわ」
どうして百合子に固執するのかは、分からないけれど。
「斯波さん、あなたは私の助手でしょう? ならず者から私を守ってくださる?雨のように降る銃弾の盾になってくださるのよね?」 「……もちろん」 「ああ、よかった。実は私怖くて少しだけ震えていたの。 でも、斯波さんが私を守ってくれると信じているから、私大丈夫よ」 「あなたは……卑怯な言い方をするんだな」
斯波は百合子を幸せにしたい、という。 百合子もたった一人の男を、幸せにしたいと思った。
「私たち、何だかいつも一方通行ね……」
とんでもないじゃじゃ馬だと斯波は思う。 もっと簡単で阿呆な令嬢だったら、どれだけ楽だったことか。 けれど、そんな百合子は百合子ではない。 斯波は紛れもなく、この頑固でじゃじゃ馬で卑怯な百合子に惹かれているのだ。 商売相手だって、ここまで斯波を困らせたりするものか。 この姫さまだからこそ、斯波をここまで追い詰めることができるのだ。
「ああ、もう、お姫さんに付き合っていると心臓がいくつあっても足りん」 「それじゃあ……」 「あなたは、俺が守る。絶対に」
/-/-/-/-/-/-/
しかし、斯波の決意も虚しく。 あまりにも呆気無く、身代金の受け渡しは滞り無く終わった。 百合子が東京駅の指定された構内で待っていると、 帽子を目深にかぶった男が指示通りの方法で現金入りの鞄を持っていった。 斯波はそこから少し離れたところで、その様子を見守っていた。 青田氏は、現金の受け渡しが上手くいって香織嬢さえ戻れば良いと、 数名の警察官のほかには配備しなかったのだ。 犯人逮捕に躍起になっている警察としては反対意見も出たようだが、何よりこれ以上の犠牲者を出すのも忍びないと最終的には青田氏の判断に任せた。
「本当にお嬢様が帰ってくるといいけど――」 「まあ、身代金は渡したんだ。上手くいくでしょう」 「ええ――」
邸に戻る。 婦人は疲れて休んでいるとのことで、女中に香織嬢の部屋を見せてもらうことになった。 長い廊下を歩く。
「えっと、ここでしたかしら?」 「いえ、そこは空室です。香織お嬢様のお部屋はこちらです」
女中の後に付き、隣の部屋に入る。 何か黴びたような臭いが一瞬鼻についた。 部屋は広く、きちんと片付いていた。 百合子は窓際に近づく。分厚い赤いカーテンを押し広げる。 そこから見える景色は、庭園に噴水そして玄関の入り口あたりだった。 ちょうど青田邸についたときに清子嬢を見たのはこの部屋だったようだ。
「でも、街路樹があってここからでは顔が見えないわ」
どこか簡素な部屋だった。絨毯が敷かれ、天蓋付きの寝台に洋風の箪笥がいくつも並ぶ。 壁にはわざわざ机用の電灯の照明がつけられている。
「何だか寂しい部屋ね――」
この部屋には人形も服も靴も雑誌も――おおよそ少女が喜ぶようなきらきらと光るものが何も無い。 必要最低限の家具しか揃っていないように思えた。 寝台の枕元を手でそっと押す。普通、このくらいの歳の少女ならお人形のひとつやふたつ枕元に飾っていても不思議ではないはずだが。
「あら?斯波さん、そこの電灯を見てくださいます?」
壁につけられた高い位置の照明を軽々と調べる。
「変だな、線が入っていないぞ」 「あなたたち、何をしているの?」
鋭い声に二人は振り返った。 そこに立っていたのは清子だった。
「あなた――そのお着物は私のじゃあないの!」
ものすごい剣幕で百合子を怒鳴りつける。 今後まだ何かの要求があった場合に備えて着物を着たままだったのだ。
「返しなさい!返して!!私のお着物よ!!!」 「清子さん!」
返してと言われてもこの場で裸になるわけにもいかないし――。 斯波もならず者からは百合子を守ると言ったが、相手は令嬢だ。 二人が困り果てていると、女中が間に割って入る。
「清子様!奥様からお部屋を出ないようにとのお言いつけでございましょう?!」 「いやっ!」 「す、すみません。すぐに着替えます!!」
百合子は慌てて香織の部屋を出た。 小走りで女中の部屋に戻り、そそくさと着物を着替えた。 あの様子で、婦人は何も清子に伝えていないのだと分かった。
それからしばらくして、夕方ごろに再び電話が鳴る。 全員が緊張し、このときは百合子と斯波もそろって固唾を飲んで見守った。
『◯×町の空き家へ行け』
それだけ告げると電話はすぐに切れた。 警察がすぐに動く。 指定された空き家で香織嬢は柔らかな毛布にくるまって見つかった。 衣服に乱れはなく、まるで眠っているかのように安らかな死に顔だった。 後頭部に何度も殴打した痕があり、最初の一撃がほとんど致命傷だったようだ。
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気絶しそうに顔面蒼白になった青田氏に比べ、婦人は覚悟は出来ていたとばかりに強く踏ん張って立っていた。 (私がしっかりしなくては――) 繰り返し言う婦人の姿を思い出す。 百合子は何と声をかけて良いか分からずにいると、婦人は泣きはらした目で百合子に微笑みかけた。
「あなたは、十分にやってくれたわ。百合子さん」 「奥様……」 「本当なら、私が行かなければならなかったのに――」 「そんな、何かのお役に立ちたくて――そう言えば清子お嬢様は大丈夫なのですか?」
百合子は部屋にいるように言いつけられているという清子のことを思い出して聞く。 妹が誘拐され遺体で見つかったのだ、さぞかし衝撃をうけていることだろう。
「ええ、あの子もきっとショックを受けているわ」
清子の話題を出すとこらえきれずに涙をはらはらと流した。 いけないわ、と婦人はハンカチを取り出す。 そこには香織のバレッタがくるまれていた。
「香織お嬢様のバレッタですわね」 「ええ、――いえ、本当は清子のなんだけど、あの子がどうしてもと欲しがったの」 「お手元に戻ってきてよかったですわ、宝石は意思を持つといいますもの」 「そう、そうね――」
婦人は急に真面目な顔になって頷いた。
「そのバレッタ――」
血が付いている。 花やしきで香織が行方が分からなくなったときに拾ったと言っていたが、 なぜ血がついているのだろうか――。 香織は最初の一撃で致命傷になるほどの傷を負った。 ではその時、香織はそのバレッタをつけていたのだ。
「お姫さん、自動車の準備が出来た。後は警察にまかせよう」 「……ええ、でも」 「いいのよ、百合子さん。ありがとう――本当に」
婦人が百合子に微笑む。 どこか、苦しげなその表情。 百合子は何かをいいかけるが、ぐっと耐えて婦人に一礼した。
「全く、後味の悪い」
百合子はもう一度、青田の大きな邸を見上げた。 自動車のエンジンがかかり、ぶるんと音を立てて動き出す。
ゆっくりと車窓の景色が変わる。
最後にもう一度、香織の部屋の窓を見た。 レースのカーテンがひらひらと揺れている、今はもうそこには誰もいない。 香織も――清子も……。 次第に景色は街路樹に移り変わっていく。
(街路樹……)
その言葉をきっかけに、さまざまな鍵がかちりかちりと音をたてて思考の錠前を開いて行く。 前の3件とはあまりに手口の違う今度の誘拐事件。
ああ、全て明らかになった。 ――それなのに百合子の心はひとつも晴れなかった。
「斯波さん。――私、今回の事件の犯人が分かってしまったの」 「……は?」 「今、このお邸を離れてしまえばきっともう間に合わないわ。 真実を明らかにしたほうが、良いのかしら――」 「何を迷うことがある、あなたは探偵なんだろう?」 「――そう、そうね。すみません、もう一度邸に戻ってくださる?」
百合子は運転手に告げる。 ぐるりと広い庭を一周して、再び自動車は青田家の邸の前に停まった。
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ひ、ふ、み、よ、いつ……。
清子は手の平のパールを数える。 汚らしい赤黒い染みを一心不乱に拭きとり、大事にハンカチの上に並べる。
ひ、ふ、み、よ、いつ……。
全てのパールが整然と一糸の乱れもなく、まっすぐに並んでいる。 ひとつの粒がころりと横にはみ出ると、清子は慌ててそれを列に戻す。 何かが歪んでいる事が許せない、きちんとあるべき場所にないと、不安で仕方がない。
清子の部屋は異常なまでに整理整頓されていた。 沢山の宝石たちは、色によって分別され、きっちりとしまわれている。 寝台のシーツの上の皺の一筋、自分の髪の毛の一本ですら気になって仕方がない。 鏡に着いたひとつの指紋だって、靴の底につく泥だって許せない。 何かあればすぐに女中を呼んで気が済むまで掃除をさせる。
母親は清子の事を綺麗好きとよく言っていたが、女中たちは極度の潔癖症で神経衰弱だと陰口を叩いていた。
ひ、ふ、み、よ、いつ……。
パールを指でつまんで並べていく。 じりりりりとけたたましい音をたてて電話の鳴るのが聞こえた。 ぴ、と小指が先ほど並べたパールを弾く。 清子はいらいらしてそれを元の位置に戻した。
香織が行方不明になってから、ずっと清子は部屋に閉じ込められている。 ――香織。 六歳の妹はそれはそれは両親に愛されていた。 何でも清子の真似をして、あれがほしいこれがほしいと清子の持ち物をねだる。 母は少しくらいかしてやりなさいと清子に言うが、清子は絶対に嫌だった。 全て、自分のものだ。他人に触られるのなど耐えられない。
(ああ、足りない!足りない!足りない!!)
いくら数えて並べてみても、パールが一つ足りないのだ。 そのことが、清子をひどく不安にさせる。 なんども、香織の部屋を調べてみたがそれでも見つからない。 女中に探させるがひとつも見つからない、その様子をみて母は清子を部屋に閉じ込めた。 それでも、清子は抜けだして何度も香織の部屋を探す。
こんなことになったのも、全て香織のせいだ。 あの子が、清子のバレッタがほしいと泣かなければこんな事にはならなかった。 両親は香織のことを天使だ天使だ、と可愛がったが清子は忌々しい悪魔のようにさえ思う。
「姉さま、私にもそのバレッタをつけさせてくださいな」 「……嫌よ」 「お母様!姉さまがいじわるをするのよ!」 「清子さん、少しぐらい貸してあげなさいな」 「嫌」 「清子さん!あなたはお姉さんなんだから、少しくらいは我慢なさい!!」
本当に嫌だったのだが、清子は渋々バレッタを香織に貸した。 嫌味なほど、そのバレッタは香織によく似合った。
「みてみて、お父様も可愛いと褒めてくださったのよ」 「ではもう良いでしょう?早く返して」 「いやっ。もうちょっと付けておくの!」 「私は、少し貸してあげただけよ」 「ふん、何よ。お姉さまのケチ!!私のほうが似合っているのに!」 「似あってなんかないわ!私のバレッタだもの!!」 「いいえ、皆私に似合っていると言ってくれたわ! みんな、私が可愛い、可愛いって!!!」 「返してよ!」
清子はかっとなり、香織のバレッタに手をかけた。 香織がもがき、次の瞬間ピンと音をたててパールが散った。
「あっ!」
ぱらぱらぱらと小雨の降るような音がしてパールが絨毯に飛び散る。
「私のせいじゃないわ!お姉さまが壊したのよ!お姉さまが悪いの!! お母様!お母様!!お姉さまが――」
憎しみのような怒りのようなものがぐらぐらと湧き、それが清子の精神を突き抜ける。 爆発しそうな心臓が、一瞬だけ、わっと騒ぐと清子はドイツ製のくるみ割り人形でもって香織を殴っていた。 泣き喚く声に更にいらだちがつのり、何度も何度もその声が聞こえなくなるまで香織を殴り続けた。
血が壁に絨毯に飛び散り、どくどくと香織の頭から流れでる血の海に清子のバレッタがぷかぷかと浮かぶ。
ひ、ふ、み、よ……。
女中が部屋の中へ入ったときには、清子は散ってしまったパールをひとつひとつ丁寧に拾っているところだった。
/-/-/-/-/-/-/
さて、と。 百合子は青田氏、婦人、警察官、清子そして斯波を集めた部屋で切り出した。
「今回の誘拐事件は、今まで新聞で騒がれていた事件とは全く別の事件です。 まず、誘拐の状況、手口、令嬢の年齢、発見されたときの状況、死因などからそれが分かります」 「と、言うと?」
そう口を挟んだのは警察の男だった。
「前の三件は明らかに同じ犯人による犯行ですわ。 三件とも共通する所があります。 例えば、誘拐されたお嬢さんの年齢、誘拐方法、直接の死因、死体の状況――」
そう言われて斯波はどうだったかな、と考え込む。
「確かに、今回の香織嬢はまだ六歳。他の三人と比べると幼すぎる。 それに前の三人は一人のところを誘拐されているが、今回は婦人と二人のところ。 死因は絞殺、今回は頭部挫傷による失血死。 三人が山林や川べりに打ち捨てられていたのに比べ、空き家で毛布にくるまって見つかった――か」 「他の三人はまるで塵のように辱められて捨てられていたのに、 今回のお嬢様はまるでいたわるように眠るように毛布にくるまれていました」 「それが、何だというんだ――」 「後悔の現れです。少なくとも、お嬢様を空き家に置いた人はとてもお嬢様を愛していた。 だから、死体なのにまるで眠った赤子のように丁寧に扱っていたんです」
寒くないように、寂しくないように、と。
「奥様。花やしきで十数分目を離した――と言いましたよね」 「……ええ」 「新聞でも人々の噂の間でももちきりなのが、この令嬢誘拐事件。 誰もがわが子を誘拐されやしないかと心配しているハズですわ。 そんな中で奥様はお嬢様から目を離された……十数分も」 「それは――それは、あの、お手洗いに……」 「それに、確か目撃情報もあったのですよね?」 「黒ずくめの男が香織嬢らしき少女を連れ去っていたのを見た――というのがあるそうですな」 「ええ、そう。そうですわ」
真昼の花やしき。 親子連れがわいわいと騒がしい――。
「先程申し上げたように今、人々は誘拐だとか人攫いだとかという言葉にはいつも以上に敏感になっていると思うんです。 だからそのようにあからさまに怪しげな格好をした輩などがうろついていたらもっと目撃情報があってもよさそうなものです。 それなのに、目撃情報はたったの一件だけ」 「……」 「そして、香織お嬢様の死因は頭部挫傷による失血死―― 奥様にお嬢様のバレッタを見せていただいたときに、あれ?と思ったんです」
百合子はもう一度、バレッタを見せてほしいと婦人に乞う。
「わずかですが、血がこびりついているでしょう? おそらく香織お嬢様は、誰かに殴られたときにこのバレッタを付けていたんです」 「先ほど百合子さんが言ったとおり、香織嬢の死因は脳挫傷。 すでに血がついているということは、花やしきのどこかで殴り殺された――という事になるな」 「昼日中の花やしきで、黒ずくめの男達が少女を攫い、さらにそのどこかでで殴り殺していた――」
警官の男が眉根を寄せて唸る。 なにもかもちぐはぐに思えた。
「そうなると目撃情報もどこかおかしいな、ということになるんです」 「そうですね、確か少女を連れ歩いているのを見た。と言った。 目撃場所とバレッタを拾ったという場所を鑑みても――この証言は嘘であると分かる。 場所から考えてすでにお嬢様は殴り殺されていた後だと思われる、証言は”抱えられていた”とか”背負われていた”となるべきだ」 「つまり、婦人の証言は嘘だと――?」 「少なくとも、香織お嬢様は花やしきには行っていないと思います」
青田氏が驚いたように婦人を見る。 婦人はぎゅっと手を握りしめてうつむいていた。
「敏子――。なぜ、なぜそんな嘘を――」
喘ぐように言葉を搾り出す。 婦人は意を決したように顔をあげた。
「そう、私……私、嘘を、つきました。 香織は不慮の事故で死んでしまったのです!か、階段から落ちて……。 だから、私、怖くなって、ちょうど今起きている誘拐事件のせいにしてしまおうと――」 「ええ、誘拐事件に見せかけたのはご婦人の知恵でしょう。 けれど頭の傷をみてもあれはどう見ても階段から落ちた怪我ではありませんわ」 「――や、止めて!わ、私が殺したの!娘を……香織を殴り殺したのは私よ!!」 「敏子――」
悲鳴のような泣き声をあげて婦人は崩れ落ちた。 それを支えるように青田氏が抱えた。 すくっと百合子は立つ。
「皆様、香織お嬢様のお部屋に参りましょう」
百合子の言葉にしたがって、全員香織の部屋に着く。 その時、青田氏は呆然と部屋を見渡し――何かを言いかけて口を噤む。
「ここが、香織お嬢様のお部屋ですわよね」 「ええ、そう――です」
こつこつと窓際に寄る。赤いカーテンをさっと開くとそこに夕暮れの庭が広がった。
「このお部屋に入ったときに、つんと黴の臭いがしました。 それに生活感のない家具、寝台、絨毯――」 「この壁照明も線が入っていないようだ」 「女中の方は、隣が空室だと言っていました。 けれど、本当の空室はこちらの方。 お嬢様の本当のお部屋がこそが、隣の空室なのではないでしょうか」 「いいえ、いいえ!」 「奥様、失礼させていただきますわね」
百合子はそのまま隣の部屋へ向かう。 がちゃがちゃとドアノブを回すが、鍵がかかっていて開かない。
「青田さん、鍵を開けてもらえるか?」
斯波がそう言うと、女中に目配せをする。 青田氏もだいたいの事情は飲み込めてきているようだった。
扉が開いて、中の空気が流れる。 鼻をツンとつく刺激臭は、漂白剤か洗剤の香りだった。 ぱちりと照明をつけると、そこには可愛らしい少女の部屋があった。 沢山のぬいぐるみや人形、雑誌や、宝石入れのブリキ缶――。 絨毯は取り払われているが、その布張りの床に赤茶色にのこる血の染みがうっすらと見て取れる。 壁紙にも血しぶきを拭いた痕が点々と残っていた。
百合子はまた窓際に近寄り、白いレースのカーテンを開いた。 隣の部屋は街路樹で目隠しになっていたが、この部屋ならば庭を走る自動車が見える。 そう、邸に来たときに清子をみた窓は、ここだったのだ。
「清子様、このお部屋に入っておられましたよね」 「いいえ、こんな部屋一度も入っていないわ」
つん、と清子はそっぽを向く。
「いろいろな方にお聞きしました。 バレッタは元々は清子様の物だった――と」 「そうよ!それをあの子が盗ったのよ!」
ぎりりと悔しそうに歯ぎしりをする。
「でも、戻ってきたじゃあありませんか」 「いいえ!!壊れている、壊れているでしょう! パールがなくなってしまったもの!!」 「いくつ足りないのですか?」 「ひとつ、あとひとつよ!! あと、たったのひとつなのに……」
百合子は洋装のポケットからハンカチを取り出す。 ゆっくりと清子に歩み寄り、そのハンカチを開いた。
「最後のおひとつです。 発見した香織お嬢様の首もとにありましたわ」 「ああ!私のパール!!」
清子はそれをゆっくりとつまみ上げる。 そして、百合子をみてにこりと微笑んだ。
「ああ、これでもう大丈夫。ようやく最後の一粒が見つかったのよ」
ひ、ふ、み、よ、いつ……。 清子は心のそこ��ら安堵したように、真珠を手のひらで包む。
「これはお父様からいただいた大切なバレッタなの。 香織がバラバラにしてしまったから、私すごくすごく悲しかったのよ」 「――ええ、見つかってようございましたわ」
百合子は本当に心のそこからそう言うと、清子の手を包んで微笑んだ。 清子は今までにないほどの、優しげな微笑みを百合子にむけた。
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「牛鍋――いや、たまには、はま鍋はどうだ?お姫さん」 「いいえ、お兄様が夕ごはんを作って待っているので」 「なんだ、俺の給金で奢ってさし上げようと思ったのに。 ――ああ、そこの店の前で止めてくれ」
斯波は急いで自動車からおりると、紙に包まれたものを抱えていた。 なに、ちょっとした手土産ですよ、と笑う。 青田夫妻は百合子に多額の依頼料を渡そうとした。 あまりの大金におそろしくて返そうとするが、斯波は口止め料も入っているのだから受け取れと促した。 そんなものなくても何もしゃべりはしないと百合子は言ったが、それでも引かなかったので恐ろしいほどの大金も手にしてしまっていた。 斯波が謝礼ですと封筒を差し出す、ずっしりとした重みに百合子は目を剥いた。
「こ、こんなに――?!」 「お姫さんを騙して諦めさせようとした非礼も詫びる意味でもな」 「では、助手の斯波さんに半分――」 「もう半分引いている」 「半分引いて、この金額なの?!」 「青田氏のと俺の両方合わせたら引越し費用ぐらいにはなる」 「引越し費用どころかちょっとした家が建つわ……」 「ああ、それはいい案だ!ぜひ、そうしてもらいたい!」 「……おそろしいわ、こんな大金を家に置いておくなんて……」
泥棒にでもはいられはしないかしら、と不安になる。 しかし、あの家をみれば貧乏は火を見るよりも明らかなので泥棒も家を選ぶから安心か……。 そんなことを考えていると、自動車が家の前に停まった。
「ああ、百合子!おかえり、怪我はないかい?」 「ええ、大丈夫よお兄様」 「僕はもう心配で心配で――」
瑞人が百合子を抱きしめながら、頬を引っ張ってみたり髪をすいてみたり体中を触ってみたりと百合子を検分する。 その様子を忌々しげに斯波が睨んでいると、百合子を胸の中に抱きしめながら瑞人も斯波を睨み返す。
「おや、斯波君。いたの?――もう君の用事はすんだだろう?さっさとお帰りよ」 「お、お兄様。斯波さんもお兄様のご飯を食べたいとおっしゃってるの」 「ふうん、僕の料理をねえ――そうそう、今日は牛鍋だよ。 ああ、残念だけど斯波君の分まで材料はないからね」 「やあ、奇遇ですな義兄さん。ちょうどここに上物の牛肉がありましてね」 「だから、その義兄さんというのは……」 「ま、まあまあお二人とも、ね?三人で食べましょうよ」 「この男の箸がつついた鍋など、僕は食べられないね」 「そうですか、ではお姫さん。俺と二人で鍋をつつきあおうじゃないか」
斯波がぱちりと片目をつむってみせると、瑞人の眉間にしわが寄る。
「本当に懲りない男だね、君は」 「妹離れできない義兄さんに言われたくないですな」
二人揃って、ははは、と笑うと再び鋭い目で睨み合う。 (喧嘩するほど仲がいいとは、こういうことを言うのね――)
その後3人は狭い家の中で一つの鍋をつついた。 やれ肉が煮えただの、やれ野菜を食べろだのと二人の鍋奉行は百合子に次々と食材を食べさせる。 百合子がもうお腹がいっぱいだと告げると、だから痩せているのだ!とか血色が悪い!とか言い始めた。
/-/-/-/-/-/-/
百合子は布団に横になった。 そして、今日の斯波の言葉を思い出す。
俺は、俺があなたを幸せにしたいんだ! あなたの幸せが、俺の――幸せなんだ!
(真島――)
百合子は久しぶりに、その名前を呼んだ。 名を呼べば、不思議と涙が溢れてくる。 何も考えられないほど忙しく働いて、気を紛らわし、ずっと思い出さないようにしていた。
(お前は今どうしているの?)
ゆっくりと眼を閉じる。 この僅かな期間にあった様々な記憶が入り乱れ、駆け足で夢のようにぐるぐるとめぐる。 新しい夜会服、暴漢たちの足音、背の高い傲慢な男、桔梗の香り、父の青い顔、母の悲鳴――。 その夢の最後には何度も何度も同じ男が現れる。 そして男は、悲しい瞳で真実を告げて去っていく。
暗い闇の方へ向かって歩き出すその男を、百合子は必死に走って追いかける。
『その先へ行ってはダメ!私はあなたを――』
不思議だ。 いつもの夢ならば、ここで百合子は足がもつれて転んでしまうのに。 今日の百合子は、そうはならずにずっと男を追いかけている。 もう、令嬢ではない、か弱い姫様でもない。 働くことを知り、自分自身の足で歩き始めているただの百合子だ。
夢のなかですら、言えなかった。 ずっと、言葉にする資格もないと思っていた――けれど今は言える。
『私はあなたを幸せにしたい! 私が、あなたを幸せにするんだから!!』
その言葉を、ようやく百合子は言うことが出来た。
(あなたには――無理ですよ)
真島は暗く笑う。諦めたような笑顔で。
『無理じゃないわ、無理じゃない! 待っててごらんなさい、絶対に、お前を見つけてやるのだから!』
百合子は真島を抱きしめる。 彼は弱々しく微笑むと、すうっと闇の中へ消えていった。
それから、もう二度と真島の夢をみることはなくなった。
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佐野ひなこさんが湯浅町でレトロな町並みを歩く 電子雑誌「旅色」2019年5月号公開 ゆったり歩いて巡りたい 春のおさんぽ旅 無料で読める電子雑誌を発行する株式会社ブランジスタ(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:岩本恵了、証券コード:6176)は、佐野ひなこさんが表紙・巻頭を飾る、電子雑誌「旅色」2019年5月号を公開しました。 ■ 「旅色」2019年5月号 https://tabiiro.jp/  表紙・巻頭インタビューは、愛くるしい笑顔と“神ボディ”と称えられる完璧なプロポーションが魅力の、タレント・女優として活躍する佐野ひなこさん。「行きたい場所はいつも頭の中にストックしてあります」という佐野さんならではの、さまざまな旅のエピソードを話してくれました。1泊2日の行程では、醤油の発祥地として日本遺産に認定された和歌山県・湯浅町でレトロな町歩きとグルメを満喫しています。  また、旅に関する本や映画を紹介する「今月の旅カルチャー」では、『コンフィデンスマンJP』の映画公開を5月に控えた、東出昌大さんのインタビューを掲載。その他、長野県の安曇野市を取り上げた「エリアフィーチャー」や、日本の産業遺産をピックアップした「テーマのある旅」など、旅の季節を満喫する情報をお届けします。 ■ 表紙・巻頭グラビア・インタビュー / 佐野ひなこ http://bit.ly/2IGB13r  くるくると表情が変わる愛らしい顔と抜群のプロポーションで、女優、モデル、タレントとして大活躍の佐野ひなこさん。ホームシックならぬ“トリップロス”になったこともあるという、無類の旅好きの佐野さんから次々と飛び出す国内外の旅のお話は、人柄を表すパワフルなエピソードばかりです! ■ 1泊2日のRefresh Trip 佐野ひなこさんが案内!レトロな町並みとグルメを満喫する 湯浅あるき(和歌山県 湯浅町) http://bit.ly/2IUZbXy  温暖な気候に恵まれた湯浅町は、日本の食文化に欠かせない醤油の発祥地。醤油の香りが漂うノスタルジックな町並みを歩き、醤油ソフトクリームなどのグルメを佐野さんが満喫します。シーカヤックに初挑戦し、ふわふわの釜揚げしらすに驚く、キュートな佐野さんの表情でも湯浅の旅の魅力が伝わります。 □ SNS映えスポットを探す旅「女優の旅カメラ」 http://bit.ly/2IGB2Ex  人気の“SNS映えスポット”を、旅の途中で見つけるコーナー「女優の旅カメラ」。佐野ひなこさんがピックアップしたのは、タイムスリップしたかのような写真が撮れる、個性的な装飾の土塀が特長の「甚風呂」。誌面のカメラアイコンに注目ください。 ■ エリアフィーチャー 朝の光と花の薫りに誘われて「安曇野」(長野県)ココロ躍る風景に出会う旅 http://bit.ly/2IUQDzC  雄大な北アルプスを背景に、わさび田や田園、果樹園などが広がる安曇野市。いつ訪れてものどかな風景で旅する人を癒してくれますが、特におすすめなのが、春。花に包まれるイベントへ出かけたり、清らかな朝の光に包まれた、安曇野ならではの風景を堪能したりと、贅沢な時間を過ごせます。 ■ 今月の旅カルチャー スペシャルインタビュー 東出昌大さん http://bit.ly/2IE4LOv  5月に公開となる映画『コンフィデンスマンJP』が話題の東出昌大さん。映画の舞台である香港では、ミルクティーやタピオカ入りミルクティーにはまり、ロケ中に何杯も飲んだとか。いずれは世界一周旅行をしたいという東出さんに、旅に出たくなる本と映画について聞きました。 ■ プレゼントキャンペーン 熊本県「『人吉温泉 鍋屋本館』1泊2食付きペア宿泊券」をプレゼント http://bit.ly/2ITgVm4  「旅色 厳選宿特集 九州・沖縄版」に掲載中の熊本県の宿「人吉温泉 鍋屋本館」より、「1泊2食付きペア宿泊券」を1組2名様にプレゼントいたします。“美肌の湯”と評判の源泉掛け流しの湯と、球磨川と人吉城址を一望するロケーション自慢の宿、ぜひ、応募してください! ◇ 応募期間:2019年4月25日(木)~2019年5月24日(金) 次号、2019年6月号(5月27日公開)の表紙は、真木よう子さんです。 <株式会社ブランジスタ 会社概要> URL   :http://bit.ly/2mluzUo 本社所在地:〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町20-4 ネクシィーズスクエアビル 代表者  :代表��締役社長 岩本恵了 設立   :2000年11月 事業内容 :電子雑誌出版・電子広告・ソリューションサービス 本リリースに関するお問合せ  株式会社ブランジスタ  広報担当:田口隆一 e-mail: [email protected] TEL:03-6415-1183 #佐野ひなこ #湯浅町 #湯浅 #和歌山県 #和歌山 #ひとり旅 #東出昌大 #観光振興課 #旅行電子雑誌 #動画 #名産品 #神秘的 #海 #アクティビティ #絶景 #旅行電子雑誌 #動画 #名産品インスタフォロワー #インスタグラマー #SNS映え #インスタ映え #映え #創刊 #電子雑誌 #無料 #女優 #プレゼント #読者 #インスタグラム #思い出 #アクティブ #写真 #旅写真 #撮り方 #応募 #スポット #絶景 #観光誘客 #写真映え #フォトジェニック #女優 #家族旅行 #リゾートホテル #風景 #特産 #名産 #特産品 #名産品 #ご当地グルメ #ご当地 #グルメ #ブランジスタ #地方 #観光 #宿泊 #旅館 #旅色 #旅色コンシェルジュ #ホテル #リゾート #シティ #シティホテル #旅 #温泉 #源泉かけ流し #食 #ランチ #飲食店 #レジャー #体験 #厳選 #自然 #プロモーションメディア #メディア #プロモーション #伝統 #国内 #湯めぐり #国内旅行 #食べ歩き #旅行 #雑誌 #露天 #露天風呂 #巡り #めぐり #宿泊予約 #宿 #旅先 #予約 #リラックス #ツアー #スイーツ #旅先 #大人の女性 #日本 #ウェブマガジン #ウェブ #マガジン #リーディングカンパニー #憧れの宿 #観光ガイド #お取り寄せ #レストラン #brangista #大人の女性 #贈る #11周年記念 #表紙 #グラビア #スペシャル #プレゼントキャンペーン #特集 #紹介 #衣装 #荷物 #和食 #健康食材 #食材 #ふるさと #インタビュー #日本 #1泊2日 #大人 #大人旅 #連載 #連載コラム #コラム #特別 #散歩 #風物詩 #温活 #美食 #神秘的 #神秘 #エリア #美味しい #おいしい #美味 #一人旅 #パワー #パワースポット #スピリチュアルスポット #風情ある #宿場町 #宿場 #美しい #文化 #情緒 #レトロ #街道沿い #街道 #名所 #海 #週末旅 #週末 #キャンペーン #ペア宿泊券 #1泊2日2食付き #1泊2日 #2食付き #宿泊券 #厳選宿 #新客室 #泊まれる #のんびり旅 #デスティネーション #特集 #自然 #大地の恵み #ラーメン #花 #女優 #モデル #爽やか #満喫 #魅力 #ハイキング #トレッキング #アウトドア #名湯 #肌がつるつる #モデルコース #美味しい #おいしい #食事 #美活 #隠れ家リゾート #隠れ家 #リフレッシュ #1泊2食付き #露天 #地産地消 #料理 #美味 #アート #名旅館 #ご利益 #返礼品 #パワースポット #和牛 #ラーメン #ご当地グルメ #話題 #工芸品 #文化 #伝統芸能 #パワースポット #スピリチュアルスポット #スピリチュアル #スポット #ファッション誌 #ショッピング #名店 #ブランド牛 #インスタ #醤油 #醤油発祥の地 #醸造文化 #町並み #マリンレジャー #熊野古道 #宿場町 #醤油蔵 #湯浅町湯浅伝統的建造物群保存地区 #古民家カフェ #老舗 #金山寺味噌 #ノスタルジック #醤油醸造 #櫂入れ体験 #テイスティング #しらす #天日干し #醤油ソフト #生しらす丼 #生しらす #天然クエ #クエ #みかん #柑橘類 #真木よう子 #文化庁 #日本遺産 #認定 #伝統文化 #風習 #伝承 #文化財 #地域活性化 #醤油醸造 #醸造 #しょうゆ #紀州湯浅 #ストーリー #店 #高僧覚心 #味噌 #製法 #最初の一滴 #船積み #戦国時代 #大坂 #紀州藩 #醤油醸造業 #ソイソース #和食文化 #土蔵 #本瓦葺き #木格子 #虫籠窓 #酵母菌 #角長 #醸造蔵 #木桶 #醤油資料館 #見学 #熊野牛 #紀伊山地 #植物性飼料 #うなぎ #国産うなぎ #国産 #関西風 #宿泊券 #紀州のかくれ湯 #栖原温泉 #湯浅城 #湯浅温泉 #切り絵 #切り絵画家 #岩本正秀 #ままごとキッチン #木工職人 #紀州のヒノキ材 #ヒノキ #檜 #子ども #ジュース #甘酒 #名産地 #みかん農園 #果汁100% #主井農園 #オリジナル柑橘甘酒 #ギフト #梅干し #紀州南高梅 #南高梅 #減塩 #丹波種黒豆100% #黒豆 #再仕込醤油 #おかず味噌 #釜揚げしらす #紀伊水道 #赤穂天日塩 #黒潮 #有田郡 #みかん #有田みかん #温州みかん #セミノール #採れたて #かどや食堂 #古由青果 #ジェラート #完熟フルーツ #アイスクリーム #合成着色料 #香料 #保存料 #一切不使用 #果物 #釜揚げしらす丼 #生しらす丼 #湯浅醤油 #白上山 #施無畏寺 #湯浅湾 #太田久助吟製 #アイランドストリーム #栖原海岸 #無人島 #洞窟 #シーカヤックツアー #シーカヤック #しらす屋 前福 #前福 #ちりめん #佃煮 #蔵カフェ #蔵カフェ #醤油ソフトクリーム #醤油ソフト #醤油づくり体験 #杉樽 #北町茶屋いっぷく #焼き魚 #刺身 #楠山商店 #たまごごはんセット #甚風呂 #戎湯 #浴場 #文化遺産 #特急くろしお #コンフィデンスマンJP #旅カルチャー #本 #映画 #産業遺産 #安曇野市 #長野県 #長野 #神ボディ #プロポーション #顔 #タレント #旅好き #トリップロス #カメラ #初挑戦 #わさび田 #田園 #北アルプス #果樹園 #イベント #公開 #香港 #タピオカ入りミルクティー #ミルクティー #タピオカ #熊本県 #熊本 #人吉温泉 #鍋屋本館 #美肌の湯 #球磨川 #人吉城址 #一望 #源泉 #源泉掛け流し #湯 #真木よう子 http://bit.ly/2IUQFre
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